特許第6656646号(P6656646)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6656646
(24)【登録日】2020年2月7日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】パーツ移送装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 54/02 20060101AFI20200220BHJP
   B65G 47/14 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
   B65G54/02
   B65G47/14 L
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-177766(P2019-177766)
(22)【出願日】2019年9月27日
【審査請求日】2019年9月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593049017
【氏名又は名称】セキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】迫田 宏治
(72)【発明者】
【氏名】三浦 誠司
【審査官】 中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−77256(JP,A)
【文献】 特開2017−30963(JP,A)
【文献】 特開2016−190733(JP,A)
【文献】 特開2019−69843(JP,A)
【文献】 特公昭53−43708(JP,B2)
【文献】 米国特許第4818378(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 54/02
B65G 47/14−47/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒と、
前記外筒の内面側において、該外筒の軸方向に延びる中心軸を有する螺旋状に配列され、磁界を該外筒の外面側に及ぼしてパーツを該外筒の外面に吸着させる複数の吸着手段と、
前記複数の吸着手段を前記中心軸回りに回転移動させる回転駆動手段と、
前記パーツの回転移動を規制して、該パーツを前記外筒の外面に沿って軸方向に移動させる規制手段と、
を備える、パーツ移送装置。
【請求項2】
請求項1において、
表裏選別手段をさらに備え、
前記表裏選別手段は、前記外筒の外面からの突出厚みの差に基づいて、表面が該外面を向いた姿勢のとき該パーツを通過させる一方、裏面が該外面を向いた姿勢のとき該パーツをはねて通過を阻止する、パーツ移送装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記外筒は、鉛直方向に延びる、パーツ移送装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記外筒の外面側、且つ、前記表裏選別手段よりも下側に、複数のパーツが無整列状態で溜められるパーツ溜り部を、さらに備える、パーツ移送装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1つにおいて、
前記外筒の外面側に、姿勢変換手段をさらに備え、
前記姿勢変換手段は、前記パーツを、該パーツの表面又は裏面が前記外筒の外面に相対向した姿勢に変換する、パーツ移送装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つにおいて、
前記回転駆動手段は、
前記複数の吸着手段を、前記螺旋状に配列した状態で保持する保持部と、
前記保持部を前記中心軸回りに回転させる駆動部と、を有する、パーツ移送装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つにおいて、
前記外筒は、円筒形状である、パーツ移送装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つにおいて、
前記吸着手段は、互いに逆の磁極を前記外筒に向けた一対の永久磁石が相隣り合う、パーツ移送装置。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1つにおいて、
前記吸着手段は、互いに同一の磁極を前記外筒に向けた一対の永久磁石が相隣り合う、パーツ移送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーツ移送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パーツを移送するパーツ移送装置が知られている。
【0003】
例えば特許文献1に開示のパーツ整列装置(パーツ移送装置)は、面板と、面板の後面側において、面板に直交する中心軸を中心とする特定の回転軌跡と対応する特定の円周線に沿って回転移動して面板の前面側に向けて磁界を作用させる吸着手段と、当該吸着手段を中心軸回りに回転させる回転駆動手段と、を備える。パーツ整列装置(パーツ移送装置)は、面板の前面側に、面板を挟んで吸着手段の特定回転軌跡に沿って吸着手段の回転方向に対し順に、吸着手段に吸着されたパーツを吸着手段の回転移動に伴いパーツの表面又は裏面のいずれかが面板に相対向した姿勢に変換させる筒状の姿勢変換ガイドと、パーツの表面又は裏面が面板に相対向して吸着された場合の面板からの突出厚みの差に基づいて、表面が面板に相対向したパーツを通過させる一方、裏面が面板に相対向したパーツを磁界による吸着力に抗してはねることによりその通過を阻止する表裏選別手段と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−59878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に係るパーツ整列装置(パーツ移送装置)では、吸着手段を水平軸(中心軸)回りに回転させることによってパーツを上昇させる。すなわち、パーツは、下方のパーツ溜り部からその上方の表裏選別手段に至るまで、円弧状の軌跡を側方に遠回りすることになり、必然的に装置が大型にならざるを得ない。
【0006】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的とするところは、パーツ移送装置の小型化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るパーツ移送装置は、外筒と、上記外筒の内面側において、上記外筒の軸方向に延びる中心軸を有する螺旋状に配列され、磁界を上記外筒の外面側に及ぼしてパーツを上記外筒の外面に吸着させる複数の吸着手段と、上記複数の吸着手段を上記中心軸回りに回転移動させる回転駆動手段と、上記パーツの回転移動を規制して、上記パーツを上記外筒の外面に沿って軸方向に移動させる規制手段と、を備える。
【0008】
かかる構成によれば、パーツは、螺旋状に配列された複数の吸着手段のうちの一部によって、外筒の外面に吸着される。パーツは、当該吸着手段が中心軸回りに回転することで、外筒の外面に沿って周方向に回転移動しようとする。しかし、パーツは、規制手段によって、回転移動が規制される。すなわち、吸着手段は回転移動するが、パーツは回転移動しない状態となる。ここで、複数の吸着手段は螺旋状に配列されるため、複数の吸着手段の回転移動に伴い、当該パーツの軸方向一方側には、吸着手段が次々と現れる。これにより、パーツは、次々と現れる吸着手段に、順次引き寄せられて、外筒の外面に沿って軸方向一方へ移動する。すなわち、パーツは、外筒の外面に沿って移動するだけであり、外筒の外方へ遠回りしない。したがって、装置を大型化する必要がない。
【0009】
一実施形態によれば、表裏選別手段をさらに備え、上記表裏選別手段は、上記外筒の外面からの突出厚みの差に基づいて、表面が上記外面を向いた姿勢のとき上記パーツを通過させる一方、裏面が上記外面を向いた姿勢のとき上記パーツをはねて通過を阻止する。
【0010】
かかる構成によれば、パーツの表裏を選別して、統一した姿勢に変換させることができる。
【0011】
一実施形態では、上記外筒は、鉛直方向に延びる。
【0012】
かかる構成によれば、パーツは外筒の外面に沿って上下方向に移動するので、水平方向に装置を小型化することができる。
【0013】
一実施形態では、上記外筒の外面側、且つ、上記表裏選別手段よりも下側に、複数のパーツが無整列状態で溜められるパーツ溜り部を、さらに備える。
【0014】
かかる構成によれば、表裏選別手段ではねられたパーツは、鉛直方向下側のパーツ溜り部に落下する。当該パーツは、再び吸着手段に吸着されて、表裏選別手段に供給されるので、効率がよい。
【0015】
一実施形態では、上記外筒の外面側に、姿勢変換手段をさらに備え、上記姿勢変換手段は、上記パーツを、上記パーツの表面又は裏面が上記外筒の外面に相対向した姿勢に変換する。
【0016】
かかる構成によれば、姿勢変換手段によって、起立姿勢(パーツの側面が外筒の外面に相対向した姿勢)のパーツを、倒伏姿勢(パーツの表面又は裏面が外筒の外面に相対向した姿勢)に変換することができる。すなわち、姿勢変換手段によって、パーツを、表裏選別手段で選別可能な倒伏姿勢に変換することができる。したがって、表裏選別手段によるパーツの選別を、より確実に行うことができる。
【0017】
一実施形態では、上記回転駆動手段は、上記複数の吸着手段を、上記螺旋状に配列した状態で保持する保持部と、上記保持部を上記中心軸回りに回転させる駆動部と、を有する。
【0018】
かかる構成によれば、駆動部によって保持部を回転させるだけで吸着手段を回転移動させることができるので、構造が簡単である。
【0019】
一実施形態では、上記外筒は、円筒形状である。
【0020】
かかる構成によれば、例えば外筒が角筒形状である場合に比べて、外筒の外面に沿って移動するパーツの動きがスムースになる。
【0021】
一実施形態では、上記吸着手段は、互いに逆の磁極を上記外筒に向けた一対の永久磁石が相隣り合う。
【0022】
かかる構成によれば、一対の永久磁石の中点に、強い磁界が局所的に形成される。これにより、パーツは常に中点に引き寄せられるので、外筒の外面におけるパーツの吸着位置が安定する。
【0023】
一実施形態では、上記吸着手段は、互いに同一の磁極を上記外筒に向けた一対の永久磁石が相隣り合う。
【0024】
かかる構成によれば、均等な磁界が広範囲に形成される。これにより、パーツが大きい場合でも、パーツを外筒の外面に吸着させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によればパーツ移送装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の実施形態に係るナット移送装置を示す斜視図である。
図2図2は、図1における外筒付近の拡大斜視図である。
図3図3は、保持部及び吸着手段を示す斜視図である。
図4図4は、溶接ナットの表面が外筒の外面に相対向した状態における図2のIV−IV線における断面図である。
図5図5は、溶接ナットの裏面が外筒の外面に相対向した状態における図4相当図である。
図6図6は、図2のVI−VIにおける断面図である。
図7図7は、溶接ナットを示す斜視図である。
図8図8は、本発明の実施形態の変形例に係るナット移送装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0028】
本実施形態に係るパーツ移送装置としてのナット移送装置1は、四角溶接ナットMを移送対象のパーツとする。溶接ナットMについて、図7を参照しながら説明する。溶接ナットMは、ナット本体部m1と突起部m2とを一体形成したものである。ナット本体部m1は、所定の厚みtを有し、互いに平行な表面m3及び裏面m4が平面視で略正方形に形成される。突起部m2は、ナット本体部m1の四隅から、それぞれ裏面m4側に突出する。すなわち、溶接ナットMの全体厚みTは、ナット本体部m1の厚みtに各突起部m2の突出寸法を加えたものである。なお、溶接ナットMの中心m0には、ねじ孔が貫通する。なお、m5は、溶接ナットMの側面である。sは、溶接ナットMの二面幅寸法である。eは、溶接ナットMの対角線寸法である。
【0029】
先ず、ナット移送装置1の全体構成について、図1を参照しながら説明する。ナット移送装置1は、投入シュート2と、装置本体3と、送り出し装置4と、基台5と、制御装置6と、を備える。投入シュート2には、ばらの状態の多数の溶接ナットMが投入される。装置本体3(パーツ移送装置)は、鉛直方向に縦長であり、投入シュート2に投入された溶接ナットMを上方に移送する。送り出し装置4は、装置本体3から移送された溶接ナットMを、例えば圧力エアにより1つずつ、ナット溶接機(図示省略)に対して送り出す。基台5は、装置本体3の下端部を固定する。
【0030】
投入シュート2は、矩形箱型状の本体部2aと、本体部2aの下部に設けられた深皿状の受け部2bで構成される。本体部2aの内部は、仕切板2cによって、ホッパー部2dと、装置本体3の一部を収容する収容部2eと、に区画される。ホッパー部2dの上面には、開口2fが設けられる。収容部2eは、装置本体3の一部を上下に貫通させる。受け部2bは、ホッパー部2dの下部及び収容部2eの下部を、共に覆う。ここで、仕切板2cと受け部2bとは互いに連結されておらず、仕切板2cの下端部2gと、受け部2bの底面との間には隙間2hが設けられる。すなわち、ホッパー部2dと収容部2eとは、隙間2hによって互いに連通する。なお、本実施形態において、投入シュート2は、透明なアクリル板で構成される。なお、投入シュート2の材質は、特に限定されず、例えば金属でもよい。
【0031】
装置本体3は、外筒20を備える。外筒20は、鉛直方向に延びる円筒形状である。外筒20は、投入シュート2の収容部2eに収容される。また、外筒20は、受け部2bの底面を上下に貫通する。これにより、外筒20の外面側に、外筒20と受け部2bとに囲まれたパーツ溜り部としてのナット溜り部30が形成される。ナット溜り部30には、複数の溶接ナットMが無整列状態で溜められる。すなわち、投入シュート2の開口2fからホッパー部2dへ投入された溶接ナットMは、受け部2b上を、隙間2hを通ってホッパー部2d側から収容部2e側へと流れる。そして、溶接ナットMは、ナット溜り部30に溜められる。
【0032】
図3は、外筒20の内面22側(内部)を示す。以下、図3を参照しながら、吸着手段40及び回転駆動手段50の構成について詳細に説明する。外筒20(図3において二点鎖線で模式的に図示)の内面22側には、複数の吸着手段40が設けられる。複数の吸着手段40は、外筒20の軸方向に延びる中心軸Xを有する螺旋状に配列される(以下、複数の吸着手段40の配列により形成される螺旋を「螺旋P」という)。本実施形態において、螺旋Pの中心軸Xは、外筒20の中心軸と同心である。すなわち、外筒20の中心軸も、Xである(図1参照)。吸着手段40は、磁界を外筒20の外面21側に及ぼして溶接ナットMを外筒20の外面21に吸着させる。なお、螺旋Pの方向は、左巻き(S巻き)である。
装置本体3は、回転駆動手段50を備える。回転駆動手段50は、複数の吸着手段40を中心軸X回りに回転移動させる。具体的には、回転駆動手段50は、保持部としてのシャフト51を有する。シャフト51は、外筒20の内面22側に収容される。シャフト51は、中心軸Xを中心とする鉛直方向に延びる円柱状である。シャフト51の外面52と外筒20の内面22との間には、隙間が設けられる。シャフト51は、複数の吸着手段40を、螺旋状に配列した状態で保持する。具体的には、複数の吸着手段40は、シャフト51に対して、例えば溶接や接着材等により固定される。
【0033】
吸着手段40は、互いに逆の磁極を外筒20に向けた(径方向外方に向けた)永久磁石41a,41bが相隣り合う。具体的には、一対の永久磁石41a,41bは、直方体状であり、軸方向に並べられる。永久磁石41aは、軸方向上側に配置され、N極が外筒20に向けられる。永久磁石41bは、軸方向下側に配置され、S極が外筒20に向けられる。なお、42は、一対の永久磁石の中点である。中点42には、局所的な強い磁界が形成される。したがって、溶接ナットMは、外筒20の外面21において、中点42に対応する位置に吸着されやすい。
【0034】
回転駆動手段50は、駆動部としてのモータ54を有する。モータ54の中心軸は、シャフト51の下端部に連結しており、シャフト51を中心軸X回りに回転させる。モータ54の回転方向は、軸方向下側から見て時計回り(図3のFの方向)である(以下、単に時計回りという)。図1に示すように、モータ54は、その下端部が基台5に固定される。なお、モータ54には、スピードコントローラー11が設けられる。スピードコントローラー11は、モータ54の回転数を調整する。
【0035】
図1に示すように、モータ54に隣接して、制御装置6が基台5に固定される。制御装置6は、モータ54の回転数を制御する。
【0036】
装置本体3は、図2に示すように、規制手段としての規制ガイド60を備える。規制ガイド60は、第1ガイド部61と、第2ガイド部62と、を有する。第1ガイド部61は、外筒20の外面21における軸方向中間部から下端部に至る部分に設けられる。第1ガイド部61は、外面21から径方向外方に突出し、軸方向に延びる。第2ガイド部62は、第1ガイド部61と同様に、外面21から径方向外方に突出しており、軸方向に延びる。第2ガイド部62は、第1ガイド部61の上側に位置する。また、第2ガイド部62は、周方向において、第1ガイド部61に対して時計回りにややずれて配置される。具体的には、第2ガイド部62の下端部は、第1ガイド部61の上端部にオーバーラップする。第2ガイド部62の下端部は、第1ガイド部61の上端部における周方向時計回り側(図2における右側)の側面に連結される。
【0037】
規制ガイド60の機能について説明する。詳細は後述するが、規制ガイド60は、溶接ナットMの回転移動を規制する。先ず、溶接ナットMは、螺旋状に配列された複数の吸着手段40のうちの一部である吸着手段40Aによって、外筒20の外面21に吸着される(図3参照)。溶接ナットMは、吸着手段40Aが中心軸X回り且つ時計回りに回転することで、外筒20の外面21に沿って周方向時計回りに回転移動しようとする。しかし、溶接ナットMは、規制ガイド60によって、回転移動が規制される。すなわち、吸着手段40Aは回転移動するが、溶接ナットMは回転移動しない状態となる。ここで、図3に示すように、複数の吸着手段40は螺旋状に配列されるため、複数の吸着手段40の回転移動に伴い、当該溶接ナットMの軸方向上側には、吸着手段40Aよりも回転方向上流側(周方向反時計回り側)の吸着手段40B,40C,40D,…が次々と現れる。これにより、溶接ナットMは、次々と現れる吸着手段40B,40C,40D,…に、順次引き寄せられて、外筒20の外面21に沿って軸方向上方へ移動する。
【0038】
装置本体3は、図2に示すように、姿勢変換手段としての、姿勢変換ガイド70を備える。姿勢変換ガイド70は、外筒20の外面21側における下部に設けられる。姿勢変換ガイド70は、略三角形状の板状部材で構成される。姿勢変換ガイド70は、図6に示すように、外筒20の外面21の曲面形状に対応して、曲げられている。姿勢変換ガイド70は、図6に示すように、外筒20の外面21の一部を、所定の隙間Hを空けて覆う。姿勢変換ガイド70は、規制ガイド60の第1ガイド部61の下側部分における周方向反時計回り側(図2,6における左側)の側面に固定される。ここで、図6に示すように、姿勢変換ガイド70と外筒20の外面21との隙間Hは、溶接ナットMの全体厚みTよりも大きく、且つ、二面幅寸法sよりも小さい。すなわち、姿勢変換ガイド70は、倒伏姿勢(溶接ナットMの表面m3又は裏面m4が外筒20の外面21に相対向した姿勢)の溶接ナットMを通過させる一方、起立姿勢(溶接ナットMの側面m5が外筒20の外面21に相対向した姿勢)の溶接ナットMを通過させない。ここで、図6に示すように、姿勢変換ガイド70には、周方向反時計回り側(図2,6における左側)の端面に面取部71が設けられる。また、姿勢変換ガイド70には、軸方向下側(図2における下側、図6における紙面手前側)の端面に面取部72が設けられる。これにより、起立姿勢の溶接ナットMが周方向反時計回り側から姿勢変換ガイド70を通過しようとすると、当該溶接ナットMは、姿勢変換ガイド70の面取部71に案内されて倒される。同様に、起立姿勢の溶接ナットMが軸方向下側から姿勢変換ガイド70を通過しようとすると、当該溶接ナットMは、姿勢変換ガイド70の面取部72に案内されて倒される。すなわち、姿勢変換ガイド70は、起立姿勢の溶接ナットMを、倒伏姿勢に姿勢変換する。倒伏姿勢に変換された溶接ナットMは、姿勢変換ガイド70を通過可能となる。
【0039】
装置本体3は、ストッパー80を備える。ストッパー80は、図2,6に示すように、外筒20の外面21に、全周に亘って設けられた円盤状である。なお、図2に示すように、規制ガイド60の第1ガイド部61には、切欠きが形成されており、当該切欠きに、ストッパー80が係合する。ストッパー80は、姿勢変換ガイド70の軸方向上側に位置する。具体的には、ストッパー80は、姿勢変換ガイド70の上端部に連結する。ストッパー80は、溶接ナットMの軸方向上方への移動を規制する。
【0040】
ストッパー80における規制ガイド60の第1ガイド部61との係合部分近傍には、ストッパー80を軸方向に貫通する貫通孔81が設けられる。具体的には、貫通孔81は、ストッパー80において、第1ガイド部61のガイド面61aに臨む位置に設けられる。貫通孔81は、整列ガイドを構成する(以下、整列ガイド81という)。整列ガイド81の幅寸法は、溶接ナットMの対角線寸法eに対して若干大きい程度である。すなわち、整列ガイド81は、姿勢変換ガイド70を通過した倒伏姿勢の溶接ナットMの複数個通過を阻止して、溶接ナットMを一列に整列する。
【0041】
ストッパー80は、外筒20の外面21の下側部分において、溶接ナットMの軸方向上方への移動を規制して、周方向時計回りへの移動を促す。すなわち、溶接ナットMは、ストッパー80に当接することで、軸方向上方への移動が規制されて、周方向時計回りに案内される。すなわち、姿勢変換ガイド70の周方向反時計回り側に位置する溶接ナットMは、ストッパー80によって、姿勢変換ガイド70に案内される。これにより、当該溶接ナットMは、周方向反時計側から姿勢変換ガイド70を通過する。そして、溶接ナットMは、ストッパー80に沿って、さらに周方向時計回りに移動して、規制ガイド60の第1ガイド部61に当接する。そして、溶接ナットMは、第1ガイド部61に案内されて、整列ガイド81に向かって、軸方向上方に移動する。軸方向下側から姿勢変換ガイド70を通過した溶接ナットMについても同様である。
【0042】
装置本体3は、図2に示すように、表裏選別手段としての表裏選別ガイド90を備える。表裏選別ガイド90は、L字形状であり、取付部91と突出部92とが互いに直交する。図2に示すように、取付部91は、外筒20の軸方向に延びる。突出部92は、外筒20の外面21に向けて垂直に延びる。規制ガイド60の第2ガイド部62には、径方向外方に突出する固定部62aが設けられており、取付部91は、固定部62aに固定される。図4,5に示すように、突出部92と外筒20の外面21との隙間Lは、溶接ナットMの全体厚みTよりも小さく、且つ、ナット本体m1の厚みtよりも僅かに大きい。
【0043】
表裏選別ガイド90は、第2ガイド部62に案内されて軸方向上方へ移動する溶接ナットMの外筒20の外面21からの突出厚みの差に基づいて、表裏を選別する。具体的には、溶接ナットMは、図4に示すように、表面m3が外筒20の外面21を向いた姿勢のとき、表裏選別ガイド90に接触せず、表裏選別ガイド90を通過する。具体的には、図4に示すように、溶接ナットMは、その径方向に隣接する両突起部m2、m2の略中央位置が表裏選別ガイド90を通過する。一方、溶接ナットMは、図5に示すように、裏面m4が外筒20の外面21を向いた姿勢のとき、表裏選別ガイド90にはねられて、表裏選別ガイド90の通過を阻止される。表裏選別ガイド90にはねられた溶接ナットMは、鉛直方向下方のナット溜り部30へと落下する。
【0044】
図2に示すように、外筒20の外面21において、表裏選別ガイド90近傍には、はみ出し防止ガイド7が設けられる。はみ出し防止ガイド7は、軸方向に延びており、第2ガイド部62に対向する。はみ出し防止ガイド7は、第2ガイド部62に案内されながら表裏選別ガイド90を通過した又は通過しようとする溶接ナットMの周方向反時計回り側へのはみ出しを規制する。はみ出し防止ガイド7と第2ガイド部62との間隔は、溶接ナットMの幅(対辺)寸法sよりも若干大きい程度である。図2に示すように、軸方向において、はみ出し防止ガイド7の下端部と第1ガイド部61の上端部との間には隙間8が設けられる。また、第1ガイド部61の上端部には、径方向外方に向けて下方に傾斜する傾斜面61bが設けられる。これにより、表裏選別ガイド90ではねられた溶接ナットMは、第1ガイド部61の上端部に引っかからずに、傾斜面61bに沿ってスムースに下方に落下するようになる。
【0045】
図2に示すように、表裏選別ガイド90よりも上側において、はみ出し防止ガイド7と第2ガイド部62との間には、チャンネル部材9が設けられる。チャンネル部材9は、横断面溝形状であり、外筒20の外面21を覆う。表裏選別ガイド90を通過した溶接ナットMは、チャンネル部材9の内部を通ってさらに軸方向上方に移動した後、チューブ10(図1参照)を経て、送り出し装置4へ供給される。
【0046】
以上の通り、本実施形態によれば、溶接ナットMは、螺旋状に配列された複数の吸着手段40のうちの一部である吸着手段40Aによって、外筒20の外面21に吸着される。溶接ナットMは、当該吸着手段40Aが中心軸回りに回転することで、外筒20の外面21に沿って周方向に回転移動しようとする。しかし、溶接ナットMは、規制ガイド60によって、回転移動が規制される。すなわち、吸着手段40Aは回転移動するが、溶接ナットMは回転移動しない状態となる。ここで、図3に示すように、複数の吸着手段40は螺旋状に配列されるため、複数の吸着手段40の回転移動に伴い、溶接ナットMの軸方向上側には、吸着手段40Aよりも回転方向上流側(周方向反時計回り側)の吸着手段40B,40C,40D,…が次々と現れる。これにより、溶接ナットMは、次々と現れる吸着手段40B,40C,40D,…に、順次引き寄せられて、外筒20の外面21に沿って軸方向に移動する。すなわち、溶接ナットMは、外筒20の外面21に沿って移動するだけであり、外筒20の外方へ遠回りしない。したがって、装置を大型化する必要がない。
【0047】
表裏選別ガイド90が設けられるので、溶接ナットMの表裏を選別して、統一した姿勢に変換させることができる。
【0048】
外筒20が鉛直方向に延びることで、溶接ナットMは外筒20の外面21に沿って上下方向に移動するので、水平方向に装置を小型化することができる。
【0049】
表裏選別ガイド90ではねられた溶接ナットMは、鉛直方向下側のナット溜り部30に落下する。当該溶接ナットMは、再び吸着手段40に吸着されて、表裏選別ガイド90に供給されるので、効率がよい。
【0050】
姿勢変換ガイド70によって、起立姿勢(溶接ナットMの側面m5が外筒20の外面21に相対向した姿勢)の溶接ナットMを、倒伏姿勢(溶接ナットMの表面m3又は裏面m4が外筒20の外面21に相対向した姿勢)に変換することができる。すなわち、溶接ナットMを、表裏選別ガイド90で選別可能な倒伏姿勢に変換することができる。したがって、表裏選別ガイド90による溶接ナットMの選別を、より確実に行うことができる。
【0051】
モータ54によってシャフト51を回転させるだけで吸着手段40を回転移動させることができるので、構造が簡単である。
【0052】
外筒20が円筒形状なので、例えば外筒20が角筒形状である場合に比べて、外筒20の外面21に沿って移動する溶接ナットMの動きがスムースになる。
【0053】
一対の永久磁石41,41の中点42に、強い磁界が局所的に形成される。これにより、パーツは常に中点に引き寄せられるので、外筒20の外面21における溶接ナットMの吸着位置が安定する。
【0054】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
【0055】
例えば、図8は、本実施形態の変形例に係るナット移送装置1を示す。このパーツ移送装置1の投入シュート2には、パイプ2kが設けられる。本実施形態において、パイプ2kは、角パイプである。なお、パイプ2kは、例えば丸パイプでもよく、その断面形状は
特に限定されない。パイプ2kの上端開口には、ホッパー2mが設けられる。パイプ2kは、深皿状のナット受け2sの底面を貫通する。ナット受け2sは、例えばアクリル板で構成される。なお、ナット受け2sの材質は、特に限定されず、例えば金属でもよい。また、装置本体3における外筒20も、ナット受け2sの底面を貫通する。外筒20の外面21側に、外筒20とナット受け2sとに囲まれたナット溜り部30が形成される。パイプ2k内部におけるナット受け2sよりも上側には、外筒20側に向けて下方に傾斜する傾斜板2nが設けられる。パイプ2kの外筒20側の側面において、傾斜板2nから上側部分には、連通孔2oが開設される。連通孔2oは、調整板2pで覆われる。調整板2pは、制御装置6の制御によって、開閉自在である。これにより、ホッパー2mから投入された溶接ナットMは、パイプ2k内を下方へ落下する。そして、溶接ナットMは、傾斜板2nに案内されて、外筒20側に向けて移動する。調整板2pが開姿勢のとき、溶接ナットMは、連通孔2oを通って、ナット溜り部30に落下する。調整板2pが閉姿勢のとき、溶接ナットMは、パイプ2k内における傾斜板2nの上側に滞留する。なお、本変形例では、上記実施形態と異なり、モータ54は、基台5に固定されない。モータ54は、パイプ2kに固定部材2qによって固定される。パイプ2kの下端部は、固定部材2rによって、基台5に固定される。なお、制御装置6は、基台5に固定される。なお、調整板2pは、制御装置6に制御されなくてもよい。また、連通孔2oは、必ずしも、調整板2pで覆われなくてもよい。
【0056】
吸着手段40は、互いに同一の磁極(S極とS極;N極とN極)を外筒20に向けた一対の永久磁石41,41が相隣り合うようにしてもよい。これにより、均等な磁界が広範囲に形成されるので、溶接ナットMが大きい場合でも、溶接ナットMを外筒20の外面21に吸着させることができる。
【0057】
各吸着手段40において、永久磁石の個数は、2個に限定されない。1個でも、3個以上でもよい。
【0058】
装置本体3(パーツ移送装置)は、必ずしも、表裏選別ガイド90を備えなくてもよい。例えば、装置本体3(パーツ移送装置)よりも、さらに下流側において、溶接ナットMの表裏を選別する機構を設けてもよい。
【0059】
上記実施形態では、移送対象のパーツを四角溶接ナットとしたが、これに限定されず、例えば、六角溶接ナット又は丸型溶接ナット等の他の形状としてもよい。また、移送対象のパーツは、必ずしも溶接ナットである必要はなく、突起部m2を有さない通常のナットでもよい。また、パーツは、表面及び裏面の両方に、突起を有するナットでもよい。さらに、移送対象のパーツは、必ずしもナットである必要はなく、吸着手段40によって吸着されるのであれば、いかなる構成でもよい。
【0060】
上記実施形態では、永久磁石41a,41bの形状は、直方体状であるとしたが、これに限定されない。永久磁石41a,41bの形状は、例えば円柱状等でもよい。
【0061】
上記実施形態では、外筒20を円筒形状としたが、これに限定されない。外筒20は、例えば角筒のような横断面多角形状でもよい。
【0062】
上記実施形態では、シャフト51は、円柱状としたが、これに限定されない。シャフト51は、中心に貫通孔が設けられた円筒状でもよい。また、螺旋状に複数の吸着手段40を保持できるのであれば、シャフト51は、例えば断面楕円形状、断面多角形状等、形状はいかなるものであってもよい。
【0063】
また、円柱状又は円筒状のシャフト51の表面に、螺旋状に形成された溝を設けて、溝に複数の吸着手段40嵌合させてもよい。これにより、吸着手段40を溝に嵌めるだけで、吸着手段40がシャフト51に保持されるので、組み立て作業が容易となる。
【0064】
上記実施形態では、外筒20、シャフト51、及び螺旋Pは、共通の中心軸Xを有するとしたが、これに限定されない。例えば、螺旋P及びシャフト51の中心軸は、外筒20の中心軸に対して偏心してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、パーツ移送装置に適用できるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0066】
X 中心軸
M 溶接ナット(パーツ)
m3 表面
m4 裏面
t 厚み
T 全体厚み
1 ナット移送装置(パーツ移送装置)
3 装置本体
20 外筒
21 外面
22 内面
30 ナット溜り部(パーツ溜り部)
40 吸着手段
41a 永久磁石
41b 永久磁石
50 回転駆動手段
51 シャフト(保持部)
54 モータ(駆動部)
60 規制ガイド(規制手段)
70 姿勢変換ガイド(姿勢変換手段)
90 表裏選別ガイド(表裏選別手段)
【要約】
【課題】パーツ移送装置の小型化を図る。
【解決手段】ナット移送装置1は、外筒20と、外筒20の内面22側において、外筒20の軸方向に延びる中心軸Xを有する螺旋状に配列され、磁界を外筒20の外面21側に及ぼして溶接ナットMを外筒20の外面21に吸着させる複数の吸着手段40と、複数の吸着手段40を中心軸X回りに回転移動させる回転駆動手段50と、溶接ナットMの回転移動を規制して、溶接ナットMを外筒20の外面21に沿って軸方向に移動させる規制ガイド60と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8