(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
他方、本発明者らは、撮像装置の姿勢によって撮像素子出力に含まれる画像ノイズが変化する点に着目した。この画像ノイズ変化は、撮像装置内にあるノイズ源に、撮像装置の姿勢の変化に伴う変化が生じている為と考えられる。また、この種の画像ノイズの主たるノイズ源は、撮像装置の姿勢の変化に伴って磁界の変化を生じさせ、それによって撮像素子に影響を与える作動手段であると考えられる。
【0006】
特許文献1では、ダーク画像にゲインをかけて補正する構成となっているが、撮像装置の姿勢によって変化する画像ノイズを補正することはできない。また、特許文献2に記載のカメラは、振動発生時のノイズを補正するものであり、カメラの姿勢によって変化する画像ノイズを補正する構成ではない。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、撮像装置の姿勢によって変化する画像ノイズを好適に補正することができる撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの側面によって提供されるのは、撮像装置であって、画像信号を生成する撮像素子と、磁界作用を伴う作動装置と、作動装置における磁界(磁界の状態)に関する情報を取得する磁界情報取得手段と、磁界に伴う画像ノイズの基準を表す基準情報を保持する基準情報保持手段と、基準情報と、磁界情報取得手段によって取得された磁界に関する情報とに基づいて、撮像素子によって取得される撮影画像の画像ノイズを補正する補正手段と、を備える。
【0009】
ここで、磁界作用を伴う作動装置とは、典型的には、ぶれ補正機構等の電磁アクチュエータを有する装置であって、撮像装置の姿勢の変化に伴って磁界の変化を生じさせるものである。したがって、上記構成の撮像装置によれば、撮像装置の姿勢によって変化する画像ノイズを好適に補正することができる。
【0010】
磁界情報取得手段は、作動装置の駆動信号から磁界に関する情報を取得しても良い。
【0011】
撮像装置は、撮像装置の姿勢に関する情報を取得する為の姿勢情報取得手段を更に備えていても良い。この場合、磁界情報取得手段は、撮像装置の姿勢に関する情報を、磁界に関する情報として取得することができる。
【0012】
基準情報保持手段は、画像ノイズの基準を表す基準情報を、撮像装置に固定される座標系の座標軸それぞれの成分毎に保持し、磁界情報取得手段は、座標軸それぞれについて磁界に関する情報を取得しても良い。この場合、補正手段は、座標軸それぞれの成分毎に保持される基準情報に、座標軸それぞれについて取得される磁界に関する情報をそれぞれ係数として乗じて合成することによって補正画像を生成し、撮影画像の補正を行う。
【0013】
基準情報は、撮像装置における磁界が最大となる姿勢で取得されても良い。
【0014】
基準情報は、撮像装置における磁界が、目的の軸以外の影響が最小となる姿勢で取得されても良い。
【0015】
また、本発明の別の側面によって提供されるのは、撮像装置であって、画像信号を生成する撮像素子と、撮像装置の姿勢に関する情報を取得する為の姿勢情報取得手段と、撮像装置の姿勢の変化に伴う画像ノイズの基準を表す基準情報を保持する基準情報保持手段と、基準情報と、姿勢情報取得手段によって取得される撮像装置の姿勢に関する情報とに基づいて、撮像素子によって取得される撮影画像の画像ノイズを補正する補正手段と、を備える。
【0016】
このような構成によれば、撮像装置の姿勢によって変化する画像ノイズを好適に補正することができる。
【0017】
また、本発明の別の側面によれば、コンピュータに、磁界作用を伴う作動装置における磁界に関する情報を取得する磁界情報取得手順と、磁界に伴う画像ノイズの基準を表す基準情報を保持する基準情報保持手順と、基準情報と、磁界情報取得手順によって取得された磁界に関する情報とに基づいて、撮像素子によって取得される撮影画像の画像ノイズを補正する補正手順と、を実行させる為の撮像制御プログラムが提供される。
【0018】
また、本発明の別の側面によれば、コンピュータに、撮像装置の姿勢に関する情報を取得する為の姿勢情報取得手順と、撮像装置の姿勢の変化に伴う画像ノイズの基準を表す基準情報を保持する基準情報保持手順と、基準情報と、姿勢情報取得手順によって取得される撮像装置の姿勢に関する情報とに基づいて、撮像素子によって取得される撮影画像の画像ノイズを補正する補正手順と、を実行させる為の撮像制御プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、撮像装置の姿勢によって変化する画像ノイズを好適に補正することができる撮像装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態の撮像装置について図面を参照しながら説明する。以下で詳細に説明するように、本実施形態の撮像装置は、撮像装置の姿勢によって変化する画像ノイズを好適に補正するように構成される。なお、以下においては、撮像装置の一例として、コンパクトデジタルカメラについて説明するが、撮像装置はコンパクトデジタルカメラに限らず、例えば、デジタル一眼レフカメラ、ミラーレス一眼カメラ、スマートフォン、フィーチャフォン、携帯ゲーム機など、撮影機能を有する別のタイプの装置に置き換えてもよい。
【0022】
[撮像装置の全体構成]
図1は、本実施形態の撮像装置1の外観図である。
図1に示されるように、撮像装置1は、筐体10上の正面側にレンズユニット11、フラッシュ窓12を備え、上部にはレリーズボタン13を備えている。
【0023】
図2は、本実施形態の撮像装置1の構成を示すブロック図である。
図2に示されるように、撮像装置1の筐体10内には、CPU(Central Processing Unit)100、操作部102、駆動回路104、絞り兼シャッタ110、撮像素子112、ぶれ補正機構140、信号処理回路114、画像処理エンジン116、バッファメモリ118、カード用インタフェース120、LCD(Liquid Crystal Display)制御回路122、LCD124、ROM(Read Only Memory)126、フラッシュ駆動回路127、フラッシュ128、加速度センサ130及びジャイロセンサ131が備えられている。撮像装置1のレンズユニット11内には、フォーカスレンズ106、レンズ駆動機構107が備えられている。
【0024】
ぶれ補正機構140は、いわゆるセンサシフト方式のぶれ補正機構として構成されている。撮像装置1において、加速度センサ130及びジャイロセンサ131は、撮像装置1の振動や回転運動(ピッチ、ヨー)に応じた信号を出力する。CPU100は、ぶれ補正コントローラとしての機能を含み、加速度センサ130及びジャイロセンサ131からの信号に基づいて、撮像素子112の駆動量を計算し、ぶれ補正機構140を制御することによって撮像素子112を所定の面内でシフトさせることでぶれ補正を行う。ぶれ補正機構140の構成については後述する。なお、センサシフト方式のぶれ補正制御としては当分野で周知の制御方式を用いることができる為、ぶれ補正制御に関する詳細な説明を省略する。
【0025】
操作部102には、電源スイッチやレリーズボタン13、撮影モードスイッチなど、ユーザが撮像装置1を操作するために必要な各種スイッチまたはボタンが含まれる。ユーザにより電源スイッチが押されると、図示省略されたバッテリから撮像装置1の各種回路に電源ラインを通じて電源供給が行われる。CPU100は電源供給後、ROM126にアクセスして制御プログラムを読み出してワークエリア(不図示)にロードし、ロードされた制御プログラムを実行することにより、撮像装置1全体の制御を行う。
【0026】
レリーズボタン13が操作されると、CPU100は、撮像装置1に内蔵されたTTL(Through The Lens)露出計(不図示)で測定された測光値に基づき適正露出が得られるように、駆動回路104を介して絞り兼シャッタ110を駆動制御する。ここで、絞り兼シャッタ110は、シャッタとしての機能と、絞り値を調整するための絞りとしての機能を備える。駆動回路104は、絞り兼シャッタ110を駆動し、適正露出が得られるように、絞り値を調整する。絞り値の調整は、例えばプログラムAE(Automatic Exposure)やシャッタ速度優先AEなど、撮影モードスイッチにより指定されるAE機能に基づいて行われる。なお、これらのAEの構成及び制御については周知であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0027】
また、CPU100はAE制御と併せてAF(Auto Focus)制御を行う。AF制御では、レンズ駆動機構107が駆動回路104を介して駆動制御され、フォーカスレンズ106に備えられる複数枚のレンズの位置及び位置関係が調節される。これにより、フォーカスレンズ106の焦点距離が変化する。AF制御では、フォーカスレンズ106の焦点距離が変化されることにより、フォーカスレンズ106のピントが自動で被写体に合わせられる。
【0028】
被写体からの光束は、フォーカスレンズ106、絞り兼シャッタ110を介して撮像素子112により受光される。撮像素子112は、例えばCCD(Charged Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサである。撮像素子112が被写体の光束によって露光される時間は、絞り兼シャッタ110によって調整される。撮像素子112は、撮像面上の各画素で受光した光束を光量に応じて電気信号に変換し、変換された電気信号を信号処理回路114に出力する。信号処理回路114は、撮像素子112より入力される電気信号に対して所定の信号処理を施して、画像処理エンジン116に出力する。
【0029】
画像処理エンジン116は、信号処理回路114より入力される信号に対して色補間、マトリクス演算、Y/C分離等の所定の信号処理を施して輝度信号Y、色差信号Cb、Crを生成し、JPEG(Joint Photographic Experts Group)などの所定のフォーマットで圧縮する。バッファメモリ118は、画像処理エンジン116による処理の実行時に、処理データの一時的な保存場所として用いられる。
【0030】
画像処理エンジン116は、カード用インタフェース120を介してメモリカード200と通信可能である。画像処理エンジン116は、生成された圧縮画像信号(撮影画像データ)をメモリカード200または撮像装置に備えられる不図示の内蔵メモリに保存する。
【0031】
また、画像処理エンジン116は、Y/C分離後の信号に所定の信号処理を施して、フレームメモリ(不図示)にフレーム単位でバッファリングする。画像処理エンジン116は、バッファリングされた信号を所定のタイミングで各フレームメモリから掃き出して所定のフォーマットのビデオ信号に変換し、LCD制御回路122に出力する。LCD制御回路122は、画像処理エンジン116より入力される画像信号を基にLCD124の液晶を変調制御する。これにより、被写体の撮影画像がLCD124の表示画面に表示される。ユーザは、AE制御及びAF制御に基づいて適正な輝度及びピントで撮影された撮影画像を、LCD124の表示画面を通じて視認することができる。
【0032】
画像処理エンジン116は、ユーザにより撮影画像の再生操作が入力されると、ユーザの操作によって指定された撮影画像データをメモリカード200又は内蔵メモリより読み出して所定のフォーマットの画像信号に変換し、LCD制御回路122に出力する。LCD制御回路122が画像処理エンジン116より入力される画像信号を基に液晶を変調制御することで、被写体の撮影画像がLCD124の表示画面に表示される。
【0033】
フラッシュ駆動回路127は、ユーザにより操作部102に対してフラッシュ撮影を指示する操作が入力されると、フラッシュ128に駆動電圧を印加する。フラッシュ128は、駆動電圧に応じた照射光(閃光)を射出し、フラッシュ窓12を介して被写体を照射する。撮像装置1が閃光を用いたフラッシュ撮影を行うか、閃光を用いない撮影を行うかは、自動または手動で設定される。
【0034】
加速度センサ130は、互いに直交する3方向の加速度を検出することが可能な3軸加速度センサであり、撮像装置1の加速度を検出するために用いられる。加速度センサ130からは、3方向の加速度に基づいた3つの加速度値が出力される。CPU100は、出力された加速度値に基づいて、加速度の大きさおよび加速度の方向を計算する。計算された加速度の大きさおよび加速度の方向を用いて、撮像装置1の状態を判定することができる。例えば、加速度の方向を用いて、撮像装置1にかかる重力の方向が計算される。重力の方向を用いることで、撮像装置1の姿勢が計算される。
【0035】
[画像ノイズ補正の為の構成]
以下、撮像装置1における画像ノイズ補正の為の構成について説明する。撮像装置1は、撮像素子112を遮光して取得した画像に相当するダーク画像を予め取得しておき、撮影時の撮像素子出力からダーク画像を減算することによって撮像素子112で生じる画像ノイズを補正する機能を有する。本発明の発明者らは、本実施形態の撮像装置1のようにぶれ補正機構を有する装置では、撮像装置1の姿勢によって画像ノイズが変化することに着目した。これは、撮像装置1の姿勢によって、ぶれ補正機構140内の電磁アクチュエータからのもれ磁束(すなわち、撮像素子112に影響する磁束)が変化することによるものであると考えられる。このような現象に鑑み、撮像装置1は、撮像装置1の姿勢に応じてダーク画像に係数をかけてダーク画像を補正した上で、撮影時の撮像素子出力から補正後のダーク画像を減算することによって、撮像装置1の姿勢によって変化する画像ノイズを好適に補正するように構成される。
【0036】
[カメラの姿勢情報]
撮像装置1では、3軸の加速度センサ130からの出力に基づいて撮像装置1の姿勢が検出される。
図3及び
図4は、加速度センサ130からの出力と、撮像装置1の姿勢との対応関係を説明する為の図である。ここでは、撮像装置1の光軸方向をZ軸方向(被写体側から撮像装置に向かう方向を正とする)と定義し、正姿勢において水平方向、鉛直方向となる方向を、それぞれ、X軸方向(
図3(a)のように正姿勢の撮像装置を背面側からみた状態において右側(グリップ側)から左側に向かう方向を正とする)、Y軸方向(正姿勢における鉛直上向きを正とする)と定義する。詳細には、
図3は、撮像装置1のZ軸周りでの回転に伴う姿勢の変化とそれに対応する加速度検出値との対応関係を示しており、
図4は、撮像装置1のX軸周りでの回転に伴う姿勢の変化とそれに対応する加速度検出値との対応関係を示している。なお、
図3(b)及び
図4(b)の表及び以下の説明では、加速度センサ130の検出値を、基準のノイズ画像を取得したときの加速度 K[m/s
2]の大きさを1として正規化して表現する。
【0037】
図3(a)に模式的に示される撮像装置1の正姿勢(Z軸回転0度)の状態では、Y軸下方に重力加速度gが作用する為、正姿勢の状態は、X軸加速度、Y軸加速度、Z軸加速度がそれぞれ0、−1、0の状態であるとして検出される。グリップ部が上になるように撮像装置1をZ軸周りで90度回転させた状態は(Z軸回転90度))、X軸加速度、Y軸加速度、Z軸加速度がそれぞれ1、0、0の状態であるとして検出される。正姿勢と天地逆の状態(Z軸回転180度)は、X軸加速度、Y軸加速度、Z軸加速度がそれぞれ0、1、0の状態であるとして検出される。また、撮像装置1をZ軸周りでの270度回転させた状態(以下、この状態を縦姿勢とも記す)は、X軸加速度、Y軸加速度、Z軸加速度がそれぞれ−1、0、0の状態であるとして検出される。
【0038】
図4(a)に示されるX軸周りでの回転に関しても、正姿勢(X軸回転0度)の状態は、X軸加速度、Y軸加速度、Z軸加速度がそれぞれ0、−1、0の状態であるとして検出される。また、撮像装置1をX軸周りでの90度回転させた状態は(以下、この状態を上向姿勢とも記す)、X軸加速度、Y軸加速度、Z軸加速度がそれぞれ0、0、1の状態であるとして検出される。正姿勢と天地逆の状態(X軸回転180度)は、X軸加速度、Y軸加速度、Z軸加速度がそれぞれ0、1、0の状態であるとして検出される。また、撮像装置1をX軸周りで270度回転させた状態は(以下、この状態を下向姿勢とも記す)、X軸加速度、Y軸加速度、Z軸加速度がそれぞれ0、0、−1の状態であるとして検出される。
【0039】
このように、加速度センサ130の出力によって撮像装置1の姿勢を検出することができる。
【0040】
[ぶれ補正機構の構成]
以下、ぶれ補正機構140の構成について詳細に説明する。
図5は、ぶれ補正機構140の構成を示す図である。具体的には、
図5(a)は、ぶれ補正機構140のうち可動部を撮像素子112搭載面側からみた平面図である。
図5(b)は、
図5(a)中のB−Bライン上での断面図である。
図5(b)では固定部も含めて図示されている。上述した通り、ぶれ補正機構は140、撮像素子112を含む可動部を所定の面内(本実施形態ではXY面内)で駆動することによってぶれ補正を行う構成となっている。
【0041】
図5(a)に示されるように、ぶれ補正機構140の可動部は、スライド板13と、スライド版13に保持されている撮像素子基板12、撮像素子112、及び4つの駆動コイル14を備えている。
図5(b)に示されるように、固定部は、前側ヨーク16、後側ヨーク15及び磁石17を備えている。固定部は、磁石17と後側ヨーク15との間で駆動コイル14を挟むように配置される。
【0042】
駆動コイル14の位置には
図5(b)において破線矢印で示す様な磁束があるため、駆動コイル14に駆動電流を流すとローレンツ力が発生し、可動部を駆動することができる。なお、この時生じるローレンツ力の大きさ及び方向は、駆動コイル14に流す駆動電流の大きさ及び方向で決まる。したがって、駆動コイル14に流す駆動電流の大きさ及び方向を制御することで、可動部を所望の方向に駆動することができる。駆動コイル14に対しては、例えば、PWM(パルス幅変調)による駆動電流制御が行われる。
【0043】
[姿勢による画像ノイズの補正の原理]
ぶれ補正機構140において、駆動コイル14の部分からの漏れ磁束があると撮像素子112への磁界被りが発生しこの現象が画像ノイズとして現れる。
図3及び
図4を参照して上述した通り、撮像装置1の姿勢によって撮像装置1に対する重力方向(3軸の加速度センサで検出される検出値の状態)が変化する。したがって、撮像素子112を保持する為の、駆動コイル14に流す駆動電流の大きさ及び方向は、撮像装置1の姿勢と共に変化(つまり、重力方向の変化)に伴って変化する。つまり、駆動コイル14に対する駆動の状態と、加速度センサ130の検出値の状態は互いに相関関係にある。例えば、撮像素子112の位置を保持する為の駆動力(駆動電流の大きさ、方向)は、撮像装置1の正姿勢と天地逆姿勢では、駆動量は同じであるが駆動方向は逆となる。この場合、撮像素子112への磁界被り量に関しても、正姿勢での画像ノイズを+1とした場合、天地逆姿勢では−1の画像ノイズが発生すると考えることができる。
【0044】
撮像装置1では、予め正姿勢(Y軸方向にのみ重力がかかっている状態)のダーク画像(DARKy)と、縦姿勢(X軸方向のみに重力がかかっている状態)のダーク画像(DARKx)が、例えば撮像装置1内の不揮発性メモリ(不図示)に保存されている。これらX軸方向のダーク画像(DARKx)、Y軸方向のダーク画像(DARKy)に、撮影時に加速度センサ130から取得されたX軸方向加速度、Y軸方向加速度をそれぞれ係数として掛けて合成し、補正データを得る。
【0045】
ここで、DARKxは、X軸方向にのみ重力がかかっている状態で取得されたダーク画像であり、X軸方向加速度マイナスKに対応する画像ノイズ成分である(
図3及び
図4参照)。すなわち、DARKxは、撮像装置1の姿勢の変化に起因する画像ノイズのX軸方向成分の基準値を表す基準画像となる。また、DARKyは、Y軸方向にのみ重力がかかっている状態で取得されたダーク画像であり、Y軸方向加速度マイナスKに対応する画像ノイズ成分である(
図3及び
図4参照)。すなわち、DARKyは、撮像装置1の姿勢の変化に起因する画像ノイズのY軸方向成分の基準値を表す基準画像となる。したがって、補正データ生成についての上記説明は、撮像装置1の姿勢の変化に起因する画像ノイズのX軸方向成分の基準画像にX軸方向加速度を係数として掛けたデータと、撮像装置1の姿勢の変化に起因する画像ノイズのY軸方向成分の基準画像にY軸方向加速度を係数として掛けたデータとを合成して補正データを生成することに対応している。
【0046】
そして、撮影時の撮影画像データから上記補正データを減算することによって、撮像装置1の姿勢による画像ノイズが補正される。以上が、姿勢変化による画像ノイズの補正の原理である。
【0047】
なお、上記説明において画像ノイズのX軸方向成分の基準画像と、画像ノイズのY軸方向成分の基準画像とを取得する際に、それぞれ、X軸方向加速度マイナスKの縦姿勢、Y軸方向加速度マイナスKの正姿勢としているのは、基準画像を求める方向に関しノイズ量が最大となるデータを基準として用いる意図である。具体的には、画像ノイズのX軸方向成分の基準画像は、X軸方向加速度が最大(マイナスK)でY軸方向加速度が最小(ゼロ)の状態で取得される。画像ノイズのY軸方向成分の基準画像は、Y軸方向加速度が最大(マイナスK)でX軸方向加速度が最小(ゼロ)の状態で取得される。これにより、画像ノイズ補正の演算の際に、画像ノイズの基準画像の値の絶対値を拡大するような演算を回避することができ、画像ノイズ補正の精度を向上させることができる。なお、ここ加速度が最大とは、通常の使用状態(撮像装置1の静止状態)において想定し得る最大を意味している。したがって、例えば、撮像装置1に上昇する加速度が加わっている様な状況では、基準画像を取得する際の加速度は通常の使用状態(撮像装置1の静止状態)において想定し得る最大よりも大きくなる場合がある。
【0048】
なお、上記説明において、補正データを求める場合にX軸方向及びY軸方向に関してのみノイズ成分の合成を行っているのは、駆動コイル14の駆動制御がX軸方向及びY軸方向についてのみ行われる(すなわち、Z軸方向に可動部を駆動する為の駆動コイルを持たない)構成である為、基本的な考え方として、撮像装置1の姿勢の変化に伴い画像ノイズを変化させる要因としてZ軸方向の加速度成分を考慮しなくて良いことことに基づいている。
【0049】
したがって、ぶれ補正機構140が、撮像素子112をZ軸方向にも駆動する構成の場合(Z軸方向に駆動する為の駆動コイルを更に有する場合)には、Z軸方向について上述と同様なやり方で取得したノイズ成分を更に合成して補正データを生成する構成とする。
【0050】
[画像ノイズ補正を含む撮影処理]
図6は、本実施形態による画像ノイズ補正を含む撮影処理を示すフローチャートである。
図6の撮影処理は、CPU100による制御下で各種構成部分(画像処理エンジン116等)が協働することによって実行される処理である。この撮影処理は、レリーズボタン13の押下により起動される。なお、撮影処理の実行に先立って、出荷時等の調整データ取得の段階で、X軸方向、Y軸方向のダーク画像を準備しておく。
【0051】
(ステップS11(露光))
レリーズボタン13の押下に伴い撮影処理が開始されると、上述のAE制御及びAF制御を伴った露光が行われる(ステップS11)。
【0052】
(ステップS12(姿勢情報取得))
次に、撮像素子112からの画像信号読み出しのタイミングで、加速度センサ130から各軸の加速度が取得される(ステップS12。画像信号読み出し直前のタイミングで加速度センサ130の出力を取得することにより、撮像素子112への磁界の影響をより適切に表す姿勢情報を取得することができる。なお、ステップS11、S12での処理を詳細に記載すると、ミラーアップ(ミラーを有する構成の場合)、絞り制御、撮像素子112にリセット(センサーリセット)、シャッタ開き、露光、シャッタ閉じ、姿勢情報取得、撮像素子からの画像信号読み出し(センサ読み出し)の順で処理が実行される。なお、さらに厳密な姿勢の情報を取得するのであればセンサ読み出しの期間中継続的に姿勢情報を取得してその平均を算出する。また、センサ読み出しの前後で姿勢情報を取得して平均してもよい。
【0053】
(ステップS13(補正データ作成))
次に、ステップS13では、予め取得されたダーク画像と、ステップS12で取得された姿勢情報と用い、上述した補正データの生成の原理に基づいて補正データが生成される。
【0054】
なお、ステップS13では、露光条件その他の各種要因を係数として更にダーク画像に適用して補正データを生成しても良い。
【0055】
(ステップS14(撮影画像のノイズ補正))
次に、ステップS14では、ステップS11の露光に伴って読みだされた画像データ(撮影画像)から補正データを減算することによって撮影画像のノイズ補正が行われる。
【0056】
(ステップS15(通常の画像処理))
ステップS15では、ステップS14にて補正が行われた画像データに対して一般的に知られた各種画像処理が実行される。
【0057】
以上説明した撮影処理によれば、撮像装置1の姿勢変化に起因する画像ノイズが好適に補正されることとなる。
【0058】
[補正データの作成例]
以下では、上述した補正データの生成の原理に対応する補正データの作成例について説明する。
【0059】
本作成例では、まず、製造時等の調整データ取得段階で、予め正姿勢、縦姿勢、上向姿勢でのダーク画像を取得しておく(
図3及び
図4参照)。これらの姿勢と各軸の加速度検出値との対応関係を改めて以下に示す。
正姿勢 :X軸加速度0,Y軸加速度−1,Z軸加速度0
縦姿勢 :X軸加速度−1,Y軸加速度0,Z軸加速度0
上向姿勢:X軸加速度0,Y軸加速度0,Z軸加速度1
【0060】
ぶれ補正機構140では、撮像素子112を駆動しない方向であるZ軸方向のみに加速度が加わっている状態(上向姿勢)を、撮像装置1にX軸方向の加速度が加わった場合に増減するX軸方向ノイズ成分と、撮像装置1にY軸方向の加速度が加わった場合に増減するY軸方向ノイズ成分とを求める基準データとして取得しておく。
基準データ=A
A:上向姿勢データ
【0061】
そして、上記基準データに対する、正姿勢で取得したダーク画像データの変化量(正姿勢データ)と、上記基準データに対する、縦姿勢で取得したダーク画像データの変化量(縦姿勢データ)とを以下のように取得しておく。
(正姿勢データ)=DS−(基準データ)
DS:正姿勢で取得したダーク画像データ
(縦姿勢データ)=DT−(基準データ)
DT:縦姿勢で取得したダーク画像データ
【0062】
上記正姿勢データが、撮像装置1の姿勢の変化に起因する画像ノイズのY軸方向成分の基準画像に相当し、縦姿勢データが、撮像装置1の姿勢の変化に起因する画像ノイズのX軸方向成分の基準画像に相当する。そして、縦姿勢データに撮影時のX軸方向の加速度をかけた値と、正姿勢データに撮影時のY軸方向加速度をかけた値とを合成することによって、撮像装置1の姿勢による画像ノイズの補正量を求めておき、更にここでは上述の基準データを加味して下記数式により補正データを生成する。
(補正データ)=(基準データ)−{(縦姿勢データ)gx+(正姿勢データ)gy}
gx:X軸方向の加速度(撮影時に取得した加速度を調整時の加速度で除したもの)
gy:Y軸方向の加速度(撮影時に取得した加速度を調整時の加速度で除したもの)
【0063】
なお、上記数式右辺の第1項目における基準データは、撮像装置1におけるgx、gyに依存しない画像ノイズに対応している。
【0064】
以上の補正データ作成例によれば、撮像装置1における姿勢変化による画像ノイズを好適に補正することができる。
【0065】
また、撮像装置1の姿勢による画像ノイズとして、直流成分的なノイズ量である補正オフセット量を下記の数式によって定義し、この補正オフセット量を上述の補正データの算出に加える構成としても良い。なお、下記オフセット補正量の算出では、撮像装置1においてZ軸方向に加速度がかかっている場合にもぶれ補正機構140に対して駆動が行われことを考慮し、Z軸方向加速度の検出値gzを加味している。
補正オフセット量=(基準データオフセット)gz−(縦姿勢データオフセット)gx−(正姿勢データオフセット)gy
gz:Z軸方向の加速度
【0066】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施形態等又は自明な実施形態等を適宜組み合わせた内容も本発明の実施形態に含まれる。
【0067】
上述の実施形態では、ぶれ補正機構140(駆動コイル14)の駆動の状態(すなわち、ノイズ源)と相関のある情報として加速度検出値を用いる構成であったが、本発明はこれに限られない。例えば、ノイズ源の大きさ等の状態に相関のある情報として、PWM制御される駆動コイル14の駆動量に関する情報を用いても良い。或いは、例えばホールセンサのように磁界の量を直接測定する手法を用いても良い。
【0068】
上述の実施形態では、撮像装置1内で撮像装置1の姿勢に伴い磁界を変化させる作動手段としてぶれ補正機構について説明したが、撮像装置1内で撮像装置1の姿勢に伴い磁界を変化させる作動手段はこれに限られない。例えば、撮像装置1がレンズ、ミラーといった構成部品を駆動するモータ等の電磁アクチュエータを有する場合には、これらも、撮像装置1内で撮像装置1の姿勢に伴い磁界を変化させそれにより画像ノイズを生じさせる作動手段となり得る。
【0069】
また、撮像装置1の姿勢によって撮像素子に影響を与える磁場を変化させる要因としては、撮像素子1内部の構成要素以外にも、撮像装置1外部の磁場も考えられる。例えば、地球磁場や、強磁場環境で撮像装置を使用する場合の影響である。これら外部磁場に関しても、撮像装置の方位や使用環境内での姿勢が、画像ノイズと相関を持つと考えられる。したがって、地球磁場の影響による画像ノイズを補正する場合には、撮像装置内に方位磁針センサ、GPS(Global Positioning System)センサを設け、これらのセンサ出力に基づき撮像装置の方位や位置を検出し、検出された方位や位置に基づいて上述の実施形態で説明した画像ノイズ補正の原理に従って補正を行うことができる。また、撮像装置が強磁場の環境で使用される場合には、撮像装置内にホールセンサ等の磁気センサを設け、撮像装置内で外部磁場を検出し、検出された磁場に基づいて上述の実施形態で説明した画像ノイズ補正の原理に従って補正を行うことができる。