(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6656724
(24)【登録日】2020年2月7日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】液状化判定方法
(51)【国際特許分類】
E02D 1/02 20060101AFI20200220BHJP
G01N 3/40 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
E02D1/02
G01N3/40 B
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-11610(P2016-11610)
(22)【出願日】2016年1月25日
(65)【公開番号】特開2017-133168(P2017-133168A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2018年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】506332605
【氏名又は名称】基礎地盤コンサルタンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(74)【代理人】
【識別番号】100194261
【弁理士】
【氏名又は名称】栢原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】柳浦 良行
(72)【発明者】
【氏名】千葉 久志
(72)【発明者】
【氏名】武政 学
【審査官】
石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−181523(JP,A)
【文献】
特開2015−021355(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/012304(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/02
G01N 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
削孔機械のロッドの先端に設けられた削孔具を回転させて調査地盤に調査用孔を削孔し、削孔時に前記削孔具にかかる荷重、トルク及び半回転数を測定する削孔測定工程と、該削孔測定工程で測定した前記削孔具にかかる荷重、トルク及び半回転数と前記調査地盤の有効土被り圧から液状化抵抗比を求め、液状化に対する安全率を判定する液状化判定工程からなり、
前記液状化判定工程は、荷重、トルク及び半回転数を乗じ、その値の絶対値を有効土被り圧で除した値により液状化抵抗比を算出し、該液状化抵抗比を地震外力で除し、安全率を求め、液状化判定を行うことを特徴とする液状化判定方法。
【請求項2】
削孔機械のロッドの先端に設けられた削孔具を回転させて調査地盤に調査用孔を削孔し、削孔時に前記削孔具にかかる荷重、トルク及び半回転数を測定する削孔測定工程と、該削孔測定工程で測定した前記削孔具にかかる荷重、トルクの増減及び半回転数の増減と前記調査地盤の有効土被り圧から所定深さの調査地盤の土質をそれぞれ判定する土質判定工程と、該土質判定工程により液状化のおそれのある土質と判定された地層おいて、前記削孔測定工程で測定された前記削孔具にかかる荷重、トルク及び半回転数と前記調査地盤の有効土被り圧から液状化抵抗比を求め、液状化に対する安全率を判定する液状化判定工程からなり、
前記液状化判定工程は、荷重、トルク及び半回転数を乗じ、その値の絶対値を有効土被り圧で除した値により液状化抵抗比を算出し、該液状化抵抗比を地震外力で除し、安全率を求め、液状化判定を行い、
前記土質判定工程は、荷重、トルクの変化及び半回転数の変化を乗じ、その値の絶対値を有効土被り圧で除した値により液状化対象土層であるか否かの判定を行うことを特徴とする液状化判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は調査地盤の液状化に対する安全率を簡易、かつ高精度で求めることができる液状化判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤の液状化判定方法としては、液状化抵抗比(RL)を地震外力で除した値として安全率(FL)を求め、この安全率が1.0以上であれば液状化しないと評価する方法が取られている。
【0003】
すなわち、液状化抵抗比(RL)を求めることができれば、液状化判定を行うことができる。この液状化抵抗比を求める方法として地盤のサンプリングを行い、このサンプリングした地盤サンプルに対して液状化試験を行って、液状化抵抗比を求める方法や、ボーリングを行い測定されるN値、粒度及び地盤の塑性指数から求める方法等が行われている。
しかしながら、このような液状化判定方法では調査費用が高額となり、例えば、宅地に使用することは非常に困難であった。
【0004】
そのため、安価に調査ができるように簡易的な液状化抵抗比を求める方法としてスウェーデン式サウンディング試験(貫入試験)を行い、この試験で得られるパラメータを用いて液状化抵抗比を求める方法が考えられている。
【0005】
例えば特許文献1には、「地盤の強さを示す指標である動的せん断強度比Rと、地盤に液状化を発生させる側の強さを示す指標である地震時せん断応力比Lとの比R/Lから、液状化に対する地盤の抵抗率FLを求め、このFL値に基づいて液状化の危険度を判定する液状化判定方法において、 前記動的せん断強度比Rの算出方法として、先端に貫入体を有する貫入ロッドに負荷する荷重Wを段階的に変化させながら貫入ロッドを地中に回転貫入する貫入試験により、貫入ロッドの回転トルクT、貫入量Stを測定しこれら測定値に基づいて、土の硬軟を示す指標として次式で求められるCpと、
Cp=(D・nht/δSt)/(πT/WD)
ただし、nhtは貫入ロッドの半回転数、Dは貫入ロッドの最大直径
貫入ロッドの回転貫入に伴うエネルギとして次式で求められるδEと、
δE=πT・δnht+W・δSt
回転トルクTの増加量に対する荷重Wの増加量の比率であるδT/δWDと、回転トルクTの増加量に対する貫入量Stの増加量の比率であるδT/δStと、を試験パラメータとして定義し、これら試験パラメータのうち少なくとも一つを説明変数とし、目的変数を前記動的せん断強度比Rとして重回帰分析を実行することにより求めた回帰式により、前記動的せん断強度比Rを推定し、当該動的せん断強度比Rと前記地震時せん断応力比Lとの比R/Lから、地盤の液状化に対する抵抗率FLを求めることを特徴とする液状化判定方法。」(特許文献1)が開示されている。なお、この特許文献1において動的せん断強度比Rが本願発明でいう液状化抵抗比(RL)に相当し、地震時せん断応力比が本願発明でいう地震外力に相当する。
【0006】
しかし、このような液状化判定方法では、液状化抵抗比を求めるためのパラメータ(定数)が多くなり、簡易に液状化判定を行うことができなかった。
また、多くのパラメータを組み合わせて液状化抵抗比を求めるため、推定された地盤判別、力学特性、液状化特性の誤差が定数の影響であるのか、地盤自体のばらつきであるのか判断できず、高精度の液状化判定を行うことができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015−21355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、ボーリング調査やサンプリング等を行うことなく、かつ少ない定数で高精度の液状化抵抗比を求めることができ、容易に液状化判定をすることができる液状化判定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の液状化判定方法は、削孔機械のロッドの先端に設けられた削孔具を回転させて調査地盤に調査用孔を削孔し、削孔時に前記削孔具にかかる荷重、トルク及び半回転数を測定する削孔測定工程と、該削孔測定工程で測定した前記削孔具にかかる荷重、トルク及び半回転数と前記調査地盤の有効土被り圧から液状化抵抗比を求め、液状化に対する安全率を判定する液状化判定工程からな
り、前記液状化判定工程は、荷重、トルク及び半回転数を乗じ、その値の絶対値を有効土被り圧で除した値により液状化抵抗比を算出し、該液状化抵抗比を地震外力で除し、安全率を求め、液状化判定を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1に記載の発明では、削孔具にかかる荷重、トルク及び半回転数と調査地盤の有効土被り圧から液状化抵抗比を算出できる。
したがって、容易に安全率を求めることができる。
(2)貫入試験を行うだけで安全率を求めることができるので、低コストで液状化判定を行うことができる。
(3)請求項2に記載の発明も前記(1)、(2)と同様な効果が得られると共に、液状化のおそれのある地盤(液状化対象地盤)を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1乃至
図5は本発明の第1実施形態を示す各説明図である。
図6は本発明の第2実施形態を示す各説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
【0013】
図1ないし
図5に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は本願発明の液状化判定方法である。
【0014】
この液状化判定方法1は
図1に示すように、削孔機械5のロッド8の先端に設けられた削孔具6(例えばスクリュー)を回転させて調査地盤に調査用孔7を削孔し、削孔時に前記削孔具6にかかる荷重、トルク及び半回転数を測定する削孔測定工程2と、該削孔測定工程2で測定した前記削孔具にかかる荷重、トルクの増減及び半回転数の増減と、調査地盤の有効土被り圧から所定深さの調査地盤の土質を判定する土質判定工程3と、該土質判定工程3により液状化のおそれのある土質と判定された地層である場合には、前記削孔測定工程2で測定された前記削孔具にかかる荷重、トルク及び半回転数と、調査地盤の有効土被り圧から液状化抵抗比を算出して、液状化に対する安全率を判定する液状化判定工程4とで構成されている。
【0015】
前記削孔測定工程2では、
図2に示すように、削孔機械5を用いて調査地盤に調査用孔7を削孔するとともに、削孔時のデータを測定する工程である。削孔機械5のロッド8の先端部に設けられたスクリュー(削孔具)6を回転させながら調査地盤に貫入させ、貫入時の荷重W、トルクT、半回転数Nsw、貫入時間Sを測定する。本実施の形態においては、その測定結果を
図3に示すように、地表から13.5m貫入し、5cm毎に前記データを測定した。
【0016】
なお、使用される削孔機械5としては、貫入時の荷重W、トルクT、半回転数Nsw、貫入時間Sを測定できるものであればどのような削孔機械を用いてもよく、本実施の形態においては、スウェーデン式サウンディング試験用の削孔機械を用いている。
また、
図3のN値等は、比較のためサンプリング等により測定したものである。
前記土質判定工程3では、前記削孔測定工程2で測定されたデータから、どの土層が液状化対象土層であるかを判定する工程である。
【0017】
まず、液状化対象土層とは、液状化のおそれがある土層であり、建築や土木等の分野では、多くの場合細粒分含有率FCが65%以下の土層を対象土層と定めている。
この細粒分含有率とは、いわゆる粘性土分の含有率を示しており、細粒分含有率65%という場合には、粘性土分の含有率が65%であり、砂質土分が35%であることを示す。
この液状化対象土層の判定についても、従来は土層のサンプリングを行い、室内での粒度試験から細粒分含有率FCを求めていた。
【0018】
本願発明の土質判定工程3では、荷重、トルクの変化△T及び半回転数の変化△Nswを乗じ、その値の絶対値を有効土被り圧σv’ (浮力を考慮した値)で除した値により液状化対象土層であるか否かの判定を行う。これは
図2からわかるように、調査地盤にスクリューを回転させながら貫入した場合に、砂質土ほどトルク、半回転数の増減が大きくなるという性質に着目したものである。なお、トルク及び半回転数は、拘束圧の影響を受けるため、有効土被り圧で除すことにより、その影響を除外している。
|W・△T・△Nsw|/σv’
この計算式により算出した値と、実際に測定した細粒分含有率FCを比較した分布図を
図4に示す。この
図4からわかるように、0.1を超えていれば細粒分含有率が65%を下回っている事が確認できる。
すなわち、|W・△T・△Nsw|/σv’>0.1であれば、液状化対象土層であると判定できる。
【0019】
前記液状化判定工程4は、液状化対象土層であると判定された土層の液状化強度を、前記削孔測定工程2で測定されたデータから、液状化抵抗比RLを算出し液状化判定を行う。
【0020】
本願発明の液状化判定工程4では、荷重、トルクT及び半回転数Nswを乗じ、その値の絶対値を有効土被り圧σv’ (浮力を考慮した値)で除した値により液状化抵抗比RLを算出し、該液状化抵抗比RLを地震外力で除し、安全率FLを求め、液状化判定を行う。これは
図3からわかるように、N値とトルク、半回転数及び貫入時間に良い相関がある点に着目したものである。なお、トルク及び半回転数は、拘束圧の影響を受けるため、有効土被り圧で除すことにより、その影響を除外している。
【0021】
W・T・Nsw/σv’
この計算式により算出した各土層の値と、実際に測定した各土層の液状化抵抗比RLを比較した分布図を
図5に示す。この
図5からわかるように、前記計算式から算出した値と液状化抵抗比RLは良い相関が有り、該計算式で求めた値から高精度で液状化抵抗比RLを推定することが可能である。
【0022】
液状化抵抗比RLを推定することができれば、この値を地震外力で除して安全率FLを求めることができる。前述したように安全率FL>1.0であれば、液状化しないと評価することができる。
【0023】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、
図6に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0024】
図6に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、土質判定工程3を行わない液状化判定方法1Aにした点で、このような液状化判定方法1Aでも予め液状化対象土層が明確である場合や、全土層に対して液状化判定を行う場合には、適格かつ高精度に液状化判定を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は構造物を設計・施工するための液状化判定が必要な土木・建築分野などの産業で利用される。
【符号の説明】
【0026】
1、1A:液状化判定方法、 2:削孔測定工程、
3:土質判定工程、 4:液状化判定工程、
5:削孔機械、 6:削孔具、
7:調査用孔、 8:ロッド。