特許第6656788号(P6656788)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6656788
(24)【登録日】2020年2月7日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】風力タービンのロータのブレード
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/00 20160101AFI20200220BHJP
【FI】
   F03D80/00
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-203836(P2013-203836)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2014-70638(P2014-70638A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2016年8月2日
【審判番号】不服2018-7133(P2018-7133/J1)
【審判請求日】2018年5月25日
(31)【優先権主張番号】12186534.9
(32)【優先日】2012年9月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ピーダ フールサング
【合議体】
【審判長】 久保 竜一
【審判官】 柿崎 拓
【審判官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第01/16482(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0229332(US,A1)
【文献】 特開2008−169846(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0274559(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0008787(US,A1)
【文献】 国際公開第00/015961(WO,A1)
【文献】 特開2003−254225(JP,A)
【文献】 実開昭60−188696(JP,U)
【文献】 欧州特許出願公開第2017467(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第2196665(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D1/06
F03D80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブに取り付けられる付け根部分(10)と、ブレード先端を含む翼形部分(19)とを有する風力タービンロータ用ブレード(1)であって、
前記ブレード(1)は、
・当該ブレード(1)の厚さ係数t/cが0.45<t/c<1であって、tは最長トランスバース長を示し、cは翼弦線長を示す、厚み領域(TZ)と、
・当該ブレード(1)の正圧面(11)において、前記厚み領域(TZ)の少なくとも一部に配置された空気流補正装置(2,3)と
を有し、
前記厚み領域(TZ)は、前記ブレード(1)の付け根部分(10)から外側に向かって、当該ブレード(1)の翼形部分(19)の少なくとも一部を含むように延在し、
前記空気流補正装置(2,3)は、
前記ブレード(1)の揚力を上昇させるように構成されたスポイラ(3)、および、
前縁(12)と後縁(13)との間に配置された渦発生部(2)
を有し、
前記スポイラ(3)は、前記後縁(13)に沿って前記正圧面(11)に凹状の表面を形成する凸部として形成され、
前記渦発生部(2)は、当該渦発生部(2)と前記スポイラ(3)との間に空気流(42)が貼り付いた状態を維持するように構成されている
ことを特徴とする、風力タービンロータ用ブレード。
【請求項2】
前記ブレード(1)の翼形部分(19)における前記厚さ係数t/cは少なくとも0.45である、
請求項1記載の風力タービンロータ用ブレード。
【請求項3】
前記ブレード(1)は、前記厚み領域(TZ)において、前記付け根部分(10)と前記翼形部分(19)との間に移行部分(18)を有し、ここで、前記移行部分(18)は、前記厚さ係数t/cが0.9以下となる領域からスタートし、前記ブレード(1)のハブ側の端部からその長さ(L)の少なくとも30%の位置まで延在する
請求項1または2記載の風力タービンロータ用ブレード。
【請求項4】
前記渦発生部(2)は、前記ブレード(1)の長さ方向において、前記厚み領域(TZ)の長さに沿って延在するように配置されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載の風力タービンロータ用ブレード。
【請求項5】
前記渦発生部(2)は、前記ブレード(1)の長さ方向において、前記厚さ係数t/cが0.45を超える、前記厚み領域(TZ)の長さに沿って延在するように配置されている、
請求項1から4までのいずれか1項記載の風力タービンロータ用ブレード。
【請求項6】
前記渦発生部(2)は、複数の渦発生要素(20)のオープン配列体を有する、
ここで、前記オープン配列体(20)とは、風上に向かって広がる形状を有する1対の構造体である、
請求項1から5までのいずれか1項記載の風力タービンロータ用ブレード。
【請求項7】
前記複数の渦発生要素(20)は、前記ブレード(1)に長さ方向に沿った直線上に、ジグザグ状パターンまたは交互に食い違わせたパターンに配置されている、
請求項6記載の風力タービンロータ用ブレード。
【請求項8】
各渦発生要素(20)は、当該渦発生要素(20)が配置された前記ブレード(1)の面に対して垂直な方向から見て実質的に三角形の形状を有し、
前記各渦発生要素(20)の三角形の1つの頂点が前記前縁(12)に向けられ、かつ、当該三角形の底辺が前記後縁(13)の方を向くように、前記各渦発生要素(20)は前記ブレード(1)上に配置されている、
請求項6または7記載の風力タービンロータ用ブレード。
【請求項9】
各渦発生要素(20)の高さは、前記ブレード(1)の対応する翼弦長(c)の最大2.0%である、
請求項6から8までのいずれか1項記載の風力タービンロータ用ブレード。
【請求項10】
前記スポイラ(3)は、前記ブレード(1)の前記後縁(13)に沿って実質的に平坦な側面(30)を有する、
請求項1から9までのいずれか1項記載の風力タービンロータ用ブレード。
【請求項11】
前記ブレード(1)は、
・少なくとも2mの直径を有する前記付け根部分(10)と、
・少なくとも40mの前記ブレード(1)の長さ(L)と
を有し、
前記厚み領域(TZ)は、前記ブレード(1)のハブ側の端部からその長さ(L)の少なくとも30%の位置まで延在し
前記スポイラ(3)および前記渦発生部(2)は、前記ブレード(1)の長さ方向において前記厚み領域(TZ)の長さに沿って延在する、
請求項1から10までのいずれか1項記載の風力タービンロータ用ブレード。
【請求項12】
複数のロータブレード(1)を有する風力タービンであって、
少なくとも1つの前記ロータブレード(1)は、請求項1から11までのいずれか1項記載の風力タービンロータ用ブレード(1)を有する
ことを特徴とする風力タービン。
【請求項13】
風力タービンロータ用ブレード(1)の正圧面(11)における空気流を補正するための空気流補正装置(2,3)であって、
・前記ブレード(1)の正圧面(11)に取り付けられるように構成されたスポイラ(3)と、
・前記ブレード(1)の正圧面(11)に取り付けられるように構成された渦発生部(2)と
を有し、
前記スポイラ(3)は、前記ブレード(1)の後縁(13)に沿って前記ブレード(1)の正圧面(11)に凹状の表面を形成する凸部として形成されており、
前記渦発生部(2)は、前記ブレード(1)の、厚さ係数t/cが0.45<t/c<1であって、tは最長トランスバース長を示し、cは翼弦線長を示す、領域において、当該渦発生部(2)と前記スポイラ(3)との間において空気流(42)が前記ブレード(1)の正圧面(11)に貼り付いた状態を維持するように形成されている
ことを特徴とする空気流補正装置(2,3)。
【請求項14】
前記渦発生部は(2)は、支持ストリップ部材上に取り付けられた複数の渦発生要素(20)を有し、
前記支持ストリップ部材は、前記ブレード(1)の前記正圧面(11)に取り付けられるように形成されている、
請求項13記載の空気流補正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力タービン用のロータのブレードと、風力タービンと、空気流補正装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の風力タービンでは、1つのハブに複数のブレードが、通常は3つのブレードが取り付けられており、これは風に向けることができる。通常、たとえば高風力状態のときに各ブレードが風力からより多くのエネルギーを取り出せるように、または、フェザに向けて各ブレードのピッチ調整を行えるように、必要な場合には各ブレードのピッチ角または「迎え角」を調整できるようにするため、ピッチシステムを用いて各ブレードをハブに接続する。動作中には、ブレードは風力から得られた運動エネルギーを、ロータの回転エネルギーに変換し、これにより発電機が駆動される。数MWのオーダの高い定格出力を有する風力タービンが開発中である。このような大型の風力タービンでは、風力から可能な限り多くのエネルギーを取り出せるようにブレードを構成する必要がある。このことは、使用可能な表面積を増大させるためにブレード長を伸長させることにより実現することができる。しかし典型的には、不所望のノイズレベルを避けるため、ブレードの最大長さはブレード先端速度によって制限される。ブレードを長くしたときの別の問題として、外側端部がより細くなって曲がってしまい、風力タービンタワーに衝突してしまうという問題がある。それゆえ、衝突のリスクを最小限にするため、ハブ(およびナセル)を水平線から上方向に数°だけ傾けることができる。
【0003】
どのようにすればブレード効率を最大限にできるかという問題に取り組む手法の1つとして、ハブに近い場所においてブレードの幅が最大となるように、付け根に向かう方向にブレードの翼弦長を増大していくことができる。しかしこのようにブレードを構成すると、塔にかかる負荷が大きくなり、製造コストが高くなり、ブレードの輸送が困難となる。
【0004】
他に、ブレードの衝突に関して焦点を当て、通常のガラス繊維のみを用いる代わりに炭素繊維を用いて、より長くされたブレードの剛性を高くする手法もある。しかし、炭素繊維を用いたこのようなブレードは、従来のガラス繊維製ブレードより高コストであり、風力タービン全体の総コストを著しく増大させることになる。
【0005】
他の手法として、付け根部分の近傍において、スポイラと、より細くひいてはより「厚い」ブレード構成とを併用することが考えられる。すなわちブレードは、丸い付け根部分と、より扁平な翼形部分との間の移行領域において、約0.5の比較的高い厚さ係数を有する。翼形部分における厚さ係数は、この翼形部分の最長の垂直線と翼弦長との比として定義される。約2mの直径を有する円形の付け根部分に対応するこのようなブレード構成では、接続領域における翼弦長を比較的短く抑えることにより、ブレードのより低い領域にかかる引張負荷を低減させる。スポイラは、比較的細い移行領域におけるブレードの性能を改善するように機能する。しかし、移行領域における厚さ係数が高いと、ブレードが回転するときに空気流がブレードの正圧面から離脱してしまい、その結果、ブレードの揚力係数が低下し、スポイラの有効性が減少し、ブレードの効率も低下してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それゆえ本発明の課題は、上述の問題を解消する、改善されたブレード構成を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、請求項記載の風力タービンロータブレードと、請求項記載の風力タービンと、請求項記載の空気流補正装置とによって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態のブレードの概略図である。
図2】従来技術のブレードの断面図である。
図3図1のブレードの断面図である。
図4図1のブレードにて使用される渦発生部の側面図である。
図5図1のブレードおよび従来のブレードの軸方向干渉係数の第1のグラフである。
図6図1のブレードおよび厚いブレードの軸方向干渉係数の第1のグラフである。
図7図1のブレードおよび従来の厚いブレードの性能係数のグラフである。
図8図1のブレードおよび従来のブレードの揚力係数のグラフである。
図9】本発明の2つの実施形態のブレードにおける厚さ係数と、従来の厚さ係数とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の、付け根部分と翼形部分とを有する風力タービンロータブレードは、ブレードの厚さ係数が少なくとも0.45である厚み領域と、前記ブレードの正圧面において当該厚み領域の少なくとも一部分にわたって配置された空気流補正装置と、渦発生部とを有し、前記厚み領域は、前記ブレードの内側のハブ端から外側に向かって当該ブレードの翼形部分へ延在し、前記空気流補正装置は、前記ブレードの後縁に沿って配置されたスポイラを含み、前記ブレードの揚力を増大させるように構成されており、前記渦発生部は前縁と前記後縁との間に配置されており、空気流が当該渦発生部と前記スポイラとの間に貼り付いた状態に維持するように、すなわち、前記正圧面の表面全体にわたって当該空気流が貼り付いた状態を確実に維持するように構成されている。
【0010】
本発明の風力タービンブレードの利点は、厚いブレード部分の空気力学的特性が著しく改善され、この改善により、最大でも、付け根部分と翼形部分との間の接続領域または比較的短い肩部にしか厚みブレード領域を設けることができなかった従来技術のブレードと比較して、厚いブレード構成を実現できるブレードの部分が格段に長くなり、ブレードの全長または全翼幅にわたってブレード構成を厚くすることも可能となることである。前記スポイラと前記渦発生部とは、ブレードの空気力学的特性を改善するように協働する。
【0011】
前記渦発生部または「攪拌器」は、ブレードの正圧面の表面上の境界層に空気がスポイラの方向に貼り付いた状態をより良好に維持できるようにするため、局所的な乱流を引き起こし、エネルギーが与えられた空気を混合または攪拌するように構成されている。このようにして空気流は安定化し、ブレードの後部または後縁の領域にあるスポイラに向かって前記正圧面に沿って移動しながら表面に貼り付いた状態に維持される。このようにしてスポイラは、この比較的厚いロータブレードの空気力学的特性を改善することでその目的を果たすことができる。渦発生部とスポイラとを組み合わせることにより、とりわけ、回転速度が低い大型ロータにおけるブレード断面積の典型的な範囲である5°〜25°の範囲の迎え角で、性能を改善することができる。さらに、ブレードの厚み領域は、「比較的扁平な」ブレードと比較して、全抗力の低下(摩擦抵抗および抗力のみ)と揚力係数の増大とに繋がるので(ブレードを平たくすると、風力からエネルギーを取り出すために、肩部領域においてブレード幅を広くしなければならない)、付け根部分に隣接する、ブレードの比較的低い領域において、本発明のブレードが比較的狭幅のフォームまたは形状を有するように構成することができる。また、渦発生部とスポイラとの有利な組み合わせを用いることにより、スポイラ自体を比較的小さくすることができる。というのも、渦発生部によって確実に、空気流が貼り付いた状態に維持することができ、これにより、比較的小さいスポイラでも空気流を常に「見える(捉える)」ようにできるからである。「小さいスポイラ」とは、高さが比較的小さいスポイラを指す。このような有利な効果により、より簡略的な形状の金型と、より簡略的な構成のスポイラとを用いて、より簡単な製造工程と風力負荷の低下とを実現することができ、後縁の強度がより低いがよりロバストなブレード構成を実現することができ、風力タービンの組立場所までブレードをより経済的に輸送することができるようになる。
【0012】
本発明の風力タービンブレードの他の利点として、ブレード上においてさらに外側に厚み領域が設けられていることにより、有利にはブレード剛性がより上昇し、この剛性の上昇は、本発明のブレードと塔との衝突を防止するのに役立つという利点も奏される。この厚み領域を空気流補正装置と併用することにより、ブレードが外側領域において比較的厚いにもかかわらず、正圧面の空気流が有利な状態に維持されるのを保証することができる。
【0013】
本発明の風力タービンは複数のロータブレードを有し、少なくとも1つのロータブレードが、本発明のロータブレードを含む。前記風力タービンは有利には、実質的に同一である、本発明の3つのロータブレードを有する。
【0014】
上述のような風力タービンの利点は、本発明のロータブレードの厚み領域をどれほど長くしても、揚力係数の損失が最小化し、本発明を用いずにブレードの相対的な厚さを増大させた場合に予測される抗力の増大が最小化されるということである。したがって、本発明の風力タービンが風力からエネルギーを取り出す効率はより高くなる。「厚い」ブレードの剛性がより増大することは、上述の風力タービンにおいても有利である。というのも、塔との衝突を回避するために高コストの炭素繊維を相当量含有させる必要がなくなるからである。
【0015】
風力タービン用ロータブレードにおける空気流を補正するための、本発明の空気流補正装置は、厚さ係数が少なくとも0.45である、前記ロータブレードの領域において、前記ロータブレードの正圧面に取り付けられるように構成された渦発生部とスポイラとを有し、前記渦発生部は、前記スポイラの方向に空気流が貼り付いた状態を維持するように構成されている。本発明の空気流補正装置の利点は、前記渦電流または「攪拌器」の動作を組み合わせることにより、ブレードのどのような比較的厚い領域においても、その全体にわたってブレードの揚力係数を格段に改善できることである。このような空気流補正装置は、初めからブレード構成に組み込むことができ、または、従来型の手法で既存のブレードに上述の空気流補正装置を追加することも可能である。
【0016】
従属請求項に、本発明の特に有利な実施形態および特徴が記載されており、また、これらは以下の記載においても開示されている。請求項の異なるカテゴリーの特徴を適宜組み合わせて、ここで記載していない他の実施形態を実現することも可能である。
【0017】
以下の記載では、ロータブレードが、水平軸シャフトを有する風力タービン用であり、この水平軸シャフトは、タワーの頂部に取り付けられたナセルに収容されている構成を前提とする。ブレードは、ハブから外側に向かって延在しているものとする。また以下では、「渦発生部」という用語と「攪拌器」という用語とを入れ替えて使用できるものとする。「厚み領域」との用語が以下で使用される場合には、上記にて定義したように、少なくとも0.45の厚さ係数を有する、風力タービンブレードの部分を指すものとする。「厚い」や「厚み」とは、ブレード部分の幾何学的構成を表現する厚さ係数の定義にのみ関する用語、すなわち、トランスバースと翼弦との比にのみ関する用語であり、必ずしも、厚さまたは厚みに伴ってブレードの質量または重量が増大するとは限らない。
【0018】
上記で言及したように、従来技術のブレードの厚さ係数は一般的に、翼形部分全体にわたって非常に小さく抑えられていた。典型的な「扁平な」翼形における厚さ係数(τ)は、約0.25である。一般的に、従来技術の構成は、揚力を最大限にするために、この比較的扁平な翼形部分をどのように成形するかに焦点を当てていた。このような扁平な翼形の場合、正圧面全体において空気流が分離することはないので、この観点は、従来技術のブレードの外側部分において考慮されたことがなかった。ブレードの比較的厚い部分は、円形の付け根部分が扁平な翼形部分に移行する不可避な肩部または接続領域において必要なものと見なされていた。というのも、従来技術の実用化では、ブレードのいかなる厚み部分もすべて、空気流が正圧面を通過するときに分離することに繋がるからである。それゆえ、従来技術のブレード構成は一般的に、この不可避な接続部分または肩部の長さを可能な限り短く抑えることに焦点を当てていた。
【0019】
本発明のブレードは、厚み係数が高い部分は最小限にすべき制約条件であるとの見方をやめて、厚さ係数を大きくできるようにする異なる手法に取り組むものである。よって、本発明の特に有利な実施形態では、ロータブレードはさらに、厚み領域において付け根部分と翼形部分との間に移行部分を有し、この移行部分は、翼幅の少なくとも30%まで延在し、より有利には少なくとも50%まで延在し、さらに70%以上まで延在する。上記または下記にて、「移行部分」との用語は、厚さ係数が高い値から(たとえば円形の付け根部分における1.0の値から)ブレードの翼形部分におけるより低い値まで低下していく当該ブレードの部分を指す。よって、本発明のブレードは明らかに、従来のブレードより格段に長い移行部分を有する(従来のブレードは、不可避な肩部または移行領域を可能な限り短く抑えることを課題としていた)。上述のような空気流補正装置により、ブレード翼幅の方向に外側に向かって比較的大きく出ていても、比較的厚いブレードの正圧面に空気流が貼り付いた状態に維持され、その際にはブレードの回転速度が上昇するので、迎え角は小さくなる。
【0020】
厚み領域は、前記移行部分からブレードの長さ方向に外側に相当の距離だけ突出することができ、また、厚み領域はブレードの全長にわたって延在することもできる。有利には、前記厚み領域はブレード翼幅の少なくとも30%にわたって延在し、より有利にはブレード翼幅の少なくとも50%にわたって延在し、また、ブレード翼幅の70%以上にわたって延在することもできる。これに応じて、本発明のロータブレードの別の有利な実施形態では、ブレードの翼形部分における厚さ係数は少なくとも0.45であり、より有利には少なくとも0.6である。これは、従来のブレード構成と大きく異なる点であり、従来のブレード構成では、翼形部分全体にわたって厚さ係数が小さく抑えられ、0.25〜0.3の値を超えることは希であった。本発明のロータブレードでは、ブレード長の大部分においてブレードを厚く構成することができ、前記移行部分は、「厚み領域」のうち大部分にわたって延在することができ、また、「厚み領域」全体にわたって延在することも可能である。
【0021】
本発明のロータブレードの1つの有利な実施形態では、前記渦発生部は前記厚み領域の長さ方向に延在するように配置され、特に、前記厚み領域がブレード尖端まで達しないように延在する場合、前記渦発生部は上述のように配置される。たとえば、前記厚み領域は、ハブから外側の方向にブレードの長さの2/3を超える長さにわたって延在し、ブレード翼形は、ブレードの他の残り部分にわたって通常の小さい厚さ係数を有するように構成することができる。
【0022】
ブレード上のある程度の距離において正圧面から空気流が分離してしまう傾向は、ロータブレード上のこの位置における厚さ係数に依存する。たとえば、ブレード上における距離が大きくなるほど、厚さ係数を漸次的に小さくしていき、たとえば付け根部分における1.0の値から、移行領域において0.7の値になり、ブレードに沿ってさらに外側の場所では約0.45の値に低下させることができる。ブレードに沿って比較的大きく外側に出た場所において空気流が正圧面から分離する傾向は、ハブにより近い場所よりも小さくなる。よって、本発明の特に有利な実施形態では、渦発生部は、厚さ係数が0.45を超える厚み領域の長さ方向に延在するように配置されている。
【0023】
正圧面の風上部分における流入空気流は層流であり、ロータブレードの長手軸に対して実質的に垂直に動くと見なすことができる。したがって、乱流を発生させるために有利なのは、流入空気流の移動経路が変化するように、かつ、空気流がブレードから離れないように、渦発生部が流入空気流の向きを調整するように構成することである。本発明の有利な実施形態ではこうするために、前記渦発生部は、外側に突出する複数の渦発生要素または「フィン」のオープン配列体を有する。これらの渦発生要素は有利には、ブレードに沿って直線上に配置されている。このオープン配列体により、流入空気が各渦発生要素間を通過することができる。有利には、前記渦発生要素は空気をある程度まで「妨害」することにより、空気が前記渦発生要素によって妨害されない場合に通る経路から空気を逸らして、当該渦発生要素に風の通り道を形成し、これによって、空気を「混合」する渦を生成または「引き起こす」。たとえば、渦発生部のオープン配列体の複数の渦発生要素は、流入空気流に対して実質的に平行であるが、当該空気流を偏向し、空気を混合または攪拌して乱流にする、成形された「後尾部」を有することができる。上述の実施形態に代えて択一的に、本発明の別の有利な実施形態では、前記複数の渦発生要素が配置される角度は交互に変わり、たとえば、前記複数の渦発生要素は、ジグザグ状パターンまたは交互に食い違わせたパターンに配置される。流入空気流が渦発生部に入れるようにするために有利なのは、相互に隣接する渦発生要素が適切な間隔をおいて分離されていることである。渦発生要素間の間隔は、当該渦発生要素の高さの倍数とすることができる。本発明の特に有利な実施形態では、渦発生要素は実質的に三角形の形状を有し、渦発生要素の頂点が実質的にブレードの前縁の方を向くように当該渦発生要素はブレード上に配されている。このような構成により、空気流は渦発生部から出るときだけ乱流になる。渦発生要素は任意の適切な材料から形成することができ、たとえばアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)によって形成するか、または、耐久性を実現するのに適した材料を選定してブレンドしたものにより形成することができる。
【0024】
乱流の程度は、渦発生部の寸法に依存することができ、有利には、ブレードの正圧面の後部に空気流が貼り付いた状態を維持するのに必要な程度のみの乱流を引き起こすように、渦発生部の寸法を調整する。したがって、本発明の別の有利な実施形態では、渦発生要素の高さは、ブレードの対応する翼弦長の最大2.0%であり、より有利には最大1%であり、最も有利には最大0.125%である。渦発生要素の長さは当該渦発生要素の高さから導き出すことができ、たとえば高さの4〜5倍とすることができる。本発明の空気流補正装置の1つの実施例では、翼弦長が約3mである場合には渦発生要素の高さを1.5cmとし、長さを約7cmとし、相互に隣接する渦発生要素の端部間の距離を6cmのオーダとすることができる。
【0025】
本発明の有利な実施形態では、前記ブレードの正圧面がブレードの渦発生部と後縁との間に凹面状の表面を有するように、スポイラを形成する。このような構成により、スポイラは揚力を上昇させるように機能する。有利にはスポイラは、ブレードの後縁において実質的に平坦な外側面を有する。このことは、後縁が鋭角でないことを意味し、たとえば、後縁の奥行は有意な大きさであり、かつ、後縁が翼弦に対して実質的に垂直になるようにすることができる。正圧面に凹状の内側面を有し、かつ、平坦な後縁を有する上述のようなスポイラ構成は、本発明のブレードを従来のブレードより細くすることが可能でありながら、揚力に関する性能が変わらないようにできるか、または一層改善できることを意味する。さらに、スポイラの機能を効率的に「支援」するように渦発生部を構成することにより、スポイラをより小型にすること、すなわち、スポイラの奥行または高さを小さくすることが可能になる。このことにより、製造および輸送がより簡単かつより経済的なブレードを実現することができる。
【0026】
本発明の空気流補正装置は、ロータブレードの製造中にロータブレードに形成することができる。たとえば、スポイラをブレード自体の一部として成形し、この成形手順後、ブレードをハブに取り付ける前に、ブレードの正圧面の外側面に渦発生部を埋め込むことができる。もちろん、上述の空気流補正装置を既存のブレードに組み込むことも可能である。ブレードの長さの一部に厚み領域を有するブレードであれば、どのようなブレードの性能も、この厚み領域に沿って上述の空気流補正装置を追加することにより改善することができる。そのためには、本発明の空気流補正装置において前記渦発生器は有利には、支持ストリップ部材上に取り付けられた複数の渦発生要素を有し、前記支持ストリップ部材は、ロータブレード表面に取り付けられるように構成されている。たとえば、攪拌器がブレードの曲率に沿うように、または、攪拌器が前縁または後縁との間にある程度の距離を維持できるように、上述の支持部材がある程度までフレキシブルであるようにすることができる。特に有利な実施形態では、渦発生部は、接着ストリップ部材上に取り付けられた複数の渦発生要素として構成される。同様に、スポイラを既存のブレードの後縁に取り付けられるように、または、既存のスポイラをカバーしたり既存のスポイラの代替となるようにスポイラを構成することもできる。
【0027】
ブレードが既に、上述のような厚み領域上の所定位置に設置された適切なスポイラを有する場合、渦発生部を追加するだけでも、ブレードの性能を著しく改善するのに十分である。
【0028】
図面を参照した以下の詳細な説明から、本発明の他の対象および特徴を導き出すことができる。しかし、図面は本発明を図解するためだけのものであり、本発明の範囲を規定するものと見なすべきではない。
【実施例】
【0029】
全図において、同様の符号は同様の物を表している。図面中に示された物は、必ずしも実寸の比率通りに示されているとは限らない。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態のブレード1の概略図である。ブレード1は約40m以上の長さLを有することができ、長さ80mを超えることもある。同図は翼形補正装置の配置を示しており、この装置は、ブレード1の正圧面11上に一部分に沿ってスポイラ3と渦発生部2とを有する。翼形補正装置2,3の寸法はブレードの厚さ係数に依存し、たとえば、翼形補正装置2,3をブレード上に取り付けること、および/または、厚さ係数が0.45を超えるブレードの任意の部分においてブレードの一部として成形することができる。翼形補正装置2,3はブレード1の付け根端部10近傍を出発点とする。スポイラ3はブレード1の後縁13に沿って取り付けられているのに対し、攪拌器は後縁13と前縁12との間に取り付けられている。円形の前記付け根部分10では、厚さ係数はちょうど1.0である。移行部分18では、厚さ係数は円形の付け根端部における1.0の値から、0.45を超える比較的大きな厚さ係数になるまで漸次的に低減していくことができ、この0.45以上の比較的大きな厚さ係数は、厚み領域TZの端部に至るまで維持される。図1に示された実施例のブレード1では、厚み領域TZはブレード翼幅Lの約60%まで延在する。もちろん、厚み領域TZはさらに外側に向かって翼形部分19に入り込むこともでき、また、ブレード1の全長Lにわたって延在することも可能である。
【0031】
図2は、従来技術のブレード100の断面図である。このブレードは、迎え角αの流入空気流4または「相対風」に向けられている。ブレード100がロータ平面を通るように動くと、流入空気流4はブレード100の周りに来て、ブレード100の負圧面114における空気流は、当該ブレード100の正圧面111における空気流より低い圧力を有する。図2は、翼弦線cおよび最長トランスバースtを示している。ブレード100の厚さ係数τは、比t/cである。τの値が高い場合、空気流は層流特性を正圧面111全体では維持できなくなり、その結果、ブレード断面の最低位置と後縁113との間の領域40において示されているように空気流は剥がれてしまい、どのようなスポイラ103を後縁113に取り付けても、これは有効性を欠いてしまう。というのも、層流状の空気流が表面に貼り付いているときだけスポイラは効果を発揮するからである。
【0032】
図3は、図1のブレード1の断面図である。同図でも、ブレード1は迎え角αの流入空気流4の方を向いており、ブレード1がロータ平面を通るように動くと、流入空気流4はブレード1の周りに来て、ブレードの負圧面14における空気流は、当該ブレード1の正圧面11における空気流より低い圧力を有する。断面が、上記の図2にて示された断面と同じである場合、本発明のこの実施形態のブレード1の正圧面11における空気流は、後縁13に取り付けられたスポイラ3の領域において空気流42が改善されることを特徴とする。というのも、渦41によって示されているように、渦発生部2はブレード1の正圧面11における空気流にエネルギーを与え、空気流がスポイラ3の方向に動くときにブレードの表面に貼り付いた状態に維持されること、すなわち、ブレードの表面に近接していることを、渦発生部2が有効的に保証できるからである。このことは、ブレードの表面近傍の境界層を「混合」するかまたはこの境界層にエネルギーを与える渦41のエネルギーに起因する。このようにして空気流は、スポイラ3に至るまでずっと、ブレードの正圧面に貼り付いた状態に維持される。よって、厚さ係数τが高くても、スポイラ3の有効性は保証される。渦発生部2または攪拌器2は有利には、ブレードの最低位置に隣接する場所において、すなわち、トランスバースtの片側においてスポイラ3の方向に向けて、かつ、攪拌器2がない場合に空気流が正圧面11から離れるポイントより手前に取り付けられる。
【0033】
図4は、図1のブレード1の正圧面11に取り付けられた渦発生部2の側面図である。渦発生部2は、複数の三角形の渦発生要素20の列を有し、これらの渦発生要素20は、各渦発生要素20の三角形の1角の頂点が前縁12に向けられ、かつ、各渦発生要素20の三角形の底辺が後縁13の方を向くように、ブレード1の最低位置部分に沿って延在する線の側にジグザグ状に配置されている。図中では、前記三角形要素20の高さは誇張して示されている。三角形要素20の実際の高さは、最大でブレード翼弦長の約2%である。すなわち、ブレード1に沿った上記ポイントにおける翼弦長の約2%である。三角形要素20の高さをより小さくして、ブレード翼弦の約0.125%のみにしても、空気流が正圧面に貼り付いた状態に維持されてスポイラが空気流を「捉えられる」のを保証しながら、少量の乱流を引き起こすのに十分である。
【0034】
図5は、従来技術の「薄い翼形」ブレードの、ロータブレード全長(x軸)における軸方向干渉係数「a」(曲線51の点線によって示されている)と、図1の厚いブレードの、ロータブレード全長における軸方向干渉係数「a」(曲線50の実線によって示されている)とを示す第1グラフである。軸方向干渉係数「a」は、ロータが風力からエネルギーをどの程度良好に取り出せるかを表す尺度であり、この係数は以下の数式を用いて計算することができる:
a=1−v/v
ここで、vはロータより上流の風速であり、vはロータ平面内における風速である。軸方向干渉係数の理論的な最大値は1/3となる。
【0035】
図中に示されているように、従来のブレードの軸方向干渉係数は、ブレードの比較的低位置の領域において顕著に落ち込んでいるのが観察される。この領域では、ブレードの性能は比較的低い。本発明のブレードの軸方向干渉係数の値は、ブレード全長にわたって著しく高くなっており、ブレードの比較的低位置のクリティカルな領域においても著しく高い。
【0036】
図6は、渦発生部を有さない厚いブレードの、ロータブレード全長(x軸)における軸方向干渉係数「a」(曲線61の点線によって示されている)と、図1の厚いブレードの、ロータブレード全長における軸方向干渉係数「a」(曲線60の実線によって示されており、図5の曲線50に相当する)とを示す第2のグラフである。図中にて示されているように、渦発生部を全く有さない厚いブレードの軸方向干渉係数は、ブレード長の大部分にわたって非常に低く、上記の図5にて示された従来のブレードより格段に低くなっている。このことは、空気流はブレードの正圧面から離れやすい傾向にあることによって説明することができ、上述のような軸方向干渉係数が、従来のブレードの翼形を平たく形成する理由となっている。それとは対照的に、ブレード厚み領域において渦発生部とスポイラとを併用することによって空気流を「補正」するだけで、本発明のブレードの軸方向干渉係数の値は、ブレードの全長にわたって著しく高くなっている。
【0037】
図7は、特定のピッチ角または迎え角の場合の、渦発生部を有さない厚いブレードの、ブレード翼幅全体(x軸)における性能係数c(曲線71の点線により示されている)と、図1のブレードの、ブレード翼幅全体における性能係数c(曲線70の平坦線により示されている)とを示すグラフである。性能係数cは、風力から取り出される電力と「使用可能」電力との比であり、理論的最大値は約0.59であるが、実際の風力タービンブレードでは、最大0.5が現実的である。同図にて示されているように、厚いブレードに渦発生部が無いと、ブレード長の約半分までのブレードの比較的低位置の領域において性能が明らかに低くなる。渦発生部とスポイラとを併用する本発明のブレードにより実現される性能係数cは、ブレードの厚み領域全体にわたって格段に高くなり、実際の値は、全長の大部分にわたって最大0.5に近い値にまで達する。曲線70,71は、ブレード翼幅の他の残りの部分において合流する。
【0038】
図8は、渦発生部を有さない厚いブレードの、迎え角(x軸)に対する揚力係数c(曲線81の点線により示されている)と、図1のブレードの、迎え角に対する揚力係数c(曲線80の平坦線により示されている)とを示すグラフである。非常に低い迎え角や負の迎え角でも、本発明のブレードにより実現される揚力係数は、渦発生部を全く有さない厚いブレードの揚力係数より高くなる。このことは、正圧面上を通過する空気に渦発生器が及ぼす好影響によって説明することができる。すなわち、攪拌器によって乱流が引き起こされることにより、空気が貼り付いた状態でスポイラの方向に流れる状態が維持され、これにより、スポイラは機能を発揮することができ、ブレード揚力が上昇する結果となる。本発明のブレードの有利な性能は、最大約25°の迎え角でも続く。
【0039】
図9は、従来のブレードのブレード長に対する厚さ係数τ(曲線91の破線により示されている)と、本発明の2つの実施形態のブレードの、ブレード長に対する厚さ係数τ(曲線90および90′の平坦線により示されている)とを示すグラフである。従来のブレードは、ブレード長の大部分において翼形が扁平であることを特徴とし、このような扁平な翼形を有する従来のブレードの厚さ部分はすべて、円形の付け根部分と翼形との間の不可避でありかつ短い移行領域に、ブレード台またはブレードハブ端部に近接する場所に制限され、ブレード全長の約10〜20%に制限されていた。それゆえ、従来のブレードの長さの大部分にわたって、ブレードの厚さ係数τは0.25以下であった。本発明の実施形態の、空気流が正圧面に貼り付いた状態を保証するために厚み領域にわたって設置された渦発生部およびスポイラを有する厚いブレードは、ブレード長の大部分において最大約0.5の厚さ係数τを有することができ(曲線90)、また、最大約0.6の厚さ係数τを有することも可能である(曲線90′)。図中に示されているように、本発明のブレード構成は、付け根部分を超えると直ぐに厚さ係数を低減することを意図したものではなく、本発明のブレード構成は、移行部分18全体にわたって厚さ係数を比較的高く維持し、ブレード長の約5%〜50%の比較的長い一部領域においては厚さ係数を徐々に低下させていくことを可能としたものであり、翼形部分19全体にわたって厚さ係数を高く維持することも可能にする。
【0040】
有利な実施形態およびその改良形態の形で本発明を開示したが、その他にも、本発明の範囲を逸脱することなく、数多くの更なる修正および変更を施すことが可能であることは明らかである。
【0041】
本願全体において、「1つ」との用語を使用した場合には複数であることを除外するものではなく、また、「有する」/「含む」との用語は、他のステップや構成要素を除外するものではないと解すべきである。
【符号の説明】
【0042】
1 ブレード
2 渦発生部
3 スポイラ
10 付け根部分
11 正圧面
12 前縁
13 後縁
TZ 厚み領域
L ブレード1の全長/翼幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9