(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【0009】
図1は、隔て板10の設置状態を示す正面図である。同図に示すように、隔て板10は、例えばマンションやビル等の建造物1のベランダやバルコニーにおける住戸間の境界部分に設けられる。隔て板10は、建造物1の住戸側壁面3と屋外側壁面(手摺)5との間に設置される。隔て板10は、住戸側壁面3や床スラブ7に対して固定手段11等を介して設置されており、住戸のベランダやバルコニーを区画する。隔て板10は、例えば正面視縦長矩形状であって、枠体20と、当該枠体20内に収容される目隠しパネル30とを主たる構成として備える。なお、以下の説明において「幅方向」とは、隔て板10を正面視した時の住戸側,屋外側に渡る方向を示し、「奥行方向」とは、上記幅方向と直交する上下方向以外の方向であり、「厚さ方向」と同義である。また、「上下方向」とは、上記幅方向及び奥行方向と直交する方向である。なお、枠体20内に目隠しパネル30を収容した状態において、風は目隠しパネル30を奥行方向に通過する。
【0010】
枠体20は、例えば金属や硬質性の樹脂等からなるフレームにより、正面視矩形状に組み付けられる。枠体20は、上下方向に延在し、住戸側壁面3と平行に設けられる一対の縦フレーム21A;21Bと、幅方向に延在し、一対の縦フレーム21A;21Bの両端部に架設される一対の横フレーム23A;23Bと、一対の縦フレーム21A;21Bの中間部において、横フレーム23A;23Bと同一方向に延在する中間フレーム25とを備える。縦フレーム21A;21Bは、例えば横断面略コ字状の中空体であって、コ字状の開口同士が幅方向に対向するように設けられる。また、横フレーム23A;23Bも同様に縦断面略コ字状の中空体であって、コ字状の開放同士が上下方向に対向するように設けられる。中間フレーム25は、縦断面略H字状に形成され、上下の開口が横フレーム23A;23Bの開口と向き合うように設けられる。このような各フレームが図外の固定手段により組立てられることにより、枠体20には後述の目隠しパネル30を収容可能な上下段の開口部27が開設される。なお、開口部27の数はこれに限られるものではない。
【0011】
以下、目隠しパネル30の構造について説明する。
図2(a)は、開口部27内に収容される目隠しパネル30の全体斜視図であり、
図2(b)は、目隠しパネル30の要部断面図である。なお、以下の説明においては、目隠しパネル30を上段の開口部27に収容する場合を例とする。目隠しパネル30は、例えばケイ酸カルシウムや硬質樹脂、軟質金属等を素材として、3Dプリンタを用いて一体的に作製される。
【0012】
目隠しパネル30は、幅方向に対向する一対の支持部31A;31Bと、当該支持部31A;31B間に渡って延長し、支持部31A;31Bの上下方向に沿って配列される複数の整流板40とを備える。
図1にも示すとおり、支持部31A;31Bは、上段の開口部27を形成する縦フレーム21A;21Bと対応する部分であり、断面コ字状に形成された縦フレーム21A;21Bの開口部内に挿入された状態で収容される。
【0013】
図2に示すように複数の整流板40は、奥行方向と直交する支持部31A;31Bの上下方向に沿って一定の間隔を有して配列されている。整流板40の奥行方向の寸法は、例えば5〜20mm程度に設定され、その肉厚は、火事や地震等の非常時において人力により容易に破壊可能な例えば0.5mm〜5.0mm程度に設定される。なお、本明細書においては、複数の整流板40の配列方向を奥行き方向と直交する上下方向として説明しているが、配設方向はこれに限られるものではなく、例えば複数の整流板40の配列方向を幅方向と対応させることや、斜め方向としてもよい。
【0014】
同図に示すように、各整流板40は目隠しパネル30の奥行寸法(厚さ寸法)Sの中心を通る仮想中心線L1と一致する屈曲部Pを境として、当該屈曲部Pから奥行方向の一方側に向けて下方に傾斜して延長する第1整流部41と、屈曲部Pから奥行方向の他方側に向けて下方に傾斜して延長する第2整流部43とを有する。つまり、第1整流部41と第2整流部43とは、屈曲部Pを基準とした場合に、互いに逆方向に延長するとともに、同一方向(下方向)に傾斜する。同図に示すように、第1整流部41の下端部41Aと、第2整流部43の下端部43Aとを結ぶ仮想水平線L2に対する第1整流部41の傾斜角θ1、及び第2整流部43の傾斜角θ2は、例えば5°〜40°の範囲で任意に選択可能であり、本実施形態では傾斜角θ1;θ2が同一角に設定されている。
【0015】
上記構成からなる整流板40が、支持部31A;31Bの上下方向に沿って複数配列されると、上下に隣り合う整流板40の第1整流部41同士、及び第2整流部43同士は平行となり、上下に隣り合う整流板40;40間には、奥行き方向に渡って流路間隔(流路径)Qが一定な通風路Rが形成される。そして、
図2(b)に示すように、例えば奥行き方向の一方側から他方側に向けて吹き付ける風は、複数の整流板40;40によって形成される複数の通風路Rを経由して他方側に吹き抜けることとなる。
【0016】
次に、上下に隣り合う整流板40;40同士の間隔について詳説する。
図3(a)に示すように、上下に隣り合う整流板40;40の間隔は、少なくとも下方に位置する整流板40の屈曲部Pの頂部P1の位置(上下位置)が、上方に位置する整流板40の第1整流部41及び第2整流部43の延長端としての下端部41A;43Aを結ぶ仮想水平線L2の位置以上となるように設定される。ここで、頂部P1は、奥行寸法S内に位置し、1の整流板40において最も上方に位置する点である。そして、下方に位置する整流板40の頂部P1の位置を上方に位置する整流板40に対して上記のように設定することにより、例えば奥行方向の一方側から奥行方向の他方側をあらゆる角度から視認しても、視線X1の先に必ず頂部P1、或いは、第2整流部43が存在することとなるため、視線を遮る目隠しパネル30としての機能を奏することができる。
【0017】
図3(b)は、目隠しパネル30の複数の整流板40によって形成される複数の通風路Rを通過する風Wと、当該風Wの風力の影響によって各整流板40に作用する力を模式的に示す断面図である。なお、以下説明の便宜上、同図において最も上方に位置する整流板40を整流板40Aとし、当該整流板40Aよりも下方に位置する整流板40を順に整流板40B;40Cとする。また、同図において上方に位置する通風路Rを通風路R1とし、当該通風路R1の下方に位置する通風路Rを通風路R2とする。同図に示すように、目隠しパネル30の全域に奥行方向の一方側から他方側に向かう風Wが吹いた場合、当該風Wは、整流板40A;40Bとの間に形成された通風路R1及び、整流板40B;40Cとの間に形成された通風路R2内を同時に通過する。そしてこのとき、通風路R1のみに着目すると、当該通風路R1を形成する整流板40Aの第1整流部41及び第2整流部43の表面には、風Wの通過直後に生じる負圧により、風Wの進入角度に直交する下向きの力F1が作用する。一方で、通風路R1を形成する整流板40Bの第1整流部41及び第2整流部43の表面には、風Wの通過直後に生じる負圧により、風Wの進入角度に直交する上向きの力F2が作用する。
【0018】
次に、通風路R2のみに着目すると、当該通風路R2を形成する整流板40Bの第1整流部41及び第2整流部43の表面には、風Wの通過直後に生じる負圧により、風Wの進入角度に直交する下向きの力F1が作用する。一方で、通風路R2を形成する整流板40Cの第1整流部41及び第2整流部43の表面には、風Wの通過直後に生じる負圧により、風Wの進入角度に直交する上向きの力F2が作用する。そして、上下に隣り合う通風路R1;R2を形成する整流板40Bのみに着目すると、当該整流板40Bの第1整流部41及び第2整流部43には、下向きの力F1と、当該下向きの力F1と釣り合う反対向きのベクトルを有する上向きの力F2が同時に作用するため、整流板40B全体に作用する力は実質的に0となる。
【0019】
そして、目隠しパネル30を全体視した場合、上下に隣り合う3つの整流板40によって、2つの通風路Rが形成されること、換言すれば上下に隣り合う2つ通風路Rの間に1の整流板40が存在することから、目隠しパネル30のうち、最も上方及び最も下方に位置する整流板40を除く各整流板40に作用する力も実質的に0となる。これにより、風Wの風力の影響によって目隠しパネル30に作用する力を大幅に低減でき、台風等により目隠しパネル30に対して過大な風力が作用した場合であっても目隠しパネル30が破損することを防止できる。
なお、上述の実施形態においては、互いに隣り合う複数の整流板40の第1整流部41同士、及び第2整流部43同士を互いに平行となるように配列し、通風路Rの流路間隔Qを奥行方向に沿って一定なものとしたが、上記第1整流部41同士、及び第2整流部43同士又はこれらのいずれかを非平行とした場合であっても、下向きの力F1、当該力F1とは反対向きのベクトルを有する上向きの力F2が同時に作用するため、第1整流部41又は第2整流部43に作用する力を低減する効果を奏する。
【0020】
以下、
図4を参照して目隠しパネル30の他の実施形態について、上述の実施形態と比較しつつ説明する。
図4(a)に示す目隠しパネル30は、整流板40の断面形状がV字状である点で相違する。具体的には、各整流板40は、仮想中心線L1と一致する屈曲部Pを境として、当該屈曲部Pから奥行方向の一方側に向けて上方に傾斜して延長する第1整流部41と、屈曲部Pから奥行方向の他方側に向けて上方に傾斜して延長する第2整流部43とを有する。つまり、第1整流部41と第2整流部43とは、屈曲部Pを基準とした場合に、互いに逆方向に延長するとともに、同一方向(本例においては上方)に傾斜する。同図に示すように、第1整流部41の上端部41Aと、第2整流部43の上端部43A同士を結ぶ仮想水平線L2に対する第1整流部41の傾斜角θ1、及び第2整流部43の傾斜角θ2は、上述した角度の範囲から任意に選択可能であり、本実施形態では同一角度に設定される。このような形態であっても、上下に隣り合う通風路Rの間に位置する整流板40に作用する力を0とすることができる。
【0021】
次に、本実施形態に係る目隠しパネル30において上下に隣接する整流板40;40同士の間隔について詳説する。
図4(a)に示すように、上下に隣接する整流板40;40の間隔は、少なくとも上方に位置する整流板40の屈曲部Pの頂部P1の位置(上下位置)が、下方に位置する整流板40の第1整流部41及び第2整流部43の上端部41A;43Aを結ぶ仮想水平線L2の位置以下となるように設定される。ここで、頂部P1は、1の整流板40において最も下方に位置する点である。そして、上方に位置する整流板40の頂部P1の位置を下方に位置する整流板40に対して上記のように設定することにより、目隠しパネル30としての機能を十分に奏することができ、上下に隣り合う通風路Rの間に位置する整流板40に作用する力を実質的に0とすることができる。
【0022】
図4(b)に示す目隠しパネル30は、整流板40の第1整流部41と、第2整流部43との傾斜角度、及び延長寸法が互いに異なっている点、屈曲部Pの位置が仮想中心線L1から奥行方向の一方側に位置ずれしている点で相違する。具体的には、各整流板40は、目隠しパネル30の奥行寸法Sの仮想中心線L1よりも一方側に位置ずれした屈曲部Pを境として、当該屈曲部Pから奥行方向の一方側に向けて下方に傾斜して延長する第1整流部41と、屈曲部Pから奥行方向の他方側に向けて下方に傾斜して延長する第2整流部43とを有する。また、同図に示すように、第1整流部41の下端部41Aと、第2整流部43の下端部43A同士を結ぶ仮想水平線L2に対する第1整流部41の傾斜角θ1は、第2整流部43の傾斜角θ2よりも大きく設定される。そして、屈曲部Pの位置ずれにより、屈曲部Pを基準とした第1整流部41の延長寸法は、第2整流部43の奥行方向の延長寸法よりも短く設定されている。このような形態であっても上下に隣り合う通風路Rの間に位置する整流板40に作用する力を実質的に0とすることができる。なお、本実施形態においては、屈曲部Pの位置を仮想中心線L1よりも奥行方向の一方側に位置ずれさせたが、奥行寸法Sの範囲内であれば、奥行き方向の他方側に位置ずれさせた形態であってもよい。また、本実施形態において、上下に隣り合う整流板40;40の間隔については、
図2,
図3に示す実施形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0023】
図4(c)に示す目隠しパネル30は、整流板40の第1整流部41と、第2整流部43との延長寸法が互いに異なっている点で相違する。具体的には、各整流板40は、目隠しパネル30の仮想中心線L1と一致する屈曲部Pを境として、当該屈曲部Pから奥行方向の一方側に向けて下方に傾斜して延長する第1整流部41と、屈曲部Pから奥行方向の他方側に向けて下方に傾斜し、第1整流部41よりも短い寸法で延長する第2整流部43とを有する。同図に示すように、第1整流部41の傾斜角θ1は、第2整流部43の傾斜角θ2よりも小さい角度に設定されている。また、本実施形態においては、第1整流部41の延長寸法が、第2整流部43の延長寸法よりも長く設定されていることから、第2整流部43の下端部43Aの位置が、第1整流部の下端部41Aの位置よりも上方となる。
【0024】
そして、第2整流部43の延長端としての下端部43Aの位置が、第1整流部の延長端としての下端部41Aの位置よりも上方となるように設定された整流板40;40同士の間隔も、下端部41A;43Aを結ぶ仮想水平線L2の位置以上となるように設定される。即ち、上下に隣り合う整流板40;40の間隔は、少なくとも下方に位置する整流板40の屈曲部Pの頂部P1の位置(上下位置)が、上方に位置する整流板40の第1整流部41及び第2整流部43の下端部41A;43Aを結ぶ仮想水平線L2の位置以上となるように設定される。このように、第1整流部41と第2整流部43との延長寸法が異なる場合にあっても、整流板40;40同士の間隔を下端部41A;43Aを結ぶ仮想水平線L2の位置以上となるように設定することにより、視界を遮る目隠しパネル30の機能を奏することができる。また、このような形態であっても上下に隣り合う通風路Rの間に位置する整流板40に作用する力を実質的に0とすることができる。
【0025】
図4(d)に示す目隠しパネル30は、整流板40の第1整流部41及び第2整流部43の形状、及び整流板40;40同士の間隔が異なっている点で相違する。具体的には、各整流板40は、目隠しパネル30の仮想中心線L1と一致する屈曲部Pを境として、当該屈曲部Pから奥行方向の一方側に向けて下方に傾斜するとともに、下端部において水平方向に延長する第1整流部41と、屈曲部Pから奥行方向の他方側に向けて下方に傾斜し、下端部において水平方向に延長する第2整流部43とを有する。また、第1整流部41及び第2整流部43の傾斜角θ1,θ2は、例えば45°に設定されており、上述の各実施形態に係るものよりも急角度とされている。
【0026】
次に、本実施形態に係る目隠しパネル30において上下に隣り合う整流板40;40同士の間隔について詳説する。
図4(d)に示すように、上下に隣接する整流板40;40の間隔は、下方に位置する整流板40の屈曲部Pの頂部P1の位置(上下位置)が、上方に位置する整流板40の第1整流部41及び第2整流部43の上端部41A;43Aを結ぶ仮想水平線L2の位置よりも上方となるように設定される。このように、整流板40の形状は、上述した各実施形態に係るものに限られるものではなく、整流板40;40同士の間隔についても、整流板の端部を基準位置として、頂部P1の位置を当該基準位置と同位置、或いは、当該基準位置よりも上方又は下方に設定することにより、目隠しパネル30の目隠しとしての機能を十分に果たすことができる。なお、頂部P1の位置を基準位置よりも下方に設定する場合とは、
図4(a)に示す実施形態を考慮したものである。
【0027】
図4(e)に示す目隠しパネル30は、整流板40の断面形状が大きく異なる点で相違する。具体的には、各整流板40は、目隠しパネル30の仮想中心線L1と一致する頂部P1を基準として、当該頂部P1から奥行方向の一方側に向けて一定の曲率を有して下方に向けて湾曲して傾斜する第1整流部41と、当該第1整流部41と連続し、頂部P1を基準として、当該頂部P1から奥行方向の他方側に向けて一定の曲率を有して下方に向けて湾曲して傾斜する第2整流部43とを有するアーチ状に形成される。そして、各整流板40は、曲率半径が同一に設定される。
【0028】
図4(e)に示すように、上下に隣り合うアーチ状の整流板40;40の間隔は、少なくとも下方に位置する整流板40の頂部P1の位置(上下位置)が、上方に位置する整流板40の第1整流部41及び第2整流部43の下端部41A;43Aを結ぶ仮想水平線L2の位置以上となるように設定される。ここで、本実施形態おける頂部P1とは、1のアーチ状の整流板40において最も上方に位置する点である。このような形態であっても視界を遮る目隠しパネル30機能を奏することができとともに、上下に隣り合う通風路Rの間に位置する整流板40に作用する力を実質的に0とすることができる。また、本実施形態においては、通風路Rを形成する整流板40がアーチ状に形成されているため、整流板40の表面に風圧が生じ難く、目隠しパネル30の破損を防止可能である。
【0029】
また、
図5を参照し、目隠しパネル30の上記以外の実施形態について説明する。
図5(a)に示す目隠しパネル30の各整流板40は、目隠しパネル30の頂部P1において一定の曲率を有して湾曲するとともに、一方側の湾曲端部から奥行方向の一方側に向けて下方側に直線状に延長する第1整流部41と、他方側の湾曲端部から奥行方向の他方側に向けて下方側に直線状に延長する第2整流部43とを有する。つまり、
図5(a)に示す各整流板40は、頂部P1を含む奥行方向中央部が所定の湾曲面を有するアーチ状に形成され、湾曲面よりも奥行方向の一方側及び他方側が直線状に形成される。
このような形態であっても、上下に隣接する整流板40;40の間隔は、下方に位置する整流板40の頂部P1の位置が上方に位置する整流板40の第1整流部41及び第2整流部43の下端部41A;43Aを結ぶ仮想水平線L2の位置よりも上方となるように設定されるので、視界を遮る目隠しパネル30の機能を奏することができ、上下に隣り合う通風路Rの間に位置する整流板40に作用する力を実質的に0とすることができる。また、特に、整流板40の頂部P1を湾曲面を有するアーチ状としたので、奥行方向の一方側から頂部P1を経由して他方側に吹き抜ける風Wを滑らかにすることができ、頂部P1付近で風Wの気流に乱れが生じることを防止可能である。なお、第1整流部41及び第2整流部43の傾斜角θ1,θ2等については、
図2,
図3に示す実施形態と同様である。
【0030】
図5(b)に示す目隠しパネル30の各整流板40は、目隠しパネル30の仮想中心線L1が通る頂面47の奥行方向中央部P2を境として、当該奥行方向中央部P2から奥行方向の一方側に向けて直線状に延長するとともに、その端部において奥行方向の一方側に向けて下方に傾斜する第1整流部41と、頂面47の奥行方向中央部P2から奥行方向の他方側に向けて直線状に延長するとともに、その端部において奥行方向の他方側に向けて下方に傾斜する第2整流部43とを有する略台形状に形成される。ここで、頂面47は、第1整流部41及び第2整流部43の下端部41A;43Aを結ぶ仮想水平線L2と平行な面であり、上術の頂部P1に相当する。つまり、
図5(b)に示す各整流板40は、頂面47が水平であり、頂面47よりも奥行方向の一方側及び他方側が下方に向けて直線状に形成される。
【0031】
図5(b)に示すように、上下に隣り合う略台形状の整流板40;40の間隔は、少なくとも下方に位置する整流板40の頂面47の位置が、上方に位置する整流板40の第1整流部41及び第2整流部43の下端部41A;43Aを結ぶ仮想水平線L2の位置以上となるように設定される。このような形態であっても視界を遮る目隠しパネル30の機能を奏することができとともに、上下に隣り合う通風路Rの間に位置する整流板40に作用する力を実質的に0とすることができる。また、頂面47が仮想水平線L2と平行であることから、通風路Rを通過する風Wを滑らかにすることができる。
【0032】
以下、風Wの通過直後に生じる負圧により風Wの進入角度に直交する上向きの力F2及び下向きの力F1の測定方法、及び当該上向きの力F2及び下向きの力F1から算出した整流板40に作用する力の相対値(力の差)について説明する。
図6(a)に示すように、本実施例では、
図1〜
図3で説明した形状の目隠しパネル30を用いた。試験条件は、以下のとおりである。
【0033】
[目隠しパネル30の条件]
整流板40の幅方向寸法:1000mm
整流板40の奥行寸法S:10mm
第1整流部41及び第2整流部43の傾斜角θ1,θ2:10°
整流板枚数:11枚
目隠しパネル30の上下寸法:9.7mm
【0034】
[試験方法]
上記寸法及び傾斜角θ1,θ2を有する整流板40を上下方向に11枚配列して目隠しパネル30のモデルを作製した。そして、風速一定の条件下、奥行方向の一方側から風Wを吹き付けて各整流板40の上面に作用する上向きの力F2と、各整流板40の下面に作用する下向きの力F1とを測定し、当該力F1;F2から式1により整流板40に作用する力の相対値(力の差)を算出した。
式1:力の相対値=(上向きの力F2−下向きの力F1)×sin10°
なお、式1中のsin10°は、仮想中心線L1に対して平行となる力を算出するためのものである。
【0035】
[測定点]
次に、上向きの力F2及び下向きの力F1の測定点(相対値を算出した個所)について説明する。
図6(a)に示すように、上向きの力F2及び下向きの力F1の測定は、目隠しパネル30(上から整流板1〜整流板11までの全11枚の整流板40)を幅方向に沿って10等分し、そのうち幅方向中央部と幅方向端部とを対象に行った。
図6(a)の拡大図は、整流板40の一部(10等分したうちの1の整流板40´)を示している。同図に示すように、整流板40´には測定列を設定した。具体的には、整流板40´の幅方向の一方側の端部から10mmの位置をA列とし、幅方向の一方側の端部から50mmの位置(幅方向中央)をB列とし、幅方向の一方側の端部から90mmの位置(幅方向の他方側の端部から10mmの位置)をC列とした。そして、A列〜C列毎に測定点を設定した。具体的な測定点としては、第1整流部41の下端部41A(風上側)から屈曲部P側に向かって0.75mmの位置を測定点1とし、下端部41Aから屈曲部P側に向かって2.5mmの位置(第1整流部41における奥行方向中央)を測定点2とし、下端部41Aから屈曲部P側に向かって4.25mmの位置(屈曲部Pから下端部41A側に向かって0.75mmの位置)を測定点3とした。また、第2整流部43の測定点4、測定点5、及び測定点6は、第1整流部41の測定点3、測定点2、及び測定点1を屈曲部Pに対して対称となるように設定した。
【0036】
次に、
図6(b)に示すように、目隠しパネル30の比較例として目隠しパネル60を用いて同様の試験を行った。目隠しパネル60は、
図6(a)に示す目隠しパネル30と略同等の寸法に形成された通風路Rを有さない箱体であって、内部を風Wが吹き抜けることのない構造である。
【0037】
[目隠しパネル60の条件]
目隠しパネル60の幅方向寸法:1000mm
目隠しパネル60の奥行寸法S:10mm
目隠しパネル60の上下寸法:9.7mm
【0038】
[試験方法]
上記寸法を有する目隠しパネル60のモデルを作製し、風速一定の条件下、奥行方向の一方側(風上側)から風Wを吹き付けて、目隠しパネル60の風上側の面に作用する力と、風下側の面に作用する力とを測定し、当該力から式2により目隠しパネル30に作用する力の相対値を算出した。
式2:力の相対値=風上側の面に作用する力−風下側の面に作用する力
【0039】
[測定点]
図6(b)に示すように、風上側及び風下側の面に作用する力の測定は、目隠しパネル60を幅方向に沿って10等分し、そのうち幅方向中央部と幅方向端部とを対象に行った。また、
図6(b)の拡大図は、10等分したうちの1の目隠しパネル60´を示している。同図に示すように、目隠しパネル60´の測定列としては、幅方向の一方側の端部から10mmの位置をA列とし、幅方向の一方側の端部から50mmの位置(幅方向中央)をB列とし、幅方向の一方側の端部から90mmの位置(幅方向の他方側の端部から10mmの位置)をC列として設定した。そして、A列〜C列毎の測定点としては、風上側の面及び風下側の面の上端部から0.44mmの位置を測定点1とし、以下等間隔(0.88mm毎)に測定点2〜測定点11とした。
【0040】
[整流板40に作用する力の相対値の算出結果(実施例)]
図7は、目隠しパネル30の整流板40に作用する力の相対値を算出した結果である。ここで、表中の整流板とは、全11枚のいずれの整流板であるかを示しており、整流板1が目隠しパネル30の最も上部に位置し、整流板11が目隠しパネル30の最も下部に位置する。また、測定部とは、幅方向中央部であるか又は幅方向端部であるかを示している。また、測定列とは、上述したA列〜C列のいずれかを示し、測定点とは、上向きの力F2及び下向きの力F1を求めた位置を示している。さらに、相対値とは、上向きの力F2及び下向きの力F1から式1により算出した整流板40に作用する力の差である。
【0041】
同図に示すように、全11枚の整流板40のうち、整流板2〜整流板10の各測定点における力の相対値は、−0.04〜0.03と極めて低い値となった。これは、整流板2〜整流板10の上面に作用する上向きの力F2と下面に作用する下向きの力F1とがほぼ等しいことを示しており、整流板2〜整流板10に作用する力は実質的に0であることがわかる。
一方、整流板1の各測定点における力の相対値は、−0.25〜−0.03と算出された。これは、整流板1が目隠しパネル30の最も上部に位置することから、風Wが通風路Rを通過することにより下向きの力F1が整流板1に作用するためである。また、整流板11の各測定点における力の相対値は、0.00〜0.21と算出された。これは、整流板11が目隠しパネル30の最も下部に位置することから、風Wが通風路Rを通過することにより上向きの力F2のみが整流板11に作用するためである。整流板1及び整流板11の各測定点における力の相対値については、整流板2〜整流板10と比較すると大きな値となっているものの、後述する比較例(
図8参照)と比べると小さな値であることがわかる。このことから、整流板1に作用する下向きの力F1及び整流板11に作用する上向きの力F2についても低減できることが明らかとなった。
また、目隠しパネル30を全体視した場合、整流板2〜整流板10に作用する力は実質的に0となり、整流板1及び整流板11には互いに逆向きの力が作用して相殺し合うため、風Wの風力の影響により目隠しパネル30に作用する力を大幅に低減できる。よって、台風等により目隠しパネル30に対して過大な風力が作用した場合であっても目隠しパネル30が破損することを防止できる。
【0042】
[目隠しパネル60に作用する力の相対値の算出結果(比較例)]
図8は、比較例としての目隠しパネル60の各測定点における力の相対値を示す表である。同図に示すように、各測定点での力の相対値は、0.63〜1.16と算出され、上記実施例と比較すると、極めて高い値であることがわかる。また、力の相対値がいずれも正圧であることから、目隠しパネル60の風下側の面に作用する力よりも風上側の面に作用する力の方が大きいことがわかる。
【0043】
以上、目隠しパネル30は、複数の整流板40を上下に配列し、通風路Rを形成することにより、各整流板40に作用する上向きの力F2及び下向きの力F1を低減でき、特に目隠しパネル30のうち、最も上方及び最も下方に位置する整流板40を除く各整流板40に作用する力を実質的に0にできることが確認された。これにより、風Wの風力の影響によって目隠しパネル30に作用する力を大幅に低減でき、台風等により目隠しパネル30に対して過大な風力が作用した場合であっても目隠しパネル30が破損することを防止できる。
【0044】
以上、本発明に係る目隠しパネル30を複数の実施形態を通じて説明したが、整流板40の形状や具体的寸法はこれらのものに限られるものではなく、例えばその断面形状をM字状やW字状とすることや、上記各実施形態に係る特徴点を組み合わせた形態としてもよい。
なお、
図4において仮想中心線L1を基準とする線対称となるのは、
図4(a)に示す変形例,
図4(d)に示す変形例,
図4(e)に示す変形例,
図5(a)に示す変形例,及び
図5(b)に示す変形例である。
【0045】
また、本発明の技術的範囲は上記実施形態に何ら限定されることはなく、実施形態を組み合わせて多様な変更、改良を行い得ることが当業者において明らかである。また、そのような多様な変更、改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが特許請求の範囲の記載から明らかである。
上記実施形態においては、建造物1に設けられるいわゆる隔て板に目隠しパネル30を適用した例を説明したが、使用用途はこれに限定されない。例えば、目隠しパネル30の材質を硬質性樹脂や金属、ガラス等に変更することにより、建造物1の屋外側壁面(手摺)5等としても使用できる。つまり、本実施形態の目隠しパネル30は、目隠しとしての機能が要求される場所であれば、材質や形状を適宜選択することにより、いずれの場所に対しても適用可能である。