特許第6656491号(P6656491)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6656491
(24)【登録日】2020年2月6日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】回転変動低減装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/30 20060101AFI20200220BHJP
   F16F 15/134 20060101ALI20200220BHJP
   F16H 1/28 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
   F16F15/30 V
   F16F15/134 A
   F16F15/134 D
   F16H1/28
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-553579(P2019-553579)
(86)(22)【出願日】2019年6月20日
(86)【国際出願番号】JP2019024399
【審査請求日】2019年9月27日
(31)【優先権主張番号】特願2018-131219(P2018-131219)
(32)【優先日】2018年7月11日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000178804
【氏名又は名称】ユニプレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088731
【弁理士】
【氏名又は名称】三井 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】小林 篤
(72)【発明者】
【氏名】村田 豊
【審査官】 鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−208547(JP,A)
【文献】 米国特許第04867290(US,A)
【文献】 特開2017−180817(JP,A)
【文献】 実開昭58−108656(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00− 15/36
F16H 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機の回転変動を低減して出力軸に伝達する回転変動低減装置であって、原動機側の入力部材及び出力軸側の出力部材を少なくとも備え、入力部材及び出力軸間に回転方向にねじり剛性を有した弾性体を配置して構成される弾性体ダンパ機構と、複数のピニオンを回転可能に軸支して構成されるキャリアと、前記ピニオンに個別的に噛合する少なくとも2個の歯車との、都合、少なくとも3個の回転歯車要素を備えた遊星歯車機構とを備え、弾性体ダンパ機構からは前記出力軸(以下第1の出力軸)に加えて弾性体より入力部材側において回転運動を取出す第2の出力軸が分岐され、遊星歯車機構の回転要素のうち一つは前記第1の出力軸により、また、別の一つは第2の出力軸により夫々回転駆動されるようにされ、残りの少なくとも一つの動力伝達に関与しない回転要素がダンパマスとして機能するようにされ、かつ前記弾性体ダンパ機構は、遊星歯車機構を収容し、遊星歯車機構の潤滑用の潤滑油のための油浴を形成する筺体の外部に設置され、かつ前記第1の出力軸及び第2の出力軸の遊星歯車機構の対応の回転要素への連結は筺体の壁面部を介して行われるようにされる回転変動低減装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転変動低減装置において、前記弾性体ダンパ機構は、入力部材と,出力部材と、入力部材と出力部材との間を回転方向に連結する弾性体とを備え、前記第2の出力軸は入力部材より分岐される回転変動低減装置。
【請求項3】
請求項1に記載の回転変動低減装置において、前記弾性体ダンパ機構は、入力部材と,出力部材と、入力部材と出力部材との間に設置された中間部材と、入力部材と中間部材との間を回転方向に連結する第1の弾性体と、中間部材と出力部材の間を回転方向に連結する第2の弾性体とを備え、前記第2の出力軸は入力部材より分岐される回転変動低減装置。
【請求項4】
請求項1に記載の回転変動低減装置において、前記弾性体ダンパ機構は、入力部材と,出力部材と、入力部材と出力部材との間に設置された中間部材と、入力部材と中間部材との間を回転方向に連結する第1の弾性体と、中間部材と出力部材の間を回転方向に連結する第2の弾性体とを備え、前記第2の出力軸は中間部材より分岐される回転変動低減装置。
【請求項5】
請求項1に記載の回転変動低減装置において、前記弾性体ダンパ機構は、入力部材と,出力部材と、入力部材と出力部材との間を回転方向に連結する第1の弾性体と、ダンパマスと、出力部材に対しダンパマスを動力伝達に関与しないように接続する第2の弾性体とを備え、前記第2の出力軸は入力部材より分岐される回転変動低減装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項記載の回転変動低減装置において、筺体内における前記第2の出力軸を遊星歯車機構に対して係脱するクラッチを備えた回転変動低減装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の回転変動低減装置において、前記筐体の壁面部における前記第1の出力軸及び第2の出力軸の遊星歯車機構の対応の回転要素への連結部の軸封のための軸封装置を具備した回転変動低減装置。
【請求項8】
請求項7に記載の回転変動低減装置において、遊星歯車機構を収容する前記筺体は、原動機からの回転を出力軸より受け取り伝達する変速機構を収容し、前記第1の出力軸は変速機構の入力軸に連結され、第2の出力軸の遊星歯車機構への連結部は変速機構の入力軸と同芯の円筒状軸をなし、前記軸封装置は変速機構の入力軸と円筒状軸との間の第1のシール付ベアリングと、円筒状軸と前記筺体との間の第2のシール付ベアリングとから構成される回転変動低減装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、原動機の回転変動を低減して変速機の出力軸に伝達する回転変動低減装置に関し、特に、遊星歯車機構を備えた回転変動低減装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原動機の回転変動を低減して変速機の出力軸に伝達する回転変動低減装置として、コイルスプリングを弾性体とする弾性体ダンパ機構を遊星歯車機構に組み合わせることにより構成されたものがあり、トルクコンバータを備えた変速機におけるロックアップクラッチとの組合せにおいて、ロックアップクラッチ係合による直接駆動時の回転変動低減の目的で広く採用されている。この種の回転変動低減装置においては、大抵は、弾性体は入力部材と出力部材との間において回転方向に配置され、キャリア、リングギヤ及びサンギヤからなる遊星歯車機構の回転要素の一つが入力部材に、別の一つが出力部材に連結され、残りの一つの回転要素は動力伝達に関与しないように言わばフリーに配置される。フリーな回転要素は回転慣性系におけるダンパマスを増大させ、回転変動低減に寄与させることができる。弾性体ダンパ機構との回転要素の遊星歯車機構との連結態様としては、ストレート型のピニオンを使用した点で同一であるが、要素間の連結態様において微妙に相違した様々のものが提案されている(特許文献1〜3)。また、本出願人と同一人に係るものとしては、ピニオンとして所謂ラビニヨギヤを使用したものが提案されている(特許文献4)。そして、弾性体ダンパ機構を遊星歯車機構と組み合わせることにより構成された上記の回転変動低減装置は、大抵は、トルクコンバータのロックアップクラッチとの組合せにおいての使用を意図するものであった。トルクコンバータを備えた車両においては燃料消費効率の向上の観点ではロックアップクラッチの係合を低回転域から行うようになってきており、ダンパマスの増大は低回転域からのロックアップクラッチ係合動作により問題となるこもり音等の特定騒音の抑制への対策として有効な手段である。また、トルクコンバータにおいてトルク伝達媒体として使用されるトルクコンバータ油は、そのまま遊星歯車機構の歯車噛合部の潤滑に役立てることができ、弾性体ダンパ機構を遊星歯車機構と共にトルクコンバータのハウジングに収容することで潤滑専用の潤滑装置が不必要となるという好都合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−58557
【特許文献2】特開平11−159595
【特許文献3】特開平10−184799
【特許文献4】WO2016/47660
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
弾性体ダンパ機構を遊星歯車機構と組み合わせることにより構成された回転変動低減装置は、従来は、大抵は、上述のようにトルクコンバータのハウジング内での使用を意図したものであった。しかしながら、トルクコンバータ内への設置の場合、遊星歯車機構を駆動軸と同軸に設置し、外周側にコイルスプリングを配置する構成をとらざるを得ないという空間的な制約から、動作中の大きな遠心力下でのコイルスプリングの変形を受ける支持部との摩擦発生によりコイルスプリングの円滑な弾性変形に支障をきたす懸念があり、また、コイルスプリングの弾性特性の自由度の制限等の問題が生じ得るという懸念もあった。更に、トルクコンバータ内の空間的な制約はクラッチ設置等によるコイルスプリングと回転要素間の連結態様を変更といったより高度な制振特性制御への対応を困難としていた。また、市場性の観点では、弾性体ダンパ機構を遊星歯車機構と組み合わせた回転変動低減装置の優秀な制振特性の、より近年のトレンドであるハイブリッド車への適用可能性についても希求されていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係る回転変動低減装置は、原動機の回転変動を低減して出力軸に伝達する回転変動低減装置であって、原動機側の入力部材及び出力軸側の出力部材を少なくとも備え、入力部材及び出力軸間に回転方向にねじり剛性を有した弾性体を配置して構成される弾性体ダンパ機構と、複数のピニオンを回転可能に軸支して構成されるキャリアと、前記ピニオンに個別的に噛合する少なくとも2個の歯車との、都合、少なくとも3個の回転歯車要素を備えた遊星歯車機構とを備え、弾性体ダンパ機構からは前記出力軸(以下第1の出力軸)に加えて弾性体より入力部材側において回転運動を取出す第2の出力軸が分岐され、遊星歯車機構の回転要素のうち一つは前記第1の出力軸により、また、別の一つは第2の出力軸により夫々回転駆動されるようにされ、残りの少なくとも一つの動力伝達に関与しない回転要素がダンパマスとして機能するようにされ、かつ前記弾性体ダンパ機構は、遊星歯車機構を収容し、遊星歯車機構の潤滑用の潤滑油のための油浴を形成する筺体の外部に設置され、かつ前記第1の出力軸及び第2の出力軸の遊星歯車機構の対応の回転要素への連結は筺体の壁面部を介して行われるようになっている。
【0006】
遊星歯車機構を収容する前記筺体は原動機の回転を変速して出力軸に伝達する変速機構を収容するための筺体でもあり、前記第1の出力軸は変速機構の入力軸をなすようにすることができる。
【0007】
弾性体ダンパ機構は、原動機側の入力部材と,出力軸側の出力部材と、入力部材と出力部材との間を回転方向に連結する弾性体とを備え、前記第2の出力軸は入力部材より分岐させる構成とすることができる。
【0008】
弾性体ダンパ機構は、原動機側の入力部材と,第1の出力軸側の出力部材と、入力部材と出力部材との間の中間部材と、入力部材と中間部材との間を回転方向に連結する第1の弾性体と、中間部材と出力部材の間を回転方向に連結する第2の弾性体とを備え、前記第2の出力軸は入力部材より分岐される構成とすることができる。
【0009】
また、弾性体ダンパ機構は、原動機側の入力部材と,第1の出力軸側の出力部材と、入力部材と出力部材との間に設置された中間部材と、入力部材と中間部材との間を回転方向に連結する第1の弾性体と、中間部材と出力部材の間を回転方向に連結する第2の弾性体とを備え、前記第2の出力軸は中間部材より分岐させるように構成することができる。
【0010】
更に、弾性体ダンパ機構は、原動機側の入力部材と,第1の出力軸側の出力部材と、入力部材と出力部材との間を回転方向に連結する第1の弾性体と、ダンパマスと、出力部材に対しダンパマスを動力伝達に関与することなく連結する第2の弾性体とを備え、前記第2の出力軸は入力部材より分岐される。また、筺体内に延設されて来た第2の出力軸と遊星歯車機構の間に係脱するクラッチを設置することができる。
また、第1の出力軸及び第2の出力軸と筐体の壁面部との軸封のため内周側と外周側とのシール付ベアリングを設けることができる。
【発明の効果】
【0011】
弾性体ダンパ機構と遊星歯車機構とを分離して、遊星歯車機構を潤滑油の供給を得ることができる筐体内に設置することで、ドライ環境下でも安定して作動する弾性体ダンパ機構に遊星歯車機構による制振効果を付加することが可能となる。
【0012】
弾性体ダンパ機構と遊星歯車機構とを分離することで、それぞれの構造、レイアウトの設計自由度が高まり、遊星歯車機構を用いた回転変動低減装置の最適設計が可能となる。即ち、従来のトルクコンバータ内に内蔵された遊星歯車式の回転変動低減装置では、弾性体を遊星歯車機構の外周側に配置せざるを得ない構造上の制約から、弾性体に加わる大きな遠心力に対する対策から所期の制振特性を得るための弾性体の設計の自由度に制限が課されてしまう問題点(低剛性のコイルスプリングが使用できない等)があったが、本発明においては潤滑の必要な遊星歯車機構は筐体内部に配置し、潤滑の必要がない弾性体ダンパ機構を外部に配置することができるため、弾性体の設計の自由度が高くなり、弾性体ダンパ機構に求められる制振特性の設定(特に低剛性化)の制約が少なくなり、最適設計により近い設計が可能となる。
【0013】
また、弾性体ダンパ機構の構造設計の自由度を高くできることから、弾性体を介した質量要素(中間部材等)の付加が容易となり、遊星歯車機構との組合わせで、更なる制振効果の向上を期待することができきる。これを要するに、本発明は、遊星歯車機構を用いない弾性体ダンパ機構に対する、原動機からの駆動力に含まれる回転変動成分を十分減衰させて変速機構へ伝達するという遊星歯車機構を用いた弾性体ダンパ機構の優位性を最大限発揮させることを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1はこの発明の第1の実施形態の回転変動低減装置の構成を示す線図である。
図2図2はこの発明の第2の実施形態の回転変動低減装置の構成を示す線図である。
図3図3図2に線図にて示したこの発明の第2の実施形態の回転変動低減装置の要部の詳細構成を、回転中心の片側における断面図(図5のVII−VII線に沿った矢視断面図)として示したものである。
図4図4は回転変動低減装置の各部を分解状態で表す斜視図である。
図5図5図3の回転変動低減装置における弾性体ダンパ機構の組立状態における正面図である。
図6図6図5の切断線VI−VIに沿った断面図である。
図7図7図5の切断線VII−VIIに沿った断面図である。
図8図8図5の切断線VIII−VIIIに沿った断面図である。
図9図9図3に示す中間部材の好適な組み立て手順を説明する斜視図である。
図10図10はこの発明の第3の実施形態の回転変動低減装置の構成を示す線図である。
図11図11図10に線図にて示したこの発明の第3の実施形態の回転変動低減装置の要部の詳細構成を回転中心の片側における断面図として示したものである。
図12図12はこの発明の第4の実施形態の回転変動低減装置の構成を示す線図である。
図13図13はこの発明の第5の実施形態の回転変動低減装置の構成を示す線図である。
図14図14はこの発明の実施形態(第1及び第2の実施形態)における変速機入力軸の回転変動の周波数特性を従来技術との比較で示すグラフである。
図15図15はこの発明の実施形態(第1の実施形態及びクラッチを備えた第5の実施形態)における変速機入力軸の回転変動の周波数特性を従来技術との比較で示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1はこの発明の第1の実施形態の模式的線図であり、この実施形態は、原動機2(内燃機関)により発電機を駆動し、発電機により駆動輪の駆動用電動機を駆動するタイプのハイブリッド車の駆動トレーンにおける回転変動低減装置に向けられたものである。この駆動トレーンについて説明すると、原動機2はハイブリッド車の図示しない発電機を駆動するためのものである。発電機は図示されていないが、原動機2からのフライホイール3を介した回転を最適に調速して発電機に伝達するために変速機4が設けられる。変速機4は、ケーシング5(本発明の筐体)と、ケーシング5内に配置された変速機構6と、入力軸7と、出力軸8とを備える。後述の弾性体ダンパ機構と遊星歯車機構との接続のため前記入力軸7(以下第1の入力軸7)に加え第2の入力軸10を備え、第1の入力軸7と第2の入力軸10とは同芯配置され、かつ潤滑油の封止を行いつつケーシング5に軸支される。変速機構6は、一連に噛合する第1の入力軸7上の入力歯車11と、出力軸8上の出力歯車12と、入力歯車11と出力歯車12間の中間歯車14とから構成される。歯車11, 12, 14 間の噛合部の潤滑のためケーシング5には潤滑油が封止され、かつ必要あれば、潤滑油の循環のための周知の手段が設けられる。また、原動機2の出力軸側に設けたフライホイール3は原動機2の出力軸側に不可避的に出現する回転変動の対処のためのものであるが、それだけでは十分な回転変動低減がなしえないため、回転変動低減装置16が設置される。回転変動低減装置16は弾性体ダンパ機構18と遊星歯車機構20とから構成される。この発明によれば、遊星歯車機構20は、それを構成する歯車の噛合部の潤滑の必要上、変速機4のケーシング5内に設置され、変速機構6の噛合部の潤滑と共用するようにしている。他方、弾性体ダンパ機構18は、所期の動作のために潤滑油による潤滑は必要ないため、ケーシング5外に設置されている。
【0016】
この発明の回転変動低減装置16を構成する、ケーシング5外に設置される弾性体ダンパ機構18は入力部材26と、出力部材28と、入力部材26と出力部材28とを回転方向に連結する弾性体30とを具備している。入力部材26はフライホイール3を介して原動機2に連結される。弾性体ダンパ機構18は出力部材28からの第1の出力軸34と、入力部材26から分岐する第2の出力軸36を具備している。ケーシング5に設置されるこの発明の実施形態の遊星歯車機構20は、所謂ラビニヨ型の遊星歯車機構であり、段付ピニオン38(周知のように円周方向に複数が間隔をおいて配置される)を回転自在に軸支したキャリア46(図1には図示を省略(図3及び図4参照))と、段付ピニオン38の大径部38-1に内周側で噛合する小径サンギヤ40と、段付ピニオン38の小径部38-2(歯のピッチは大径部38-1と同一)に内周側で噛合する大径サンギヤ42とを具備して構成される。周知のようにラビニヨ型の遊星歯車機構は、最大5個の回転要素を備えることができるが、この実施形態では段付ピニオン38を軸支したキャリア46と、小径サンギヤ40と、大径サンギヤ42との3個の回転要素から構成される。
【0017】
そして、弾性体ダンパ機構18と遊星歯車機構20との連結関係を説明すると、出力部材28に連結される第1の出力軸34はそのまま変速機4のケーシング5内の第1の入力軸7まで延びており、この第1の入力軸7上に遊星歯車機構20の大径サンギヤ42が設置され、大径サンギヤ42は第1の入力軸7と一体回転するようにされる。そして、弾性体ダンパ機構18の入力部材26から分岐する第2の出力軸36はそのまま変速機4の第2の入力軸10まで延びており、ケーシング5内において、遊星歯車機構20の小径サンギヤ40は第2の入力軸10と一体回転するようにされる。
【0018】
以上説明の実施形態の回転変動低減装置16の動作を説明すると、弾性体30は原動機2から変速機4の第1の入力軸7に至る駆動トレーンに直列配置され、原動機2の出力トルクを変速機4に伝達し、回転変動に対しては弾性体30がそれを抑制するように機能する。他方、第1の出力軸34によりこれに連なる第1の入力軸7上の大径サンギヤ42が駆動され、第2の出力軸36によりこれに連なる第2の入力軸10上の小径サンギヤ40に駆動力が伝達される。大径サンギヤ42は段付ピニオン38の小径部38-2と噛合し、小径サンギヤ40は段付ピニオン38の大径部38-1(小径部38-2と一体)と噛合する。原動機2の出力軸に回転変動が無いとすれば段付ピニオン38は図示しないキャリア46と一体回転し、また、段付ピニオン38の小径サンギヤ40及び大径サンギヤ42に対する相対回転は生じない。他方、原動機2の出力軸の回転変動に対しては、小径部38-2と大径部38-1の歯数差により大径サンギヤ42と小径サンギヤ40とに回転数差が生じ、この回転数差に応じて段付ピニオン38は自転すると共に、段付ピニオン38はそれを回転自在に軸支する図1には図示しないキャリア46と共に公転運動を行う。このような、段付ピニオン38の自転及び公転に伴う慣性力は、弾性体ダンパ機構18の弾性体30の弾性力と相俟って原動機2からの回転変動を効果的に抑制することができる。このような本実施形態の回転変動低減装置16の動作は、従来から各種提案されているトルクコンバータのハウジング内に収納された弾性体ダンパ機構と遊星歯車機構とよりなる回転変動低減装置(特許文献1〜4)と同等の動作を達成する。そして、本実施形態においては、回転方向にねじり剛性をもたせた弾性体30を作動させる弾性体ダンパ機構18からの出力が、出力部材28からの第1の出力軸34と入力部材26からの第2の出力軸36の2系統に分けられていることにより、歯車噛合部の潤滑の必要な遊星歯車機構20をケーシング5内に設置し、潤滑の必要がない弾性体ダンパ機構18をケーシング5外に設置が可能となる。そのため、空間の大きさの制約のあるケーシング5の空間を有効利用しつつ、弾性体ダンパ機構18を、トルクコンバータのハウジングのような制約の大きい空間に配置する必要がなくなり、弾性体ダンパ機構18の設計上の大きな自由度を得ることができる。
【0019】
図2はこの発明の第2の実施形態の回転変動低減装置116の模式図であり、図1の回転変動低減装置16との相違点は、ケーシング5外に設置される弾性体ダンパ機構118のみであり、弾性体ダンパ機構118の弾性体を第1の弾性体30Aと第2の弾性体30Bとから構成し、かつ第1の弾性体30Aと第2の弾性体30Bとの間に中間部材44を配置した点が特徴であり、その他の構成については図1と相違するところがない。従って、他の部分については同一参照番号を使用するものとする。
【0020】
弾性体ダンパ機構118における第1の弾性体30Aと第2の弾性体30B間に配置される中間部材44は、原動機2から変速機4の駆動トレーンにおける捩じり振動に対する付加的なマスとなり、駆動トレーンにおけるより効果的なトルク変動成分の抑制を行うことができる。
【0021】
図3図8図2に線図として示した第2の実施形態の回転変動低減装置116を具体化した構造例を示す。図3において、ケーシング5が部分的に図示され、ケーシング5外に設置される弾性体ダンパ機構118との間の隔壁部分を5−1(図4も参照)により、また、ケーシング5の内部空間S内に配置される遊星歯車機構20及び変速機4の第1の入力軸7の支持のための隔壁を5−2(図4も参照)により示す。また、図1の変速機4もこの空間部分Sに配置されるが、そのうちの入力歯車11のみ図示される。入力歯車11は内周のスプライン11-1が第1の入力軸7のスプライン7-1に噛合され、入力歯車11は第1の入力軸7と一体回転される。遊星歯車機構20の構成として、図2にも示される段付ピニオン38と、段付ピニオン38の大径部38-1に内周側で噛合する小径サンギヤ40と、段付ピニオン38の小径部38-2に内周側で噛合する大径サンギヤ42とが示される。大径サンギヤ42は内周のスプライン42-1が第1の入力軸7のスプライン7-1に噛合され、大径サンギヤ42は第1の入力軸7と一体回転される。また、図2には省略されたキャリア46(キャリアベース46-1にキャリアプレート46-2 を溶接して構成される)が示され、キャリア46に段付ピニオン38がピン47により回転自在に軸支される(キャリア46の構成については図4も参照)。
【0022】
ケーシング5外に設置される弾性体ダンパ機構118の構成を説明すると、図3及び図4における入力部材26、出力部材28、弾性体30A, 30B及び中間部材44に関しては、基本的な構成部材として図2の概略図には示されている。また、回転軸上での入力部材26と出力部材28の位置関係は図2とは逆となっている。弾性体30A, 30Bは図4の分解図に示すように同一直径面において円周方向に交互に配置されたコイルスプリングとして実現されており、以下、弾性体30A, 30Bの代わりにコイルスプリング30A, 30Bと称するものとする。コイルスプリング30A, 30Bは回転方向に交互に3個ずつ配置されている。図4において、入力部材26は半径外方に突出したスプリング受部26-1を円周方向に離間して3個形成する。各スプリング受部26-1は回転方向に離間した一対のスプリング受座26-1a, 26-1bを備える。各スプリング受部26-1の両側にスプリング内周保持部26-2a, 26-2b、スプリング外周保持部26-9a, 26-9bが外向きに突出し曲折形成される。そして、入力部材26のスプリング受部26-1の外周部は曲折されて原動機側に軸方向へ延びた延出部26-3及びその先端のフライホイール取付部26-4を形成する。フライホイール取付部26-4 にフライホール取付け用のボルト孔26-4’が穿設される。また、入力部材26は、図2の略図における第2の出力軸36に相当する筒状部26-6と、第2の入力軸10となる筒状部26-7を形成する(図3も参照)。
【0023】
出力部材28は半径外方に突出するスプリング受部28-1を円周方向に等間隔に離間して3個備える。図4において、各スプリング受部28-1は、回転方向に離間した一対のスプリング受座28-1a, 28-1bを形成する。各スプリング受部28-1は両側において外向きに曲折されたスプリング内周保持部28-2a, 28-2b及び外周保持部28-4a, 28-4bを備える。出力部材28のスプリング受部28-1は、正面から見ると、入力部材26のスプリング受部26-1と実質的に同一形状をなし、図5の組立状態(後述中立状態)では、出力部材28のスプリング受部28-1の背後に入力部材26のスプリング受部26-1は丁度隠されてしまうため見えていない(外側のフライホイール取付部26-4は見えている)。そして、中立状態においては、入力部材26の各スプリング受部26-1の一対のスプリング受座26-1a, 26-1bは、出力部材28の対応するスプリング受部28-1の一対のスプリング受座28-1a, 28-1bと、夫々、回転方向の位置も重なっており、図5ではスプリング受座26-1a, 26-1bは括弧を付して示す。また、出力部材28の内周部にリベット孔28-3が複数形成され、組立工程においては、このリベット孔28-3は、別体の取付部材50をリベット52により出力部材28と一体化するのに使用される(図3参照)。
【0024】
図4において、中間部材44は円周方向の3箇所における外周部位において、前面補助板44´と後面補助板44″とで挟まれるようにリベット45で合体させた3ピース構造(図8も参照)をなすことが分かる。中間部材44は、前面及び後面の補助板44’, 44”と協働し、コイルスプリング30A, 30Bの収容のための窓枠状開口部44-1を円周方向に離間して等間隔に3個形成している。各窓枠状開口部44-1は、回転方向に離間した一対のスプリング受座44-1a, 44-1b(スプリング受座44-1a, 44-1bの形成には図4に示す通り前後の補助板44’, 44”のスプリング受座44-1a, 44-1bと面一をなす面も関与するが簡明のため符号は付してない)を形成し、また、スプリング受座44-1a, 44-1bに近接して、前面補助板44´と後面補助板44″は相互に離間方向に曲折部をなし、これにより、夫々、一対のスプリング外周保持部44’-1a, 44”-1a及び44’-1b, 44”-1bを形成する。中間部材44は中心部に回転中心に対する芯合状態を維持するための筒状部44-4(入力部材28用の取付部材50のボス部50-2に回転可能に嵌合される)を有しており、入力部材26及び出力部材28に、後述のように、コイルスプリング30A, 30Bにより連結される。
【0025】
図4には遊星歯車機構20の構成も描かれており、ケーシング5の隔壁部分5−1により弾性体ダンパ機構118と隔離されることが分かる。遊星歯車機構20のキャリア46はキャリアベース46-1にキャリアプレート46-2を固定して構成され、その間に4個の段付ピニオン38がピン47によって取り付けられている。小径サンギヤ40は図4においては、キャリア46により隠れて見えていないが、段付ピニオン38の大径部38-1に噛合され、大径サンギヤ42は段付ピニオン38の小径部38-2に噛合するように取り付けられる。図4には第1の入力軸7(上述のスプライン7-1, 7-2を備える)及び第1の入力軸7を支持する隔壁5−2も見えている。
【0026】
入力部材26、出力部材28、コイルスプリング30A, 30B及び中間部材44の組立について説明すると、入力部材26を中間部材44の手前においた状態で、入力部材26の延出部26-3を中間部材44の窓枠状開口部44-1に嵌まり込むように位置させる。第1のコイルスプリング30Aは、入力部材26のスプリング受部26-1のスプリング受座26-1aとこれに円周方向に近接対向する中間部材44のスプリング受座44-1aとの間に配置収容し、他方、第2のコイルスプリング30Bは中間部材44のスプリング受座44-1bとこれに円周方向に近接対向する入力部材26のスプリング受座26-1bとの間に配置収容する。即ち、一つの窓枠状開口部44-1において円周方向の中間においてスプリング受部26-1が第1のコイルスプリング30Aと第2のコイルスプリング30B間に割って入るような位置関係となる。この状態においては第1のコイルスプリング30Aと第2のコイルスプリング30Bとは設定荷重を生ずるべく収縮量が均衡し、各スプリング受部26-1はそれを収容する窓枠状開口部44-1の円周方向の中間に位置することになる。この状態において出力部材28の装着が行なわれる。即ち、出力部材28のスプリング受部28-1は入力部材26のスプリング受部26-1に上から重なるように位置され、この重なり合ったスプリング受部28-1とスプリング受部26-1間で、スプリング受座28-1aがスプリング受座26-1aと、スプリング受座28-1bがスプリング受座26-1bと、回転方向に整列位置する。そのため、出力部材28の各スプリング受部28-1を入力部材26の対応のスプリング受部26-1から軸方向に延出部26-3の内面同士28-1’, 26-3’同士で摺接させつつ挿入することができ、その結果、出力部材28と入力部材26との間に中間部材44を位置させた図3の断面図にて示す弾性体ダンパ機構118の組立て状態(作動中の弾性体ダンパ機構118の中立状態)を得ることができる。
【0027】
以上の図4図8の説明においては、弾性体ダンパ機構118を構成する中間部材44は、組立ての最初から、前面補助板44´と後面補助板44″とをリベット45により一体化した3ピース構造をなしているように説明しているが、これは、中間部材44の各部の構成をその機能との関連で説明するために好都合であることからそのようにしたものであるが、実際の好適な組立手順は、幾分様相が相違しており、また、中間部材44の構成及び機能の理解のため有益と思われるので、これを図9により説明する。図9に示すように中間部材44は前面補助板44´と後面補助板44″とは、分離された状態でかつ入力部材26が後面補助板44″と中間部材44との間に配置され、中間部材44の手前に前面補助板44´が位置される。中間部材44、前面補助板44´、後面補助板44″は、整列したリベット孔44a, 44’a. 44"aの複数の対を備える。入力部材26の延出部26-3を後面補助板44″に、延出部26-3の外周面が後面補助板44″の内周凹面44”-2(中間部材44の組立て状態で窓枠状開口部44-1の内周面となる)に沿接するように挿入する。この状態で中間部材44及び前面補助板44´を合わせ、整列したリベット孔44a, 44’a. 44"aの各対に夫々のリベット45が挿入され、先端をかしめる。その結果、中間部材44は後面補助板44″との間に入力部材26を位置させた状態で前面補助板44´及び後面補助板44″を一体化する。これに継続する、第1、第2のコイルスプリング30A, 30Bの組み付け以降の工程は図4図8により既に説明したものと同一である。
【0028】
このように組み立てられた弾性体ダンパ機構118の原動機側及び変速機側への連結を説明すると、図3において、フライホール3はリング形状をなし、入力部材26のフライホイール取付部26-4に連結板54と共にボルト58及びナット60により締結される。連結板54はボルト62によって原動機の出力軸側部材64の端面に締結される。また、入力部材26はケーシング5の隔壁部分5−1の手前で筒状部26-6を形成し、これが図2の略図における第2の出力軸36に相当し、筒状部26-6(第2の出力軸36)はそのままケーシング5内に導入される筒状部26-7を形成し、筒状部26-7は図2における変速機の第2の入力軸10を形成する。筒状部26-7は外周のスプライン歯26-7’が遊星歯車機構20の小径サンギヤ40のスプライン歯40-1とスプライン嵌合し、回転駆動力の伝達を行なう。また、出力部材28については出力部材28とリベット52にて一体連結された取付部材50が内周スプライン50-1(取付部材50の中心ボス部50-2の内周に形成)において図2の略図において第1の出力軸34でもある第1の入力軸7の先端のスプライン7-2とスプライン嵌合する。このスプライン嵌合部の外周面(中心ボス部50-2の外周面)に中間部材44の筒状支持部44-4が嵌合することにより、中間部材44は回転中心との芯合状態をいつも維持しつつ回転することができる。尚、図3において、65は弾性体ダンパ機構118の組立体を軸上に固定するためのスナップリング等の締結具を示す。また、変速機4内部の各部のスラスト軸受74, 75, 76 で示す。
【0029】
この実施形態における弾性体ダンパ機構118の二本の出力軸と遊星歯車機構20を内臓した変速機の二本の入力軸との軸封構造について説明すると、変速機4の弾性体ダンパ機構118側の隔壁部分5−1に内周側軸受66と外周側軸受68とが同芯に配置される。内周側軸受66も外周側軸受68もいずれもそれ自体は周知のシール付ベアリング(ボールベアリング等)として構成することができる。即ち、隔壁部分5−1側においては、内周側軸受66は変速機回転軸7と入力部材26の筒状部26-6間に配置され、外周側軸受68は筒状部26-6と隔壁部分5−1の内周部5−1´間に配置される。これにより、弾性体ダンパ機構118とケーシング5間の同軸の二本の入・出力軸のケーシング5の隔壁部による支持及び軸封を達成することができる。また、第1の入力軸7の隔壁5−2側の支持のため軸受70が設けられる(図4も参照)。
【0030】
図3図8の回転変動低減装置116の動作を、弾性体ダンパ機構118を中心に説明すると、図5は上述の通り回転変動が無い場合を示す。この状態から入力部材26が時計方向に捻られると、入力部材26の各スプリング受部26-1がスプリング受座26-1aを介して第1のコイルスプリング30Aを圧縮し、圧縮された第1のコイルスプリング30Aは、窓枠状開口部44-1のスプリング受座44-1aを介して中間部材44を捻り、中間部材44の捻りはスプリング受座44-1bを介して第2のコイルスプリング30Bを圧縮し、圧縮された第2のコイルスプリング30Bは、スプリング受部28-1のスプリング受座28-1bを介して出力部材28を時計方向に捻る。逆に、入力部材26が反時計方向に捻られると、入力部材26の各スプリング受部26-1がスプリング受座26-1bを介して第2のコイルスプリング30Bを圧縮し、圧縮された第2のコイルスプリング30Bは、窓枠状開口部44-1のスプリング受座44-1bを介して中間部材44を捻り、中間部材44の捻りはスプリング受部44-1aを介して、第1のコイルスプリング30Aを圧縮し、圧縮された第1のコイルスプリング30Aは、出力部材28のスプリング受部28-1のスプリング受座28-1aを介し出力部材28を反時計方向に捻る。このような捻り振動におけるコイルスプリング30A, 30Bの捻り弾性と遊星歯車機構20におけるフリーな回転要素であるキャリア46の公転及び段付ピニオン38の自転とにより回転変動の抑制を行なうことができ、また、コイルスプリング30A, 30B間の中間部材44の質量要素の付加による一層の回転変動抑制効果の増大を得ることができる。
【0031】
図10は本発明の第3の実施形態の回転変動低減装置216の模式的線図を示し、図2の実施形態と類似するが、相違点は、第2の出力軸36の分岐を図2の入力部材26から中間部材44として弾性体ダンパ機構218に構成したものである。出力軸34, 36の遊星歯車機構20の回転要素に対する連結態様は同様であり、出力軸34, 36に夫々連結される入力軸7, 10上の大径、小径のサンギヤ42, 40に段付ピニオン38の小、大経部38-2, 38-1を噛合させる構成は相違がない。原動機2の出力における回転変動は中間部材44と出力部材28との回転数差として現れ、中間部材44と出力部材28との異なる回転数の回転により大、小径のサンギヤ42, 40は異なった回転数により駆動され、これは、動力伝達に関与しないフリーな回転要素であるキャリア46の公転及び段付ピニオン38の自転とによりコイルスプリング30A, 30Bと相俟って回転変動の抑制を行なう。
【0032】
図11図10の概略構造を第2の実施形態の図3と同様な実機での具体的断面図として画いたものであり、図3との相違点を中心に説明すると、中間部材44が第2の出力軸36として筒状部44-5を形成し、ケーシング5の隔壁5−1に導入され、変速機4の第2の入力軸10として一体の筒状部44-6を形成し、筒状部44-6は遊星歯車機構20の小径サンギヤ40とスプライン嵌合される。図3と同様にシール付の内周側軸受66と外周側軸受68とが同芯に配置される。内周側軸受66は変速機4の第1の入力軸7と中間部材44の筒状部44-5間に配置され、外周側軸受68は中間部材44の筒状部44-5と隔壁部分5−1の内周部5−1’間に配置される。これにより、弾性体ダンパ機構218とケーシング5間の同軸の二本の入・出力軸のケーシング5の隔壁部による支持及び軸封を達成することができる。この実施形態では入力部材26は出力軸側にはフリーであり、中間開口部26-5が中間部材44の筒状部44-5と同芯を維持しつつスムーズに回転可能に嵌合される。
【0033】
図12は本発明の第4の実施形態の回転変動低減装置316を示す。この実施形態の回転変動低減装置316は第1の実施形態と基本構成は同様であるが、出力部材28に対してフリーに(動力伝達とは無関係に)第2の弾性体80を介してダンパマス82を取付けた点が相違する。この実施形態においては、第2の弾性体80及びダンパマス82は駆動力の伝達には関与せず、所謂動吸振器を構成している。遊星歯車機構20に動吸振器を付加することで、原動機2からの回転変動への制振特性の変更、拡張を可能とする。
【0034】
図13は本発明の第5の実施形態の回転変動低減装置416を示す。この実施形態も第1の実施形態と基本構成は同様であるが、調整クラッチ88が変速機4内に前置される点が相違する。調整クラッチ88は遊星歯車機構20の入力部である小径サンギヤ40と弾性体ダンパ機構18の第2の出力軸36間に設置されている。調整クラッチ88は、周知の摩擦クラッチとして構成することができる。調整クラッチ88は、出力軸36から遊星歯車機構20への入力を締結、遮断、及び不完全締結(任意に滑らせる)の機能を持たせることができる。調整クラッチ88の締結状態では遊星歯車機構20、即ち、遊星ダンパの制振機能を有効とさせ、調整クラッチ88の締結状態では遊星歯車機構20を遮断することで遊星ダンパの機能を無効とすることができる。また、使用状況によっては調整クラッチ88を滑らせ不完全締結状態とすることで、過大な入力に対する遊星歯車機構の保護や、振動系が必要とするヒステリシスの発生による制振効果の向上を図ることができる。
【0035】
図14及び図15は原動機2から出力軸までの車両駆動系をモデル化し、数値解析(この解析法は周知のため結果のみ示す)後の変速機入力軸の回転変動の周波数特性を示しており、aはコイルスプリングのみの従来のダンパ、bは第1の実施形態(図1)等の中間マスの無い遊星ダンパ、cは第2の実施形態(図2)等の中間マスを備えた遊星ダンパの結果を示し、図14にて従来のダンパ特性aと比較して遊星ダンパの特性bは一時ピークの周波数が低周波数側に出る(中間マスを付けるとcのように一層低周波数側となる)ため、騒音対策上問題となる20ヘルツ付近の低回転での回転変動を良く抑えられる点で従来のダンパ特性aより優れていることが分かる。騒音対策としては20ヘルツ付近の回転変動を抑えることが特に有利なためここに遊星ダンパの優位性がある。しかしながら、60ヘルツ付近を越えた当たりの周波数(高回転)側では従来のダンパの特性aが遊星ダンパの特性b、cより優れており、これが遊星ダンパの弱点ともなっていると言い得る。
【0036】
図15は、図13の実施形態により調整クラッチ88を付けた場合をd, d´により示し、f1の周波数は50ヘルツ付近のクラッチを遮断するポイントを示しており、f1までは調整クラッチ88の締結により遊星ダンパの特性bと略一致する周波数特性dとなり、調整クラッチ88を遮断するf1以降の周波数ではd´のように従来ダンパの特性aに近い特性が得られ、スプリングのみの従来ダンパと遊星ダンパとの都合の良いところを継ぎ合わせたより理想的な特性を得ることができる。
符号の説明
【0037】
2…原動機(内燃機関)
3…フライホイール
4…変速機
5…ケーシング(本発明の筐体)
5-1, 5-2…ケーシングの隔壁部分
6…変速機構
7…変速機構の第1の入力軸
8…変速機構の出力軸
10…変速機構の第2の入力軸
11…変速機構の入力歯車
16, 116, 216, 316, 416…回転変動低減装置
18, 118, 218…弾性体ダンパ機構
20…弾性体ダンパ機構の遊星歯車機構
26…弾性体ダンパ機構の入力部材
26-1…スプリング受部
26-1a, 26-1b…スプリング受座
28…弾性体ダンパ機構の出力部材
28-1…スプリング受部
28-1a, 28-1b…スプリング受座
30……弾性体ダンパ機構の弾性体
30A…第1の弾性体(コイルスプリング)
30B…第2の弾性体(コイルスプリング)
34…弾性体ダンパ機構の第1の出力軸
36…弾性体ダンパ機構の第2の出力軸
38…遊星歯車機構の段付ピニオン
40…遊星歯車機構の小径サンギヤ
44…中間部材
44-1…窓枠状開口部
44-1a, 44-1b …スプリング受座
44´…前面補助板
44″…後面補助板
46…遊星歯車機構のキャリア
46-1…キャリアプレート
46-2…46-2
54…連結板
64…原動機の出力軸側部材
66…内周側軸受
68…外周側軸受
80…第2の弾性体
82…ダンパマス
88…調整クラッチ
【要約】
遊星歯車機構を備えた回転変動低減装置を構成する弾性体ダンパ機構18は、変速機4のケーシング5外に配置され、原動機側の入力部材26と第1の出力部材28を備える。入力部材26及び出力部材28間に回転方向にねじり剛性を有した弾性体30が配置される。弾性体ダンパ機構18からは第1の出軸34に加えて弾性体30より入力部材26側において第2の出力軸36が分岐される。変速機の第1及び第2の出力軸34, 36はケーシング5の壁面部を介してケーシング内に導入される。遊星歯車機構16は変速機4のケーシング5内に配置され、遊星歯車機構16の3個の回転要素のうち一つは第1の出力軸34により、別の一つは第2の出力軸36により夫々回転駆動される。残りの動力伝達に関与しない回転要素がダンパマスとして機能するようにされる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15