(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6656598
(24)【登録日】2020年2月7日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】共焦点顕微鏡システム
(51)【国際特許分類】
G02B 21/06 20060101AFI20200220BHJP
G02B 21/36 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
G02B21/06
G02B21/36
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-161230(P2018-161230)
(22)【出願日】2018年8月30日
(62)【分割の表示】特願2013-238889(P2013-238889)の分割
【原出願日】2013年11月19日
(65)【公開番号】特開2019-32534(P2019-32534A)
(43)【公開日】2019年2月28日
【審査請求日】2018年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坪内 洋平
(72)【発明者】
【氏名】清水 義文
(72)【発明者】
【氏名】宮前 裕一
【審査官】
岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−215609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00−21/00
G02B 21/06−21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロレンズディスクとピンホールディスクで構成されレーザ光を走査するスキャナ部と、
レーザユニットと第1ミラーとを備えて構成され、前記スキャナ部にレーザ光を投光する投光光学系と、
第2ミラーと結像レンズと対物レンズとを備えて構成され、前記スキャナ部で走査されたレーザ光を試料に投射して試料を励起する励起光学系と、
リレーレンズとフィルターホイールと第3ミラーとを備えて構成され、前記試料から発光される蛍光のうち再び前記スキャナ部を通過した光を分離して撮影装置へ結像させる結像光学系を含む共焦点顕微鏡システムにおいて、
前記投光光学系における前記レーザユニットと前記第1ミラーと、前記励起光学系における前記第2ミラーと前記結像レンズと前記対物レンズと、前記結像光学系における前記リレーレンズと前記フィルターホイールと前記第3ミラーとが、それぞれの光軸がいずれも直線上に並ばず平面視で平行になるように配置され、
前記第1ミラーと前記第2ミラーとは折り曲げミラーとして機能し、前記スキャナ部を構成するマイクロレンズディスクとピンホールディスクの間にダイクロイックミラーが配置されていることを特徴とする共焦点顕微鏡システム。
【請求項2】
マイクロレンズディスクとピンホールディスクで構成されレーザ光を走査するスキャナ部と、
レーザユニットと第1ミラーとを備えて構成され、前記スキャナ部にレーザ光を投光する投光光学系と、
第2ミラーと結像レンズと対物レンズとを備えて構成され、前記スキャナ部で走査されたレーザ光を試料に投射して試料を励起する励起光学系と、
リレーレンズとフィルターホイールと第3ミラーとを備えて構成され、前記試料から発光される蛍光のうち再び前記スキャナ部を通過した光を分離して撮影装置へ結像させる結像光学系を含む共焦点顕微鏡システムにおいて、
前記投光光学系における前記レーザユニットと前記第1ミラーと、前記励起光学系における前記第2ミラーと前記結像レンズと前記対物レンズと、前記結像光学系における前記リレーレンズと前記フィルターホイールと前記第3ミラーとが、それぞれの光軸がいずれも直線上に並ばず平面視で平行になるように配置され、
前記第1ミラーが、前記投光光学系の出射光軸を前記スキャナ部に対して調整することを特徴とする共焦点顕微鏡システム。
【請求項3】
前記第3ミラーが、前記結像光学系の光軸を前記撮影装置に対して調整するために前記撮影装置の入射側に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の共焦点顕微鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共焦点顕微鏡システムに関し、特に、小型化により設置スペースの改善を図った共焦点顕微鏡システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図2は特許文献1に記載されている従来の共焦点顕微鏡システムの一例を示す構成説明図であり、(a)は平面図、(b)は拡大正面図である。
図2において、共焦点顕微鏡システム1は、保護筐体2によって覆われている。保護筐体2の内部には温度調節可能な温調チャンバー3が設けられており、温調チャンバー3の内部はほぼ一定温度(たとえば30℃)になるように調節されている。保護筐体2は
図2(a)の右側面が前面とされ、温調チャンバー3の右側面が保護筐体2の前面に沿うように配置されている。
【0003】
温調チャンバー3の内部には前面側にXY駆動装置4が配置され、このXY駆動装置4上にはXY方向に駆動される移動テーブル5が設けられている。この移動テーブル5には試料が収められたガラスボトムディッシュ6を有する試料カセット7および光源8が装着され、試料カセット7は移動テーブル5の移動にしたがってXY駆動装置4上をXY方向に移動する。
【0004】
試料カセット7の上方には試料カセット7に対向するようにコンデンサレンズ19と光源8が配置され、下方には試料カセット7に対向するように対物レンズ10が配置されている。対物レンズ10は、駆動ユニット11により矢印のZ方向に駆動される。
【0005】
XY駆動装置4の左側には、スキャナ部12が配置されている。スキャナ部12は、マイクロレンズディスク13とピンホールディスク14がハブ15により連結されたものであって、モータ16により回転駆動される。なお、スキャナ部12を構成するマイクロレンズディスク13とピンホールディスク14の間には、ダイクロイックミラー17が配置されている。
【0006】
対物レンズ10の下方にはミラー18が配置され、このミラー18とスキャナ部12の間には結像レンズ19が配置されている。
【0007】
スキャナ部12に設けられているダイクロイックミラー17により奥行方向に反射される光軸に沿って、リレーレンズ20とミラー21が配置されている。
【0008】
ミラー21で左方向に反射される光軸に沿って、モータ22により回転駆動されるフィルターホィール23と、リレーレンズ24と、撮影装置としてのCCD25およびレーザユニット26が配置されている。なお、リレーレンズ24は、温調チャンバー3内に配置されている。
【0009】
レーザ発振器が搭載されたレーザユニット26は、温調チャンバー3の前面から見た奥行方向に、スキャナ部12と対向するように配置されている。
【0010】
このように構成される共焦点顕微鏡システムは、レーザユニット26と、レーザユニット26から出力されるレーザ光を走査するスキャナ部12と、スキャナ部12で走査されたレーザ光を試料カセット7に投射して試料を励起する投射光学系と、対物レンズ10に対向して配置された試料カセット7をテーブル上でXY駆動させるXY駆動装置4と、励起された試料から発光される蛍光のうち再びスキャナ部12を通過した光を分離する分離光学系と、分離された蛍光を再び結像させる結像光学系と、結像光学系の結像面に配置された撮影装置を備えたものであり、生物やバイオテクノロジーなどの分野における生きた細胞の生理反応観察や形態観察、あるいは半導体市場におけるLSIの表面観察などに使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2011−180411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、このような従来の共焦点顕微鏡システムにおいては、レーザユニット26から出力されるレーザ光と試料に投射される励起光が直線上に並んでおり、また試料からの蛍光が再びスキャナ部12を通過するための光路が必要であることから、装置全体の奥行が非常に大きくなり、装置全体を収納するためにかなり大きなスペースが必要になるという問題があった。
【0013】
本発明は、このような課題を解決するものであって、その目的は、コンパクトで広い設置場所を必要としない小型の共焦点顕微鏡システムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような課題を達成するために、本発明のうち第1の態様は、
マイクロレンズディスクとピンホールディスクで構成されレーザ光を走査するスキャナ部と、
レーザユニットと第1ミラーとを備えて構成され、前記スキャナ部にレーザ光を投光する投光光学系と、
第2ミラーと結像レンズと対物レンズとを備えて構成され、前記スキャナ部で走査されたレーザ光を試料に投射して試料を励起する励起光学系と、
リレーレンズとフィルターホイールと第3ミラーとを備えて構成され、前記試料から発光される蛍光のうち再び前記スキャナ部を通過した光を分離して撮影装置へ結像させる結像光学系を含む共焦点顕微鏡システムにおいて、
前記投光光学系と励起光学系と結像光学系が、それぞれの光軸が平面視で平行になるように配置されたことを特徴とする共焦点顕微鏡システムである。
【0015】
第2の態様は、第1の態様の共焦点顕微鏡システムにおいて、
前記第1ミラーと前記第2ミラーとは折り曲げミラーとして機能し、前記スキャナ部を構成するマイクロレンズディスクとピンホールディスクの間にダイクロイックミラーが配置されていることとを特徴とする。
【0016】
第3の態様は、第1の態様の共焦点顕微鏡システムにおいて、
前記第1ミラーが、前記投光光学系の出射光軸を前記スキャナ部に対して調整することを特徴とする。
【0017】
第4の態様は、第1の態様の共焦点顕微鏡システムにおいて、
前記第3ミラーが、前記結像光学系の光軸を前記撮影装置に対して調整するために前記撮影装置の入射側に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
これらにより、広い設置場所を必要としない小型でコンパクトな共焦点顕微鏡システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】特許文献1に記載されている従来の共焦点顕微鏡システムの一例を示す構成説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例を示す構成説明図であって、(a)は平面図、(b)は主要部の正面図であり、
図2と共通する部分には同一の符号を付けている。
図1において、共焦点顕微鏡システム1は保護筐体2によって覆われている。なお、保護筐体2は、
図1(a)の下辺が前面になる。
【0021】
保護筐体2の内部中央の奥行方向にはXY駆動装置27が設けられ、このXY駆動装置27上にはXY方向に駆動される移動テーブル28が設けられている。移動テーブル28には、試料を収めることができ、試料は移動テーブル28の移動にしたがってXY駆動装置27上をXY方向に移動する。
【0022】
試料に対向するように対物レンズ29が配置されている。対物レンズ29は、従来と同様に駆動ユニット30により矢印Z方向に駆動される。
【0023】
XY駆動装置27の左側手前には、従来と同様にマイクロレンズディスク31とピンホールディスク32がハブ33により連結されてモータ34により回転駆動されるスキャナ部35が配置されている。
【0024】
対物レンズ29の下方には従来と同様にミラー36が配置され、このミラー36とスキャナ部35の間には結像レンズ37が配置されている。スキャナ部35を構成するマイクロレンズディスク31とピンホールディスク32の間には、従来と同様にダイクロイックミラー38が配置されている。
【0025】
スキャナ部35に設けられているダイクロイックミラー38により右方向に反射される光軸上には、リレーレンズ39と、モータ40により回転駆動されるフィルターホィール41と、リレーレンズ41と、ミラー43が配置されている。
【0026】
XY駆動装置27の右手奥側にはCCDやCMOSなどを撮像素子とするカメラ44が配置されていて、このカメラ44にはミラー43の反射光が入射される。
【0027】
フィルターホィール41の手前側には、レーザユニット45が配置されている。レーザユニット45の出力光は、ミラー46を介してスキャナ部35に設けられているダイクロイックミラー38に入射されて透過し、さらにミラー47で反射されて結像レンズ37に入射される。これらミラー43、46および47は、光軸を折り曲げるミラーとして機能する。
【0028】
ここで、ミラー47と結像レンズ37と対物レンズ29は励起光学系を構成し、ダイクロイックミラー38は分離光学系として機能し、リレーレンズ39,42とフィルターホィール41とミラー43は結像光学系を構成し、レーザユニット45とミラー46は投光光学系を構成する。
【0029】
これら投光光学系と励起光学系と結像光学系は、それぞれの光軸が平行になるように配置されている。
【0030】
ミラー46の傾きを変えることによりレーザユニット45から出力されるレーザ光の光軸調整を行うことができ、ミラー43の傾きを変えることによりカメラ44に入射される蛍光の光軸をZ軸としたときのXY方向の光軸調整を行うことができる。
【0031】
なお、カメラ44のθ方向については、カメラ44を回転させることで調整できる。
【0032】
レーザユニット45から出射される励起光束は、スキャナ部35のマイクロレンズディスク31で集光されてダイクロイックミラー38を透過し、ピンホールディスク32を通過してミラー47で反射され、結像レンズ37によって平行光となる。
【0033】
ミラー36で反射された平行光は対物レンズ29により収束され、移動テーブル28に配置された試料に照射される。試料は、平行光が照射されることにより、蛍光信号を発生する。
【0034】
試料から発生した蛍光信号は、対物レンズ29により集光されて平行光となってミラー36で反射され、結像レンズ37で収束されて結像面に蛍光像を結ぶ。スキャナ部35を構成するピンホールディスク32は、ピンホール面が結像面に一致するように配置されているので、蛍光像は共焦点像となる。
【0035】
共焦点像はダイクロイックミラー38に入射されて反射され、リレーレンズ39と42を介してミラー43に入射されて反射された後、カメラ44に結像される。ここで、ダイクロイックミラー38は、所定の蛍光の波長を透過させる。具体的には、フィルタホィール41に搭載されたバンドパスフィルタによって透過特性が切り替えられ、励起光束の波長に対応した蛍光の波長帯域のみを透過させる。
【0036】
このように構成される共焦点顕微鏡システムは、分離光学系を中心に、投光光学系、結像光学系、励起光学系の三系統の光軸が平行になるように配置されることにより、保護筐体2の幅を狭くすることができ、設置スペース効率を改善できる。
【0037】
そして、励起光学系の光軸調整用ミラー46を装置の前面に配置したので、スキャナ部35に入射されるレーザ光の調整を容易に行うことができる。
【0038】
また、結像光学系の光軸調整用ミラー43を右面に配置することにより、保護筐体2の幅を小さくできるとともに、カメラ44に入る励起光の調整を容易に行うことができる。
【0039】
さらに、カメラ44に入射される励起光の光軸調整にあたっては、XY方向はミラー43で行い、θ方向はカメラ44で行うように分離することができ、光軸調整を容易に行うことができる。
【0040】
以上説明したように、本発明によれば、光学調整の簡便化が図れ、調整後の外乱による影響を軽減できる共焦点顕微鏡システムが実現できる。
【符号の説明】
【0041】
1 共焦点顕微鏡システム
2 保護筐体
27 XY駆動装置
28 移動テーブル
29 対物レンズ
30 駆動ユニット
31 マイクロレンズディスク
32 ピンホールディスク
33 ハブ
34,40 モータ
35 スキャナ部
36,43,46,47 ミラー
37 結像レンズ
38 ダイクロイックミラー
39,42 リレーレンズ
41 フィルターホィール
44 カメラ
45 レーザユニット
48 結像レンズ