(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一つの実施形態に係るアンテナ装置100の概要を示す斜視図である。
【
図2】第1実施例に係るアンテナ装置200の概要を示す斜視図である。
【
図3A】アンテナ装置200の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【
図3B】アンテナ装置200のVSWR(電圧定在波比)特性を示す図である。
【
図3C】アンテナ装置200のXY面の放射パターンを示す図である。
【
図4】アンテナ装置200において、無給電素子110を取り除いたアンテナ部120単体の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【
図5】第2実施例に係るアンテナ装置300の概要を示す斜視図である。
【
図6】第3実施例に係るアンテナ装置400の概要を示す斜視図である。
【
図7A】アンテナ装置300およびアンテナ装置400の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【
図7B】アンテナ装置300およびアンテナ装置400のXY面の放射パターンを示す図である。
【
図8】
図2に示したアンテナ装置200において、第2アンテナ素子122の長さL3を変化させた場合の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【
図9】無給電素子110およびアンテナ部120との距離Dを変化させた場合の、アンテナ装置200の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【
図10】無給電素子110の幅W1および第1アンテナ素子121の幅W2を変化させた場合の、アンテナ装置200の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【
図11】第1アンテナ素子121の長さL2を変化させた場合の、アンテナ装置200の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【
図13A】アンテナ装置200の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【
図13B】アンテナ装置200のVSWR特性を示す図である。
【
図13C】アンテナ装置200のXY面における放射パターンを示す図である。
【
図14】第4実施例に係るアンテナ装置500の概要を示す斜視図である。
【
図15A】アンテナ装置500の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【
図15B】アンテナ装置500のVSWR特性を示す図である。
【
図15C】アンテナ装置500のXY面における放射パターンを示す図である。
【
図16】比較例に係るアンテナ装置600の概要を示す斜視図である。
【
図17A】アンテナ装置600の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【
図17B】アンテナ装置600のVSWR特性を示す図である。
【
図17C】アンテナ装置600のXY面における放射パターンを示す図である。
【
図17D】アンテナ装置600のXY面における放射パターンを示す図である。
【
図17E】
図17Dとは異なる周波数での、アンテナ装置600のXY面における放射パターンを示す図である。
【
図18】アンテナ装置600において、第2アンテナ素子122の長さL31およびL32を変化させた場合の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【
図19】
図18の12番目の入力インピーダンス特性を示す図である。
【
図20】調整を行ったアンテナ装置700の概要を示す斜視図である。
【
図21A】アンテナ装置700の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【
図21B】アンテナ装置700のVSWR特性を示す図である。
【
図21C】アンテナ装置700のXY面における放射パターンを示す図である。
【
図22】第1アンテナ素子121の所定の辺における、給電部123および第2アンテナ素子122の位置を示す概略図である。
【
図23A】d=0mmの場合の放射パターンを示す図である。
【
図23B】d=5mm(d=0.03λ)の放射パターンを示す図である。
【
図23C】d=12mm(d=0.08λ)の放射パターンを示す図である。
【
図23D】d=24.5mmの放射パターンを示す図である。
【
図24】第1アンテナ素子121の所定の辺における、給電部123および第2アンテナ素子122の位置を示す概略図である。
【
図25A】
図24に示した例においてd=12mmとした場合の、アンテナ装置の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【
図25B】
図24に示した例においてd=12mmとした場合の、アンテナ装置の放射パターンを示す図である。
【
図26】第5実施例に係るアンテナ装置800の概要を示す斜視図である。
【
図27A】アンテナ装置800の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【
図27B】アンテナ装置800のVSWR特性を示す図である。
【
図27C】アンテナ装置800のXY面における放射パターン、および、XZ面における放射パターンを示す図である。
【
図28】第6実施例に係るアンテナ装置900の概要を示す斜視図である。
【
図29】本発明の一つの実施形態に係る携帯端末1000の概要を示す断面図である。
【
図30】第7実施例に係るアンテナ装置1200の概要を示す斜視図である。
【
図31】電流I1および電流I2を模式的に示す図である。
【
図32A】アンテナ装置1200の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【
図32B】アンテナ装置1200のVSWR特性を示す図である。
【
図33】アンテナ装置1200の周波数2GHzにおけるXY面およびXZ面の放射パターンを示す図である。
【
図34】
図30に示したアンテナ装置1200において、無給電素子110を除去した場合の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【
図35A】第2アンテナ素子122の一例を示す図である。
【
図35B】
図35Aに示した第2アンテナ素子122のZ軸方向の長さL31を変更した場合の、入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【
図35C】
図35Aに示した第2アンテナ素子122のY軸方向の長さL32を変更した場合の、入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【
図35D】
図35Aに示した第2アンテナ素子122のY軸方向の長さL32を変更した場合の、入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【
図36A】第2アンテナ素子122のY軸方向の長さL32を10mmとして、整合回路として12nHのインダクタを直列に装荷した場合の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【
図36B】第2アンテナ素子122のY軸方向の長さL32を10mmとして、整合回路として12nHのインダクタを直列に装荷した場合のVSWR特性を示す図である。
【
図37】第1アンテナ素子121のYZ面における形状例を示す図である。
【
図38A】アンテナ装置1200において
図37に示したアンテナ部120を用いた場合の、入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【
図38B】当該アンテナ装置のVSWR特性を示す図である。
【
図38C】当該アンテナ装置の周波数2GHzにおけるXY面およびXZ面の放射パターンを示す図である。
【
図39】第1アンテナ素子121のYZ面における形状例を示す図である。
【
図40A】アンテナ装置1200において
図39に示したアンテナ部120を用いた場合の、入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【
図40B】当該アンテナ装置のVSWR特性を示す図である。
【
図40C】当該アンテナ装置の周波数2GHzにおけるXY面およびXZ面の放射パターンを示す図である。
【
図41A】第1アンテナ素子121のYZ面における形状例を示す図である。
【
図41B】
図41Aに示した第1アンテナ素子121における電流I1および電流I2を模式的に示す図である。
【
図42A】アンテナ装置1200において
図41Aに示したアンテナ部120を用いた場合の、入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【
図42B】当該アンテナ装置のVSWR特性を示す図である。
【
図42C】当該アンテナ装置の周波数2GHzにおけるXY面およびXZ面の放射パターンを示す図である。
【
図43】第2アンテナ素子122のYZ面における形状例を示す図である。
【
図44】
図43に示したアンテナ部120における電流Iを模式的に示す図である。
【
図45A】
図43に示したアンテナ部120を用いたアンテナ装置1200の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【
図45B】
図43に示したアンテナ部120を用いたアンテナ装置1200に、整合回路として4.5nHのインダクタを直列に装荷した場合の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【
図45D】当該アンテナ装置1200の周波数2GHzにおけるXY面およびXZ面の放射パターンを示す図である。
【
図46】アンテナ部120の他の構成例を示す図である。
【
図47】第8実施例に係るアンテナ装置1300の概要を示す斜視図である。
【
図48】
図47に示したアンテナ部120の各部材のサイズを示す上面図である。
【
図49A】
図48の例におけるアンテナ装置1300の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【
図49B】
図48の例におけるアンテナ装置1300のVSWR特性を示す図である。
【
図49C】
図48の例におけるアンテナ装置1300の周波数2GHzにおけるXY面およびXZ面の放射パターンを示す図である。
【
図50】第9実施例に係るアンテナ装置1400の概要を示す斜視図である。
【
図51】
図50に示したアンテナ部120の各部材のサイズを示す上面図である。
【
図52A】
図51の例におけるアンテナ装置1400の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【
図52B】
図51の例におけるアンテナ装置1400のVSWR特性を示す図である。
【
図52C】
図51の例におけるアンテナ装置1400の周波数2GHzにおけるXY面およびXZ面の放射パターンを示す図である。
【
図53】第10実施例に係るアンテナ装置1500の概要を示す斜視図である。
【
図54A】
図53の例におけるアンテナ装置1500の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【
図54B】
図53の例におけるアンテナ装置1500のVSWR特性を示す図である。
【
図54C】
図53の例におけるアンテナ装置1500の周波数2GHzにおけるXY面の放射パターンを示す図である。
【
図55】第10実施例に係るアンテナ装置1600の概要を示す斜視図である。
【
図56A】
図55の例におけるアンテナ装置1600の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【
図56B】
図55の例におけるアンテナ装置1600のVSWR特性を示す図である。
【
図56C】
図55の例におけるアンテナ装置1600の周波数2GHzにおけるXY面の放射パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。なお特に明記していない場合、各図において同一の符号を付した構成要素等は、同一の構成および機能を有する。このため、各図に示した構成要素の説明を省略する場合がある。
【0010】
図1は、本発明の一つの実施形態に係るアンテナ装置100の概要を示す斜視図である。アンテナ装置100は、アンテナ部120および無給電素子110を備える。アンテナ部120は、いわゆるダイポールアンテナにおける2つのアンテナ素子の形状を変形した変形ダイポールアンテナであってよい。また、アンテナ部120は、一方のアンテナ素子が電気的なグランドとして機能するモノポールアンテナであってもよい。
【0011】
無給電素子110は、板状の導体であって、アンテナ部120に対向して配置される。つまり、アンテナ部120の少なくとも一部は、無給電素子110と重なる位置に配置される。本例では、アンテナ部120の全体が、無給電素子110と重なる位置に配置される。一例として無給電素子110は、銅板である。
【0012】
無給電素子110は、アンテナ部120と所定の間隔を有して配置される。当該間隔は、無給電素子110およびアンテナ部120が電磁結合できるように設定する。
【0013】
無給電素子110は、アンテナ装置100が使用する使用周波数の波長λの略1/2以上の長さを有する。無給電素子110は、アンテナ装置を小型化する場合は波長の略1/2の長さでよいが、それ以上の長さを有してもよい。無給電素子110は、アンテナ装置100が取り付けられる物体の金属体であってよい。例えば、自動車に取り付ける場合は、車体のボディの一部等の金属体であってよい。また、形状は方形であっても円形であってもよく、形状は限定されない。アンテナ装置100が所定の範囲の使用周波数を使用する場合、使用周波数の波長λとは、当該所定の範囲の中央の周波数の波長を指す。また、アンテナ装置100の送信周波数および受信周波数が異なる場合、使用周波数の波長λとは、送信周波数および受信周波数の中間の周波数の波長を指す。
【0014】
本明細書では、使用周波数の波長を単に波長λと記載する場合がある。使用周波数は、例えば2GHzである。また、波長λの略1/2とは、例えばλ/2またはλ/2よりもわずかに長い程度を指す。また、波長λの略1/2とは、無給電素子110が使用周波数においてアンテナ部120と電磁結合し、反射器として機能できる範囲の長さを指してもよい。例えば波長λの略1/2とは、λ/2の1倍以上、1.3倍以下の範囲である。また、各部材の長さまたは幅を波長λを用いて規定する場合、波長λは各部材の比誘電率に応じて定まる波長短縮率を乗じた値を用いてよい。
【0015】
無給電素子110が反射器として機能することで、アンテナ装置100は、無給電素子110とは逆側に指向性を有する。このため、携帯端末等において、無給電素子110を人体側に配置することで、SARを低減することができる。なお、アンテナ部120の全体が、無給電素子110と重なる位置に配置されることで、無給電素子110と逆側への指向性を強めることができる。
【0016】
アンテナ部120は、第1アンテナ素子121、第2アンテナ素子122および給電部123を有する。第1アンテナ素子121は、板状の導体である。なお板状とは、長さおよび幅が、厚みに比べて十分大きい形状を指す。一例として、長さおよび幅のそれぞれが、厚みの2倍以上である形状を板状としてよい。
【0017】
なお、第1アンテナ素子121の長さは、無給電素子110の長さよりも短い。第1アンテナ素子121の長さは、波長λの1/4より大きくてよい。
【0018】
第2アンテナ素子122は、第1アンテナ素子121よりも幅が小さい導体である。第2アンテナ素子122は、板状であってよく、板状でなくともよい。本例において第2アンテナ素子122は線状である。線状とは、幅および厚みが、長さに比べて十分小さい形状を指す。一例として、幅および厚みのそれぞれが、長さの半分以下である形状を線状としてよい。第2アンテナ素子122は、第1アンテナ素子121と同一材料で形成されてよく、異なる材料で形成されてもよい。例えば第1アンテナ素子121および第2アンテナ素子122は、所定の誘電体基板上に形成された銅箔である。
【0019】
給電部123は、第1アンテナ素子121および第2アンテナ素子122の間に設けられ、第1アンテナ素子121および第2アンテナ素子122と電気的に接続される。給電部123は、図示しないアンテナの入力インピーダンスを調整する整合回路等を介してアンテナ素子に接続される。
【0020】
第1アンテナ素子121、第2アンテナ素子122および無給電素子110の長さ、幅、間隔等は、無給電素子110が反射器として機能し、且つ、アンテナ装置100の周波数特性が広帯域となるように設定される。例えば、無給電素子110およびアンテナ部120は、所定の使用周波数で共振するように、各部の長さが定められる。
【0021】
なお、第2アンテナ素子122の長さは、波長λの1/4よりも短い。第2アンテナ素子122の長さを短くしても、第1アンテナ素子121の長さおよび幅等を調整することで、アンテナ部120および無給電素子110を電磁結合させて、アンテナ装置100を広帯域化することができる。第2アンテナ素子122の長さは、波長λの1/10以下であってよく、1/20以下であってもよい。なお、第2アンテナ素子122の長さの下限は、波長λの1/50程度であってよく、1/100程度であってもよい。
【0022】
第2アンテナ素子122を短くすることで、アンテナ装置100を小型化することができる。一般的に、ダイポールアンテナやモノポールアンテナにおける第2アンテナ素子の長さは、波長λの1/4程度である。
図1に示した構成において、無給電素子110と対向する範囲からはみ出さない条件で、第2アンテナ素子122の長さをλ/4程度にしようとすると、第2アンテナ素子122を逆L形にして、第2アンテナ素子122をアンテナ装置100の幅方向に伸長させなければならない。この場合、アンテナ装置100の幅は、概ねλ/4より小さくすることが困難である。
【0023】
これに対して、第2アンテナ素子122を短くすることで、第2アンテナ素子122を幅方向に伸長させなくとも、無給電素子110と対向する範囲内で第2アンテナ素子122を配置することができる。例えば、
図1に示すように、第2アンテナ素子122をアンテナ装置100の長さ方向にだけ伸長させても、無給電素子110と対向する範囲内に第2アンテナ素子122を配置することができる。このため、アンテナ装置100の幅を、λ/4よりも大幅に小さくすることが可能になる。
【0024】
また、給電部123は、第1アンテナ素子121のいずれかの辺に接続される。本例における給電部123は、第1アンテナ素子121の短辺に接続される。給電部123は、第1アンテナ素子121の当該辺の中央近傍に接続されることが好ましい。これにより、第1アンテナ素子121における幅方向の電流分布は相殺されるので、アンテナ装置100における不要な交差偏波成分を低減することができ、通信品質を改善することができる。また、交差偏波成分が低減することで、アンテナ装置100のFB比(前方対後方比)を改善して、SARを低減させることができる。また、交差偏波成分が低減することで、放射パターンの周波数依存性を小さくすることができる。
【0025】
(第1実施例)
図2は、第1実施例に係るアンテナ装置200の概要を示す斜視図である。アンテナ装置200は、アンテナ装置100の構成に加えて、誘電体基板124を備える。なお、
図2に示すY軸が各構成要素の幅方向に対応し、Z軸が長さ方向に対応し、X軸が厚み方向に対応する。また、第1アンテナ素子121の長手方向がZ軸に対応し、短手方向がY軸に対応する。
【0026】
誘電体基板124の表面にアンテナ部120が形成される。また、誘電体基板124の裏面側に無給電素子110が配置される。無給電素子110は、誘電体基板124の裏面(すなわち、アンテナ部120が設けられた面とは逆側の面)とは離間して設けられてよく、裏面上に設けられてもよい。無給電素子110が誘電体基板124の裏面上に設けられる場合、誘電体基板124の厚みが、アンテナ部120および無給電素子110の間隔Dに相当する。なお、誘電体基板124の厚さを大きくするにつれて、波長短縮効果により素子長を短くできる。ただし、厚みに応じて誘電体基板124の重量は増加する。このようなトレードオフを考慮して誘電体基板124の厚みを決定してよい。第1実施例から第5実施例においては、誘電体基板の厚みを0.5mmとしている。
【0027】
また、誘電体基板124は、ガラスエポキシ樹脂等で形成された多層回路基板であってもよい。誘電体基板124は、内部に気泡を含有していてもよい。多層回路基板には、アンテナ装置200または携帯端末の無線回路等の電気回路が設けられる。多層回路基板のいずれかの層には、ほぼ全面を覆うグランド層が設けられてよい。ただし、多層回路基板において、第2アンテナ素子122が配置される領域と重なる領域には、グランド層等を含む電気回路を配置しない。アンテナ装置200においては、当該グランド層を、第1アンテナ素子121として用いてよい。この場合、第1アンテナ素子121は、アンテナ部120のグランドとして機能する。従って、アンテナ部120は、第1アンテナ素子121がグランドとなり、給電部123から第2アンテナ素子122に給電されるモノポールアンテナとして動作する。ただし、グランドとなる第1アンテナ素子にもアンテナ電流が流れるため、アンテナ部120をダイポールアンテナとした場合と同様の機能を果たす。本例によれば、アンテナ装置200と電気回路を一体化できるので、携帯端末を小型化、薄型化および軽量化することができる。
【0028】
また、無給電素子110の長さをL1、第1アンテナ素子121の長さをL2、第2アンテナ素子122の長さをL3、給電部123および第2アンテナ素子122の長さの和をL4、Y軸における第1アンテナ素子121の端部と無給電素子110の端部との距離をL5、無給電素子110の幅をW1、第1アンテナ素子121の幅をW2、第2アンテナ素子122の幅をW3、第1アンテナ素子121と無給電素子110との間隔をDとする。第2アンテナ素子122は、第1アンテナ素子121の所定の辺の中央から、Z軸方向に伸長している。アンテナ装置200の各部の長さ等は、周波数2GHzで共振するように設定される。なお、周波数2GHzに対応する波長は約150mmである。
【0029】
本例においてL1=85mm(0.57λ)、L2=60mm(0.4λ)、L3=20mm(0.13λ)、L4=21mm(0.14λ)、L5=23mm(0.15λ)、W1=W2=50mm(0.33λ)、W3=1mm(0.007λ)、D=5mm(0.03λ)である。また、誘電体基板124の比誘電率を4.4、厚みを0.5mm(0.003λ)とする。また、第1アンテナ素子121および第2アンテナ素子122は銅箔であり、厚みは無視できるほど小さいとする。第1アンテナ素子121および第2アンテナ素子122は1mm程度の間隙を有しており、当該間隙に給電部123が配置される。なお、インピーダンス整合回路は用いていない。
【0030】
図3Aは、アンテナ装置200の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
図3Bは、アンテナ装置200のVSWR(電圧定在波比)特性を示す図である。
図3Cは、アンテナ装置200の周波数2GHzにおけるXY面の放射パターンを示す図である。
図3Cにおける放射パターンは、最大値で正規化されている。
【0031】
図2に示した構造により、
図3Aおよび
図3Bに示すように、アンテナ部120および無給電素子110は電磁結合して、中心周波数2GHzで共振する。また、無給電素子110が反射器として動作するので、
図3Cに示すように、無給電素子110側の放射パターン強度(X軸負側)を、X軸正側の放射パターン強度に比べて小さくすることができる。このため、SARを低減することができる。
【0032】
このように、本実施例によれば、アンテナ部120は、無給電素子110との電磁結合により所定の周波数で共振する。また、無給電素子110は反射器として機能できる。
【0033】
図4は、アンテナ装置200において、無給電素子110を取り除いたアンテナ部120単体の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。本例では、アンテナ部120が無給電素子110と電磁結合しておらず、中心周波数2GHzで共振しない。
【0034】
(第2実施例)
図5は、第2実施例に係るアンテナ装置300の概要を示す斜視図である。アンテナ装置300は、L4=16mm(すなわち、第2アンテナ素子122の長さL3=15mm(0.1λ))とした点以外は、アンテナ装置200と同様の構造を有する。アンテナ装置300では、Z軸方向において、第2アンテナ素子122の端部が、無給電素子110の端部よりも7mm内側に配置されている。
【0035】
(第3実施例)
図6は、第3実施例に係るアンテナ装置400の概要を示す斜視図である。アンテナ装置400は、L4=31mm(すなわち、第2アンテナ素子122の長さL3=30mm(0.2λ))とした点以外は、アンテナ装置300と同様の構造を有する。アンテナ装置400では、Z軸方向において、第2アンテナ素子122の端部が、無給電素子110の端部よりも8mm外側に突出している。
【0036】
図7Aは、アンテナ装置300およびアンテナ装置400の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。周波数2GHzにおいて更にインピーダンスを整合させる場合、アンテナ装置300に対しては直列のインダクタを整合回路として装荷し、アンテナ装置400に対しては直列のコンデンサを整合回路として装荷すればよい。
【0037】
図7Bは、アンテナ装置300およびアンテナ装置400の周波数2GHzにおけるXY面の放射パターンを示す図である。
図7Bにおける放射パターンは、それぞれの放射パターンの最大値で正規化されている。第2アンテナ素子122の長さを小さくしたアンテナ装置300は、アンテナ装置400よりも小型であり、且つ、
図7Bに示すようにFB比を改善することができる。
【0038】
図8は、
図2に示したアンテナ装置200において、第2アンテナ素子122の長さL3を変化させた場合の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。本例では、周波数1.92GHzから2.17GHzまでの範囲における入力インピーダンス特性を示している。また、L3を50mm、45mm、40mm、30mm、20mm、15mm、10mm、7.5mm、5mmと変化させた。
【0039】
図8に示すように、第2アンテナ素子122の長さL3を変化させることで、入力インピーダンス特性の軌跡において結び目状のキンクが現れることがわかる。一般には、ダイポールアンテナやモノポールアンテナにおける第2アンテナ素子の長さはλ/4(37.5mm)程度であるが、この場合の入力インピーダンス特性は、スミスチャートの右上の領域に形成される。
【0040】
一方で、第2アンテナ素子122の長さL3をλ/4から徐々に小さくしていくと、キンクが小さくなり広帯域化できることを見出した。アンテナ装置200においては、第2アンテナ素子122の長さL3をλ/4より小さくすることで、アンテナ装置200を小型化し、且つ、広帯域化する。第2アンテナ素子122の長さL3は、15mm(0.1λ)以下であってよく、7.5mm(0.05λ)以下であってもよい。第2アンテナ素子122の長さL3の下限は、5mm(0.03λ)程度であってよく、5mmより小さくてもよい。
【0041】
また、キンクの形状は、無給電素子110およびアンテナ部120との距離D、第1アンテナ素子121の幅W2、第1アンテナ素子121の長さL2等によって更に調整することができる。
【0042】
図9は、無給電素子110およびアンテナ部120との距離Dを変化させた場合の、アンテナ装置200の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。本例では、Dを5mm、4mm、3mmと変化させた。なお、L1=85mm、L2=60.5mm、L3=6.5mm、L4=7.5mm、W1=W2=50mm、W3=1mmである。また、アンテナ部120は、Z軸方向において無給電素子110の中央に配置される。
【0043】
図9に示すように、距離Dが小さくなる、すなわち、アンテナ部120と無給電素子110の結合度が大きくなるほど、キンクは大きくなる。
【0044】
図10は、無給電素子110の幅W1および第1アンテナ素子121の幅W2を変化させた場合の、アンテナ装置200の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。本例では、W1=W2を、30mm、40mm、50mmと変化させた。なお、L1=85mm、L2=60.5mm、L3=6.5mm、L4=7.5mm、W3=1mm、D=5mmである。また、アンテナ部120は、Z軸方向において無給電素子110の中央に配置される。
【0045】
図10に示すように、W1およびW2が大きくなるほどキンクが小さくなる。すなわち、W1およびW2が大きくなるほど広帯域化することができる。ただし、W1およびW2を小さくしても、それほどキンクは大きくならない。また、
図9に示したように、無給電素子110およびアンテナ部120との距離Dを大きくすることで、W1およびW2を小さくしたことによる狭帯域化を補償することもできる。従って、W1およびW2を小さくしてアンテナ装置200を小型化しても、アンテナ装置200の広帯域化を維持することができる。
【0046】
図11は、第1アンテナ素子121の長さL2を変化させた場合の、アンテナ装置200の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。本例では、L2を62.5mm、60.5mmと変化させた。
図11における実線はL2=62.5mmにおける入力インピーダンス特性を示し、点線はL2=60.5mmにおける入力インピーダンス特性を示す。なお、L1=85mm、L3=6.5mm、L4=7.5mm、W1=W2=50mm、W3=1mm、D=5mmである。また、アンテナ部120は、Z軸方向において無給電素子110の中央に配置される。
【0047】
図11に示すように、L2が変化するとキンクが回転する。すなわち、アンテナ装置200の共振周波数が変化する。このように、無給電素子110およびアンテナ部120との距離D、第1アンテナ素子121の幅W2、第1アンテナ素子121の長さL2等によってアンテナ装置200の入力インピーダンス特性を調整することができる。また、整合回路を用いることで、キンクの位置をスミスチャートの中央近傍に移動させ、インピーダンスを整合させることができる。
【0048】
図12は、整合回路の一例を示す図である。整合は、例えば、第1アンテナ素子121をアンテナ部120のグランドとして機能させ、第2アンテナ素子122と給電部123との間に直列インダクタ131および並列インダクタ132を装荷して取得する。インダクタはチップ部品であってよく、ミアンダまたはパターンコイル等のように基板上にパターンで構成してもよい。
【0049】
図13Aは、アンテナ装置200の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
図13Bは、アンテナ装置200のVSWR特性を示す図である。
図13Cは、アンテナ装置200のXY面における放射パターンを示す図である。
【0050】
図13A、
図13B、
図13Cの例では、
図8から
図12に示した手法を用いて、3GPP(Third Generation Partnership Project)で規格化されたUMTS(Universal Mobile Telecommunications System)Band1(Tx:1.92−1.98GHz、Rx:2.11−2.17GHz)においてアンテナ装置200をチューニングした。なお、L1=85mm、L2=60.6mm、L3=6.5mm、L4=7.5mm、W1=W2=50mm、W3=1mm、D=5mm、直列インダクタ131のインダクタンスは17.3nH、並列インダクタ132のインダクタンスは22nHである。なお、
図13Cにおける実線は送信(Tx)の中心周波数1.95GHzにおける放射パターン、点線は受信(Rx)の中心周波数2.14GHzにおける放射パターンである。ただし、周波数1.95GHzの最大値で正規化している。
【0051】
図13Aおよび
図13Bに示すように、アンテナ装置200は、UMTS Band1で共振できている。また、
図13Cに示すように、アンテナ装置200の送信(Tx)および受信(Rx)の放射パターンは同等である。つまり、アンテナ装置200の放射パターンは、使用周波数に依存しない。
【0052】
このように、アンテナ装置200によれば、第2アンテナ素子122の長さL3を小さくして装置の小型化を可能にしつつ、広帯域化を図ることができる。また、FB比が大きいので、SARを低減することができる。
【0053】
(第4実施例)
図14は、第4実施例に係るアンテナ装置500の概要を示す斜視図である。本例のアンテナ装置500は、第1から第3実施例に係るアンテナ装置に比べて、無給電素子110の幅W1および第1アンテナ素子121の幅W2が小さい。具体的には、W1=W2=30mm(0.2λ)である。また、L1=85mm、L2=61.3mm、L3=5mm、L4=6mm、L5=15mm、W3=1mm、D=5mmである。また、直列インダクタ131のインダクタンスは18.5nH、並列インダクタ132のインダクタタンスは47nHである。
【0054】
図15Aは、アンテナ装置500の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
図15Bは、アンテナ装置500のVSWR特性を示す図である。
図15Cは、アンテナ装置500のXY面における放射パターンを示す図である。
図15Cにおける実線は送信(Tx)の中心周波数1.95GHzにおける放射パターン、点線は受信(Rx)の中心周波数2.14GHzにおける放射パターンである。ただし、周波数1.95GHzの最大値で正規化している。
【0055】
図15Aおよび
図15Bに示すように、アンテナ装置500は、UMTS Band1で共振できている。また、
図13Aおよび
図13Bに示したアンテナ装置200に比べてわずかにVSWR特性が劣化(狭帯域化)しているが、ほとんど影響がない。また、
図9に示したように、アンテナ部120と無給電素子110との間隔Dを広げることで、VSWR特性の劣化を補償することもできる。従って、アンテナ装置500によれば、装置を小型化しつつ、広帯域化することができる。
【0056】
(比較例)
図16は、比較例に係るアンテナ装置600の概要を示す斜視図である。アンテナ装置600は、アンテナ部120および無給電素子110を備える。ただし、第2アンテナ素子122は逆L形を有しており、長さL31+L32は波長λの1/4よりも大きい。アンテナ装置600の幅は、少なくとも長さL32を必要とするので、アンテナ装置600は小型化することが困難である。
【0057】
また、給電部123は、第1アンテナ素子121の所定の辺の端部に接続されている。第2アンテナ素子122は、給電部123からZ軸方向に伸長した後に、Y軸方向に伸長する。このような形状では、幅方向の電流成分が発生するため、アンテナ装置600の交差偏波成分が増大してしまう。
【0058】
本例ではL1=85mm、L2=60.5mm、L31=9.5mm、L32=41mm、L4=10.5mm、L5=17.5mm、W1=W2=50mm、W3=1mm、D=5mmである。また、整合回路として、5.5pFのコンデンサを直列に装荷している。なお、アンテナ装置600は、特許文献1に係るアンテナ装置に対応する。
【0059】
図17Aは、アンテナ装置600の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
図17Bは、アンテナ装置600のVSWR特性を示す図である。アンテナ装置600は、広帯域化は可能であるが、上述したように小型化が困難である。
【0060】
図17Cは、アンテナ装置600のXY面における放射パターンを示す図である。ただし、実線は周波数1.95GHzの放射パターンを示し、点線は周波数2.14GHzの放射パターンを示す。それぞれの放射パターンは、周波数1.95GHzの最大値で正規化している。
【0061】
アンテナ装置600は、交差偏波成分が増大するので放射パターンが周波数に応じて大きく変化する。このため、アンテナ装置600は、周波数1.95GHzと周波数2.14GHzとで放射パターンが変化してしまう。
【0062】
図17Dは、周波数1.95GHzでの、アンテナ装置600のXY面における放射パターンを示す図である。
図17Eは、周波数2.14GHzでの、アンテナ装置600のXY面における放射パターンを示す図である。ただし、実線は主偏波成分(Eθ)を示し、点線は交差偏波成分(EΦ)を示す。それぞれの放射パターンは周波数1.95GHzの最大値で正規化している。
【0063】
図17Dおよび
図17Eに示すように、アンテナ装置600においては、主偏波成分だけでなく、不要な交差偏波成分も生じている。一方で、アンテナ装置100から500によれば、交差偏波成分が生じない。このため、通信品質を改善することができる。また、
図13Cに示すようにFB比も改善されるため、SARを低減することができる。
【0064】
なお、
図13Cに示した放射パターンと、
図17Cに示した放射パターンを比較すると、
図13Cに係るアンテナ装置200は、
図17Cに係るアンテナ装置600よりもFB比が改善していることがわかる。具体的には、周波数1.95GHzにおいて2dB改善し、周波数2.14GHzにおいて5dB改善している。これは、人体装着時のアンテナ特性改善およびSAR低減につながる。さらに、
図13Cに係るアンテナ装置200は、周波数1.95GHzおよび周波数2.14GHzにおける放射パターンがほぼ同等であり、放射パターンが周波数に依存しない。
【0065】
図18は、アンテナ装置600において、第2アンテナ素子122の長さL31およびL32を変化させた場合の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
図18においては、L31およびL32を下記のように変化させた。なお、下記における「n番目」は、
図18における丸数字のnで示される入力インピーダンス特性に対応する。
1番目 L31:9.5mm L32:50mm
2番目 L31:9.5mm L32:45mm
3番目 L31:9.5mm L32:40mm
4番目 L31:9.5mm L32:35mm
5番目 L31:9.5mm L32:30mm
6番目 L31:9.5mm L32:25mm
7番目 L31:9.5mm L32:20mm
8番目 L31:9.5mm L32:15mm
9番目 L31:9.5mm L32:10mm
10番目 L31:9.5mm L32:5mm
11番目 L31:9.5mm L32:1mm
12番目 L31:7.0mm L32:1mm
13番目 L31:4.5mm L32:1mm
【0066】
アンテナ装置600においては、L31:9.5mm、L32:41mmなので、
図18における2番目および3番目の入力インピーダンス特性の間の位置に、キンク形状の入力インピーダンス特性が生じる。そして、整合回路を用いてインピーダンスを整合させている。この場合、アンテナ装置600の幅は、少なくとも長さL32を必要とする。従って、アンテナ装置600を小型化することが困難である。
【0067】
一方で、
図18に示すように、第2アンテナ素子122の長さL31+L32を短くしても、スミスチャートの右下の領域で、インピーダンス特性の軌跡がキンク状になることを見出した。そして、
図9から
図11に示したように、第1アンテナ素子121の長さL2等を調整することで、所望の形状のキンクを形成することができる。このため、第2アンテナ素子122を短くしてアンテナ装置を小型しつつ、広帯域化することができる。一例として、
図18の12番目の入力インピーダンス特性に対応するアンテナ装置600において、インピーダンスを整合させる方法を説明する。
【0068】
図19は、
図18の12番目の入力インピーダンス特性を示す図である。当該アンテナ装置600において、14.2nHの直列インダクタ131と、35nHの並列インダクタ132を装荷する。更に、第1アンテナ素子121の長さを61mmに調整する。
【0069】
図20は、上述した調整を行ったアンテナ装置700の概要を示す斜視図である。
図21Aは、アンテナ装置700の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
図21Bは、アンテナ装置700のVSWR特性を示す図である。
図21Cは、アンテナ装置700のXY面における放射パターンを示す図である。
図21Cにおける実線は周波数1.95GHzにおける放射パターンを示し、点線は周波数2.14GHzにおける放射パターンを示す。
図21Aおよび
図21Bに示すように、上記の調整により、アンテナ装置700が広帯域化できたことがわかる。ただし、
図21Cに示すように、幅方向電流成分による交差偏波が放射されるため、放射パターンが周波数に応じて変化している。次に、第2アンテナ素子122および給電部123の位置を調整する。
【0070】
図22は、第1アンテナ素子121の所定の辺における、給電部123および第2アンテナ素子122の位置を示す概略図である。第1アンテナ素子121の当該辺の中央から、給電部123の中央までの距離をdとする。dを0mm、5mm、12mm、24.5mmに変化させて、アンテナ装置の主偏波成分および交差偏波成分の周波数1.95GHzにおける放射パターンを取得した。なお、第1アンテナ素子121の当該辺の長さは50mmである。また、給電部123の素子幅は1mmである。従って、d=24.5mmの場合、給電部123は第1アンテナ素子121の当該辺の端部に接続される。また、d=0mmの場合、給電部123は第1アンテナ素子121の当該辺の中央に接続される。
図23Aから
図23Dは、周波数1.95GHzにおけるXY面の放射パターンを示す図である。ただし、実線は主偏波成分(Eθ)を示し、点線は交差偏波成分(EΦ)を示す。それぞれの放射パターンは主偏波成分(Eθ)の最大値で正規化している。
【0071】
図23Aは、d=0mmの場合の放射パターンを示す図である。この場合、第2アンテナ素子122が、第1アンテナ素子121の当該辺の中央に接続されるので、交差偏波成分(EΦ)は生じない。
【0072】
図23Bは、d=5mm(d=0.03λ)の放射パターンを示す図である。この場合、交差偏波成分(EΦ)がわずかに生じている。
図23Cは、d=12mm(d=0.08λ)の放射パターンを示す図である。この場合、交差偏波成分(EΦ)が更に大きくなる。
図23Dは、d=24.5mmの放射パターンを示す図である。この場合、交差偏波成分(EΦ)が更に大きくなり、一部の方向においては主偏波成分(Eθ)よりも大きくなっている。
【0073】
図23Aから
図23Dに示すように、dが12mm(0.08λ)以下であれば、主偏波成分(Eθ)に対する交差偏波成分(EΦ)が−20dB以下に抑制されている。このため、アンテナ装置の特性はそれほど劣化しない。給電部123および第2アンテナ素子122は、第1アンテナ素子121の当該辺の中央からの距離dが、使用周波数の波長λの0.08倍以内の位置で、当該辺に給電部123を介して接続されていることが好ましい。
【0074】
また、給電部123および第2アンテナ素子122は、第1アンテナ素子121の当該辺の端部よりも、当該辺の中央に近い位置で、当該辺に給電部123を介して接続されていてもよい。例えば、上述した例では、0mm≦d≦12mmの範囲であってよい。
【0075】
また、距離dは、5mm(0.03λ)以下であることがより好ましい。これにより、交差偏波成分を更に抑制できる。また、距離dは0mmであることが最も好ましい。これにより、交差偏波成分を除去することができる。
【0076】
図24は、第1アンテナ素子121の所定の辺における、給電部123および第2アンテナ素子122の位置を示す概略図である。ただし、本例の第2アンテナ素子122は、逆L形を有する。また、第2アンテナ素子122の、Z軸方向に伸長する部分の長さL31は7mmであり、Y軸方向に伸長する部分の長さL32は18mmである。
【0077】
図25Aは、
図24に示した例においてd=12mmとした場合の、アンテナ装置の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
図25Bは、
図24に示した例においてd=12mmとした場合の、アンテナ装置の周波数1.95GHzにおけるXY面の放射パターンを示す図である。ただし、実線は主偏波成分(Eθ)を示し、点線は交差偏波成分(EΦ)を示す。放射パターンは、主偏波成分(Eθ)の最大値で正規化している。
【0078】
図25Aに示すように、本例においても周波数1.95GHzで共振することが確認できた。また、
図25Bに示すように、本例においても、主偏波成分(Eθ)に対する交差偏波成分(EΦ)が−20dB以下に抑制できていることが確認できた。つまり、距離dを12mm以下とすることで、第2アンテナ素子122の形状によらず、交差偏波成分を十分抑制できることが確認できた。
【0079】
(第5実施例)
図26は、第5実施例に係るアンテナ装置800の概要を示す斜視図である。アンテナ装置800は、第1から第4実施例に係るいずれかのアンテナ装置の構成に対して、第2アンテナ素子122の伸長方向が異なる。他の構造は、第1から第4実施例に係るいずれかのアンテナ装置と同様であってよい。ただし、UMTS Band1でアンテナ装置800が共振するように各構成要素の長さ等を調整している。一例として、L1=85mm、L2=61.6mm、L3=11mm、L4=2mm、L5=13mm、W1=W2=50mm、W3=1mm、D=5mm、直列インダクタ131のインダクタンスは12.2nH、並列インダクタ132のインダクタンスは88nHである。
【0080】
本例の第2アンテナ素子122は、無給電素子110と対向する面と垂直な方向に伸長する部分を有する。
図26の例では、第2アンテナ素子122は、給電部123からX方向に伸長して設けられる。本例の第2アンテナ素子122は、直径1mmの銅線である。
【0081】
図27Aは、アンテナ装置800の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
図27Bは、アンテナ装置800のVSWR特性を示す図である。
図27Cは、アンテナ装置800のXY面における放射パターン、および、XZ面における放射パターンを示す図である。ただし、実線はXY面における放射パターンを示し、点線はXZ面における放射パターンを示す。放射パターンはXY面における放射パターンの最大値で正規化している。
【0082】
図27Aおよび
図27Bに示すように、アンテナ装置800は、UMTS Band1で共振している。また、
図27Cに示すように、無給電素子110は反射器として機能している。また、アンテナ装置800は、無給電素子110に垂直な方向においても放射パターンを有することができる。
【0083】
なお、第2アンテナ素子122の、第1アンテナ素子121に対する角度は、可変であってよい。つまり、第2アンテナ素子122は、給電部123との接続点を支点として、任意の方向に向けることができる。このような構成により、所望の平面における偏波成分を生じさせることができる。
【0084】
なお、第2アンテナ素子122は、第1アンテナ素子121の面と垂直に伸長する部分と、第1アンテナ素子121の長手と平行な方向に伸長する部分の両方を有していてもよい。第2アンテナ素子122は、給電部123からX方向に伸長した後に、Z方向に伸長してよく、給電部123からZ方向に伸長した後に、X方向に伸長してもよい。
【0085】
(第6実施例)
図28は、第6実施例に係るアンテナ装置900の概要を示す斜視図である。アンテナ装置900は、第1から第5実施例に係るいずれかのアンテナ装置の構成に対して、第2アンテナ素子122の形状が異なる。他の構造は、第1から第5実施例に係るいずれかのアンテナ装置と同様であってよい。
【0086】
第1から第4実施例に係るアンテナ装置における第2アンテナ素子122は、第1アンテナ素子121との接続点(つまり、給電部123)から、第1アンテナ素子121の長手と平行な方向に伸長する部分を有する。本例のアンテナ装置900は、第1アンテナ素子121の長手と平行な方向(Z軸方向)に伸長した後、更に、第1アンテナ素子121の短手と平行な方向(Y軸方向)に伸長する部分を有する。ただし、第2アンテナ素子122の総長さは、λ/4より短い。
【0087】
また、第5実施例に係るアンテナ装置における第2アンテナ素子122は、第1アンテナ素子121の面と垂直な方向に伸長する部分を有する。本例のアンテナ装置900は、第1アンテナ素子121の面と垂直な方向(X軸方向)に伸長した後、更に、第1アンテナ素子121の短手と平行な方向(Y軸方向)に伸長する部分を有する。本例においても第2アンテナ素子122の総長さは、λ/4より短い。
【0088】
なお、第2アンテナ素子122は、Z軸方向に伸長する部分の端部から、Y軸正方向に伸長する部分と、Y軸負方向に伸長する部分とを有する。Y軸正方向に伸長する部分と、Y軸負方向に伸長する部分の長さは同一であることが好ましい。このような構成により、比較的に長い第2アンテナ素子122を設けつつ、小型のアンテナ装置900を提供できる。また、交差偏波成分も抑制できる。なお、第2アンテナ素子122は分岐させたT形としたが、これ以外にもループ形、折り返し形、ボータイ形、その他の多様な形状をとることができる。
【0089】
図29は、本発明の一つの実施形態に係る携帯端末1000の概要を示す断面図である。携帯端末1000は、第1から第11実施例に係るいずれかのアンテナ装置1100と、筐体1002とを備える。筐体1002は、アンテナ装置1100を収納する。アンテナ装置1100は、筐体1002内部において、無線回路等の電気回路と電気的に接続されている。
【0090】
また、筐体1002は、表面1004および裏面1006を有する。表面1004は、携帯端末1000の使用時に使用者と対向すべき面である。例えば表面1004には、音声通話用のスピーカ、または、情報を表示する表示装置等が設けられる。
【0091】
アンテナ装置1100は、無給電素子110が表面1004側となるように配置される。これにより、携帯端末1000の使用時に、使用者側に放射される電磁波を低減することができ、SARを改善することができる。
【0092】
なお、第1から第10実施例に係るアンテナ装置は、携帯端末またはウェアラブル端末に好適に適用できるが、用途はこれに限定されない。本アンテナ装置は、FB比の高い指向性を有するので、例えば、後方への放射を必要としない壁または天井、もしくは自動車または産業機器等に取り付ける場合にも有効である。また、本アンテナ装置を床面等に配置して天頂方向に電磁波を放射、または機体に配置して上空から地上に向けて電磁波を放射する用途にも有効である。また、ICチップを搭載し、RFID(Radio Frequency IDentification)向けアンテナとしても適用できる。取り付け部が金属物の場合は特に有効である。更に、本アンテナ装置は高いFB比を有するので、人体等に装着したときの整合ずれが少ないというメリットもある。
【0093】
(第7実施例)
図30は、第7実施例に係るアンテナ装置1200の概要を示す斜視図である。第1実施例から第5実施例に係るアンテナ装置が直線偏波に対応する装置であるのに対して、第7実施例に係るアンテナ装置1200は円偏波に対応する装置である。なお、第6実施例は直線偏波とともに円偏波に対応してよい。アンテナ装置1200は、第1実施例から第6実施例に係るいずれかのアンテナ装置に対して、無給電素子110および第1アンテナ素子121の形状が異なる。第2アンテナ素子122の形状は、第1実施例から第6実施例に係る第2アンテナ素子122と同様であってよい。また、使用周波数も第1実施例から第6実施例に係るアンテナ装置と同様である。
【0094】
本例の無給電素子110は、長さ(Z軸方向)および幅(Y軸方向)のいずれも、使用周波数の波長λの略1/2以上である。一例として、無給電素子110の長さおよび幅は同一であるが、これに限定されない。アンテナ装置を小型化する場合は波長の略1/2の長さでよいが、それ以上の長さを有してもよい。また、形状は方形であっても円形であってもよく、形状は限定されない。
【0095】
本例の第1アンテナ素子121は板状の導体であり、長さ方向に加え、幅方向も共振する長さに調整する。第1アンテナ素子121の長さおよび幅は、無給電素子110の長さおよび幅よりも短い。第1アンテナ素子121の長さおよび幅は、波長λの1/4より大きくてよい。第1アンテナ素子121の形状は、略円形または略正n角形(ただしnは4以上の偶数)であってよい。円形における長さおよび幅は、直径を指す。正n角形における長さおよび幅は、対向して平行に設けられた2つの辺の距離を指す。本例の第1アンテナ素子121の形状は、略正方形である。また、一例として、YZ面において、第1アンテナ素子121の中心位置は、無給電素子110の中心位置と一致させているが、これに限定されない。
【0096】
略円形または略正n角形とは、厳密な円形および正n角形に加え、Z軸方向の長さと、Y軸方向の幅に所定範囲内の差異を有するものも含む。本例では、当該差異は±10%以下である。本例の第1アンテナ素子121は、Z軸方向の長さがY軸方向の長さよりも5%程度長い。
【0097】
図30に示すように、第1アンテナ素子121の対角から給電を行い、第1アンテナ素子121の長さと幅を調整すると位相差がπ/2で互いに直交する電流I1と電流I2が、第1アンテナ素子121の長さ方向および幅方向に流れるようになる。
【0098】
図31は、電流I1と電流I2を模式的に示す図である。電流I1と電流I2に対応するそれぞれの共振周波数を周波数f1、周波数f2とすると、周波数f1から周波数f2までの中心周波数f0を中心として円偏波が放射される。周波数f1と周波数f2が近接していれば周波数f0において良好な軸比となる。なお、第1アンテナ素子121のもう一方の対角から給電を行うと円偏波の旋回方向を逆転させることができる。
【0099】
図32Aは、アンテナ装置1200の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
図32Bは、アンテナ装置1200のVSWR特性を示す図である。
図33は、アンテナ装置1200の周波数2GHzにおける放射パターンを示す図である。ただし、実線はXY面のEθ成分、点線はXZ面のEθ成分を示す。放射パターンは最大値で正規化している。
【0100】
図30に示した例においては、無給電素子110は、Z軸方向およびY軸方向の長さが共に85mmである正方形である。第1アンテナ素子121は、Z軸方向の長さが61mm、Y軸方向の長さが58mmの略正方形である。誘電体基板124は、Z軸方向の長さが64mm、Y軸方向の長さが58mmの長方形である。誘電体基板124の基板厚は1mmであり、比誘電率は4.3である。
【0101】
誘電体基板124の表面に形成されるアンテナ部120と、無給電素子110との距離は5mmである。本例の第2アンテナ素子122は、給電部123からZ軸方向に2mm伸長してからY軸方向に25mm伸長する逆L形を有する。
【0102】
このような構造により、
図32Aおよび
図32Bに示すように、アンテナ部120および無給電素子110は電磁結合して、中心周波数2GHzで共振する。また、
図33に示すように、当該アンテナ装置が円偏波アンテナとして機能することがわかる 。さらに無給電素子110が反射器として動作するので、無給電素子110側の放射パターン強度、すなわち
図30のX軸負側の放射パターン強度を、X軸正側の放射パターン強度に比べて小さくすることができる。このため、SARを低減することができる。
【0103】
図34は、
図30に示したアンテナ装置1200において、無給電素子110を除去した場合の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。アンテナ部120が無給電素子110と電磁結合しておらず、スミスチャートの中心から離れている。
【0104】
図35Aは、第2アンテナ素子122の一例を示す図である。第2アンテナ素子122は、
図30に示した例と同様に、Z軸方向に伸長する部分と、Y軸方向に伸長する部分とを有する。Z軸方向に伸長する部分の長さをL31とし、Y軸方向に伸長する部分の長さをL32とする。
【0105】
図35Bは、
図35Aに示した第2アンテナ素子122のZ軸方向の長さL31を変更した場合の、入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。本例においてY軸方向の長さL32は25mmで固定している。
図35Bでは、L31=1mm、2mm、3mmの例を示している。
図35Bに示すように、第2アンテナ素子122のZ軸方向の長さL31を変更することで、入力インピーダンスの抵抗分を調整できる。
【0106】
図35Cは、
図35Aに示した第2アンテナ素子122のY軸方向の長さL32を変更した場合の、入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。本例においてZ軸方向の長さL31は2mmで固定している。
図35Cでは、L32=30mm、25mm、20mmの例を示している。
図35Cに示すように、第2アンテナ素子122のY軸方向の長さL32を変更することで、入力インピーダンスのリアクタンス分を調整できる。
【0107】
図35Dは、
図35Aに示した第2アンテナ素子122のY軸方向の長さL32を変更した場合の、入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。本例においてZ軸方向の長さL31は2mmで固定している。
図35Dでは、L32=25mm、20mm、15mm、10mmの例を示している。
【0108】
図35Cおよび
図35Dに示すように、第2アンテナ素子122の長さL32を短くしていくと、スミスチャートの右下の領域で、入力インピーダンス特性の軌跡がキンク状になる。このため、第2アンテナ素子122の長さL32を小さくすることで、アンテナ装置1200が広帯域化する。
【0109】
また、
図35Cに示すように、同一の長さL32における入力インピーダンス特性の軌跡において、周波数が高い方でリアクタンス分が小さくなっている。このため、整合回路として直列のインダクタを装荷することで、アンテナ装置1200を広帯域化できる。なお、インダクタはチップ部品であってよく、ミアンダまたはパターンコイル等のように基板上にパターンで構成してもよい。
【0110】
図36Aは、第2アンテナ素子122のY軸方向の長さL32を10mmとして、整合回路として12nHのインダクタを直列に装荷した場合の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
図36Aにおいては、比較例として
図30に示したアンテナ装置1200の入力インピーダンス特性を点線で示している。
【0111】
図36Bは、第2アンテナ素子122のY軸方向の長さL32を10mmとして、整合回路として12nHのインダクタを直列に装荷した場合のVSWR特性を示す図である。
図36Bにおいては、比較例として
図30に示したアンテナ装置1200の入力インピーダンス特性を点線で示している。
図36Aおよび
図36Bに示すように、第2アンテナ素子122の長さを調整し、適切な整合回路を装荷することで、アンテナ装置1200を更に広帯域化できる。
【0112】
図37は、第1アンテナ素子121のYZ面における形状例を示す図である。第1アンテナ素子121の形状以外は、
図30に示したアンテナ装置1200と同一である。ただし、第1アンテナ素子121の形状を変更したことに伴い、前述の手法により、第2アンテナ素子122のZ軸方向の長さL31とY軸方向の長さL32を調整している。なお、第1アンテナ素子121のもう一方の対角から給電を行うと円偏波の旋回方向を逆転させることができる。
【0113】
本例の第1アンテナ素子121は、主面(本例ではYZ面)のいずれかの辺において切り欠き140を有する。切り欠き140は、矩形であってよく、三角形であってよく、楕円形であってよく、他の形状であってもよい。
【0114】
切り欠き140は、第1アンテナ素子121において位相差がπ/2で互いに直交する2つの励振モードが生じる程度の大きさを有する。切り欠き140は、第1アンテナ素子121のいずれかの辺の中央に設けられてよい。切り欠き140のY軸方向およびZ軸方向における大きさは、第1アンテナ素子121のY軸方向およびZ軸方向における大きさの1/5以下であってよく、1/10以下であってもよい。
【0115】
本例の第1アンテナ素子121は、Y軸方向およびZ軸方向の長さがともに58.5mmである。本例の切り欠き140は、第1アンテナ素子121のZ軸方向に平行な辺の中央に設けられ、Y軸方向における長さが9mmであり、Z軸方向における長さが5mmである。なお、一例として第1アンテナ素子121のY軸方向およびZ軸方向の長さは同一としたが、これに限定されない。切り欠き140の大きさを調整すれば、互いに直交する2つの励振モードを生じさせることができる。
【0116】
図38Aは、アンテナ装置1200において
図37に示したアンテナ部120を用いた場合の、入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
図38Bは、当該アンテナ装置のVSWR特性を示す図である。
図38Cは、当該アンテナ装置の周波数2GHzにおける放射パターンを示す図である。ただし、実線はXY面のEθ成分、点線はXZ面のEθ成分を示す。放射パターンは最大値で正規化している。
【0117】
図38Aおよび
図38Bに示すように、第1アンテナ素子121に切り欠き140を設けても、2GHzで共振していることがわかる。また、
図38Cに示すように、当該アンテナ装置が円偏波アンテナとして機能することがわかる。さらに無給電素子110が反射器として動作するので、無給電素子110側の放射パターン強度、すなわち
図30のX軸負側の放射パターン強度を、X軸正側の放射パターン強度に比べて小さくすることができる。このため、SARを低減することができる。
【0118】
図39は、第1アンテナ素子121のYZ面における形状例を示す図である。第1アンテナ素子121の形状以外は、
図30に示したアンテナ装置1200と同一である。ただし、第1アンテナ素子121の形状を変更したことに伴い、前述の手法により、第2アンテナ素子122のZ軸方向の長さL31とY軸方向の長さL32を調整している。なお、第1アンテナ素子121のもう一方の対角から給電を行うと円偏波の旋回方向を逆転させることができる。
【0119】
本例の第1アンテナ素子121は、主面(本例ではYZ面)のいずれかの辺において突起150を有する。突起150は、矩形であってよく、三角形であってよく、楕円形であってよく、他の形状であってもよい。
【0120】
突起150は、第1アンテナ素子121において位相差がπ/2で互いに直交する2つの励振モードが生じる程度の大きさを有する。突起150は、第1アンテナ素子121のいずれかの辺の中央に設けられてよい。突起150のY軸方向およびZ軸方向における大きさは、第1アンテナ素子121のY軸方向およびZ軸方向における大きさの1/5以下であってよく、1/10以下であってもよい。
【0121】
本例の第1アンテナ素子121は、Y軸方向およびZ軸方向の長さがともに58.5mmである。本例の突起150は、第1アンテナ素子121のY軸方向に平行な辺の中央に設けられ、Y軸方向における長さが5mmであり、Z軸方向における長さが9.5mmである。なお、一例として第1アンテナ素子121のY軸方向およびZ軸方向の長さは同一としたが、これに限定されない。突起150の大きさを調整すれば、互いに直交する2つの励振モードを生じさせることができる。
【0122】
図40Aは、アンテナ装置1200において
図39に示したアンテナ部120を用いた場合の、入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
図40Bは、当該アンテナ装置のVSWR特性を示す図である。
図40Cは、当該アンテナ装置の周波数2GHzにおける放射パターンを示す図である。ただし、実線はXY面のEθ成分、点線はXZ面のEθ成分を示す。放射パターンは最大値で正規化している。
【0123】
図40Aおよび
図40Bに示すように、第1アンテナ素子121に突起150を設けても、2GHzで共振していることがわかる。また、
図40Cに示すように、当該アンテナ装置が円偏波アンテナとして機能することがわかる。さらに無給電素子110が反射器として動作するので、無給電素子110側の放射パターン強度、すなわち
図30のX軸負側の放射パターン強度を、X軸正側の放射パターン強度に比べて小さくすることができる。このため、SARを低減することができる。
【0124】
図41Aは、第1アンテナ素子121のYZ面における形状例を示す図である。第1アンテナ素子121の形状以外は、
図30に示したアンテナ装置1200と同一である。ただし、第1アンテナ素子121の形状を変更したことに伴い、前述の手法により第2アンテナ素子122のZ軸方向の長さL31とY軸方向の長さL32を調整している。また、給電部123の位置を調整している。
【0125】
本例の第1アンテナ素子121は、主面(本例ではYZ面)のいずれかの辺において複数の切り欠き160を有する。切り欠き160の個数は偶数であってよい。一組の切り欠き160は、第1アンテナ素子121の主面において対向する位置に設けられる。本例の切り欠き160は、第1アンテナ素子121の対向する2つの頂点に設けられる。切り欠き160は、矩形であってよく、三角形であってよく、楕円形であってよく、他の形状であってもよい。なお、切り欠き160は、第1アンテナ素子121のもう一方の対向する2つの頂点に設けると円偏波の旋回方向を逆転させることができる。
【0126】
本例では、給電部123は、第1アンテナ素子121のいずれかの辺の中央に配置される。第1アンテナ素子121の中央から給電を行い、第1アンテナ素子121の長さ、幅および切り欠きの大きさを調整すれば、互いに直交する2つの励振モードを生じさせることができる。
【0127】
切り欠き160のY軸方向およびZ軸方向における大きさは、第1アンテナ素子121のY軸方向およびZ軸方向における大きさの1/5以下であってよく、1/10以下であってもよい。
【0128】
本例の第1アンテナ素子121は、Y軸方向およびZ軸方向の長さがともに63.5mmである。本例の切り欠き160は、Y軸方向およびZ軸方向における長さがともに11mmの直角三角形である。なお、一例として第1アンテナ素子121のY軸方向およびZ軸方向の長さは同一としたが、これに限定されない。切り欠き160の大きさを調整すれば、互いに直交する2つの励振モードを生じさせることができる。
【0129】
なお、本例の第2アンテナ素子122は、Z軸方向の長さが5mm、Y軸方向の長さが26mmの逆L形を有する。他の例の第2アンテナ素子122は、
図28に示した第2アンテナ素子122と同様にT形を有してもよい。この場合においても、前述した逆L形と同様の手法によりZ軸方向に伸長する部分の長さとY軸方向に伸長する部分の長さ調整すればよい。給電部123が第2アンテナ素子122の辺の中点に設けられる場合、第2アンテナ素子122がT形を有することで、アンテナ部120の左右対称性を向上させることができる。なお、第1実施例から第6実施例に係るアンテナ装置において第2アンテナ素子122を逆L形またはT形とする場合にも本手法が適用できる。
【0130】
図41Bは、
図41Aに示した第1アンテナ素子121における電流I1と電流I2を模式的に示す図である。本例では、第1アンテナ素子121の対角線上に電流I1および電流I2が流れている。
【0131】
図42Aは、アンテナ装置1200において
図41Aに示したアンテナ部120を用いた場合の、入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
図42Bは、当該アンテナ装置のVSWR特性を示す図である。
図42Cは、当該アンテナ装置の周波数2GHzにおける放射パターンを示す図である。ただし、実線はXY面のEθ成分、点線はXZ面のEθ成分を示す。放射パターンは最大値で正規化している。
【0132】
図42Aおよび
図42Bに示すように、第1アンテナ素子121に切り欠き160を設けても、2GHzで共振していることがわかる。また、
図42Cに示すように、当該アンテナ装置が円偏波アンテナとして機能することがわかる。さらに無給電素子110が反射器として動作するので、無給電素子110側の放射パターン強度、すなわち
図30のX軸負側の放射パターン強度を、X軸正側の放射パターン強度に比べて小さくすることができる。このため、SARを低減することができる。
【0133】
図43は、第2アンテナ素子122のYZ面における形状例を示す図である。第2アンテナ素子122の形状以外は、
図30に示したアンテナ装置1200と同一である。
【0134】
第2アンテナ素子122は、一端が給電部123に接続され、他端が第1アンテナ素子121の主面の給電部123が設けられていない辺に接続される。第2アンテナ素子122の他端は、第1アンテナ素子121の主面において給電部123が設けられた辺と垂直な辺に接続されてよい。本例の給電部123は、第1アンテナ素子121の主面のY軸方向と平行な辺の中央に配置され、第2アンテナ素子122の他端は、第1アンテナ素子121の主面のZ軸方向と平行な辺の中央に接続される。
【0135】
第2アンテナ素子122は、給電部123に接続される一端から、第1アンテナ素子121に接続される他端までの間において、伝送する信号の位相を3π/2遅延させる。
【0136】
第2アンテナ素子122は、所定の軸に対して線対称の形状を有してよい。本例の第2アンテナ素子122は、Z軸およびY軸の中間の対称軸に対して線対称の形状を有する。本例の第2アンテナ素子122の部分177は、給電部123と対称な位置に設けられる。
【0137】
部分171は、給電部123からY軸方向に伸長する。部分176は、部分177からZ軸方向に伸長する。部分171および部分176は対称な位置に設けられており、同一の長さを有する。
【0138】
部分172は、部分171の端部からZ軸方向に伸長する。部分175は、部分176の端部からY軸方向に伸長する。部分172および部分175は対称な位置に設けられており、同一の長さを有する。
【0139】
部分173は、部分172の端部からY軸方向に伸長する。部分174は、部分175の端部からZ軸方向に伸長する。部分173および部分174は対称な位置に設けられており、同一の長さを有する。部分173および部分174の端部どうしが接続される。これにより、第2アンテナ素子122が形成される。
【0140】
図44は、
図43に示したアンテナ部120において位相差がπ/2で互いに直交する電流Iを模式的に示す図である。電流Iに対応する共振周波数を周波数fとすると、周波数fにおいて円偏波が放射される。
【0141】
図45Aは、
図43に示したアンテナ部120を用いたアンテナ装置1200の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
図45Bは、
図43に示したアンテナ部120を用いたアンテナ装置1200に、整合回路として4.5nHのインダクタを直列に装荷した場合の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
図45Aおよび
図45Bに示すように、当該アンテナ装置においても、整合回路を用いて入力インピーダンス特性が調整できる。なお、インダクタはチップ部品であってよく、ミアンダまたはパターンコイル等のように基板上にパターンで構成してもよい。
【0142】
図45Cは、
図45Bに示したアンテナ装置1200のVSWR特性を示す図である。
図45Dは、当該アンテナ装置1200の周波数2GHzにおける放射パターンを示す図である。ただし、実線はXY面のEθ成分、点線はXZ面のEθ成分を示す。放射パターンは最大値で正規化している。
【0143】
図45Bおよび
図45Cに示すように、第2アンテナ素子122を伝送する信号を3π/2遅延させる形状としても、2GHzで共振していることがわかる。また、
図45Dに示すように、当該アンテナ装置が円偏波アンテナとして機能することがわかる。さらに無給電素子110が反射器として動作するので、無給電素子110側の放射パターン強度、すなわち
図30のX軸負側の放射パターン強度を、X軸正側の放射パターン強度に比べて小さくすることができる。このため、SARを低減することができる。なお、
図43の例の第2アンテナ素子122は、第1アンテナ素子121において給電部123が配置された辺から時計回りに隣接する辺まで設けられたが、他の例では、第1アンテナ素子121において給電部123が配置された辺から反時計回りに隣接する辺まで設けられていてもよい。この場合、
図44に示したY軸方向に流れる電流Iの方向が反転する。このため、円偏波の旋回方向を逆転させることができる。
【0144】
図46は、アンテナ部120の他の構成例を示す図である。本例の第1アンテナ素子121は、
図43の例における第1アンテナ素子121と同様の形状を有する。本例のアンテナ部120は、2つの給電部123−1および給電部123−2と、2つの第2アンテナ素子122−1および第2アンテナ素子122−2とを有する。
【0145】
給電部123−1は、第1アンテナ素子121のいずれかの辺の中点に設けられる。第2アンテナ素子122−1は、給電部123−1に接続される。第2アンテナ素子122−1は、
図46に示すように直線状であってよく、逆L形であってよく、T形であってもよく、その形状は限定されない。
【0146】
給電部123−2は、第1アンテナ素子121の辺のうち、給電部123−1が設けられた辺とは直交する辺の中点に設けられる。給電部123−2が印加する信号は、給電部123−1が印加する信号に対して位相がπ/2進んでいる。第2アンテナ素子122−2は、給電部123−2に接続される。第2アンテナ素子122−2は、第2アンテナ素子122−1と同一の形状およびサイズを有する。
【0147】
このような構成によっても、
図44に示したように、直交する2つの励振モードを生成することができる。なお、
図46の例の給電部123−3および第2アンテナ素子122−2は、第1アンテナ素子121において給電部123−1および第2アンテナ素子122−1が配置された辺に対して反時計回りに隣接する辺に設けられたが、他の例では、第1アンテナ素子121において給電部123−1および第2アンテナ素子122−1が配置された辺に対して時計回りに隣接する辺に設けられていてもよい。もしくは、給電部123−2が印加する信号は、給電部123−1が印加する信号に対して位相がπ/2遅延していてもよい。この場合、
図44に示した電流Iの方向が反転する。このため、円偏波の旋回方向を逆転させることができる。
【0148】
(第8実施例)
図47は、第8実施例に係るアンテナ装置1300の概要を示す斜視図である。第8実施例に係るアンテナ装置1300は円偏波に対応する装置である。アンテナ装置1300は、第7実施例に係るアンテナ装置1200に対して、無給電素子112を更に備える。本例において、無給電素子110は、第1アンテナ素子121の一方の主面に対向して配置された第1の無給電素子であり、無給電素子112は、第1アンテナ素子121の他方の主面に対向して配置された第2の無給電素子である。
【0149】
YZ面において、無給電素子112は、無給電素子110より小さくてよく、第1アンテナ素子121より小さくてもよい。またYZ面において、無給電素子112の重心位置と、第1アンテナ素子121の重心位置は一致してよい。
【0150】
YZ面において無給電素子112は、第1アンテナ素子121と相似形状を有してよい。つまり無給電素子112は、略円形または略正n角形であってよい。第1アンテナ素子121が突起または切り欠きを有する場合、無給電素子112も突起または切り欠きを有してよい。本例の第1アンテナ素子121は、
図41Aに示した例と同様に切り欠き160を有する。無給電素子112は、切り欠き160と対向する位置に、切り欠き114を有する。切り欠き114は、切り欠き160と相似形であってよい。無給電素子112には、突起または切り欠きが無くともよい。
【0151】
無給電素子112と第1アンテナ素子121との距離は、第1アンテナ素子121と無給電素子110との距離と同一であってよい。本例の当該距離は5mmである。
【0152】
図48は、
図47に示したアンテナ部120の各部材のサイズを示す上面図である。
図48においては誘電体基板124を省略している。
図48に示すサイズにより、無給電素子110、第1アンテナ素子121および無給電素子112を電磁結合して、更なる広帯域化ができた。
【0153】
図49Aは、
図48の例におけるアンテナ装置1300の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
図49Bは、
図48の例におけるアンテナ装置1300のVSWR特性を示す図である。
図49Cは、
図48の例におけるアンテナ装置1300の周波数2GHzにおける放射パターンを示す図である。ただし、実線はXY面のEθ成分、点線はXZ面のEθ成分を示す。放射パターンは最大値で正規化している。
【0154】
図49Aおよび
図49Bに示すように、無給電素子112を設けることで、
図42Aおよび
図42Bに示した例よりもアンテナ装置が広帯域化されていることがわかる。また、
図49Cに示すように、当該アンテナ装置が円偏波アンテナとして機能することがわかる。
【0155】
(第9実施例)
図50は、第9実施例に係るアンテナ装置1400の概要を示す斜視図である。第9実施例に係るアンテナ装置1400は円偏波に対応する装置である。アンテナ装置1400は、第8実施例に係るアンテナ装置1300に対して、無給電素子112の形状が異なる。本例では、第1アンテナ素子121には切り欠き160が設けられているが、無給電素子112には対応する切り欠きが設けられていない。
【0156】
図51は、
図50に示したアンテナ部120の各部材のサイズを示す上面図である。
図51においては誘電体基板124を省略している。
図51に示すサイズにより、無給電素子110、第1アンテナ素子121および無給電素子112を電磁結合して、更なる広帯域化ができた。
【0157】
図52Aは、
図51の例におけるアンテナ装置1400の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
図52Bは、
図51の例におけるアンテナ装置1400のVSWR特性を示す図である。
図52Cは、
図51の例におけるアンテナ装置1400の周波数2GHzにおける放射パターンを示す図である。ただし、実線はXY面のEθ成分、点線はXZ面のEθ成分を示す。放射パターンは最大値で正規化している。
【0158】
図52Aおよび
図52Bに示すように、無給電素子112を設けることで、
図42Aおよび
図42Bに示した例よりもアンテナ装置が広帯域化されていることがわかる。また、
図52Cに示すように、当該アンテナ装置が円偏波アンテナとして機能することがわかる。なお、無給電素子112は、第9実施例以外の実施例に適用してもよい。
【0159】
(第10実施例)
図53は、アンテナ装置1500の概要を示す斜視図である。アンテナ装置1500は直線偏波に対応する装置である。アンテナ装置1500においては、誘電体基板124の厚みは1mmであり、比誘電率は4.3である。
図8から
図11に示した手法を用いて。周波数2GHzにおいて、アンテナ装置1500をチューニングした。
【0160】
図54Aは、
図53の例におけるアンテナ装置1500の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
図54Bは、
図53の例におけるアンテナ装置1500のVSWR特性を示す図である。
図54Cは、
図53の例におけるアンテナ装置1500の周波数2GHzにおけるXY面の放射パターンを示す図である。ただし、放射パターンは最大値で正規化している。
【0161】
図55は、第10実施例に係るアンテナ装置1600の概要を示す斜視図である。第10実施例に係るアンテナ装置1600は直線偏波に対応する装置である。アンテナ装置1600は、アンテナ装置1500の構成に対して、無給電素子112を更に備える。また本例では、整合回路を用いずに、各部材のサイズを調整して整合を取得している。無給電素子112は、アンテナ部120よりも小さくてよい。
【0162】
図56Aは、
図55の例におけるアンテナ装置1600の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
図56Bは、
図55の例におけるアンテナ装置1600のVSWR特性を示す図である。
図56Cは、
図55の例におけるアンテナ装置1600の周波数2GHzにおけるXY面の放射パターンを示す図である。ただし、放射パターンは最大値で正規化している。
図56Aおよび
図56Bに示すように、無給電素子112を設けることにより、
図54Aおよび
図54Bと比較して広帯域化されていることがわかる。
【0163】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。