(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を詳細に説明する。以下において、複数の実施形態または変形例などが含まれる場合、複数の実施形態または変形例における各構成要素の特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。以下で説明する形状、数量、材質などは、説明のための例示であって、縦型旋盤の仕様により適宜変更が可能である。また、本文中の説明においては、必要に応じてそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0014】
図1Aは、実施形態の縦型旋盤10の正面図である。
図1Bは、縦型旋盤10により一部を加工して形成される工作物110を示す図である。
図2は、
図1Aの上面図であり、
図3Aは、
図1AのA−A断面図である。
図3Bは、タレット74において、
図3Aの矢印B方向に見て一部を省略して示す斜視図である。
図4は、主軸の下側に位置する加工工具を
図3の状態から前後方向で切り替えた状態を示す図である。
図5は、
図4のA−A断面図である。
【0015】
縦型旋盤10は、基台12、左右移動部材20、主軸台40、主軸46、工作物チャック48、主軸駆動モータ49、タレット支持台60(
図3A)、前後移動モータ70(
図3A)及びタレット74を備える。縦型旋盤10は、さらに、複数の第1加工工具90a、90b及び複数の第2加工工具92a、92bを備える。
図1A、
図2から
図5では、
図1Aの正面図において横方向に伸びる水平方向である左右方向をXで示し、
図3Aの断面図においてXに対し直交して横方向に伸びる水平方向である前後方向をYで示し、X、Yに対し直交する上下方向をZで示す。以下では、縦型旋盤10のうち、後述する基台12に対し後述の主軸台40が設けられる側(
図3Aの左側)を前側と規定し、主軸台40とは反対側(
図3Aの右側)を後側と規定する。そして、
図1Aに示すように前側から後側に見た場合において、左側及び右側を規定する。なお、以下の説明において、各構成要素の前後方向及び左右方向のそれぞれにおいて、配置及び移動方向は逆であってもよい。
【0016】
本発明を適用した縦型旋盤10によって加工される工作物110は、
図1Bに示すように、筒部101の上端が塞がれた素材であって、外周面の上側部分に複数の環状溝102が形成される。環状溝102の底部には周方向に複数の細孔103が外周面から内周面に貫通するように形成される。筒部101の下側部分において、周方向に180度位相が異なる2つの位置には、ピン(図示せず)を挿入するためのピン孔104が形成される。筒部101の外周面には、断面が楕円形となるようにオーバル加工が行われてもよい。
【0017】
図1A、
図2、
図3Aに示すように、基台12は、左右方向Xに分かれて配置された2つの脚部13と、2つの脚部13の上端部を左右方向Xに連結する上側支持部14とを含む門形状である。脚部13は、前後方向Yに伸びた下端部13aと、下端部13aの後端部(
図3Aの右端部)から立設された柱部13bとを有する。
【0018】
上側支持部14は、左右方向Xに伸びる。上側支持部14の前側(
図3Aの左側)端面には上下方向Zに離れて2つの第1ガイドレール15が固定される。各第1ガイドレール15は、左右方向Xに伸びている。上側支持部14の左右方向Xの右端部には、後述の左右移動部材20を左右方向Xに移動させる電動モータである左右移動モータ16が固定される。
【0019】
左右移動部材20は、上側支持部14の前側に配置され、下端部が2つの第1ガイドレール15に左右方向Xに移動可能に支持される。左右移動部材20は、第1送りねじ機構(図示せず)で左右方向Xに移動される。具体的には、第1送りねじ機構は、左右移動部材20に固定されたナット部材と、このナット部材とねじ係合するネジ軸とを有し、ネジ軸が左右移動モータ16の回転軸に結合される。左右移動モータ16の回転によって、ナット部材が左右方向Xに移動することで、左右移動部材20が左右方向Xに移動する。
【0020】
左右移動部材20の前側端部には、左右方向Xに離れて2つの第2ガイドレール21が固定される。各第2ガイドレール21は、上下方向Zに伸びている。左右移動部材20の上端部には、後述の主軸台40を上下方向Zに移動させる電動モータである昇降モータ22が固定される。
【0021】
主軸台40は、内側に主軸46を回転可能に支持する。主軸台40は、2つの第2ガイドレール21に上下方向Zに移動可能に支持される。主軸台40は、第2送りねじ機構(図示せず)で上下方向Zに移動される。具体的には、第2送りねじ機構は、主軸台40に固定されたナット部材と、このナット部材とねじ係合するネジ軸とを有し、ネジ軸が昇降モータ22の回転軸に結合される。昇降モータ22の回転によって、ナット部材が上下方向Zに移動することで、主軸台40が昇降する。これにより、主軸台40は、基台12の上側に左右方向X、かつ上下方向Zに移動可能に設けられる。主軸台40の上端部には主軸駆動モータ49が固定された状態で設けられる。
【0022】
主軸46は、主軸台40に対し上下方向Zの軸線を中心に回転可能に支持され、下端部が主軸台40から下側に突出する。工作物チャック48は、主軸46の下端部に設けられ、工作物110を着脱可能に把持するように構成される。主軸駆動モータ49の回転軸は、主軸46に固定される。これにより、主軸駆動モータ49の回転によって、主軸46が上下方向Zの軸線を中心に回転駆動する。
【0023】
さらに、
図4、
図5に示すように、基台12の上側支持部14の下端部において、左右方向X中央部には、レール支持部17が固定される。レール支持部17の下端部には、左右方向Xに離れて2つの第3ガイドレール18が固定される。各第3ガイドレール18は、前後方向Yに伸びている。各第3ガイドレール18は、レール支持部17の左右方向Xの側面から外側に張り出している。また、レール支持部17の後端部には、電動モータである前後移動モータ70が固定される。前後移動モータ70は、アクチュエータに相当する。
【0024】
そして、タレット支持台60は、2つの第3ガイドレール18の下側に吊り下げられるように、第3ガイドレール18に対し前後方向Yに移動可能に支持された状態で設けられる。具体的には、タレット支持台60の上端部には、左右方向Xに離れて2つの係合溝61が形成される。各係合溝61は第3ガイドレール18と係合する。タレット支持台60の上端部において左右方向X両端部に形成された鉤部62が、第3ガイドレール18の左右方向X端部で外側に張り出した部分に係合する。
【0025】
タレット支持台60は、第3送りねじ機構(図示せず)によって前後方向Yに移動される。具体的には、第3送りねじ機構は、タレット支持台60に固定されたナット部材と、このナット部材とねじ係合するネジ軸とを有し、ネジ軸が前後移動モータ70の回転軸に結合される。前後移動モータ70が回転することによってナット部材が前後方向Yに移動し、これによりタレット支持台60が前後方向Yに移動する。このため、前後移動モータ70は、タレット支持台60を前後方向Yに移動させる。
【0026】
なお、第1送りねじ機構、第2送りねじ機構、及び第3送りねじ機構のそれぞれは、ネジ軸及びナット部材が複数のボールを介して噛み合うボールねじ機構としてもよい。
【0027】
タレット支持台60の前側面は、前後方向Yの軸線に対し直交する平面を有し、この平面に面してタレット74が配置される。タレット74は、前後方向Yの軸線を中心に回転可能に支持される。タレット支持台60の前側面の中心部に形成された孔部には割出モータ64が固定される。割出モータ64の回転軸(図示せず)はタレット74の後端部(
図4、
図6の右端部)に固定される。割出モータ64は、タレット74を前後方向Yの軸線を中心に90度ずつ回転駆動する。
【0028】
タレット74には、後述するように複数の第1加工工具90a、90bと複数の第2加工工具92a、92bとが取り付けられる。具体的には、タレット74の周方向複数位置において、同じ種類である2つの第1加工工具90a、90bが前後方向Yに離れて配置され、別の周方向複数位置において、同じ種類である2つの第2加工工具92a、92bが前後方向Yに離れて配置される。図示の例では、第1加工工具90a、90b及び第2加工工具92a、92bは、それぞれ8つずつが設けられる。これにより、後述のように、第1加工工具90a、90b及び第2加工工具92a、92bのそれぞれで多数の交換作業を容易に行えるので、メインテナンス性を向上できる。
【0029】
図6から
図10を用いてタレット74と、第1加工工具90a、90b及び第2加工工具92a、92bの配置構成とを具体的に説明する。
図6は、
図3AのD部において、一部を断面にして示す拡大図である。
図7は、
図6の左側から右側に見た図である。
図8Aは、
図6のE−E断面図である。
図8Bは、
図8AのF部拡大図である。
図9は、
図6のG−G断面図であり、
図10は、
図7のH−H断面図である。
【0030】
タレット74は、円板状のタレット本体75と、タレット本体75の前側面に固定された正方形の枠状のホルダ取付台79と、4つの第1工具ホルダ80及び4つの第2工具ホルダ82とを含む。
【0031】
第1工具ホルダ80は、ホルダ取付台79の前側面(
図3Aの左側面)の四隅に1つずつが固定される。第2工具ホルダ82は、ホルダ取付台79の前側面の四隅に1つずつが、第1工具ホルダ80とホルダ取付台79の周方向に隣接するように固定される。第1工具ホルダ80及び第2工具ホルダ82は三角柱状であり、ホルダ取付台79の四隅に向かって伸びる放射状の平面に対して対称形状である。そして、タレット74の周方向の4つの位置において、第1工具ホルダ80と第2工具ホルダ82とが周方向の隙間Uをあけて平行に面する。隙間Uを介して隣り合う第1工具ホルダ80及び第2工具ホルダ82によって、1つの工具取付部84が形成される。このため、工具取付部84は、タレット74の周方向4つの位置に設けられる。また、タレット74は、タレット支持台60に前後方向Yの軸線を中心に回転可能に、かつ旋回割出可能に支持される。
【0032】
そして、各工具取付部84の第1工具ホルダ80において、第2工具ホルダ82との対向面である第1側面S1(
図7)における、前後方向Yに離れた2つの位置には、第1加工工具90a、90bがタレット74の周方向に突出するように取り付けられる。このために、
図10に示すように、第1側面S1に2つの溝Mが前後方向Yに離れて形成される。各溝Mは、タレット74の外周側面にも開口する。各溝Mには、第1加工工具90a、90bの根元側が挿入した状態で固定され、第1加工工具90a、90bの先端部が第1側面S1に開口する溝Mの端部から突出する。第1加工工具90a、90bは、工作物110(
図1B)の外周面に粗仕上げ加工を行うための仕上げ工具であり、先端部に切刃Pが固定される。第1加工工具90a、90bは同じ種類の工具であるが、便宜上符号を変えて説明する。
【0033】
一方、各工具取付部84の第2工具ホルダ82において、第1工具ホルダ80との対向面である第2側面S2(
図7)における、前後方向Yに離れた2つの位置には、第2加工工具92a、92bが周方向に突出するように取り付けられる。第2加工工具92a、92bも、第1加工工具90a、90bと同様に、第2側面S2に形成された溝Mに挿入して固定され、その先端部が溝Mの第2側面S2側から突出する。第2加工工具92a、92bは、工作物110(
図1B)の上端部の環状溝102(
図1B)を加工するための加工工具であり、先端部に切刃Pが固定される。これにより、各工具取付部84では、2つの第2加工工具92a、92bが、2つの第1加工工具90a、90bに対しタレット74の周方向に離れて取り付けられる。第2加工工具92a、92bは同じ種類の工具であるが、便宜上符号を変えて説明する。
【0034】
図6、
図8A、
図8Bに示すように、タレット支持台60の下側には、4つの第1給油路96a、96b、96c、96dを含む流路接続ユニット95が固定される。
【0035】
図11は、複数の加工工具90a、90b、92a、92bに切削油剤を供給するための油圧回路を示す図である。4つの第1給油路96a、96b、96c、96dは、高圧クーラントユニット120を構成する高圧給油ポンプ121に、それぞれ電磁オンオフ弁122を介して接続される。各加工工具90a、90b、92a、92bには、第1給油路96a、96b、96c、96dに接続された工具側油路93が形成される。各加工工具90a、90b、92a、92bは、工具側油路93から切刃Pに向けて切削油剤(クーラント液)を高圧で噴出するように構成される。これにより、後述のように、加工時の熱を抑制して切刃Pの耐摩耗性を高め、かつ、切り屑を分断しやすくして周囲の部品に切り屑が絡まることを防止できる。高圧クーラントユニット120は、高圧給油ポンプ121、及び電磁オンオフ弁122と、後述する油タンク123及びリリーフ弁124とを含んでいる。
【0036】
具体的には、
図6、
図8A、
図8Bに示すように、タレット支持台60の下側面には、流路接続ユニット95が取り付けられる。流路接続ユニット95は、ピストンホルダと呼ばれる。
【0037】
図12は、
図8BのJ−J断面図である。
図13は、タレット74の割り出しのための旋回を開始したときにおける
図12に対応する図である。
【0038】
流路接続ユニット95は、4つの第1給油路96a、96b、96c、96dを有するブロック95aと、各第1給油路96a、96b、96c、96dに設けられた油路ピストン98とを含んで構成される。以下、第1給油路96a、96b、96c、96dは、総称して第1給油路96と記載する場合がある。各第1給油路96は、一端側が上下方向Zに伸びてブロック95aの下側面に開口し、他端側が前後方向Y(
図12の左右方向)に伸びてブロック95aの前側面(
図12の左側面)に開口する。
図8Bに示すように、4つの第1給油路96の一端側部分の上下方向Zにおける長さは、左右方向Xの一端(
図8Bの左端)の第1給油路96aから他端(
図8Bの右端)の第1給油路96dに向かって順に小さくなる。
【0039】
図12に示すように、4つの油路ピストン98は、内部油路98aを有し、4つの第1給油路96のそれぞれの他端側部分に配置される。油路ピストン98の前端部には、ブロック95aの前側面から突出する突部98bが形成される。そして、内部油路98aの一端は、油路ピストン98の後端側(
図12の右端側)外周面で第1給油路96内に通じ、内部油路98aの他端は、突部98bの先端面に開口する。油路ピストン98の外周面の2個所位置にはフランジ98cが形成される。2つのフランジ98cの間の小径部外周面に内部油路98aが開口することによって、内部油路98aが第1給油路96に通じる。油路ピストン98の後端部とブロック95aの後端部との間にはバネ99が組み付けられることにより、油路ピストン98の位置ずれが抑制され、後述する中間給油路76a、76b、76c、76dに対する接続が確実に行われる。なお、油路ピストン98は、軸方向である前後方向において分離可能な複数の要素から構成されてもよい。
【0040】
さらに、
図11に示すように、流路接続ユニット95の各第1給油路96の一端は、電磁オンオフ弁122に接続される。電磁オンオフ弁122は、切削油剤の流通及び流通停止を、電磁ソレノイドへの通電またはその通電停止によって、複数の加工工具90a、90b、92a、92bのうち加工中の切刃Pに対してのみ切削油剤を供給するように切り替える。
【0041】
さらに、
図12、
図13に示すように、流路接続ユニット95を形成するブロック95aにおいて、タレット74とは反対側の後端部(
図12、
図13の右端部)には、複動油圧シリンダユニット130のロッド131が結合固定される。
【0042】
複動油圧シリンダユニット130は、シリンダ部材132の内部に摺動可能に配置されたピストン133と、ピストン133に結合されたロッド131とを含む。
図6に示すように、シリンダ部材132は、タレット支持台60の下側において、シリンダガイドレール134によって前後方向Yに移動可能に支持される。そして、シリンダ部材132の内部でピストン133の両側の油圧室Q1、Q2の一方に給油ポンプ135(
図11)から圧油を供給し、他方から圧油を排出する。これにより、ロッド131の先端が前後方向Xに往復移動可能である。
【0043】
図12に示すように、ロッド131の先端が前側に移動することで流路接続ユニット95のブロック95aが前進する。
図13に示すように、ロッド131の先端が後側に移動することでブロック95aが後退する。これにより、後述するように、タレット74(
図6)の旋回を円滑に行える。ロッド131の先端の移動は、後述する制御盤140(
図2、
図3A)によって制御される。
【0044】
図11に示す電磁オンオフ弁122において、流路接続ユニット95とは反対側には、高圧給油ポンプ121の吐出口が接続される。高圧給油ポンプ121の吸入口は、高圧クーラントユニット120の油タンク123に接続される。
【0045】
図6、
図9に示すように、タレット本体75の内部には中間給油路76a、76b、76c、76dが形成される。中間給油路76a、76b、76c、76dは、タレット本体75の周方向において、4つの90度異なる位置に1組ずつ形成される。4組の中間給油路76a、76b、76c、76dの形状及び配置は、90度ずつ回転させた状態で同じであるので、代表して
図9の下端に配置される1組の中間給油路76a、76b、76c、76dで説明する。
【0046】
以下、1組の中間給油路76a、76b、76c、76dは、便宜上、左側から右側に順に第1油路76a、第2油路76b、第3油路76c、第4油路76dと記載する場合がある。第1油路76a及び第3油路76cは、上流側部分が前後方向Yに伸びて、その上流端がタレット本体75の後側面に開口し、下流側部分が上下方向Zに伸びて下流端がタレット本体75の下側面に開口する。
【0047】
第1油路76a及び第3油路76cの下端は、第1中間配管77を介してタレット本体75の外側を通ってホルダ取付台79の上端部の左右方向X両端部で、ホルダ取付台79の第2給油路79a、79b(
図10)に接続される。
図10に示すように、第3油路76cに接続される第2給油路79aは、第1工具ホルダ80の第3給油路80aに接続される。そして、この第3給油路80aは、2つの第1加工工具90a、90bのうち、後側(
図1の上側)の第1加工工具90aの工具側油路93に接続される。
【0048】
第1油路76aに接続される第2給油路79bは、第2工具ホルダ82の第3給油路82aに接続される。そして、この第3給油路82aは、2つの第2加工工具92a、92bのうち、後側の第2加工工具92aの工具側油路93に接続される。
【0049】
一方、
図6、
図9に戻って、第2油路76b及び第4油路76dは、上流側部分が前後方向Yに伸びて、その上流端がタレット本体75の後側面に開口し、下流端がタレット本体75の前側面(
図6の左側面)に開口する。
図9では、第2油路76b及び第4油路76dにおいて、上下方向Zに伸びる部分の下端は塞がれている。
【0050】
第2油路76b及び第4油路76dの下流端は、タレット本体75の前側面で第2中間配管78に接続される。第2中間配管78は、ホルダ取付台79の内側及び複数の工具ホルダ80,82の内側部分を通って上端の工具ホルダ80,82の前側から工具ホルダ80,82の第4給油路80b、82bに接続される。
【0051】
第1工具ホルダ80の第4給油路80bは、タレット本体75の
第2油路
76bに、第2中間配管78を介して接続される。そして、この第4給油路80bは、第1工具ホルダ80の2つの第1加工工具90a、90bのうち、前側の第1加工工具90bの工具側油路93に接続される。
【0052】
第2工具ホルダ82の第4給油路82bは、タレット本体75の
第4油路
76dに、第2中間配管78を介して接続される。そして、この第4給油路82bは、第2工具ホルダ82の2つの第2加工工具92a、92bのうち、前側の第2加工工具92bの工具側油路93に接続される。
【0053】
図12に示すように、第1油路76a、第2油路76b、第3油路76c、及び第4油路76dにおいて、タレット本体75の後側面に開口する開口端には、それぞれ油路ピストン98の突部98bが挿入される。これによって、各油路76a、76b、76c、76dの上流端は、流路接続ユニット95の第1給油路96に接続される。
【0054】
図11に戻って、高圧給油ポンプ121の吐出口と流路接続ユニット95の第1給油路96の一端との間には、リリーフ弁124に通じる油路が接続される。このリリーフ弁124によって、工具側油路93から噴出される圧油の圧力を所定の高圧に設定することが可能である。このような高圧の圧油が加工工具の切刃Pに向けて噴出されることによって、加工時に生じる切屑を分断しやすくなる。
【0055】
図2、
図3Aに戻って、縦型旋盤10の基台12の上端部で後端には、制御盤140が固定される。制御盤140は、左右移動モータ16、昇降モータ22、主軸駆動モータ49、前後移動モータ70、割出モータ64、及び、各電磁オンオフ弁122の作動を制御する。制御盤140は、演算回路及び記憶部と、ユーザによって操作される操作部とを有する。制御盤140は、操作部の操作に応じて縦型旋盤10の作動を制御する。
【0056】
また、制御盤140は、複動油圧シリンダユニット130への圧油の供給及び排出を制御することにより、複動油圧シリンダユニット130のロッド131の先端の移動を制御する。これにより、流路接続ユニット95の移動が制御される。具体的には、
図13に示すように、タレット74(
図6、
図7)が割出のための旋回を開始するときには、制御盤140は、ロッド131をタレット74とは反対側である後側に移動させるように、複動油圧シリンダユニットへの圧油の供給及び排出を切り替える。これにより、タレット74が旋回するときに流路接続ユニット95の油路ピストン98の突部98bが旋回の妨げとなることがなく、旋回を円滑に行える。
【0057】
一方、
図12に示すように、タレット74が旋回を終了したときには、制御盤140は、ロッド131をタレット74側である前側に移動させるように、複動油圧シリンダユニットへの圧油の供給及び排出を切り替える。これにより、流路接続ユニット95がタレット74に連結され切刃Pに切削油剤が供給可能となる。
【0058】
図1A、
図3Aに示すように、基台12の左右方向X中央部の下側にはクーラント回収装置142が配置される。クーラント回収装置142は、工作物110の加工を行うときに加工工具90a、90b、92a、92bから工作物110の加工部に向けて噴出された切削油剤を回収する。クーラント回収装置142には、切削油剤とともに、加工で生じた切屑も回収される。クーラント回収装置142の後端部(
図3Aの右端部)には、コンベアベルト143の前端部が挿入されて、その後端側から切屑を外部に排出する。
【0059】
クーラント回収装置142にはクーラント冷却装置144が接続される。クーラント冷却装置144は、クーラント回収装置142から供給された切削油剤を、フィルタ(図示せず)に通過させた後、適宜の熱交換部で冷却媒体と熱交換させて冷却する。例えば冷却媒体は、水、空気などである。クーラント冷却装置144で冷却された切削油剤は、高圧クーラントユニット120を構成する高圧給油ポンプ121で吸引されて再度、流路接続ユニット95(
図3A、
図6)に送られる。
【0060】
さらに、
図2に示すように、縦型旋盤10には主軸冷却装置145が設けられる。主軸冷却装置145は、クーラント冷却装置144から冷却後の切削油剤が供給されて、主軸台40の主軸46との回転支持部に切削油剤を供給して、回転支持部の冷却及び潤滑を行う。
【0061】
一方、
図1A、
図2に示すように、基台12の左右方向Xにおいて左側の柱部13bの前側には、搬入台146が配置される。基台12の左右方向Xにおいて右側の柱部13bの前側には、搬出台147が配置される。搬入台146は、縦型旋盤10から離れた位置から未加工の工作物110を主軸台40の付近に搬送する第1搬送ベルト(図示せず)を有する。搬出台148は、加工済みの工作物110を主軸台40の付近より、縦型旋盤10から離れた位置に搬送する第2搬送ベルト(図示せず)を有する。工作物110を加工する前には、主軸台40の工作物チャック48が、左右移動モータ16の駆動によって、搬入台146に配置された未加工の工作物110の真上に移動される。以下、工作物チャック48は、チャック48と記載する。
【0062】
そして、昇降モータ22の駆動によって、チャック48が下降して未加工の工作物110を掴んで引き上げる。工作物110の加工後では、チャック48が、左右移動モータ16及び昇降モータ22の駆動によって搬出台147に移動されて、加工済みの工作物110を搬出台147に配置する。そして、第2搬送ベルトで加工済みの工作物110が搬出される。
【0063】
上記の縦型旋盤10を用いて工作物110の加工作業を行う場合において、第1加工工具90a、90bで工作物110の外周面の粗仕上げ加工を行う場合を説明する。このとき、タレット74の上端部に配置された1つの工具取付部84において、前側または後側の第1加工工具90a、90bが工作物110と前後方向Yにおいて同じ位置に移動するように、前後移動モータ70が駆動される。例えば、
図3Aに示す場合、後側の第1加工工具90aが工作物と前後方向Yの同じ位置に移動される。そして、主軸駆動モータ49の駆動で工作物110を上下方向Zの軸線中心に回転させながら、昇降モータ22の駆動で工作物110を下降させて、後側の第1加工工具90aの切刃に接触させる。これにより工作物110の外周面が粗仕上げ加工される。
【0064】
一方、後側の第1加工工具90aの切刃が欠けるなどにより使用が不能となったときには、
図4に示すように、前後移動モータ70を駆動することによって、タレット74を前側(
図4の左側)に移動させる。そして、前側の第1加工工具90bを工作物110の加工用に用いる。これにより、工作物110を加工する第1加工工具90a、90bを、前後方向Yで交換できるので、作業者が手作業で交換作業を行うことも、タレット74を旋回させることも、いずれも必要がない。そして、1つの工具取付部84において、前後方向Yの両側の第1加工工具90a、90bのいずれもが使用不能となったときには、タレット74を90度旋回させ割出を行って、別の工具取付部84の第1加工工具90a、90bで加工作業を行う。
【0065】
一方、第2加工工具92a、92bで工作物110の溝加工を行うときには、1つの工具取付部84において、例えば後側の第2加工工具92aが工作物110と前後方向Yの同じ位置に移動するように、前後移動モータ70を駆動する。そして、左右移動モータ16の駆動によって、第2加工工具92aの外周面とは左右方向Xにおいて少し離れた位置に工作物110を移動させる。次いで、昇降モータ22の駆動によって、第2加工工具92aと上下方向Zの同じ位置に工作物110を下降させる。そして、主軸駆動モータ49の駆動で工作物110を上下方向Zの軸線中心に回転させながら、左右移動モータ16の駆動で工作物110を第2加工工具92aの切刃に接触させることで工作物の外周面に溝加工を行う。
【0066】
第2加工工具92aの使用が不能となったときには、第1加工工具90a、90bの場合と同様に、タレット74を前側に移動させて、工作物110を加工する第2加工工具92a、92bを前後方向Yで交換する。交換後の前側の第2加工工具92bがさらに使用不能となったときには、タレット74の旋回割出を行って、別の工具取付部84の第2加工工具92a、92bで加工作業を行う。上記では、第1加工工具90a、90b及び第2加工工具92a、92bのそれぞれにおいて、後側の工具から先に加工作業を行う場合を説明したが、前側の工具から先に加工作業を行ってもよい。
【0067】
上記の縦型旋盤10によれば、第1加工工具90a、90bまたは第2加工工具92a、92bに交換の必要が生じたときに、前後移動モータ70の作動によりタレット74を前後方向Yに移動させる。これにより、別の第1加工工具90a、90bまたは第2加工工具92a、92bに交換する作業を容易に行える。このため、メインテナンス性を向上できるので、高性能化を図れる。
【0068】
なお、上記では、前後移動モータ70、左右移動モータ16、昇降モータ22のそれぞれが電動モータであり、そのモータの駆動によって縦型旋盤10の構成要素を移動させる場合を説明した。一方、各モータ70,16,22の代わりに、アクチュエータとして、空気圧、または油圧を用いてシリンダからのロッドの突出量を変化させるシリンダ機構を用いて、ロッドに結合された構成要素を移動させる構成としてもよい。
【0069】
図14は、実施形態の別例の縦型旋盤10において、
図3Bに対応する図である。
図1から
図13の構成では、タレット74において、同じ種類の第1加工工具90a、90bまたは第2加工工具92a、92bが前後方向Yに離れて配置される構成を説明した。一方、
図14の構成では、各工具取付部84または一部の工具取付部84において、工具ホルダ80,82の前後方向両側に、異なる種類の加工工具が取り付けられる。
【0070】
具体的には、第1工具ホルダ80には、前側に第1加工工具90aが取り付けられ、後側には第1加工工具90aとは異なる種類の第3加工工具150が取り付けられる。第2工具ホルダ82には、前側に第2加工工具92aが取り付けられ、後側には第2加工工具92aとは異なる種類の第4加工工具151が取り付けられる。
【0071】
第3加工工具150及び第4加工工具151は、いずれも工作物110(
図1A)の内周面の仕上げ加工に用いられる。工具取付部84がタレット74の上端に配置された状態で、その工具取付部84の第3加工工具150及び第4加工工具151は、上下方向Zに伸びて、工具ホルダ80,82に取り付けられる。第3加工工具150は粗仕上げの中間仕上げ用であり、第4加工工具151は精密仕上げの最終仕上げ用である。第3加工工具150を用いて加工作業を行う場合、主軸駆動モータ49の駆動で工作物110を回転させながら、昇降モータ22の駆動で工作物110を下降または上昇させることにより内周面の仕上げ加工を行う。
【0072】
上記の構成によれば、工作物110をより多くの種類の加工工具で加工できるので、縦型旋盤10の高性能化を図れる。その他の構成及び作用は、
図1から
図13の構成と同様である。
【0073】
図15は、別例の縦型旋盤10であって、工作物110に穴あけ加工する工具を追加した構成において、工作物110の外周面の加工後に穴あけ加工を行う工程を示す図である。
図16は、
図15(c)のK−K断面図である。
【0074】
図15の構成では、
図1から
図13の構成において、タレット支持台60にはドリルユニット153が支持される。ドリルユニット153は、タレット支持台60の前側部分の上端部に、前後方向Yに移動可能に支持された支持部材154と、穴あけ工具155及びバリ取り工具156とを含む。
図16に示すように、穴あけ工具155及びバリ取り工具156は、左右方向Xに並んでそれぞれ前後方向Yに伸びるように、支持部材154の前側に取り付けられる。ドリルユニット153は、ドリル移動モータ(図示せず)の駆動によって、タレット支持台60に対し前後方向Yに移動するように構成される。穴あけ工具155及びバリ取り工具156は、それぞれモータ(図示せず)により前後方向Yの軸線中心に回転駆動される。
【0075】
図15(a)に示すように、工作物110の外周面の加工中には、ドリルユニット153が緩衝しないように、ドリル移動モータの駆動でドリルユニット153をタレット支持台60に対し後側に移動させておく。
図15(b)に示すように、ドリル加工の準備段階では、昇降モータ22の駆動で工作物110を所定位置に上昇させ、かつ、前後移動モータ70の駆動でタレット支持台60を後側に移動させる。そして、ドリル移動モータの駆動でドリルユニット153を、タレット支持台60に対し前側に移動させて工作物110の外周面に、穴あけ工具155の刃先を接近させる。
【0076】
図15(c)に示すように、ドリル加工時には、前後移動モータ70の駆動でタレット支持台60を前側に移動させることにより、穴あけ工具155を回転駆動しながら前進させる。これによって、工作物110に穴加工を行うことができる。ドリルビット形状のバリ取り工具156(
図16)を用いた加工でも穴あけ工具155の場合とほぼ同様に構成要素が移動される。一方、バリ取り加工では、穴加工で形成された穴の開口端部だけに刃先を接触させて、その端部に生じたバリを削るように、バリ取り工具156が前後方向Yに移動される。このような一連の穴加工により、例えば
図1Bに示す工作物110の環状溝102の底部に細孔103を形成することができる。その他の構成及び作用は、
図1から
図13の構成と同様である。
【0077】
図17は、実施形態の別例の縦型旋盤10であって、工作物110の筒部の外周面にオーバル加工を行う工具を追加した構成において、一部を省略して示している正面図である。
図18は、
図17の構成において、工作物110の溝仕上げ加工後に筒部の外周面にオーバル加工を行う工程を示す図である。
図19は、
図18(b)の左側から右側に見た図である。
【0078】
図17の構成では、
図1から
図13の構成において、基台12の左右方向Xにおける左側の柱部13bの上部で、第1ガイドレール15の下側には、オーバル加工ユニット158が支持される。オーバル加工ユニット158は、柱部13bに固定された油圧シリンダ部材159(
図18)と、油圧シリンダ部材159に左右に並んで同期するように配置された2つのロッド160と、各ロッド160の先端部に結合された加工本体部161とを含む。加工本体部161は、切刃を有する加工工具162と、加工工具162を左右方向Xに移動させる第2左右移動モータ163とを有する。
【0079】
図18(a)に示すように、工作物110の溝加工などの外周面の加工中には、油圧シリンダ部材159への圧油の供給及び排出を切り替えることによって、ロッド160の先端を後側に移動させて加工本体部161を工作物110の後側に退避させる。そして、
図18(b)に示すようにオーバル加工時には、昇降モータ22(
図18(a))の駆動で工作物110を上昇させる。その後、油圧シリンダ部材159への圧油の供給及び排出の切替によって、ロッド160の先端を前側に移動させることにより、加工本体部161を所定位置まで前進させる。次いで、
図19に示すように、左右移動モータ16の駆動により左右方向において左側に工作物110を移動させて工作物110の外周面に切刃を接近させる。そして、第2左右移動モータ163による加工工具162の切刃の左右方向Xへの移動量と、主軸駆動モータ49による工作物110の回転角度とを同期させ、かつ、昇降モータ22で工作物を下降させる。これによって、工作物110の外周面が断面楕円形に仕上げ加工される、すなわちオーバル加工が行われる。その他の構成及び作用は、
図1から
図13の構成と同様である。
【0080】
図20は、実施形態の別例の縦型旋盤10において、タレット74(
図1A)の代わりに工作物110のピン孔104(
図1B)を仕上げ加工するピン孔加工ユニット165を追加した構成において、位置決め工程を示す図である。
図21は、
図20の構成において、仕上げ工程を示す図である。
図22は、
図20(a)のL−L断面図である。
【0081】
図20の構成では、
図1から
図13の構成において、タレット支持台60(
図3A)及びタレット74を取り除いて、その代わりにピン孔加工ユニット165が、基台12の上部に吊り下げ支持される。ピン孔加工ユニット165は、第3ガイドレール18に前後方向Yに移動可能に支持された支持部材166、位置決めバー167、第1中ぐり工具168、及び第2中ぐり工具169を含む。支持部材166は、前後移動モータ70の駆動によって、前後方向Yに移動される。
【0082】
図22に示すように、位置決めバー167は、支持部材166において、左右方向Xの中央部で前側に突出するように、かつ、支持部材166に対し前後方向Yに移動可能に支持される。位置決めバー167は、図示しない油圧シリンダ機構によって支持部材166に対し前後方向Yに移動される。位置決めバー167は、円柱状でその先端部の外径は、工作物110(
図20)において、ピン孔の下穴170の内径と略等しい。
【0083】
第1中ぐり工具168及び第2中ぐり工具169は、支持部材166の下側において、左右方向Xに並んで固定される。第1中ぐり工具168は中仕上げ用であり、第2中ぐり工具169は最終仕上げ用である。各中ぐり工具168,169はそれぞれ内蔵するモータ(図示せず)によって回転駆動される。
【0084】
ピン孔の仕上げ加工時には、まず、
図20(a)に示すように、工作物110に予め形成された下穴170が位置決めバー167の上下方向Z位置と一致するように、昇降モータ22が駆動される。そして、油圧シリンダ機構によって位置決めバー167を工作物110の外周面付近まで前進させる。次いで、
図20(b)に示すように、前後移動モータ70の駆動で位置決めバー167が前進されて、下穴170に差し込まれる。これにより工作物110の位置決めが完了する。このときチャック48による工作物110の把持力を少し弱めることにより、位置決めバー167が通過する際に工作物110が位置決めバー167に沿って加工位置に修正移動可能となっている。その後、
図20(c)に示すように、チャック48の把持力を強くし、かつ、油圧シリンダ機構及び前後移動モータ70の駆動で位置決めバー167が後退される。そして、その状態で工作物110を左右方向Xの右側へ移動させて、かつZ方向に下降させて下穴170の軸心を第1中ぐり工具168の軸心と一致させる。
【0085】
次いで、
図21に示すように、位置決めバー167を後退させた状態のままで、前後移動モータ70の駆動で支持部材166を前進させ、第1中ぐり工具168を回転駆動することにより、下穴170の内面を中仕上げで加工する。これにより、最終仕上げ前のピン孔が形成される。中仕上げ加工の完了後、左右移動モータ16の駆動により主軸台40を左右方向Xの左側に移動させて、第2中ぐり工具169の軸心とピン孔の軸心とを一致させる。その後、第1中ぐり工具168の場合と同様に、第2中ぐり工具169でピン孔の最終仕上げ加工を行う。その他の構成及び作用は、
図1から
図13の構成と同様である。
【0086】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。