(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6656786
(24)【登録日】2020年2月7日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】染毛方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20200220BHJP
A61Q 5/10 20060101ALI20200220BHJP
A61K 8/9794 20170101ALI20200220BHJP
A61K 8/22 20060101ALI20200220BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20200220BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20200220BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20200220BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q5/10
A61K8/9794
A61K8/22
A61K8/25
A61K8/19
A61K8/60
A61K8/34
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-155296(P2019-155296)
(22)【出願日】2019年8月28日
【審査請求日】2019年9月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517206018
【氏名又は名称】小寺 浩市
(74)【代理人】
【識別番号】100121784
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 稔
(72)【発明者】
【氏名】小寺 浩市
【審査官】
辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−178712(JP,A)
【文献】
特開2011−126845(JP,A)
【文献】
特開2010−132596(JP,A)
【文献】
特開2006−045180(JP,A)
【文献】
特開2002−284653(JP,A)
【文献】
特開2001−064134(JP,A)
【文献】
特開2001−064131(JP,A)
【文献】
特開平04−069324(JP,A)
【文献】
特開平11−349447(JP,A)
【文献】
特開2003−129389(JP,A)
【文献】
特開平06−329517(JP,A)
【文献】
特開平04−198118(JP,A)
【文献】
特開平07−274977(JP,A)
【文献】
特開昭63−115807(JP,A)
【文献】
特開平09−124441(JP,A)
【文献】
特開2011−093816(JP,A)
【文献】
特開平10−114635(JP,A)
【文献】
特開2004−161722(JP,A)
【文献】
特開2002−302697(JP,A)
【文献】
特開2002−332496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00− 8/99
A61Q1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処置者の毛髪に染毛液を塗布する塗布工程と、
染毛液を塗布した毛髪をその状態で所定時間維持する維持工程と、
塗布後所定時間維持した毛髪から染毛液を洗い流す洗流工程と、
染毛液を洗い流した毛髪に発色促進剤を塗布した後に当該発色促進剤を洗い流す発色促進工程と、
酸化発色シャンプーで毛髪を洗浄する洗髪工程とを有し、
前記染毛液は、草木染用色素と、多価フェノールを含有するローションと、発汗促進剤と、臭素酸ナトリウムとを含有する水溶液又は水溶性クリームであり、
前記発色促進剤は、鉄イオンとベントナイトとを含有する粉体を水で練り合せたペーストであり、
前記酸化発色シャンプーは、黒糖と、トレハロースと、カリ石鹸と、臭素酸ナトリウムとを含有するシャンプーであることを特徴とする染毛方法。
【請求項2】
前記塗布工程において、前記染毛液に前記発色促進剤を併用することにより、
前記発色促進工程を省略することを特徴とする請求項1に記載の染毛方法。
【請求項3】
前記染毛液において、臭素酸ナトリウムに代えて炭酸水素ナトリウムを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の染毛方法。
【請求項4】
前記草木染用色素は、ヘナ、インディゴ、フクギ、ウコンのうち少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の染毛方法。
【請求項5】
上記毛髪に染毛液を塗布する工程の前に、
毛細血管を刺激して発汗作用を促進する物質を含有する発汗促進剤を被処置者の頭皮と毛髪に塗布する工程を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の染毛方法。
【請求項6】
前記発汗促進剤は、毛細血管を刺激する効果のある桑白皮、トウガラシ、ビワ葉、ヨモギ葉のうち少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の染毛方法。
【請求項7】
上記酸化発色剤を含有するシャンプーで毛髪を洗浄する工程の後に、
洗浄後の毛髪をブロー及びセットして仕上げる工程を有し、当該ブローの際に色素が空気酸化して発色が促進されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の染毛方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に美容院などで処置される染毛方法に関するものであり、特に髪と肌に優しい草木染を利用した染毛方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
白髪染めやカラーヘアの染毛に使用されるヘアカラーリング剤には、医薬部外品に分類されるものや化粧品に分類されるものがある。一般に、永久染毛料とくに酸化染毛料(医薬部外品)をヘアカラー、半永久染毛料とくに酸性染料(化粧品)をヘアマニキュアと呼んでいる。また、最近では、酸性染料以外の染毛料(化粧品)をカラーリンスやカラートリートメントと呼ぶ場合もある。
【0003】
これらのヘアカラーリング剤は、使い方や色持ちなどが違い、特に酸化染料と酸化剤を併用するヘアカラーは使用方法を誤ると「かぶれ」などの皮膚トラブルを起こすことがある。特に、ヘアカラーによる「かぶれ」を気付かずにいると次第に症状が重くなり、「アナフィラキシー」という重篤なアレルギー反応等が突然起こることがあり危険である。
【0004】
ヘアカラーに使用される酸化染料の代表的成分がパラフェニレンジアミンであり、その他にパラアミノフェノールやトルエン−2,5−ジアミンなどがある(以下、これらを含む染料を「ジアミン系染料」という)。これらのジアミン系染料は、アレルゲンとして作用し、一旦「かぶれ」を引き起こした人は、二度とこれらの染毛料を使用することができない。
【0005】
このような人達は、草木染による染毛をするようになる。その代表的な染毛料として、「ヘナ」(「ヘンナ」ともいう)と「インディゴ」がある。また、正確には草木染ではないが、これに近い天然系染毛料として、毛髪中で鉄イオンとタンニンなどの多価フェノールによって色素を作りだす所謂「オハグロ式染毛」がある。
【0006】
ヘナは、西南アジアから北アフリカにかけて自生するミソハギ科の植物の葉を乾燥させてパウダー状にしたものを髪の毛や皮膚に塗りつけて色を染める。これは、ヘナの葉に含まれるローソンという色素の作用である。このヘナは、ヘアカラーと同様に永久染毛料に区分されるが、オレンジ系の色素であって安定した色を出すのが難しく染め時間も長くかかるという問題がある。
【0007】
インディゴは、タデ科の植物である藍の葉から抽出して木綿繊維などを染色する天然染料である。通常の木綿繊維の染色は、pH13以上の高アルカリ性で染色する化学建てという方法を使うが、この方法では髪や肌に大きなダメージを与える。そこで、染毛料としてのインディゴは、粉末にした藍の葉を使用する生葉建てという方法を使用する。このインディゴは、青色の色素であって安定した色を出すのが難しく酸化発色して色が出るのに長時間を要するという問題がある。
【0008】
オハグロ式染毛は、上述のように、毛髪中で鉄イオンと多価フェノール(タンニンなど)によって赤色から黒色の色素を作りだして染毛する。この方法は、ヘナやインディゴによる染毛に比べると染め時間は短いが色持ちも短い。また、タンニンなどの量を調節することで色を調節することもできるが、真っ黒になり又は紫っぽくなって安定した色を出すのが難しい。
【0009】
これらのことから、ブラウン系や黒染をするためには、オレンジ系のヘナに青色の色素を持つインディゴを加える、又は、ヘナで染めた後にインディゴで再度染めるという2度染めによる染毛方法が使用されることもある。このような2度染めでは更に染め時間が長くなり4時間以上もかかるという問題がある。
【0010】
そこで、市場には色持ちや発色を改善したヘナ染毛料などが提案されている。例えば、下記特許文献1に係るヘナ染毛料は、ヘナに塩基性染料やHC染料(HAIRCOLOR染料)などを併用して、カラーバリエーションの豊富なヘナ染毛料を提供しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2017−186273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、上記特許文献1に係るヘナ染毛料に含まれる塩基性染料やHC染料などは、アレルゲンとして作用するジアミン系染料とは異なり、アレルギーリスクが低いとされている。しかし、HC染料は、化粧品原料の規制緩和により使用可能となった成分であり、これらを併用した上記特許文献1に係るヘナ染毛料は本来の草木染又は天然系染毛料とは全く異なるものである。
【0013】
そこで、本発明は、以上のようなことに対処して、ジアミン系染料などを使用することがなく、髪と肌に優しい草木染又は天然系染毛料を利用し、ブラウン系や黒染など豊富なカラーバリエーションに染めることができると共に、染め時間を短くすることのできる染毛方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題の解決にあたり、本発明者は、鋭意研究の結果、草木染とオハグロ式染毛とを併用し、これに適用する新規の発色促進剤及び酸化発色シャンプーを開発することにより上記問題を解決できることを見出して本発明の完成に至った。
【0015】
即ち、本発明に係る染毛方法は、請求項1の記載によると、
被処置者の毛髪に染毛液を塗布する塗布工程と、
染毛液を塗布した毛髪をその状態で所定時間維持する維持工程と、
塗布後所定時間維持した毛髪から染毛液を洗い流す洗流工程と、
染毛液を洗い流した毛髪に発色促進剤を塗布した後に当該発色促進剤を洗い流す発色促進工程と、
酸化発色シャンプーで毛髪を洗浄する洗髪工程とを有し、
前記染毛液は、草木染用色素と、多価フェノールを含有するローションと、発汗促進剤と、臭素酸ナトリウムとを含有する水溶液又は水溶性クリームであり、
前記発色促進剤は、鉄イオンとベントナイトとを含有する粉体を水で練り合せたペーストであり、
前記酸化発色シャンプーは、黒糖と、トレハロースと、カリ石鹸と、臭素酸ナトリウムとを含有するシャンプーであることを特徴とする。
【0016】
また、請求項2の記載によると、請求項1に記載の染毛方法であって、
前記塗布工程において、前記染毛液に前記発色促進剤を併用することにより、
前記発色促進工程を省略することを特徴とする。
【0017】
また、請求項3の記載によると、請求項1又は2に記載の染毛方法であって、
前記染毛液において、臭素酸ナトリウムに代えて炭酸水素ナトリウムを含有することを特徴とする。
【0018】
また、請求項4の記載によると、請求項1〜3のいずれか1つに記載の染毛方法であって、
前記草木染用色素は、ヘナ、インディゴ、フクギ、ウコンのうち少なくとも1種を含有することを特徴とする。
【0019】
また、請求項5の記載によると、請求項1〜4のいずれか1つに記載の染毛方法であって、
上記毛髪に染毛液を塗布する工程の前に、
毛細血管を刺激して発汗作用を促進する物質を含有する発汗促進剤を被処置者の頭皮と毛髪に塗布する工程を有することを特徴とする。
【0020】
また、請求項6の記載によると、請求項1〜5のいずれか1つに記載の染毛方法であって、
前記発汗促進剤は、毛細血管を刺激する効果のある桑白皮、トウガラシ、ビワ葉、ヨモギ葉のうち少なくとも1種を含有することを特徴とする。
【0021】
また、請求項7の記載によると、請求項1〜6のいずれか1つに記載の染毛方法であって、
上記酸化発色剤を含有するシャンプーで毛髪を洗浄する工程の後に、
洗浄後の毛髪をブロー及びセットして仕上げる工程を有し、当該ブローの際に色素が空気酸化して発色が促進されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
上記構成によれば、本発明に係る染毛方法は、被処置者の毛髪に染毛液を塗布する塗布工程と、染毛液を塗布した毛髪をその状態で所定時間維持する維持工程と、塗布後所定時間維持した毛髪から染毛液を洗い流す洗流工程と、染毛液を洗い流した毛髪に発色促進剤を塗布した後に当該発色促進剤を洗い流す発色促進工程と、酸化発色シャンプーで毛髪を洗浄する洗髪工程とを有している。
【0023】
また、染毛液は、草木染用色素と、多価フェノールを含有するローションと、発汗促進剤と、臭素酸ナトリウムとを含有する水溶液又は水溶性クリームである。また、発色促進剤は、鉄イオンとベントナイトとを含有する粉体を水で練り合せたペーストである。また、酸化発色シャンプーは、黒糖と、トレハロースと、カリ石鹸と、臭素酸ナトリウムとを含有するシャンプーである。
【0024】
これらの染毛液、発汗促進剤、及び、酸化発色シャンプーを上記各工程において使用することにより、ジアミン系染料などを使用することがなく、髪と肌に優しい草木染又は天然系染毛料を利用し、ブラウン系や黒染など豊富なカラーバリエーションに染めることができると共に、染め時間を短くすることのできる染毛方法を提供することができる。
【0025】
また、上記構成によれば、塗布工程において、染毛液に発色促進剤を併用することにより、発色促進工程を省略するようにしてもよい。このことにより、上記作用効果を同様に発揮することができる。
【0026】
また、上記構成によれば、染毛液において、臭素酸ナトリウムに代えて炭酸水素ナトリウムを含有するようにしてもよい。このことにより、上記作用効果を同様に発揮することができる。
【0027】
また、上記構成によれば、草木染用色素として、ヘナ、インディゴ、フクギ、ウコンのうち少なくとも1種を含有するようにしてもよい。このことにより、上記作用効果をより具体的に発揮することができる。
【0028】
また、上記構成によれば、毛髪に染毛料を塗布する塗布工程の前に、毛細血管を刺激して発汗作用を促進する物質を含有する発汗促進剤を被処置者の頭皮と毛髪に塗布する工程を有するようにしてもよい。このことにより、上記作用効果をより効果的に発揮することができる。
【0029】
また、上記構成によれば、発汗促進剤は、毛細血管を刺激する効果のある桑白皮、トウガラシ、ビワ葉、ヨモギ葉のうち少なくとも1種を含有するものであってもよい。このことにより、上記作用効果をより具体的に発揮することができる。
【0030】
また、上記構成によれば、酸化発色剤を含有するシャンプーで毛髪を洗浄する工程の後に、洗浄後の毛髪をブロー及びセットして仕上げる工程を有するようにしてもよい。このことにより、当該ブローの際に色素が空気酸化して発色が促進され、上記作用効果をより効果的に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明に係る染毛方法の1実施形態による処置フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る染毛方法を実施形態により説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態にのみ限定されるものではない。
【0033】
本発明においては、新規な「染毛液」、この染毛液に混合する「多価フェノールを含有するローション」(以下「オハグロ式タンニンローション」という)、「発色促進剤」、及び、「酸化発色シャンプー」などを開発した。また、特定の「発汗促進剤」も併用する。以下、これらの調整法について説明する。なお、本発明に使用する各種剤は、以下に説明する調整法にのみ限定されるものではない。
【0034】
染毛液は、草木染用色素と、オハグロ式タンニンローション(後述する)と、発汗促進剤(後述する)と、臭素酸ナトリウムとを含有する。また、これらに発色促進剤(後述する)を併用するようにしてもよい。更に、上記の臭素酸ナトリウムに代えて、炭酸水素ナトリウム(以下「重曹」という)を用いるようにしてもよい。
【0035】
草木染用色素としては、オレンジ系色素である「ヘナ」、青色系色素である「インディゴ」、黄色系色素である「フクギ」や「ウコン」などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。オハグロ式タンニンローションは、後述するように、発色促進剤に含まれる鉄イオンと反応して赤色から黒色の色素を作りだすタンニンなどの多価フェノールを含有する。また、繊維の大島紬などにも使用されるタンニンを含む「シャリンバイ」の煎汁などを使用するようにしてもよい。
【0036】
発汗促進剤は、アルカリ性であって毛髪の汚れを毛髪から浮き上がらせて除去すると共に、染毛の際に最適な毛髪のpHを維持する。また、染毛時及びその後の毛髪と肌の健康を維持・促進する作用を有する。臭素酸ナトリウムは、酸化剤であって、この場合は主にインディゴの発色を促進する。重曹は、アルカリ剤であって、ヘナやインディゴなどの草木染用色素をアルカリ性に維持する働きと、染毛液自体の増粘を促進する。
【0037】
ここで、染毛液の調整法の一例を説明するが、本発明に係る染毛液は以下の調整法にのみ限定されるものではない。まず、草木染用色素として何を使用するかは、染毛しようとする色によって使い分ける。例えば、青色系色素であるインディゴを染毛液に使用すると、タンニンと鉄イオンが作り出す赤色から黒色の色素と組み合わさって毛髪を黒に染めることができる。一方、オレンジ系色素であるヘナを染毛液に使用すると、タンニンと鉄イオンが作り出す赤色から黒色の色素と組み合わさって毛髪を赤やブラウンに染めることができる。
【0038】
具体的な染毛液の調整法は、まず、水とオハグロ式タンニンローションと発汗促進剤と臭素酸ナトリウム5%水溶液を調整し、これにヘナ(又はインディゴ)のパウダーを混合してクリーム状の染毛液を調整する。なお、各成分の混合比率を調整することにより、毛髪を染めようとする色に合わせることができる。なお、上述のように、臭素酸ナトリウム5%水溶液に代えて、重曹5%水溶液を用いるようにしてもよい。この場合には、染毛液の粘度が更に増粘する。
【0039】
次に、オハグロ式タンニンローションの調整法の一例を説明するが、本発明に係るオハグロ式タンニンローションは以下の調整法にのみ限定されるものではない。具体的な調整法は、例えば、三年酢(赤酢)500mlと木酢液400mlと酒石酸40gを水2860gで混合したものに、柿渋液240mlを投入してよく混合する。この混合液を約1か月熟成して下部に沈殿したタンニン含有成分と水とを分離する。
【0040】
この分離したタンニン含有成分にピロガロールを混合することにより、これまで出すことにできなかった黒色を毛髪に染めることができるようになった。また、本実施形態に係るオハグロ式タンニンローションは、従来のオハグロ式染毛法に使用されている柿渋では刺激が強すぎる肌の弱い人に対しても使用することができる。
【0041】
次に、発色促進剤の調整法の一例を説明するが、本発明に係る発色促進剤は以下の調整法にのみ限定されるものではない。具体的な調整法は、例えば、硫酸第1鉄とベントナイト(火山灰)とを40:60の割合で混合した粉体を約2倍量の水で混練して調整する。ここで、ベントナイトを使用する目的は、ペーストの増粘作用と、硫酸第1鉄の酸化反応の安定作用と、反応した色素を吸着して頭皮や手に染着することを防止する作用を有しているものと考えられる。
【0042】
次に、酸化発色シャンプーの調整法の一例を説明するが、本発明に係る酸化発色シャンプーは以下の調整法にのみ限定されるものではない。具体的な調整法は、まず、黒糖300gとトレハロース60gとを3Lの水に溶解して水溶液Aを調整する。次に、カリ石鹸(純石鹸分:35%脂肪酸カリウム)18Lと水溶液Aとを混合して混合液Bを調整する。次に、臭素酸ナトリウム10gを水50mlで溶解した水溶液Cを調整し、この水溶液Cと混合液B150mlとを混合して酸化発色シャンプーとする。
【0043】
このようにして調整した酸化発色シャンプーの特徴は、従来のカリ石鹸に比べて泡立ちの良さと分解安定性の良さにある。本発明においては、泡立ちを改良するために黒糖を使用した。また、分解安定性改良するためにトレハロースを使用した。
【0044】
次に、発汗促進剤の調整法の一例を説明するが、本発明に係る発汗促進剤は以下の調整法にのみ限定されるものではない。本発明に係る発汗促進剤は、毛細血管を刺激する効果のある桑白皮、トウガラシ、ビワ葉、ヨモギ葉のうち少なくとも1種、又は、全てを含有する。
【0045】
ここでは、これらを全て含有した発汗促進剤の具体的な調整法について説明する。まず、桑白皮50g、トウガラシ1g、ビワ葉15g及びヨモギ葉20gを水2.2Lで煮出して1.95Lの煮出し液を得る。この煮出し液に石鹸(黒糖シャンプー)400ml、無水アルコール500ml、焼酎(25%)1000ml、DOL(オイル)150ml、黒塩(岩塩)20gとを混合して発汗促進剤とする。
【0046】
次に、本発明に係る染毛方法の1実施形態をその工程に沿って説明する。
図1は、本発明に係る染毛方法の1実施形態による処置フロー図である。
【0047】
≪第1工程≫
まず、第1工程において、被処置者の頭皮と毛髪への発汗促進剤の塗布を行う。なお、本発明においては、発汗促進剤を塗布する第1工程を必ずしも含むものではないが、染毛前の工程として発汗促進剤を塗布する第1工程を行うことが好ましい。第1工程に使用する発汗促進剤は、上記のようにして調整したものでありアルカリ性を呈する。
【0048】
この第1工程の効果としては、毛髪の汚れを毛髪から浮き上がらせて除去すると共に、続く第2工程以降の染毛の際に最適な毛髪のpHを維持するためにもアルカリ性の発汗促進剤を使用することが好ましい。この第1工程においては、アルカリ性の発汗促進剤を頭皮と毛髪に万遍なく塗布し、蒸タオルを頭全体に被せて数分間(好ましくは3〜5分程度)放置する。
【0049】
≪第2工程≫
次に、第2工程において、被処置者の毛髪に染毛液を塗布する。上述のようにして調整したクリーム状の染毛液を染毛したい部分に塗布する。なお、塗布は、毛髪の根元から毛先に向けて行うことが好ましい。
【0050】
≪第3工程≫
次に、第3工程において、染毛液を塗布した毛髪をその状態で所定時間維持する。この維持時間とは、約30分程度で十分である。なお、色を薄くしたい場合には、維持時間を短くすればよい。なお、この第3工程においては、染毛は十分にはなされておらず色の薄い段階である。
【0051】
≪第4工程≫
次に、第4工程において、塗布後所定時間維持した毛髪から染毛液を洗い流す。このとき、染毛液が頭皮や毛髪に残っていると被処置者の頭皮や額、或いは処置者の手が染まってしまうので、充分に洗い流さなければならない。
【0052】
≪第5工程≫
次に、第5工程において、染毛液を洗い流した毛髪に発色促進剤を塗布して、毛髪に万遍なく馴染ませる。その後、全体をよく揉み洗いしコーミングした後に洗い流す。この第5工程においては、発色促進剤の塗布と洗い流しを1回〜2回繰り返す。この工程において、第2工程で毛髪に付与した染毛液中のタンニンと、この第5工程で付与した発色促進剤中の鉄イオンとが反応して色素(タンニン酸鉄)の生成を調整することができる。
【0053】
なお、本発明においては、発色促進剤を塗布して洗い流す第5工程を必ずしも必要とするものではない。その場合には、上述のように、第2工程において染毛液の中に前もって発色促進剤と重曹とを併用しておくことが好ましい。ことにより、第5工程を経ることなくタンニンと鉄イオンとが反応して色素(タンニン酸鉄)の生成を調整することができる。
【0054】
≪第6工程≫
次に、第6工程において、酸化発色シャンプーで毛髪を洗浄する。この第6工程では、色素の発色と定着を行うと共に、被処置者の頭皮や毛髪に付着した汚れ(発色促進剤)を十分に洗い流す。
【0055】
≪第7工程≫
次に、第7工程において、洗浄後の毛髪をブロー及びセットして仕上げる。このとき、ブロー中においても色素が空気酸化して発色が促進される。そのため、上記第6工程のシャンプー後にはリンスを行わないことが好ましく、最後の仕上げ時に少量のオイルを毛髪に付けて仕上げるようにする。
【0056】
このように、発色促進を別々の工程で行うので、塗布時間内での酸化剤で酸化発色を促進するために毛髪のpHを酸性側にすることなく、毛髪を弱アルカリ性に維持したまま染毛を行うことができるので、染毛剤或いは色素が毛髪中に吸収・吸着されやすくなる。このようにして、本実施形態においては、従来では4時間以上を要していた染毛工程を半分の2時間以内で良好な染毛を行うことができる。
【0057】
以上のことから、本発明によれば、ジアミン系染料などを使用することがなく、髪と肌に優しい草木染又は天然系染毛料を利用し、ブラウン系や黒染など豊富なカラーバリエーションに染めることができると共に、染め時間を短くすることのできる染毛方法を提供することができる。
【0058】
なお、本発明の実施にあたり、上記実施形態に限ることなく、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)上記実施形態の染毛方法においては、第1工程として被処置者の頭皮と毛髪への発汗促進剤の塗布を行うようにした。しかし、これに限るものではなく、汗促進剤の塗布を行うことなく第2工程の毛髪への染毛液の塗布から始めるようにしてもよい。
(2)上記実施形態の染毛方法においては、第2工程の毛髪への染毛液の塗布において染毛液に発色促進剤を併用することなく、第5工程において発色促進剤の塗布と洗い流しを行うようにした。しかし、これに限るものではなく、第2工程において染毛液に発色促進剤を併用するようにして、第5工程を行わないようにしてもよい。
(3)上記実施形態の染毛方法においては、染毛液に臭素酸ナトリウムを使用するが、これに限るものではなく、臭素酸ナトリウムに代えて重曹を使用するようにしてもよい。
【要約】
【課題】ジアミン系染料などを使用することがなく、髪と肌に優しい草木染又は天然系染毛料を利用し、ブラウン系や黒染など豊富なカラーバリエーションに染めることができると共に、染め時間を短くすることのできる染毛方法を提供する。
【解決手段】被処置者の毛髪に染毛液を塗布する塗布工程と、染毛液を塗布した毛髪をその状態で所定時間維持する維持工程と、塗布後所定時間維持した毛髪から染毛液を洗い流す洗流工程と、染毛液を洗い流した毛髪に発色促進剤を塗布した後に当該発色促進剤を洗い流す発色促進工程と、酸化発色シャンプーで毛髪を洗浄する洗髪工程とを有する。染毛液は、ヘナ又はインディゴなどの草木染用色素と、多価フェノールを含有するローションと、発汗促進剤と、臭素酸ナトリウムとを含有する。発色促進剤は、鉄イオンとベントナイトとを含有する。酸化発色シャンプーは、黒糖と、トレハロースと、カリ石鹸と、臭素酸ナトリウムとを含有する。
【選択図】
図1