(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6656846
(24)【登録日】2020年2月7日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】流路切換弁及びシール部材
(51)【国際特許分類】
F16K 5/04 20060101AFI20200220BHJP
F16K 11/085 20060101ALI20200220BHJP
F16J 15/18 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
F16K5/04 A
F16K11/085 Z
F16J15/18 C
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-167030(P2015-167030)
(22)【出願日】2015年8月26日
(65)【公開番号】特開2017-44266(P2017-44266A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2018年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100129861
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 滝治
(74)【代理人】
【識別番号】100182176
【弁理士】
【氏名又は名称】武村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】近藤 大介
(72)【発明者】
【氏名】望月 健一
(72)【発明者】
【氏名】原 聖一
【審査官】
角田 貴章
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭60−054874(JP,U)
【文献】
米国特許第02728550(US,A)
【文献】
米国特許第03554488(US,A)
【文献】
特開平10−213248(JP,A)
【文献】
特開2015−034560(JP,A)
【文献】
実開昭57−075266(JP,U)
【文献】
特開昭63−026472(JP,A)
【文献】
特開2012−154456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 5/00−5/22
11/00−11/24
F16J 15/16−15/32
15/324−15/3296
15/3204
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に弁室が形成されると共に、外周部に2つの流出口が設けられた円筒状胴部を有する弁本体と、周方向で2つの連通口が形成され且つ前記弁室内に回転可能に配置される円筒状弁体部を有する弁体と、該弁体を回転させるための回転駆動装置と、前記弁室と各流出口との間の流体の漏洩を抑制すべく前記弁本体の円筒状胴部と前記弁体の円筒状弁体部との間に介装された円筒状のシール部材と、を備え、
前記回転駆動装置によって前記弁室内で前記弁体の前記円筒状弁体部を回転させることにより、前記円筒状弁体部が前記シール部材の内周側を回転摺動して前記弁本体の前記流出口の開閉又は切換を行うようにされた流路切換弁であって、
前記シール部材には、周方向で該シール部材の中心軸線に対して非対称となる位置に前記2つの流出口と連通する2つの開口が形成され、各開口周りに内側へ向けてシール用の内側リブが突設されると共に、前記シール部材の前記2つの開口の成す角が大きい側に、該シール部材の内側に配在される前記弁体の前記円筒状弁体部を前記内側リブと共に支持する内側突起が該シール部材から内側へ向けて突設され、
前記内側突起の内端には、前記弁体の前記円筒状弁体部の外周に沿うように周方向に拡がる幅広部が設けられていることを特徴とする流路切換弁。
【請求項2】
前記内側突起は、前記シール部材の中心軸線方向に向けて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の流路切換弁。
【請求項3】
内部に弁室が形成されると共に、外周部に2つの流出口が設けられた円筒状胴部を有する弁本体と、周方向で2つの連通口が形成され且つ前記弁室内に回転可能に配置される円筒状弁体部を有する弁体と、該弁体を回転させるための回転駆動装置と、前記弁室と各流出口との間の流体の漏洩を抑制すべく前記弁本体の円筒状胴部と前記弁体の円筒状弁体部との間に介装された円筒状のシール部材と、を備え、
前記回転駆動装置によって前記弁室内で前記弁体の前記円筒状弁体部を回転させることにより、前記円筒状弁体部が前記シール部材の内周側を回転摺動して前記弁本体の前記流出口の開閉又は切換を行うようにされた流路切換弁であって、
前記シール部材には、周方向で該シール部材の中心軸線に対して非対称となる位置に前記2つの流出口と連通する2つの開口が形成され、各開口周りに内側へ向けてシール用の内側リブが突設されると共に、前記弁本体には、前記2つの開口の成す角が大きい側に、該シール部材の内側に配在される前記弁体の前記円筒状弁体部を前記内側リブと共に支持する支持部が設けられていることを特徴とする流路切換弁。
【請求項4】
前記支持部は、前記弁本体の前記円筒状胴部から前記シール部材に設けられた割溝を介して内側へ向けて突設された突条で構成されていることを特徴とする請求項3に記載の流路切換弁。
【請求項5】
前記突条の内端には、前記弁体の前記円筒状弁体部の外周に沿うように周方向に拡がる幅広部が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の流路切換弁。
【請求項6】
前記割溝及び前記突条は、前記シール部材の中心軸線方向に向けて形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の流路切換弁。
【請求項7】
前記シール部材における前記2つの開口の成す角が大きい側に、該シール部材から外側へ向けて外側突起が突設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の流路切換弁。
【請求項8】
前記弁本体の前記円筒状胴部に、前記外側突起が嵌合される凹溝が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の流路切換弁。
【請求項9】
前記シール部材における各開口周りに外側へ向けてシール用の外側リブが突設されると共に、前記弁本体の前記円筒状胴部における各流出口周りに前記外側リブが嵌め込まれる環状凹部が設けられていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の流路切換弁。
【請求項10】
前記シール部材は、上下対称に形成されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の流路切換弁。
【請求項11】
周方向で2つの開口が形成され、各開口周りに内側へ向けてシール用の内側リブが突設された円筒状のシール部材であって、
前記2つの開口が、周方向で該シール部材の中心軸線に対して非対称となる位置に形成されており、前記2つの開口の成す角が大きい側に、該シール部材の内側に配在される弁体を前記内側リブと共に支持する突条が挿通される割溝又は該シール部材の内側に配在される弁体を前記内側リブと共に支持すべく内側へ向けて突設されると共にその内端に前記弁体の外周に沿うように周方向に拡がる幅広部が設けられた内側突起が形成されていることを特徴とするシール部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路切換弁及びシール部材に係り、例えば弁室と各流出口との間の流体の漏洩を抑制する弁シートとしてのシール部材を備えた三方切換弁等の流路切換弁、及びそれに用いられるシール部材に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来例を
図9に示す。図示従来例の流路切換弁1'は、例えば自動車のエンジンルーム内等を流れる流体の流路を切り換えるロータリー形の切換弁(ロータリー弁)として使用されるもので、回転駆動装置50と、弁室11及び該弁室11に連通する流出口11a、11bを有する弁本体10と、前記弁本体10の前記弁室11内に配置されるシール部材30であって、周方向に複数の開口31a〜31dが形成された円筒体31及び前記開口31a〜31dの周囲に沿って前記円筒体31の内周面及び外周面から内側及び外側へ向けて突設された内側リブ32a〜32d及び外側リブ33a〜33dを有するシール部材30と、前記回転駆動装置50に連結される弁軸21と前記シール部材30により囲まれる領域に収容される弁体部22とからなる弁体20と、を備え、前記回転駆動装置50で前記弁軸21を介して前記弁体部22を前記弁室11内で回転させることによって、前記弁体部22が前記シール部材30の前記内側リブ32a〜32dの内周側を回転摺動して前記弁本体10の前記流出口11a、11bの開閉又は切換を行うようにされている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−034560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来例の流路切換弁1'では、弁本体10の外周部に90度の角度間隔をあけて2つの流出口11a、11bが形成され、シール部材30の円筒体31に等角度間隔(90度間隔)で4つの開口31a〜31dが形成されると共に、各開口31a〜31dの周りに内側へ向けて内側リブ32a〜32dが突設され、弁体20の弁体部22に90度の角度間隔をあけて2つの連通口22a、22bが形成されている。そして、回転駆動装置50によって弁室11内で弁体20の弁体部22を270度程度回転させることによって、弁本体10に形成された2つの流出口11a、11bに対して、「開−開」、「開−閉」、「閉−開」、「閉−閉」の4つの開閉モードを取らせる(すなわち、流路切換を行う)ようになっている。
【0005】
そのため、上記従来例の流路切換弁1'では、弁体を回転させて流路切換を行う際、当該弁体の弁体部がシール部材の4つの開口周りに設けられた内側リブと摺動(接触)することになり、流路切換に大きなトルクが必要となり、回転駆動装置の大型化を招くといった問題があった。
【0006】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、シール部材に形成される開口及びその開口周りに設けられる内側リブを必要最低限度に削減して流路切換に要するトルクを低減すると共に、弁本体に形成される2つの流出口に対して4つの開閉モードを確実に取り得るようにされた流路切換弁及びシール部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記する課題を解決するために、本発明に係る流路切換弁は、内部に弁室が形成されると共に、外周部に2つの流出口が設けられた円筒状胴部を有する弁本体と、周方向で2つの連通口が形成され且つ前記弁室内に回転可能に配置される円筒状弁体部を有する弁体と、該弁体を回転させるための回転駆動装置と、前記弁室と各流出口との間の流体の漏洩を抑制すべく前記弁本体の円筒状胴部と前記弁体の円筒状弁体部との間に介装された円筒状のシール部材と、を備え、前記回転駆動装置によって前記弁室内で前記弁体の前記円筒状弁体部を回転させることにより、前記円筒状弁体部が前記シール部材の内周側を回転摺動して前記弁本体の前記流出口の開閉又は切換を行うようにされた流路切換弁であって、前記シール部材には、周方向で該シール部材の中心軸線に対して非対称となる位置に前記2つの流出口と連通する2つの開口が形成され、各開口周りに内側へ向けてシール用の内側リブが突設されると共に、
前記シール部材の
前記2つの開口の成す角が大きい側に、該シール部材の内側に配在される前記弁体の前記円筒状弁体部を前記内側リブと共に支持する
内側突起が
該シール部材から内側へ向けて突設され
、前記内側突起の内端には、前記弁体の前記円筒状弁体部の外周に沿うように周方向に拡がる幅広部が設けられていることを特徴としている。
好ましい態様では、前記内側突起は、前記シール部材の中心軸線方向に向けて形成される。また、本発明に係る流路切換弁は、内部に弁室が形成されると共に、外周部に2つの流出口が設けられた円筒状胴部を有する弁本体と、周方向で2つの連通口が形成され且つ前記弁室内に回転可能に配置される円筒状弁体部を有する弁体と、該弁体を回転させるための回転駆動装置と、前記弁室と各流出口との間の流体の漏洩を抑制すべく前記弁本体の円筒状胴部と前記弁体の円筒状弁体部との間に介装された円筒状のシール部材と、を備え、前記回転駆動装置によって前記弁室内で前記弁体の前記円筒状弁体部を回転させることにより、前記円筒状弁体部が前記シール部材の内周側を回転摺動して前記弁本体の前記流出口の開閉又は切換を行うようにされた流路切換弁であって、前記シール部材には、周方向で該シール部材の中心軸線に対して非対称となる位置に前記2つの流出口と連通する2つの開口が形成され、各開口周りに内側へ向けてシール用の内側リブが突設されると共に、前記弁本体には、前記2つの開口の成す角が大きい側に、該シール部材の内側に配在される前記弁体の前記円筒状弁体部を前記内側リブと共に支持する支持部が設けられていることを特徴としている。
【0008】
前記支持部は、好ましくは、前記弁本体の前記円筒状胴部から前記シール部材に設けられた割溝を介して内側へ向けて突設された突条
で構成される。
【0009】
好ましい態様では、前記突条
の内端には、前記弁体の前記円筒状弁体部の外周に沿うように周方向に拡がる幅広部が設けられる。
【0010】
別の好ましい態様では、前記割溝及び前記突条
は、前記シール部材の中心軸線方向に向けて形成される。
【0011】
他の好ましい態様では、前記シール部材における前記2つの開口の成す角が大きい側に、該シール部材から外側へ向けて外側突起が突設される。
【0012】
更に好ましい態様では、前記弁本体の前記円筒状胴部に、前記外側突起が嵌合される凹溝が設けられる。
【0013】
他の好ましい態様では、前記シール部材における各開口周りに外側へ向けてシール用の外側リブが突設されると共に、前記弁本体の前記円筒状胴部における各流出口周りに前記外側リブが嵌め込まれる環状凹部が設けられる。
【0014】
前記シール部材は、好ましくは、上下対称に形成される。
【0015】
また、本発明に係るシール部材は、周方向で2つの開口が形成され、各開口周りに内側へ向けてシール用の内側リブが突設された円筒状のシール部材であって、前記2つの開口が、周方向で該シール部材の中心軸線に対して非対称となる位置に形成されており、前記2つの開口の成す角が大きい側に、該シール部材の内側に配在される弁体を前記内側リブと共に支持する突条が挿通される割溝又は該シール部材の内側に配在される弁体を前記内側リブと共に支持すべく内側へ向けて突設され
ると共にその内端に前記弁体の外周に沿うように周方向に拡がる幅広部が設けられた内側突起が形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、弁本体の円筒状胴部と弁体の円筒状弁体部との間に圧縮状態で介装される円筒状のシール部材に、周方向で該シール部材の中心軸線に対して非対称となる位置に弁本体に形成された2つの流出口と常時連通する2つの開口が形成され、各開口周りに内側へ向けてシール用の内側リブが突設されると共に、弁本体又はシール部材におけるその2つの開口の成す角が大きい側に、該シール部材の内側に配在される弁体の円筒状弁体部を前記内側リブと共に支持する支持部が設けられていることにより、シール部材に形成される開口及びその開口周りに設けられる内側リブを必要最低限度に削減して流路切換に要するトルクを低減できると共に、弁体の円筒状弁体部をシール部材の中央に配することができ、弁本体に形成される2つの流出口に対して4つの開閉モードを確実に取らせることができる。
【0017】
ここで、前記支持部が、弁本体の円筒状胴部からシール部材に設けられた割溝を介して内側へ向けて突設された突条で構成される場合には、シール部材の割溝と弁本体の突条とによって、弁本体に対するシール部材の位置決め(組み付け)が容易になると共に、弁体(の円筒状弁体部)の回転によるシール部材の連れ回りやシール部材の端部のめくれを防止できるといった効果も得られる。さらに、シール部材に割溝を設けることで、割溝の無い円筒状のシール部材に比べて、簡素な金型構造をとることができるといった効果も得られる。また、前記支持部が、シール部材から内側へ向けて突設された内側突起で構成される場合には、流路切換弁の全体構成を簡素化できるといった効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る流路切換弁の一実施形態の基本構成を示す縦断面図。
【
図2】
図1のA−A矢視断面図であって、開−開モードの状態を示す図。
【
図4】
図1に示されるシール部材(本発明に係るシール部材)を示す斜視図。
【
図5】
図1のA−A矢視断面図であって、閉−閉モードの状態を示す図。
【
図6】
図1のA−A矢視断面図であって、開−閉モードの状態を示す図。
【
図7】
図1のA−A矢視断面図であって、閉−開モードの状態を示す図。
【
図8】
図1に示されるシール部材の他例を示す斜視図。
【
図9】従来の流路切換弁を示す図であり、(A)は縦断面図、(B)は(A)のX−X矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る流路切換弁の一実施形態の基本構成を示す縦断面図であり、
図2は、
図1のA−A矢視断面図であって、開−開モードの状態を示す図である。
【0021】
図示実施形態の流路切換弁1は、例えば自動車のエンジンルーム内等を流れる流体の流路を多方向に切り換える三方切換弁として使用されるもので、基本的に、弁室11を有する樹脂製の弁本体10と、弁本体10の上方に配置されたモータ(回転駆動装置)50と、弁本体10の弁室11内に配置される弁シートとしてのシール部材30と、モータ50の出力軸に連結される弁軸21とシール部材30により囲まれる領域に収容される天井部23付きの円筒状弁体部22とからなる樹脂製の弁体20と、を備えている。
【0022】
前記弁本体10は、段付き円筒状基体12と下部ポート部材15とで構成されており、前記円筒状基体12は、内部に弁室11が形成されると共に、外周部に前記弁室11に開口する2つの流出口11a、11bが所定角度間隔(円筒状基体12の中心軸線Oに対して非対称となる位置であって、図示例では、145度の角度間隔)をあけて形成され、各流出口11a、11bに連通するように継手からなる流出ポートp1、p2が一体的に形成された天井部13a付きの円筒状胴部13と、弁体20の弁軸21を挿通すべく前記円筒状胴部13の天井部13aに突設された該円筒状胴部13より小径の円筒状嵌挿部14とを有する。円筒状胴部13の下側開口には、継手からなる流入ポートp3を持つ下部ポート部材15が、超音波溶着、圧入、かしめ、ねじ等により内嵌固定され、これにより、前記弁室11に開口する縦向きの流入口11cが形成されている。
【0023】
また、前記円筒状基体12における円筒状胴部13の外周部のうち、中心軸線O(シール部材30や弁体20と共通の中心軸線O)に対して非対称となる位置に形成された2つの流出口11a、11bの成す角が大きい側の中央には、後述するシール部材30の割溝39に挿通される突条19が内側へ向けて突設されている。この突条19は、上下方向(中心軸線O方向)に沿って設けられると共に、シール部材30の割溝39を介して該シール部材30の内側に配在される弁体20の円筒状弁体部22まで延びており、該突条19の内端には、弁体20(の円筒状弁体部22)の回転による摩耗、シール部材30の共回り、シール部材30の端部のめくれ等を抑制すべく、弁体20の円筒状弁体部22の外周に沿うように周方向に拡がる幅広部18が設けられている。
【0024】
また、図示例では、前記円筒状胴部13における各流出口11a、11bの周りに、後述するシール部材30の外側リブ33a、33bが嵌め込まれる環状凹部17a、17bが設けられている。
【0025】
前記弁体20は、
図1、
図2と共に
図3を参照すればよく理解されるように、周方向で2つの長円形の連通口22a、22bが所定角度間隔(図示例では、145度の角度間隔)をあけて形成され、前記弁室11内(言い換えれば、前記円筒状胴部13)に回転可能に配置される円筒状弁体部22と、該円筒状弁体部22の天井部23上に突設された弁軸21とを有する。前記弁軸21は、前記円筒状嵌挿部14に回動自在に嵌挿される、円筒状弁体部22より小径の中間軸部21aと、該中間軸部21a上に突設され、前記モータ50の出力軸に連結される、平面視小判形の上部軸部21bとから構成され、中間軸部21aと円筒状嵌挿部14の内周面との間には、シール部材としてのOリング24が二段介装されている。また、図示例では、円筒状弁体部22の天井部23(の上面)と円筒状胴部13の天井部13a(の下面)との間(言い換えれば、円筒状弁体部22の天井部23の上面における弁軸21の外周)に、流路切換時(弁体20回転時)における弁本体10に対する円筒状弁体部22の天井部23の摺動抵抗を低減すべく、PTFE等から作製された滑り用の円環状のシート部材25が介装されている。
【0026】
前記シール部材30は、ゴム等の弾性素材から上下対称となるように作製されており、
図1、
図2と共に
図4を参照すればよく理解されるように、基本的に、周方向で2つの長円形の開口31a、31bが所定角度間隔(シール部材30の中心軸線Oに対して非対称となる位置であって、図示例では、145度の角度間隔)をあけて形成された円筒体31と、該円筒体31の各開口31a、31b周りに内側及び外側へ向けて突設されたシール用の内側リブ32a、32b及び外側リブ33a、33bとから構成されている。また、前記円筒体31における2つの開口31a、31bの成す角が大きい側の中央には、上下方向(シール部材30の中心軸線O方向)に向けて且つ当該シール部材30の円筒体31の上下方向に亘って、割溝39が形成されている。この円筒状のシール部材30は、弁室11と各流出口11a、11bとの間の流体の漏洩を抑制すべく、弁室11の外周に沿って、詳細には、その(円筒体31の)上端部が弁本体10の円筒状胴部13の天井部13aと当接し、その(円筒体31の)下端部が弁本体10の下部ポート部材15と当接し、内側リブ32a、32b(の内周側)が弁体20の円筒状弁体部22と当接し、外側リブ33a、33b(の外周側)が弁本体10の円筒状胴部13の外周部と当接すると共に各流出口11a、11bの周りに形成された環状凹部17a、17bに嵌め込まれ、且つ割溝39内に弁本体10の突条19を嵌挿させるようにして、弁本体10の円筒状胴部13と弁体20の円筒状弁体部22との間に圧縮状態で介装されている。
【0027】
上記した流路切換弁1を組み立てるに当たっては、円筒状基体12の円筒状胴部13に下部ポート部材15を内嵌固定する前に、その下側から、円筒状胴部13に形成された突条19に割溝39を挿通させるようにして円筒状基体12の円筒状胴部13内にシール部材30を圧入気味に挿入する。これにより、弁本体10(の円筒状胴部13)に形成された各流出口11a、11bにシール部材30(の円筒体31)に形成された各開口31a、31bが常時連通するように、弁本体10に対してシール部材30が位置決めされて配置されると共に、弁体20(の円筒状弁体部22)の回転によるシール部材30の連れ回りが阻止されることになる。次いで、その下側から、円筒状弁体部22の天井部23の上面に円環状のシート部材25を配置し、かつ、中間軸部21aにOリング24を装着した弁体20を圧入気味に挿入する。これにより、シール部材30(の内側リブ32a、32b)の内周側に、前記弁体20の円筒状弁体部22が、前記内側リブ32a、32bと前記突条19(の幅広部18)により周囲から支持された状態で、シール部材30とのシールに必要な圧縮代を確保できる程度にシール部材30を圧縮させながら摺動回転可能に内挿される。そして、円筒状基体12の円筒状胴部13の下側開口に下部ポート部材15を内嵌固定すると共に、円筒状基体12の上方にモータ50を装着する。
【0028】
次に、
図2、
図5〜
図7を参照しながら、上記した流路切換弁1の流路切換動作を説明する。ここでは、弁本体10に形成された流入口11cが(弁体20の円筒状弁体部22の下側開口を介して)弁室11に常時連通すると共に、弁本体10に形成された各流出口11a、11bが(シール部材30の各開口31a、31b及び弁体20の円筒状弁体部22の各連通口22a、22bを介して)弁室11に連通する開−開モードと、各流出口11a、11bが(弁体20の円筒状弁体部22により)閉じられる閉−閉モードと、流出口11aが(シール部材30の開口31a及び弁体20の円筒状弁体部22の連通口22bを介して)弁室11に連通し、流出口11bが(弁体20の円筒状弁体部22により)閉じられる開−閉モードと、流出口11aが(弁体20の円筒状弁体部22により)閉じられ、流出口11bが(シール部材30の開口31b及び弁体20の円筒状弁体部22の連通口22aを介して)弁室11に連通する閉−開モードの、4つの開閉モードが選択的に取られるようになっている。
【0029】
まず、
図2に示す状態では、弁体20の円筒状弁体部22の各連通口22a、22bと弁本体10の各流出口11a、11b及びシール部材30の各開口31a、31bとが中心軸線O回りで同じ位置に配置さており、下部ポート部材15の流入ポートp3から流入した流体は、流入口11c及び円筒状弁体部22の下側開口を介して弁室11に導入され、円筒状弁体部22の連通口22a、22b、シール部材30の開口31a、31b、及び弁本体10の流出口11a、11bを介して双方の流出ポートp1、p2に導かれる(開−開モード)。
【0030】
図2に示す状態から、モータ50の駆動によって、弁体20を上から視て反時計回りに約72.5度だけ回転させると、
図5に示されるように、弁体20の円筒状弁体部22の各連通口22a、22bはシール部材30の円筒体31の部分に位置するようになり、弁本体10の各流出口11a、11b及びシール部材30の各開口31a、31bは弁体20の円筒状弁体部22により閉じられる(閉−閉モード)。
【0031】
図5に示す状態から、モータ50の駆動によって、弁体20を上から視て反時計回りにさらに約72.5度だけ回転させると、
図6に示されるように、弁体20の円筒状弁体部22の連通口22bがシール部材30の開口31a及び弁本体10の流出口11aと略同じ位置に到達し、弁本体10の流出口11aがシール部材30の開口31a及び弁体20の円筒状弁体部22の連通口22bを介して弁室11に連通するが、弁本体10の流出口11bは弁体20の円筒状弁体部22により閉じられたままとなる。これにより、下部ポート部材15の流入ポートp3から流入した流体は、流入口11c及び円筒状弁体部22の下側開口を介して弁室11に導入され、円筒状弁体部22の連通口22b、シール部材30の開口31a、及び弁本体10の流出口11aを介して流出ポートp1のみに導かれる(開−閉モード)。
【0032】
図6に示す状態から、モータ50の駆動によって、弁体20を上から視て反時計回りにさらに約70度だけ回転させると、
図7に示されるように、弁体20の円筒状弁体部22の連通口22aがシール部材30の開口31b及び弁本体10の流出口11bと略同じ位置に到達し、弁本体10の流出口11bがシール部材30の開口31b及び弁体20の円筒状弁体部22の連通口22aを介して弁室11に連通するが、逆に、弁本体10の流出口11aは弁体20の円筒状弁体部22により閉じられる。これにより、下部ポート部材15の流入ポートp3から流入した流体は、流入口11c及び円筒状弁体部22の下側開口を介して弁室11に導入され、円筒状弁体部22の連通口22a、シール部材30の開口31b、及び弁本体10の流出口11bを介して流出ポートp2のみに導かれる(閉−開モード)。
【0033】
このように、本実施形態の流路切換弁1では、シール部材30に形成される開口及びその開口周りに設けられる内側リブが、流路切換に必要な必要最低限度である2つ(流出口と同数)に削減され、流路切換に要するトルクを低減できると共に、弁本体10に形成される2つの流出口11a、11bに対して4つの開閉モードを確実に取らせることができる。また、トルク低減によるモータ50の小型化が可能となる。
【0034】
また、モータ50の駆動によって弁体20を215度程度回転させるだけで、弁本体10の2つの流出口11a、11bに対して4つの開閉モードを取らせることができ、
図9に示した従来の流路切換弁と比較して、小さい回転角度で弁本体10の2つの流出口11a、11bの開閉又は切換を行うことができので、シール部材30(特に、弁体20の円筒状弁体部22と摺動する内側リブ32a、32b)の耐久性を確保できるといった利点やモータ50の寿命が延びるといった利点もある。
【0035】
さらに、上記シール部材30は、上下対称に形成されているので、弁本体10に対するシール部材10の組み付けが容易になるといった利点もある。
【0036】
なお、上記実施形態では、シール部材30に形成した割溝39に弁本体10に形成した突条19を嵌挿させてシール部材30を弁本体20に係合させ、その突条19(支持部)の内端(具体的には、突条19の内端に設けられた幅広部18)で弁体20の円筒状弁体部22を支持する構成を採用したが、例えば、
図8に示すように、シール部材30の円筒体31に、上下方向(シール部材30の中心軸線O方向)に沿って且つ当該シール部材30の円筒体31の上下方向に亘って、内側へ向けて内側突起38aを突設し、その内側突起38a(支持部)の内端で弁体20の円筒状弁体部22を支持するようにしてもよい。また、この場合、上記実施形態の突条19と同様、内側突起38aの内端に、弁体20の円筒状弁体部22の外周に沿うように周方向に拡がる幅広部を設けてもよいことは言うまでも無い。また、この場合には、
図8に示されるように、シール部材30の円筒体31(図示例では、周方向で内側突起38aと同じ位置)に、当該シール部材30の円筒体31から外側へ向けて外側突起38bを突設し、弁本体10の円筒状胴部13に前記外側突起38bが嵌合される凹溝(不図示)を設け、シール部材30の外側突起38bを弁本体10の凹溝に嵌め込むことにより、シール部材30を弁本体20に係合させてもよい。なお、
図8に示す例では、前記内側突起38aや前記外側突起38bは一つのみであるが、(周方向に)複数設けてもよいことは当然である。
【0037】
また、上記実施形態では、シール部材30の割溝39(
図4参照)や内側突起38a及び外側突起38b(
図8参照)が、当該シール部材30の上下方向に亘って且つ上下方向(中心軸線O方向)に沿って直線状に形成されているが、前記割溝39や内側突起38a及び外側突起38bは、当該シール部材30の上下方向の一部に形成してもよい(言い換えれば、シール部材30の上下方向高さより低くてもよい)し、直線状でなくてもよいことは勿論である。
【0038】
また、上記実施形態では、シール部材30の2つの開口31a、31b、弁体20の2つの連通口22a、22b、弁本体10の2つの流出口11a、11bが、145度の角度間隔をあけて形成されているが、それらは中心軸線Oに対して非対称となる位置に形成されていればよい(すなわち、それらの角度間隔は180度未満であればよい)ことは言うまでも無い。
【0039】
また、上記実施形態では、弁本体10(の円筒状胴部13)と弁体20(の円筒状弁体部22)との間のシール性を高めると共に、弁本体10に対するシール部材30の位置決めを容易にしたり、弁体20(の円筒状弁体部22)の回転によるシール部材30の連れ回りを抑制したりするために、シール部材30における各開口31a、31b周りに外側へ向けてシール用の外側リブ33a、33bを突設し、弁本体10の円筒状胴部13における各流出口11a、11b周りに前記外側リブ33a、33bが嵌め込まれる環状凹部17a、17bを形成したが、これらの外側リブ33a、33bや環状凹部17a、17bは省略してもよいことは言うまでも無い。
【0040】
また、図示は省略するが、流路切換時(弁体20回転時)におけるトルクを更に低減するために、シール部材30の内側にPTFE等から作製された滑り用の樹脂シートを貼り付けてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 流路切換弁
10 弁本体
11 弁室
11a、11b 流出口
11c 流入口
12 円筒状基体
13 円筒状胴部
14 円筒状嵌挿部
15 下部ポート部材
17a、17b 環状凹部
18 幅広部
19 突条(支持部)
20 弁体
21 弁軸
22 円筒状弁体部
22a、22b 連通口
30 シール部材
31 円筒体
31a、31b 開口
32a、32b 内側リブ
33a、33b 外側リブ
38a 内側突起(支持部)
38b 外側突起
39 割溝
50 モータ(回転駆動装置)
p1、p2 流出ポート
p3 流入ポート