特許第6656892号(P6656892)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6656892金型、射出ブロー成形装置、および二重壁構造を有する樹脂製品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6656892
(24)【登録日】2020年2月7日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】金型、射出ブロー成形装置、および二重壁構造を有する樹脂製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/06 20060101AFI20200220BHJP
   B29C 49/48 20060101ALI20200220BHJP
   B29C 49/54 20060101ALI20200220BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20200220BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
   B29C49/06
   B29C49/48
   B29C49/54
   B29C45/26
   B29C33/42
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-223307(P2015-223307)
(22)【出願日】2015年11月13日
(65)【公開番号】特開2017-87651(P2017-87651A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹花 大三郎
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−061823(JP,A)
【文献】 特開平04−363223(JP,A)
【文献】 特表2000−501038(JP,A)
【文献】 特開2005−047563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/42
B29C 49/00−49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の突起部を有するコア型と、
前記突起部の外周面との間で、プリフォームの胴部を形成するための第一空隙を形成する、筒状の胴部形成部を有する第一キャビティ型と、
前記胴部形成部の外周面との間で、前記プリフォームの胴部の外周側に配置される外周部を形成するための第二空隙を形成する、外周部形成部を有する第二キャビティ型と、
前記第一空隙に対して樹脂を流し込むためのランナー型と、
を備え、
前記コア型、前記第一キャビティ型、および前記第二キャビティ型が互いに組み合わされた状態において、前記第一空隙と前記第二空隙とが連続している、金型において、
さらに、
前記胴部と前記外周部との間に向けてブローエアーを導く第一ブロー型と、
前記ブローエアーにより膨らんだ前記外周部の外周面と当接する内壁面を有する第二ブロー型と、
を備える、
金型。
【請求項2】
前記コア型の前記突起部には、凹部が形成されている、
請求項1に記載の金型。
【請求項3】
ブロー成形用の樹脂製のプリフォームであって、口部と第一底部とを有する筒状の胴部と、前記胴部の外周を囲うよう形成される板状の外周部と、を備え、前記外周部の内壁面と前記胴部の外壁面とが連続して形成された第二底部を有し、前記第二底部、前記外周部の内壁面、および前記胴部の外壁面により空間が形成されているプリフォームを製造するための射出装置と、
前記プリフォームの前記胴部と前記外周部との間にブローエアーを吹き込んでブロー成形するブロー成形装置と、
を備える、
射出ブロー成形装置。
【請求項4】
前記プリフォームにおいて、前記外周部と前記胴部とは、前記胴部の口部の周縁部において連続している、
請求項3に記載の射出ブロー成形装置。
【請求項5】
ブロー成形用の樹脂製のプリフォームであって、口部と第一底部とを有する筒状の胴部と、前記胴部の外周を囲うよう形成される板状の外周部と、を備え、前記外周部の内壁面と前記胴部の外壁面とが連続して形成された第二底部を有し、前記第二底部、前記外周部の内壁面、および前記胴部の外壁面により空間が形成されているプリフォームを製造する工程と、
前記プリフォームの前記胴部と前記外周部との間にブローエアーを吹き込んでブロー成形する工程と、
を含む、二重壁構造を有する樹脂製品の製造方法。
【請求項6】
前記プリフォームにおいて、前記外周部と前記胴部とは、前記胴部の口部の周縁部において連続している、
請求項5に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重壁構造を有する製品を製造するためのプリフォーム、金型、製造装置、および製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、二重壁構造を有する製品として、ガラス製の電球用カバーや、飲料用の容器などがある。また、コスト低下のため、二重壁構造を有する製品を樹脂で製造したいというニーズがある。例えば、樹脂製の電球用カバーを射出成形する装置が下記の特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58−92538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の装置を含め、従来の射出成形装置では、二重壁構造を有するプリフォームや製品を製造することはできなかった。
【0005】
そこで、本発明は、二重壁構造を有する樹脂製の製品を製造することが可能な、プリフォーム、金型、製造装置、および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のプリフォームは、
ブロー成形用の樹脂製のプリフォームであって、
口部と第一底部とを有する筒状の胴部と、
前記胴部の外周を囲うよう形成される板状の外周部と、
を備え、
前記外周部の内壁面と前記胴部の外壁面とが連続して形成された第二底部を有し、
前記第二底部、前記外周部の内壁面、および前記胴部の外壁面により空間が形成されている。
【0007】
この構成によれば、第二底部、外周部の内壁面、および胴部の外壁面により形成された空間に対してブロー成形することで、二重壁構造の樹脂製品を製造することができる。
【0008】
また、本発明のプリフォームにおいて、
前記外周部と前記胴部とは、前記胴部の口部の周縁部において連続していることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、胴部の口部の周縁部から連続して外周部が形成されているため、ブロー成形後の樹脂製品において、胴部と外周部との境目が目立ちにくくすることができる。
【0010】
また、本発明の金型は、
棒状の突起部を有するコア型と、
前記突起部の外周面との間で、プリフォームの胴部を形成するための第一空隙を形成する、筒状の胴部形成部を有する第一キャビティ型と、
前記胴部形成部の外周面との間で、前記プリフォームの胴部の外周側に配置される外周部を形成するための第二空隙を形成する、外周部形成部を有する第二キャビティ型と、
前記第一空隙に対して樹脂を流し込むためのライナー型と、
を備え、
前記コア型、前記第一キャビティ型、および前記第二キャビティ型が互いに組み合わされた状態において、前記第一空隙と前記第二空隙とが連続している。
【0011】
この構成によれば、プリフォームの胴部と外周部との間にブローエアーを吹き付けてブロー成形することが可能なプリフォームを製造することができる。
【0012】
また、本発明の金型において、
前記コア型の前記突起部には、凹部が形成されていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、コア型の突起部に接着した状態で製造されたプリフォームを搬送する際に、プリフォームがコア型から落下しにくくなる。
【0014】
また、本発明の金型は、
前記胴部と前記外周部との間に向けてブローエアーを導く第一ブロー型と、
前記ブローエアーにより膨らんだ前記外周部の外周面と当接する内壁面を有する第二ブロー型と、を備える。
【0015】
この構成によれば、胴部用の部品と外周部用の部品とを別々に準備することなく、低コストで二重壁構造の樹脂製品を製造することができる。
【0016】
また、本発明の射出ブロー成形装置は、
プリフォームを製造するための射出装置と、
前記プリフォームの前記胴部と前記外周部との間にブローエアーを吹き込んでブロー成形するブロー成形装置と、を備える。
【0017】
この構成によれば、胴部用の部品と外周部用の部品とを別々に準備することなく、低コストで二重壁構造の樹脂製品を製造することができる。
【0018】
また、本発明の製造方法は、
二重壁構造を有する樹脂製品の製造方法であって、
上記のプリフォームを製造する工程と、
前記プリフォームの前記胴部と前記外周部との間にブローエアーを吹き込んでブロー成形する工程と、を含む。
【0019】
この構成によれば、胴部用の部品と外周部用の部品とを別々に準備して両部品を接合する製造方法と比較して、簡単かつ低コストで二重壁構造の樹脂製品を製造することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、二重壁構造を有する樹脂製の製品を製造することが可能な、プリフォーム、金型、製造装置、および製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】(a)は二重壁構造を有する樹脂製品の斜視図、(b)は樹脂製品の平面図、(c)は樹脂製品の正面図、(d)は樹脂製品の底面図である。
図2図1(b)のA−A線における断面図である。
図3】(a)は本発明に係るプリフォームの斜視図、(b)はプリフォームの平面図、(c)は(b)のB−B線における断面図、(d)はプリフォームの底面図である。
図4】プリフォームの変形例を示す断面図である。
図5】本発明に係る射出ブロー成形装置のブロック図である。
図6】射出ブロー成形装置における射出装置の構成を説明する図である。
図7】(a)は射出ブロー成形装置における射出装置の構成を説明する図であり、(b)は(a)の部分拡大図である。
図8】(a)は射出ブロー成形装置におけるブロー成形装置の構成を説明する図であり、(b)は(a)の部分拡大図である。
図9】射出ブロー成形装置におけるブロー成形装置の構成を説明する図である。
図10】樹脂製品の製造手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本実施形態の一例について、図面を参照して説明する。
図1図2は、本発明に係る製造装置及び製造方法によって製造された樹脂製品1を示す。樹脂製品1は、ポリカーボネート等の樹脂材料で形成されており、例えば電球カバー、飲料用の容器などとして使用されうる。樹脂製品1は、筒状に形成された内壁2と、球状に形成された外壁3とにより構成される二重壁構造を有している。
【0023】
内壁2は、樹脂製品1の中央部を貫通するように形成されており、一方の端部に開口2aを有し、開口2aと反対側の端部に開口2bを有している。外壁3は、内壁2の外周を囲うように形成されており、内壁2の開口2a側で開口2aの周縁部2cと連続し、内壁2の開口2b側で開口2bよりも大きい開口3aを有している。例えば、樹脂製品1が電球カバーとして使用される場合には内壁2内の空間4に電球が配置される。
【0024】
図3は、樹脂製品1を形成するためのプリフォーム10を示す。プリフォーム10は、樹脂製品1と同様に樹脂材料で形成されており、筒状に形成された胴部12と、板状に形成された外周部13とを備えている。本例の胴部12は円筒状に形成されている。
【0025】
胴部12は、一方の端部に口部12aを有し、口部12aとは反対側の端部に底部12bを有する。
【0026】
外周部13はスカート状の形状を備え、胴部12の外周を囲うように形成されており、胴部12の口部12a側で口部12aの周縁部12cと連続して形成され、胴部12の底部12b側で胴部12の周囲に開口13aを有するように形成されている。外周部13は、胴部12の口部12aから底部12bへ近づくにしたがって径を大きくするように形成されている。開口13aの周囲には、微小なフランジ部13bが形成されている。
【0027】
外周部13と胴部12とが連続して形成されることにより、外周部13と胴部12との間には、外周部13の内壁面と胴部12の外壁面とが連続して形成された底部14が設けられている。これにより、胴部12の外側には、底部14と外周部13の内壁面と胴部12の外壁面とによって、空間15が形成されている。
【0028】
上記樹脂製品1は、プリフォーム10の空間15に対してブローエアーを吹き込んで外周部13をブロー成形することによって形成される。
【0029】
なお、プリフォーム10の形態は図3のものに限定されず、例えば図4に示すように、外周部13が胴部12の口部12aから少し離れた中途部で胴部12の外壁と連続し、胴部12の外周の一部を囲うように形成されたものでも良い。
【0030】
次に、図5図9を参照して、プリフォーム10及び樹脂製品1を形成するための射出ブロー成形装置について説明する。
【0031】
図5に示すように、射出ブロー成形装置20は、プリフォーム10を製造するための射出装置30と、プリフォーム10をブローして樹脂製品1を製造するためのブロー成形装置70とを備えている。射出装置30は、プリフォーム10を射出成形する射出成形部31と、射出成形部31に対して原材料である樹脂材料を供給する樹脂供給部32とを有する。射出装置30とブロー成形装置70とは、搬送手段90を中心として例えば90°〜180°の範囲で回転した位置に設けられている。なお、必要に応じて射出装置30とブロー成形装置70との間にプリフォーム10の温度を調整するための温調装置を設けても良い。また、ブロー成形装置70の後段にブロー成形品を取り出すための取り出し部を設けても良い。
【0032】
射出装置30の射出成形部31は、図6図7に示すように、機台41上に設けられたランナー型45と、ランナー型45上に設けられた第一キャビティ型50と、第一キャビティ型50上に設けられた第二キャビティ型55及びコア型60とを備えている。コア型60は、その上端部が搬送手段90に取り付けられている。第一キャビティ型50、第二キャビティ型55及びコア型60の内部には、冷却または温調処理を行う流体が循環する、図示しない流体循環回路が設けられている。流体の温度は、第一キャビティ型50、第二キャビティ型55及びコア型60のそれぞれで必要な冷却強度に応じて設定される。
【0033】
コア型60は、プリフォーム10における胴部12の内周面を規定する。コア型60には、胴部12の内周面を規定する棒状の突起部61が設けられている。突起部61の外壁には、図7(b)に示すように、凹部62が形成されている(図7(b)ではプリフォーム10の図示を省略)。凹部62は、例えば点状のものであっても良いし、突起部61の外周方向に沿って所定の幅を有したものであっても良い。また、形成される凹部62の数は単数でも複数でも良い。
【0034】
第一キャビティ型50は、プリフォーム10における胴部12の外周面と外周部13の内周面とを規定する。第一キャビティ型50には、プリフォーム10の胴部12を形成するための筒状の胴部形成部51が設けられている。胴部形成部51の内側の側面は、コア型60における突起部61の外周面との間で、プリフォーム10の胴部12を形成するための第一空隙52を形成する。第一キャビティ型50は、第二キャビティ型55が収容される収容穴58を有している。収容穴58はテーパー状であり、内壁面が傾斜面58aとなっている。第一キャビティ型50は、その上面から下方に向けて傾斜面58aの傾斜方向に沿って延びる傾斜穴59を有している。
【0035】
第二キャビティ型55は、一対のキャビティ割型55A,55Bで構成されており、プリフォーム10の胴部12の外周側に配置される外周部13の外周面を規定する。第二キャビティ型55には、プリフォーム10の外周部13を形成するための外周部形成部56が設けられている。外周部形成部56の内側の側面56aは、第一キャビティ型50における胴部形成部51の外周面との間で、プリフォーム10の外周部13を形成するための第二空隙57を形成する。
【0036】
外周部形成部56の外側の側面56bは、収容穴58の傾斜面58aと同方向に傾斜している。第二キャビティ型55のフランジ部100には、傾斜ピン101が弾性部材102(圧縮ばね等)を介在された状態で固定されている。傾斜ピン101は、傾斜穴59に対して弾性部材102を介在させた状態で進入可能である。傾斜ピン101と傾斜穴59とがガイド機構として機能するため、第二キャビティ型55は、第一キャビティ型50に対して昇降可能に構成されている。
【0037】
射出装置30は、上記コア型60、第一キャビティ型50、及び第二キャビティ型55が互いに組み合わされた状態において、第一空隙52と第二空隙57とが連続した空隙となるように構成されている。
【0038】
ランナー型45は、樹脂供給部32が接続されて、プリフォーム10の原材料である樹脂を樹脂供給部32を通じて第一キャビティ型50の第一空隙52内へ導入する。なお、本例では第一キャビティ型50の底部中央に設けられたゲート53から第一空隙52内に樹脂材料を導入しているが、これに限定されず、例えばゲートを第二空隙57に直結して樹脂材料を第二空隙57内に導入するようにしても良い。
【0039】
樹脂供給部32から導入された樹脂材料は、第一空隙52から第二空隙57へと流し込まれてプリフォーム10が形成される。なお、プリフォーム10を形成するために用いる金型は、胴部と外周部とを一体的に有したプリフォームが形成できる金型であれば良く、本例の構成に限定されるものではない。
【0040】
搬送手段90は、射出装置30で射出成形されたプリフォーム10を、コア型60の突起部61に保持した状態で、射出装置30からブロー成形装置70に搬送する。本例では、搬送手段90を180°回転させることで、コア型60に保持されたプリフォーム10が射出装置30からブロー成形装置70に搬送されるようになっている(図5参照)。射出成形されたプリフォーム10は、プリフォーム10の胴部12の一部分が突起部61の凹部62内に入り込んだ状態でコア型60に保持されている(図8(b)参照)。
【0041】
ブロー成形装置70は、図8(a),図9に示すように、コア型60に対して組み合わされる第一ブロー型75と、第二ブロー型80とを備えている。
【0042】
第二ブロー型80は、一対のブロー割型80A,80Bで構成されており、樹脂製品1における外壁3の外周面を規定する。第二ブロー型80には、樹脂製品1の外壁3を形成するための内壁面81、すなわちブローエアーにより膨らんだプリフォーム10の外周部13の外周面と当接する内壁面81が設けられている。第二ブロー型80は、コア型60に対して、内壁面81がプリフォーム10の外周部13の外周を囲うように組み付けられる。第二ブロー型80の内部には、冷却媒体を循環させる、図示しない冷却回路が設けられている。
【0043】
第一ブロー型75は、プリフォーム10に対してブローエアーを供給する。第一ブロー型75にはエア流路76が設けられており、このエア流路76を介してプリフォーム10にブローエアーが供給される。また、第一ブロー型75には、エア流路76の端部を画成する筒状の突起部77が設けられている。第一ブロー型75は、コア型60に対して、突起部77がプリフォーム10の空間15内に入り込むように組み付けられる。組み付けられた第一ブロー型75は、突起部77の外周面が、第二ブロー型80の内壁面81との間にプリフォーム10の外周部13の端部を挟持する。また、突起部77の内周面がプリフォーム10の胴部12の外周面との間でエア導出口78を形成する。
【0044】
エア流路76から供給されたブローエアーは、エア導出口78を通じてプリフォーム10の空間15内に導入される。導入されたブローエアーによってプリフォーム10の外周部13がブローされ、樹脂製品1の外壁3がブロー成形される。
【0045】
次に、図10に基づいて、二重壁構造を有する樹脂製品1の製造方法について説明する。
射出装置30において、ランナー型45上に組み付けられた第一キャビティ型50に対し、第二キャビティ型(キャビティ割型)55A,55Bと、コア型60とを型締めする(ステップS101,図6参照)。
【0046】
ランナー型45の樹脂供給部32から第一キャビティ型50のゲート32を介して第一空隙52内に樹脂材料を導入する(図6参照)。導入された樹脂材料が第一空隙52から第一空隙52に連続する第二空隙57へと流れ込みプリフォーム10が形成される(ステップS102)。
【0047】
プリフォーム10の射出成形が終了した後、第一キャビティ型50、第二キャビティ型55、及びコア型60を型開きする(ステップS103)。型開きは、搬送手段90によりコア型60を上昇させる(図7の矢印A参照)。コア型60の上昇に合わせて、第二キャビティ55は、傾斜ピン101と傾斜穴59とで構成されるガイド機構により、第一キャビティ50に対して斜め上方へスライド移動する。(図7の矢印B,C参照)。また、ステップS103の時点では、突起部61にプリフォーム10が保持された状態となる。キャビティ割型55A,55B間の距離は型開後に広がるため、アンダーカットとなるプリフォーム10の外周部13は第二キャビティに対して干渉しないで、突起部61に保持されたまま上方に抜かれる。
【0048】
型開きした後、搬送手段90により、コア型60の突起部61に保持されているプリフォーム10をブロー成形装置70へ搬送する(ステップS104)。
【0049】
続いて、ブロー成形装置70において、搬送されてきたコア型60に対し、第一ブロー型75と、第二ブロー型(ブロー割型)80A,80Bとを型締めする(ステップS105,図9参照)。型締めは、図示を省略する型締手段により、第一ブロー型75をコア型60の突起部61に向けて上昇させる(図8の矢印D参照)とともに、ブロー割型80A,80Bをコア型60の突起部61に対して左右方向から近づける(図8の矢印E,F参照)。これにより、プリフォーム10の空間15内に第一ブロー型75の突起部77が入り込むとともに、プリフォーム10の外周部13をブロー割型80A,80Bの内壁面81が囲う。
【0050】
第一ブロー型75のエア流路76からブローエアーを供給し、エア導出口78を介してプリフォーム10の空間15内にブローエアーを導入する。導入されたブローエアーによってプリフォーム10の外周部13がブローされて第二ブロー型80の内壁面81に張り付くように膨らみ、樹脂製品1における外壁3が形成される(ステップS106)。本例では、プリフォーム10の胴部12は、コア型60の突起部61に保持された状態でブローされずに維持される。
【0051】
プリフォーム10のブロー成形が終了した後、第一ブロー型75、第二ブロー型80、及びコア型60を型開きする(ステップS107)。
【0052】
型開きした後、コア型60の突起部61に保持されているブロー成形されたプリフォーム10を離型して、射出ブロー成形装置20から取り出す(ステップS108)。
【0053】
続いて、ブロー成形されたプリフォーム10における、胴部12の底部12bを所定量だけ切落し加工(ステップS109,図2参照)して本例の樹脂製品1(電球カバー)の製造が完了する。また、外周部13のフランジ部13bを含む開口13a部も不要な場合は所定量だけ切除しても構わない。なお、切除部分には、コア型60の凹部62により形成された凸状部が含まれるようにする。
【0054】
ところで、胴部寸法がネック寸法より大きい電球カバーの製造では、ブロー成形法が一般的に用いられている。このうち射出ブロー成形法においては、射出成形部で成形したプリフォームを射出コア型ユニットに保持した状態でブロー成形部にまで搬送し、射出コア型ユニットからプリフォーム内にエアを導入して球形状へと変形させて所望の電球カバーを製造する。
また、電球カバーの形態の一つに略球形状である外包体(外壁)の内側に中空の円筒状壁(内壁)を設けた内外二重壁構造の電球カバーが存在する。内壁内に収容した例えばLED電球の光を内壁及び外壁を介して放射させるもので、より美的外観が要求させる照明器具等で用いられる。現在、二重壁構造を有するカバーは、例えばガラス材を用いて成形されているが、これを樹脂製に転換したいという要望がある。しかしながら、従来の射出ブロー成形法では、筒状の内壁部分と、球状の外壁部分とを予め別々に形成しておき、両部分を接合することで二重壁構造としなければならなかった。
【0055】
これに対し、本実施形態のプリフォーム10によれば、外周部13と胴部12とが底部14を介して連続的に形成されている。このため、胴部12の外側には、底部14と外周部13の内壁面と胴部12の外壁面とによって空間15が形成される。したがって、この空間15に対してブローエアーを吹き込んで外周部13をブロー成形することにより、円筒状の内壁2と内壁2の外周を囲う球状の外壁3とを有した二重壁構造の電球カバー等の樹脂製品1を製造することができる。
【0056】
また、胴部12と外周部13とは、底部14を介して連続し一体的に形成されているため、プリフォーム10をブロー成形した後の樹脂製品1において、胴部12と外周部13との境目が目立ちにくく、美的外観に優れた樹脂製品1とすることができる。また、プリフォーム10のブロー成形時において、胴部12はコア型60の突起部61に保持された状態で維持されているため、電球光を透過する樹脂製品1の内壁2を均等な肉厚とすることができ、さらに美的外観に優れた樹脂製品1とすることができる。
【0057】
また、射出装置30の金型によれば、プリフォーム10の胴部12を形成するための第一空隙52とプリフォーム10の外周部13を形成するための第二空隙57とを連続した空隙として形成することができる。このため、胴部12と外周部13との間に形成される空間15内にブローエアーを吹き付けることでブロー成形することが可能なプリフォーム10を製造することができる。
【0058】
また、コア型60の突起部61の外壁には凹部62が形成されているため、射出装置30において突起部61に接着した状態で製造されたプリフォーム10をブロー成形装置70へ搬送する際に、プリフォーム10がコア型60から落下するのを抑制することができる。
【0059】
また、ブロー成型装置70の金型によれば、胴部12と外周部13とが連続して一体的に形成されているプリフォーム10の胴部12と外周部13との間の空間15に向けてブロー成形することが可能である。このため、胴部用の樹脂部品(内壁部分)と外周部用の樹脂部品(外壁部分)とを別々に準備する必要がない。よって、二重壁構造の樹脂製品を低コストで製造することができる。
【0060】
また、二重壁構造を有する樹脂製品1の製造方法によれば、一体的に形成された胴部12と外周部13とを有するプリフォーム10に対してブロー成形を行いワンステージで樹脂製品1を製造することができる。このため、胴部用の樹脂部品(内壁部分)と外周部用の樹脂部品(外壁部分)とを別々に準備して両部品を接合する製造方法と比較して、簡単かつ低コストで二重壁構造の樹脂製品1を製造することができる。
【0061】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0062】
例えば、上記の実施形態の説明では、プリフォーム10の空間15に対してブロー成形する例を説明したがこの例に限られない。プリフォーム10の空間15だけでなく、胴部12の内部空間に対してもブローエアーを導入してブロー成形する構成であっても良い。
【符号の説明】
【0063】
1:樹脂製品、2:内壁、3:外壁、2a,2b,3a:開口、2c:周縁部、4,5:空間、10:プリフォーム、12:胴部、12a:口部、12b:底部、12c:周縁部、13:外周部、13a:開口、13b:フランジ部、14:底部、15:空間、20:射出ブロー成形装置、30:射出装置、31:射出成形部、32:樹脂供給部、45:ランナー型、50:第一キャビティ型、51:胴部形成部、52:第一空隙、53:ゲート、55:第二キャビティ型、56:外周部形成部、57:第二空隙、60:コア型、61:突起部、62:凹部、70:ブロー成形装置、75:第一ブロー型、76:エア流路、77:突起部、78:エア導出口、80:第二ブロー型、81:内壁面、90:搬送手段
図1
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