(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、前記イオン感応絶縁膜と、前記イオン感応絶縁膜から空間的に離れた位置に固定された酵素との間にセンシング対象物質の流れを制御する機構を有することを特徴とする請求項1又は8に記載のバイオセンサ。
前記プロセッサは、前記第一の電圧が閾値以上のときに、前記ゲート電極に印加する電圧を制御することを特徴とした請求項14から18までのいずれかひとつに記載の検出装置。
前記プロセッサは、単位時間間隔で前記第一の電圧を変更するように前記電圧印加回路を制御することを特徴とした請求項14から19までのいずれかひとつに記載の検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については同一の符号を用いる。図面に描かれた形状は、当業者が理解しやすいように描かれているため、実際の寸法及び比率とは必ずしも一致していない。
以下の各実施形態では、TFTを用いて構成されたバイオセンサについて説明するので、バイオセンサをTFTバイオセンサと呼ぶ。
【0027】
(第一の実施形態)
図1は、第一の実施形態のTFTバイオセンサ101を示す断面図である。
【0028】
TFTバイオセンサ101は、ソース電極13s及びドレイン電極13dが接続された半導体活性層12を備える。半導体活性層12の一方の面(第一の面、
図1では下面)には、ゲート絶縁膜としての熱酸化膜10及びゲート電極としてのシリコン基板11が設けられている。また、半導体活性層12の他方の面(第二の面、
図1では上面)には、イオン感応絶縁膜14及び保護絶縁膜15が設けられている。また、TFTバイオセンサ101は、イオン感応絶縁膜14及び保護絶縁膜15から空間的に離れた位置に参照電極17を備える。
なお、イオン感応絶縁膜14の単位面積当たりの静電容量がゲート絶縁膜(熱酸化膜10)の単位面積当たりの静電容量よりも大きくなっている。更に、TFTバイオセンサ101は、イオン感応絶縁膜14及び保護絶縁膜15から空間的に離れた位置に、基質特性を有する酵素19を一面に配置した第二の絶縁性基板18を備える。このとき、TFTを形成されたシリコン基板11と第二の絶縁性基板18(酵素19)は
図1に示したとおり対向させる構造が望ましいが、二次元的に配置しても良い。
シリコン基板11と第二の絶縁性基板18との間の空間にセンシング対象物質16を含む溶液が満たされる。保護絶縁膜15はイオン感応絶縁膜14の上面の、半導体活性層12のチャネル領域と重なる領域以外の領域を被覆している。イオン感応絶縁膜14は、保護絶縁膜15に被覆されていない領域を有する。イオン感応絶縁膜14は、この領域でセンシング対象物質16を含む溶液と接する。
また、酵素反応により生成した水素イオンの拡散を早め、TFTセンサの応答性を向上させるため、イオン感応絶縁膜14と第二の絶縁性基板18との間隔は可能な限り狭めた方が良い。イオン感応絶縁膜14は、センシング対象物質16を含む溶液と接触する界面において、所定のイオンに感応して当該界面の電位を変動させる性質を有する。イオン感応絶縁膜14は、「ion-sensitive insulator」、「pH-sensitive transducer」とも呼ばれる。
【0029】
そして、TFTバイオセンサ101は、ソース電極13sとゲート電極(シリコン基板11)との間の電位差を読み取る電圧検出部20、及び、ソース電極13s又はドレイン電極13dに流れる電流を読み取る電流検出部21の、どちらか一方を更に備えている。なお、
図1では、電圧検出部20及び電流検出部21の両方を図示している。
【0030】
(実施例1)
次に、第一の実施形態を更に具体化した実施例1を、
図1に基づき説明する。まず、実施例1のTFTバイオセンサ101の製造方法について説明する。
TFTバイオセンサ101の製造装置(以下、製造装置と記す)は、シリコン基板11に熱酸化膜10を200nmの膜厚で形成する。熱酸化膜10の代わりに、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法やスパッタ法により成膜された酸化シリコン膜や窒化シリコン膜などを用いても良い。なお、製造装置という用語は、スパッタやCVD等の成膜装置、有機物の塗布機、アニール炉など、バイオセンサを製造するために必要となる個別装置の総称として用いている。
【0031】
そして、製造装置は、熱酸化膜10が形成されたシリコン基板11上に、インジウム−ガリウム−亜鉛−酸素からなる酸化物半導体膜(以下、In−Ga−Zn−Oと略す)を50nmの膜厚で、メタルマスクを用いてスパッタ法により成膜する。この成膜では、In−Ga−Zn−Oからなる焼結体ターゲットが用いられ、基板は加熱されず、アルゴンガスと酸素ガスとの混合ガス雰囲気中でのDC(Direct Current)スパッタ法が採用された。製造装置は、成膜後に大気中で400℃かつ1時間のアニール処理を行う。この酸化物半導体膜をパターニングすることにより、島状の半導体活性層12が形成される。
【0032】
続いて、製造装置は、モリブデン金属をメタルマスクを用いてDCスパッタすることにより、ソース電極13s及びドレイン電極13dを形成する。ソース電極13s及びドレイン電極13dの膜厚は50nmである。更に、製造装置は、酸化タンタルからなる200nmのイオン感応絶縁膜14を、メタルマスクを用いてスパッタ法により成膜する。この成膜では、Ta−Oからなる焼結体ターゲットが用いられ、基板は加熱されず、アルゴンガスと酸素ガスとの混合ガス雰囲気中でのRF(Radio Frequency)スパッタ法が採用された。
【0033】
その後、製造装置は、大気中で300℃かつ1時間のアニールを行う。熱酸化膜10の比誘電率は4程度であり、スパッタ成膜した酸化タンタルの比誘電率は20程度であった。いずれの膜厚も200nmであるため、これらの比誘電率値の違いが反映されて、酸化タンタルから成るイオン感応絶縁膜14の単位面積当たりの静電容量は、熱酸化膜10から成るゲート絶縁膜の単位面積当たりの静電容量よりも5倍程度大きい。
【0034】
続いて、製造装置は、半導体活性層12のチャネル領域の直上のイオン感応絶縁膜14の表面を露出させ、それ以外を保護絶縁膜15で被覆する。保護絶縁膜15にはシリコン樹脂を用いることが望ましいが、適当な耐水性、絶縁性が得られれば、フォトレジスト、エポキシ樹脂等でも良い。
このようなTFTをセンシング対象物質16を含むリン酸緩衝生理食塩水に浸漬させる。このとき、イオン感応絶縁膜14の露出した領域は、リン酸緩衝生理食塩水と接する。なお、リン酸緩衝生理食塩水は、前記した溶液の一例である。また、飽和KCl溶液で満たされたAg/AgCl電極を参照電極17として使用し、対象物質16を含むリン酸緩衝生理食塩水に同時に浸漬させる。
【0035】
酵素19の主要成分は、例えば、グルコースオキシダーゼである。具体的には、酵素19は、10%グルコースオキシダーゼと、10%牛血清アルブミンと、8%グルタルアルデヒドとの混合物である。製造装置は、酵素19を、第二の絶縁性基板18の一面に滴下し、室温で2時間乾燥させる。この乾燥により、酵素19は、第二の絶縁性基板18に固定された。
固定後の酵素19は、pH6.5,0.1mol/Lのリン酸緩衝液に浸漬され、4℃で保存される。製造装置は、酵素19を固定した第二の絶縁性基板18を、センシング対象物質16を含むリン酸緩衝生理食塩水に浸漬させる。ここで、第二の絶縁性基板18は、TFTを形成したシリコン基板11に対向している。このとき、第二の絶縁性基板18とシリコン基板11間の距離を制御するため、スペーサーを介して両者を貼り合わせも良い。リン酸緩衝生理食塩水は、酵素19の至適環境であるpH6.8、液温37℃に調整されている。
【0036】
上述のように構成されたTFTバイオセンサ101において、発明者は、はじめに、TFTバイオセンサ101のドレイン電極13dに一定電位0.5Vを与え、ソース電極13s及び参照電極17をグランド電位(0V)とし、ゲート電圧Vgを0V〜+7Vの範囲で変化させて、Vg−Id特性(ゲート電圧Vgに対するドレイン電流Idの特性)を測定した。
【0037】
図2は、実施例1のTFTバイオセンサ101のVg−Id特性を示すグラフである。
図2の上側に示しているグラフが、空気中でのVg−Id特性測定の結果であり、下側に示しているグラフが、リン酸緩衝生理食塩水中でのVg−Id特性測定の結果である。液体に浸漬することによりVg−Id特性がプラス側にシフトとすることが分かる。次に、発明者は、前記したリン酸緩衝生理食塩水中に、最終濃度が所定の値になるように調整されたグルコース水溶液を添加する。なお、リン酸緩衝生理食塩水中には、TFTバイオセンサ101、及び参照電極17、及び酵素19を固定した第二の絶縁性基板18が浸漬されている。このとき、リン酸緩衝生理食塩水のpHが変化しないようにするため、添加するグルコースは同様のリン酸緩衝生理食塩水に溶解させる。
【0038】
ここで、添加されたグルコースとグルコースオキシダーゼ(酵素19)との間で、以下の反応が進行する。
β−D−グルコース + O
2 → D−グルコノ−δ−ラクトン + H
2 O
2
(触媒:グルコースオキシダーゼ)
このとき、生成するD−グルコノ−δ−ラクトンは加水分解によりグルコン酸に変化し、グルコン酸のpKa(酸解離定数)は約3.8であるため、溶液のpH変化をもたらすことになる。このpH変化は、液中のグルコース濃度に比して増加するため、pH変化に起因するTFTバイオセンサ101のVg−Id特性シフトからグルコース濃度を測定することができる。
【0039】
本実施例では、Vref−Id特性のVthシフトから、界面電位、或いは、イオン濃度を検知する関連技術と異なり、Vg−Id特性(ゲート電極電圧−ドレイン電流特性)のVthシフトから所望の値を検知する。
実施例1のTFTバイオセンサ101は、イオン感応絶縁膜14上にセンシング対象物質16を配置した際に、イオン感応絶縁膜14とセンシング対象物質16との間に発生した電位差(界面に発生した電気二重層電位に対応)を、イオン感応絶縁膜14の単位面積当たりの静電容量をゲート絶縁膜(熱酸化膜10)の単位面積当たりの静電容量で除した比の値により増幅して検出する検出部を有する。検出部は、例えば、イオン感応絶縁膜14上に発生した電位差に、前記静電容量の比の値を乗じた電位差を読み取る。水素イオン濃度の変化に対する電気二重層電位の変化の最大値は59mV/pHであるが、本実施例1では、イオン感応絶縁膜14の単位面積当たりの静電容量をゲート絶縁膜(熱酸化膜10)の単位面積当たりの静電容量で除した比の値が1よりも大きいため、59mV/pHよりも高い感度を実現することができる。つまり、本実施例1のTFTバイオセンサ101は、59mV/pHよりも高いpH感度を有するバイオセンサである。
【0040】
また、実施例1のTFTバイオセンサ101は、イオン感応絶縁膜14から空間的に離れた位置に生体分子認識機構(例えば、酵素19)を有するバイオセンサである。
空間的に離れた位置に生体分子認識機構を有する意義は、前述の高感度化を実現するための構成を損なわない点にある。イオン感応膜に生体高分子を固定し、イオン感応膜上に生体分子認識機構を付与した場合、イオン感応膜と固定化した生体高分子の単位面積当たりの静電容量をゲート絶縁膜の単位面積当たりの静電容量で除した比の値によりpH感度が決まる。一般に生体高分子の静電容量は、イオン感応絶縁膜に比して非常に小さい。そのため、溶液とイオン感応絶縁膜14とが接する領域の一面に生体高分子を固定した場合、本実施の形態の原理に基づく高感度化を実現するのが困難になる。
更に、pH測定部から独立した生体物質認識部位を有する利点は、両者が相互に機能阻害することを抑制できる点にある。生体物質認識においては、pH測定機能を阻害すること無く、生体高分子固定部の大面積化、厚膜化を図ることができ、酵素反応、分子認識反応を効率的に進行させることが可能となる。よって、実施例1のTFTバイオセンサ101では、高感度な界面電位検出機能を有しつつ、生体分子認識機構の効率化を図ることで、低濃度生体物質の測定への適用が可能となる。
【0041】
本実施例では、関連技術とは異なり、参照電極17ではなくゲート電極に印加した電圧対ドレイン電流特性のしきい値電圧シフト(Vthシフト)からセンシングを行う。このような検出法を用いる場合、イオン感応絶縁膜14の単位面積当たりの静電容量をゲート絶縁膜(熱酸化膜10)の単位面積当たりの静電容量よりも大きくすることで、ネルンスト限界よりも高い感度での検出が理論的に可能になる。
本実施例の効果は、決してネルンスト理論を否定するものではなく、ネルンスト理論に従ってイオン感応絶縁膜14の表面に発生した電気二重層電位差が、ボトムゲート電界とトップゲート電界との相互作用を通じて“増幅”される結果である。この増幅効果は、イオン感応絶縁膜14の単位面積当たりの静電容量をゲート絶縁膜(熱酸化膜10)の単位面積当たりの静電容量より大きくすることで実現される。この効果は、外部回路による増幅に依存せず、各種の揺らぎに影響されることなくTFTバイオセンサ101自身の本来的な高感度化を実現するので、関連技術の課題を解決することができる。
【0042】
本実施例では、酵素19にグルコースオキシダーゼを用いた例を説明したが、これに限定されることは無く、溶液のpH変化をもたらす酵素反応であれば、いずれも適用することができる。
【0043】
更に、酵素19の活性が低下した際は、酵素19の基板(第二の絶縁性基板18)以外を保持したまま、第二の絶縁性基板18及び酵素19を交換することで、初期の酵素19の活性を再び得ることができる。その結果、イオンセンサ全体の寿命が長くなり、使用者の負担が少ないイオンセンサを利用者に提供することができる。
また、第二の絶縁性基板18及び酵素19を交換できる機能は、異なる酵素への入れ替えが可能であることと同義である。この交換機能により、単一の構成で異なる項目を測定できるバイオセンサを提供することができる。
【0044】
上記では、Vg−Id特性のしきい値電圧シフトからセンシング対象物質16中のイオン濃度を測定する手法を説明した。このほかに、ある一定のゲート−ソース間電圧時におけるソース−ドレイン間電流値を電流計により読み取り、その変化からイオン濃度変化を検知することもできる。
【0045】
ここで、半導体活性層12には、InGaZnOを用いたが、これには限定されない。例えば、アモルファスシリコン、ポリシリコン、ZnO、InSnZnOなどを用いることができる。また、自由ホールを蓄積しにくいワイドバンドギャップ半導体を用いることが望ましい。
【0046】
イオン感応絶縁膜14は、酸化タンタルに限られるわけではないが、比誘電率の高い材料を用いることが望ましい。例えば、酸化タンタル以外では、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、窒化シリコン膜等でも良いし、これらの任意の積層膜でも良い。また、ゲート絶縁膜は、酸化シリコンに限られるわけではなく、窒化シリコンや酸化アルミニウム等でも良いし、これらの任意の積層膜でも良い。
以上説明したように、本実施の形態のイオンセンサは、イオン感応絶縁膜14の表面に発生した電気二重層電位を増幅して検出できる。そのため、微小な水素イオン濃度変化、即ちpH変化を検出することができる。さらに、pHセンシング部単位面積当たりの酵素量を増やすことできる。そのため、酵素反応によるpH変化量を大きくすることができ、生体物質の検出感度を高くすることができる。
【0047】
(第二の実施形態)
図3は、第二の実施形態のTFTバイオセンサ201を示す断面図である。
第二の実施形態のTFTバイオセンサ201は、第一の実施形態のTFTバイオセンサ101と同様に、ソース電極13s及びドレイン電極13dが接続された半導体活性層12を備える。また、半導体活性層12の一方の面(第一の面、
図3では下面)には、ゲート絶縁膜としての熱酸化膜10及びゲート電極としてのシリコン基板11が設けられている。また、半導体活性層12の他方の面(第二の面、
図3では上面)には、イオン感応絶縁膜14及び保護絶縁膜15が設けられている。また、TFTバイオセンサ201は、イオン感応絶縁膜14及び保護絶縁膜15から空間的に離れた位置に参照電極17を備える。なお、イオン感応絶縁膜14の単位面積当たりの静電容量がゲート絶縁膜(熱酸化膜10)の単位面積当たりの静電容量よりも大きくなっている。更に、TFTバイオセンサ201では、前記イオン感応絶縁膜14の表面(上面)の保護絶縁膜15に被覆されていない領域のうち、イオン感応絶縁膜14の下面が半導体活性層12と接する領域の直上を除く部位に酵素19が固定されている。
【0048】
そして、TFTバイオセンサ201は、ソース電極13sとゲート電極(シリコン基板11)との間の電位差を読み取る電圧検出部20、及び、ソース電極13s又はドレイン電極13dに流れる電流を読み取る電流検出部21の、どちらか一方を更に備えている。なお、
図3では、電圧検出部20及び電流検出部21の両方を図示している。
【0049】
(実施例2)
次に、第二の実施形態を更に具体化した実施例2を、
図3及び
図4に基づき説明する。
図4は、
図3のTFTバイオセンサ201の一部の模式図である。
図4、
図5における符号A1〜A4は、領域を示す符号であり、物質(半導体活性層12、イオン感応絶縁膜14、酵素19など)を示す符号ではない。
実施例2のTFTバイオセンサ201の製造装置は、シリコン基板11に熱酸化膜10を200nmの膜厚で形成する。熱酸化膜10の代わりに、プラズマCVD法やスパッタ法により成膜された酸化シリコン膜や窒化シリコン膜などを用いても良い。
【0050】
そして、製造装置は、熱酸化膜10が形成されたシリコン基板11上に、In−Ga−Zn−Oからなる50nmの酸化物半導体膜をスパッタ法により成膜する。製造装置は、酸化物半導体膜上にフォトリレジストをパターニングした後、シュウ酸によりエッチングすることで、所定島状の半導体活性層12を形成する。製造装置は、半導体活性層12の形成後に大気中で400℃かつ1時間のアニールを行う。
【0051】
続いて、製造装置は、チタンをDCスパッタし、フォトリレジストをパターニングした後、フッ素ガス系プラズマ(例えばSF
6 やCF
4 )でエッチングすることで、ソース電極13s及びドレイン電極13dを形成する。このとき、In−Ga−Zn−Oはフッ素ガス系プラズマによりエッチングされないため、エッチストップ層を形成することなく、所望の電極形状を作製することができる。なお、ソース電極13s及びドレイン電極13dの膜厚は50nmである。
【0052】
更に、製造装置は、酸化ハフニウムからなる200nmのイオン感応絶縁膜14を、メタルマスクを用いてスパッタ法により成膜する。この成膜では、Hf−Oからなる焼結体ターゲットが用いられ、基板は加熱されず、アルゴンガスと酸素ガスとの混合ガス雰囲気中でのRFスパッタ法が採用された。その後、製造装置は、大気中で300℃かつ1時間のアニールを行う。なお、半導体活性層12の上面は、ソース電極13s及びドレイン電極13dが形成されていない領域(
図4中の第二の領域A2)でイオン感応絶縁膜14と接する。
【0053】
熱酸化膜10の比誘電率は4程度であり、スパッタ成膜した酸化ハフニウムの比誘電率は20程度であった。いずれの膜厚も200nmであるため、これらの比誘電率値の違いが反映されて、酸化ハフニウムから成るイオン感応絶縁膜14の単位面積当たりの静電容量は、熱酸化膜10から成るゲート絶縁膜の単位面積当たりの静電容量よりも5倍程度大きい。
【0054】
その後、製造装置は、半導体活性層12のチャネル領域の直上のイオン感応絶縁膜14の表面(
図4中の第一の領域A1)を露出させ、第一の領域A1以外の周縁部分を保護絶縁膜15で被覆する。保護絶縁膜15にはポリイミド樹脂を用いている。第一の領域A1は、半導体活性層12及びイオン感応絶縁膜14が接する第二の領域A2の直上の領域(
図4中の第三の領域A3)を含み、第二の領域A2よりも大きく形成される。次に、製造装置は、前記イオン感応絶縁膜14の第一の領域A1のうち、第三の領域A3を除く第四の領域A4に、グルコース脱水素酵素19を固定する。グルコース脱水素酵素19を初めとしたタンパク質は、ガラス等の酸化物へ非特異的に吸着する性質がある。
【0055】
そのため、製造装置は、酵素水溶液を目的の部位(イオン感応絶縁膜14の第四の領域A4)に滴下し、乾燥させる。これにより、酵素19は、目的の部位に容易に固定される。また、酵素19を強固に固定するためには、自己集積化単分子膜(以下「SAM(Self- Assembled Monolayer)膜」という。)をリンカーとして挿入することが望ましい。SAM膜の成膜方法としては、スピンコーティング、ディップコーティング、真空蒸着を挙げることができるが、これらには限定されない。SAM膜の材質としては、チオール基を介して表面を修飾するものや、シランカップリング剤を用いることができるが、これらに限定はされず、適度な結合強度が得られれば良い。
以上説明したように、イオン感応絶縁膜14は、第一の領域A1以外の周縁部分が保護絶縁膜15により覆われている。半導体活性層12の第二の面(
図4では上面)は、イオン感応絶縁膜14と接する第二の領域A2を有する。第一の領域A1は、第二の領域A2と重なる第三の領域A3と、第三の領域A3以外の第四の領域A4とを有する。酵素19は、第四の領域A4に固定される。イオン感応絶縁膜14は、第三の領域A3で溶液と接する。
第四の領域A4はTFTのソースドレイン電極上に位置しており、この領域の電位変化は感度に影響を与えない。従って、この感度に影響を与えない領域A4を酵素19の領域として有効活用できる。
【0056】
(実施例3)
次に第二の実施形態の変形例として実施例3を、
図5を用いて説明する。
図5は、実施例3のTFTバイオセンサ301を示す断面図である。
【0057】
実施例3のTFTバイオセンサ301の製造装置は、シリコン基板11に熱酸化膜10を200nmの膜厚で形成する。次に、製造装置は、金属クロムをメタルマスクを用いたDCスパッタ法により成膜し、パターニングし、第一のゲート電極22を形成する。続いて、製造装置は、メタルマスクを用いてRFスパッタ法により、アルゴンガスと酸素ガス雰囲気中で酸化シリコン膜を成膜し、第一のゲート絶縁膜23を形成する。この成膜では、ターゲットとしては、酸化シリコン及び金属シリコンのいずれも用いることができ、酸素分圧を適切に制御することで所望の耐圧が得られる。
【0058】
そして、製造装置は、第一のゲート絶縁膜23上に、In−Ga−Zn−Oからなる50nmの酸化物半導体膜をメタルマスクを用いてスパッタ法により成膜し、半導体活性層12を形成する。製造装置は、半導体活性層12の形成後に大気中で400℃かつ1時間のアニールを行う。続いて、製造装置は、アルミニウムをメタルマスクを用いてDCスパッタし、ソース電極13s及びドレイン電極13dを形成する。なお、ソース電極13s及びドレイン電極13dの膜厚は100nmである。
【0059】
更に、製造装置は、酸化タンタルからなる200nmのイオン感応絶縁膜14を、メタルマスクを用いてスパッタ法により成膜する。この成膜では、Ta−Oからなる焼結体ターゲットが用いられ、基板は加熱されず、アルゴンガスと酸素ガスとの混合ガス雰囲気中でのRFスパッタ法が採用された。その後、製造装置は、大気中で300℃かつ1時間のアニールを行う。熱酸化膜10の比誘電率は4程度であり、スパッタ成膜した酸化タンタルの比誘電率は20程度であった。いずれの膜厚も200nmであるため、これらの比誘電率値の違いが反映されて、酸化タンタルから成るイオン感応絶縁膜14の単位面積当たりの静電容量は、熱酸化膜10から成るゲート絶縁膜の単位面積当たりの静電容量よりも5倍程度大きい。
【0060】
その後、製造装置は、半導体活性層12のチャネル領域の直上のイオン感応絶縁膜14の表面(第一の領域A1)を露出させ、第一の領域A1以外を保護絶縁膜15で被覆する。保護絶縁膜15にはシリコン樹脂を用いたが、適切な耐水性、絶縁性が担保されればアルミナ等の無機絶縁体を用いても良い。
【0061】
続いて、製造装置は、ディスペンサーにより酵素水溶液をイオン感応絶縁膜14の第一の領域A1上に滴下し、室温で乾燥させる。これにより、酵素19は、イオン感応絶縁膜14の第一の領域A1上に固定される。酵素19は、例えば、第一の領域A1上に一定間隔またはランダムに設けられる。このとき重要なのは、イオン感応絶縁膜14が適度に露出し、イオン感応絶縁膜14とセンシング対象物質16との接触が確保されることである。この結果、生体物質認識機構とpHセンシング機構とをイオン感応絶縁膜14上に併せ持ち、相互に機能阻害を誘発しないTFTバイオセンサを提供することができる。
【0062】
実施例2のTFTバイオセンサ201及び実施例3のTFTバイオセンサ301においても、上述の実施例1のTFTバイオセンサ101と同様に、
図2に示すようなVg−Id特性が得られる。よって、Vg−Id特性のしきい値電圧シフトからセンシングを行うことができる。また、実施例2,3においても、TFTバイオセンサ201,301は、イオン感応絶縁膜14とセンシング対象物質16との間に発生した電位差に、イオン感応絶縁膜14の単位面積当たりの静電容量をゲート絶縁膜(熱酸化膜10)の単位面積当たりの静電容量で除した比の値を乗じることにより前記電位差を増幅して検出する検出部を有する。これにより、高いpH感度を有するバイオセンサを実現できる。
【0063】
(第三の実施形態)
図6は、第三の実施形態のTFTバイオセンサ401を示す断面図である。
【0064】
第三の実施形態のTFTバイオセンサ401は、ソース電極13s及びドレイン電極13dが接続された半導体活性層12を備える。半導体活性層12の一方の面(第一の面、
図6では下面)には、第一のゲート絶縁膜としての熱酸化膜10及び第一のゲート電極としてのシリコン基板11が設けられている。半導体活性層12の他方の面(第二の面、
図6では上面)には、第二のゲート絶縁膜24及び第二のゲート電極25が設けられている。
第二のゲート絶縁膜24の単位面積当たりの静電容量が第一のゲート絶縁膜(熱酸化膜10)の単位面積当たりの静電容量よりも大きくなっている。第二のゲート電極25は、第二のゲート絶縁膜24上面の半導体活性層12と重なる領域を含み、この領域から二次元方向に(
図6では右方向に)延長して配置されている。すなわち、第二のゲート電極25は、第二のゲート絶縁膜24上に設けられ、半導体活性層12と重なる領域から二次元的に離れた位置まで延長されている。
また、第二のゲート電極25は、延長端側の上面に酵素19が固定されており、酵素19が固定された領域以外は保護絶縁膜15で被覆されている。酵素19は、溶液内の物質と反応することで第二のゲート電極25に印加される電圧を変調させる。
更に、TFTバイオセンサ401は、第二のゲート電極25上に固定化された酵素19及び保護絶縁膜15から空間的に離れた位置に参照電極17を備えている。溶液に含まれるセンシング対象物質16は、第二のゲート電極25及び酵素19上に配置され、参照電極17から電圧が第二のゲート電極25に印加される。このとき、TFTバイオセンサ401に印加される実効的なゲート電圧は、参照電極17の電圧に、第二のゲート絶縁膜24上で進行する酵素反応の酸化還元電位を加えた値となり、この実効ゲート電圧に起因するトップチャネルを半導体活性層12に誘起する。
【0065】
このとき、TFTバイオセンサ401を第一のゲート電極となるシリコン基板11により駆動し、参照電極17の電圧を一定に保持することで、酵素19の基質との反応に起因する酸化還元電位をVref−Id特性のVthシフトとして検出することができる。
実施例3のようにイオン感応絶縁膜14上に酵素19を間欠的に配置することで、酵素19の実効的な表面積を広くすることができるとともに、イオン感応絶縁膜14とセンシング対象物質16との接触が確保される。その結果、感度の向上効果が得られる。
【0066】
(実施例4)
次に、第三の実施形態を更に具体化した実施例4を、
図6に基づき説明する。
【0067】
実施例4のTFTバイオセンサ401の製造装置は、シリコン基板11に熱酸化膜10を200nmの膜厚で形成する。熱酸化膜10の代わりに、プラズマCVD法やスパッタ法により成膜された酸化シリコン膜や窒化シリコン膜などを用いても良い。
【0068】
そして、製造装置は、熱酸化膜10が形成されたシリコン基板11上に、In−Ga−Zn−Oからなる50nmの酸化物半導体膜を、メタルマスクを用いてスパッタ法により成膜する。この成膜では、In−Ga−Zn−Oからなる焼結体ターゲットが用いられ、基板は加熱されず、アルゴンガスと酸素ガスとの混合ガス雰囲気中でのDCスパッタ法が採用された。製造装置は、成膜後に大気中で400℃かつ1時間のアニールを行う。この酸化物半導体膜をパターニングすることにより、島状の半導体活性層12が形成される。
【0069】
続いて、製造装置は、アルミニウム金属、又はケイ素を1%含有するアルミニウム金属をメタルマスクを用いてDCスパッタすることにより、ソース電極13s及びドレイン電極13dを形成する。ソース電極13s及びドレイン電極13dの膜厚は50nmである。更に、製造装置は、酸化アルミニウムからなる200nmの第二のゲート絶縁膜24を、メタルマスクを用いてスパッタ法により成膜する。この成膜では、アルゴンガスと酸素ガスの比を適切に制御することで、Al−Oからなる焼結体ターゲット、及び、金属アルミニウムターゲットの何れも用いることができる。基板は加熱されず、RFスパッタ法が採用された。
【0070】
その後、製造装置は、タングステン金属からなる50nmの第二のゲート電極25を、メタルマスクを用いてスパッタ法により成膜する。そして、製造装置は、大気中で300℃かつ1時間のアニールを行い、その後、第二のゲート電極25の一部を残し、それ以外を保護絶縁膜15で被覆する。なお、第二のゲート電極25は、半導体活性層12と重なる箇所とは反対側の所定領域(図面右側参照)が露出され、それ以外の領域が保護絶縁膜15で被覆される。保護絶縁膜15にはシリコン樹脂を用いることが望ましいが、適当な耐水性、絶縁性が得られれば、フォトレジスト、エポキシ樹脂等でも良い。
【0071】
次に、製造装置は、保護絶縁膜15で被覆されていない第二のゲート電極25の領域に、グルコース脱水素酵素水溶液を滴下し、室温で乾燥、乾固させる。これにより、酵素19が、第二のゲート電極25上に固定された。本実施例では、酵素19にグルコース脱水素酵素を用いているが、これには限定されず、第二のゲート電極25上で酸化還元反応が進行する酵素と基質の組み合わせであれば、何れも適用することができる。
【0072】
また、酵素19は、いわゆる酵素にも限定されず、第二のゲート電極25上で電位変化が発生する生体分子間の反応であれば、本実施例のセンシング対象物質16及び酵素19として適用できる。例えば、抗原抗体反応、レクチンと生理活性糖鎖の結合、DNA−DNA、或いはRNA−RNAの相互作用、更には、無機化合物間の結合まで適用を拡大することができる。
実施例4の構成では、TFTのチャネル上は保護絶縁膜15で覆われているため、チャネル部へのセンシング対象物質16(被検液など)の侵入を抑制できる。その結果、信頼性が向上する。
【0073】
(第四の実施形態)
図7は、第四の実施形態のTFTバイオセンサ501を示す断面図である。
【0074】
第四の実施形態のTFTバイオセンサ501は、ソース電極13s及びドレイン電極13dが接続された半導体活性層12を備える。半導体活性層12の一方の面(第一の面、
図7では下面)には、第一のゲート絶縁膜としての熱酸化膜10及び第一のゲート電極としてのシリコン基板11が設けられている。半導体活性層12の他方の面(第二の面、
図7では上面)には、第二のゲート絶縁膜24、第二のゲート電極25、及びイオン感応絶縁膜14が設けられている。第二のゲート絶縁膜24の単位面積当たりの静電容量が第一のゲート絶縁膜(熱酸化膜10)の単位面積当たりの静電容量よりも大きくなっている。
第二のゲート電極25は、第二のゲート絶縁膜24上面の半導体活性層12と重なる領域を含み、この領域から二次元方向に(
図7では右方向に)延長して配置されている。すなわち、第二のゲート電極25は、第二のゲート絶縁膜24上に設けられ、半導体活性層12と重なる領域から二次元的に離れた位置まで延長されている。
イオン感応絶縁膜14は、第二のゲート電極25の上面に設けられている。また、イオン感応絶縁膜14は、半導体活性層12と重なる領域とは反対側の領域の上面に酵素19が固定されており、酵素19が固定された領域以外は保護絶縁膜15で被覆されている。更に、TFTバイオセンサ501は、イオン感応絶縁膜14上に固定化された酵素19及び保護絶縁膜15から空間的に離れた位置に参照電極17を備えている。センシング対象物質16は、イオン感応絶縁膜14及び酵素19上に配置され、参照電極17から電圧が第二のゲート電極25に印加される。参照電極17の電位は、酵素19の反応により引き起こされる電位変化を重畳して第二のゲート電極25に伝わり、第二のゲート絶縁膜24を介して半導体活性層12にトップチャネルを誘起する。
【0075】
このとき、TFTバイオセンサ501を第一のゲート電極となるシリコン基板11により駆動し、参照電極17の電位を一定に保持することで、酵素19の基質との反応に起因する電位をVref−Id特性のVthシフトとして検出することができる。
【0076】
(実施例5)
次に、第四の実施形態を更に具体化した実施例5を、
図7に基づき説明する。
【0077】
実施例5のTFTバイオセンサ501の製造装置は、熱酸化膜10を形成したシリコン基板11上に、半導体活性層12、ソース電極13s及びドレイン電極13d、第二のゲート絶縁膜24、第二のゲート電極25、イオン感応絶縁膜14を、この順で、メタルマスクを用いてスパッタ法により成膜する。半導体活性層12は、In−Ga−Zn−Oからなり、50nmの膜厚である。ソース電極13s及びドレイン電極13dは、モリブデン金属からなり、100nmの膜厚である。第二のゲート絶縁膜24は、酸化タンタルからなり、100nmの膜厚である。第二のゲート電極25は、モリブデン金属からなり、50nmの膜厚である。イオン感応絶縁膜14は、酸化シリコンからなり、100nmの膜厚である。
【0078】
このとき、各層の材料は、前述の材料に限定されず、電極としては、チタン、アルミ、タングステン、タンタル、クロム、及び、これらの合金膜、又は、積層膜を用いることができる。絶縁膜としては、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、これらの積層膜を用いることができる。
【0079】
そして、製造装置は、大気中で300℃かつ1時間のアニールを行い、その後、イオン感応絶縁膜14の一部を残し、それ以外をシリコン樹脂からなる保護絶縁膜15で被覆する。なお、イオン感応絶縁膜14は、半導体活性層12と重なる箇所とは反対側の所定領域(図面右側参照)が露出され、それ以外の領域が保護絶縁膜15で被覆される。
【0080】
次に、製造装置は、保護絶縁膜15で被覆されていないイオン感応絶縁膜14の領域に、ガラクトースを特異的に認識するレクチンであるガレクチンを溶解させたpH6.8のリン酸緩衝液を滴下し、室温で乾燥、乾固させる。これにより、酵素19は、イオン感応絶縁膜14に固定された。酵素19はガラクトースを特異的に結合することにより、イオン感応絶縁膜14の界面電位を変化させる。
【0081】
この電位変化をTFTセンサにより検出することで、ガラクトースの測定が可能となる。ここで、レクチンとしてガレクチンを用いたが、これに限定されることは無く、異なる基質特異性を有するレクチンを用いれば、異なる生理活性糖鎖を対象としたTFTバイオセンサを提供することができる。
実施例4に対して実施例5では、酵素19と第二のゲート電極25との間にイオン感応絶縁膜14が存在している。この絶縁膜14の存在によりセンシング対象物質16と第二のゲート電極25との間の電気的ショートを抑制でき更に信頼性を向上できる。
【0082】
(実施例6)
次に、第四の実施形態の変形例である実施例6を、
図8に基づき説明する。
図8は、実施例6のTFTバイオセンサ601を示す断面図である。
【0083】
実施例6のTFTバイオセンサ601は、熱酸化膜10を形成したシリコン基板11上に、半導体活性層12、ソース電極13s及びドレイン電極13d、第二のゲート絶縁膜24、第二のゲート電極25、イオン感応絶縁膜14を積層した構造であることは、実施例5と同様である。製作の手段としては、メタルマスクを用いたスパッタ法を適用しても良いし、フォトリソグラフィーの手法を用いても良い。
次に、製造装置は、イオン感応絶縁膜14の上に、フォトレジストをパターニングする。この時用いるフォトレジストはリフトオフ専用レジストが望ましいが、アセトン等の有機溶剤で容易に除去できるものであれば良い。そして、製造装置は、アルコール脱水素酵素を溶解されたpH6.8のリン酸緩衝液をパターニングされたフォトレジスト上に塗布する。塗布方法としては、溶液の粘度に応じてスピンコート、ディッピング、ポッティングを選択できる。その後、製造装置は、パターニングされたフォトレジストをアセトンで除去し、パターニングされた酵素19を形成する。酵素19は、イオン感応絶縁膜14の所定領域に一定間隔またはランダムに設けられる。
続いて、製造装置は、酵素19がパタン形成されたイオン感応絶縁膜14の一部の領域を残し、それ以外の領域をシリコン樹脂からなる保護絶縁膜15で被覆する。以上の工程により、TFTを界面電位検出機構、アルコール脱水素酵素を生体分子認識機構に用いた、アルコール濃度の測定が可能なTFTバイオセンサ601を提供することができる。
実施例5に対して実施例6では、実施例3と同様にイオン感応絶縁膜14上に酵素19が間欠的に配置され、酵素19の実効的な表面積を広くすることができるとともに、イオン感応絶縁膜14とセンシング対象物質16との接触が確保される。その結果、感度の向上効果が得られる。
【0084】
(第五の実施形態)
図9は、第五の実施形態のTFTバイオセンサ701を示す断面図である。
【0085】
第五の実施形態のTFTバイオセンサ701は、ソース電極13s及びドレイン電極13dが接続された半導体活性層12を備える。半導体活性層12の一方の面(第一の面、
図9では下面)には、第一のゲート絶縁膜としての熱酸化膜10及び第一のゲート電極としてのシリコン基板11が設けられている。半導体活性層12の他方の面(第二の面、
図9では上面)には、第二のゲート絶縁膜24、第二のゲート電極25、及びイオン感応絶縁膜14が設けられている。
第二のゲート絶縁膜24の単位面積当たりの静電容量が第一のゲート絶縁膜(熱酸化膜10)の単位面積当たりの静電容量よりも大きくなっている。なお、第二のゲート絶縁膜24の上面に対する第二のゲート電極25及びイオン感応絶縁膜14の位置は、実施例5,6と同様である。また、イオン感応絶縁膜14は、半導体活性層12と重なる領域とは反対側の所定の領域(図面右側参照)が露出され、それ以外の領域が保護絶縁膜15で被覆されている。
【0086】
更に、第五の実施形態のTFTバイオセンサ701は、イオン感応絶縁膜14から空間的に離れた位置に、第二の絶縁性基板18に固定化された酵素19を備える。さらに、TFTバイオセンサ701は、イオン感応絶縁膜14と酵素19との間の空間に参照電極17を備えている。第五の実施形態のTFTバイオセンサ701において、イオン感応絶縁膜14上にセンシング対象物質16が配置された場合、酵素19は、センシング対象物質16と反応し、近傍のpH変化をもたらす。このpH変化をイオン感応絶縁膜14表面の電位変化として捉えることにより、センシング対象物質16の濃度を測定することができる。
【0087】
(実施例7)
次に、第五の実施形態を更に具体化した実施例7を、
図9に基づき説明する。
【0088】
実施例7のTFTバイオセンサ701の製造装置は、熱酸化膜10を形成したシリコン基板11上に、半導体活性層12、ソース電極13s及びドレイン電極13d、第二のゲート絶縁膜24、第二のゲート電極25、イオン感応絶縁膜14を、スパッタ法により成膜し、フォトリソグラフィーの手法によりパターニングする。半導体活性層12は、In−Ga−Zn−Oからなり、30nmの膜厚である。ソース電極13s及びドレイン電極13dは、モリブデン金属からなり、50nmの膜厚である。第二のゲート絶縁膜24は、酸化タンタルからなり、100nmの膜厚である。第二のゲート電極25は、モリブデン金属からなり、50nmの膜厚である。イオン感応絶縁膜14は、酸化シリコンからなり、50nmの膜厚である。
【0089】
続いて、製造装置は、大気中で300℃かつ1時間のアニールを行い、その後、イオン感応絶縁膜14の一部を残し、それ以外の領域をシリコン樹脂からなる保護絶縁膜15で被覆する。
【0090】
その後、製造装置は、第二の絶縁性基板18に、酵素19となるウレアーゼを固定する。固定の手段は、前述のとおり酵素水溶液のスピンコート、ディッピング、ポッティング等の方法を用いることができる。ウレアーゼは、尿素を加水分解し、アンモニアと二酸化炭素を生成する酵素であり、アンモニアの生成により近傍のpHがアルカリ性側に変化する。この変化を、TFTセンサで捉えることにより、尿素濃度を測定することができる。以上により、尿素濃度を測定可能なTFTバイオセンサ701を提供することができる。
【0091】
実施例7のTFTバイオセンサ701は、実施例1のTFTバイオセンサ101と同様に、イオン感応絶縁膜14から空間的に離れた位置に生体分子認識機構(酵素19)を有する。よって、pH測定部と生体物質認識機構とが相互に機能阻害されることを抑制できる。また、酵素19が失活した場合、酵素19の基板(第二の絶縁性基板18)以外を保持したまま、酵素19の基板を交換できる。
【0092】
実施例5〜7においても、実施例4のTFTバイオセンサ401と同様に、TFTバイオセンサ501〜701を第一のゲート電極となるシリコン基板11により駆動し、参照電極17の電圧を一定に保持することで、酵素19の基質との反応に起因する酸化還元電位をVref−Id特性のVthシフトとして検出することができる。また、実施例5〜7においても、TFTバイオセンサ501〜701は、イオン感応絶縁膜14とセンシング対象物質16との間に発生した電位差に、第二のゲート絶縁膜24の単位面積当たりの静電容量を第一のゲート絶縁膜(熱酸化膜10)の単位面積当たりの静電容量で除した比の値を乗じることにより前記電位差を増幅して検出する検出部を有する。これにより、高い感度を有するバイオセンサを実現できる。
【0093】
(第六の実施形態)
図10及び
図11を用いて第六の実施形態について説明する。
図10は、第六の実施形態のTFTバイオセンサを示す断面図であり、
図11は模式図である。
図10Aに示すように、第六の実施形態のTFTバイオセンサでは、第一の絶縁性基板26上に、第一のゲート電極22、第一のゲート絶縁膜23、半導体活性層12、ソース電極13s及びドレイン電極13d、イオン感応絶縁膜14、保護絶縁膜15から成る薄膜トランジスタが形成されている。また、第六の実施形態のTFTバイオセンサでは、イオン感応絶縁膜14から空間的に離れた位置に参照電極17が配置されている。
図10Aに示す例では、参照電極17が保護絶縁膜15から空間的に離れた位置に配置されているが、この配置に限らず、
図10Bに示すように、参照電極17を保護絶縁膜15上に形成しても良い。この場合には、銀薄膜を保護絶縁膜15上に成膜し、その後、塩酸などに浸漬させ銀薄膜の表面に塩化銀被膜を形成した後、塩化銀/銀の積層薄膜を所望の形状にパターニングすることにより参照電極17を形成すると良い。このような薄膜トランジスタと参照電極17とを含む構成を薄膜トランジスタセンサ部Sと呼ぶ。かかる薄膜トランジスタセンサ部Sの一例は、
図1のTFTバイオセンサ101、
図3、
図4のTFTバイオセンサ201、
図5のTFTバイオセンサ301である。
【0094】
更に、第六の実施形態では、第二の絶縁性基板18上に生体物質へ基質特異性を有する酵素19が形成されている。この酵素19は第二の絶縁性基板18全体に形成しても良いし、あるいは、予め第二の絶縁性基板18に溝を形成しその溝部分に酵素19を選択的に形成しても良い。酵素19が第二の絶縁性基板18全体に形成される場合、第一の絶縁性基板26及び第二の絶縁性基板18は、イオン感応絶縁膜14と酵素19とを互いに対向するように向き合わせ、その間に空間を確保した状態で固定される。この空間は、センシング対象物質16を含む溶液が流れる流路Pとなる。
また、第二の絶縁性基板18に溝を形成した構成を
図11に示す。
図11に示す例では、第二の絶縁性基板18の一面の適宜箇所(
図11では下面の左右方向の中央部)に所定幅の溝18aが形成され、少なくともこの溝18aの内側に酵素19が形成される。第二の絶縁性基板18に溝18aが形成される場合、第一の絶縁性基板26及び第二の絶縁性基板18を密着させて貼り合せることが可能である。2つの絶縁性基板26及び18を貼り合わせた場合、溝18aによって空間が形成され、この空間はセンシング対象物質16を含む溶液が流れる流路Pとなる。絶縁性基板18及び26は、溝18aと薄膜トランジスタセンサ部Sとが二次元的に重なる状態で貼り合せる必要がある。
更には、第六の実施形態のTFTバイオセンサでは、溝18aの有無に関わらず、この流路Pにセンシング対象物質16を含む溶液を供給し、センシング対象物質16の流れを制御する機構(例えばポンプなど)Mを設けることもできる。機構Mによって、例えば
図11に示すように、流路Pの一端側から矢符M1に示すようにセンシング対象物質16が供給される。センシング対象物質16は、流路P内の薄膜トランジスタセンサ部S上を通過し、流路Pの他端側から矢符M2に示すように排出される。
図10A,10Bに示す例でも、例えば、機構Mによって、流路P内において薄膜トランジスタセンサ部Sの左側から右側へセンシング対象物質16を通過させることができる。
【0095】
図10Bには、酵素19が第一の絶縁性基板26上にも形成されている場合を示している。上記と同様に第一の絶縁性基板26上に薄膜トランジスタを形成後、薄膜トランジスタ領域以外の所望の領域に酵素19を形成する。図示していないが、第一の絶縁性基板26上の薄膜トランジスタ領域以外の領域のみに酵素19を形成し、第二の絶縁性基板18上に酵素19を形成しない構成も可能である。
【0096】
第六の実施形態では、第二の絶縁性基板18上、あるいは第一の絶縁性基板26上の薄膜トランジスタ領域以外の領域、即ちpHセンシング部(薄膜トランジスタセンサ部S)から空間的に離れた位置の広い面積に酵素19が形成されている。従って、pHセンシング部と生体分子認識の二つの機能が相互に阻害することが無く、さらに、pHセンシング部の単位面積当たりの酵素量を増やすことが可能ため、酵素反応によるpH変化量を大きくすることができ、生体物質の検出感度を高くすることができる。
【0097】
なお、この
図10及び
図11には図示していないが、第六の実施形態のTFTバイオセンサは、
図1に示したようにソース電極13sとゲート電極22との間の電位差を読み取る電圧検出部20、または、ソース電極13s又はドレイン電極13dに流れる電流を読み取る電流検出部21の、どちらか一方を備えている。
【0098】
(実施例8)
図10Aを用いて、第六の実施形態の実施例8を説明する。
実施例8のTFTバイオセンサの製造装置は、第一の絶縁性基板26であるガラス基板上にアルミニウム合金をスパッタリング法により成膜し、所望の形状にパターニングすることで第一のゲート電極22を形成する。その後、製造装置は、第一のゲート絶縁膜23として、プラズマCVD法により膜厚200nmの酸化シリコン膜を形成する。
【0099】
更に、製造装置は、半導体活性層12としてIn−Ga−Zn−Oをスパッタリング法により形成し、所望の形状にパターニングする。製造装置は、大気中にて400℃で1時間のアニールを行った後、モリブデンをスパッタリング法により成膜し、所望の形状にパターニングすることでソース電極13s及びドレイン電極13dを形成する。引き続き、製造装置は、イオン感応絶縁膜14として、スパッタリング法により膜厚100nmの酸化タンタル膜を形成し、所望の形状にパターニングする。
【0100】
そして、製造装置は、大気中にて300℃で1時間のアニールを行った後、シリコン樹脂を用いて保護絶縁膜15を所望の形状に形成する。酸化シリコンの比誘電率が4であり、酸化タンタルの比誘電率が20であることを考慮すると、この構成では、単位面積当たりの第一のゲート絶縁膜23の静電容量に比べてイオン感応絶縁膜14の静電容量の方が約10倍大きい。これによりネルンスト理論限界の約10倍程度のpH検出感度が可能となる。
【0101】
次に、製造装置は、第二の絶縁性基板18であるガラス基板上に、酵素19としてグルコースオキシターゼを固定化する。具体的には、10%グルコースオキシターゼと、10%牛血清アルブミンと、8%グルタルアルデヒドとをリン酸バッファーに溶解した試薬を作製し、酵素19に用いる。製造装置は、酵素19をガラス基板上に塗布し所望の形状にパターニングした後、室温で20分間乾燥させることで第二の絶縁性基板18上に固定する。
【0102】
製造装置は、上述のように作製された2枚のガラス基板(絶縁性基板26及び18)を、酸化タンタル膜(イオン感応絶縁膜14)とグルコースオキシターゼ(酵素19)とが互いに対向するように向き合わせ、流路Pとして数100μmから数mmのギャップをあけて2枚のガラス基板26,18の周縁部を封止する。また、そのギャップに銀/塩化銀からなる参照電極17が挿入される。このギャップ(流路P)内に被検液(センシング対象物質16を含む溶液)を導入するための機構Mとして、例えばマイクロポンプを設ける。
【0103】
マイクロポンプを用いて、被検液として様々な濃度のグルコース水溶液をギャップ(流路P)内に導入し、グルコースとグルコースオキシターゼ(酵素19)との酵素反応で新たに生成されることによるプロトン濃度の微量な変化を被検液のpH変化から検出した。本実施例では、酵素19であるグルコースオキシターゼがガラス基板(第二の絶縁性基板18)表面の広い領域に固定されており、被検液であるグルコース水溶液と接する面積が十分大きい。従って、酵素反応が効率よく進行し、且つ、トップゲート効果を用いたpHセンシング高感度化も相まって0.001mM程度のグルコース濃度の変化を検出することができた。
【0104】
(実施例9)
図11を用いて、第六の実施形態の実施例9を説明する。上記の実施例8と同様に、実施例9における製造装置は、第一の絶縁性基板26であるガラス基板上に薄膜トランジスタセンサ部Sを形成する。外部から駆動用電気信号を与えるために、薄膜トランジスタセンサ部Sの第一のゲート電極22、ソース電極13s、ドレイン電極13d、及び参照電極17の配線をガラス基板の外部まで引き出す。また、製造装置は、第二の絶縁性基板18であるガラス基板に溝18aを形成する。例えば、ガラスをフッ酸でエッチングすることで、幅2mm、深さ800μmの溝18aを形成する。
【0105】
その後、製造装置は、溝18aの凹面(内面)に上記実施例8と同様にグルコースオキシターゼ(酵素19)を固定する。そして、製造装置は、これら2枚のガラス基板(絶縁性基板26及び18)を、薄膜トランジスタセンサ部Sと溝18aとが二次元的に重なるような配置で貼り合せる。即ち、薄膜トランジスタセンサ部Sが溝18aに覆われた状態で、2つの絶縁性基板26及び18が貼り合わされる。
このような貼り合せデバイスに対して、溝18aによる流路Pの一方の側からマイクロポンプMを用いて被検液として様々な濃度のグルコース溶液を流路P内に導入し、流路Pの他方の側から被検液を排出する。被検液が流路P内を流れる際に、流路P内に固定された酵素19と反応し、プロトンが生成される。このプロトン生成量を電気二重層電位の変化として薄膜トランジスタセンサ部Sで検出することにより、微小なグルコース濃度を検出することができる。流路Pの構造に関しては、
図11のような直線構造に限らず、流路Pの途中に幅の広い領域を部分的に構成し、酵素19を固定化できる面積を増加させることも可能である。
【0106】
(第七の実施形態)
図12を用いて第七の実施形態について説明する。
図12は、第七の実施形態のTFTバイオセンサを示す断面図である。
図12Aに示すように、第七の実施形態のTFTバイオセンサでは、第一の絶縁性基板26上に、第一のゲート電極22、第一のゲート絶縁膜23、半導体活性層12、ソース電極13s及びドレイン電極13d、第二のゲート絶縁膜24、第二のゲート電極25、イオン感応絶縁膜14、保護絶縁膜15から成る薄膜トランジスタが形成されている。第二のゲート電極25は、第一のゲート電極22と対向する位置から横方向に延伸された形状を有しており、この延伸領域の上にイオン感応絶縁膜14が形成されている。この横方向に延伸された領域のイオン感応絶縁膜14上の一部に開口部を設け、開口部以外の領域に保護絶縁膜15が形成されている。即ち、薄膜トランジスタのチャネル部とイオン感応部とが二次元的にずれた位置に配置されている。この点が、チャネル部とイオン感応部とが二次元的に重なった位置に配置されている
図10,11と異なる点である。
【0107】
また、第七の実施形態のTFTバイオセンサでは、イオン感応絶縁膜14から空間的に離れた位置に参照電極17が配置されている。
図12Aでは、参照電極17が保護絶縁膜15から空間的に離れた位置に配置されているが、この配置に限らず、
図12Bに示すように、参照電極17を保護絶縁膜15上に形成しても良い。この場合には、銀薄膜を保護絶縁膜15上に成膜し、その後、塩酸などに浸漬させ銀薄膜の表面に塩化銀被膜を形成した後、塩化銀/銀の積層薄膜を所望の形状にパターニングすることにより参照電極17を形成すると良い。本実施形態でも、このような薄膜トランジスタと参照電極17とを含む構成を薄膜トランジスタセンサ部Sと呼ぶ。かかる薄膜トランジスタセンサ部Sの一例は、
図6のTFTバイオセンサ401、
図7のTFTバイオセンサ501、
図8のTFTバイオセンサ601、
図9のTFTバイオセンサ701である。
【0108】
更に、第七の実施形態では、第二の絶縁性基板18上に生体物質へ基質特異性を有する酵素19が形成されている。この酵素19は第二の絶縁性基板18全体に形成しても良いし、あるいは、
図11と同様、予め第二の絶縁性基板18に溝18aを形成し、その溝18a部分に酵素19を選択的に形成しても良い。これらの第一及び第二の絶縁性基板26及び18は、イオン感応絶縁膜14と酵素19が互いに対向するように向き合わせ、間に空間を確保した状態で固定される。この空間はセンシング対象物質16が流れる流路Pとなる。また、第二の絶縁性基板18に溝18aを形成する場合には、第一及び第二の絶縁性基板26及び18を密着させて貼り合せることが可能である。この場合、溝18aと薄膜トランジスタセンサ部Sとを二次元的に重ねて貼り合せる必要がある。更には、溝18aの有無に関わらず、この流路Pにセンシング対象物質16を供給し、センシング対象物質16の流れを制御する機構(例えばポンプなど)Mを設けることもできる。
【0109】
図12Bは、酵素19が第一の絶縁性基板26上にも形成されている場合を示している。上記と同様に第一の絶縁性基板26上に薄膜トランジスタを形成後、薄膜トランジスタ領域以外の所望の領域に酵素19を形成する。図示していないが、第一の絶縁性基板26上の薄膜トランジスタ領域以外の領域のみに酵素19を形成し、第二の絶縁性基板18上に酵素を形成しない構成も可能である。
【0110】
第七の実施形態では、第二の絶縁性基板18上、あるいは第一の絶縁性基板26上の薄膜トランジスタ領域以外の領域、即ちpHセンシング部(薄膜トランジスタセンサ部S)から空間的に離れた位置の広い面積に酵素19が形成されている。従って、pHセンシング部と生体分子認識の二つの機能が相互に阻害することが無い。さらに、pHセンシング部の単位面積当たりの酵素量を増やすことが可能となるため、酵素反応によるpH変化量を大きくすることができ、生体物質の検出感度を高くすることができる。また、第六の実施形態に比べて、本第七の実施形態では、イオン感応絶縁膜14が薄膜トランジスタ領域から離れた位置に存在している。イオン感応絶縁膜14は被検液が接する部分であり、この部分が薄膜トランジスタ領域から離れている本実施形態では、被検液の薄膜トランジスタセンサ部Sへの浸み込み確率が低下しセンサ素子の長寿命化が期待できる。
【0111】
また、
図12A及び
図12Bでは第二のゲート電極25上にイオン感応絶縁膜14を有する構成を示したが、第二のゲート電極25そのものがイオン感応性を有する場合には、このイオン感応絶縁膜14が無い構成でも可能である。
【0112】
(実施例10)
図12Aを用いて、第七の実施形態の実施例10を説明する。
実施例10のTFTバイオセンサの製造装置は、第一の絶縁性基板26であるガラス基板上にアルミニウム合金をスパッタリング法により成膜し、所望の形状にパターニングすることで第一のゲート電極22を形成する。その後、製造装置は、第一のゲート絶縁膜23として、プラズマCVD法により膜厚200nmの酸化シリコン膜を形成する。
【0113】
更に、製造装置は、半導体活性層12としてIn−Ga−Zn−O膜をスパッタリング法により形成し、所望の形状にパターニングする。製造装置は、大気中にて400℃で1時間のアニールを行った後、モリブデン合金をスパッタリング法により成膜し、所望の形状にパターニングすることでソース電極13s及びドレイン電極13dを形成する。引き続き、製造装置は、第二のゲート絶縁膜24として、スパッタリング法により膜厚100nmの酸化タンタル膜を形成し、所望の形状にパターニングする。
【0114】
次に、製造装置は、大気中にて300℃で1時間のアニールを行った後、第二のゲート電極25としてアルミニウム合金を成膜し、所望の形状にパターニングする。この際、第二のゲート電極25は、第一のゲート電極22と対向する位置から横方向に延伸された形状となるようにする。更に、製造装置は、第二のゲート電極25上にイオン感応絶縁膜14として膜厚10nmの酸化タンタル膜を成膜し所望の形状にパターニングする。
【0115】
引き続き、製造装置は、エポキシ樹脂を用いて保護絶縁膜15を所望の形状に形成する。この際、横方向に延伸された領域のイオン感応絶縁膜14の一部に開口部が形成されるようにパターニングする。酸化シリコンの比誘電率が4であり、酸化タンタルの比誘電率が20であることを考慮すると、この構成では、単位面積当たりの第一のゲート絶縁膜22の静電容量に比べてイオン感応絶縁膜14の静電容量の方が約9倍大きい。これによりネルンスト理論限界の約9倍程度のpH検出感度が可能となる。実施例8の場合より若干感度が減少するのは、本実施例では、膜厚100nmの酸化タンタル(第二のゲート絶縁膜24)と膜厚10nmの酸化タンタル(イオン感応絶縁膜14)との直列接続を容量として考慮する必要があるためである。
【0116】
次に、製造装置は、第二の絶縁性基板18であるガラス基板上に、酵素19としてペニシリナーゼを固定する。例えば、ペニシリナーゼをバッファー溶液に溶解した試薬を作製し、製造装置は、その試薬をガラス基板(第二の絶縁性基板18)上に塗布し所望の形状にパターニングする。その後、製造装置は、室温で120分間乾燥させることで酵素19を第二の絶縁性基板18上に固定化する。
【0117】
製造装置は、これら2枚のガラス基板を、酸化タンタル膜(イオン感応絶縁膜14)とペニシリナーゼ(酵素19)が互いに対向するように向き合わせ、流路Pとして数100μmから数mmのギャップをあけて2枚のガラス基板の周縁部を封止する。また、製造装置は、そのギャップに銀/塩化銀からなる参照電極17を挿入する。更に、製造装置は、このギャップ(流路P)内に被検液(センシング対象物質16を含む溶液)を導入するための機構Mとして、マイクロポンプを設ける。
【0118】
上述のように製造されたTFTバイオセンサにおいて、マイクロポンプMを用いて、被検液として様々な濃度のペニシリン水溶液をギャップ(流路P)内に導入し、ペニシリンとペニシリナーゼ(酵素19)との酵素反応で新たに生成されることによるプロトン濃度の微量な変化を被検液のpH変化から検出する。ペニシリンとペニシリナーゼとの酵素反応により、ペニシリンが加水分解されペニシロン酸とプロトンが生成される。特にバイオセンサの分野では微小なペニシリン濃度の検出が重要で、この酵素反応で生じる微小なプロトン濃度変化を検知する必要がある。本実施例では、酵素19であるペニシリナーゼがガラス基板(第二の絶縁性基板18)表面の広い領域に固定化されており、被検液であるペニシリン水溶液と接する面積が十分大きい。
【0119】
従って、酵素反応が効率よく進行し、且つ、トップゲート効果を用いたpHセンシング高感度化も相まって0.001mM程度のペニシリン濃度の変化を検出することができた。また、実施例8の場合と比較して、本実施例ではイオン感応部が薄膜トランジスタ領域から離れた位置に存在おり、被検液であるペニシリン水溶液の薄膜トランジスタ部への浸み込み確率が低下しセンサ素子の長寿命化・高歩留まりを実現することができる。
【0120】
前述の実施例1〜7では、熱酸化膜10付きのシリコンウエハを用い、薄膜トランジスタの構成要素としてシリコン基板11をゲート電極、熱酸化膜10をゲート絶縁膜として作用させる場合を説明した。これに限らず、実施例1〜7の場合でも、実施例8〜10の場合と同様、ガラス基板(第一の絶縁性基板26)上に金属でゲート電極を形成し、その上にプラズマCVD法やスパッタリング法でゲート絶縁膜(例えば酸化シリコン膜など)を形成しても良い。また、実施例1〜7の場合でも、
図11のように第二の絶縁性基板18に溝18aを形成し、溝18aに酵素19aを設けることも可能である。
【0121】
また、実施例8〜10では、酵素19をTFTセンサ部Sとは異なる基板(第二の絶縁性基板18)に固定している。そのため、酵素19が失活した際、酵素基板(第二の絶縁性基板18)以外の構成を保持したまま、酵素基板のみの交換でセンサ機能を回復させることができる。従って、寿命が長く、使用者の負担が少ないセンサを提供することができる。また、この酵素基板を交換できる機能は、異なる酵素への入れ替えが可能であることを意味している。即ち、上記の実施例を考えれば、例えば酵素基板としてグルコースセンシング用とペニシリンセンシング用を準備しておけば、同一のTFTセンサ基板(第一の絶縁性基板26)を用いて多項目測定を実現できるTFTバイオセンサを提供することができる。
【0122】
更に以上の実施例では、第一の絶縁性基板26と第二の絶縁性基板18とを対向して配置する、あるいは貼り合せる場合を説明した。これらに限らず、例えば、薄膜トランジスタセンサ部Sを形成する第一の絶縁性基板26は平坦形状を、酵素19を固定する第二の絶縁性基板18は円筒状形状を有していても良い。この場合は円筒の内側に酵素19を固定し、この円筒内に第一の絶縁性基板26を配置することで本発明の効果を実現することができる。このように第一の絶縁性基板26と第二の絶縁性基板18との配置を任意に設定することが可能である。
【0123】
更に以上の実施例では、酵素反応により水素イオン濃度(pH)が変化し、そのpH変化を検出することでバイオ物質の濃度をセンシングする場合を示した。しかし、水素イオン濃度に限らず、酵素反応で生成される任意のイオン濃度をセンシングすることも可能である。例えば、酵素反応でNaイオン、Kイオン等の陽イオンを発生するような被検液のセンシングを行う場合には、イオン感応絶縁膜14として、以下の薄膜を利用(適用とも呼ぶ)する。この薄膜は、リガンドとなるバリノマイシン等のポリペプチドやクラウンエーテルを基本骨格に持つ化合物を樹脂材料と混合して塗布・焼成して形成した薄膜である。この場合はイオン感応膜が酵素としても作用する。陽イオンに限らず負イオンの場合もそれに適したリガンドを用いることが可能である。
【0124】
また以上の実施例では、半導体活性層12として酸化物半導体を用いた場合を示した。これに限らず、半導体活性層12として以下の材料(材質とも呼ぶ)を用いることも可能である。この材料は、例えば、アモルファスシリコンや多結晶シリコン等のシリコン半導体や、蒸着で成膜可能な低分子系有機半導体(例えばペンタセンなど)や、塗布成膜が可能な高分子系有機半導体や、カーボンナノチューブ、グラフェンのようなカーボン材料である。具体例として
図13に有機半導体を活性層に用いた場合の構成を示した。
図13は、有機半導体を半導体活性層12に用いたTFTバイオセンサを示す断面図である。
図13に示すTFTバイオセンサは、半導体活性層12が有機半導体で構成されているほかは、
図10Aに示した実施例8のTFTバイオセンサと同様の構成を有する。酸化物半導体はn型のみの伝導を示すものが多く、また有機半導体はp型のみの伝導を示すものが多い。このような単極性はトップゲート効果を実現しやすく、容量比による高感度を実現しやすい。
【0125】
(第八の実施形態)
図14は、第八の実施形態のTFTバイオセンサ機器の回路図である。
図15は、
図14のTFTバイオセンサ機器におけるマイクロプロセッサ38の構成例を示す図である。第八の実施形態のTFTバイオセンサ機器(検出装置)は、上述の実施例1〜10のTFTバイオセンサ101〜701のいずれかを有する。
図14におけるTFTバイオセンサが、TFTバイオセンサ101〜701のいずれかである。
また、TFTバイオセンサ機器は、マイクロプロセッサ(プロセッサ)38と、定電圧回路(電圧印加回路)40と、電流電圧変換回路(検出回路)41とを有する。定電圧回路40は、TFTバイオセンサのソース電極13sとドレイン電極13dとの間に電圧(第一の電圧)を印加する。電流電圧変換回路41は、ソース電極13sとドレイン電極13dとの間を流れる電流を電圧(第二の電圧)として検出する。マイクロプロセッサ38は、電流電圧変換回路41にて検出した電圧に基づいて、TFTバイオセンサのゲート電極13gの電位及び定電圧回路40を制御する。
【0126】
定電圧回路40は、ツェナーダイオード40a及び抵抗R1を含む。ツェナーダイオード40aは、抵抗R1を介してトランジスタ39に接続されている。抵抗R1はトランジスタ39を介して電源Vddに接続されている。定電圧回路40の出力端子は、抵抗R2を介して、TFTバイオセンサのドレイン電極13dに接続されている。定電圧回路40は、マイクロプロセッサ38によってトランジスタ39がオンされた場合、ツェナーダイオード40aの逆降伏電圧(V1)を、抵抗R2を介して、TFTバイオセンサのソース電極13sとドレイン電極13dとの間に印加する。
電流電圧変換回路41は、ソース電極13sとドレイン電極13dとの間の微小電流を電圧値に変換する。電流電圧変換回路41は、第1のオペアンプ41a、第2のオペアンプ41b及び第3のオペアンプ41cを有する。
具体的には、電流電圧変換回路41は、3つのオペアンプ41a〜41cと、7つの抵抗R3〜R9とを有する。第1のオペアンプ41aの正入力端子(以下、+入力端子と記す)は、定電圧回路40の出力端子と接続してあり、第2のオペアンプ41bの+入力端子は、TFTバイオセンサのドレイン電極13dと接続してある。また、第1のオペアンプ41aは、出力端子と負入力端子(以下、−入力端子と記す)とが抵抗R4を介して接続してあり、第2のオペアンプ41bは、出力端子と−入力端子とが抵抗R5を介して接続してある。また、第1のオペアンプ41aの−入力端子と第二2のオペアンプ41bの−入力端子とは、抵抗R3を介して接続してある。第3のオペアンプ41cの−入力端子は、抵抗R6を介して、第1のオペアンプ41aの出力端子に接続してあり、第3のオペアンプ41cの+入力端子は、抵抗R7を介して、第2のオペアンプ41bの出力端子に接続してある。また、第3のオペアンプ41cは、+入力端子が抵抗R9を介してグランドにも接続してあり、出力端子と−入力端子とが抵抗R8を介して接続してある。なお、第3のオペアンプ41cの出力端子が、電流電圧変換回路41の出力端子となっている。電流電圧変換回路41は、ソース電極13sとドレイン電極13dとの間の微小電流を変換して得た電圧値(入力電圧Vin)をマイクロプロセッサ38へ出力する。
【0127】
図15に示すように、マイクロプロセッサ38は、演算部38aと、記憶部38bとを有する。演算部38aは、例えば、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、マルチコアCPU等で構成される。記憶部38bは、例えば、RAM(Random Access Memory)38ba、ROM(Read Only Memory)38bb等を含む。演算部38aは、ROM38bbに記憶してある制御プログラムをRAM38baに読み出して実行することにより、各種の演算処理を行う。例えば、マイクロプロセッサ38の起動時に、演算部38aは、ROM38bbから第一演算処理を実行するための制御プログラムファイル(実行ファイル)を読み出し、RAM38baに展開して実行することにより、第一演算部38aaのプログラムモジュールとして機能する。また、演算部38aは、ROM38bbから第二演算処理を実行するための制御プログラムファイルを読み出し、RAM38baに展開して実行することにより、第二演算部38abのプログラムモジュールとして機能する。
ROM38bbは、不揮発性メモリであり、演算部38aが所定の演算処理を実行するための制御プログラム、演算部38aが所定の演算処理を行う際に用いる制御変数、各種データ及びテーブル等を予め記憶している。例えば、演算部38aにPID(比例−積分−微分)制御に係る演算を行わせる場合、ROM38bbには、PID制御を実現するための制御プログラム及びPID制御に用いる制御変数が記憶される。また、演算部38aにPI(比例−積分)制御に係る演算を行わせる場合、ROM38bbには、PI制御を実現するための制御プログラム及びPI制御に用いる制御変数が記憶される。また、演算部38aにP(比例)制御に係る演算を行わせる場合、ROM38bbには、P制御を実現するための制御プログラム及びP制御に用いる制御変数が記憶される。RAM38baは、書換可能なメモリであり、演算部38aによる演算処理時に生じるデータを一時的に記憶する。
【0128】
マイクロプロセッサ38は、電流電圧変換回路41から出力された電圧値を入力電圧Vinとして取得する。演算部38a(第一演算部38aa)は、電流電圧変換回路41から取得した入力電圧Vinと、ROM38bbに記憶してある制御変数とに基づいて所定の演算(例えば、PID制御、PI制御、P制御)を行い、TFTバイオセンサのゲート電極13gに印加する電圧値を算出する。なお、第一演算部38aaは、定電圧回路40がソース電極13sとドレイン電極13dとの間に印加する電圧と、電流電圧変換回路41にて検出されるソース電極13sとドレイン電極13dとの間における電圧とが一定になるような電圧値(ゲート電極13gに印加する出力電圧Vout1)を算出する。演算部38aは、算出した電圧値(出力電圧Vout1)に基づいて、TFTバイオセンサのゲート電極13gに印加する電圧を制御する。具体的には、マイクロプロセッサ38は、演算部38aが算出した電圧値の出力電圧Vout1をゲート電極13gに印加する。また演算部38a(第二演算部38ab)は、算出した電圧値(出力電圧Vout1)と、ROM38bbに記憶してあるテーブルとに基づいて、出力電圧Vout1に対応するイオン濃度を算出する。具体的には、第二演算部38abは、出力電圧Vout1に対応するイオン濃度をテーブルから読み出す。
また、演算部38aは、トランジスタ39をオン又はオフさせるための電圧(出力電圧Vout2)をトランジスタ39に与える。
【0129】
上述した構成のTFTバイオセンサ機器において、TFTバイオセンサによるセンシングを行う場合、マイクロプロセッサ38は、ソース電極13sの電位と参照電極17の電位とを同電位とし、ソース電極13sとドレイン電極13dとの間に所定の電流I1が流れるようにゲート電極13gとなるシリコン基板11とソース電極13sとの間の電位を制御する。
図14及び
図15に示す例では、マイクロプロセッサ38は、ソース電極13sの電位をソース電位または基準電位に切り替え、ゲート電極13gとなるシリコン基板11の電位を変動する。マイクロプロセッサ38は、センシング対象物質16中のイオン濃度に起因した、ゲート電極13g−ソース電極13s間の電位差を読み取る。また、TFTバイオセンサの特性であるイオン濃度とゲート電極13g−ソース電極13s間の電位差(電圧値)との対応を格納したテーブル(対応表)をあらかじめ記憶部38b(ROM38bb)に記憶しており、このテーブルを参照することで、読み取ったゲート電極13g−ソース電極13s間の電位差に対応するセンシング対象物質16中のイオン濃度を検知(特定)する。
電流電圧変換回路41は、ソース電極13sとドレイン電極13dとの間の微小電流を電圧値に変換し、変換した電圧値をマイクロプロセッサ38に入力電圧Vinとして与える。マイクロプロセッサ38は、入力電圧Vinが一定の値となるように、TFTバイオセンサのゲート電極13g(シリコン基板11)に印加する電圧(出力電圧Vout1)を制御する。マイクロプロセッサ38は、TFTバイオセンサの動作を停止する場合は出力電圧Vout1を出力せず、TFTバイオセンサを動作させる場合は出力電圧Vout1を出力する。
【0130】
第八の実施形態では、演算部38aが記憶部38b(ROM38bb)に記憶してある制御プログラムを実行することにより、マイクロプロセッサ38における処理を実現していた。このほかに、演算部38aが行う処理の一部又は全部を、専用のハードウェア回路で実現してもよい。
【0131】
(実施例11)
図14及び
図15を用いて、第八の実施形態の実施例11を説明する。TFTバイオセンサの特性が時間的に変化するため、マイクロプロセッサ38は、以下の処理を行う。すなわち、マイクロプロセッサ38は、イオン濃度を検知する際には、ソース電極13sの電位と、ドレイン電極13d及びゲート電極13g(シリコン基板11)の各電位とを同電位とする。その後、マイクロプロセッサ38は、ドレイン電極13dとゲート電極13g(シリコン基板11)に所定の電位を与える。換言すれば、TFTバイオセンサは、定電圧回路40と、定電圧回路40とを制御するマイクロプロセッサ38と、トランジスタ39とを用いてソース電極13sとドレイン電極13dとの電位差を制御される。
【0132】
具体的には、マイクロプロセッサ38は、出力電圧Vout2によりトランジスタ39を制御して、定電圧回路40の出力電位(ドレイン電極13dの電位)をソース電極13sの電位と同電位にする。また、マイクロプロセッサ38は、出力電圧Vout1により、ゲート電極13gとなるシリコン基板11の電位をソース電極13sの電位と同電位にする。その後、所定の時間が経過したら、マイクロプロセッサ38は、出力電圧Vout2によりトランジスタ39を制御してソース電極13sとドレイン電極13dの電位差をツェナーダイオード40の逆降伏電圧V1に固定する。そして、電流電圧変換回路41は、ソース電極13sとドレイン電極13d間に流れる微小電流を同相ノイズを除去して電圧値として検知し、検知した電圧値(入力電圧Vin)をマイクロプロセッサ38に与える。
【0133】
マイクロプロセッサ38は、電流電圧変換回路41から取得した電圧値(入力電圧Vin)が一定値になるように、例えば
図16に示した特性から求めた制御変数に応じてPID制御によりゲート電極13gとなるシリコン基板11の電位を制御する。なお、制御変数は記憶部38b(ROM38bb)に記憶されている。マイクロプロセッサ38は、電流電圧変換回路41から取得した電圧値(入力電圧Vin)と、記憶部38bに記憶してある制御変数とに基づくPID制御により、ゲート電極13g(シリコン基板11)に印加する電圧値(出力電圧Vout1)を算出する。
そして、マイクロプロセッサ38は、出力電圧Vout1をゲート電極13gに印可する。これにより、マイクロプロセッサ38は、ソース電極13sとドレイン電極13d間の電流値を所定の値I1とする。マイクロプロセッサ38は、ソース電極13sとドレイン電極13d間の電流値が所定の値I1となったことを検知すると、ゲート電極13gとなるシリコン基板11の電位と、
図16に示した特性を用いた測定法によりイオン濃度を算出する。
マイクロプロセッサ38は、イオン濃度が算出されると、出力電圧Vout1によりゲート電極13gとなるシリコン基板11の電位をソース電極13sの電位と同電位にする。また、マイクロプロセッサ38は、出力電圧Vout2によりトランジスタ39を制御して、ドレイン電極13dの電位とソース電極13sの電位とを同電位にする。
【0134】
以下に、TFTバイオセンサのソース電極13sの電位を基準にして、このTFTバイオセンサ機器の測定法を述べる。
【0135】
図16は、第八の実施形態のTFTバイオセンサ機器における測定原理の説明図である。
図16の横軸は、ソース電極13sの電位を基準にしたゲート電極13gの電圧(Vg-s)を示している。また、縦軸は、ソース電極13s−ドレイン電極13d間を流れる電流を示している。
図16は、ゲート電極電圧(Vg-s)対ソース−ドレイン電流特性を模式的に示している。ここで、イオン濃度検知時は、ソース電極13sとドレイン電極13dとの間の電位差は上述の通りV1(ツェナーダイオード40aの逆降伏電圧)に固定されている。
センシング対象物質16中のイオン濃度が変化し、センシング対象物質16とイオン感応絶縁膜14との界面での電気二重層電位差(
図14中のVedl)が+0.1V、0V、−0.1Vと変化すると、マイクロプロセッサ38は、TFTバイオセンサの特性からあらかじめ算出した電流値I1を流すために、ゲート電極13gとなるシリコン基板11への出力電圧Vout1を0.5V、1V、1.5Vと制御する。この際、制御を安定させるためにマイクロプロセッサ38は、出力電圧Vout1の操作量を、以下の式1にて算出する。そして、マイクロプロセッサ38は、ゲート電極13g(シリコン基板11)に算出した出力電圧Vout1を与える。
【0136】
操作量=Kp×(偏差)+Ki×(偏差の累積値)+Kd×(前回偏差との差)
…(式1)
なお、Kp,Ki,Kdは制御変数であり、例えば、それぞれ0.6,0.7,0.3である。偏差はソース電極13s−ドレイン電極13d間の電流を電圧として読み取った値(電流電圧変換回路41から取得する入力電圧Vin)と、あらかじめ設定した所定の値との差である。
【0137】
マイクロプロセッサ38の出力電圧Vout1はゲート電極13gの電圧Vg-sに等しいので、様々なイオン濃度において、一定電流I1を流すための出力電圧Vout1をマイクロプロセッサ38で読み取ることは、一定電流I1を流すためにVg-sがどのように変化するかを読み取ることと同じである。これは、様々なイオン濃度におけるゲート−ソース間電圧対ドレイン−ソース電流特性のシフト量(
図16で例示したような)を検知することに他ならない。マイクロプロセッサ38は、
図16に示した水素イオン濃度とゲート電極電圧Vg-sとをそれぞれ離散値で対応付けて記憶したテーブルをあらかじめ記憶部38b(ROM38bb)に格納しており、このテーブルを用いて、読み取った出力電圧Vout1から水素イオン濃度を特定する。
【0138】
図17は、水素イオン濃度とゲート電極電圧Vg-sとの対応を格納したテーブルを示す図である。
図17におけるテーブルは、「水素イオン濃度[pH] 」を記憶する第1の欄と、「ゲート電極の電圧Vg-s[V]」を記憶する第2の欄と、「ソース−ドレイン間電流I1[nA]」を記憶する第3の欄とを有する。
図17に示すテーブルは、水素イオン濃度とゲート電極電圧Vg-sと、ソース−ドレイン電極間電流とを対応付けて記憶する。なお、テーブルに記憶されたゲート電極13gの電圧Vg-sは、ソース電極13s−ドレイン電極13d間に流れる電流を一定電流I1にするための電圧であるので、ソース−ドレイン電極間電流の欄はテーブルになくてもよい。
【0139】
このように、上記の第一の実施形態から第七の実施形態で説明した薄膜トランジスタを用いて構成されたバイオセンサを、本第八の実施形態のTFTバイオセンサ部Sに用いることで、従来よりも感度の高いTFTバイオセンサ機器を実現することができる。
【0140】
(実施例12)
第八の実施形態の変形例として、TFTバイオセンサの経時変化を勘案した測定手段を説明する。本発明のTFTバイオセンサを、一定pHの被検液中で、一定ゲート電圧及び一定ドレイン電圧のもと、ドレイン電流の経時的変化を観察すると、理想的な状態の場合、常に一定のドレイン電流が得られることになる。しかしながら、多くの場合、時間経過とともにドレイン電流が減少する方向にドリフトする。
【0141】
このようなドリフトが発生する環境では、安定性が高い測定は実現できない。このドリフトは、イオン感応絶縁膜14界面におけるイオン吸着、イオンマイグレーションが緩慢に進行することに起因し、液中測定を実施する上では、必然的な変化と言うことができる。このドリフトを抑制する手段としては、間欠的に測定を行うことが有効となる。測定動作中に、電圧を印加しない、或いは測定時よりも低い電圧を印加する休止期間を設けることで、測定時のドリフトを抑制する、或いはドリフトによる変化を打ち消し、定期的にセンサの状態を初期化することが可能となる。
【0142】
図18は、実施例12のTFTバイオセンサ機器における測定方法の説明図である。
図18の横軸は、時間を示しており、縦軸は、ソース電極13s−ドレイン電極13d間を流れる電流を示している。
図18は、実施例12のTFTバイオセンサ機器において、時間の経過に伴うドレイン電流の変化を示しており、TFTバイオセンサを用いて間欠測定を行った結果を示す。例えば、ゲート電極13g及びドレイン電極13dにそれぞれ所定の電圧を印加してドレイン電流を測定する測定期間と、ゲート電極13g及びドレイン電極13dに印加する電圧を0Vとして測定を行わない休止期間とを120秒毎に繰り返す。
【0143】
実施例12のTFTバイオセンサでは、製造装置は、初めに、熱酸化膜10を形成したシリコン基板11上に、In−Ga−Zn−Oからなる50nmの半導体活性層12、モリブデン金属からなる100nmのソース電極13s及びドレイン電極13d、酸化タンタルからなる100nmのイオン感応絶縁膜14を、メタルマスクを用いてスパッタ法により成膜する。そして、製造装置は、大気中で350℃かつ1時間のアニールを行った後、イオン感応絶縁膜14の一部を残し、それ以外をシリコン樹脂からなる保護絶縁膜15で被覆する。
次に、製造装置は、薄膜トランジスタをpH6.0のマッキルバイン緩衝液に浸漬する。マッキルバイン緩衝液は、0.05mM/Lのクエン酸水溶液と0.025mM/Lのリン酸水素ナトリウム水溶液とにより調整する。
【0144】
上述した構成のTFTバイオセンサは、マイクロプロセッサ38による制御に従って間欠的に動作した場合、
図18に示すような測定結果が得られる。
図18には、ゲート電極13gに電圧7.5Vを印加し、ドレイン電極13dに電圧0.5Vを印加した状態で120秒間、ドレイン電流を測定し、その後、ゲート電極13g及びドレイン電極13dに印加する電圧を0Vとした状態で120秒間保持するという処理サイクルを複数回繰り返した結果を示す。ゲート電極13gに電圧7.5Vを印加し、ドレイン電極に電圧0.5Vを印加した駆動状態では、以下の状態が観察される。すなわち、220nA程度の初期のドレイン電流値が観察され、このドレイン電流値が、120秒後には数nA減少する変化が観察される。
【0145】
ゲート電圧及びドレイン電圧を0Vで120秒間保持した後、ゲート電圧を7.5V、ドレイン電圧を0.5Vとして測定を再開するときに、ドレイン電流値の変化に注目する。この変化は、前回の測定終了時のドレイン電流値(220nAから数nA減少した値)から、初期の220nA程度の値に回復している変化である。
この変化により、測定時のドリフトを抑制する、或いはドリフトによる変化を打ち消し、定期的にセンサの状態を初期化することが可能となる。
なお、ゲート電圧及びドレイン電圧を0Vに保持した120秒間もドリフトが継続したと仮定した場合、測定を再開する直前には、ドレイン電流値が、220nAから数nA減少した値から、更に数nA減少した値となると予想される。しかし、この場合でも、測定を再開したとき、ドレイン電流の減少がキャンセルされ、初期の220nA程度のドレイン電流値に回復する。
【0146】
ドレイン電流減衰の時定数が一定であると仮定した場合、TFTバイオセンサを駆動させてから一定時間後のドレイン電流を読み取ることで、前述のドリフトを考慮した正確性が高い測定を実現することができる。
【0147】
本実施例では、休止期間における電圧条件として、ゲート電圧及びドレイン電圧ともに0Vを選択したが、これには限定されず、ゲート電圧のみを0Vにしても良いし、ドレイン電圧のみを0Vにしても良い。休止期間における電圧値は、0V以下の値でも良く、更にはトランジスタ39をオフ状態に制御できるのであれば、0V以上の値でも良い。この場合、マイクロプロセッサ38は、単位時間間隔で(例えば120秒毎に)、ドレイン電圧(ソース電極13s−ドレイン電極13d間の電圧)を変更するように、トランジスタ39のオン/オフ状態を制御する。また、マイクロプロセッサ38は、ドレイン電圧が所定値(閾値)以上のときに、電流電圧変換回路41から取得した電圧値(入力電圧Vin)に基づいて算出した出力電圧Vout1をゲート電極13gに印加する。この場合、ドレイン電圧が所定値未満の場合には、マイクロプロセッサ38がゲート電極13gに電圧を印加しないことにより、ドレイン電圧の値に基づく間欠測定が可能となる。
【0148】
また、本実施例では、120秒サイクルで測定した結果を説明したが、ドリフトを抑制、或いはキャンセルすることができれば、適切な測定周期を選択することができる。例えば、パルス駆動でも同様の効果が得られ、サイン波、矩形波、三角波により駆動することもできる。また、例えば100Hz以上の周波数でパルス駆動することにより、擬似的にドリフトの発生を抑制する効果が得られ、安定性が高い測定を実現することができる。
【0149】
駆動電圧の変調、パルスの発生は、
図15に示した回路を構成するマイクロプロセッサ38により容易に実現することができる。
【0150】
上記の第八の実施形態及び実施例11、12で説明した回路構成・動作原理は、第一から第七の実施形態、及びこれらに対応する実施例1から10に適用することができる。更には、各実施例において、酵素19が存在しない構成のイオンセンサ(酵素反応を用いることなく被検液中の特定のイオン濃度を検出するセンサ)にも適用することができる。
【0151】
更に上記の第八の実施形態及び実施例11、12で説明した回路構成・動作原理は、酵素反応により水素イオン濃度(pH)が変化し、そのpH変化を検出することでバイオ物質の濃度をセンシングする構成に限らない。かかる回路構成・動作原理は、酵素反応で生成される任意のイオン濃度をセンシングする構成にも適用可能である。例えば、酵素反応でNaイオン、Kイオン等の陽イオンを発生するような被検液のセンシングを行う場合には、イオン感応絶縁膜14として、リガンドとなるバリノマイシン等のポリペプチドやクラウンエーテルを基本骨格に持つ化合物を樹脂材料と混合して塗布・焼成して形成した薄膜を適用することができる。陽イオンに限らず負イオンの場合もそれに適したリガンドを用いることが可能である。
【0152】
以上説明したバイオセンサは、医療・福祉・環境分野で用いられる高感度バイオセンサに適用することができる。酸化物半導体TFTを界面電位検出機構として用いることで、ネルンスト理論による感度を越える高感度センシングが可能となる。更に、生体物質認識機構である酵素をTFTとは異なる絶縁性基板に形成することで、高感度センシングの特徴を損なわず、バイオセンシングに応用することができる。また、酵素を異なる絶縁性基板に固定することは、酵素基板の交換を可能とする構成となり、酵素失活による機能低下を回復させることができる。このような特徴から、臨床検査において、疾病マーカー、バイオマーカー検査に使用することができる。
【0153】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものでは無いと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。