(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6656823
(24)【登録日】2020年2月7日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】電解水の製造原料、それを用いた電解液、及び、その電解液から製造される電解水、並びに、その電解液及び電解水の製造方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/461 20060101AFI20200220BHJP
A01N 25/04 20060101ALI20200220BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20200220BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20200220BHJP
A01N 59/16 20060101ALI20200220BHJP
A01N 59/08 20060101ALI20200220BHJP
C25B 1/26 20060101ALI20200220BHJP
A61K 33/00 20060101ALI20200220BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20200220BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20200220BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20200220BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20200220BHJP
C02F 1/50 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
C02F1/461 A
A01N25/04 102
A01P1/00
A01P3/00
A01N59/16 A
A01N59/16 Z
A01N59/08 A
C25B1/26 C
A61K33/00
A61P31/04
A61P31/12
A61P17/00
A61P39/06
C02F1/461 Z
C02F1/50 531D
C02F1/50 531E
C02F1/50 540D
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-118488(P2015-118488)
(22)【出願日】2015年6月11日
(65)【公開番号】特開2017-969(P2017-969A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2018年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】507102344
【氏名又は名称】株式会社ジェネライツ
(74)【代理人】
【識別番号】100110559
【弁理士】
【氏名又は名称】友野 英三
(72)【発明者】
【氏名】梶 浩之
【審査官】
岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2008/0254219(US,A1)
【文献】
国際公開第03/002466(WO,A1)
【文献】
特開平09−253650(JP,A)
【文献】
特開2006−007106(JP,A)
【文献】
特表2009−511754(JP,A)
【文献】
特開2004−330146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/461
A01N 25/04
A01N 59/08
A01N 59/16
A01P 1/00
A01P 3/00
A61K 33/00
A61P 17/00
A61P 31/04
A61P 31/12
A61P 39/06
C02F 1/50
C25B 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理蒸着法を用いて貴金属又は貴金属合金のナノ粒子を塩化物粉末上に堆積する第1の工程と、第1の工程で製造された貴金属又は貴金属合金のナノ粒子が担持した塩化物粉末を水又は希塩酸に溶解する第2の工程とから成ることを特徴とする電解液の製造方法。
【請求項2】
物理蒸着法を用いて貴金属又は貴金属合金のナノ粒子を塩化物粉末上に堆積する第1の工程と、第1の工程で製造された貴金属又は貴金属合金のナノ粒子が担持した塩化物粉末を水又は希塩酸に溶解する第2の工程と、第2の工程で製造された電解液を電気分解する工程とから成ることを特徴とする電解水の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄消毒等の抗菌性、抗ウィルス性、防カビ性等に加え、皮膚の老化防止等の抗酸化性を有する電解水を製造する原料、それを用いた電解液、及び、その電解液から製造される電解水、並びに、その電解液の製造法に関する。特に、この電解水の製造原料は、貴金属ナノ粒子を担持した塩化物粉末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
「人為的な処理によって再現性のある有用な機能を獲得した水溶液の中で、処理と機能に関して科学的根拠が明らかにされたもの、及び、明らかにされようとしているもの」と定義される「機能水」は、近年、エレクトロニクス産業、食品加工業、サービス業、農林水産業、保健衛生業、水処理業等、あらゆる産業分野で注目され、使用されている(非特許文献1)。
【0003】
「機能水」には、RCA洗浄に代表される過酸化水素水を基本とした薬液添加水、窒素、水素、或いは、二酸化炭素等を溶解した溶解ガス制御水、酸化力の強いオゾンを溶解したオゾン水、溶解ガス制御水に外部からのエネルギーを注入して用いる超音波励起水、液体の水とも気体の水蒸気とも全く異なる挙動を示し、高い酸化分解力を有する超臨界水、純水或い薬剤を添加した水を電気分解して得られる、酸化・還元力を有する電解水等が挙げられる(非特許文献2)。
【0004】
中でも、電解水は、世界で最も大量に消費されている殺菌剤である次亜塩素酸ソーダ(NaClO)に替わる殺菌剤として注目されている。これは、次亜塩素酸ソーダには、次のような問題点が内在しているためである。第一に、NaClOが有機物と混じると、トリハロメタンという有害物を生成することである。第二に、NaClOが分解すると、有害な塩素酸を生成すると共に、原料の食塩に含まれる臭素化合物から生成される有害な臭素酸が含まれていることである。第三に、食品や食器に塩素臭がついたり、濯ぐための大量の水を必要とすることである。その他、肌荒れを起こしたり、酸と混ぜて塩素発生事故を引き起こす等数々の問題点がある。その点、電解水は、生成原理、生成機器、生成水の規格が明確であり、有効性及び安全性に関する公的及び科学的根拠が示されており、人にも環境にも優しく有効な機能水であることを特徴としており、衛生管理を主目的とする殺菌・除菌剤として幅広く利用されるようになってきた。例えば、食品加工業では、食材原料殺菌、容器殺菌、冷却水、作業衣除菌等、サービス業では、食材殺菌、食器殺菌、生鮮食品乾燥防止、浴湯殺菌、客室除菌等、農林水産業では、種子除菌、果樹除菌、魚介類殺菌、養魚場除菌等、保健衛生業では、厨房衛生管理、トイレ清掃、手指除菌、浴室除菌、介護器具除菌等、水処理業では、上水殺菌、放流廃水殺菌、ビル空気除菌除臭等に適用されている。
【0005】
このような電解水は、pHが6.5以下である酸性電解水と、pHが7.5以上のアルカリ性電解水とに大別される。酸性電解水は、水道水や塩化物イオンを含む水溶液の電気分解によって得られる水溶液の総称であり、各種病原細菌、食中毒菌、ウィルス等に強い殺菌活性を示し、その殺菌因子は電気分解によって生じる次亜塩素酸(HClO)である。全ての酸性電解水は安全性も高く、急性毒性試験、皮膚刺激試験、変異原性試験、粘膜刺激試験に合格しているため、健康を損なう恐れがないということから食品添加物にも指定され、次亜塩素酸水という名称が付与されている。一方、アルカリ性電解水は、塩化ナトリウム(NaCl)水溶液の電気分解によって生成する水溶液の総称である。
【0006】
更に、酸性電解水は、電解液組成、電解装置、電解条件等によって、強酸性電解水(強酸性次亜塩素酸水)、弱酸性電解水(弱酸性次亜塩素酸水)、微酸性電解水(微酸性次亜塩素酸水)、中性電解水に分類される。
【0007】
強酸性電解水は、0.2%以下のNaCl水溶液を、陽極と陰極が隔膜で仕切られた2室型或いは3室型の電解槽内で電気分解し、陽極側において生じる、有効塩素濃度が20〜60ppmのHClOを主成分とするpH2.7以下の電解水である。有効塩素濃度が40ppmの強酸性電解水は、1,000ppmという高濃度の次亜塩素酸ナトリウムに匹敵する抗菌・抗ウィルス活性を示す。弱酸性電解水は、0.2%以下のNaCl水溶液を、陽極と陰極が隔膜で仕切られた2室型或いは3室型の電解槽内で電気分解し、陽極電解水と陰極電解水を装置内で混合した、有効塩素濃度が10〜60ppmのHClOを主成分とするpH2.7〜5.0の電解水である。強酸性電解水と同様の抗菌・抗ウィルス活性と安全性が確認されている。微酸性電解水は、2〜6%の塩酸水或いは塩酸と塩化ナトリウム水溶液の混合液を、陽極と陰極が隔膜で仕切られていない1室型電解槽で電気分解して生成する、有効塩素濃度が10〜80ppmのHClOを主成分とするpH5〜6.5の電解水である。この微酸性電解水は、生成水全てが殺菌水であることが特徴で、強酸性電解水と同様の抗菌・抗ウィルス活性と安全性が確認されており、飲用目的ではないが、pH5.8〜6.5の塩酸電解微酸性電解水は飲用に相応しい水質を持っている。中性電解水は、塩化物イオン、特に、Cl−を含む水道水を一室型無隔膜電解槽で電気分解して生成することができ、数ppmの有効塩素を有し、pH6.5〜7.5を示す。この電解水も殺菌力があるが、食品添加物等の認可を得ていないので、除菌水として扱われている。
【0008】
また、アルカリ性電解水も、同様に、強アルカリ性電解水と電解次亜水に分類される。強アルカリ性電解水は、0.2%以下のNaCl水溶液を、陽極と陰極が隔膜で仕切られた2室型或いは3室型の電解槽内で電気分解し、陰極側において生成する、pHが10.5〜11.5の今日アルカリ性の電解水である。これは、稀薄な水酸化ナトリウム同様、粘膜を損傷する恐れがあり、食品添加物として認可されていない。電解次亜水は、0.2%以下のNaCl水溶液を、陽極と陰極が隔膜で仕切られていない1室型電解装置で電気分解すると生成する、pH7.5以上のアルカリ性の電解水である。この電解水は、陽極反応で生成するHClOの多くが、アルカリ性のために次亜塩素酸イオン(ClO
−)となり、HClOより殺菌活性が微弱ではあるが、酸性電解水よりも有効塩素濃度(30〜200ppm)が高く、優れた殺菌力を有している。この電解次亜水は、次亜塩素酸ナトリウムの希釈液と同等性があると認められれており、食品添加物と同様に使用できる。
【0009】
一方、近年、電解水同様、白金(Pt)や金(Au)等の貴金属のナノ粒子の抗酸化、抗菌、除菌、防カビ、鮮度保持、防臭等の効果が注目されている。これは、Pt及びAuも、食品添加物として認可されている安全性の高い素材であり、極めて表面積の大きなナノ粒子を製造することができるようになってきたためである。特に、Pt及びAuナノ粒子の分散液が、癌、糖尿病、アトピー性皮膚炎、アルツハイマー、網膜色素変性症等に関与する活性酸素種(スーパーオキシドアニオン、過酸化水素、ヒドロキシラジカル等)を分解する抗酸化剤としての有用性が高い(特許文献1〜3)。更に、この抗酸化能を利用して、皮膚の老化を防ぐ化粧料や皮膚外用剤等に応用されてきた(特許文献4〜7)。更に、貴金属ナノ粒子は、抗ウィルス能や抗菌能を有することが知られており、NaClOに替わるノロフィルスやインフルエンザ等の抗ウィルス剤(非特許文献3)や、洗濯耐久性に優れた医療用抗菌リネン類、宿泊施設用抗菌リネン類、日用抗菌衣類の抗菌剤(特許文献8)等にも応用されるようになってきた。
【0010】
このように、電解水も貴金属ナノ粒子分散液も、安全性が高い、抗菌性、抗ウィルス性、抗酸化性等の効能を有する素材であるが、それぞれ、その素材に固有の課題がある。
【0011】
電解水は、その効能因子であるHClOが光や空気と接触すると分解するため、効果が短いこと、タンパク質やアミノ酸を含むものとの混合で失活すること、電解水の表面張力が高いため、濡れ性や浸透性が悪く、効果が不均一であること等が挙げられる。これらの課題に対し、電解水の濡れ性や浸透性を高める方法として、界面活性剤の添加やマイクロバブル処理が報告されているが(特許文献9〜11)、効果が短いこと、及び、タンパク質やアミノ酸を含むものとの混合で失活することに対する具体的対策が見出されていない。
【0012】
一方、貴金属ナノ粒子分散液の課題は、分散剤等の不純物質を含まず、粒子径が小さくてその分布が狭いナノ粒子の製造方法が見出されていないことである。分散剤やその他不純物の存在は貴金属ナノ粒子の表面を被覆することになり、粒子径の大きなものの存在は貴金属ナノ粒子の表面積を減少させ、いずれも、貴金属ナノ粒子が有する抗酸化、抗ウィルス、抗菌、除菌、防カビ、鮮度保持、防臭等の能力を低下する原因になる(特許文献7及び非特許文献4)。
【0013】
従来、ナノ粒子は、気相法、液相法、及び、固相法で製造されてきたが、本技術分野においては、貴金属ナノ粒子の分散液として使用されるため、液相法の一つである還元法を利用される例が多い(特許文献1〜6及び8)。この還元法は、貴金属塩化物の水溶液に溶解した貴金属イオンを還元剤で還元することによって貴金属ナノ粒子を容易に生成することができるため、実験室レベルではよく用いられる。しかし、この還元法においては、貴金属ナノ粒子が、安定した分散液として存在するための界面活性能を有する分散剤が必要とされ、これが、貴金属ナノ粒子が有する各種効能を低下する原因になるという課題がある(特許文献7及び非特許文献4)。その他液相法としては、超臨界液体を用いる水熱合成法、加水分解、重縮合という化学反応を用いるゾル−ゲル法、溶解性金属塩から難溶性金属塩に変化させ、その沈殿物を焼成して製造する沈澱法、逆ミセル、ミセルを化学反応の場として利用する液中分散法等があるが、核形成、成長、停止という過程を経るため、粒子径の制御が困難で、数nm以下の微細なナノ粒子を製造することが難しく、分散剤を必要とし、不純物の混入を避けることができないという共通の問題がある。
【0014】
上記液相法とは異なり、分散剤を必要としないナノ粒子の製造方法としては、固相法及び気相法がある。固相法は、様々な物質の粒子の量産技術として使用されているものの、粒子サイズの限界が1μm程度であり、微細な純度の高いナノ粒子を製造することは困難である上、分級という操作が必要であり、本技術分野のナノ粒子として用いられることは困難である。気相法には、化学蒸着(CVD)法、気相合成法、蒸発・凝集法等がある。CVD法は、プラズマ等によって活性化された反応性モノマーが加熱炉において化学反応し、核生成、凝縮、凝集を経てナノ粒子が形成されるものであるが、生産効率が低く、エネルギー効率が悪いため、製造コストが高い上、核生成、凝縮、凝集というプロセスを経るため、粒子径が不均一になるという課題もある。気相合成法は、金属塩化物の反応ガス中で、酸化・還元・窒化することによって、ナノ粒子を生成する方法であるが、分散剤は用いないが、原料に基づく不純物の混入という問題がある。蒸発・凝集法は、不活性ガス中で、レーザーアブレーション、スパッタリング、真空蒸着等の方法で金属を一旦蒸発させた後、冷却することによってナノ粒子を製造する方法であり、CVD法と同様の問題がある。いずれにしても、本技術分野の分散液として使用する場合には、ナノ粒子を無害な液体に均一に分散するため、分散剤を必要とするという根本的な課題を解決できるものではない。
【0015】
このような状況において、近年、溶融塩のプラズマ誘起カソード電解や液相レーザーアブレーションを用いた、分散剤を必要としないナノ粒子の製造方法が開発されている(特許文献12〜15)。しかし、プラズマ誘起カソード電解法では、生産性が悪く、エネルギーロスが大きいため、その改良が試みられているが、蒸留水等の洗浄、フィルターによるろ過工程を必要とするという問題は未解決である(特許文献12)。液相レーザーアブレーション法は、液中で貴金属板にレーザーを照射すると同時に超音波を照射する簡単な方法であり、この方法を用いたPtナノ粒子の化粧料が報告されている(特許文献7)。ただし、前段落の気相レーザーアブレーション同様、粒子径が不均一になるという課題があり、レーザーの照射方法の工夫(特許文献13)、ヘキサン、トリエチルアミン、シリコンオイル、重水等の溶媒の選択(特許文献14及び15)、プラズマ発生装置の併設(特許文献15)等が検討されているが、装置が複雑になり、生産性が悪い上、溶媒が高価で、安全性に乏しい貴金属ナノ粒子の分散液となってしまう。従って、貴金属ナノ粒子の効能をより効果的に発揮でき、安全性の高い、貴金属ナノ粒子を用いた抗酸化剤、抗ウィルス剤、抗菌剤等とするために克服しなければならない製造方法の問題がある。
【0016】
更に、真空蒸着やスパッタリングによって放出された金属蒸気を、基板や担持体上で金属ナノ粒子として堆積させる物理蒸着(PVD)法が開発されている。この方法は、真空蒸着法やスパッタリング法による成膜プロセスの制御、すなわち、成膜初期において形成される島状の金属粒で成長を止めることによって金属ナノ粒子を生成する方法であり、粒子径及びその分布を制御しやすく、不純物を含まない金属ナノ粒子の製造方法として注目され、抗菌・滅菌を必要とする生活用品、排ガス・排水処理の触媒、太陽電池等のエレクトロニクス部品等様々な分野で期待されている(特許文献16〜18)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際公開第2005/023467号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2006/101106号パンフレット
【特許文献3】特開2007−176944号公報
【特許文献4】特開2005−139102号公報
【特許文献5】特開2005−179500号公報
【特許文献6】特開2008−063295号公報
【特許文献7】特開2015−067556号公報
【特許文献8】特開2008−056592号公報
【特許文献9】特開2006−176475号公報
【特許文献10】特開2006−176489号公報
【特許文献11】特開2013−010758号公報
【特許文献12】特開2008−106309号公報
【特許文献13】特開2009−299112号公報
【特許文献14】特開2010−077458号公報
【特許文献15】特開2010−144201号公報
【特許文献16】特開2009−511754号公報
【特許文献17】国際公開第2012/150804号パンフレット
【特許文献18】特開2009−246025号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】一般財団法人機能水研究振興財団ホームページ,http://www.fwf.or.jp/index.html,「機能水とは」
【非特許文献2】都田昌之監修,日本産業洗浄協議会編,「初歩から学ぶ機能水」,株式会社工業調査会発行,2002年8月15日
【非特許文献3】日刊工業新聞Business Line,http://www.nikkan.co.jp/news/nkx1020140206ccas.html,「Eu−BS、白金ナノでノロウィルスを破壊する抗ウィルススプレー発売」
【非特許文献4】株式会社エブリウェアーホームページ,http://www.pt−nano.net/index.html,「ナノプラチナ粒子溶液」
【非特許文献5】多賀康訓,「薄膜プロセス技術の研究」,総合工学,第22巻(2010)53−64.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、電解水が有する課題(その効能因子であるHClOが光や空気で分解して効果が短いこと、タンパク質やアミノ酸を含むものとの混合で失活すること、電解水の濡れ性や浸透性が悪くて効果が不均一であること)、並びに、貴金属ナノ粒子分散液が有する課題(粒子径が大きくて粒子径分布が広く、貴金属ナノ粒子の分散液が分散剤等の不純物を含むために、貴金属ナノ粒子の効能を効果的に発揮できないこと)を解決した抗酸化性、抗ウィルス性、抗菌性、防カビ性、鮮度保持、防臭等を効果的に長期間発揮でき、安全性が高い電解水を製造することができる原料を提供することである。また、本発明は、その原料を用いた電解液及びその電解液を電気分解した電解水、並びに、その電解液及び電解水の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、PVD法によって貴金属ナノ粒子を担持した塩化物粉末を作製し、これらの粉末を水に溶解した後、電気分解することによって得られる、貴金属ナノ粒子を含む電解水が、電解水と貴金属ナノ粒子とが有する、抗酸化性、抗ウィルス性、抗菌性、防カビ性、鮮度保持、防臭等の効能を効果的に長期間発揮でき、安全性が高い電解水であることを見出し、本発明を完成した。特に、本発明の貴金属ナノ粒子を担持した塩化物粉末は、塩化ナトリウム(NaCl)又は塩化カリウム(KCl)を、貴金属として、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、イリジウム(Ir)、又は、これらの合金を用いて製造されるものが好ましいことを見出した。
【0021】
すなわち、本発明は、貴金属ナノ粒子を含む電解水を製造する原料となる貴金属ナノ粒子をPVD法で担持した塩化物粉末を提供するものである。更に、この貴金属ナノ粒子を担持した塩化物を水に溶解した電解液及びその電解液の電気分解によって製造される電解水、並びに、その電解液及び電解水の製造法を提供するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の貴金属ナノ粒子を担持した塩化物粉末を水に溶解した電解液を電気分解して得られる電解水は、電解水及び貴金属ナノ粒子の洗浄・消毒・防臭等の衛生管理や生鮮食品の鮮度維持等に求められる抗菌性、抗ウィルス性、抗カビ性等に加え、貴金属ナノ粒子の皮膚の老化防止や美肌効果等の健康保全に求められる抗酸化性を有し、電解水の効能因子であるHClOが分解しても、貴金属ナノ粒子による効能が半永久的に持続することができる。また、従来の電解水は、タンパク質やアミノ酸を含むものとの混合で失活したり、電解水の濡れ性や浸透性が悪くて効果が不均一となったりするが、貴金属ナノ粒子の存在により、これらの問題を解決することができる。更に、貴金属ナノ粒子は、PVD法によって塩化物粉末上に担持されるため、分散剤を含まず、粒子径が小さく、粒子径分布の狭い上、これを水に溶解すると、貴金属ナノ粒子が均一に分散した電解液になるため、従来の金属ナノ粒子の効能を凌駕することができる。ただし、分散剤を必要とせず、均一に分散する理由は明らかではないが、塩化物の粉体に貴金属ナノ粒子が担持された状態で水に溶解、分散する工程が関与しているものと考えられる。
【0023】
従って、貴金属ナノ粒子を担持した塩化物を水溶液に溶解するだけで、貴金属ナノ粒子が均一に分散した電解液が得られる。更に、この電解液をそのまま電気分解することによって、洗浄・消毒・防臭等の衛生管理や生鮮食品の鮮度維持等に求められる抗菌性、抗ウィルス性、抗カビ性等に加え、皮膚の老化防止や美肌効果等の健康保全に求められる抗酸化性を有する貴金属ナノ粒子が均一に分散した電解水が簡便に得られる。そして、この電解水は、人体や衣類等に塗布した初期においては、電解水と貴金属ナノ粒子の両効能が相乗的に作用し、電解水のHClOが分解した後は、貴金属ナノ粒子の効能が半永久的に持続することになる。
【0024】
更に、農業の分野、特に、土壌や果樹の殺菌や除菌、噴霧冷却等において、貴金属ナノ粒子を担持したKCl粉末を溶解した電解液を用いて製造された電解水を用いると、土壌に肥料成分であるKが供給され、殺菌、除菌、冷却等の効果に加え、農作物に優れた育成効果をもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】塩化物粉末に担持された貴金属ナノ粒子を製造する代表的な装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
貴金属は、明確な科学的定義が存在するものではないが、一般的に、化学的変化を容易に受けず、常に金属光沢を保ち、生産量が少なく、高価であることを特徴とする、一般的に、金(Au)、銀(Ag)、及び、白金族(白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os))を指すものである。本発明のナノ粒子を形成する貴金属についても、上記貴金属が適しているが、これらの合金であっても良い。特に、Pt、Au、Ag、Ir、及び、これらの合金であることが好ましい。中でも、食品添加物として、安全性が認められている、Pt、Au、及び、Agがより更に好ましい。
【0027】
貴金属ナノ粒子を担持する塩化物は、塩化ナトリウム(NaCl)又は塩化カリウム(KCl)であり、不純物の少ない、平均粒子径が1μm〜3mmの粉末にして用いる。特に、水に対する溶解性を考慮すると、平均粒子径が1μm〜1mmであることがより好ましく、1μm〜500μmであることがより更に好ましい。また、塩化物の粉末は、貴金属ナノ粒子が堆積しやすい球状であることが好ましい。
【0028】
上記塩化物粉末に貴金属ナノ粒子を担持させる方法には、PVD法が適しており、真空蒸着法、イオンビーム蒸着法、イオンプレーティング法、及び、各種スパッタリング法を用いることができる。
図1には、代表例として、イオンビームスパッタリング法を用いた金属ナノ粒子の製造装置の概略図を示した。この製造装置では、イオン源2、貴金属又はその合金である蒸着源3、不活性ガス導入系8、真空排気系9を少なくとも有する物理蒸着槽1において、蒸着源3と蒸着源3の下部に設けられた、蒸着物質7が堆積する被蒸着物質である塩化物粉末10との間に、モーター6で精密に回転するスリット5を設けたシャッター4を設置することによって、イオン源2によって蒸着源3から叩き出される蒸着物質7が、間欠的に塩化物粉末10表面上に蒸着される。しかも、塩化物粉末10が均等に蒸着物質7に暴露されるように、製造装置の底部にスクリュー11が設けられている。このスクリュー11によって、製造装置の底にある塩化物粉末10−1が、塩化物粉末10−2のように持ち上げられ、塩化物粉末10−3で間欠的に蒸着され貴金属ナノ粒子が付着する。その後、一定の時間蒸着源に暴露されない塩化物粉末10−4に至る。
図1には、シャッター機構が配設されているが、必ずしもシャッター機構である必要はなく、精度よく塩化物粉末10上に貴金属ナノ粒子が堆積されるように、塩化物粉末10が蒸着物質7に暴露される時間を制御できる機構であれば、どのような方法でも採用することができる。例えば、イオン源2から放出されるイオンビームを制御する方法が挙げられる。
【0029】
塩化物粉末に貴金属ナノ粒子を担持させる上記方法において、貴金属ナノ粒子が母材となる塩化物粉末表面上に生成する機構は定かではないが、次のように推測されている。一般的な蒸着やスパッタリング等の成膜機構は、Volmer−Weber(VW)成長、Frank−van der Merwe(FM)成長、Stranski−Krastanov(SK)成長の3様式があると言われている(非特許文献5)。中でも、VW成長様式、つまり、成長の初期段階から三次元的な島状の核が形成され,それらが蒸着量の増加とともに成長して合体しやがて連続的な膜となる「島状成長(Island Growth)様式」に着目すると、物理蒸着物質と基板に関する表面エネルギー、温度等様々なパラメーターによって成膜機構に差が生じるが、成膜初期において、VW成長となる条件を見出し、上記母材を撹拌しながら物理蒸着を行えば、常に新しい堆積面が蒸着物質に対して向けられるため、3次元の海−島構造、すなわち、貴金属ナノ粒子が塩化物粉末表面上に次々と生成していくものと考えられる(特許文献18)。
【0030】
ここで、貴金属ナノ粒子が担持した塩化物粉末の製造における塩化物粉末に対する貴金属ナノ粒子の平均粒子径は、100nm以下であれば、貴金属ナノ粒子の様々な効能を発揮するが、その表面積が大きい程活性が高くなるため、50nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがより更に好ましい。また、貴金属ナノ粒子の堆積量は、貴金属ナノ粒子が担持した塩化物粉末を水又は希塩酸に溶解した電解液の組成に応じて設定されるが、この電解液を電気分解することによって最終的に製造される電解水に、電解水の課題を解決するために必要な貴金属ナノ粒子が存在すれば、その濃度は、特に限定されものではない。ただし、効果的かつ経済的には、電解水の種類に係わらず、電解水中に存在する貴金属ナノ粒子の濃度が、0.1〜100μMであることが好ましく、0.1〜5μMであることがより好ましく、0.1〜1μMであることがより更に好ましく、このような濃度となるように、塩化物粉末に貴金属ナノ粒子を堆積する。
【0031】
従って、一般的な強酸性電解水、弱酸性電解水、微酸性電解水、電解次亜水、強アルカリ性電解水を製造するための塩化物水溶液は、0.2%以下の濃度で使用されることが多いので、例えば、0.2%のNaCl水溶液100Lから製造する電解水中に貴金属ナノ粒子を0.1〜100μMの濃度で存在させるには、NaCl粉末200gに対して堆積させるPtナノ粒子は、約1.95×10
−4〜1.95gとなる。これは、Pt/NaClの重量比が約1×10
−6〜1×10
−3に相当する。このようにして、それぞれの塩化物粉末に対するそれぞれの貴金属ナノ粒子の堆積量を適宜決定することができる。ところで、中性電解水を製造するための塩化物水溶液は、通常、水道水を用いるが、塩化物濃度約2〜6%、塩酸濃度約0.2〜0.6%の電解液を電気分解しても製造できるため、塩化物単体を上記貴金属ナノ粒子を溶解させた塩化物水溶液に加えて濃度を調整して使用される。
【0032】
具体的には、
図1に示した物理蒸着槽1内に、平均粒子径が1μm〜3mmである球状の塩化物粉末を投入し、蒸着源3に貴金属又はその合金を備え付ける。次いで、物理蒸着槽1の真空度が1×10
−4〜1torrになるように真空排気系9から排気しながら、不活性ガス導入系8から不活性ガスArを物理蒸着槽1内に導入する。真空度が安定したら、スクリュー11及び回転モーター6を回転させながら、蒸着源3の貴金属又はその合金を、固定された平面基板上において単位面積当たり1Å〜10μm/分の速度で蒸発させ、所定量の貴金属ナノ粒子の重量となるまでナノ粒子を形成する。なお、上記蒸発速度は、一般的な重量法で、予め予備実験において設定する。
【0033】
このようにして製造された貴金属ナノ粒子は、電気分解するための電解液とするため、強酸性電解水、弱酸性電解水、電解次亜水、強アルカリ性電解水の場合には水に、約0.2%以下の塩化物濃度、すなわち、NaCl又はKCl濃度となるように溶解される。微酸性電解水の場合には、約2〜6%の希塩酸、或いは、約2〜6%の希塩酸に、約0.2%以下の塩化物濃度、すなわち、NaCl又はKCl濃度となるように溶解される。いずれの場合にも、使用する水は、水道水、地下水、純水(蒸留水、脱イオン水、RO水等)等、人為的に塩化物を添加していないものであれば制限されるものではないが、不純物の影響が少ない純水が好ましい。
【0034】
このように調整された電解液は、強電解性電解水、弱酸性電解水、又は、強アルカリ性電解水を製造する場合、
図2及び3に示した二室型電解槽及び三室型電解槽を用い、微酸性電解水、中性電解水、又は、電解次亜水を製造する場合は、
図4に示した一室型電解槽を用いて、それぞれ、一般的な製造条件で製造される。ここで、電極も、既存の電解槽で使用される炭素(C)、Pt、Au、PtやAuを被覆したチタン(Ti)等を用いることができる。ただし、陰極には、Ti等の様々な材質の電極を用いることができるが、C、Pt、Au等の不溶性電極を用いることが好ましい。これは、陽極と陰極を入れ替える極性反転によって、電極の寿命を延ばすことができるからである。
図2〜4は、電解槽の原理図であり、特別な電解槽が必要とされるものではない。一般的に、株式会社東芝、ホシザキ電機株式会社等で市販されている電解槽を用いることができる。
【実施例】
【0035】
以下、Ptナノ粒子を含有する微酸性電解水を製造するための原料、その原料を用いて製造した電解液、及び、その電解液の電気分解によって製造した電解水を実施例として、本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術思想が実施例によって制限されるものではない。
【0036】
NaCl粉末は、平均粒子径180〜500μmが85%以上のNaCl粉末(日本精塩製)を80メッシュ(線径0.14mm)のファインメッシュで篩にかけ、180μm以下の微粉を除去したものを用いた。
【0037】
次いで、
図1に示した物理蒸着槽1を用い、Ptナノ粒子をNaCl粉末に堆積させた。上記NaCl粉末を物理蒸着槽1に投入すると共に、Ptを蒸着源3に固定した後、物理蒸着槽1を密閉し、真空度が約1×10
−4torrになるように真空排気系9から排気しながら、不活性ガス導入系8から不活性ガスArを物理蒸着槽1内に導入した。真空度が安定した後、スクリュー11及び回転モーター6を回転させながら、蒸着源3のPtを、単位面積当たり1000Å/分の速度で蒸発させ、Pt/NaClの重量比が約1×10
−4となるまでナノ粒子を形成した。形成されたPtナノ粒子の粒子径は、1〜5nmであることを透過型電子顕微鏡で確認した。
【0038】
(実施例1)Ptナノ粒子が分散した微酸性電解水
このようにして作製されたPtナノ粒子を担持したNaCl粉末を、35%塩酸(旭硝子製)を水道水で希釈した5%の希塩酸に溶解し、0.1%のNaCl濃度となるように調整したところ、Ptナノ粒子が均一に分散した微酸性電解水用の電解液(1)が得られた。
【0039】
図4に示した一室型電解槽を用い、上記電解液(1)を、直流電源約3〜4V×4Aで電気分解した後、水道水で希釈し、pH約6、有効塩素濃度約10ppmのPtナノ粒子を含有する微酸性電解水が得られた。このPtナノ粒子が分散した微酸性電解水は、塗布直後の抗酸化性、抗菌性、抗ウィルス性、抗カビ性等は、Ptナノ粒子と微酸性電解水との相乗効果を示し、しかも、これらの効能がPtナノ粒子により半永久的に保持された。
【0040】
(実施例2)Ptナノ粒子が分散した電解次亜水
実施例1のPtナノ粒子を担持したNaCl粉末を、0.1%NaCl水溶液となるように水道水に溶解したところ、Ptナノ粒子が均一に分散した。このPtナノ粒子が分散したNaCl水溶液に、同量の5%NaCl水溶液を加え、Ptナノ粒子が分散した電解次亜水用の電解液(2)が得られた。
【0041】
図4に示した一室型電解槽を用い、上記電解液(2)を、直流電源約3〜4V×4Aで電気分解した後、水道水で希釈し、pH約8、有効塩素濃度約10ppmのPtナノ粒子を含有する電解次亜水が得られた。このPtナノ粒子が分散した電解次亜水も、塗布直後の抗酸化性、抗菌性、抗ウィルス性、抗カビ性等は、Ptナノ粒子と電解次亜水との相乗効果を示し、しかも、これらの効能がPtナノ粒子により半永久的に保持された。
【0042】
(実施例3)Ptナノ粒子が分散した中性電解水
実施例1のPtナノ粒子を担持したNaCl粉末を、0.1%NaCl水溶液となるように水道水に溶解したところ、Ptナノ粒子が均一に分散した。このPtナノ粒子が分散したNaCl水溶液に、NaCl担体を溶解し、4%のNaCl水溶液とし、更に、35%塩酸(旭硝子製)を加えて、塩酸濃度を0.4%とし、Ptナノ粒子が分散した中性電解水用電解液(3)が得られた。
【0043】
図4に示した一室型電解槽を用い、上記電解液(2)を、直流電源約3〜4V×4Aで電気分解した後、水道水で希釈し、pH約7、有効塩素濃度約10ppmのPtナノ粒子を含有する中性電解水が得られた。このPtナノ粒子が分散した中性電解水も、塗布直後の抗酸化性、抗菌性、抗ウィルス性、抗カビ性等は、Ptナノ粒子と中性電解水との相乗効果を示し、しかも、これらの効能がPtナノ粒子により半永久的に保持された。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、食品加工業、農業、水産業、サービス業、医療・介護、上下水処理・空気処理等の様々な業種において利用できる。そして、いずれの業種においても、各種食材、作業衣、容器・器具、加工・搬送装置、食指、トイレ、作業場・施設、冷却水・給水・上水・排水等の殺菌、除菌、洗浄、清掃等に用いられるばかりか、防臭、除臭、防カビ等幅広い用途で使用することができる。特に、農業分野で用いる場合、殺菌、除菌、洗浄等の効能に加え、肥料成分が供給されるため、農作物の育成に優れた効能を発揮する。
【符号の説明】
【0045】
1 物理蒸着槽
2 イオン源
3 蒸着源
4 シャッター
5 スリット
6 回転モーター
7 蒸着物質
8 不活性ガス導入系
9 真空排気系
10 塩化物粉末(被蒸着物質・母材)
11 スクリュー
12 撹拌モーター
13 塩化物粉末の移動経路
14 電解槽
15 陽極
16 陰極
17 電源
18 陽イオン交換膜
18’陰イオン交換膜
19 電解液導入口
20 酸性電解水出口
21 アルカリ性電解水出口
22 電解液出口
23 水導入口