特許第6656623号(P6656623)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6656623非水電解液二次電池用非水電解液、非水電解液二次電池及び非水電解液二次電池の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6656623
(24)【登録日】2020年2月7日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】非水電解液二次電池用非水電解液、非水電解液二次電池及び非水電解液二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0569 20100101AFI20200220BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20200220BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20200220BHJP
【FI】
   H01M10/0569
   H01M10/058
   H01M10/052
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-98507(P2016-98507)
(22)【出願日】2016年5月17日
(65)【公開番号】特開2017-208186(P2017-208186A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2019年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(73)【特許権者】
【識別番号】000157119
【氏名又は名称】関東電化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127513
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100199691
【弁理士】
【氏名又は名称】吉水 純子
(72)【発明者】
【氏名】岸本 顕
(72)【発明者】
【氏名】大前 理
(72)【発明者】
【氏名】谷口 智洋
(72)【発明者】
【氏名】木村 宣久
【審査官】 松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/006315(WO,A1)
【文献】 特開2009−289414(JP,A)
【文献】 特開2015−179659(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0044578(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水溶媒と電解質塩を含む非水電解液二次電池用非水電解液であって、前記非水溶媒は、4−フルオロエチレンカーボネート(FEC)、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチル(FMP)及び酢酸2,2,2−トリフルオロエチル(FEA)の3種を含む混合溶媒であり、かつ、FMPとFEAを、前記混合溶媒中に占める体積比でFMP/(FMP+FEA)が80/90〜10/90となる割合で含むことを特徴とする非水電解液二次電池用非水電解液。
【請求項2】
前記混合溶媒中にFMP及びFEAを、前記混合溶媒中に占めるFMP及びFEAの体積の和が、混合溶媒の70体積%以上となるように含むことを特徴とする請求項1に記載の非水電解液二次電池用非水電解液。
【請求項3】
前記混合溶媒中にFECを5〜30体積%含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の非水電解液二次電池用非水電解液。
【請求項4】
正極、負極、及び非水電解液を備えた非水電解液二次電池であって、前記非水電解液が、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水電解液であることを特徴とする非水電解液二次電池。
【請求項5】
正極電位が4.4V(vs.Li/Li+)以上となることを特徴とする請求項4に記載の非水電解液二次電池。
【請求項6】
非水溶媒と電解質塩を含み、前記非水溶媒が、FEC、FMP及びFEAの3種を含む混合溶媒であり、かつ、FMPとFEAを、前記混合溶媒中に占める体積比でFMP/(FMP+FEA)が80/90〜10/90となる割合で含む非水電解液を用いることを特徴とする非水電解液二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池用非水電解液、及び非水電解液二次電池、特に、非水電解液に特徴を有する非水電解液二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池に代表される非水電解液二次電池は、ノートパソコンや携帯電話などのモバイル機器の電源として用いられてきたが、近年、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)などの自動車用電源としても用いられている。
【0003】
非水電解液二次電池は、一般に、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、セパレータと、非水溶媒及びリチウム塩を含有する非水電解液とを備えている。
非水電解液二次電池を構成する正極活物質としてはリチウム含有遷移金属酸化物が、負極活物質としてはグラファイトに代表される炭素材料が、非水電解液としては、エチレンカーボネート等の環状カーボネートとジエチルカーボネート等の鎖状カーボネートを主構成成分とする非水溶媒に六フッ化リン酸リチウム(LiPF)等の電解質を溶解したものが広く知られている。
【0004】
また、種々の目的で、上記のような非水電解液の溶媒として、4−フルオロエチレンカーボネートやフッ素化鎖状カルボン酸エステルを用いることも知られている(特許文献1〜4参照)。
【0005】
特許文献1には、「非水電解液が電極と反応するのが抑制されて、高温条件下においても電池容量が低下するのが抑制され、長期にわたって良好な電池特性が得られるようにすること」(段落[0011])を課題として、「非水系溶媒に電解質のリチウム塩が含有され、上記の非水系溶媒に、下記の式(1)に示したフッ素化鎖状カルボン酸エステルと、金属リチウムとリチウムイオンとの平衡電位を基準として+1.0〜3.0Vの範囲で分解される被膜形成化合物とを含む二次電池用非水電解液。
R1−CH2−COO−R2 (1)
(式中、R1は水素又はアルキル基、R2はアルキル基を表し、R1とR2とにおける炭素数の和が3以内であり、R1が水素である場合には、R2における水素の少なくとも一部がフッ素で置換され、R1がアルキル基である場合には、R1及び/又はR2における水素の少なくとも一部がフッ素で置換されている。)」(請求項1)、「請求項1に記載の二次電池用非水電解液において、上記のフッ素化鎖状カルボン酸エステルが、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチルCF3CH2COOCH3と酢酸2,2,2−トリフルオロエチルCH3COOCH2CF3とから選択される少なくとも1種である二次電池用非水電解液。」(請求項2)、「請求項5に記載の二次電池用非水電解液において、上記の被膜形成化合物が、4−フルオロエチレンカーボネートである二次電池用非水電解液。」(請求項6)の発明が記載されている。
【0006】
そして、特許文献1の実施例には、非水系溶媒として、金属リチウムとリチウムイオンとの平衡電位を基準とした分解電位が1.0〜3.0Vの範囲にある被膜形成化合物の4−フルオロエチレンカーボネート(4−FEC)と、上記の式(1)に示したフッ素化鎖状カルボン酸エステルであるCF3CH2COOCH3とを、それぞれ、2:8、1:9、3:7、2:4、2:4、20:75の体積比で混合させた混合溶媒を用いたこと(実施例1、3〜7参照)、4−フルオロエチレンカーボネート(4−FEC)と、上記の式(1)に示したフッ素化鎖状カルボン酸エステルであるCH3COOCH2CF3とを、それぞれ、2:8、20:75)の体積比で混合させた混合溶媒を用いたこと(実施例2、8参照)が示されている。
また、上記の混合溶媒を用いた各非水電解液二次電池について、それぞれ25℃において、保存前の放電容量を測定し、次いで、定電流で4.2V(4.3V)になるまで充電し、さらに4.2V(4.3V)の定電圧で定電圧充電させ、この状態で各非水電解液二次電池を恒温槽内において60℃で10日間(20日間)保存した後、保存後の各非水電解液二次電池について、それぞれ25℃において、定電流で放電させて保存後の残存容量を求め、その後、さらに充電し、放電させて保存後の復帰容量を求めたこと(段落[0055]〜[0060]、[0069]〜[0075])が示されている。
【0007】
特許文献2には、「高温条件下においても非水電解液が電極と反応するのを抑制して、電池容量が低下するのを防止し、長期にわたって良好な電池特性が得られるようにすること」(段落[0012])を課題として、「非水系溶媒に電解質のリチウム塩が含有された二次電池用非水電解液において、上記の非水系溶媒に、下記の式(1)に示したフッ素化鎖状カルボン酸エステルと、金属リチウムとリチウムイオンとの平衡電位を基準として+1.0〜3.0Vの範囲で分解される被膜形成化合物とを含むことを特徴とする二次電池用非水電解液。
CH3COOCH2CH3−x (1)
(式中、xは2又は3である。)」(請求項1)、「請求項3に記載の二次電池用非水電解液において、上記の被膜形成化合物が、4−フルオロエチレンカーボネートであることを特徴とする二次電池用非水電解液。」(請求項4)の発明が記載されている。
【0008】
そして、特許文献2の実施例には、非水系溶媒として、金属リチウムとリチウムイオンとの平衡電位を基準とした分解電位が1.0〜3.0Vの範囲にある被膜形成化合物の4−フルオロエチレンカーボネート(4−FEC)と、上記の式(1)に示したフッ素化鎖状カルボン酸エステルにおけるxの値が3であるCH3COOCH2CF3(酢酸2,2,2−トリフルオロエチル)とを2:8の体積比で混合させた混合溶媒を用いたこと(実施例2参照)等が示されている。
【0009】
特許文献3には、「非水電解質二次電池の充放電サイクル特性を改善し得る、非水電解質二次電池の正極を提供すること」(段落[0007])を目的として、「請求項1〜5のいずれか一項に記載の非水電解質二次電池の正極と、負極と、非水電解質と、セパレータとを備える、非水電解質二次電池。」(請求項9)、「前記非水電解質が、フッ素含有環状炭酸エステル及びフッ素含有鎖状エスエルの少なくとも一方を含む、請求項9に記載の非水電解質二次電池。」(請求項10)、「前記フッ素含有環状炭酸エステルが、4−フルオロエチレンカーボネート及び4,5−ジフルオロエチレンカーボネートの少なくとも一方である、請求項10に記載の非水電解質二次電池。」(請求項11)、「前記フッ素含有鎖状エステルが、フッ素含有鎖状カルボン酸エステル及びフッ素含有鎖状炭酸エステルの少なくとも一方である、請求項10または11に記載の非水電解質二次電池。」(請求項12)、「前記フッ素含有鎖状カルボン酸エステルが、メチル3,3,3−トリフルオロプロピオネート及び2,2,2−トリフルオロエチルアセテートの少なくとも一方である、請求項12に記載の非水電解質二次電池。」(請求項13)の発明が記載されている。
【0010】
そして、特許文献3の実施例には、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、メチル3,3,3−トリフルオロプロピオネート(F−MP)、及びメチル2,2,2−トリフルオロエチルカーボネート(F−EMC)の混合溶媒を用いること(実施例1、2、6)、DFECとF−MPの混合溶媒を用いること(実施例3〜5、7、9〜11)、DFECと2,2,2−トリフルオロエチルアセテート(F−EA)の混合溶媒を用いること(実施例8)、4−フルオロエチレンカーボネート(FEC)とF−MPの混合溶媒を用いること(実施例12)が示されている。
また、上記の混合溶媒を用いた非水電解質二次電池を、500mAの定電流で、電圧が4.6Vに達するまで充電し、さらに、4.6Vの定電圧で電流値が50mAになるまで充電した後、500mAの定電流で、電圧が2.5Vに達するまで放電して、電池の充放電容量(mAh)を測定したこと、この充放電を25サイクル行い、容量維持率を測定して、サイクル特性を評価したこと(段落[0069])が示されている。
【0011】
特許文献4には、「安定的に充放電できるナトリウム二次電池を提供する」(段落[0008])ことを課題として、「ナトリウムイオンを吸蔵及び放出できる正極活物質を含む正極と、前記ナトリウムイオンを吸蔵及び放出できる負極活物質を含む負極と、一般式(1)で表されるフルオロ基を有する鎖状カルボン酸エステルを含有する非水溶媒、および前記非水溶媒に溶解したナトリウム塩を含む非水電解液と、を備える、ナトリウム二次電池。」(請求項1)、「前記鎖状カルボン酸エステルが、2,2,2−トリフルオロエチルアセテート及びメチル3,3,3−トリフルオロプロピオネートからなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項1に記載のナトリウム二次電池。」(請求項3)の発明が記載されている。
【0012】
そして、特許文献4の実施例には、フルオロエチレンカーボネート(FEC)と2,2,2−トリフルオロエチルアセテート(FEA)との混合溶媒(体積比25:75)を用いること(実施例2−1)、FECとメチル3,3,3−トリフルオロプロピオネート(FMP)との混合溶媒(体積比25:75)を用いること(実施例2−2)等が示されている。
また、上記の混合溶媒を用いた実施例2−1、2−2のナトリウム二次電池について、充放電試験を25℃の恒温槽内で行い、電池の電圧が4.2Vに到達するまでの定電流充電及び電池の電圧が1.0Vに到達するまでの定電流放電が、3回ずつ繰り返されたこと(段落[0148])が示されている。
【0013】
特許文献5には、「電解質の安定性が高く、サイクル特性を向上させることができる電池、およびそれに用いられる電解液を提供すること」(段落[0005])を目的として、「化1に示したフルオロカルボン酸エステルと、高誘電率溶媒とを含むことを特徴とする電解液。・・・」(請求項1)、「前記フルオロカルボン酸エステルは、トリフルオロ酢酸メチル,トリフルオロ酢酸エチル,トリフルオロ酢酸プロピル,トリフルオロ酢酸ブチル,ペンタフルオロプロピオン酸メチル,ペンタフルオロプロピオン酸エチル,ペンタフルオロプロピオン酸プロピルおよびペンタフルオロプロピオン酸ブチルからなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1記載の電解液。」(請求項3)、「前記高誘電率溶媒は、環状炭酸エステルおよびそれら水素の一部をハロゲンで置換した環状炭酸エステル誘導体からなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1記載の電解液。」(請求項4)、「前記環状炭酸エステル誘導体は、4−フルオロ−1,3−オキソラン−オンおよび4−クロロ−1,3−オキソラン−オンのうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項4記載の電解液。」(請求項5)の発明が記載されている。
【0014】
そして、特許文献5の実施例には、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)とトリフルオロ酢酸エチル(FEA)との混合溶媒を用いること(実施例1−4)等が示されている。
また、得られた実施例の二次電池について、1.77mAで4.2Vを上限として12時間充電し、その後10分間休止して1.77mAで2.5Vに達するまで放電するという充放電を繰り返し、50サイクル目の放電容量維持率を求めたこと(段落[0083])が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2009−289414号公報
【特許文献2】特開2010−62132号公報
【特許文献3】WO2013−108571
【特許文献4】特開2015−179659号公報
【特許文献5】特開2006−032300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献1及び2に記載された発明は、高温条件下においても電池容量が低下するのが抑制され、長期にわたって良好な電池特性が得られるようにすることを課題とするものであり、低温での充放電サイクル性能の改善、電気抵抗の改善を課題とするものではない。また、4−フルオロエチレンカーボネート(以下、「FEC」という。)と3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチル(以下、「FMP」という。)の混合溶媒、又は、FECと酢酸2,2,2−トリフルオロエチル(以下、「FEA」という。)の混合溶媒を用いることが示されているが、FEC、FMP及びFEAの3種の混合溶媒を用いることは示されていない。
特許文献3に記載された発明は、非水電解質二次電池の充放電サイクル特性の改善を目的とするものであり、高電圧とすることも記載されているが、低温での充放電サイクル性能の改善、電気抵抗の改善を課題とするものではない。また、FECとFMPの混合溶媒を用いることは示されているが、FEC、FMP及びFEAの3種の混合溶媒を用いることは示されていない。
特許文献4に記載された発明は、安定的に充放電できるナトリウム二次電池を提供することを課題とするものであり、低温での充放電サイクル性能の改善、電気抵抗の改善を課題とするものではない。また、FECとFMPの混合溶媒、FECとFEAの混合溶媒を用いることは示されているが、FEC、FMP及びFEAの3種の混合溶媒を用いることは示されていない。
特許文献5に記載された発明は、非水電解液二次電池のサイクル特性の向上を課題とするものであるが、低温での充放電サイクル性能の改善、電気抵抗の改善を課題とするものではない。また、FECとFEAの混合溶媒を用いることは示されているが、FEC、FMP及びFEAの3種の混合溶媒を用いることは示されていない。
高電圧(正極電位で4.4V(vs.Li/Li)以上)において、上記のようなFECとFMPの混合溶媒を用いることで、高温(45℃)での充放電サイクル性能の改善は可能であるが、低温(0℃)での充放電サイクル性能は低下し、電気抵抗が高くなるという課題がある。
また、FECとFEAの混合溶媒を用いると、電気抵抗が高くなるという課題がある。
そこで、本発明は、上記の課題に鑑み、非水電解液の非水溶媒を改良することにより、低温(0℃)での充放電サイクル性能が改善され、電気抵抗が改善された非水電解液二次電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明においては、上記課題を解決するために、以下の手段を採用する。
(1)非水溶媒と電解質塩を含む非水電解液二次電池用非水電解液であって、前記非水溶媒は、FEC、FMP及びFEAの3種を含む混合溶媒であり、かつ、FMPとFEAを、前記混合溶媒中に占める体積比でFMP/(FMP+FEA)が80/90〜10/90となる割合で含むことを特徴とする。
(2)前記(1)の非水電解液二次電池用非水電解液であって、前記混合溶媒中にFMP及びFEAを、前記混合溶媒中に占めるFMP及びFEAの体積の和が、混合溶媒の70体積%以上となるように含む。
(3)前記(1)又は(2)の非水電解液二次電池用非水電解液であって、前記混合溶媒中にFECを5〜30体積%含む。
(4)正極、負極、及び非水電解液を備えた非水電解液二次電池であって、前記非水電解液が、前記(1)〜(3)のいずれかの非水電解液である。
(5)前記(4)の非水電解液二次電池であって、正極電位が4.4V(vs.Li/Li+)以上となる。
(6)非水電解液二次電池の製造方法であって、非水溶媒と電解質塩を含み、前記非水溶媒が、FEC、FMP及びFEAの3種を含む混合溶媒であり、かつ、FMPとFEAを、前記混合溶媒中に占める体積比でFMP/(FMP+FEA)が80/90〜10/90となる割合で含む非水電解液を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明においては、非水電解液二次電池用非水電解液の非水溶媒として、FMP:FEAを特定割合で含むFEC、FMP及びFEAの3種を混合した混合溶媒を用いることにより、低温(0℃)での充放電サイクル性能が改善でき、電気抵抗が改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る非水電解液二次電池の一実施形態を示す外観斜視図
図2】本発明に係る非水電解液二次電池を複数個備えた蓄電装置を示す概略図
図3】実施例1〜4、比較例1及び2の非水電解液を用いた非水電解液二次電池のAC抵抗を示す図
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1に、本発明に係る非水電解液二次電池の一実施形態である矩形状の非水電解液二次電池1の外観斜視図を示す。なお、同図は、容器内部を透視した図としている。図1に示す非水電解液二次電池1は、電極群2が電池容器3に収納されている。電極群2は、正極活物質を備える正極と、負極活物質を備える負極とが、セパレータを介して捲回されることにより形成されている。正極は、正極リード4’を介して正極端子4と電気的に接続され、負極は、負極リード5’を介して負極端子5と電気的に接続されている。
ここで、セパレータには、非水電解液が保持され、この非水電解液は、非水溶媒と前記非水溶媒に溶解した電解質塩とを含むものであるが、本発明においては、以下の特徴を有する。
【0021】
<非水電解液>
本発明において、前記非水溶媒は、FEC、FMP及びFEAの3種を含み、かつ、FMPFEAを、前記混合溶媒中に占める体積比でFMP/(FMP+FEA)が80/90〜10/9となる割合で含むことを特徴とする。前記非水溶媒は、FMP及びFEAを主溶媒とすることが好ましい。ここで、「FMP及びFEAを主溶媒とする」とは、混合溶媒中で、FMP及びFEAの占める体積の和が最も高いことを意味する。前記混合溶媒中に占めるFMP及びFEAの和は、混合溶媒の50体積%以上が好ましく、70体積%以上がより好ましく、80体積%以上がさらに好ましい。
【0022】
FMP/(FMP+FEA)が80/90よりも大きくなるか、又は、FMP/(FMP+FEA)が10/90よりも小さくなると、低温(0℃)での充放電サイクル性能は低下し、電気抵抗が高くなるから、低温(0℃)での充放電サイクル性能を改善し、電気抵抗を改善するために、FMP/(FMP+FEAを体積比で80/90〜10/9となる割合とする。FMP/(FMP+FEAを体積比で70/90〜20/9となる割合とすることが好ましく、70/90〜30/9となる割合とすることがより好ましい。
【0023】
FECは、高電圧において、低温(0℃)での充放電サイクル性能を向上させ、電気抵抗を改善するために、非水溶媒に含有させる。しかし、多すぎると、電気抵抗が増大するから、混合溶媒中の30体積%以下とすることが好ましく、20体積%以下とすることがより好ましい。また、混合溶媒中の5体積%以上とすることが好ましく、10体積%以上とすることがより好ましい。
【0024】
本発明において、前記非水溶媒は、FEC、FMP及びFEAの3種を含み、好ましくはFMP及びFEAを主溶媒とする混合溶媒である。前記非水溶媒に占めるFEC、FMP及びFEAの割合は、80体積%以上が好ましい。これにより、非水電解液二次電池を高電圧(例えば、正極電位が4.4V(vs.Li/Li)以上となる電圧)まで充電した際にも、電池性能が低下する虞が低減できる。
【0025】
本発明の非水溶媒は、本発明の効果を損なわない範囲で、FEC、FMP及びFEA以外の少量の非水溶媒を含有してもよい。他の非水溶媒としては、一般に非水電解液二次電池の非水電解液に使用される非水溶媒が使用できる。例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、スチレンカーボネート、カテコールカーボネート、1−フェニルビニレンカーボネート、1,2−ジフェニルビニレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート等の環状カーボネート;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、プロピオラクトン等の環状カルボン酸エステル;ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等の鎖状カーボネート;酢酸メチル、酪酸メチル等の鎖状カルボン酸エステル;テトラヒドロフラン若しくはその誘導体;1,3−ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン、メチルジグライム等のエーテル類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジオキサラン若しくはその誘導体等の単独又はそれら2種以上の混合物等を挙げることができる。
【0026】
また、前記非水電解液は、添加剤として、一般に非水電解液二次電池に使用される添加剤を含むことができ、例えば、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、2,6−ジフルオロアニソール、3,5−ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物等の過充電防止剤;ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物等の負極被膜形成剤;亜硫酸エチレン、亜硫酸プロピレン、亜硫酸ジメチル、プロパンスルトン、プロペンスルトン、ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、トルエンスルホン酸メチル、硫酸ジメチル、硫酸エチレン、スルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジフェニルスルフィド、チオアニソール、ジフェニルジスルフィド、ジピリジニウムジスルフィド、パーフルオロオクタン、ホウ酸トリストリメチルシリル、リン酸トリストリメチルシリル、チタン酸テトラキストリメチルシリル、4−メチルスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、4,4′−ビス(2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン)等を単独で又は二種以上混合して非水電解質に加えることができる。
混合溶媒中の添加剤の含有割合は特に限定はないが、混合溶媒全体に対し、それぞれ、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上であり、上限は、5質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。これらの化合物を添加することにより、安全性をより向上させたり、高温保存後の容量維持性能やサイクル性能を向上させたりすることができる。
【0027】
本発明の非水電解液に含有される電解質塩としては、限定されるものではなく、一般に非水電解液二次電池に用いられる電解質塩を用いることができる。例えば、LiClO,LiBF,LiAsF,LiPF,LiSCN,LiBr,LiI,LiSO,Li10Cl10,NaClO,NaI,NaSCN,NaBr,KClO,KSCN等のリチウム(Li)、ナトリウム(Na)またはカリウム(K)の1種を含む無機イオン塩、LiCFSO,LiN(CFSO,LiN(CSO,LiN(CFSO)(CSO),LiC(CFSO,LiC(CSO,(CHNBF,(CHNBr,(CNClO,(CNI,(CNBr,(n−CNClO,(n−CNI,(CN−maleate,(CN−benzoate,(CN−phthalate、ステアリルスルホン酸リチウム、オクチルスルホン酸リチウム、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム等の有機イオン塩等が挙げられ、これらのイオン性化合物を単独、あるいは2種類以上混合して用いることが可能である。
【0028】
非水電解液における電解質塩の濃度としては、優れた高率放電性能を有する非水電解液二次電池を確実に得るために、0.1mol/l〜5.0mol/lが好ましく、1.0mol/l〜2.0mol/lがより好ましい。
【0029】
<正極活物質>
本発明の非水電解液二次電池を構成する正極に使用する正極活物質は、電気化学的にリチウムイオンを挿入・脱離可能であり、正極電位が4.4V(vs.Li/Li)以上となるものが好ましく、一般に非水電解液二次電池の正極活物質に使用されるリチウム遷移金属複合酸化物、ポリアニオン化合物等が使用できる。リチウム遷移金属複合酸化物としては、リチウムニッケルマンガン複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等が挙げられる。リチウムニッケルマンガン複合酸化物としては、例えば、LiNi0.5Mn1.5等のLiNiMn2−y4−δ(0<x<1.1、0.45<y<0.55、0≦δ<0.4)、LiNi1/2Mn1/2等のLiMeO(MeはNi、及びMnを含む遷移金属)、又はLi1.11Ni0.29Mn0.60(Li/Me=1.25)等のLi1+αMe1−α(0<α、MeはNi、Mnを含む遷移金属)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物としては、例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3等のLiMeO(MeはNi、Co及びMnを含む遷移金属)、又はLi1.09Co0.11Ni0.18Mn0.62(Li/Me=1.2)、Li1.11Co0.11Ni0.18Mn0.60(Li/Me=1.25)等のLi1+αMe1−α(0<α、MeはNi、Co及びMnを含む遷移金属)を使用することができる。ポリアニオン化合物としては、例えば、LiNiPO、LiCoPO、LiCoPOF、LiMnSiO等を使用することができる。
【0030】
<負極活物質>
本発明の非水電解液二次電池を構成する負極に使用する負極活物質は、電気化学的にリチウムイオンを挿入・脱離可能なものであり、正極電位が4.4V(vs.Li/Li)以上となる正極と組み合わせて高電圧で使用できるものが好ましく、一般に非水電解液二次電池の負極活物質に使用される炭素質材料、酸化錫や酸化ケイ素等の金属酸化物、金属複合酸化物、リチウム単体やリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金、SnやSi等のリチウムと合金形成可能な金属等が使用できる。炭素質材料としては、天然グラファイト、人造グラファイト、コークス類、難黒鉛化性炭素、低温焼成易黒鉛化性炭素、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、活性炭等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。中でも炭素質材料が安全性の点から好ましい。
【0031】
<正極及び負極>
正極及び負極の主要構成成分である正極活物質及び負極活物質は、平均粒子サイズ100μm以下の粉体であることが好ましい。特に、正極活物質の粉体は、非水電解液電池の高出力特性を向上する目的で10μm以下であることが好ましい。粉体を所定の形状で得るためには粉砕機や分級機が用いられる。例えば乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェトミル、旋回気流型ジェットミルや篩等が用いられる。粉砕時には水、あるいはヘキサン等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、特に限定はなく、篩や風力分級機などが、乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
【0032】
前記正極及び負極には、前記主要構成成分の他に、導電剤、結着剤、増粘剤、フィラー等が、他の構成成分として含有されてもよい。
【0033】
導電剤としては、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば限定されないが、通常、天然黒鉛(鱗状黒鉛,鱗片状黒鉛,土状黒鉛等)、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維、金属(銅,ニッケル,アルミニウム,銀,金等)粉、金属繊維、導電性セラミックス材料等の導電性材料を1種またはそれらの混合物として含ませることができる。
【0034】
これらの中で、導電剤としては、電子伝導性及び塗工性の観点よりアセチレンブラックが好ましい。導電剤の添加量は、正極または負極の総重量に対して0.1重量%〜50重量%が好ましく、特に0.5重量%〜30重量%が好ましい。特にアセチレンブラックを0.1〜0.5μmの超微粒子に粉砕して用いると必要炭素量を削減できるため望ましい。これらの混合方法は、物理的な混合であり、その理想とするところは均一混合である。そのため、V型混合機、S型混合機、擂かい機、ボールミル、遊星ボールミルといったような粉体混合機を乾式、あるいは湿式で混合することが可能である。
【0035】
前記結着剤としては、通常、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),ポリフッ化ビニリデン(PVdF),ポリエチレン,ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM),スルホン化EPDM,スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のゴム弾性を有するポリマーを1種または2種以上の混合物として用いることができる。結着剤の添加量は、正極または負極の総重量に対して1〜50重量%が好ましく、特に2〜30重量%が好ましい。
【0036】
フィラーとしては、電池性能に悪影響を及ぼさない材料を用いることができる。通常、ポリプロピレン,ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー、無定形シリカ、アルミナ、ゼオライト、ガラス、炭素等が用いられる。フィラーの添加量は、正極または負極の総重量に対して添加量は30重量%以下が好ましい。
【0037】
正極及び負極は、前記主要構成成分(正極においては正極活物質、負極においては負極活物質)、およびその他の材料を混練し合剤とし、N−メチルピロリドン,トルエン等の有機溶媒又は水に混合させた後、得られた混合液を下記に詳述する集電体の上に塗布し、または圧着して50℃〜250℃程度の温度で、2時間程度加熱処理することにより好適に作製される。前記塗布方法については、例えば、アプリケーターロールなどのローラーコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレード方式、スピンコーティング、バーコータ等の手段を用いて任意の厚さ及び任意の形状に塗布することが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0038】
正極集電体及び負極集電体の材質としては特に制限はなく、公知のものを用いることができる。
正極集電体としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料、カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素質材料が挙げられる。中でも金属材料、特にアルミニウムが好ましい。
負極集電体としては、例えば、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられる。中でも銅が加工し易さとコストの点から好ましい。
【0039】
<セパレータ>
セパレータとしては、微多孔性膜や不織布等を、単独あるいは併用することが好ましい。セパレータを構成する材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等に代表されるポリエステル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−フルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロアセトン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等を挙げることができる。中でもポリエチレン、ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂を主成分とする微多孔性膜であることが好ましい。
【0040】
<非水電解液二次電池及び蓄電装置>
その他の非水電解液二次電池の構成要素としては、端子、絶縁板、電池ケース等があるが、これらの部品は従来用いられてきたものをそのまま用いて差し支えない。
【0041】
本発明に係る非水電解液二次電池の形状については特に限定されるものではなく、円筒型電池、角型電池(矩形状の電池)、扁平型電池等が一例として挙げられる。本発明は、上記の非水電解液二次電池を複数備える蓄電装置としても実現することができる。蓄電装置の一実施形態を図2に示す。図2において、蓄電装置30は、複数の蓄電ユニット20を備えている。それぞれの蓄電ユニット20は、複数の非水電解液二次電池1を備えている。前記蓄電装置30は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源として搭載することができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
(実施例1〜4)
FEC:FMP:FEAを、体積比で、それぞれ、10:80:10、10:70:20、10:50:40、10:30:60の割合混合した溶媒を用い、電解質塩としてのLiPFの濃度が1.2mol/lである非水電解液を実施例1〜4の非水電解液とする。
【0044】
(比較例1)
FEC:FMPを、体積比で、10:90の割合で混合した溶媒を用い、電解質塩としてのLiPFの濃度が1.2mol/lである非水電解液を比較例1の非水電解液とする。
【0045】
(比較例2)
FEC:FEAを、体積比で、10:90の割合で混合した溶媒を用い、電解質塩としてのLiPFの濃度が1.2mol/lである非水電解液を比較例2の非水電解液とする。
【0046】
(実施例5及び6)
FEC:FMP:FEAを、体積比で、それぞれ、15:75:10、15:10:75の割合で混合した溶媒を用い、電解質塩としてのLiPFの濃度が1.2mol/lである非水電解液を実施例5及び6の非水電解液とする。
【0047】
(比較例3及び4)
FEC:FMP:FEAを、体積比で、それぞれ、5:85:10、5:10:85の割合で混合した溶媒を用い、電解質塩としてのLiPFの濃度が1.2mol/lである非水電解液を比較例3及び4の非水電解液とする。
【0048】
<正極板の作製>
正極活物質として、LiNi1/3Co1/3Mn1/3で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を用いた。質量比で、正極活物質:ポリフッ化ビニリデン(PVdF):アセチレンブラック(AB)=94:3:3の割合(固形物換算)の割合で含み、N−メチルピロリドン(NMP)を溶剤とする正極ペーストを作製し、該正極ペーストを正極活物質が単位電極面積あたり20mg/cm含まれるように、厚さ15μmの帯状のアルミニウム箔集電体の両面に塗布した。これをローラープレス機により加圧して正極活物質層を成型した後、100℃で14時間、減圧乾燥して、極板中の水分を除去した。このようにして正極板を作製した。正極活物質の比表面積は、0.42m/gであった。
【0049】
<負極板の作製>
負極活物質として、黒鉛を用いた。質量比で、黒鉛:スチレン−ブタジエン・ゴム(SBR):カルボキシメチルセルロース(CMC)=97:2:1の割合(固形分換算)で含み、水を溶剤とする負極ペーストを作製し、厚さ10μmの帯状の銅箔集電体の両面に塗布した。これをローラープレス機により加圧して負極活物質層を成型した後、100℃で12時間、減圧乾燥して、極板中の水分を除去した。このようにして負極板を作製した。
【0050】
(非水電解液二次電池の作製)
<組立工程>
ポリエチレン製微多孔膜からなるセパレータを介して前記正極板と前記負極板を積層し、扁平形状に巻回して、図1に示すような電極群2を作製し、アルミニウム製の電池容器3に収納し、正負極端子4,5を取り付けた。電池容器3内部に、実施例1〜6、比較例1〜4の非水電解液を注入したのちに封口した。このようにして非水電解液二次電池(リチウム二次電池)を組み立てた。
【0051】
<初期充放電工程>
上記のようにして組み立てた非水電解液二次電池について、温度25℃にて、2サイクルの初期充放電工程に供した。電圧制御は、全て、正負極端子間電圧に対して行った。1サイクル目の充電は、電流0.2CmA、電圧4.35V、8時間の定電流定電圧充電とし、放電は、電流0.2CmA、終止電圧2.75Vの定電流放電とした。2サイクル目の充電は、電流1.0CmA、電圧4.35V、3時間の定電流定電圧充電とし、放電は、電流1.0CmA、終止電圧2.75Vの定電流放電とした。全てのサイクルにおいて、充電後及び放電後に、10分の休止時間を設定した。このようにして、実施例1〜6、比較例1〜4の非水電解液二次電池を作製した。実施例1〜6、比較例1〜4の非水電解液二次電池は、初期放電容量が168mAh/gであった。
【0052】
<充放電サイクル試験>
上記のようにして作製した、実施例1〜6、比較例1〜4の非水電解液二次電池について、温度0℃にて、100サイクルの充放電サイクル試験を行い、放電容量の推移を調べた。電圧制御は、全て、正負極端子間電圧に対して行った。充電は、電流1.0CmA、電圧4.35V、3時間の定電流定電圧充電とし、放電は、電流1.0CmA、終止電圧2.75Vの定電流放電とした。全てのサイクルにおいて、充電後及び放電後に、10分の休止時間を設定した。ここで、ここで、負極に黒鉛を用いた場合、正極電位(vs.Li/Li)の値は端子間電圧の値に対して約0.1V大きいものとなることがわかっている。100サイクル目の放電容量の、初期放電容量に対する比率をサイクル容量維持率として算出した。
【0053】
<交流抵抗の測定>
実施例1〜6、比較例1〜4の非水電解液二次電池について、上記のようにして100サイクル目の放電容量を測定した後、放電末の状態で室温にて1kHzの交流抵抗を測定した。測定装置は、ACミリオームハイテスタ(HIOKI製)を用いた。
【0054】
サイクル容量維持率と交流抵抗の測定結果を、実施例1〜6、比較例1〜4の非水電解液二次電池の非水電解液の組成及び(FMP+FEA)が90となるように換算したFMP/(FMP+FEA)と合わせて、表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
図3及び表1より、FECが10体積%の場合、FEC、FMP及びFEAの3種を含み、かつ、FMP:FEAを体積比で80:10〜30:60の範囲(FMPとFEAを、体積比でFMP/(FMP+FEA)が80/90〜30/90となる範囲)で含む混合溶媒を用いた実施例1〜4の非水電解液電池は、FEC及びFMPの2種、及びFEC及びFEAの2種を含む混合溶媒を用いた比較例1及び2の非水電解液電池と比較し、サイクル容量維持率が高く、すなわち、低温での充放電サイクル性能が優れ、交流抵抗(電気抵抗)が低いことがわかる。

FECが15体積%の場合、FMPFEAを体積比でFMP/(FMP+FEA)が80/90〜10/90となる範囲で含む混合溶媒を用いた実施例5及び6の非水電解液電池は、低温での充放電サイクル性能が優れ、交流抵抗(電気抵抗)が低かった。すなわち、FMPが多い実施例5では、サイクル容量維持率はやや低くなるが、交流抵抗は低く、FMPが少ない実施例6では、サイクル容量維持率は高くなり、交流抵抗は低くなるから、上記の範囲で効果を奏するといえる。

これに対して、FMP/(FMP+FEA)が80/90よりも大きい場合、FMP/(FMP+FEA)が10/90よりも小さい場合には、サイクル容量維持率が低くなり、交流抵抗は高くなる(比較例3及び4参照)。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る非水電解液二次電池は、低温での充放電サイクル性能が優れ、電気抵抗が低いので、電気自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車などの自動車用電源として有用である。
【符号の説明】
【0058】
1 非水電解液二次電池
2 電極群
3 電池容器
4 正極端子
4’ 正極リード
5 負極端子
5’ 負極リード
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置
図1
図2
図3