特許第6656436号(P6656436)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6656436
(24)【登録日】2020年2月6日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】モバイル機器およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04M 1/00 20060101AFI20200220BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20200220BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20200220BHJP
【FI】
   H04M1/00 R
   H02J7/00 301D
   H02J7/00 V
   H02J50/10
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-9014(P2019-9014)
(22)【出願日】2019年1月23日
(62)【分割の表示】特願2014-130715(P2014-130715)の分割
【原出願日】2014年6月25日
(65)【公開番号】特開2019-71672(P2019-71672A)
(43)【公開日】2019年5月9日
【審査請求日】2019年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】許 容武
(72)【発明者】
【氏名】堀本 昌志
【審査官】 藤江 大望
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/087971(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0293119(US,A1)
【文献】 特開2014−011893(JP,A)
【文献】 特開2007−027936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J7/00−7/12
7/34−7/36
50/00−50/90
H04M1/00
1/24−1/82
99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤレスパワートランスミッタからの電力信号により充電可能なモバイル機器であって、
二次電池と、
前記電力信号を受信するワイヤレスパワーレシーバと、
前記ワイヤレスパワーレシーバが受信した電力を利用して前記二次電池を充電する充電回路と、
前記ワイヤレスパワーレシーバが、前記二次電池の充電完了を示すEPT(End of Power Transfer)パケットを前記ワイヤレスパワートランスミッタに送信した後に、前記モバイル機器が充電台から移動されたか否かを検出するセンサと、
を備え、
前記センサは、前記ワイヤレスパワートランスミッタがアナログピング(Analog Ping)のために発生する電磁界信号に対応する周期的な磁界変化を検出し、前記周期的な磁界変化が検出されなくなると、移動検出信号をアサートし、
前記センサは、前記ワイヤレスパワートランスミッタによる前記アナログピングの発生と同期して時分割にアクティブとなるようにバースト制御されることを特徴とするモバイル機器。
【請求項2】
前記モバイル機器が前記充電台上に載置された状態が持続するときに、前記モバイル機器が前記充電台上に放置されていることを前記モバイル機器のユーザに通知する通知部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のモバイル機器。
【請求項3】
前記通知部は、前記モバイル機器のユーザに、前記モバイル機器を充電台から取り除いた後に、再度、載置するように促すことを特徴とする請求項に記載のモバイル機器。
【請求項4】
前記通知部は、ディスプレイ装置に、前記モバイル機器を充電台から取り除いた後に、再度、載置することを促すメッセージを表示することを特徴とする請求項に記載のモバイル機器。
【請求項5】
前記通知部は、前記モバイル機器が前記充電台に放置されていることを通知する音声を出力することを特徴とする請求項に記載のモバイル機器。
【請求項6】
前記通知部は、前記モバイル機器を振動させることを特徴とする請求項に記載のモバイル機器。
【請求項7】
前記通知部は、前記EPTパケットが送信された後、所定時間経過後に、前記モバイル機器のユーザに通知することを特徴とする請求項に記載のモバイル機器。
【請求項8】
前記通知部は、前記EPTパケットが送信された後、前記電池の残量が所定のしきい値より小さくなると、前記モバイル機器のユーザに通知することを特徴とする請求項に記載のモバイル機器。
【請求項9】
Qi規格に準拠したことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のモバイル機器。
【請求項10】
ワイヤレスパワートランスミッタからの電力信号により充電可能なモバイル機器の制御方法であって、
前記ワイヤレスパワートランスミッタは、EPT(End of Power Transfer)パケットを受信すると、それ以降、給電を停止するものであり、
前記制御方法は、
前記ワイヤレスパワートランスミッタからの電力信号を受信するステップと、
受信した電力を利用して二次電池を充電するステップと、
前記二次電池の充電が完了すると、EPTパケットを前記ワイヤレスパワートランスミッタに送信するステップと、
前記EPTパケットを送信後、前記ワイヤレスパワートランスミッタがアナログピング(Analog Ping)のために発生する電磁界信号に対応する周期的な磁界変化を検出する検出ステップと、
前記周期的な磁界変化が検出されなくなると、前記モバイル機器が充電台から移動されたものと判定するステップと、
を備え、
前記検出ステップは、前記ワイヤレスパワートランスミッタによる前記アナログピングの発生と同期して時分割にアクティブとなるようにバースト的に実行されることを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレス給電技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器に電力を供給するために、無接点電力伝送(非接触給電、ワイヤレス給電ともいう)が普及し始めている。異なるメーカーの製品間の相互利用を促進するために、WPC(Wireless Power Consortium)が組織され、WPCにより国際標準規格であるQi(チー)規格が策定された。
【0003】
Qi規格にもとづいたワイヤレス給電は、送信コイルと受信コイル間の電磁誘導を利用したものである。図1は、Qi規格に準拠したワイヤレス給電システム10の構成を示す図である。給電システム10は、パワートランスミッタ20(TX、Power Transmitter)とパワーレシーバ(RX、Power Receiver)30rと、を備える。パワーレシーバ30rは、携帯電話端末、スマートホン、オーディオプレイヤ、ゲーム機器、タブレット端末などの電子機器に搭載される。
【0004】
パワートランスミッタ20は、送信コイル(1次コイル)22、ドライバ24、コントローラ26、復調器28を備える。ドライバ24は、Hブリッジ回路(フルブリッジ回路)あるいはハーフブリッジ回路を含み、送信コイル22に駆動信号S1、具体的にはパルス信号を印加し、送信コイル22に流れる駆動電流により、送信コイル22に電磁界の電力信号S2を発生させる。コントローラ26は、パワートランスミッタ20全体を統括的に制御するものであり、具体的には、ドライバ24のスイッチング周波数、あるいはスイッチングのデューティ比を制御することにより、送信電力を変化させる。
【0005】
Qi規格では、パワートランスミッタ20とパワーレシーバ30rの間で通信プロトコルが定められており、パワーレシーバ30rからパワートランスミッタ20に対して、制御信号S3による情報の伝達が可能となっている。この制御信号S3は、後方散乱変調(Backscatter modulation)を利用して、AM(Amplitude Modulation)変調された形で、受信コイル32(2次コイル)から送信コイル22に送信される。この制御信号S3には、たとえば、パワーレシーバ30rに対する電力供給量を制御する電力制御データ(パケットともいう)、パワーレシーバ30rの固有の情報を示すデータなどが含まれる。復調器28は、送信コイル22の電流あるいは電圧に含まれる制御信号S3を復調する。コントローラ26は、復調された制御信号S3に含まれる電力制御データにもとづいて、ドライバ24を制御する。
【0006】
パワーレシーバ30rは、受信コイル32、整流回路34、平滑コンデンサ36、充電回路38、コントローラ40、変調器42を備える。受信コイル32は、送信コイル22からの電力信号S2を受信するとともに、制御信号S3を送信コイル22に対して送信する。整流回路34および平滑コンデンサ36は、電力信号S2に応じて受信コイル32に誘起される電流S4を整流・平滑化し、直流電圧に変換する。
【0007】
充電回路38は、パワートランスミッタ20から供給された電力を利用して二次電池50を充電する。また充電回路38は、直流電圧VRECTを昇圧あるいは降圧するコンバータを含み、コントローラ40やその他の二次電池50に供給する。
【0008】
コントローラ40は、二次電池50に供給される電力をモニタし、それに応じて、パワートランスミッタ20からの電力供給量を制御する電力制御データを生成する。変調器42は、電力制御データを含む制御信号S3を変調し、受信コイル32のコイル電流を変調することにより、送信コイル22のコイル電流およびコイル電圧を変調する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013−38854号公報
【特許文献2】特許第5071574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図2は、図1の給電システム10のフローチャート(状態遷移図)である。以下の5つのフェーズが規定されているものとする。
φ1 セレクション(selection)フェーズ
φ2 ピング(ping)フェーズ
φ3 認証・設定(identification & configuration)フェーズ
φ4 ネゴシエーション(negotiation)フェーズ
φ5 パワートランスファ(power transfer)フェーズ
【0011】
セレクションフェーズφ1では、パワートランスミッタ20によって、パワーレシーバ30rの検出が行われる。具体的には、パワートランスミッタ20は、所定の時間(たとえば5ms)ごとに、送信コイル22に電流を流す。送信コイル22に流れる電流は、送信コイル22の近傍に受信コイル32が存在するか否かによって変化する。パワートランスミッタ20はこの性質を利用して、パワーレシーバ30rが充電台に載置されているか否かを判定する。これをアナログピング(Analog Ping)と称する。
【0012】
パワーレシーバ30rが検出されると、ピングフェーズφ2に遷移する。ピングフェーズφ2では、パワートランスミッタ20はデジタルピング(Digital Ping)を実行し、パワーレシーバ30rからの応答を待つ。デジタルピングでは、送信電力が一定に維持され、パワーレシーバ30rは、パワートランスミッタ20からの電力信号S2を電源として動作する。
【0013】
続く認証・設定フェーズφ3において、パワートランスミッタ20はパワーレシーバ30rを特定し、送信電力などを設定する。
【0014】
ネゴシエーションフェーズφ4では、送信電力などが再設定(reconfigure)される。パワートランスファフェーズφ5では、設定された情報にもとづき、電力伝送が行われる。
【0015】
パワーレシーバ30rにおいて、二次電池50が満充電状態となると、コントローラ40は、EPT(End of Power Transfer)パケットを発生し、パワートランスミッタ20へと送信する。
【0016】
EPTパケットを受信したパワートランスミッタ20は、それ以降、給電を停止する。その後は、自動的に充電を再開するプロトコルは定義されていない。つまり、パワーレシーバ30rが充電台上に載置された状態であったとしても、電池切れを起こす可能性がある。
【0017】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、電池切れを抑制可能なモバイル機器の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のある態様は、ワイヤレスパワートランスミッタからの電力信号により充電可能なモバイル機器に関する。モバイル機器は、二次電池と、電力信号を受信するワイヤレスパワーレシーバと、ワイヤレスパワーレシーバが受信した電力を利用して二次電池を充電する充電回路と、ワイヤレスパワーレシーバが二次電池の充電完了を示すEPT(End of Power Transfer)パケットがワイヤレスパワートランスミッタに送信された後に、モバイル機器が充電台から移動されたか否かを検出するセンサと、を備える。
【0019】
この態様によると、モバイル機器が充電完了後に充電台の上に放置されていることを、端末が独自に検出できるため、充電を再開するためのトリガとして利用することができる。
【0020】
モバイル端末は、EPTパケットの送信後、モバイル機器が充電台上に載置された状態が持続するときに、モバイル機器のユーザに通知する通知部をさらに備えてもよい。
これにより、通知を受けたユーザは、モバイル機器の充電を再開すべく何らかのアクションをとることができ、モバイル機器がユーザが知らない間に電池切れにより使用不能となるのを防止できる。
【0021】
センサは、磁気センサを含んでもよい。
磁気センサは、地磁気を検出して、モバイル機器の筐体の移動を検出してもよい。あるいは磁気センサは、ワイヤレスパワートランスミッタの送信コイルが発生する磁気変化を検出して、モバイル機器の筐体の移動を検出してもよい。
【0022】
センサは、磁気センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、タッチセンサ、タッチパネル、物理ボタン、カメラ、照度センサの少なくともひとつを含んでもよい。
【0023】
センサは、ワイヤレスパワートランスミッタがアナログピング(Analog Ping)のために発生する電磁界信号を検出してもよい。
アナログピングのためにワイヤレスパワートランスミッタが送信アンテナに電流を流すと、それに応じた電磁界が発生する。そこでセンサによりこの電磁界が定期的に発生しているかを監視することで、モバイル機器が充電台の上に置きっぱなしであるか否かを判定できる。
【0024】
通知部は、モバイル機器のユーザに、モバイル機器を充電台から取り除いた後に、再度、載置するように促してもよい。
【0025】
通知部は、ディスプレイ装置に、モバイル機器を充電台から取り除いた後に、再度、載置するように促すメッセージを表示してもよい。
【0026】
通知部は、モバイル機器が充電台に放置されていることを通知する音声を出力してもよい。
【0027】
通知部は、モバイル機器を振動させてもよい。
【0028】
通知部は、EPTパケットが送信された後、所定時間経過後に、モバイル機器のユーザに通知してもよい。
【0029】
通知部は、EPTパケットが送信された後、電池の残量が所定のしきい値より小さくなると、モバイル機器のユーザに通知してもよい。
【0030】
モバイル機器は、Qi規格に準拠してもよい。
【0031】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0032】
本発明のある態様によれば、モバイル機器の電池切れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】Qi規格に準拠したワイヤレス給電システムの構成を示す図である。
図2図2は、図1の給電システムのフローチャート(状態遷移図)である。
図3】実施の形態に係るモバイル機器のブロック図である。
図4】モバイル機器を模式的に示す断面図である。
図5図4のモバイル機器の動作波形図である。
図6】ディスプレイ装置を利用した通知の一例を示す図である。
図7図3のモバイル機器およびパワートランスミッタのフローチャートである。
図8】実施の形態に係るモバイル機器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0035】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0036】
図3は、実施の形態に係るモバイル機器100のブロック図である。モバイル機器100は、携帯電話端末、スマートホン、オーディオプレイヤ、ゲーム機器、タブレット端末などである。
【0037】
モバイル機器100は、電池駆動型であり、図1のパワートランスミッタ20からの電力信号S2により充電可能に構成される。モバイル機器100は、二次電池102、パワーレシーバ104、充電回路106、センサ108、通知部110、残量検出部112を備える。モバイル機器100は、Qi規格に準拠するものとする。
【0038】
パワーレシーバ104は、電力信号S2を受信し、整流された直流電圧VRECTを生成する。パワーレシーバ104は、受信コイル120、整流回路122、平滑コンデンサ124、コントローラ126、変調器128、を備える。受信コイル120は電力信号S2を受信するとともに、制御信号S3を送信コイル202に対して送信する。整流回路122および平滑コンデンサ124は、電力信号S2に応じて受信コイル120に誘起される電流S4を整流・平滑化し、直流電圧VRECTに変換する。
【0039】
コントローラ126は、パワーレシーバ104の負荷に供給される電力をモニタし、それに応じて、パワートランスミッタ20からの電力供給量を制御する電力制御データを生成する。変調器128は、電力制御データを含む制御信号S3を変調し、受信コイル120のコイル電流を変調することにより、送信コイル202のコイル電流およびコイル電圧を変調する。
【0040】
充電回路106は、パワートランスミッタ20から供給された電力を利用して二次電池102を充電する。
【0041】
ワイヤレスパワーレシーバ104は、二次電池102の充電が完了すると、電力送信(Power Transfer)の停止を指示するEPT(End of Power Transfer)パケットを、ワイヤレスパワートランスミッタに送信する。センサ108は、EPTパケットが送信された後、モバイル機器100が充電台から移動されたか否かを検出し、移動を検出すると移動検出信号S6をアサート(たとえばハイレベル)する。
【0042】
通知部110は、EPTパケットの送信後、モバイル機器100が充電台上に載置された状態が持続するとき、言い換えれば移動検出信号S6のネゲートが持続するときに、モバイル機器100のユーザに通知する。残量検出部112は、二次電池102の残量を検出する。パワーレシーバ104および充電回路106は、パワートランスミッタ20からの電力信号S2を利用して動作する。一方、センサ108、通知部110、残量検出部112は、二次電池102からの電力を利用して動作してもよい。
【0043】
続いてセンサ108について説明する。
【0044】
図4は、モバイル機器100を模式的に示す断面図である。センサ108は、磁気センサ130を備える。パワートランスミッタ20は、EPTパケットを受信した後においても、周期的にアナログピングを発生する。アナログピングは、充電台200に埋め込まれた送信コイル22が発生する電磁界信号S2として把握される。磁気センサ130により送信コイル22が発生する電磁界信号S2を監視することにより、モバイル機器100が充電台200から取り外されたか否かを判定できる。
【0045】
磁気センサ130は、受信コイル120の近傍に配置することが望ましい。効率的に充電するためには、受信コイル120と送信コイル22が対向するように、モバイル機器100を充電台200上に載置することが要求される。これにより磁気センサ130が送信コイル22の近傍に位置することになるため、電磁界信号S2の検出感度を高めることができる。
【0046】
図5は、図4のモバイル機器100の動作波形図である。S5は、磁気センサ130により検出される電磁界に応じた検出信号である。
パワートランスミッタ20は、所定の周期で、アナログピンを実行し、電磁界信号S2を発生する。EPTパケットの送信後、時刻t1までの間、モバイル機器100は移動されることなく充電台200の上に載置されている。磁気センサ130がアナログピングに対応する周期的な磁界変化S5を検出する間は、モバイル機器100が充電台上に載置されているものと判定される。
【0047】
時刻t1に、モバイル機器100がユーザにより動かされると、周期的な磁界変化S5が検出されなくなる。その結果、センサ108は、モバイル機器100が充電台200から取り除かれたものと判定し、移動検出信号S6をアサート(たとえばハイレベル)する。
【0048】
なお、センサ108を常時動作させておくと、センサ108の消費電力が大きくなり、二次電池102の放電が進む。そこでセンサ108は、パワートランスミッタ20によるアナログピンの発生と同期して時分割的にアクティブとなるようにバースト制御することが望ましい。図5には、センサ108の動作期間がTopとして示される。なおモバイル機器100が充電台200から除去されたことが推定されると、センサ108を停止してもよい。
【0049】
続いて、通知部110による通知について説明する。
通知部110は、充電完了後においてモバイル機器100が充電台200上に長らく放置されるとき、モバイル機器100のユーザに、モバイル機器100を充電台から取り除いた後に、再度、載置するように促す。
【0050】
ユーザへの通知は、EPTパケットが送信された後、残量検出部112により検出される二次電池102の残量が所定のしきい値(たとえば80%、あるいは50%、あるいは30%)を下回ったときに行ってもよい。あるいはユーザへの通知は、EPTパケットが送信された後、モバイル機器100が充電台200上に放置された状態で所定時間経過したときに行ってもよい。所定時間は、電池の減り方に応じて定めればよい。
【0051】
図6は、ディスプレイ装置を利用した通知の一例を示す図である。通知部110は、モバイル機器100のディスプレイ装置140を利用し、画面上に、モバイル機器100を充電台から取り除いた後に、再度、載置することを促すメッセージ142、144を表示してもよい。メッセージは、テキスト形式142であってもよいし、画像形式144であってもよい。あわせて、電池残量が減っていることを示すアイコン146もしくはメッセージを表示してもよい。
【0052】
ディスプレイを利用した通知に加えて、あるいはそれに代えて、通知部110は、モバイル機器100が充電台200に放置されていることを通知する音声を出力してもよい。あるいは通知部110は、モバイル機器100のバイブ機能を利用して、モバイル機器100を振動させてもよい。
【0053】
以上がモバイル機器100の構成である。続いてその動作を説明する。
図7は、図3のモバイル機器100およびパワートランスミッタ20のフローチャートである。
【0054】
RX(モバイル機器100)がTX(パワートランスミッタ20の充電台200)上に置かれる。続いて拡張されたデジタルピング(S200)、認証・設定フェーズ(S302)、ネゴシエーションフェーズ(S202)を経て、給電が開始する(S204、S304)。
【0055】
充電が完了すると(S306)、モバイル機器100からパワートランスミッタ20にEPTパケットが送信される(S308)。これを受けたパワートランスミッタ20は、給電を停止する(S206)。ここまでの動作は、従来のQi規格の給電システム10と同様である。
【0056】
給電停止後、パワートランスミッタ20は、所定の周期毎にアナログピング(S208)を継続して実行する。モバイル機器100の磁気センサ130は、アナログピングにともなう電磁界信号S2を監視し、モバイル機器100が充電台200から移動されたか否かを判定する(S310)。その結果、移動が検出されると(S312のY)、一旦、充電シーケンスは終了する。その後、ユーザがモバイル機器100を充電台200上に載置すると、S300に戻り、同じ処理が繰り返される。
【0057】
移動が検出されなくても(S312のN)、電池残量が所定のしきい値より高いうちは(S314のN)、S310に戻り、移動の有無が引き続き監視される。移動が検出されない状態(S312)が持続し、電池残量がしきい値を下回ると(S314のY)、通知部110はメッセージを表示する(S316)。このメッセージをみたユーザが、モバイル機器100を充電台200から一旦取り外し、再び充電台200に戻すと、ステップS300に戻り、再充電が開始される。
【0058】
以上がモバイル機器100を備える給電システム10の動作である。
【0059】
このモバイル機器100によれば、充電完了後に、モバイル機器100が充電台200の上に放置されていることをユーザに知らせることができる。これにより、ユーザは、モバイル機器100の充電を再開すべく、何らかのアクションをとることができ、モバイル機器100がユーザが知らない間に電池切れにより使用不能となるのを防止できる。
【0060】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0061】
センサ108によるモバイル機器100の移動の有無の検出には以下の変形例がありえる。
【0062】
(第1変形例)
センサ108は、実施の形態と同様に、磁気センサ(地磁気センサ)を備える。磁気センサは、地磁気を測定し、モバイル機器100の筐体の向きが変化したか否かを監視する。これにより、筐体の向きが変化しない間は、モバイル機器100が充電台上に載置されているものと判定し、筐体の向きが変化すると、モバイル機器100が充電台から取り除かれたものと判定し、移動検出信号S6をアサートする。
【0063】
(第2変形例)
センサ108は、加速度センサあるいはジャイロセンサを備える。加速度センサ、ジャイロセンサは、筐体の移動あるいは回転にともなう加速度を測定する。モバイル機器100が充電台上に載置され続ける間、有意な加速度は測定されず、モバイル機器100がユーザによって充電台から移動されると、加速度変化が測定される。センサ108は、モバイル機器100の移動が検出されると、移動検出信号S6をアサートする。
【0064】
(第3変形例)
センサ108は、タッチセンサあるいはタッチパネルを備える。充電を目的としてモバイル機器100を充電台200上に設置した後に、ユーザが意図的にモバイル機器100を操作しない限り、タッチセンサやタッチパネルにユーザ入力が与えられる可能性は低い。そこでセンサ108は、タッチセンサあるいはタッチパネルへのユーザ入力の有無を監視し、ユーザ入力を検出したときには、モバイル機器100が移動されたものと推定し、移動検出信号S6をアサートする。
【0065】
同様の理由から、センサ108は、物理ボタンを供えてもよい。物理ボタンは、ホームボタンであってもよいし、ボリウム用のボタンであってもよい。センサ108は、物理ボタンへのユーザ入力の有無を監視し、ユーザ入力を検出したときには、モバイル機器100が移動されたものと推定し、移動検出信号S6をアサートしてもよい。
【0066】
(第4変形例)
センサ108は、カメラを備える。センサ108はカメラが撮像した画像を監視し、EPT送信前の受電中に撮影された画像と、EPT送信後に撮影された画像を対比することにより、モバイル機器100の移動の有無を検出してもよい。
【0067】
(第5変形例)
センサ108は、照度センサを備えてもよい。センサ108は、EPT送信前の測定された照度と、EPT送信後に測定された照度を比較することにより、モバイル機器100の移動の有無を検出してもよい。
【0068】
ここで、スマートフォンをはじめとする多くのモバイル機器100には、他の目的で加速度センサやジャイロセンサ、タッチセンサ、タッチパネル、照度センサが搭載される。したがって、モバイル機器100が元来具備するこれらのセンサを、モバイル機器100が充電台200から除去されたか否かの判定に流用することで、コストの増加を抑制できる。
【0069】
なおモバイル機器100の移動の有無の検出方法はこれらには限定されない。またセンサ108は、上述の移動検出手段の任意の組み合わせを利用してもよい。
【0070】
(第6変形例)
実施の形態では、モバイル機器100のユーザが、充電を再開するために、モバイル機器100を一旦、充電台200上から動かして、充電台200に戻すアクションをとる場合を説明したが本発明はそれには限定されない。
たとえばパワートランスミッタ20に、EPTパケットを受領後に、充電を再開するためのリセット機能を設けてもよい。たとえばパワートランスミッタ20にリセットボタンを設け、通知を受けたユーザが、リセットボタンを押したことを契機として、パワートランスミッタ20は、図7のデジタルピングS200からの処理を再スタートしてもよい。
【0071】
あるいは、パワートランスミッタ20の充電再開を指示するリセットパケットを、パワートランスミッタ20とモバイル機器100の間で定義しておき、通知部110は、ユーザに通知する代わりに、リセットパケットをパワートランスミッタ20に送信してもよい。リセットパケットを受信したパワートランスミッタ20は、自動で、充電を再開してもよい。
【0072】
(第7変形例)
実施の形態では、Qi規格に準拠するワイヤレスパワートランスミッタについて説明したが、本発明はそれに限定されず、Qi規格と類似するシステムに使用されるモバイル機器100や、将来策定されるであろう規格に準拠するモバイル機器100にも適用しうる。
【0073】
最後に、電子機器の具体例を説明する。図8は、実施の形態に係るモバイル機器100を示す図である。図8のモバイル機器100は、スマートホン、タブレットPCや携帯型ゲーム機、携帯型オーディオプレイヤであり、筐体101の内部には、二次電池102、パワーレシーバ104、充電回路106、センサ108、ディスプレイ装置140、プロセッサ150が内蔵される。プロセッサ150は、無線(RF)部、ベースバンドプロセッサ、アプリケーションプロセッサ、オーディオプロセッサ等を含んでもよい。通知部110の機能は、プロセッサ150により実現されてもよい。
【0074】
実施の形態にもとづき、具体的な用語を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0075】
10…給電システム、20…パワートランスミッタ、22…送信コイル、24…ドライバ、26…コントローラ、28…復調器、100…モバイル機器、102…二次電池、104…パワーレシーバ、106…充電回路、108…センサ、110…通知部、112…残量検出部、120…受信コイル、122…整流回路、124…平滑コンデンサ、126…コントローラ、128…変調器、130…磁気センサ、140…ディスプレイ装置、150…プロセッサ、200…充電台。
図1
図2
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図8