特許第6656896号(P6656896)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6656896
(24)【登録日】2020年2月7日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】農作業機の昇降判別システム
(51)【国際特許分類】
   A01B 63/00 20060101AFI20200220BHJP
   A01B 63/32 20060101ALI20200220BHJP
   A01B 63/10 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
   A01B63/00 B
   A01B63/32
   A01B63/10 C
【請求項の数】10
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-225373(P2015-225373)
(22)【出願日】2015年11月18日
(65)【公開番号】特開2017-93304(P2017-93304A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000188009
【氏名又は名称】松山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大村 英昭
【審査官】 大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−041501(JP,A)
【文献】 特開平09−074871(JP,A)
【文献】 特開昭63−202307(JP,A)
【文献】 特開平09−107717(JP,A)
【文献】 特開2011−072195(JP,A)
【文献】 特開平11−289809(JP,A)
【文献】 特開平11−289810(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0231069(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 63/00−63/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタに装着して農作業を行う作業機の昇降を判別するシステムであって、
前記作業機の上下方向の位置を検出するための位置検出手段と、前記作業機の前後方向の傾きを検出するための角度検出手段と、制御部と、下降基準スイッチを備え前記制御部に信号を送信可能な操作部とを有し、
前記制御部は、前記位置検出手段から得られる情報から算出される現在の上下方向の位置が、予め定めた下降基準の位置よりも一定以上高く、かつ、前記角度検出手段から得られる情報から算出される現在の前後方向の角度が、予め定めた下降基準の角度よりも一定角度以上前傾となる場合は前記作業機が上昇状態と判定し、
前記制御部は、前記下降基準スイッチの入力があったときに、前記位置検出手段から得られる情報から算出されるその時の上下方向の位置を前記下降基準の位置に設定し、前記角度検出手段から得られる情報から算出されるその時の前後方向の角度を前記下降基準の角度に設定することを特徴とする農作業機の昇降判別システム。
【請求項2】
トラクタに装着して農作業を行う作業機の昇降を判別するシステムであって、
前記作業機の上下方向の位置を検出するための位置検出手段と、前記作業機の前後方向の傾きを検出するための角度検出手段と、制御部とを有し、
前記制御部は、前記位置検出手段から得られる情報から算出される現在の上下方向の位置が、現在と関連づけられる過去の一定時間の平均の上下方向の位置に比べ一定以上高く、かつ、前記角度検出手段から得られる情報から算出される現在の前後方向の角度が、現在と関連づけられる過去の一定時間の平均の前後方向の角度に比べ一定角度以上前傾となる場合は前記作業機が上昇状態と判定することを特徴とする農作業機の昇降判別システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の農作業機の昇降判別システムにおいて、
前記位置検出手段は、加速度センサであり、前記制御部は、前記加速度センサで検出された上下方向の加速度から前記作業機の上下方向の位置を算出することを特徴とする農作業機の昇降判別システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の農作業機の昇降判別システムにおいて、
前記角度検出手段は、角速度センサであり、前記制御部は、前記角速度センサで検出された前後方向の角速度から前記作業機の前後方向の角度を算出することを特徴とする農作業機の昇降判別システム。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の農作業機の昇降判別システムにおいて、
3軸方向の加速度と3軸まわりの角速度を検出する慣性センサユニットを有し、前記位置検出手段は、前記慣性センサユニット内の1つの軸方向の加速度を検出する加速度センサであり、前記角度検出手段は、前記加速度センサが検出する軸方向と直角な軸まわりの角速度を検出する前記慣性センサユニット内の角速度センサであり、前記制御部は、前記加速度センサで検出された上下方向の加速度から前記作業機の上下方向の位置を算出し、前記角速度センサで検出された前後方向の角速度から前記作業機の前後方向の角度を算出することを特徴とする農作業機の昇降判別システム。
【請求項6】
請求項1に記載の農作業機の昇降判別システムにおいて、
前記制御部は、前記位置検出手段から得られる情報から算出される現在の上下方向の位置が、予め定めた下降基準位置よりも一定未満の高さである場合に、下降状態と判定することを特徴とする農作業機の昇降判別システム。
【請求項7】
請求項に記載の農作業機の昇降判別システムにおいて、
前記制御部は、前記位置検出手段から得られる情報から算出される現在の上下方向の位置が、現在と関連づけられる過去の一定時間の平均の上下方向の位置よりも一定未満の高さである場合に、下降状態と判定することを特徴とする農作業機の昇降判別システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の農作業機の昇降判別システムにおいて、
前記作業機にアクチュエータを有し、前記制御部は上昇状態と判定したときは、前記アクチュエータを作動させない制御を行うことを特徴とする農作業機の昇降判別システム。
【請求項9】
請求項に記載の農作業機の昇降判別システムにおいて、
前記アクチュエータを操作するためのスイッチを備えている操作部を有していることを特徴とする農作業機の昇降判別システム。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の農作業機の昇降判別システムにおいて、
前記制御部で上昇状態と判定されたときに、上昇状態であることを表示する表示部を有していることを特徴とする農作業機の昇降判別システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業機の昇降判別システムに関し、特に、トラクタに装着して農作業を行う作業機の昇降状態の判別をする農作業機の昇降判別システムに関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタに装着して農作業を行う作業機は、トラクタ側で操作を行い、作業機を上に上げるか、下に下げるかの昇降操作を行うことができる。例えば、作業機を上げた時は、地面から作業機が離れているため移動に適した状態となり、作業機を下げた時は作業機が地面上に降りているため作業に適した状態となる。このとき、作業機に有するアクチュエータを作業機を下げた場合のみに作用させることが好ましい場合等があり、より正確な作業機の昇降判別をしたい場面が存在する。
【0003】
特許文献1には、散布手段が、作業機本体が非作業状態になった際に、畦形成部に向けての液体の散布を自動停止する構成が記載されており、可撓性部材が撓み状態になった際にポンプ停止信号を出力するスイッチ手段を有する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−41501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成であると、可撓性部材を用いた構成が必要となり、また可撓性部材の調整も必要となる。また、この他の構成として、傾斜センサを用いることも考えられるが、傾斜センサのみであると、例えば、圃場の出入り口などで、トラクタ自体が傾いた場合に作業機も傾くため作業機の昇降状態を誤判別するおそれもある。また、トラクタからの情報を得ることも考えられるが、全てのトラクタが昇降状態の情報を出力できるわけではなく汎用性が低いものとなる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて、トラクタに装着して農作業を行う作業機の昇降状態の判別をより正確に行うことができる農作業機の昇降判別システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の農作業機の昇降判別システムの一つは、トラクタに装着して農作業を行う作業機の昇降を判別するシステムであって、前記作業機の上下方向の位置を検出するための位置検出手段と、前記作業機の前後方向の傾きを検出するための角度検出手段と、制御部と、下降基準スイッチを備え前記制御部に信号を送信可能な操作部とを有し、前記制御部は、前記位置検出手段から得られる情報から算出される現在の上下方向の位置が、予め定めた下降基準の位置よりも一定以上高く、かつ、前記角度検出手段から得られる情報から算出される現在の前後方向の角度が、予め定めた下降基準の角度よりも一定角度以上前傾となる場合は前記作業機が上昇状態と判定し、前記制御部は、前記下降基準スイッチの入力があったときに、前記位置検出手段から得られる情報から算出されるその時の上下方向の位置を前記下降基準の位置に設定し、前記角度検出手段から得られる情報から算出されるその時の前後方向の角度を前記下降基準の角度に設定することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の農作業機の昇降判別システムの一つは、トラクタに装着して農作業を行う作業機の昇降を判別するシステムであって、前記作業機の上下方向の位置を検出するための位置検出手段と、前記作業機の前後方向の傾きを検出するための角度検出手段と、制御部とを有し、前記制御部は、前記位置検出手段から得られる情報から算出される現在の上下方向の位置が、現在と関連づけられる過去の一定時間の平均の上下方向の位置に比べ一定以上高く、かつ、前記角度検出手段から得られる情報から算出される現在の前後方向の角度が、現在と関連づけられる過去の一定時間の平均の前後方向の角度に比べ一定角度以上前傾となる場合は前記作業機が上昇状態と判定することを特徴とする。
【0009】
さらに本発明の農作業機の昇降判別システムの一つは、前記位置検出手段は、加速度センサであり、前記制御部は、前記加速度センサで検出された上下方向の加速度から前記作業機の上下方向の位置を算出することを特徴とする。
さらに本発明の農作業機の昇降判別システムの一つは、前記角度検出手段は、角速度センサであり、前記制御部は、前記角速度センサで検出された前後方向の角速度から前記作業機の前後方向の角度を算出することを特徴とする。
【0010】
さらに本発明の農作業機の昇降判別システムの一つは、3軸方向の加速度と3軸まわりの角速度を検出する慣性センサユニットを有し、前記位置検出手段は、前記慣性センサユニット内の1つの軸方向の加速度を検出する加速度センサであり、前記角度検出手段は、前記加速度センサが検出する軸方向と直角な軸まわりの角速度を検出する前記慣性センサユニット内の角速度センサであり、前記制御部は、前記加速度センサで検出された上下方向の加速度から前記作業機の上下方向の位置を算出し、前記角速度センサで検出された前後方向の角速度から前記作業機の前後方向の角度を算出することを特徴とする。
【0011】
さらに本発明の農作業機の昇降判別システムの一つは、前記制御部は、前記位置検出手段から得られる情報から算出される現在の上下方向の位置が、予め定めた下降基準位置よりも一定未満の高さである場合に、下降状態と判定することを特徴とする
らに本発明の農作業機の昇降判別システムの一つは、前記制御部は、前記位置検出手段から得られる情報から算出される現在の上下方向の位置が、現在と関連づけられる過去の一定時間の平均の上下方向の位置よりも一定未満の高さである場合に、下降状態と判定することを特徴とする。
【0012】
さらに本発明の農作業機の昇降判別システムの一つは、前記作業機にアクチュエータを有し、前記制御部は上昇状態と判定したときは、前記アクチュエータを作動させない制御を行うことを特徴とする。
さらに本発明の農作業機の昇降判別システムの一つは、前記アクチュエータを操作するためのスイッチを備えている操作部を有していることを特徴とする。
さらに本発明の農作業機の昇降判別システムの一つは、前記制御部で上昇状態と判定されたときに、上昇状態であることを表示する表示部を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、農作業機の昇降判別システムにおいて、トラクタに装着して農作業を行う作業機の昇降状態の判別をより正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の農作業機の昇降判別システムの一実施形態を示すブロック図である。
図2】実施例1の農作業機の昇降判別システムにおける作業機を示す平面図である。
図3】実施例1の農作業機の昇降判別システムにおける作業機を示す側面図である。
図4】実施例1の農作業機の昇降判別システムにおける作業機の格納状態を示す平面図である。
図5】実施例1の農作業機の昇降判別システムにおける作業機の後進作業状態を示す平面図である。
図6】実施例1の農作業機の昇降判別システムにおける操作・表示部を示す平面図であり、上昇時の表示の一例を示す。
図7】実施例1の農作業機の昇降判別システムにおける操作・表示部を示す平面図であり、下降時の表示の一例を示す。
図8】実施例1の農作業機の昇降判別システムにおけるトラクタに対する作業機の下降時の状態を示す側面図である。
図9】実施例1の農作業機の昇降判別システムにおけるトラクタに対する作業機の上昇時の状態を示す側面図である。
図10】実施例1の農作業機の昇降判別システムにおける昇降判別1のフローチャート(前半)である。
図11】実施例1の農作業機の昇降判別システムにおける昇降判別1のフローチャート(後半)である。
図12】実施例1の農作業機の昇降判別システムにおける昇降判別2のフローチャート(前半)である。
図13】実施例1の農作業機の昇降判別システムにおける昇降判別2のフローチャート(後半)である。
図14】実施例2の農作業機の昇降判別システムにおけるトラクタに対する作業機の下降時の状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態を説明する。
【0016】
図1は、本発明の農作業機の昇降判別システムの一実施形態を示すブロック図である。本発明の農作業機の昇降判別システムは、トラクタに装着して農作業を行う作業機の昇降判別を行うものである。加速度センサ11、角速度センサ12、傾斜センサ13、制御部15、昇降通知手段18、アクチュエータ動作量センサ19、アクチュエータ20は作業機に設置される。また、操作・表示部10は、トラクタ1の運転席近傍に配置可能である。
【0017】
ユーザー101は、基本的には、トラクタ1(図8、9、14)の運転席から操作・表示部10の操作が可能である。
【0018】
操作・表示部10は、トラクタ1の運転席近傍に配置可能であり、操作部と表示部を有している。そして、操作部の操作により、遠隔で作業機に有するアクチュエータ20等の操作や昇降判別の設定や開始・終了等の操作が可能となっている。操作・表示部10からの操作・設定情報に関する信号は制御部15へ送られる。また、制御部15から昇降判別の情報やアクチュエータ20の制御の情報などが送られて、表示部で表示することができる。このとき、操作・表示部10と制御部15との情報のやりとりは、有線又は無線で行うことができる。また、操作・表示部10の操作部と表示部は一体以外に別体の構成とすることもできる。
【0019】
加速度センサ11は、加速度を検出するセンサである。特に作業機の上下方向の加速度を検出する。これに基づき作業機の上下方向の位置(高さ)の変化を制御部15で算出することができる。すなわち、ここでの加速度センサ11は、作業機の上下方向の位置を検出するための位置検出手段とすることができる。
【0020】
角速度センサ12は、角速度を検出するセンサである。特に作業機の前後方向(作業機の左右方向の軸回りに対する回転方向)の角速度を検出する。これに基づき作業機の前後方向の傾きの変化を制御部15で算出することができる。すなわち、ここでの角速度センサ12は、作業機の前後方向の角度を検出するための角度検出手段とすることができる。
【0021】
ここで、加速度センサ11と角速度センサ12は、X軸、Y軸、Z軸の加速度を検出し、ピッチ、ヨー、ロールの角速度を検出する慣性センサユニットを用いても良い。この場合、一つの軸の加速度を加速度センサ11として検知する加速度とでき、それに直角な軸まわりの角速度を角速度センサ12として検知する角速度とできる。
【0022】
傾斜センサ13は、傾斜を検出するセンサである。特に作業機の前後方向の傾斜を検出する。傾斜センサ13は、上記加速度センサ11と角速度センサ12に加えて必要に応じて使用される。
【0023】
制御部15は、加速度センサ11と角速度センサ12で検知した情報を取得する。さらに、必要に応じて傾斜センサ13、アクチュエータ動作量センサ19で検知した情報を取得する。加速度センサ11からの情報は積分計算などを行い位置の情報に変換する。角速度センサ12からの情報は積分計算などを行い角度の情報に変換する。そして、これらの情報をもとに後述する制御により昇降判別を行う。また、傾斜センサ13からの情報は必要に応じて利用する。また、制御部15は、操作・表示部10の操作による操作信号の情報や昇降判別の結果等に基づきアクチュエータ20の制御を行う。アクチュエータ動作量センサ19があればそこで検知した情報も利用できる。制御部15は、昇降判別の結果に基づき昇降通知手段18での表示をさせる制御を行うこともできる。また、制御部15からは、昇降判別の情報やアクチュエータ20の制御の情報を送信し、その情報を操作・表示部10で表示させることもできる。制御部15は、制御のために必要な電子デバイス等で構成され、コントロールボックスとしてボックス内に格納して独立させることもできる。また、制御部15は、必要な情報を記憶する記憶部を有しておくことができる。なおこの記憶部は別体で構成することも可能である。
【0024】
昇降通知手段18は、昇降判別による通知を行う。例えば、LED(発光ダイオード)、ランプ、ブザーなどで、上昇状態か、下降状態かを通知する。例えば、LEDやランプであれば、上昇状態と下降状態のいずれかで点灯することや、点灯の色を変える等である。昇降通知手段18は、トラクタ1の運転席から確認し易い作業機上に設置するとよい。なお、昇降通知手段18は、操作・表示部10に設置してもよい。
【0025】
アクチュエータ動作量センサ19は、必要に応じてアクチュエータ20の動作を検知し、アクチュエータ20のより正確な制御に反映する。
【0026】
アクチュエータ20は、制御部15の制御により作動する。例えば、モータや電動油圧シリンダ等があげられる。
【実施例1】
【0027】
図2は、実施例1の農作業機の昇降判別システムにおける作業機を示す平面図である。図3は、実施例1の農作業機の昇降判別システムにおける作業機を示す側面図である。この作業機は、畦を形成する畦塗り機50である。畦塗り機50は、前進作業状態、格納状態、後進作業状態に変更可能であり、図2、3は、前進作業状態を示す。
【0028】
畦塗り機50は、装着部51の前側に有する上部取付部51a、下部取付部51bをトラクタ1の連結装置8(図8、9)に取り付け、装着部51をトラクタ1の後部に装着する。装着部51と中間フレーム52は、水平方向に回動可能な支点により連結され、中間フレーム52と作業部56は、水平方向に回動可能な支点52aにより連結されている。第1電動油圧シリンダ54は、装着部51と中間フレーム52の間に接続されている。第2電動油圧シリンダ55は、作業部56と中間フレーム52と連動するリンク機構53の間に接続されている。
【0029】
作業部56は、作業方向前側から前処理部57、耕耘部58、ディスク部59を有している。前処理部57は必要に応じて取り付けられる。作業時は、トラクタ1から入力軸61やジョイント62等を介して伝達された動力により前処理部57で旧畦の上面を削るなどの前処理をして、耕耘部58で旧畦の土を盛り上げ、ディスク部59の回転により畦形状に形成する。ディスク部59は、畦の法面を形成する本体ディスク部59aと、畦の上面を形成する上面ディスク部59bを有している。
【0030】
畦塗り機50は、散水装置65を有しており、散水装置65はタンク66内の液体(例えば水)を、散水モータ68の動力によりポンプを作動させる等して、ホースや管を介してノズル69から散布するものである。タンク66は、作業部56のフレーム部56aに取り付けられた取付フレーム67を介してフレーム部56aの後ろ側に設置されている。また、散水モータ68は、タンク66の下部に設置されている。ノズル69は、ディスク部59の近傍に設けられディスク部59へ向けて液体を散布することができる。具体的には、本体ディスク部59aと上面ディスク部59bのそれぞれに別のノズル69から散布してもよい。
【0031】
ここで、第1電動油圧シリンダ54、第2電動油圧シリンダ55、散水モータ68はアクチュエータ20とすることができる。
【0032】
図2、3では、装着部51のフレーム部51cに、加速度センサ11、角速度センサ12、傾斜センサ13を有している。さらに、制御部15もフレーム部51cの後ろ側に取り付けられている。また、昇降通知手段18は、回動中心である支点52a近傍の作業部56におけるフレーム部56a上に設けられている。なお、装着部51は、前進作業状態、格納状態、後進作業状態に変更しても、トラクタ1に対する位置は変わらない部材である。ここで、加速度センサ11と角速度センサ12について慣性センサユニットを用いた場合、X軸31が左右方向、Y軸32を上下方向、Z軸33を進行方向とした場合、Y軸32方向の加速度が加速度センサ11で検出する加速度に相当する。また、ピッチ34(X軸31まわり)、ヨー35(Y軸32まわり)、ロール36(Z軸33まわり)のうち、ピッチ34の角速度が角速度センサ12で検出する角速度に相当する。
【0033】
図4は、実施例1の農作業機の昇降判別システムにおける作業機の格納状態を示す平面図である。図2の前進作業状態から、第1電動油圧シリンダ54を縮めると、中間フレーム52及び作業部56は、装着部51に対して回動し、図4の格納状態となる。
【0034】
図5は、実施例1の農作業機の昇降判別システムにおける作業機の後進作業状態を示す平面図である。図4の格納状態から第2電動油圧シリンダ55を伸ばすと作業部56は、中間フレーム52に対してリンク機構53を介して回動し、図5の後進作業状態となる。
【0035】
図6は、実施例1の農作業機の昇降判別システムにおける操作・表示部を示す平面図であり、上昇時の表示の一例を示す。図7は、実施例1の農作業機の昇降判別システムにおける操作・表示部を示す平面図であり、下降時の表示の一例を示す。ここでは、操作・表示部10の一例として操作・表示部70を示す。操作・表示部70は、スイッチ(電源スイッチ71、基本スイッチ72、個別スイッチ73)と表示部75を有している。また、下降基準確認灯74等の確認灯も有することができる。
【0036】
電源スイッチ71は、表示部75の左側に配置しており、操作・表示部70の電源ON(入)、OFF(切)をするためのスイッチである。
【0037】
基本スイッチ72は、表示部の右側に配置しており、散水スイッチ72a、リターンスイッチ72b、作業スイッチ72c、格納スイッチ72d、昇降判別1スイッチ72e、昇降判別2スイッチ72f、下降基準スイッチ72gを有している。
【0038】
散水スイッチ72aは、畦塗り機50の散水装置65からの液体の散布をON、OFFをするためのスイッチである。例えば、散水スイッチ72aを押すと散水モードがONとなり、散水モータ68を作動させて、ノズル69から液体を散布する。また、ONの状態のときに、散水スイッチ72aを再び押すと散水モードがOFFとなり、散水モータ68の作動を止めて散布を終了するようにできる。なお、散水装置65による散布は昇降判別と連動することができる。
【0039】
リターンスイッチ72bは、第2電動油圧シリンダ55を作動させる等して後進作業状態(図5)とするためのスイッチである。
【0040】
作業スイッチ72cは、第1電動油圧シリンダ54を作動させる等して前進作業状態(図2)とするためのスイッチである。
【0041】
格納スイッチ72dは、第1電動油圧シリンダ54又は第2電動油圧シリンダ55を作動させて格納状態(図4)とするためのスイッチである。
【0042】
昇降判別1スイッチ72eは、後述する昇降判別1を開始・終了するためのスイッチである。例えば、昇降判別1スイッチ72eを一度押すと昇降判別1が開始され、もう一度押すと昇降判別1が終了する等とすることができる。
【0043】
昇降判別2スイッチ72fは、後述する昇降判別2を開始・終了するためのスイッチである。例えば、昇降判別2スイッチ72fを一度押すと昇降判別2が開始され、もう一度押すと昇降判別2が終了する等とすることができる。
【0044】
下降基準スイッチ72gは、後述する下降基準を設定するためのスイッチである。
【0045】
個別スイッチ73は、表示部の下側に配置しており、モードスイッチ73a、メニュースイッチ73b、上スイッチ73c、下スイッチ73d、決定スイッチ73e、キャンセルスイッチ73f、オフセット[大]スイッチ73g、オフセット[小]スイッチ73h、耕深[浅]スイッチ73i、耕深[深]スイッチ73j、散水量[増]スイッチ73k、散水量[減]スイッチ73l、一時停止/再開スイッチ73mを有している。
【0046】
モードスイッチ73aは、必要なモードを表示部75に表示するスイッチである。例えば、手動モードであれば押している間だけそのスイッチに対する応答をし、自動モードであれば、一回特定のスイッチを押すと最後までそのスイッチに対する応答をする等である。
【0047】
メニュースイッチ73bは、必要なメニューを表示部75に表示するスイッチである。
【0048】
上スイッチ73c及び下スイッチ73dは、モードスイッチ73aで表示したモードの選択や、メニュースイッチ73bで表示したメニューの選択を行える。
【0049】
決定スイッチ73eは、表示している情報の決定をさせるためのスイッチであり、例えば、上スイッチ73c又は下スイッチ73dで選択した情報を決定することができる。
【0050】
キャンセルスイッチ73fは、表示している情報をキャンセルするためのスイッチであり、例えば、上スイッチ73c又は下スイッチ73dで選択した情報をキャンセルすることができる。
【0051】
オフセット[大]スイッチ73gは、作業部56のオフセット量を大きい方向へ調節するためのスイッチである。例えば、このスイッチを押すと、第1電動油圧シリンダ54を作動させるなどして作業部56が外側すなわち畦側に移動する。
【0052】
オフセット[小]スイッチ73hは、作業部56のオフセット量を小さい方向へ調節するためのスイッチである。例えば、このスイッチを押すと、第1電動油圧シリンダ54を作動させるなどして作業部56が内側すなわち畦から離れる側に移動する。
【0053】
耕深[浅]スイッチ73i及び耕深[深]スイッチ73jは、耕耘部58の深さを調節する機能を有している場合、その深さを調節することができるスイッチである。耕深[浅]スイッチ73iを押すと耕耘部58が上側に移動し耕深が浅くなり、耕深[深]スイッチ73jを押すと耕耘部58が下側に移動し耕深が深くなる。この場合、ディスク部59が耕耘部58に対して上下に移動して耕深を調整する構成としてもよい。
【0054】
散水量[増]スイッチ73kは、畦塗り機50の散水装置65からの液体の散布を増やすスイッチである。例えば、散水量[増]スイッチ73kを押すと散水モータ68の回転を一段階速くしてポンプをその分速く作動させて液体の散布量を増加させるようにする。
【0055】
散水量[減]スイッチ73lは、畦塗り機50の散水装置65からの液体の散布を減らすスイッチである。例えば、散水量[減]スイッチ73lを押すと散水モータ68の回転を一段階遅くしてポンプをその分遅く作動させて液体の散布量を減少させるようにする。
【0056】
一時停止/再開スイッチ73mは、作動中の機能を一時停止又は再開するためのスイッチである。例えば、一回押すと一時停止、もう一度押すと再開するなどである。
【0057】
下降基準確認灯74は、下降基準スイッチ72gの近傍の対応する位置に設置され、例えば、LEDやランプ等で下降基準が設定されたことを表示するものである。例えば、LED又はランプで、下降基準が設定されたときに、点灯することや、設定されている状態とされていない状態で点灯の色を変える等である。また、これ以外のスイッチにも、各スイッチに対応した、このような確認灯を有していてもよい。
【0058】
表示部75は、昇降状態表示75a、情報表示75b、昇降判別制御表示75c、モード表示75d、オフセット表示75e、耕深表示75fを表示することができる。表示部75は、液晶などの表示板で表示することができる。
【0059】
昇降状態表示75aは、畦塗り機50(作業機)の状態が上昇状態か、下降状態かを表示する。この状態の判定は後述する制御により行うことができる。図6では、「ジョウショウチュウ」として上昇状態を示し、図7では、「カコウチュウ」として下降状態を示している。
【0060】
情報表示75bは、必要に応じて適した情報表示がなされる。例えば、散水装置65からの液体の散布をしている旨の表示(「散水をしています」等)や、アクチュエータの作動の表示、エラー表示などである。
【0061】
昇降判別制御表示75cは、現在制御を行っている昇降判別を表示する。昇降判別1による制御を行っていれば「ショウコウ1」、昇降判別2による制御を行っていれば「ショウコウ2」などと表示することができる。
【0062】
モード表示75dは、モードスイッチ73a等で決定したモードを表示する。
【0063】
オフセット表示75eは、オフセット[大]スイッチ73gやオフセット[小]スイッチ73hで調節するオフセット量の現在の状態を表示する。例えば、上側が現在の状態、下側が調整できる範囲を示すことができる。
【0064】
耕深表示75fは、耕深[浅]スイッチ73iや耕深[深]スイッチ73jで調節する耕耘部58の現在の深さを表示する。例えば、左側が現在の深さ、右側が調整できる範囲を示すことができる。
【0065】
図8は、実施例1の農作業機の昇降判別システムにおけるトラクタに対する作業機の下降時の状態を示す側面図である。トラクタ1側の図は後ろタイヤ2を含む後ろ側を示した簡略図である。
【0066】
畦塗り機50は、トラクタ1に取り付けられる連結装置8を介して装着されている。連結装置8は、上部にトップリンク5の一端側5bが取り付けられ、下部両端にロアーリンク6の一端側6bが取り付けられる。トップリンク5の他端側5aはトラクタ1に対する回動中心となっており、ロアーリンク6の他端側6aはトラクタ1に対する回動中心となっている。ロアーリンク6は、トラクタ1からの操作により途中に接続するシリンダ4を伸縮させる等して上下に回動させることができる。一方、連結装置8と畦塗り機50は、上側で連結装置8の上部係合部8aが畦塗り機50の上部取付部51aに係合し、下側で連結装置8の下部係合部8bが畦塗り機50の下部取付部51bに係合し、取り付けられている。
【0067】
図8の状態は、前進作業状態で畦塗り機50を下降させて地面201まで下ろした状態である。トラクタの乗車した作業者(ユーザー101)は、ロアーリンク6を操作することで、畦塗り機50を下降させることができる。
【0068】
後述する、昇降判別の制御は、加速度センサ11と角速度センサ12の直接の位置と角度の変化を利用しても計算できるが、より正確な制御をするため、基準位置を決めて計算させることもできる。畦塗り機50の基準はディスク部59の中心位置として、そこからの高さ方向の位置の変化や、前後方向の角度の変化を検出していく。図では、加速度センサ11と角速度センサ12に対して基準位置に対するセンサ高さS1となっておりこの値を基準として考慮する。なお、センサ高さS1は、予め標準の値を記憶させていくことが可能であるが、畦塗り機50が有する調節機構による調節でこの値がずれた場合は、操作・表示部70のモードスイッチ73a等を操作する等して補正できるようにしてもよい。
【0069】
図9は、実施例1の農作業機の昇降判別システムにおけるトラクタに対する作業機の上昇時の状態を示す側面図である。
【0070】
図8の状態から、畦塗り機50を一定距離、上昇させた状態が図9になる。トラクタ1に乗車した作業者は、ロアーリンク6を上に回動させる操作をすることで、畦塗り機50を上昇させることができる。このとき、トップリンク5の他端側5aの回動中心は、ロアーリンク6の他端側6aの回動中心よりも上にあり、さらに、トップリンク5は、ロアーリンク6よりも長さが短い。このため、畦塗り機50を上昇させた場合、一定角度、前傾側に傾く。図9では、図8の基準位置に対して、高さH上昇し、角度θ分前傾した例を示している。なお、前傾は、横方向を回転軸とした場合に前側に回転する傾きである。
【0071】
図10図11は、農作業機の昇降判別システムにおける昇降判別1のフローチャートである。この制御は基本的に制御部15で行う。
【0072】
まず、ユーザー101は、操作・表示部70の電源スイッチ71により電源ONした状態で、トラクタを操作して作業機(畦塗り機50)の高さ方向のポジションを下降させ接地状態もしくは作業状態としてトラクタを停止させた状態で制御がスタートする(S100)。
【0073】
次に、ユーザー101は、必要に応じて上昇判定基準設定(S101)を行う。上昇判定基準設定は、下降基準に対して、上昇した高さと前傾となった角度の基準の設定を行うものである。この上昇判定基準は、予め標準となる値(高さと角度)を記憶させておいてもよい。一方で、トラクタ1と畦塗り機50は、その種類によって基準を変更した方がよいこともあるため、その場合はこの設定を行う。ユーザー101は、操作・表示部70のメニュースイッチ73b等から設定を行うことができ、その情報は送信されて制御部15の制御に反映される。
【0074】
次に、スイッチ操作があれば(S102)、入力判断1を行い(S103)、下降基準設定スイッチの入力である場合は、作業機高さ・角度(傾斜)記憶を行い(S104)、下降基準確認灯を点灯する(S105)。ここでのスイッチ操作における下降基準設定スイッチは、操作・表示部70の下降基準スイッチ72gが該当する。例えば、このスイッチが押された場合、その時の加速度センサ11から算出される作業機(畦塗り機50)の高さ、角速度センサ12から算出される作業機(畦塗り機50)の前後方向の角度を記憶する。これにより、下降基準の高さ位置と角度が設定される。また、必要に応じて、傾斜センサ13から検出される作業機(畦塗り機50)の前後方向の傾斜も記憶する。また、下降基準確認灯は、操作・表示部70の下降基準確認灯74が該当する。作業者はこれにより下降基準が設定されたことを確認できる。
【0075】
次に、スイッチ操作があれば(S106)、入力判断2を行い(S107)、下降基準設定スイッチの入力である場合はS104へもどる。また、入力判断2において、昇降判別1スイッチによる入力である場合は、昇降判別1モードを開始し(S108)、昇降判別1モード実行中情報表示を行う(S109)。ここでの昇降判別1スイッチは、操作・表示部70の昇降判別1スイッチ72eが該当する。例えば、このスイッチが押された場合、昇降判別1モードが開始される。また、昇降判別1モード実行中情報表示は、操作・表示部70の昇降判別制御表示75cで、例えば「ショウコウ1」等の昇降判別1モードが実行中であることの情報表示を行う。また、昇降判別1スイッチ72eに対応する確認灯を点灯させてもよい。
【0076】
次に、スイッチ操作があれば(S110)、入力判断3を行い(S111)、昇降判別1スイッチの入力である場合は、S155へ行き昇降判別1モードを終了する。また、入力判断3において、散水(アクチュエータ駆動)スイッチによる入力である場合は、散水モードを開始し(S112)、散水モード実行情報表示を行う(S113)。ここでの散水(アクチュエータ駆動)スイッチは、操作・表示部70の散水スイッチ72aが該当する。例えば、このスイッチが押された場合、散水モードが開始される。また、散水モード実行情報表示は、操作・表示部70の情報表示75bで、散水モードが実行中であることの情報表示を行う。また、散水スイッチ72aに対応する確認灯を点灯させてもよい。
【0077】
次に、作業機高さ・角度(傾斜)検知を行う(S114)。ここでは、この時の加速度センサ11から算出される作業機(畦塗り機50)の高さ(上下方向の位置)、角速度センサ12から検出される作業機(畦塗り機50)の前後方向の角度を検知する。また、必要に応じて、傾斜センサ13から検出される作業機(畦塗り機50)の前後方向の傾斜も検知する。
【0078】
次に、作業機高さ対基準変化の判定を行い(S115)、一定高さ未満であれば、S131へ行き、一定高さ以上であればS116へ行く。作業機高さ対基準変化の判定は、S104で設定した作業機(畦塗り機50)の下降基準の高さに対して、S114で検知した作業機(畦塗り機50)の現在の高さが、一定高さ以上高いか、一定高さ未満かを判別するものである。ここでの一定高さは、例えば、100〜200mmで設定できる。また、ここでの一定高さは、予め記憶した一定高さ又はS101の上昇判定基準設定で設定した高さを利用できる。
【0079】
S116では、作業機角度対基準変化の判定を行い、一定角度未満前傾であれば、S114へ戻り、一定角度以上前傾であればS117へ行く。作業機角度対基準変化の判定は、S104で設定した作業機(畦塗り機50)の下降基準の角度に対して、S114で検知した作業機(畦塗り機50)前後方向の現在の角度が、一定角度以上前傾しているか、一定角度未満の前傾であるかを判別するものである。ここでの一定角度は、例えば、3〜10°で設定できる。また、ここでの一定角度は、予め記憶した一定角度又はS101の上昇判定基準設定で設定した角度を利用できる。
【0080】
S117では、作業機上昇判定を行う。すなわち、作業機(畦塗り機50)が上昇状態であることを判定する。
【0081】
次に、作業機上昇情報表示を行い(S118)、必要に応じて作業機上昇情報通知を行う(S119)。作業機上昇情報表示は、操作・表示部70の昇降状態表示75aに、例えば「ジョウショウチュウ」等の上昇状態であることの情報表示を行う。また、作業機上昇情報通知は、作業機(畦塗り機50)側の昇降通知手段18での上昇状態であることの通知を(下降状態とは区別して)行う。
【0082】
次に、アクチュエータ動作の判定を行い(S120)、停止中ならS123へ行く。動作中であれば、アクチュエータ停止信号出力を行い(S121)、アクチュエータを停止する(S122)。ここでのアクチュエータは、散水モードで作動するアクチュエータであり、畦塗り機50であれば散水モータ68が該当する。畦塗り機50は上昇状態であるので、散水モータ68を止めれば液体の無駄な散布を防止できる。また、アクチュエータ動作の判定は、制御部15で動作指令をしているか否かで判定する他に、アクチュエータ動作量センサ19を有していれば、このセンサからの情報により動作しているか否かを判定することができる。
【0083】
次に、スイッチ操作の判定で(S123)、スイッチ操作があれば入力判断4を行い(S124)、昇降判別1スイッチの入力であればS125へ行き、昇降判別1モードが終了する。スイッチ操作の判定でスイッチ操作がなければS114へ戻る。入力判断4で散水スイッチの入力であればS151へ行き、散水モードが終了する。また、入力判断4でその他のスイッチであれば、S114へ戻る。ここで、昇降判別1スイッチは、操作・表示部70の昇降判別1スイッチ72eが該当する。例えば、このスイッチが押された場合、昇降判別1モードが終了する。また、散水スイッチは、操作・表示部70の散水スイッチ72aが該当する。例えば、このスイッチが押された場合、散水モードが終了する。
【0084】
S125で昇降判別1モードが終了すると、散水ポンプ連続駆動に切替を行い(S126)、昇降判別1モード実行中情報表示を終了し(S127)、制御が終了する(S128)。散水ポンプ連続駆動は、昇降判別1モードが終了しているため、作業機(畦塗り機50)の昇降に関わらず、散水モータ68による散水装置65のポンプを連続駆動して、液体の連続散布を行うようにするものである。すなわち、作業機側のアクチュエータの作動を昇降判別制御と連動させないようにする。また、昇降判別1モード実行中情報表示の終了は、操作・表示部70の昇降判別制御表示75cによる昇降判別1モードが実行中であることの情報表示を終了する。さらに、昇降判別1スイッチ72eに対応する確認灯を点灯させていた場合これを消灯してもよい。
【0085】
S128で制御が終了すると、電源はON状態となったまま、散水連続駆動状態で次の操作入力待ち状態に移行する。このとき、例えば、昇降判別1スイッチの入力があれば、S108からの昇降判別1モードを開始することもできる。また、散水スイッチ72aの入力があれば散水モードは終了し、液体の散布が止まる。
【0086】
S151で散水モードが終了すると、散水モード実行情報表示を終了する(S152)。ここでは、散水モードが終了しているため散水装置65による液体の散布は行わない。また、散水モード実行情報表示の終了は、操作・表示部70の情報表示75bによる散水モードが実行中であることの情報表示を終了する。さらに、散水スイッチ72aに対応する確認灯を点灯させていた場合これを消灯してもよい。
【0087】
次に、スイッチ操作があれば(S153)、入力判断5を行い(S154)、昇降判別1スイッチの入力であればS155へ行き、昇降判別1モードが終了し、また、その他のスイッチであれば、S110へ戻る。
【0088】
S155で昇降判別1モードが終了すると、昇降判別1モード実行中情報表示を終了し(S156)、制御が終了する(S157)。昇降判別1モード実行中情報表示の終了は、操作・表示部70の昇降判別制御表示75cによる昇降判別1モードが実行中であることの情報表示を終了する。さらに、昇降判別1スイッチ72eに対応する確認灯を点灯させていた場合これを消灯してもよい。
【0089】
S131では、作業機下降・作業状態判定を行う。すなわち、作業機(畦塗り機50)が下降状態であり、作業状態であることを判定する。
【0090】
なお、作業機下降・作業状態判定は図11では、S115の作業機高さ対基準変化の判定で一定高さ未満の場合にS131で作業機下降・作業状態判定を行っているが、S115とS116の制御の順番を入れ替えて、S116の作業機角度対基準変化の判定に準じて一定角度未満前傾の場合にS131で作業機下降・作業状態判定を行ってもよい。この場合一定高さは関係なく角度で判定することができる。さらにこれ以外に、図11でS115とS131の間に(S116と同じ)作業機角度対基準変化の判定を挿入して、一定角度未満前傾の場合の条件を加えても良い。この場合は、一定高さ未満で、かつ、一定角度未満前傾の場合に、S131の作業機下降・作業状態判定が行われる。
【0091】
次に、作業機下降情報表示を行い(S132)、必要に応じて作業機下降情報通知を行う(S133)。作業機下降情報表示は、操作・表示部70の昇降状態表示75aに、例えば「カコウチュウ」等の下降状態であることの情報表示を行う。また、作業機下降情報表示は、作業機(畦塗り機50)側の昇降通知手段18での下降状態であることの通知を(上昇状態とは区別して)行う。
【0092】
次に、アクチュエータ動作の判定を行い(S134)、動作中ならS137へ行く。停止中であれば、アクチュエータ駆動信号出力を行い(S135)、アクチュエータを駆動させる(S136)。ここでのアクチュエータは、散水モードで作動するアクチュエータであり、畦塗り機50であれば散水モータ68が該当する。畦塗り機50は下降状態であるので、散水モード中の散水モータ68を駆動して作業を続けるようにする。また、アクチュエータ動作の判定は、制御部15で動作指令をしているか否かで判定する他に、アクチュエータ動作量センサ19を有していれば、このセンサからの情報により動作しているか否かを判定することができる。
【0093】
次に、スイッチ操作があれば(S137)、入力判断4を行い(S138)、昇降判別1スイッチの入力であればS139へ行き、昇降判別1モードが終了する。また、散水スイッチの入力であればS151へ行き、散水モードが終了する。
【0094】
S139で昇降判別1モードが終了すると、散水ポンプ連続駆動に切替を行い(S140)、昇降判別1モード実行中情報表示を終了し(S141)、制御が終了する(S142)。ここでの、S139〜S142は、上述したS125〜S128と同様である。
【0095】
このように昇降判別1では、少なくとも、上下方向の位置(高さ)及び前後方向の角度により作業機の上昇状態の判定を行うので、より正確な昇降判別をすることができる。
【0096】
図12図13は、実施例1の農作業機の昇降判別システムにおける昇降判別2のフローチャートである。昇降判別2の制御も基本的に制御部15で行う。
【0097】
S200の制御スタート時は、上述したS100と同様である。
【0098】
次に、ユーザー101は、必要に応じて上昇判定基準設定(S201)を行う。上昇判定基準設定は、上述したS101と同様である。
【0099】
次に、スイッチ操作があれば(S202)、入力判断1を行い(S203)、下降基準設定スイッチの入力である場合は、作業機高さ・角度(傾斜)記憶を行い(S204)、下降基準確認灯を点灯する(S205)。ここで、スイッチ操作判定と入力判断1は、上述したS102、S103と同様である。また、作業機高さ・角度(傾斜)記憶は、上述したS104と同様である。また、下降基準確認灯点灯は、上述したS105と同様である。
【0100】
次に、スイッチ操作があれば(S206)、入力判断2を行い(S207)、下降基準設定スイッチの入力である場合はS204へもどる。また、入力判断2において、昇降判別2スイッチによる入力である場合は、昇降判別2モードを開始し(S208)、昇降判別2モード実行中情報表示を行う(S209)。ここでの昇降判別2スイッチは、操作・表示部70の昇降判別2スイッチ72fが該当する。例えば、このスイッチが押された場合、昇降判別2モードが開始される。また、昇降判別2モード実行中情報表示は、操作・表示部70の昇降判別制御表示75cで、例えば「ショウコウ2」等の昇降判別2モードが実行中であることの情報表示を行う。また、昇降判別2スイッチ72fに対応する確認灯を点灯させてもよい。
【0101】
次に、スイッチ操作があれば(S210)、入力判断3を行い(S211)、昇降判別2スイッチの入力である場合は、S255へ行き昇降判別2モードを終了する。また、入力判断3において、散水(アクチュエータ駆動)スイッチによる入力である場合は、散水モードを開始し(S212)、散水モード実行情報表示を行う(S213)。ここでの散水(アクチュエータ駆動)スイッチの入力による散水モード開始は、上述したS112と同様である。また、散水モード実行情報表示は、上述したS113と同様である。
【0102】
次に、作業機高さ・角度(傾斜)検知を行う(S214)。ここの作業機高さ・角度(傾斜)検知は上述したS114と同様である。
【0103】
次に、作業機高さ・角度(傾斜)時間平均算出を行う(S215)。ここでは、現在よりも過去の一定時間の作業機高さ・角度(傾斜)の時間平均算出を行うものである。例えば、20秒毎の値で考えれば、S204の下降基準の設定時から、0秒〜20秒、20秒〜40秒、40秒〜60秒、・・・と一定時間である20秒毎に平均を計算していく方式があげられる。このほか、現在から一定時間(例えば20秒)前までの値の平均をリアルタイムで計算してもよい。ここでの平均は、この時の加速度センサ11から算出される作業機(畦塗り機50)の高さ(上下方向の位置)、角速度センサ12から検出される作業機(畦塗り機50)の前後方向の角度を利用して計算する。また、必要に応じて、傾斜センサ13から検出される作業機(畦塗り機50)の前後方向の傾斜を利用する。
【0104】
次に、作業機高さ対平均変化の判定を行い(S216)、一定高さ未満であれば、S231へ行き、一定高さ以上であればS217へ行く。作業機高さ対基準変化の判定は、S215で算出した作業機(畦塗り機50)の(現在と関連づけられる)過去の一定時間の高さの平均値に対して、S214で検知した作業機(畦塗り機50)の現在の高さが、一定高さ以上高いか、一定高さ未満かを判別するものである。作業機(畦塗り機50)の過去の一定時間の高さの平均値とは、例えば、S204の下降基準の設定時から、0秒〜20秒、20秒〜40秒と一定時間毎に計算した場合、現在が46秒であれば、直近の過去の平均値である、20秒〜40秒の高さの平均値となる。このため、20秒〜40秒の高さの平均値とS214で検知した現在(46秒)の高さの値を比較することになる。ここで、もし、現在が11秒であって、平均値がまだ算出されていない場合は、S204で記憶した下降基準の高さの値を利用し、これとS214で検知した現在の高さを比較する。この他に、作業機(畦塗り機50)の過去の一定時間の高さの平均値として、現在から一定時間(例えば20秒)前までの間の平均を採用してもよい。さらに、現在からある一定時間(例えば10秒)をおいた時点からの一定時間(例えば20秒)前の間における高さの平均を採用してもよい。ここでの一定高さは、例えば、100〜200mmで設定でき、上述した平均値に対してこの一定高さよりも高いか否か判定する。また、ここでの一定高さは、予め記憶した一定高さ又はS201の上昇判定基準設定で設定した高さを利用できる。
【0105】
S217では、作業機角度対平均変化の判定を行い、一定角度未満前傾であれば、S214へ戻り、一定角度以上前傾であればS218へ行く。作業機角度対平均変化の判定は、S215で算出した作業機(畦塗り機50)の(現在と関連づけられる)過去の一定時間の角度の平均値に対して、S214で検知した作業機(畦塗り機50)の現在の角度が、一定角度以上前傾しているか、一定角度未満の前傾であるかを判別するものである。作業機(畦塗り機50)の過去の一定時間の角度の平均値とは、例えば、S204の下降基準の設定時から、0秒〜20秒、20秒〜40秒と一定時間毎に計算した場合、現在が46秒であれば、直近の過去の平均値である、20秒〜40秒の角度の平均値となる。このため、20秒〜40秒の角度の平均値とS214で検知した現在(46秒)の角度の値を比較することになる。ここで、もし、現在が11秒であって、平均値がまだ算出されていない場合は、S204で記憶した下降基準の角度の値を利用し、これとS214で検知した現在の角度を比較する。この他に、作業機(畦塗り機50)の過去の一定時間の角度の平均値として、現在から一定時間(例えば20秒)前までの間の平均を採用してもよい。さらに、現在からある一定時間(例えば10秒)をおいた時点からの一定時間(例えば20秒)前の間における角度の平均を採用してもよい。ここでの一定角度は、例えば、3〜10°で設定でき、上述した平均値に対してこの一定角度よりも前傾しているか否かを判定する。また、ここでの一定角度は、予め記憶した一定角度又はS201の上昇判定基準設定で設定した角度を利用できる。
【0106】
S218では、作業機上昇判定を行う。すなわち、作業機(畦塗り機50)が上昇状態であることを判定する。
【0107】
次に、作業機上昇情報表示を行い(S219)、必要に応じて作業機上昇情報通知を行う(S220)。作業機上昇情報表示は、上述したS118と同様である。また、作業機上昇情報通知は、上述したS119と同様である。
【0108】
次に、アクチュエータ動作の判定を行い(S221)、停止中ならS224へ行く。動作中であれば、アクチュエータ停止信号出力を行い(S222)、アクチュエータを停止する(S223)。ここで、アクチュエータ動作の判定は、上述したS120と同様である。また、アクチュエータ停止信号出力は、上述したS121と同様である。また、アクチュエータの停止は、上述したS122と同様である。
【0109】
次に、スイッチ操作の判定を行い(S224)、スイッチ操作があれば入力判断4を行い(S225)、昇降判別2スイッチの入力であればS226へ行き、昇降判別2モードが終了する。スイッチ操作の判定でスイッチ操作がなければS214へ戻る。入力判断4で散水スイッチの入力であればS251へ行き、散水モードが終了する。また、入力判断4でその他のスイッチであれば、S214へ戻る。ここで、昇降判別2スイッチは、操作・表示部70の昇降判別2スイッチ72fが該当する。例えば、このスイッチが押された場合、昇降判別2モードが終了する。また、散水スイッチは、操作・表示部70の散水スイッチ72aが該当する。例えば、このスイッチが押された場合、散水モードが終了する。
【0110】
S226で昇降判別2モードが終了すると、散水ポンプ連続駆動に切替を行い(S227)、昇降判別2モード実行中情報表示を終了し(S228)、制御が終了する(S229)。散水ポンプ連続駆動は、昇降判別2モードが終了しているため、作業機(畦塗り機50)の昇降に関わらず、散水モータ68による散水装置65のポンプを連続駆動して、液体の連続散布を行うようにするものである。すなわち、作業機側のアクチュエータの作動を昇降判別制御と連動させないようにする。また、昇降判別2モード実行中情報表示の終了は、操作・表示部70の昇降判別制御表示75cによる昇降判別2モードが実行中であることの情報表示を終了する。さらに、昇降判別2スイッチ72fに対応する確認灯を点灯させていた場合これを消灯してもよい。
【0111】
S229で制御が終了すると、電源はON状態となったまま、散水連続駆動状態で次の操作入力待ち状態に移行する。このとき、例えば、昇降判別2スイッチの入力があれば、S208からの昇降判別2モードを開始することもできる。また、散水スイッチ72aの入力があれば散水モードは終了し、液体の散布が止まる。
【0112】
S251で散水モードが終了すると、散水モード実行情報表示を終了する(S252)。ここでの散水モード実行情報表示は、上述したS152と同様である。
【0113】
次に、スイッチ操作があれば(S253)、入力判断5を行い(S254)、昇降判別2スイッチの入力であればS255へ行き、昇降判別2モードが終了し、また、その他のスイッチであれば、S210へ戻る。
【0114】
S255で昇降判別2モードが終了すると、昇降判別2モード実行中情報表示を終了し(S256)、制御が終了する(S257)。昇降判別2モード実行中情報表示の終了は、操作・表示部70の昇降判別制御表示75cによる昇降判別2モードが実行中であることの情報表示を終了する。さらに、昇降判別2スイッチ72fに対応する確認灯を点灯させていた場合これを消灯してもよい。
【0115】
S231では、作業機下降・作業状態判定を行う。すなわち、作業機(畦塗り機50)が下降状態であり、作業状態であることを判定する。
【0116】
なお、作業機下降・作業状態判定は図13では、S216の判定で一定高さ未満の場合にS231で作業機下降・作業状態判定を行っているが、S216とS217の制御の順番を入れ替えて、S217の作業機角度対平均変化の判定に準じて一定角度未満前傾の場合にS231で作業機下降・作業状態判定を行ってもよい。この場合一定高さは関係なく角度で判定することができる。さらにこれ以外に、図13でS216とS231の間に(S217と同じ)作業機角度対平均変化の判定を挿入して、一定角度未満前傾の場合の条件を加えても良い。この場合は、一定高さ未満で、かつ、一定角度未満前傾の場合に、S231の作業機下降・作業状態判定が行われる。
【0117】
次に、作業機下降情報表示を行い(S232)、必要に応じて作業機下降情報通知を行う(S233)。作業機下降情報表示は、上述したS132と同様である。作業機下降情報通知は、上述したS133と同様である。
【0118】
次に、アクチュエータ動作の判定を行い(S234)、動作中ならS237へ行く。停止中であれば、アクチュエータ駆動信号出力を行い(S235)、アクチュエータを駆動させる(S236)。ここで、アクチュエータ動作の判定は、上述したS134と同様である。また、アクチュエータ駆動信号出力は、上述したS135と同様である。また、アクチュエータの駆動は、上述したS136と同様である。
【0119】
次に、スイッチ操作の判定を行い(S237)、スイッチ操作があれば入力判断4を行い(S238)、昇降判別2スイッチの入力であればS239へ行き、昇降判別2モードが終了する。スイッチ操作の判定でスイッチ操作がなければS214へ戻る。入力判断4で散水スイッチの入力であればS251へ行き、散水モードが終了する。また、入力判断4でその他のスイッチであれば、S214へ戻る。
【0120】
S239で昇降判別2モードが終了すると、散水ポンプ連続駆動に切替を行い(S240)、昇降判別2モード実行中情報表示を終了し(S241)、制御が終了する(S242)。ここでの、S239〜S242は、上述したS226〜S229と同様である。
【0121】
このように、昇降判別2では、現在と関連づけられる過去の一定時間の平均に対する現在の上下方向の位置(高さ)と前後方向の角度を比較する。このため、移動で圃場の高さが変わったり、ぬかるみや勾配で角度が変わったりしても、変わった後の基準に対して対応することができる。なお、現在と関連づけられるとは、現在に対して予め定めた一定の方法で決定することができることをいう。
【0122】
また、昇降判別1及び2では、加速度センサ11から算出する高さ検出の精度をあげるために、振動による上下の加速度をキャンセルするプログラムを用意してもよい。
【実施例2】
【0123】
図14は、実施例2の農作業機の昇降判別システムにおけるトラクタに対する作業機の下降時の状態を示す側面図である。この作業機は施肥播種機80である。トラクタ1側の図は後ろタイヤ2を含む後ろ側を示した簡略図である。
【0124】
施肥播種機80は、トラクタ1からの動力によりロータリ81が有する耕耘部82を回転させて耕耘を行う。ロータリ81の上部には、肥料ホッパー85が設置されており、肥料ホッパー85の下部でモータの回転に連動する操出ローラの回転にともない肥料ホッパー85内の肥料が肥料ホースを通り肥料排出部86から排出される。さらに、肥料ホッパー85の後部には、種子ホッパー87が設置されており、種子ホッパー87の下部でモータの回転に連動する操出ローラの回転にともない種子ホッパー87内の種子が種子ホースを通り種子排出部88から排出される。肥料排出部86は、ロータリ81の前側に設置されており、排出された肥料は、耕耘部82の回転にともない土中に攪拌される。一方、種子排出部88は、耕耘部82より後ろに設置されており、耕耘した土に、ディスク83で溝をつけ、その溝の中に種子が排出され、種子排出部88の後部の鎮圧輪84で地面を鎮圧し、種子を土中に埋め込むことができる。ここで、加速度センサ11、角速度センサ12は、ロータリ81上部のふさわしい位置に取付部材を介するなどして取り付けることができる。
【0125】
施肥播種機80はトラクタ1に取り付けられる連結装置8を介して装着されている。連結装置8は、実施例1(図8、9)と同様である。一方、連結装置8と施肥播種機80は、上側で連結装置8の上部係合部8aが施肥播種機80のロータリ81前側上部に設けられた上部取付部81aに係合し、下側で連結装置8の下部係合部8bが施肥播種機80のロータリ81前側下部に設けられた下部取付部81bに係合し、取り付けられている。
【0126】
図14の状態は、施肥播種機80を下降させて地面201まで下ろした状態である。ここで、より正確な制御をするための施肥播種機80の基準位置は、例えばディスク83の中心位置として、そこからの高さ方向の位置の変化や、前後方向の角度の変化を検出していくことができる。図では、加速度センサ11と角速度センサ12に対して基準位置に対するセンサ高さS2となっておりこの値を基準として考慮する。なお、センサ高さS2は、予め標準の値を記憶させていくことが可能であるが、施肥播種機80が有する調節機構による調節でこの値がずれた場合は、操作・表示部70のモードスイッチ73aを操作するなどして補正できるようにしてもよい。
【0127】
施肥播種機80は、実施例1で示した図10図13の昇降判別の制御は、散水モータ68に代えて肥料ホッパー85の下部のモータや種子ホッパー87の下部のモータをアクチュエータ20として行うことができる。
【0128】
以上のように、本発明の実施例について説明したが、本発明は畦塗り機、施肥播種機に限らず、トラクタに装着して農作業を行い昇降判別制御を必要とする作業機全般に適用することができる。また、上述した実施例の一部構成を他の実施例の一部の構成に置き換えて適用することや、必要に応じて他の構成と組み合わせて利用してもよい。
【符号の説明】
【0129】
1 トラクタ
11 加速度センサ
12 角速度センサ
13 傾斜センサ
15 制御部
20 アクチュエータ
50 畦塗り機
65 散水装置
68 散水モータ
70 操作・表示部
72e 昇降判別1スイッチ
72f 昇降判別2スイッチ
72g 下降基準スイッチ
74 下降基準確認灯
75 表示部
75a 昇降状態表示
75c 昇降判別制御表示
80 施肥播種機
図1
図2
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図14