特許第6656789号(P6656789)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6656789
(24)【登録日】2020年2月7日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】信号処理装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 7/04 20060101AFI20200220BHJP
【FI】
   A61B7/04 U
   A61B7/04ZDM
【請求項の数】7
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-224229(P2013-224229)
(22)【出願日】2013年10月29日
(65)【公開番号】特開2015-84853(P2015-84853A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】三浦 友博
(72)【発明者】
【氏名】亀谷 隆真
(72)【発明者】
【氏名】石戸谷 耕一
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 剛
【審査官】 牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−117591(JP,A)
【文献】 特開2004−008370(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/089073(WO,A1)
【文献】 特開2000−116785(JP,A)
【文献】 特開2012−035056(JP,A)
【文献】 特開平11−004813(JP,A)
【文献】 特開2012−157558(JP,A)
【文献】 特開2001−061814(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/008264(WO,A1)
【文献】 特開昭57−139324(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/068145(WO,A1)
【文献】 特表2002−512822(JP,A)
【文献】 特開2013−123495(JP,A)
【文献】 特開2007−190082(JP,A)
【文献】 特表2011−519294(JP,A)
【文献】 特開平05−115445(JP,A)
【文献】 特開2004−033254(JP,A)
【文献】 特開2007−135611(JP,A)
【文献】 特表2004−531309(JP,A)
【文献】 特開2013−123496(JP,A)
【文献】 特表平4−504966(JP,A)
【文献】 特開2009−261463(JP,A)
【文献】 特表2007−532156(JP,A)
【文献】 特表2001−523136(JP,A)
【文献】 特開2005−160644(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/021229(WO,A1)
【文献】 特開2002−102184(JP,A)
【文献】 米国特許第6629933(US,B1)
【文献】 国際公開第2004/097708(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 7/00 − 7/04
A61B 5/00 − 5/01
A61B 5/06 − 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された周期性を有する呼吸音信号に含まれる呼吸音成分及び副雑音成分を検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した前記呼吸音成分の瞬時値とピーク値とを示す第1の表示物、及び前記副雑音成分の瞬時値とピーク値とを示す第2の表示物を、表示装置の表示部の異なる領域に並べて表示されるように出力する出力手段と
を備え
前記ピーク値は、呼吸の周期毎の瞬時値の最大値を示すものであることを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
入力された周期性を有する呼吸音信号に含まれる連続性ラ音成分及び断続性ラ成分を検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した前記連続性ラ音成分の瞬時値とピーク値とを示す第1の表示物、及び前記断続性ラ成分の瞬時値とピーク値とを示す第2の表示物を、表示装置の表示部の異なる領域に並べて表示されるように出力する出力手段と
を備え
前記ピーク値は、呼吸の周期毎の瞬時値の最大値を示すものであることを特徴とする信号処理装置。
【請求項3】
入力された周期性を有する呼吸音信号に含まれる連続性ラ音成分である類鼾音成分及び笛声音成分を検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した前記類鼾音成分の瞬時値とピーク値とを示す第1の表示物、及び前記笛声音成分の瞬時値とピーク値とを示す第2の表示物を、表示装置の表示部の異なる領域に並べて表示されるように出力する出力手段と
を備え
前記ピーク値は、呼吸の周期毎の瞬時値の最大値を示すものであることを特徴とする信号処理装置。
【請求項4】
入力された周期性を有する呼吸音信号に含まれる断続性ラ音成分である捻髪音成分及び水泡音成分を検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した前記捻髪音成分の瞬時値とピーク値とを示す第1の表示物、及び前記水泡音成分の瞬時値とピーク値とを示す第2の表示物を、表示装置の表示部の異なる領域に並べて表示されるように出力する出力手段と
を備え
前記ピーク値は、呼吸の周期毎の瞬時値の最大値を示すものであることを特徴とする信号処理装置。
【請求項5】
入力された周期性を有する呼吸音信号に含まれる呼吸音成分、類鼾音成分、笛声音成分、捻髪音成分及び水泡音成分を検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した前記呼吸音成分の瞬時値とピーク値とを示す第1の表示物、前記類鼾音成分の瞬時値とピーク値とを示す第2の表示物、前記笛声音成分の瞬時値とピーク値とを示す第3の表示物、前記捻髪音成分の瞬時値とピーク値とを示す第4の表示物、及び前記水泡音成分の瞬時値とピーク値とを示す第5の表示物を、表示装置の表示部の異なる領域に並べて表示されるように出力する出力手段と
を備え、
前記ピーク値は、呼吸の周期毎の瞬時値の最大値を示すものであることを特徴とする信号処理装置。
【請求項6】
前記瞬時値は、呼吸の周期毎のあるタイミングの一つの値を示すものであり、
前記検出手段は、呼吸の周期を検出し、
前記出力手段は、前記呼吸の周期が変わるごとに前記表示装置に表示される前記ピーク値が変更されるように出力する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の信号処理装置。
【請求項7】
入力された周期性を有する呼吸音信号に含まれる呼吸音成分及び副雑音成分を検出する検出工程と、
前記検出工程において検出された前記呼吸音成分の瞬時値とピーク値とを示す第1の表示物、及び前記副雑音成分の瞬時値とピーク値とを示す第2の表示物を、表示装置の表示部の異なる領域に並べて表示されるように出力する出力工程と
を備え、
前記ピーク値は、呼吸の周期毎の瞬時値の最大値を示すものであることを特徴とする信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば呼吸音信号等の入力信号を処理する信号処理装置及び方法、並びにコンピュータプログラム及び記録媒体の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸音等の生体音は、医師が生体の病態を診断する際の指標の一つとして用いられる。このため、医師等の医療従事者による病態の診断を好適に補助するために、生体音の特性(例えば、信号強度)を表示する(言い換えれば、生体音を可視化する)表示装置が提案されている。表示装置が生体音の特性を表示することで、医療従事者は、生体音を好適に又は比較的容易に認識することができる。
【0003】
尚、本発明に関連する先行技術文献として、特許文献1から特許文献3があげられる。特許文献1には、生体音を示す生体音信号を表示する表示装置ではないものの、使用者が映像を見ながら決定した任意期間(例えば、映像シーン単位)のピークレベル表示を行うモニターが開示されている。特許文献2には、生体音を示す生体音信号を表示する表示装置ではないものの、アナログの入力信号のピーク値を所定のピークホールド時間だけホールドして表示する際に、ピークホールド時間を可変に設定する表示制御装置が開示されている。特許文献3には、生体音を示す生体音信号を表示する表示装置ではないものの、表示中のピークレベルよりも入力信号の値が小さい場合には、ピークレベルを時間経過に伴って降下量を増大させて表示する表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−69549号公報
【特許文献2】特開平5−157578号公報
【特許文献3】特開平9−26332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医療従事者が病態を診断するためには、生体音の特性のピーク値(例えば、最大値)が有益な情報となり得る。従って、生体音の特性を表示する表示装置は、生体音の特性のピーク値を表示することが好ましい。
【0006】
ところで、生体音は、周期性を有する(つまり、特性が周期的に変化する)ことが多い。つまり、生体音は、その特性が周期的に増減を繰り返しながら変化するという周期性を有することが多い。この場合には、医療従事者による病態の診断を好適に補助するためには、表示装置は、周期毎のピーク値を表示することが好ましい。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のモニターは、このような周期性を考慮することなく、ユーザが指定した任意期間のピークレベル表示を行う。従って、生体音の周期とユーザが指定した任意期間とが一致しない(又は、同期しない)場合には、生体音が安定している場合であっても、当該生体音の特性のピーク値の表示が大きく変動するおそれがある。このため、特許文献1に記載のモニターは、医療従事者による病態の診断を好適に補助することができる態様で生体音の特性のピーク値を表示することができないという技術的な問題点を有する。
【0008】
同様に、特許文献2に記載の表示制御装置は、このような周期性を考慮することなく、所定のピークホールド時間だけピーク値をホールドして表示する。従って、生体音の周期と可変に設定可能なピークホールド時間とが一致しない(又は、同期しない)場合には、生体音が安定している場合であっても、当該生体音の特性のピーク値の表示が大きく変動するおそれがある。このため、特許文献2に記載の表示制御装置は、医療従事者による病態の診断を好適に補助することができる態様で生体音の特性のピーク値を表示することができないという技術的な問題点を有する。
【0009】
同様に、特許文献3に記載の表示装置は、このような周期性を考慮することなく、一定期間毎の入力信号のピークレベルを表示する。従って、生体音の周期と一定期間とが一致しない(又は、同期しない)場合には、生体音が安定している場合であっても、当該生体音の特性のピーク値の表示が大きく変動するおそれがある。このため、特許文献3に記載の表示装置は、医療従事者による病態の診断を好適に補助することができる態様で生体音の特性のピーク値を表示することができないという技術的な問題点を有する。
【0010】
更には、生体音の各周期は、生体音の特性に応じて更に細分化されることがある。例えば、生体音の一例である呼吸音に着目すると、呼吸音の各周期は、呼気が行われる期間と吸気が行われる期間とに細分化されることがある。このような周期が細分化される場合には、表示装置は、細分化された期間毎のピーク値を表示することが好ましい。しかしながら、上述したように、特許文献1から特許文献3に記載された技術は、このような周期の細分化を考慮していないがゆえに、医療従事者による病態の診断を好適に補助することができる態様で生体音の特性のピーク値を表示することができないという技術的な問題点を有する。
【0012】
本発明は、例えば前述した従来の問題点に鑑みなされたものであり、例えばより見やすい態様で入力信号の特性を表示することが可能な信号処理装置及び方法、並びにコンピュータプログラム及び記録媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、第1の信号処理装置は、入力された周期性を有する呼吸音信号に含まれる呼吸音成分及び副雑音成分を検出する検出手段と、前記検出手段が検出した前記呼吸音成分の瞬時値とピーク値とを示す第1の表示物、及び前記副雑音成分の瞬時値とピーク値とを示す第2の表示物を、表示装置の表示部の異なる領域に並べて表示されるように出力する出力手段とを備え、前記瞬時値は、呼吸の周期毎のあるタイミングの一つの値を示すものであり、前記ピーク値は、呼吸の周期毎の瞬時値の最大値を示すものである
【0014】
上記課題を解決するために、第2の信号処理装置は、入力された周期性を有する呼吸音信号に含まれる連続性ラ音成分及び断続性ラ成分を検出する検出手段と、前記検出手段が検出した前記連続性ラ音成分の瞬時値とピーク値とを示す第1の表示物、及び前記断続性ラ成分の瞬時値とピーク値とを示す第2の表示物を、表示装置の表示部の異なる領域に並べて表示されるように出力する出力手段とを備え、前記瞬時値は、呼吸の周期毎のあるタイミングの一つの値を示すものであり、前記ピーク値は、呼吸の周期毎の瞬時値の最大値を示すものである
上記課題を解決するために、第3の信号処理装置は、入力された周期性を有する呼吸音信号に含まれる連続性ラ音成分である類鼾音成分及び笛声音成分を検出する検出手段と、前記検出手段が検出した前記類鼾音成分の瞬時値とピーク値とを示す第1の表示物、及び前記笛声音成分の瞬時値とピーク値とを示す第2の表示物を、表示装置の表示部の異なる領域に並べて表示されるように出力する出力手段とを備え、前記瞬時値は、呼吸の周期毎のあるタイミングの一つの値を示すものであり、前記ピーク値は、呼吸の周期毎の瞬時値の最大値を示すものである。
上記課題を解決するために、第4の信号処理装置は、入力された周期性を有する呼吸音信号に含まれる断続性ラ音成分である捻髪音成分及び水泡音成分を検出する検出手段と、前記検出手段が検出した前記捻髪音成分の瞬時値とピーク値とを示す第1の表示物、及び前記水泡音成分の瞬時値とピーク値とを示す第2の表示物を、表示装置の表示部の異なる領域に並べて表示されるように出力する出力手段とを備え、前記瞬時値は、呼吸の周期毎のあるタイミングの一つの値を示すものであり、前記ピーク値は、呼吸の周期毎の瞬時値の最大値を示すものである。
上記課題を解決するために、第5の信号処理装置は、入力された周期性を有する呼吸音信号に含まれる呼吸音成分、類鼾音成分、笛声音成分、捻髪音成分及び水泡音成分を検出する検出手段と、前記検出手段が検出した前記呼吸音成分の瞬時値とピーク値とを示す第1の表示物、前記類鼾音成分の瞬時値とピーク値とを示す第2の表示物、前記笛声音成分の瞬時値とピーク値とを示す第3の表示物、前記捻髪音成分の瞬時値とピーク値とを示す第4の表示物、及び前記水泡音成分の瞬時値とピーク値とを示す第5の表示物を、表示装置の表示部の異なる領域に並べて表示されるように出力する出力手段とを備え、前記ピーク値は、呼吸の周期毎の瞬時値の最大値を示すものである。
【0015】
上記課題を解決するために、第1の信号処理方法は、入力された周期性を有する呼吸音信号に含まれる呼吸音成分及び副雑音成分を検出する検出工程と、前記検出工程において検出された前記呼吸音成分の瞬時値とピーク値とを示す第1の表示物、及び前記副雑音成分の瞬時値とピーク値とを示す第2の表示物を、表示装置の表示部の異なる領域に並べて表示されるように出力する出力工程とを備え、前記ピーク値は、呼吸の周期毎の瞬時値の最大値を示すものである
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施例の信号処理装置の構成を示すブロック図である。
図2】本実施例の信号処理装置の動作の流れを示すフローチャートである。
図3】信号取得部の生体に対する装着態様の一例を示す模式図及び呼吸音信号の波形を時間軸上で示すグラフである。
図4】信号記憶部が呼吸音信号を記憶する動作の一例を示す模式図である。
図5】呼吸音の種類を示す分類チャートである。
図6】5種類の呼吸音(肺胞呼吸音、低音性連続性ラ音(類鼾音)、高音性連続性ラ音(笛声音)、細かい断続性ラ音(捻髪音)及び粗い断続性ラ音(水泡音))に相当する5種類の信号成分の波形を時間軸上で示すグラフである。
図7】周期判定処理の第1の態様を呼吸音信号の波形と共に示すグラフである。
図8】周期判定処理の第2の態様を呼吸音信号の波形と共に示すグラフである。
図9】ピークホールド処理の一の態様を5種類の信号成分の波形と共に示すグラフである。
図10】ピークホールド処理の一の態様を1種類の信号成分(肺胞呼吸音成分)の波形と共に示すグラフである。
図11】呼吸音信号を構成する5種類の信号成分の夫々の特性の表示態様の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、信号処理装置及び方法、並びにコンピュータプログラム及び記録媒体の実施形態について順に説明する。
【0023】
(信号処理装置の実施形態)
<1>
第1実施形態の信号処理装置は、周期性を有する入力信号の周期を認識する認識手段と、前記認識手段が認識した前記周期に基づいて、n(但し、nは1以上の整数)個の連続する周期毎に、前記入力信号の特徴値を検出する検出手段と、前記検出手段が検出した前記特徴値を表示装置に表示するための表示データを、前記表示装置に出力する出力手段とを備える。
【0024】
第1実施形態の信号処理装置は、入力信号の特性(つまり、入力信号の状態を特定することが可能な任意の指標であって、例えば、信号強度)を表示装置に表示するための信号処理を行う。つまり、第1実施形態の信号処理装置は、入力信号の特性を視覚的に特定することが可能な何らかの表示対象物を表示装置に表示するための信号処理を行う。
【0025】
第1実施形態の信号処理装置が行う信号処理の対象となる入力信号は、周期性を有する。ここに、「周期性」とは、特性(典型的には、信号強度)が周期的に変化する性質を意味する。より具体的には、「周期性」とは、特性が周期的に増減を繰り返しながら変化する性質を意味する。言い換えれば、「周期性」とは、特性が同一の若しくは類似する態様で又は同一の若しくは類似する傾向で繰り返し変化する性質を意味する。
【0026】
特に、第1実施形態の信号処理装置は、入力信号の特性を表示装置に表示するための信号処理を行うために、認識手段と、検出手段と、出力手段とを少なくとも備えている。
【0027】
認識手段は、入力信号の周期を認識する。ここで言う「周期」は、入力信号の特性の繰り返しの変化のうちの1回の変化に要する期間を意味している。従って、入力信号の特性の同一態様での変化が複数回繰り返される場合には、当該同一態様での1回の変化に要する期間が周期となる。
【0028】
尚、第1実施形態では、入力信号の周期は、常に一定であってもよい。この場合、認識手段は、入力信号の周期として、常に一定の周期(つまり、期間)を継続的に認識することになる。例えば、認識手段は、第1のタイミングでの周期が第1の周期であると認識した後に、第1のタイミングに続く第2のタイミングでの周期が第1の周期であると続けて認識することになる。
【0029】
或いは、入力信号の周期は、時間の経過と共に変動してもよい。この場合、認識手段は、入力信号の周期として、時間の経過と共に変動する周期(つまり、期間)を継続的に認識することになる。例えば、認識手段は、第1のタイミングでの周期が第1の周期であると認識した後に、第1のタイミングに続く第2のタイミングでの周期が第1の周期とは異なる第2の周期であると認識することになる。
【0030】
検出手段は、認識手段が認識した入力信号の周期に基づいて、入力信号の特徴値(つまり、入力信号の特性の特徴を直接的に又は間接的に示す任意の指標であって、例えば、最大値及び最小値等のピーク値や平均値等)を検出する。特に、第1実施形態では、検出手段は、n個の連続する周期(つまり、認識手段が継続的に認識したn個の連続する周期)毎に、入力信号の特徴値を検出する。言い換えれば、検出手段は、n個の連続する周期毎の入力信号の特徴値を検出する。更に言い換えれば、検出手段は、n個の連続する周期に相当する期間毎に、入力信号の特徴値を検出する。つまり、検出手段は、入力信号の周期に同期する期間毎に、入力信号の特徴値を検出する。
【0031】
出力手段は、検出手段が検出した特徴値を表示装置に表示するための表示データを、表示装置に出力する。その結果、表示装置は、検出手段が検出した特徴値を表示する。つまり、表示装置は、検出手段が検出した特徴値を視覚的に特定することが可能な何らかの表示対象物を表示することで、入力信号の特性を表示することができる。
【0032】
このように、第1実施形態では、検出手段による特徴値の検出の対象となる期間は、n個の連続する周期に一致する。つまり、検出手段による特徴値の検出の対象となる期間は、n個の連続する周期に同期する。従って、第1実施形態では、特徴値の検出の対象となる期間の始点は、認識手段が認識した周期の始点と一致する。同様に、第1実施形態では、特徴値の検出の対象となる期間の終点は、認識手段が認識した周期の終点と一致する。というのも、入力信号の周期が時間の経過と共に変動しようがしなかろうが、n個の連続する周期の始点はn個の連続する周期のうちの最初の周期の始点に一致し且つn個の連続する周期の終点はn個の連続する周期のうちの最後の周期の終点に一致するからである。その結果、検出手段は、入力信号の周期と好適に対応付けられた入力信号の特徴値を検出することができる。言い換えれば、表示装置は、入力信号の周期と好適に対応付けられた入力信号の特徴値を表示することができる。
【0033】
仮に常に一定の期間毎に検出手段が入力信号の特徴値を検出するとする。この場合、特徴値の検出の対象となる期間は、入力信号の周期に同期するとは限らない。或いは、仮にあるタイミングで認識した周期をn倍することで得られる期間毎に検出手段が入力信号の特徴値を検出するとする。この場合もまた、特徴値の検出の対象となる期間は、入力信号の周期に同期するとは限らない。なぜならば、入力信号の周期が常に一定であるとは限らないからである。従って、これらの場合には、入力信号の周期と特徴値の検出の対象となる期間との間に時間的なずれが生じてしまうおそれがある。その結果、検出手段は、入力信号の周期と好適に対応付けられた入力信号の特徴値を検出することができなくなってしまう。言い換えれば、検出手段は、入力信号の周期に関係なく区切られた期間毎の入力信号の特徴値しか検出することができなくなってしまう。その結果、入力信号が安定している場合であっても、当該入力信号の特徴値が大きく変動するおそれがある。
【0034】
しかるに、第1実施形態では、検出手段は、n個の連続する周期毎(つまり、n個の連続する周期に相当する期間毎)に、入力信号の特徴値を検出する。このため、入力信号の周期がどのような周期であったとしても、入力信号の周期と特徴値の検出の対象となる期間との間に時間的なずれが生じてしまうおそれは殆ど又は全くない。その結果、検出手段は、入力信号の周期と好適に対応付けられた入力信号の特徴値を検出することができる。言い換えれば、検出手段は、入力信号の周期に同期する期間毎の入力信号の特徴値を検出することができる。更に言い換えれば、検出手段は、入力信号の周期に同期したタイミングで、入力信号の特徴値を新たに検出する(つまり、更新する)ことができる。その結果、表示装置は、入力信号の周期に同期する期間(つまり、n個の連続する周期に相当する期間)毎の入力信号の特徴値を表示することができる。言い換えれば、表示装置は、入力信号の周期に同期して更新される入力信号の特徴値を表示することができる。従って、表示装置を観察する観察者(例えば、医師等の医療従事者)は、入力信号の周期に同期する期間(つまり、n個の連続する周期に相当する期間)毎の入力信号の特徴値を好適に認識することができる。言い換えれば、観察者は、入力信号の周期に同期して更新される入力信号の特徴値を好適に認識することができる。
【0035】
このように、第1実施形態の信号処理装置によれば、入力信号の特性が好適に表示される。
【0036】
<2>
第1実施形態の信号処理装置の他の態様では、前記入力信号は、生体の活動に起因した音に相当する生体音信号であり、前記周期は、繰り返し複数回行われる生体の活動のうちの1回の活動に要する期間である。
【0037】
この態様によれば、信号処理装置は、生体音信号に対して上述した信号処理を行うことができる。
【0038】
尚、生体音信号として、例えば、生体の呼吸という活動に起因した呼吸音に相当する呼吸音信号が一例としてあげられる。このような呼吸音信号の周期は、繰り返し行われる呼吸のうちの1回の呼吸に要する期間であってもよい。或いは、生体音信号として、例えば、生体の心臓の拍動という活動に起因した心音に相当する心音信号が一例としてあげられる。このような心音信号の周期は、繰り返し行われる心臓の拍動のうち1回の拍動に要する期間であってもよい。或いは、生体音信号として、例えば、生体の心臓の拍動という活動に起因した脈動音に相当する脈動音信号や、生体の心臓の拍動という活動に起因した血流音に相当する血流音信号が一例としてあげられる。脈動音信号及び血流音信号の周期は、心音信号の周期と同様であってもよい。
【0039】
<3>
第1実施形態の信号処理装置の他の態様では、前記入力信号は、生体の呼吸音に相当する呼吸音信号であり、前記周期は、1回の連続する呼気及び吸気に要する期間である。
【0040】
この態様によれば、信号処理装置は、呼吸音信号に対して上述した信号処理を行うことができる。
【0041】
<4>
第1実施形態の信号処理装置の他の態様では、前記入力信号の周期は、時間の経過と共に変動する。
【0042】
この態様によれば、検出手段は、入力信号の周期が変動する場合であっても、入力信号の周期と好適に対応付けられた入力信号の特徴値を検出することができる。その結果、表示装置は、入力信号の周期が変動する場合であっても、入力信号の周期に同期する期間毎の入力信号の特徴値を表示することができる。
【0043】
<5>
第1実施形態の信号処理装置の他の態様では、前記認識手段は、前記入力信号を解析することで前記周期を検出する外部の装置から前記周期の通知を受けることで、前記周期を認識する。
【0044】
この態様によれば、認識手段は、周期を認識するために、認識手段自身(言い換えれば、認識手段を備える信号処理装置自身)で入力信号を解析しなくともよくなる。従って、信号処理装置における処理負荷が低減される。更には、外部の装置の性能を向上させれば、認識手段は、性能の向上に限界がある信号処理装置自身(つまり、認識手段自身)が入力信号を解析することで認識する周期と比較して、高精度な周期を認識することができる。
【0045】
<6>
第1実施形態の信号処理装置の他の態様では、前記出力手段は、前記検出手段が前記特徴値を新たに検出する都度、前記検出手段が過去に検出した前記特徴値に代えて前記検出手段が新たに検出した前記特徴値を前記表示装置に表示するための前記表示データを、前記表示手段に出力する。
【0046】
この態様によれば、出力手段は、最新の特徴値を表示装置に表示するための表示データを、表示手段に出力する。従って、表示装置には、入力信号の最新の特徴値が、適宜更新されながら表示される。従って、観察者は、入力信号の周期に同期して更新される入力信号の特徴値を好適に認識することができる。
【0047】
<7>
第2実施形態の信号処理装置は、周期性を有する入力信号の各周期を細分化することで得られる細分化期間を認識する認識手段と、前記認識手段が認識した前記細分化期間に基づいて、m(但し、mは1以上の整数)個の連続する細分化期間毎に、前記入力信号の特徴値を検出する検出手段と、前記検出手段が検出した前記特徴値を表示装置に表示するための表示データを、前記表示装置に出力する出力手段とを備える。
【0048】
第2実施形態の信号処理装置は、第1実施形態の信号処理装置と同様に、入力信号の特性を表示装置に表示するための信号処理を行う。
【0049】
第2実施形態の信号処理装置は、第1実施形態の信号処理装置と比較して、認識手段が、入力信号の周期を認識することに代えて、入力信号の周期を細分化することで得られる細分化期間を認識するという点において異なっている。更に、第2実施形態の信号処理装置は、第1実施形態の信号処理装置と比較して、検出手段が、n個の連続する周期毎に入力信号の特徴値を検出することに代えて、m個の連続する細分化期間毎に入力信号の特徴値を検出するという点において異なっている。第2実施形態の信号処理装置のその他の構成要素は、第1実施形態の信号処理装置のその他の構成要素と同一であってもよい。
【0050】
ここで、「細分化期間」とは、周期を入力信号の特性に応じて細分化することで得られる期間を意味する。例えば、細分化期間は、周期を入力信号の変化の傾向(典型的には、入力信号の信号強度の時間的変化の傾向)に応じて細分化することで得られる期間を意味していてもよい。従って、第2実施形態では、認識手段が認識する各周期は、一又は複数の細分化期間を含んでいる。
【0051】
このように、第2実施形態では、検出手段による特徴値の検出の対象となる期間は、m個の連続する細分化期間に一致する。つまり、検出手段による特徴値の検出の対象となる期間は、m個の連続する細分化期間に同期する。従って、第2実施形態では、特徴値の検出の対象となる期間の始点は、認識手段が認識した細分化期間の始点と一致する。同様に、第2実施形態では、特徴値の検出の対象となる期間の終点は、認識手段が認識した細分化期間の終点と一致する。というのも、入力信号の周期が時間の経過と共に変動しようがしなかろうが、m個の連続する細分化期間の始点はm個の連続する細分化期間のうちの最初の細分化期間の始点に一致し且つm個の連続する細分化期間の終点はm個の連続する細分化期間のうちの最後の細分化期間の終点に一致するからである。その結果、検出手段は、入力信号の周期を細分化することで得られる細分化期間と好適に対応付けられた入力信号の特徴値を検出することができる。言い換えれば、表示装置は、入力信号の周期を細分化することで得られる細分化期間と好適に対応付けられた入力信号の特徴値を表示することができる。
【0052】
仮に常に一定の期間毎に検出手段が入力信号の特徴値を検出するとする。この場合、特徴値の検出の対象となる期間は、細分化期間に同期するとは限らない。或いは、仮にある時点で認識した細分化期間をm倍することで得られる期間毎に検出手段が入力信号の特徴値を検出するとする。この場合もまた、特徴値の検出の対象となる期間は、細分化期間に同期するとは限らない。なぜならば、細分化期間が常に一定であるとは限らないからである。従って、これらの場合には、細分化期間と特徴値の検出の対象となる期間との間に時間的なずれが生じてしまうおそれがある。その結果、検出手段は、細分化期間と好適に対応付けられた入力信号の特徴値を検出することができなくなってしまう。言い換えれば、検出手段は、細分化期間に関係なく区切られた期間毎の入力信号の特徴値しか検出することができなくなってしまう。
【0053】
しかるに、第2実施形態では、検出手段は、m個の連続する細分化期間毎に、入力信号の特徴値を検出する。このため、細分化期間がどのような期間であったとしても、細分化期間と特徴値の検出の対象となる期間との間に時間的なずれが生じてしまうおそれは殆ど又は全くない。その結果、検出手段は、細分化期間と好適に対応付けられた入力信号の特徴値を検出することができる。言い換えれば、検出手段は、細分化期間に同期する期間毎の入力信号の特徴値を検出することができる。更に言い換えれば、検出手段は、細分化期間に同期したタイミングで、入力信号の特徴値を新たに検出する(つまり、更新する)ことができる。その結果、表示装置は、細分化期間に同期する期間(つまり、m個の連続する細分化期間)毎の入力信号の特徴値を表示することができる。言い換えれば、表示装置は、細分化期間に同期して更新される入力信号の特徴値を表示することができる。従って、表示装置を観察する観察者(例えば、医師等の医療従事者)は、細分化期間に同期する期間(つまり、m個の連続する細分化期間)毎の入力信号の特徴値を好適に認識することができる。言い換えれば、観察者は、細分化期間に同期して更新される入力信号の特徴値を好適に認識することができる。
【0054】
このように、第2実施形態の信号処理装置によれば、入力信号の特性が好適に表示される。
【0055】
<8>
第2実施形態の信号処理装置の他の態様では、前記入力信号は、生体の活動に起因した音に相当する生体音信号であり、前記周期は、繰り返し複数回行われる生体の活動のうちの1回の活動に要する期間であり、前記複数の細分化期間は、前記1回の活動を当該1回の活動の態様に応じて細分化することで得られる複数の細分化期間である。
【0056】
この態様によれば、信号処理装置は、生体音信号に対して上述した信号処理を行うことができる。
【0057】
尚、生体音信号として、呼吸音信号や、心音信号や、脈動音信号や、血流音信号が一例としてあげられるのは上述したとおりである。呼吸音信号の細分化期間は、繰り返し行われる呼吸のうちの1回の呼吸に要する期間を当該1回の呼吸の態様に応じて細分化することで得られる期間(例えば、呼気が行われる期間及び吸気が行われる期間)であってもよい。或いは、心音信号、脈動音信号及び血流音信号の周期は、繰り返し行われる心臓の拍動のうち1回の拍動に要する期間を当該1回の拍動の態様に応じて細分化することで得られる期間(例えば、心室が収縮する期間及び心室が収縮する期間)であってもよい。
【0058】
<9>
第2実施形態の信号処理装置の他の態様では、前記入力信号は、生体の呼吸音に相当する生体音信号であり、前記周期は、1回の連続する呼気及び吸気に要する期間であり、前記複数の細分化期間は、呼気が行われている期間及び吸気が行われている期間を含む。
【0059】
この態様によれば、信号処理装置は、呼吸音信号に対して上述した信号処理を行うことができる。
【0060】
<10>
第2実施形態の信号処理装置の他の態様では、前記入力信号の周期は、時間の経過と共に変動する。
【0061】
この態様によれば、検出手段は、入力信号の周期が変動する場合であっても、入力信号の周期を細分化することで得られる細分化期間と好適に対応付けられた入力信号の特徴値を検出することができる。その結果、表示装置は、入力信号の周期が変動する場合であっても、入力信号の周期を細分化することで得られる細分化期間に同期する期間毎の入力信号の特徴値を表示することができる。
【0062】
<11>
第2実施形態の信号処理装置の他の態様では、前記認識手段は、前記入力信号を解析することで前記細分化期間を検出する外部の装置から前記細分化期間の通知を受けることで、前記細分化期間を認識する。
【0063】
この態様によれば、認識手段は、細分化期間を認識するために、認識手段自身(言い換えれば、認識手段を備える信号処理装置自身)で入力信号を解析しなくともよくなる。従って、信号処理装置における処理負荷が低減される。更には、外部の装置の性能を向上させれば、認識手段は、性能の向上に限界がある信号処理装置自身(つまり、認識手段自身)が入力信号を解析することで認識する周期と比較して、高精度な周期を認識することができる。
【0064】
<12>
第2実施形態の信号処理装置の他の態様では、前記出力手段は、前記検出手段が前記特徴値を新たに検出する都度、前記検出手段が過去に検出した前記特徴値に代えて前記検出手段が新たに検出した前記特徴値を前記表示装置に表示するための前記表示データを、前記表示手段に出力する。
【0065】
この態様によれば、出力手段は、最新の特徴値を表示装置に表示するための表示データを、表示手段に出力する。従って、表示装置には、入力信号の最新の特徴値が、適宜更新されながら表示される。従って、観察者は、入力信号の周期に同期して更新される入力信号の特徴値を好適に認識することができる。
【0066】
(信号処理方法の実施形態)
<13>
第1実施形態の信号処理方法は、周期性を有する入力信号の周期を認識する認識工程と、前記認識工程が認識した前記周期に基づいて、n(但し、nは1以上の整数)個の連続する周期毎に、前記入力信号の特徴値を検出する検出工程と、前記検出工程が検出した前記特徴値を表示装置に表示するための表示データを、前記表示装置に出力する出力工程とを備える。
【0067】
第1実施形態の信号処理方法によれば、上述した第1実施形態の信号処理装置が享受する各種効果と同様の効果を好適に享受することができる。
【0068】
尚、上述した第1実施形態の信号処理装置が採用し得る各種態様に対応して、第1実施形態の信号処理方法もまた、各種態様を採用してもよい。
【0069】
<14>
第2実施形態の信号処理方法は、周期性を有する入力信号の各周期を細分化することで得られる細分化期間を認識する認識工程と、前記認識工程が認識した前記細分化期間に基づいて、m(但し、mは1以上の整数)個の連続する細分化期間毎に、前記入力信号の特徴値を検出する検出工程と、前記検出工程が検出した前記特徴値を表示装置に表示するための表示データを、前記表示装置に出力する出力工程とを備える。
【0070】
第2実施形態の信号処理方法によれば、上述した第2実施形態の信号処理装置が享受する各種効果と同様の効果を好適に享受することができる。
【0071】
尚、上述した第2実施形態の信号処理装置が採用し得る各種態様に対応して、第2実施形態の信号処理方法もまた、各種態様を採用してもよい。
【0072】
(コンピュータプログラムの実施形態)
<15>
第1実施形態のコンピュータプログラムは、コンピュータによって実行されるコンピュータプログラムであって、周期性を有する入力信号の周期を認識する認識工程と、前記認識工程が認識した前記周期に基づいて、n(但し、nは1以上の整数)個の連続する周期毎に、前記入力信号の特徴値を検出する検出工程と、前記検出工程が検出した前記特徴値を表示装置に表示するための表示データを、前記表示装置に出力する出力工程とを前記コンピュータに実行させる。
【0073】
第1実施形態のコンピュータプログラムによれば、上述した第1実施形態の信号処理装置が享受する各種効果と同様の効果を好適に享受することができる。
【0074】
尚、上述した第1実施形態の信号処理装置が採用し得る各種態様に対応して、第1実施形態のコンピュータプログラムもまた、各種態様を採用してもよい。
【0075】
<16>
第2実施形態のコンピュータプログラムは、コンピュータによって実行されるコンピュータプログラムであって、周期性を有する入力信号の各周期を細分化することで得られる細分化期間を認識する認識工程と、前記認識工程が認識した前記細分化期間に基づいて、m(但し、mは1以上の整数)個の連続する細分化期間毎に、前記入力信号の特徴値を検出する検出工程と、前記検出工程が検出した前記特徴値を表示装置に表示するための表示データを、前記表示装置に出力する出力工程とを前記コンピュータに実行させる。
【0076】
第2実施形態のコンピュータプログラムによれば、上述した第2実施形態の信号処理装置が享受する各種効果と同様の効果を好適に享受することができる。
【0077】
尚、上述した第2実施形態の信号処理装置が採用し得る各種態様に対応して、第2実施形態のコンピュータプログラムもまた、各種態様を採用してもよい。
【0078】
(記録媒体の実施形態)
<17>
第1実施形態の記録媒体は、コンピュータによって実行されるコンピュータプログラムが記録されている記録媒体であって、周期性を有する入力信号の周期を認識する認識工程と、前記認識工程が認識した前記周期に基づいて、n(但し、nは1以上の整数)個の連続する周期毎に、前記入力信号の特徴値を検出する検出工程と、前記検出工程が検出した前記特徴値を表示装置に表示するための表示データを、前記表示装置に出力する出力工程とを前記コンピュータに実行させるコンピュータプログラムが記録されている。
【0079】
第1実施形態の記録媒体によれば、上述した第1実施形態の信号処理装置が享受する各種効果と同様の効果を好適に享受することができる。
【0080】
尚、上述した第1実施形態の信号処理装置が採用し得る各種態様に対応して、第1実施形態の記録媒体もまた、各種態様を採用してもよい。
【0081】
<16>
第2実施形態の記録媒体は、コンピュータによって実行されるコンピュータプログラムが記録されている記録媒体であって、周期性を有する入力信号の各周期を細分化することで得られる細分化期間を認識する認識工程と、前記認識工程が認識した前記細分化期間に基づいて、m(但し、mは1以上の整数)個の連続する細分化期間毎に、前記入力信号の特徴値を検出する検出工程と、前記検出工程が検出した前記特徴値を表示装置に表示するための表示データを、前記表示装置に出力する出力工程とを前記コンピュータに実行させるコンピュータプログラムが記録されている。
【0082】
第2実施形態の記録媒体によれば、上述した第2実施形態の信号処理装置が享受する各種効果と同様の効果を好適に享受することができる。
【0083】
尚、上述した第2実施形態の信号処理装置が採用し得る各種態様に対応して、第2実施形態の記録媒体もまた、各種態様を採用してもよい。
【0084】
本実施形態のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施例から更に明らかにされる。
【0085】
以上説明したように、第1又は第2実施形態の信号処理装置は、認識手段と、検出手段と、出力手段とを備える。第1又は第2実施形態の信号処理方法は、認識工程と、検出工程と、出力工程とを備える。第1又は第2実施形態のコンピュータプログラムは、認識工程と検出工程と出力工程とをコンピュータに実行させる。第1又は第2実施形態の記録媒体は、認識工程と検出工程と出力工程とをコンピュータに実行させるコンピュータプログラムが記録されている記録媒体である。従って、より見やすい態様で入力信号が表示される。
【実施例】
【0086】
以下、図面を参照しながら、信号処理装置及び方法、並びにコンピュータプログラム及び記録媒体の実施例について説明する。尚、以下では、入力信号として、呼吸音を示す呼吸音信号Sが用いられるものとする。但し、入力信号として、呼吸音信号とは異なるその他の生体音信号が用いられてもよい。その他の生体音信号の一例としては、例えば、心音を示す心音信号や、脈動(言い換えれば、脈波)に起因した音を示す脈動音信号や、内臓器官の活動状況に起因した音(例えば、腸の動きに起因した腸音)を示す内臓音信号や、血液の流れに起因した音を示す血流音信号等が一例としてあげられる。或いは、入力信号として、生体音信号以外の任意の信号(但し、周期性を有する任意の信号)が用いられてもよい。
【0087】
(1)信号処理装置の構成
はじめに、図1を参照しながら、本実施例の信号処理装置10の構成について説明する。図1は、本実施例の信号処理装置10の構成を示すブロック図である。
【0088】
図1に示すように、本実施例の信号処理装置10は、信号取得部101と、信号記憶部102と、「認識手段」の一具体例である周期判定部113と、「認識手段」及び「検出手段」の一具体例である信号解析部103と、「出力手段」の一具体例である表示データ生成部104と、「表示装置」の一具体例である表示部105とを備える。
【0089】
信号取得部101は、呼吸音信号を取得する。例えば、信号取得部101は、生体の呼吸音を直接的に検出することで呼吸音信号を直接的に取得してもよい。この場合、信号取得部101は、生体に取り付けられると共に生体の呼吸音を検出する呼吸センサを含んでいてもよい。このような呼吸センサは、典型的にはマイク(例えば、コイル型マイクや、コンデンサ型マイクや、圧電型マイク等)である。但し、呼吸センサが呼吸音を検出することができる限りは、呼吸センサはどのような形式のセンサであってもよい。
【0090】
尚、図1は、信号処理装置10が信号取得部101を備える例を示している。しかしながら、信号処理装置10は、信号取得部101を備えていなくともよい。この場合、信号処理装置10は、信号処理装置10の外部に配置されている信号取得部101から、有線若しくは無線の通信回線又は有線の信号線を介して、呼吸音信号を取得することが好ましい。
【0091】
信号記憶部102は、信号取得部101が取得した呼吸音信号を一時的に記憶する。このため、信号記憶部102は、メモリ又はバッファを含んでいてもよい。尚、後述するように、信号記憶部102は、信号取得部101が逐次取得する呼吸音信号のうち所定期間分の呼吸音信号を記憶することが好ましい。
【0092】
尚、図1は、信号処理装置10が信号記憶部102を備える例を示している。しかしながら、信号処理装置10は、信号記憶部102を備えていなくともよい。
【0093】
周期判定部113は、信号記憶部102が記憶している呼吸音信号に対して所定の周期判定処理を実行する。
【0094】
本実施例では、所定の周期判定処理は、呼吸音信号の周期を判定する(言い換えれば、特定する又は検出する)処理を含んでいてもよい。具体的には、所定の周期判定処理は、振幅レベル(つまり、信号強度を示す特性)が周期的に増減を繰り返しながら変化する呼吸音信号に対して、呼吸音信号の振幅レベルが1周期分だけ変化するために要する期間が呼吸音信号の周期であると判定する処理を含んでいてもよい。言い換えれば、呼吸音信号が呼吸という生体の活動に起因した音に相当する音声信号であることを考慮すれば、所定の周期判定処理は、繰り返し複数回行われる呼吸のうちの1回の呼吸(つまり、連続して行われる呼気及び吸気)に要する期間が呼吸音信号の周期であると判定する処理を含んでいてもよい。
【0095】
尚、呼吸音信号以外の任意の生体音信号に対して実行される所定の周期判定処理は、繰り返し複数回行われる生体の活動のうちの1回の活動に要する期間が生体音信号の周期であると判定する処理を含んでいてもよい。例えば、所定の周期判定処理は、繰り返し複数回行われる心臓の拍動のうちの1回の拍動に要する期間が心音信号、脈動音信号又は血流音信号の周期であると判定する処理を含んでいてもよい。その他の生体音信号又は入力信号に対して実行される周期判定処理についても、同様の態様で周期を判定する処理を含んでいてもよい。
【0096】
更に、本実施例では、所定の周期判定処理は、呼吸音信号の周期を細分化することで得られる細分化期間を判定する処理を含んでいてもよい。例えば、所定の周期判定処理は、呼吸音信号の周期を当該呼吸音信号の振幅レベルの変化の傾向に応じて細分化することで得られる細分化期間を判定する処理を含んでいてもよい。具体的には、生体の活動である1回の呼吸は、振幅レベルの変化の傾向が異なる1回の呼気と1回の吸気とから構成されている。このため、所定の周期判定処理は、呼吸音信号の各周期のうちの呼気期間(つまり、呼気が行われている呼気期間)及び吸気期間(つまり、吸気が行われている期間)を判定する処理を含んでいてもよい。
【0097】
尚、呼吸音信号以外の任意の生体音信号に対して実行される所定の周期判定処理は、繰り返し複数回行われる生体の活動のうちの1回の活動を、当該1回の活動の態様に応じて細分化することで得られる細分化期間を判定する処理を含んでいてもよい。例えば、生体の活動である1回の心臓の拍動は、活動の態様が異なる1回の心室の収縮と1回の心室の拡張とから構成されている。このため、心音信号、脈動音信号又は血流音信号に対して実行される所定の周期判定処理は、生体音信号の各周期のうち心室の収縮が行われている期間及び心室の拡張が行われている期間を判定する処理を含んでいてもよい。その他の生体音信号又は入力信号に対して実行される周期判定処理についても、同様の態様で細分化期間を判定する処理を含んでいてもよい。
【0098】
尚、図1は、信号処理装置10が周期判定部113を備える例を示している。しかしながら、信号処理装置10は、周期判定部113を備えていなくともよい。この場合、信号処理装置10は、信号処理装置10の外部に配置されている周期判定部113から、有線若しくは無線の通信回線又は有線の信号線を介して、信号処理装置10の外部に位置する周期判定部113が実行した周期判定処理の結果を取得することが好ましい。
【0099】
信号解析部103は、信号記憶部102が記憶している呼吸音信号に対して所定の解析処理を実行する。本実施例では、所定の解析処理は、呼吸音信号を、互いに区別可能な複数種類の信号成分に分離する解析処理を含んでいる。言い換えれば、所定の解析処理は、呼吸音信号から、互いに区別可能な複数種類の信号成分のうちの少なくとも一つを抽出する解析処理を含んでいる。言い換えれば、所定の解析処理は、呼吸音信号にどのような種類の信号成分が含まれているかを解析する解析処理を含んでいる。
【0100】
具体的には、例えば、所定の解析処理は、呼吸音信号を、正常音に相当する信号成分と、正常音とは異なる異常音に相当する信号成分とに分離する解析処理を含んでいてもよい。言い換えれば、例えば、所定の解析処理は、呼吸音信号から、正常音に相当する信号成分及び異常音に相当する信号成分のうちの少なくとも一つを抽出する解析処理を含んでいてもよい。
【0101】
或いは、例えば、所定の解析処理は、呼吸音信号を、互いに区別可能な複数種類の正常音に相当する複数種類の信号成分に分離する解析処理を含んでいてもよい。言い換えれば、例えば、所定の解析処理は、呼吸音信号から、互いに区別可能な複数種類の正常音に相当する複数種類の信号成分のうちの少なくとも一つを抽出する解析処理を含んでいてもよい。
【0102】
或いは、例えば、所定の解析処理は、呼吸音信号を、互いに区別可能な複数種類の異常音に相当する複数種類の信号成分に分離する解析処理を含んでいてもよい。言い換えれば、例えば、所定の解析処理は、呼吸音信号から、互いに区別可能な複数種類の異常音に相当する複数種類の信号成分のうちの少なくとも一つを抽出する解析処理を含んでいてもよい。
【0103】
加えて、信号解析部103は、周期判定部113が実行する周期判定処理の結果に基づいて、呼吸音信号のピーク値(例えば、呼吸音信号の振幅レベル(つまり、信号強度を示す特性)の最大値又は最小値)を検出する所定のピークホールド処理を実行してもよい。但し、信号解析部103は、呼吸音信号のピーク値に代えて、呼吸音信号の振幅レベルの特徴を特定することが可能な任意の特徴値(例えば、平均値等)を検出する所定のピークホールド処理を実行してもよい。
【0104】
本実施例では、所定のピークホールド処理は、時間的に連続するn(但し、nは1以上の整数)個の周期毎に、呼吸音信号のピーク値を検出する処理を含んでいてもよい。言い換えれば、所定のピークホールド処理は、時間的に連続するn個の周期毎の呼吸音信号のピーク値(つまり、時間的に連続するn個の周期に相当する期間中の呼吸音信号のピーク値)を検出する処理を含んでいてもよい。
【0105】
更に、実施例では、所定のピークホールド処理は、時間的に連続するm(但し、mは1以上の整数)個の細分化期間毎に、呼吸音信号のピーク値を検出する処理を含んでいてもよい。言い換えれば、所定のピークホールド処理は、時間的に連続するm個の細分化期間毎の呼吸音信号のピーク値(つまり、時間的に連続するm個の細分化期間中の呼吸音信号のピーク値)を検出する処理を含んでいてもよい。
【0106】
信号解析部103は、解析処理及びピークホールド処理の結果(例えば、複数種類の信号成分そのものを特定可能な情報や、複数種類の信号成分の夫々のn個の周期毎の又はm個の細分化期間毎のピーク値を特定可能な任意の情報等)を、表示データ生成部104に対して出力する。
【0107】
尚、図1は、信号処理装置10が信号解析部103を備える例を示している。しかしながら、信号処理装置10は、信号解析部103を備えていなくともよい。この場合、信号処理装置10は、信号処理装置10の外部に配置されている信号解析部103から、有線若しくは無線の通信回線又は有線の信号線を介して、信号処理装置10の外部に位置する信号解析部103が実行した解析処理及びピークホールド処理の結果を取得することが好ましい。
【0108】
表示データ生成部104は、信号解析部103が実行した解析処理及びピークホールド処理の結果に基づいて、呼吸音信号を構成する複数種類の信号成分の夫々の特性(例えば、信号強度に相当する振幅レベル等)を表示部105に表示するための表示データ(例えば、画像信号)を生成する。言い換えれば、表示データ生成部104は、呼吸音信号を構成する複数種類の信号成分の夫々の特性を視覚的に特定することが可能な何らかの表示対象物を表示部105に表示するための表示データを生成する。このとき、表示データ生成部104は、少なくとも、呼吸音信号を構成する複数種類の信号成分の夫々のピーク値を表示部105に表示するための表示データを生成する。尚、表示対象物は、呼吸音信号の特性を視覚的に特定することができる限りは、どのような表示対象物であってもよい。例えば、表示対象物は、呼吸音信号の特性を視覚的に特定するテキスト(例えば、文字や数値等)を含む表示対象物であってもよい。或いは、例えば、表示対象物は、呼吸音信号の特性を視覚的に特定する図画(例えば、グラフやチャート等)を含む表示対象物であってもよい。
【0109】
加えて、表示データ生成部104は、生成した表示データを、表示部105に対して出力する。
【0110】
尚、周期判定部113、信号解析部103及び表示データ生成部104は、夫々、CPU(Central Processing Unit)上で論理的に実現される処理ブロックである。但し、周期判定部113、信号解析部103及び表示データ生成部104は、夫々、半導体チップ等によって物理的に実現される処理回路であってもよい。
【0111】
表示部105は、表示データ生成部104が生成した表示データに基づく表示処理を行うディスプレイ装置である。その結果、表示部105は、呼吸音信号を構成する複数種類の信号成分の夫々の特性を、当該表示部105の表示画面上に表示する。
【0112】
尚、図1は、信号処理装置10が表示部105を備える例を示している。しかしながら、信号処理装置10は、表示部105を備えていなくともよい。この場合、信号処理装置10は、信号処理装置10の外部に位置する表示部105に対して、有線若しくは無線の通信回線又は有線の信号線を介して、表示データ生成部104が生成した表示データを転送することが好ましい。
【0113】
(2)本実施例の信号処理装置10の動作
続いて、図2から図11を参照しながら、本実施例の信号処理装置10の動作について説明する。図2は、本実施例の信号処理装置10の動作の流れを示すフローチャートである。図3は、信号取得部101の生体に対する装着態様の一例を示す模式図及び呼吸音信号の波形を時間軸上で示すグラフである。図4は、信号記憶部102が呼吸音信号を記憶する動作の一例を示す模式図である。図5は、呼吸音の種類を示す分類チャートである。図6は、5種類の呼吸音(肺胞呼吸音、低音性連続性ラ音(類鼾音)、高音性連続性ラ音(笛声音)、細かい断続性ラ音(捻髪音)及び粗い断続性ラ音(水泡音))に相当する5種類の信号成分の波形を時間軸上で示すグラフである。図7は、周期判定処理の第1の態様を呼吸音信号の波形と共に示すグラフである。図8は、周期判定処理の第2の態様を呼吸音信号の波形と共に示すグラフである。図9は、ピークホールド処理の一の態様を5種類の信号成分の波形と共に示すグラフである。図10は、ピークホールド処理の一の態様を1種類の信号成分(肺胞呼吸音成分)の波形と共に示すグラフである。図11は、呼吸音信号を構成する5種類の信号成分の夫々の特性の表示態様の一例を示す平面図である。
【0114】
図2に示すように、まず、信号取得部101は、呼吸音信号を取得する(ステップS101)。例えば、図3(a)に示すように、信号取得部101は、生体の体表面(図3(a)に示す例では、左胸付近の体表面)に取り付けられてもよい。このとき、信号取得部101の装着位置は、固定されていてもよい。或いは、医療従事者が聴診する際に聴診器をあてる位置を適宜変更していることを考慮すれば、信号取得部101の装着位置は、呼吸音信号の取得の途中で適宜変更されてもよい。その結果、信号取得部101は、呼吸音信号を取得する。このとき、信号取得部101は、所定のサンプリング周波数に応じて周期的に呼吸音信号を取得してもよい。つまり、信号取得部101は、呼吸音信号のサンプル値を周期的に取得してもよい。但し、信号取得部101は、非周期的に又は連続的に呼吸音信号を取得してもよい。その結果、信号取得部101は、図3(b)に示す時間軸上の波形として特定される呼吸音信号を取得することができる。
【0115】
尚、図3(b)に示すように、生体の呼吸が吸気(つまり、肺への空気の取り込み)と呼気(つまり、肺からの空気の吐き出し)との繰り返しであることを考慮すれば、呼吸音信号は、周期性を有する信号であると言える。呼吸音信号の1周期は、吸気期間(つまり、吸気が行われる期間)と当該吸気期間に続く呼気期間(つまり、呼気が行われる期間)とを合算した期間となる。尚、呼吸音信号の周期は、時間の経過と共に変動してもよいことは言うまでもない。
【0116】
信号取得部101による呼吸音信号の取得と並行して、信号記憶部102は、信号取得部101が取得した呼吸音信号を一時的に記憶する(ステップS102)。このとき、信号記憶部102は、後述する信号解析部103が実行する解析処理に必要なサイズ及び周期判定部113が実行する周期判定処理に必要なサイズのうちの大きいほうのサイズの呼吸音信号を一時的に記憶することが好ましい。本実施例では、信号解析部103が実行する解析処理に必要な呼吸音信号のサイズは、「1秒」であるものとする。一方で、本実施例では、周期判定部113が実行する周期判定処理に必要なサイズは、20秒から25秒(言い換えれば、5周期分の呼吸音信号のサイズであり、1周期の長さが概ね4秒から5秒となる呼吸音信号について言えば(4秒から5秒)×5周期=20秒から25秒)であるものとする。従って、この場合、信号記憶部102は、少なくとも最新の(言い換えれば、直近)20秒分の呼吸音信号を一時的に記憶することが好ましい。このような直近20秒分の呼吸音信号を一時的に記憶するために、信号記憶部102は、リングバッファを含んでいることが好ましい。但し、信号解析部103が実行する解析処理に必要な呼吸音信号のサイズは、1秒以外の任意の時間であってもよい。同様に、信号解析部103が実行する周期判定処理に必要な呼吸音信号のサイズは、20秒から25秒以外の任意の時間であってもよい。
【0117】
尚、呼吸音信号に代えて心音信号が用いられる場合には、周期判定部113が実行する周期判定処理に必要なサイズは、例えば、4秒から5秒(言い換えれば、5周期分の心音信号のサイズであり、1周期の長さが概ね0.8秒から1秒となる心音信号について言えば、0.8秒から1秒×5周期=4秒から5秒)であるものとする。但し、信号解析部103が実行する周期判定処理に必要な呼吸音信号のサイズは、4秒から5秒以外の任意の時間であってもよい。
【0118】
例えば信号取得部101が44100Hzのサンプリング周波数に応じて呼吸音信号を取得している場合には、信号記憶部102は、44100個×20秒=882000個の呼吸音信号のサンプル値を一時的に記憶する。より具体的には、図4に示すように、信号記憶部102は、最新の時刻(t)に取得された呼吸音信号のサンプル値S(t)と、時刻(t−1)に取得された呼吸音信号のサンプル値S(t−1)と、時刻(t−2)に取得された呼吸音信号のサンプル値S(t−2)と、・・・、時刻(t−881999)に取得された呼吸音信号のサンプル値S(t−881999)とを一時的に記憶する。
【0119】
信号取得部101による呼吸音信号の取得と並行して、信号解析部103は、信号記憶部102が記憶している呼吸音信号に対して所定の解析処理を実行する(ステップS103a)。つまり、信号解析部103は、信号記憶部102が記憶している呼吸音信号に対して、呼吸音信号を複数種類の信号成分に分離する解析処理を実行する。
【0120】
ここで、図5を参照しながら、呼吸音の種類について説明する。図5に示すように、広義の呼吸音(つまり、肺音)は、狭義の呼吸音と、異常音の一例である副雑音とに分類される。狭義の呼吸音は、正常音の一例である正常な呼吸音と、異常音の一例である異常な呼吸音とに分類される。正常な呼吸音は、肺胞呼吸音と、気管支呼吸音と、気管支肺胞呼吸音と、気管呼吸音とに分類される。異常な呼吸音は、減弱・消失に起因した呼吸音と、増強に起因した呼吸音と、呼気延長に起因した呼吸音と、気管支呼吸音化に起因した呼吸音と、気管狭窄音とに分類される。副雑音は、ラ音と、その他の音とに分類される。ラ音は、連続性ラ音と、断続性ラ音とに分類される。連続性ラ音は、低音性連続性ラ音(類鼾音)と、高音性連続性ラ音(笛声音)と、スクウォーク(吸気性の連続性ラ音)とに分類される。断続性ラ音は、細かい断続性ラ音(捻髪音)と、粗い断続性ラ音(水泡音)とに分類される。その他の音は、胸膜摩擦音と、肺血管性雑音とに分類される。
【0121】
本実施例では、信号解析部103は、呼吸音信号を、正常音の一例である肺胞呼吸音に相当する信号成分(以下、“肺胞呼吸音成分”と称する)と、異常音の一例である低音性連続性ラ音(類鼾音)に相当する信号成分(以下、“類鼾音成分”と称する)と、異常音の一例である高音性連続性ラ音(笛声音)に相当する信号成分(以下、“笛声音成分”と称する)と、異常音の一例である細かい断続性ラ音(捻髪音)に相当する信号成分(以下、“捻髪音成分”と称する)と、異常音の一例である粗い断続性ラ音(水泡音)に相当する信号成分(以下、“水泡音成分”と称する)とに分離する解析処理を行う。言い換えれば、信号解析部103は、呼吸音信号から、肺胞呼吸音成分、類鼾音成分、笛声音成分、捻髪音成分及び水泡音成分のうちの少なくとも一つを抽出する解析処理を行う。尚、図6の1段目のグラフは、肺胞呼吸音成分の一例を示している。図6の2段目のグラフは、類鼾音成分の一例を示している。図6の3段目のグラフは、笛声音成分の一例を示している。図6の4段目のグラフは、捻髪音成分の一例を示している。図6の5段目のグラフは、水泡音成分の一例を示している。
【0122】
信号解析部103は、以下の観点から、呼吸音信号を、肺胞呼吸音成分と、類鼾音成分と、笛声音成分と、捻髪音成分と、水泡音成分とに分離してもよい。
【0123】
具体的には、肺胞呼吸音成分及び断続性ラ音に相当する信号成分(つまり、捻髪音成分及び水泡音成分)の周波数スペクトル形状が相対的に広帯域であり且つ相対的に滑らかである一方で、連続性ラ音に相当する信号成分(つまり、類鼾音成分及び笛声音成分)の周波数スペクトル形状が相対的に狭帯域であり且つ相対的に急峻であるという違いがある。従って、信号解析部103は、このような周波数スペクトル形状の違いに着目することで、呼吸音信号を、連続性ラ音に相当する信号成分と、連続性ラ音に相当する信号成分とは異なる信号成分(つまり、肺胞呼吸音成分及び断続性ラ音に相当する信号成分)とに分離してもよい。
【0124】
また、類鼾音成分の周波数が相対的に低い一方で、笛声音成分の周波数が相対的に高いという違いがある。従って、信号解析部103は、このような周波数の違いに着目することで、連続性ラ音に相当する信号成分を、類鼾音成分と笛声音成分とに分離してもよい。
【0125】
また、肺胞呼吸音成分が時間的に継続する(つまり、連続する)信号成分である一方で、断続性ラ音に相当する信号成分が時間的に断続するパルス状の信号成分であるという違いがある。従って、信号解析部103は、このような時間軸上での信号成分の分布の違いに着目することで、連続性ラ音に相当する信号成分とは異なる信号成分を、肺胞呼吸音成分と断続性ラ音に相当する信号成分とに分離してもよい。
【0126】
また、水泡音成分の周波数が相対的に低い一方で、捻髪音成分の周波数が相対的に高いという違いがある。従って、信号解析部103は、このような周波数の違いに着目することで、断続性ラ音に相当する信号成分を、水泡音成分と捻髪音成分とに分離してもよい。
【0127】
尚、呼吸音信号を5種類の信号成分(つまり、肺胞呼吸音成分、類鼾音成分、笛声音成分、捻髪音成分及び水泡音成分)に分離する解析処理に関する上述の方法はあくまで一例である。従って、信号解析部103は、その他の方法で呼吸音信号を5種類の信号成分に分離する解析処理を実行してもよい。尚、呼吸音信号を複数種類の信号成分に分離する(或いは、呼吸音信号から特定種類の信号成分を抽出する)方法は、例えば、特表2004−531309号公報や、特開2005−66045号公報や、特表2001−505085号公報や、特表2007−508899号公報や、「肺音信号のスパース表現と断続音分離への応用、酒井・里元・喜安・宮原、長崎大学国学研究報告第41巻第76号」等に開示されている。従って、信号解析部103は、これらの文献に開示された方法を用いて、呼吸音信号を複数種類の信号成分に分離してもよい。
【0128】
また、信号解析部103は、呼吸音信号を上述した5種類の信号成分に分離する解析処理に加えて又は代えて、呼吸音信号を任意の複数種類の信号成分に分離する(或いは、呼吸音信号から任意の一以上の信号成分を抽出する)解析処理を実行してもよい。
【0129】
尚、信号解析部103による解析処理の対象となっている呼吸音信号は、典型的には、肺胞呼吸音成分を常に含んでいる可能性が高い。なぜならば、生体が呼吸をしている以上、その呼吸音には、異常音が含まれているか否かに関わらず、正常音の一例である肺胞呼吸音が含まれているはずであるからである。一方で、信号解析部103による解析処理の対象となっている呼吸音信号は、5種類の信号成分のうちの全部を含んでいることもある。或いは、信号解析部103による解析処理の対象となっている呼吸音信号は、5種類の信号成分のうちの一部のみを含んでいることもある。或いは、信号解析部103による解析処理の対象となっている呼吸音信号は、5種類の信号成分のうちの全部を含んでいないこともある。いずれの場合であっても、信号解析部103は、呼吸音信号を上述した5種類の信号成分に分離する解析処理を実行することで、5種類の信号成分の夫々を取得することができる。例えば、信号解析部103は、解析処理を実行することで、呼吸音信号に含まれている信号成分を取得することができると共に、呼吸音信号に含まれていない信号成分を振幅レベルがゼロとなる信号成分として取得することができる。
【0130】
信号解析部103による呼吸音信号の解析処理と並行して、周期判定部113は、信号記憶部102が記憶している呼吸音信号に対して所定の周期判定処理を実行する(ステップS113)。つまり、信号解析部103は、信号記憶部102が記憶している呼吸音信号に対して、呼吸音信号の周期及び細分化期間(つまり、呼気期間及び吸気期間)のうちの少なくとも一方を判定する周期判定処理を実行する。
【0131】
周期判定部113は、以下の観点から、呼吸音信号の周期並びに細分化期間(つまり、呼気期間及び吸気期間)のうちの少なくとも一方を判定してもよい。
【0132】
具体的には、図7に示すように、周期判定部113は、呼吸音信号の振幅レベルの絶対値が所定閾値A以下となる無音部が周期及び細分化期間のうちの少なくとも一方の境界であるとみなすことで、呼吸音信号の周期及び細分化期間(つまり、呼気期間及び吸気期間)のうちの少なくとも一方を判定してもよい。尚、図7に示す例では、周期判定部113は、無音部が細分化期間の境界であるとみなすことで、呼吸音信号の細分化期間(つまり、呼気期間及び吸気期間)を判定している。但し、連続する2つの細分化期間が1つの周期に相当することを考慮すれば、図7に示す例では、周期判定部113は、連続する2つの無音部のうちのいずれか一方の無音部が周期の境界であるとみなすことで、呼吸音信号の周期を判定しているとも言える。
【0133】
尚、無音部が周期又は細分化期間の境界であるとみなす場合は、当該境界となる無音部の間の時間間隔は、一定の期間以上であることが好ましい。つまり、周期判定部113は、間の時間間隔が一定の期間未満となる2つの無音部のうちのいずれか一方の無音部は、周期又は細分化期間の境界ではないものとみなすことが好ましい。その結果、異常に小さな瞬時値が呼吸音信号にまぎれこんでしまう場合であっても、周期判定部113は、無音部に基づいて周期及び細分化期間のうちの少なくとも一方を好適に判定することができる。
【0134】
或いは、図8(a)及び図8(b)に示すように、周期判定部113は、呼吸音信号の波形の類似度に基づいて、呼吸音信号の周期及び細分化期間(つまり、呼気期間及び吸気期間)のうちの少なくとも一方を判定してもよい。具体的には、周期判定部113は、類似度が高い(例えば、相対的に高い又は所定度数よりも高い)波形が繰り返されている場合には、当該各波形が現れる期間が周期及び細分化期間のうちの少なくとも一方であると判定してもよい。例えば、図8(a)に示す例では、周期判定部113は、波形Aと波形A’と波形A’’とが類似している(つまり、類似度が高い)と判定すると共に、当該判定結果に基づいて、波形A、波形A’及び波形A’’の夫々が現れる期間が1つの吸気期間であると判定している。同様に、図8(a)に示す例では、周期判定部113は、波形Bと波形B’とが類似している(つまり、類似度が高い)と判定すると共に、当該判定結果に基づいて、波形B及び波形B’の夫々が現れる期間が1つの呼気期間であると判定している。或いは、図8(b)に示す例では、周期判定部113は、波形aと波形a’と波形a’’とが類似している(つまり、類似度が高い)と判定すると共に、当該判定結果に基づいて、波形a、波形a’及び波形a’’の夫々が現れる期間が1つの周期であると判定している。
【0135】
その後、信号解析部103は、周期判定部113が実行する周期判定処理の結果に基づいて、呼吸音信号のピーク値を検出する所定のピークホールド処理を実行する(ステップS103b)。尚、以下では、信号解析部103は、1つの細分化期間毎の呼吸音信号のピーク値(つまり、各呼気期間の呼吸音信号のピーク値及び各吸気期間における呼吸音信号のピーク値)を検出するものとする。
【0136】
また、信号解析部103は、呼吸音信号に含まれる5種類の信号成分(つまり、肺胞呼吸音成分、類鼾音成分、笛声音成分、捻髪音成分及び水泡音成分)の夫々のピーク値を検出することが好ましい。但し、信号解析部103は、呼吸音信号そのもののピーク値を検出してもよい。
【0137】
その結果、例えば、図9に示すように、信号解析部103は、吸気期間#1における肺胞呼吸音成分のピーク値P11、吸気期間#1における類鼾音成分のピーク値P21、吸気期間#1における笛声音成分のピーク値P31、吸気期間#1における捻髪音成分のピーク値P41及び吸気期間#1における水泡音成分のピーク値P51を検出する。その後、信号解析部103は、呼気期間#1における肺胞呼吸音成分のピーク値P12、呼気期間#1における類鼾音成分のピーク値P22、呼気期間#1における笛声音成分のピーク値P32、呼気期間#1における捻髪音成分のピーク値P42及び呼気期間#1における水泡音成分のピーク値P52を検出する。その後、信号解析部103は、吸気期間#2における肺胞呼吸音成分のピーク値P13、吸気期間#2における類鼾音成分のピーク値P23、吸気期間#2における笛声音成分のピーク値P33、吸気期間#2における捻髪音成分のピーク値P43及び吸気期間#2における水泡音成分のピーク値P53を検出する。その後、信号解析部103は、呼気期間#2における肺胞呼吸音成分のピーク値P14、呼気期間#2における類鼾音成分のピーク値P24、呼気期間#2における笛声音成分のピーク値P34、呼気期間#2における捻髪音成分のピーク値P44及び呼気期間#2における水泡音成分のピーク値P54を検出する。
【0138】
尚、図9に示す例では、信号解析部103は、1つの細分化期間毎の呼吸音信号のピーク値(つまり、各呼気期間の呼吸音信号のピーク値及び各吸気期間における呼吸音信号のピーク値)を検出している。しかしながら、図10(a)に示すように、信号解析部103は、1つの周期毎の5種類の信号成分(或いは、呼吸音信号)のピーク値を検出してもよい。或いは、図10(b)に示すように、信号解析部103は、2つの周期毎(或いは、3つ以上の周期毎)の5種類の信号成分(或いは、呼吸音信号)のピーク値を検出してもよい。或いは、図10(c)に示すように、信号解析部103は、3つの細分化期間毎(或いは、2つ以上の細分化期間毎)の5種類の信号成分(或いは、呼吸音信号)のピーク値を検出してもよい。
【0139】
信号解析部103により実行される解析処理と並行して、表示データ生成部104は、5種類の信号成分(つまり、肺胞呼吸音成分、類鼾音成分、笛声音成分、捻髪音成分及び水泡音成分)の夫々の特性(具体的には、振幅レベルの瞬時値及びピーク値)を表示部105に表示するための表示データを生成する(ステップS104)。尚、表示データは、表示部105が表示する表示対象物を示すデータである。このような表示データは、例えば、呼吸音信号の特性を視覚的に特定するテキスト(例えば、文字や数値等)及び図画(例えば、グラフやチャート等)のうちの少なくとも一方を示す画像信号(或いは、画像信号とは異なる形式を有する任意の信号)に相当するデータであってもよい。
【0140】
このとき、表示データ生成部104は、信号解析部103が実行した解析処理の結果に基づいて、表示データを生成する。表示データ生成部104は、生成した表示データを適宜表示部105に対して出力する。
【0141】
尚、以下の説明では、表示部105に表示される信号成分の特性が振幅レベル(つまり、信号強度を示す特性)である例を用いて説明を進める。但し、信号成分の特性が振幅レベルとは異なる特性(言い換えれば、信号成分の状態を特定することが可能な指標(変量))であってもよいことは言うまでもない。この場合、信号解析部103は、振幅レベルとは異なる特性を対象として上述したピークホールド処理を行う(つまり、振幅レベルとは異なる特性のピーク値を検出する)ことが好ましい。
【0142】
例えば、図11(a)から図11(d)に示すように、表示データ生成部104は、棒グラフを用いて5種類の信号成分の夫々の振幅レベルの瞬時値及びピーク値を表示するための表示データを生成してもよい。尚、図11(a)から図11(d)に示す例では、5種類の信号成分に対応する5つの棒が横軸に沿って順に並んでいる。また、図11(a)から図11(d)に示す例では、振幅レベルが大きくなるほど棒の長さが縦軸方向に沿って長くなっている。また、図11(a)から図11(d)に示す例では、棒によって示される瞬時値に加えて、線によって示されるピーク値も合わせて表示されている。
【0143】
図11(a)から図11(d)は、図9に示す5種類の信号成分の夫々の振幅レベルの瞬時値及びピーク値を示す棒グラフの一例を示している。例えば、図11(a)は、吸気期間#1における5種類の信号成分の夫々の振幅レベルの瞬時値及びピーク値を示す棒グラフの一例を示している。従って、現在の時刻が吸気期間#1に包含される時刻である場合には、図11(a)に示す棒グラフを表示するための表示データが生成されると共に、図11(a)に示す棒グラフが表示部105に表示される。
【0144】
同様に、図11(b)は、呼気期間#1における5種類の信号成分の夫々の振幅レベルの瞬時値及びピーク値を示す棒グラフの一例を示している。従って、現在の時刻が呼気期間#1に包含される時刻である場合には、図11(b)に示す棒グラフを表示するための表示データが生成されると共に、図11(b)に示す棒グラフが表示部105に表示される。言い換えれば、呼気期間#1における5種類の信号成分の夫々の振幅レベルのピーク値を信号解析部103が新たに検出した場合には、画像データ生成部104は、吸気期間#1における5種類の信号成分の夫々の振幅レベルの瞬時値及びピーク値を示す棒グラフに代えて、呼気期間#1における5種類の信号成分の夫々の振幅レベルの瞬時値及びピーク値を示す棒グラフを表示するための表示データを新たに作成する。その結果、表示部105は、吸気期間#1における5種類の信号成分の夫々の振幅レベルの瞬時値及びピーク値を示す棒グラフに代えて、呼気期間#1における5種類の信号成分の夫々の振幅レベルの瞬時値及びピーク値を示す棒グラフを表示する。
【0145】
同様に、図11(c)は、吸気期間#2における5種類の信号成分の夫々の振幅レベルの瞬時値及びピーク値を表示する棒グラフの一例を示している。従って、現在の時刻が吸気期間#2に包含される時刻である場合には、図11(c)に示す棒グラフを表示するための表示データが生成されると共に、図11(c)に示す棒グラフが表示部105に表示される。
【0146】
同様に、図11(d)は、呼気期間#2における5種類の信号成分の夫々の振幅レベルの瞬時値及びピーク値を表示する棒グラフの一例を示している。従って、現在の時刻が呼気期間#2に包含される時刻である場合には、図11(d)に示す棒グラフを表示するための表示データが生成されると共に、図11(d)に示す棒グラフが表示部105に表示される。
【0147】
もちろん、表示データ生成部104は、図11(a)から図11(d)に示す表示形式とは異なる表示形式で5種類の信号成分の夫々の振幅レベルの瞬時値及びピーク値を表示するための表示データを生成してもよい。更には、表示データ生成部104は、5種類の信号成分の夫々の振幅レベルの瞬時値及びピーク値のうちのいずれか一方を表示しない一方でいずれか他方を表示するための表示データを生成してもよい。
【0148】
表示データ生成部104による表示データの生成と並行して、表示部105は、表示データ生成部104が生成した表示データに基づく表示処理を行う(ステップS105)。その結果、表示部105は、5種類の信号成分の夫々の振幅レベルの瞬時値及びピーク値を表示する。例えば、表示部105は、図11(a)から図11(d)に示す形式で5種類の信号成分の夫々の振幅レベルの瞬時値及びピーク値を表示する。
【0149】
以上説明したステップS101からステップS105までの動作が、信号処理装置(10)の動作が終了するまで繰り返し行われる(ステップS106)。このとき、ステップS101からステップS105までの動作が繰り返されるに当たって、ステップS101からステップS105までの各動作は、周期的若しくは非周期的に又は連続的に行われることが好ましい。つまり、ステップS101からステップS105までの各動作は、リアルタイムに又は動的に行われることが好ましい。
【0150】
以上説明したように、本実施例の信号処理装置10によれば、信号解析部103が実行するピークホールド処理によるピーク値の検出の対象となる期間は、n個の連続する周期又はm個の連続する細分化期間に一致する。このため、呼吸音信号の周期がどのような周期であったとしても、呼吸音信号の周期又は細分化期間とピーク値の検出の対象となる期間との間に時間的なずれが生じてしまうおそれは殆ど又は全くない。従って、本実施例では、信号解析部103は、呼吸音信号の周期又は細分化期間(つまり、吸気期間及び呼気期間)と好適に対応付けられた呼吸音信号のピーク値を検出することができる。その結果、表示部105は、入呼吸音信号の周期又は細分化期間(つまり、吸気期間及び呼気期間)と好適に対応付けられた呼吸音信号のピーク値を表示することができる。
【0151】
また、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う信号処理装置及び方法、並びにコンピュータプログラム及び記録媒体もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0152】
10 信号処理装置
101 信号取得部
102 信号記憶部
103 信号解析部
104 表示データ生成部
105 表示部
113 周期判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11