特許第6656893号(P6656893)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6656893
(24)【登録日】2020年2月7日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】消防用ホース
(51)【国際特許分類】
   A62C 33/00 20060101AFI20200220BHJP
   F16L 11/02 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
   A62C33/00 C
   F16L11/02
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-223348(P2015-223348)
(22)【出願日】2015年11月13日
(65)【公開番号】特開2017-86698(P2017-86698A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】391001169
【氏名又は名称】櫻護謨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 操
(72)【発明者】
【氏名】戸城 賢三
【審査官】 稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−116302(JP,A)
【文献】 特開2014−200548(JP,A)
【文献】 特表2014−508906(JP,A)
【文献】 特開2003−004174(JP,A)
【文献】 特開2005−048926(JP,A)
【文献】 実開昭56−158269(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00−99/00,
F16L 9/00−11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
たて糸とよこ糸で筒状に織られたジャケットで覆われ、扁平された状態でホース幅の両縁となる第1の耳部及び第2の耳部と、前記第1の耳部と前記第2の耳部の間にそれぞれ位置する一対の領域と、を有するホース部と、
前記ホース部の長さ方向に沿って外面に露出して配置され前記ホース部の素地の色と異なる色に着色された第1の表示ラインと、
前記ホース部の外面に前記第1の表示ラインに平行して配置され前記ホース部の素地の色と異なる色に着色されるとともに、前記第1の表示ラインとの境界を中心に前記第1の表示ラインに対して色及び線幅の少なくとも一方が非対称である第2の表示ラインと、を備え、
前記一対の領域の一方に前記第1の表示ライン及び前記第2の表示ラインの第1の組が配置され、
前記一対の領域の他方に前記第1の表示ライン及び前記第2の表示ラインの第2の組が配置され、
前記第1の組の前記第1の表示ラインは、前記ホース部の周方向において前記第1の組の前記第2の表示ラインよりも前記第1の耳部の近くに位置し、
前記第2の組の前記第1の表示ラインは、前記周方向において前記第2の組の前記第2の表示ラインよりも前記第2の耳部の近くに位置する
ことを特徴とする消防用ホース。
【請求項2】
前記第1の表示ライン及び前記第2の表示ラインは、前記ホース部の素地の色と異なる色に着色されたたて糸で形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載された消防用ホース。
【請求項3】
前記第1の表示ラインは、前記ホース部の素地の色と異なる第1の色であり、
前記第2の表示ラインは、前記ホース部の素地の色及び第1の色と異なる第2の色である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載された消防用ホース。
【請求項4】
前記第1の表示ラインと前記第2の表示ラインの間に前記第1の色及び前記第2の色と異なる第3の色の境界ラインをさらに備える
ことを特徴とする請求項3に記載された消防用ホース。
【請求項5】
前記境界ラインの前記第3の色は、前記ホース部の素地の色と同色である
ことを特徴とする請求項4に記載された消防用ホース。
【請求項6】
前記第1の表示ラインと前記第2の表示ラインの間に前記ホース部の素地の色と同色の境界ラインをさらに備え、
前記第2の表示ラインは、前記第1の表示ライン及び前記境界ラインを足し合わせた幅よりも大きい線幅を有している
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載された消防用ホース。
【請求項7】
前記第1の耳部と前記第2の耳部の間において前記第1の表示ラインおよび前記第2の表示ラインと平行に配置された第3の表示ラインをさらに備え、
前記第1の表示ラインは、前記周方向において前記第2の表示ラインと前記第3の表示ラインとの間に位置し、
前記第1の表示ラインの幅は、前記第3の表示ラインの幅よりも大きく、
前記第2の表示ラインの幅は、前記第1の表示ラインの幅よりも大きい
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載された消防用ホース。
【請求項8】
前記ホース部の中央側から端部を見て第1の表示ラインが左側に位置する第1の端部に取り付けられた雄型金具と、
前記ホース部の中央側から端部を見て第2の表示ラインが左側に位置する第2の端部に取り付けられた雌型金具と、をさらに備える
ことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載された消防用ホース。
【請求項9】
前記ホース部は、前記第1の耳部の範囲を示す第1の目印線と、前記第2の耳部の範囲を示す第2の目印線とを有し、
前記第1の表示ラインと前記第1の目印線との間、及び、前記第2の表示ラインと前記第2の目印線との間に、前記ホース部の素地の色の領域が設けられている
ことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載された消防用ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水源側の端部に雌金具を有し、放水側の端部に雄金具を有した消防用ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
火災現場において、消防用ホースは、水源であるポンプ車から放水側である火災現場まで、複数本接続されて引き回される。ビル火災などの場合、消防隊員は、放水ノズルを抱えて建物の奥まで侵入し、消火活動を行う。建物内部では外部からの光が届きにくく、建物の外へ退避するための帰還経路が分かりにくい。このとき、ビル内に入る際に引き込んだ消防用ホースを逆にたどって外へ脱出するように訓練をしている。消防用ホースを抱えている消防隊員はすぐさまそのホースの位置が分かるが、要救助者の捜索活動を行っていた消防隊員は、消防用ホースから逸れたところに行くので、消防用ホースの位置が分からなくなることも有る。
【0003】
特許文献1に記載された消防用ホースは、ホースの外表面に長さ方向に配される樹脂層の縦色線を所定の規則性を有してホース長さ方向に変化する断続的に描くことで、消防隊員が脱出方向を判断しやすくしている。このとき縦色線に蓄光材や反射材を含有することで視認性を向上させている。
【0004】
また特許文献2に記載された消防用ホースは、ホースの外表面にホースの長手方向に沿って雌金具側を指し示す形状のマークを蓄光塗料や蛍光塗料など発光性の塗料で列状に付着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−059024号公報
【特許文献2】特開2004−132443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、消防用ホースは、たて糸とよこ糸を密に筒状に織られたジャケットで覆われている。樹脂層の縦色線はこのジャケットの外表面に貼り付けられているので、擦れて部分的に剥がれ落ちることも有る。特許文献1のように、断続的に配された縦色線の規則性の変化(各パーツ線が段階的に長くなる)によって、脱出方向を規定する場合、規則性の変化を見出すための一定の長さが必要である。また、パーツのいくつかが摩耗によって途切れ本来の長さではなくなっていると、脱出方向を判断しづらい。
【0007】
蓄光塗料や蛍光塗料あるいは反射材は材料コストが高く、これらを含有する縦色線を消防用ホースの外表面に設けることは、消防用ホースの製造単価を高くする。また、特許文献1及び特許文献2の蓄光材や蛍光材あるいは反射材を含有する樹脂層は、消防用ホースの外表面に付着されるので、消防用ホースを現場で引きずることで摩耗し、剥れやすい。特に、特許文献1の消防用ホースのように規則性を有した縦色線が、擦れて摩耗し、規則性を失うと、脱出方向を判別するための機能を果たさなくなるため、買い替える必要が生じる。
【0008】
そこで、本発明は、わずかな長さでも消防隊員が脱出方向を判断することができかつ耐摩耗性に優れた指標を有する消防用ホースを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る一実施形態の消防用ホースは、ホース部と第1の表示ラインと第2の表示ラインとを備える。ホース部は、たて糸とよこ糸で筒状に織られたジャケットで覆われている。第1の表示ラインは、ホース部の長さ方向に沿って外面に露出して配置され、ホース部の素地の色と異なる色に着色されている。第2の表示ラインは、ホース部の外面に第1の表示ラインに平行して配置され、第1の表示ラインとの境界を中心に第1の表示ラインに対して色及び線幅の少なくとも一方が非対称である。ここで、「色が非対称である」とは、第1の表示ラインと第2の表示ラインの色がそれぞれ単色で互いに異なる色であることに加え、模様や図柄など互いの色の配色が異なる場合も含む。また、「線幅が非対称である」とは、第1の表示ラインと第2の表示ラインの線幅が異なっている場合であり、線幅の差を判別するのに正面から見て容易に判別できる程度の差を有していることを意味する。
【0010】
このとき、第1の表示ライン及び第2の表示ラインは、ホース部の素地の色と異なる色に着色されたたて糸で形成する。また、第1の表示ラインは、ホース部の素地の色と異なる第1の色であり、第2の表示ラインは、ホースの素地の色及び第1の色とは異なる第2の色であることも好ましい。このとき、第1の表示ラインと第2の表示ラインの間に第1の色及び第2の色とは異なる第3の色の境界ラインを備えるとよい。また、境界ラインの第3の色は、ホース部の素地の色と同色であってもよい。
【0011】
また、第1の表示ラインと第2の表示ラインの間にホース部の素地の色と同色の境界ラインをさらに備え、第2の表示ラインは、第1の表示ライン及び境界ラインを足し合わせた幅よりも大きい線幅を有していてもよい。
【0012】
また、第1の表示ライン及び第2の表示ラインが並ぶどちらか一方の外側に、第1の表示ライン及び第2の表示ラインとは線幅の異なる第3の表示ラインをさらに備えることも好ましい。また、第1の表示ライン及び第2の表示ラインの組は、ホース部の周方向に少なくとも2か所に配置されていることが好ましい。
【0013】
さらに、上述の消防用ホースにおいて、雄型金具と雌型金具とをさらに備える。雄型金具は、ホース部の中央側から端部を見て第1の表示ラインが左側に位置する第1の端部に取り付けられている。雌型金具は、ホース部の中央側から端部を見て第2の表示ラインが左側に位置する第2の端部に取り付けられている。
【0014】
また、本発明の消防用ホースの端部識別方法は、上述のように雄型金具と雌型金具が各々端部に取り付けられた消防用ホースに対して適用される端部識別方法であって、第1の表示ライン及び第2の表示ラインの一方から他方へ横切るようにS字を描いた場合、終端が第1の表示ラインに位置するときはホース部の左側の端部に雄型金具が取り付けられていると判定し、終端が第2の表示ラインに位置するときはホース部の左側の端部に雌型金具が取り付けられていると判定する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る消防用ホースによれば、第1の表示ラインと第2の表示ラインの境界を中心に第2の表示ラインが第1の表示ラインに対して色及び線幅の少なくとも一方が非対称であるように設けられているので、第1の表示ライン及び第2の表示ラインを基にホース部の端部を区別することができる。つまり、第1の表示ライン及び第2の表示ラインが設けられたホース部のわずかな一部分を見るだけで、雄型金具及び雌型金具がそれぞれどちら側の端部に取り付けられているか判別することが可能である。
【0016】
したがって、消火活動において視界の悪い建物の奥へ入った場合でも、水源側となる雌型金具がどちらに取り付けられているかを判断することで、消防隊員は、脱出方向が分かり、消防用ホースに沿って速やかに退避することができる。
【0017】
第1の表示ライン及び第2の表示ラインがホース部の素地の色と異なる色に染色されたたて糸で形成されたことが発明の消防用ホースによれば、消防用ホースを火災現場において引き摺った場合でも、第1の表示ライン及び第2の表示ラインが擦れて途切れたりかすれたりすることが無い。つまりこの消防用ホースは、ホース部の表面が多少擦れても、各表示ラインの色や線幅が変わることが無く、耐久性に優れている。
【0018】
また、第1の表示ラインがホース部の素地の色と異なる第1の色であり、第2の表示ラインがホース部の素地の色及び第1の色とは異なる第2の色であることが発明の消防用ホースによれば、色を基に瞬時に判断できるようになる。
【0019】
第1の表示ラインと第2の表示ラインの間に第1の色及び第2の色とは異なる第3の色の境界ラインを備えることが発明の消防用ホースによれば、第1の表示ラインと第2の表示ラインを識別しやすく、かつ、一組となる第1の表示ラインと第2の表示ラインの組み合わせを判別しやすい。境界ラインの第3の色がホース部の素地の色と同色である場合は、生産コストを抑えることができる。
【0020】
また、第1の表示ラインと第2の表示ラインの間にホース部の素地の色と同色の境界ラインをさらに備え、第1の表示ライン及び境界ラインを足し合わせた幅よりも大きい線幅を第2の表示ラインが有していることが発明の消防用ホースによれば、火災現場において光源の色によって第1の表示ライン及び第2の表示ラインの色を区別しづらい場合でも、線幅の違いを基に雌型金具側を判定して容易に脱出方向を判断することができる。
【0021】
または、第1の表示ライン及び第2の表示ラインが並ぶどちらか一方の外側に、第1の表示ライン及び第2の表示ラインとは線幅の異なる第3の表示ラインをさらに備えることが発明の消防用ホースによれば、第3の表示ラインがあることでより明確に雌型金具が取り付けられている端部を判別することができ、脱出方向を判断しやすい。
【0022】
また、上述の消防用ホースにおいて、ホース部の中央側から端部を見て第1の表示ラインが左側に位置する第1の端部に雄型金具が取り付けられ、ホース部の中央側から端部を見て第2の表示ラインが左側に位置する第2の端部に雌型金具が取り付けられていることが発明の消防用ホースによれば、第2の表示ラインが左側に位置するようにホース部を跨いだその前方が脱出方向であることをすぐに判断することができる。
【0023】
本発明に係る消防用ホースの端部識別方法によれば、この端部識別方法を適用できる消防用ホースは、ホース部の中央側から端部を見て第1の表示ラインが左側に位置する第1の端部に雄型金具が取り付けられ、ホース部の中央側から端部を見て第2の表示ラインが左側に位置する第2の端部に雌型金具が取り付けられているので、第1の表示ライン及び第2の表示ラインの一方から他方へ横切るようにS字を描いた場合、S字の終端が第1の表示ラインに位置するときはホースの左側の端部に雄型金具が取り付けられており、S字の終端が第2の表示ラインに位置するときはホース部の左側の端部に雌型金具が取り付けられていることを判定することができる。つまり、第1の表示ライン及び第2の表示ラインを横切るようにS字を描いた場合、S字の終端が第1の表示ラインに位置するときは、ホース部に沿って右側が脱出方向であり、S字の終端が第2の表示ラインに位置するときは、ホース部に沿って左側が脱出方向であることを直ぐに判別できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る第1の実施形態の消防用ホースの平面図。
図2図1の消防用ホースの一部を拡大した平面図。
図3図2の消防用ホースのホース部の長さ方向を横切る断面図。
図4図2の消防用ホースの表示ラインの他の色の組み合わせを示す図。
図5】本発明に係る第2の実施形態の消防用ホースの一部を拡大した平面図。
図6】本発明に係る第3の実施形態の消防用ホースの一部を拡大した平面図。
図7】本発明に係る第4の実施形態の消防用ホースの一部を拡大した平面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る第1の実施形態の消防用ホース1について、図1から図3を参照して説明する。図1に示す消防用ホース1は、消火栓やポンプ車の吸水口に結合され火災現場で送水するために使用される。消防用ホース1は、一方の端部となる第1の端部1Aに雄型金具2が取り付けられ、他方の端部となる第2の端部1Bに雌型金具3が取り付けられている。一般に、消火栓やポンプ車の吐出口が雄型金具であるので、消防用ホース1は、雌型金具3が水源側に配置され、雄型金具2が放水側に配置される。
【0026】
消防隊員は、消火活動のために建屋内部に進入した場合、帰路(脱出経路)を容易に判断できる必要がある。このとき、建屋内部に引き込んだ消防用ホース1を辿ってゆくことが一般的であるが、視界が悪いとどちらへ行けば水源側となる第2の端部1Bへ向かうのか、すなわち脱出方向であるのか判断に迷うことになる。
【0027】
本実施形態の消防用ホース1は、図1及び図2に示すように、ホース部11と第1の表示ライン12と第2の表示ライン13とを備えているので、消防用ホース1の一部分を見るだけで第1の端部1Aと第2の端部1Bを容易に特定することができる。したがって、予め、雄型金具2及び雌型金具3のどちらが第1の端部1A及び第2の端部1Bにそれぞれ取り付けられているのかを把握していることで、本発明の端部識別方法によって、端部の金具を直接見ることなく、容易に脱出方向を特定することができる。
【0028】
この消防用ホース1のホース部11は、たて糸111とよこ糸112で筒状に織られたジャケット110で覆われている。ジャケット110は、いわゆる「綾織」で織られており、たて糸111の密度が高いので、たて糸111が外表面に露出している。綾織以外に、平織りや朱子織であってもよい。ジャケット110の内面は、柔軟な合成樹脂製のライニング材113(図3参照)で覆われている。
【0029】
第1の表示ライン12は、ホース部11の長さ方向に沿って外面に露出して配置され、ホース部11の素地の色と異なる色に着色されている。本実施形態では、第1の表示ライン12は、ホース部11の素地の色と異なる色に染色されたたて糸111で形成されている。具体的には、ホース部11の素地の色は白色であり、第1の表示ライン12を形成するたて糸111は第1の色として赤色に染色されている。
【0030】
第2の表示ライン13は、ホース部11の外面に第1の表示ライン12に平行して配置され、第1の表示ライン12との境界を中心に第1の表示ライン12に対して色及び線幅の少なくとも一方が非対称である。本実施形態では、図2に示すように、第2の表示ライン13の線幅W2は、第1の表示ライン12の線幅W1と同じ幅であり、したがって、第2の表示ライン13は、第1の表示ライン12に対して色が非対称である。すなわち、第2の表示ライン13は、ホース部11の素地の色及び第1の表示ライン12の第1の色(すなわち赤色)とは異なる第2の色として青色である。第2の表示ライン13は、第1の表示ライン12と同様に、ホース部11の素地の色と異なる色に着色されたたて糸111で形成されており、本実施形態においては、第2の色の青色に着色されたたて糸111で形成されている。
【0031】
ここで、「色が非対称である」とは、第1の表示ライン12と第2の表示ライン13の境界を中心として対称性を有していない配色であることを意味する。つまり、上述のように第1の表示ライン12が第1の色として赤色であり、第2の表示ライン13が第2の色として青色であるように、それぞれが単色であることの他に、例えば、第1の色として赤と黄色のストライプであるのに対し第2の色として青と黄色のストライプであってもよい。また、第1の色及び第2の色として、綾織で織れる異なる模様であってもよい。ただし、ホース部11を180度回転させて第1の端部1Aと第2の端部1Bの位置を入れ替えたときに模様が重なる2回回転対称であってはならない。
【0032】
また、ホース部11は、第1の表示ライン12と第2の表示ライン13の間に第1の色及び第2の色と異なる第3の色の境界ライン14を備える。本実施形態では、境界ライン14の第3の色は、ホース部11の素地の色と同色である白色のたて糸111で構成されている。第3の色は、第1の色、第2の色及びホース部11の素地の色とも異なる色であってもよい。境界ライン14は、第1の表示ライン12及び第2の表示ライン13の間に配置されるので、第1の色及び第2の色をそれぞれ際立たせる色が望ましい。境界ライン14は、着色されたたて糸111で形成される代わりに、蓄光材や蛍光材又は反射材が含浸されたたて糸111で形成されてもよい。また、たて糸111よりも境界がはっきりするように、第3の色に着色された合成樹脂層で境界ライン14を形成してもよい。なお、第1の色と第2の色の配色において互いの境界が明確であれば、境界ライン14を設けずに、第1の表示ライン12と第2の表示ライン13を隣り合わせて配置してもよい。
【0033】
この消防用ホース1は、偏平した状態で渦巻き状に捲回される、いわゆる「平ホース」である。したがって、ホース部11が偏平された状態でホース幅の両縁となる耳部15の範囲を示す目印線16をさらに備える。目印線16は、ホース部11の素地の色と異なる色、本実施形態では、第1の色(赤色)及び第2の色(青色)とも異なる緑色に着色されている。耳部15は、それ以外の部分よりもたて糸111の密度が高い。本実施形態において、目印線16は、1つのたて糸111で形成される。ジャケット110は、綾織であるので、目印線16が破線となっておもて面に露出している。少なくとも2本の隣り合うたて糸111で形成すれば、目印線16は、ジャケット110の外表面に連続的に表れる。
【0034】
第1の表示ライン12及び第2の表示ライン13は、消防用ホース1が送水されている状態と扁平された状態のいずれにおいても容易に目視できることが好ましい。そこで、消防用ホース1は、第1の表示ライン12及び第2の表示ライン13の組を、ホース部11の周方向に少なくとも2か所に有している。図3は、消防用ホース1に水が通され膨らんだ状態で、図2中のF3−F3線に沿って第2の端部1B側を見た端面図である。本実施形態の場合、図3に示すように、ホース部11の周方向に概ね180度離れた2か所に第1の表示ライン12及び第2の表示ライン13の組を配置している。第1の表示ライン12と第2の表示ライン13の組を周方向に3か所に配置する場合は、概ね120度、互いに離れた位置に配置すればよい。第1の表示ライン12及び第2の表示ライン13が目印線16に重なる場合であっても、第1の表示ライン12及び第2の表示ライン13は、第1の色及び第2の色のたて糸111でそれぞれ形成されるので、目印線16をそのままに配置することができる。
【0035】
本実施形態の消防用ホース1において、以上のように第1の表示ライン12及び第2の表示ライン13が設けられたホース部11に対して、雄型金具2は、ホース部11の中央側から端部を見て第1の表示ライン12が左側に位置する第1の端部1Aに取り付けられ、雌型金具3は、ホース部11の中央側から端部を見て第2の表示ライン13が左側に位置する第2の端部1Bに取り付けられる。
【0036】
雄型金具2は第1の端部1Aに取り付けられているので、消防用ホース1のホース部11を跨いで見下ろした場合に左側に位置する表示ラインが第1の表示ライン12であれば、その前方に雄型金具2が取り付けられている放水(第1の端部1A)側であることを意味する。したがって、この場合は後方が脱出方向であることが分かる。同様に、雌型金具3は第2の端部1Bに取り付けられているので、消防用ホース1のホース部11を跨いで見下ろした場合に左側に位置する表示ラインが第2の表示ライン13であれば、その前方に雌型金具3が取り付けられている水源(第2の端部1B)側であることを意味する。したがって、この場合は前方が脱出方向であることが分かる。また、言い換えれば、消防用ホース1のホース部11を跨いで上から見下ろした場合に、第1の表示ライン12が右側(第2の表示ライン13が左側)にあれば前方が脱出方向であり、第1の表示ライン12が左側(第2の表示ラインが右側)にあれば後方が脱出方向であるとも言える。
【0037】
以上のように消防用ホース1の向きを特定する以外に、本発明の消防用ホース1に対して本発明の端部識別方法を適用することで、ホース部11の一部分を見るだけで消防用ホース1に沿ってどちら側に脱出すればよいか、もっと簡単にかつ瞬時に判断することができる。
【0038】
第1の端部1Aに雄型金具2が取り付けられ、第2の端部1Bに雌型金具3が取り付けられた上述の消防用ホース1に対し、本発明の端部判別方法は、第1の表示ライン12及び第2の表示ライン13の一方から他方へ横切るようにS字100を描くことで、ホース部11のどちら側の端部に雌型金具3が配置されているのかを識別する。具体的には、S字100を描き切った終端が第1の表示ライン12に位置する場合、ホース部11の左側の端部は第1の端部1Aであり、雄型金具2が取り付けられていることを示す。したがって、この場合の脱出方向は、ホース部11に沿って右側となる。また、S字100を描き切った終端が第2の表示ライン13に位置する場合、ホース部11の左側の端部は第2の端部1Bであり、雌型金具3が取り付けられていることを示す。したがって、この場合の脱出方向は、ホース部11に沿って左側となる。つまり、第1の表示ライン12と第2の表示ライン13にS字100を描きその終端が第1の表示ライン12であり第1の色である場合は、S字100を描き切った左方向と反対の右側に脱出し、S字100を描きその終端が第2の表示ライン13であり第2の色である場合は、S字100を描き切った左方向へそのまま脱出すればよい。
【0039】
なお、本実施形態では端部識別方法において描く文字は「S」であるが、「S」以外の文字であってもよい。例えば「S」のように第1の表示ライン及び第2の表示ラインを跨いで描いた場合に、その終端が右下側または左下側に来る「Z」、「J」、「L」、「C」、「2」、「3」の他、画数の少ない平仮名の「う」、「え」、「さ」、「し」、「せ」、「そ」、「ち」、「つ」、「て」、「と」、「ろ」、「ん」のようなものが好ましい。いずれの文字であっても、第1の表示ライン12及び第2の表示ライン13によって特定される第1の端部1A及び第2の端部1Bに対して、雄型金具2及び雌型金具3のどちらが取り付けられているのかを予め決めておくことで、文字を描いた終端側が脱出方向であるかどうかを識別できる。つまり、第1の表示ライン12及び第2の表示ライン13に描いた文字の終端が第1の表示ライン12に位置するか第2の表示ライン13に位置するかで雌型金具3が配置されている端部を瞬時に判断することができる。
【0040】
第1の表示ライン12の第1の色及び第2の表示ライン13の第2の色の配色は、第1の実施形態及び第2の実施形態において示した配色に限定されない。消防活動の現場において、異なる2色の線として識別しやすい色の組み合わせ、例えば補色の関係にある色どうしを第1の色及び第2の色として使用してもよい。いくつかの配色の例を図4に示す。
【0041】
図4は、ホース部11を偏平させ、上側及び下側に耳部15が位置するように見た場合の一部を配色ごとに並べて示す。(1)は、上述の第1の実施形態の配色を示している。(2)は、第2の表示ライン13の第2の色が緑色(赤色の補色)である場合を示す。(3)は、第1の表示ライン12の第1の色が黄色であり、第2の表示ライン13の第2の色が青色である。(4)は、第1の表示ライン12の第1の色が黄色であり、第2の表示ライン13の第2の色が紫色である。(5)は、第1の表示ライン12の第1の色が緑色であり、第2の表示ライン13の第2の色が青色である。(6)は、第1の表示ライン12の第1の色が緑色であり、第2の表示ライン13の第2の色が紫色である。(7)は、第1の表示ライン12の第1の色が橙色であり、第2の表示ライン13の第2の色が青色である。(8)は、第1の表示ライン12の第1の色が橙色であり、第2の表示ライン13の第2の色が緑色である。
【0042】
(1)〜(8)は、いずれもホース部11の素地の色と同色(白色)のたて糸111で構成された境界ライン14を第1の表示ライン12と第2の表示ライン13の間に有している。(9)は、境界ライン14を配置することなく、第1の表示ライン12の第1の色(赤色)と第2の表示ライン13の第2の色(青色)が隣接して配置されている。いずれの配色においても第1の表示ライン12と第2の表示ライン13の線幅は同じである。
【0043】
また、(10)は、黄色の境界ライン14を中心に第1の表示ライン12及び第2の表示ライン13を非対称に配置した一例に含まれる。第1の表示ライン12の第1の色は赤色であり、第2の表示ライン13の第2の色は青色である。そして、赤色の第1の表示ライン12と黄色の境界ライン14の間にその中間色である橙色のたて糸111を、青色の第2の表示ライン13と黄色の境界ライン14の間にその中間色である緑色のたて糸111を、それぞれ配置している。いずれの色も、その色に着色されたたて糸111に置き換えるだけであるので、ホース部11を多色に着色する場合でもホース部11を製造する工程はほぼ変えずに済む。
【0044】
以下、本発明の第2から第4の実施形態の消防用ホースについて説明する。第1の実施形態の消防用ホースと同じ機能を有する構成は、各実施形態において第1の実施形態の構成と同じ符号を付し、詳細については第1の実施形態の記載を参酌することとする。
【0045】
本発明の第2の実施形態の消防用ホース1について、図5を参照して説明する。図5に示す消防用ホース1において、第1の表示ライン12と第2の表示ライン13は、線幅が同じであり、互いに異なる第1の色(赤色)と第2の色(青色)に着色されたたて糸111で形成されている点において第1の実施形態と同じである。そして、第1の表示ライン12及び第2の表示ライン13の間に第1の色及び第2の色と異なる第3の色に着色された境界ライン14を有している。
【0046】
第2の実施形態において、この境界ライン14の第3の色は、ホース部11の素地の色とは異なる色として目印線16と同じ緑色、に着色されている。さらに、本実施形態では、境界ライン14が目立つように、境界ライン14と第1の表示ライン12の間141、及び境界ライン14と第2の表示ライン13の間142のそれぞれに、ホース部11の素地と同じ色、すなわち白色のたて糸111を配置している。これにより、第1の表示ライン12及び第2の表示ライン13の境界がより明確になる。また、第1の表示ライン12と第2の表示ライン13がホース部11の周方向に複数個所に配置されている場合でも、境界ライン14を挟むように配置されている第1の表示ライン12と第2の表示ライン13がホース部11の端部を判別するために使用される一組であることを判別しやすい。
【0047】
本発明の第3の実施形態の消防用ホース1について、図6を参照して説明する。図6に示す消防用ホース1は、第1の表示ライン12と第2の表示ライン13の色が同色であり、第1の表示ライン12と第2の表示ライン13の境界を中心に第1の表示ライン12に対して第2の表示ライン13の線幅が非対称に配置されている。本実施形態では、第2の表示ライン13の線幅W2の方が第1の表示ライン12の線幅W1よりも大きい。
【0048】
このとき第3の実施形態の消防用ホース1では、線幅の差をより明確に判別できるために、第1の表示ライン12と第2の表示ライン13の間にホース部11の素地の色と同色(白色)の境界ライン14を有しており、第1の表示ライン12及び境界ライン14を足し合わせた線幅WAよりも第2の表示ライン13の線幅W2の方が大きい。
【0049】
第3の実施形態の消防用ホース1において、ホース部11の中央側から端部を見て第1の表示ライン12が左側に位置する第1の端部1Aに雄型金具2が取り付けられており、ホース部11の中央側から端部を見て第2の表示ライン13が左側に位置する第2の端部1Bに雌型金具3が取り付けられている。
【0050】
第1の表示ライン12の線幅W1と第2の表示ライン13の線幅W2が異なっているので、消防用ホース1を照らす明かりの色によって表示ラインの色を判別しにくい場合でも2つの表示ラインを簡単に見分けることができる。第3の実施形態では、ホース部11を跨いで見下ろした場合に左側の線幅の方が小さい場合、すなわち左側に第1の表示ライン12が位置している場合、その前方に雄型金具2が取り付けられている放水(第1の端部1A)側であることを意味する。したがって、後方が脱出方向であることが分かる。また、ホース部11を跨いで見下ろした場合に左側の線幅の方が大きい場合、すなわち左側に第2の表示ライン13が位置している場合、その前方に雌型金具3が取り付けられている水源(第2の端部1B)側であることを意味する。したがって、前方が脱出方向であることが分かる。
【0051】
また、第1の表示ライン12及び第2の表示ライン13に対して、これらを横切るようにS字100を描く本発明の端部識別方法を適用すれば、ホース部11の一部分を基に脱出方向を容易に判別することができる。具体的には、上述のようにホース部11に第1の端部1Aに雄型金具2が取り付けられ第2の端部1Bに雌型金具3が取り付けられている場合、S字100を描き切った終端が第1の表示ライン12に位置する場合は、ホース部11に沿って右側が脱出方向であり、S字100を描き切った終端が第2の表示ライン13に位置する場合は、ホース部11に沿って左側が脱出方向となる。
【0052】
本発明の第4の実施形態の消防用ホース1について、図7を参照して説明する。図7に示す消防用ホース1は、第1の表示ライン12と第2の表示ライン13の色が同色であり、第1の表示ライン12及び第2の表示ライン13が並ぶどちらか一方の外側に第1の表示ライン12の線幅W1及び第2の表示ライン13の線幅W2とは異なる線幅W3の第3の表示ライン17を有している。
【0053】
第4の実施形態では、図7に示すように、第1の表示ライン12の外側(すなわち第2の表示ライン13の反対側)に第3の表示ライン17を有しており、第3の表示ライン17の線幅W3は、第1の表示ライン12の線幅W1及び第2の表示ライン13の線幅W2よりも小さい。第1の表示ライン12と第3の表示ライン17の間にはこれらを区別するためにホース部11の素地と同じ白色の境界ライン14が設けられている。このように、同色であっても線幅の異なる3本の表示ラインが並ぶ場合、ホース部11の第1の端部1Aと第2の端部1Bは、一義的に決まる。なお、境界ライン14は、第1の表示ライン12と第2の表示ライン13と第3の表示ライン17との境界が明らかになればよいので、ホース部11の素地の色と同色でなくてもよい。
【0054】
つまり、ホース部11の中央側から第1の端部1Aを見た場合とホース部11の中央側から第2の端部1Bを見た場合とで、3本の表示ラインが同じ配置にならない限り、第1の端部1Aと第2の端部1Bを見分けることができる。第1の表示ライン12の線幅W1、第2の表示ライン13の線幅W2、及び第3の表示ライン17の線幅W3は、例えば図7のように各表示ラインが並んでいる場合、W3<W1<W2の順に大きくなっていてもよいし、W1<W3<W2の順あるいはW2<W1<W3の順に大きくなっていてもよいし、またこれ以外の順番であってもよい。
【0055】
第4の実施形態のように構成された消防用ホース1に対し、本発明の端部識別方法を用いれば、他の実施形態と同様に、ホース部11の一部を見て脱出方向を即座に判別することができる。また、表示ラインの本数は3本以上あってもよい。さらに、第1の表示ライン12と第2の表示ライン13と第3の表示ライン17は、線幅のみが異なるだけでなく、それぞれ別の色であってもよい。第1の表示ライン12、第2の表示ライン13、及び第3の表示ライン17のそれぞれ色と線幅W1,W2,W3の組み合わせが異なるものを用意することで、建物への進入経路ごとに、あるいは消防署ごとに、識別することにも利用できる。
【0056】
以上、本発明に係る消防用ホース1及び端部識別方法ついて第1から第4の実施形態を用いて説明した。これらの実施形態は、本発明を実施するにあたって理解しやすくするための一例に過ぎない。したがって、本発明を実施するにあたってその趣旨を逸脱しない範囲で、各構成を同等の機能を有するものに置き換えて実施することも可能であり、それらもまた本発明に含まれる。また、各実施形態で説明した構成のいくつかを互いに組み合わせて、あるいは置き換えて実施されることも本発明に含まれる。
【0057】
例えば第3の実施形態の消防用ホース1において、第1の表示ライン12及び第2の表示ライン13を第1の実施形態や第2の実施形態のように第1の色と第2の色で構成してもよい。また、いずれの実施形態でも、ホース部11の素地の色を白色として説明したが、素地の色が赤色や青色である場合は、第1の色または第2の色として白色であってもよい。また目印線16の色もホース部11の素地の色と異なる色であれば、赤色や青色などであってもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…消防用ホース、1A…第1の端部、1B…第2の端部、2…雄型金具、3…雌型金具、11…ホース部、111…たて糸、112…よこ糸、12…第1の表示ライン、13…第2の表示ライン、14…境界ライン、17…第3の表示ライン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7