特許第6656903号(P6656903)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6656903ホットスタンピングフィルム用クリア塗料組成物及びこれを用いた塗装方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6656903
(24)【登録日】2020年2月7日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】ホットスタンピングフィルム用クリア塗料組成物及びこれを用いた塗装方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/00 20060101AFI20200220BHJP
   C09D 175/06 20060101ALI20200220BHJP
   C09D 7/48 20180101ALI20200220BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20200220BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20200220BHJP
   C08F 220/32 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
   C09D133/00
   C09D175/06
   C09D7/48
   C09D7/65
   C09D5/00 D
   C08F220/32
【請求項の数】16
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-243563(P2015-243563)
(22)【出願日】2015年12月14日
(65)【公開番号】特開2017-71744(P2017-71744A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2018年7月10日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0139716
(32)【優先日】2015年10月5日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA MOTORS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162123
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 誠
(72)【発明者】
【氏名】イ、ミン、ヒ
(72)【発明者】
【氏名】イ、スン、モク
(72)【発明者】
【氏名】ノ、ウン、ジュ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヤン、ソク
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヨン、チュル
(72)【発明者】
【氏名】パク、キョン、タク
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−131496(JP,A)
【文献】 特表2009−504864(JP,A)
【文献】 特開2008−248237(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/202588(WO,A1)
【文献】 特表2009−526104(JP,A)
【文献】 特表2015−524017(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/185367(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/005434(WO,A1)
【文献】 特開2001−081393(JP,A)
【文献】 特開2000−183321(JP,A)
【文献】 特開2016−138229(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0032263(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
C08F 220/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ変性アクリル樹脂、前記エポキシ変性アクリル樹脂以外のアクリル樹脂、ポリエステルポリオール、反応触媒剤、湿潤添加剤、光安定剤及び溶剤を含む主剤部;及び
ヘキサメチレンイソシアネートトリマー系硬化剤及び反応型シリコン硬化剤を含む硬化剤部;
を含み、
前記反応触媒剤が、前記ポリエステルポリオールのヒドロキシ基と、前記硬化剤部に含まれる硬化剤のイソシアネート基との反応速度を向上させるものであり、
前記反応型シリコン硬化剤が、下記化学式2
【化1】
である
ことを特徴とする、ホットスタンピングフィルム用クリア塗料組成物。
【請求項2】
前記主剤部は、前記エポキシ変性アクリル樹脂50〜60重量%、前記アクリル樹脂10〜15重量%、前記ポリエステルポリオール5〜10重量%、前記反応触媒剤0.1〜1.5重量%、前記湿潤添加剤0.1〜1重量%、前記光安定剤1〜2重量%、及び前記溶剤20〜30重量%を含むことを特徴とする、請求項1に記載のホットスタンピングフィルム用クリア塗料組成物。
【請求項3】
前記主剤部と前記硬化剤部との混合比は、2.0:1〜4.0:1の重量比であることを特徴とする、請求項1に記載のホットスタンピングフィルム用クリア塗料組成物。
【請求項4】
前記エポキシ変性アクリル樹脂は、酸価が3〜10mg/KOH、水酸基含量が1〜5%、重量平均分子量が8,000〜20,000であることを特徴とする、請求項1に記載のホットスタンピングフィルム用クリア塗料組成物。
【請求項5】
前記エポキシ変性アクリル樹脂は、下記化学式1で表示される繰り返し単位構造を持つエポキシ変性アクリル樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載のホットスタンピングフィルム用クリア塗料組成物。
【化2】
(前記化学式1で、K、L、M、N及びOは、各繰り返し単位の個数比がK+L+M+N+O=1であり、メチルメタクリレート繰り返し単位Kは0.2〜0.6、エポキシメタクリレート繰り返し単位Lは0.1〜0.25、メチルアクリレート繰り返し単位Mは0.1〜0.2、ブチルメタクリレート繰り返し単位Nは0.1〜0.15、2−ヒドロキシエチルメタクリレート繰り返し単位Oは0.1〜0.2である。)
【請求項6】
前記アクリル樹脂は、酸価が0.01〜0.05mg/KOH、水酸基含量が0.1〜0.5%、重量平均分子量が9,000〜15,000であることを特徴とする、請求項1に記載のホットスタンピングフィルム用クリア塗料組成物。
【請求項7】
前記ポリエステルポリオールは、水酸基含量が2〜4%、重量平均分子量が3,000〜10,000であることを特徴とする、請求項1に記載のホットスタンピングフィルム用クリア塗料組成物。
【請求項8】
前記反応触媒剤は、ジブチル錫ジラウレートであることを特徴とする、請求項1に記載のホットスタンピングフィルム用クリア塗料組成物。
【請求項9】
前記湿潤添加剤は、ポリジメチルシロキサン系であることを特徴とする、請求項1に記載のホットスタンピングフィルム用クリア塗料組成物。
【請求項10】
前記光安定剤は、ベンゾフェノン系、オキサニリド系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン及び2,4−ジ−テルト−ブチルフェニル−3,5−ジ−テルト−ブチル−ヒドロキシベンゾエートからなる群から選択される2種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のホットスタンピングフィルム用クリア塗料組成物。
【請求項11】
前記溶剤は、エステル系、炭化水素系、又はこれらの混合物であることを特徴とする、請求項1に記載のホットスタンピングフィルム用クリア塗料組成物。
【請求項12】
前記硬化剤部は、前記ヘキサメチレンジイソシアネートトリマー系硬化剤90〜99重量%、及び前記反応型シリコン硬化剤1〜10重量%を含むことを特徴とする、請求項1に記載のホットスタンピングフィルム用クリア塗料組成物。
【請求項13】
被塗装物上にエポキシ変性アクリル樹脂、前記エポキシ変性アクリル樹脂以外のアクリル樹脂、ポリエステルポリオール、反応触媒剤、湿潤添加剤、光安定剤及び溶剤を含むプライマー塗料組成物を塗布してプライマー層を形成する段階;及び
前記プライマー層上に請求項1のクリア塗料組成物を塗布してクリア層を形成する段階;
を含み、
前記反応触媒剤が、前記ポリエステルポリオールのヒドロキシ基と、前記硬化剤部に含まれる硬化剤のイソシアネート基との反応速度を向上させるものである
ホットスタンピングフィルム用クリア塗料組成物を用いた塗装方法。
【請求項14】
前記プライマー塗料組成物は、エポキシ変性アクリル樹脂50〜60重量%、アクリル樹脂10〜15重量%、ポリエステルポリオール5〜10重量%、反応触媒剤0.1〜1.5重量%、湿潤添加剤0.1〜1重量%、光安定剤1〜2重量%及び溶剤20〜30重量%を含むことを特徴とする、請求項13に記載のホットスタンピングフィルム用クリア塗料組成物を用いた塗装方法。
【請求項15】
前記被塗装物は、ホットスタンピング処理して形成された高分子フィルムであることを特徴とする、請求項13に記載のホットスタンピングフィルム用クリア塗料組成物を用いた塗装方法。
【請求項16】
下記化学式1で表示される繰り返し単位構造を持つ、エポキシ変性アクリル樹脂。
【化3】
(前記化学式1で、K、L、M、N及びOは、各繰り返し単位の個数比がK+L+M+N+O=1であり、メチルメタクリレート繰り返し単位Kは0.2〜0.6、エポキシメタクリレート繰り返し単位Lは0.1〜0.25、メチルアクリレート繰り返し単位Mは0.1〜0.2、ブチルメタクリレート繰り返し単位Nは0.1〜0.15、2−ヒドロキシエチルメタクリレート繰り返し単位Oは0.1〜0.2である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットスタンピングフィルム用クリア塗料組成物及びこれを用いた塗装方法に係り、より詳しくは、アクリル樹脂及びポリエステルポリオール樹脂にエポキシ変性アクリル樹脂及び2種の光吸収剤を混合して付着力を改善し、短波長及び長波長を同時に遮断して耐候性を向上させることができ、反応型シリコンを含む硬化剤を混合することによって耐チップ性、耐汚染性及び耐水性を向上させることができるホットスタンピングフィルム用クリア塗料組成物及びこれを用いた塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車や乗合車などの自動車において、内装(Interior Decoration)又は外装(Exterior Decoration)に適用される自動車用射出部材の中で一部の製品に一般的に腐食防止(耐食性)のための表面硬化又は高級イメージのメッキ装飾デザインのためにメッキが遂行されている。
【0003】
近年、自動車用外装部品に高級イメージのメッキ装飾デザインのためにホットスタンピングフィルム転写工法を用いてASA(Acrylonitrile−Styrene−Acrylate)素材からなったホットスタンピングフィルム層を形成する方法が用いられている。
【0004】
しかし、ホットスタンピング工程の際、ASAフィルム単独では耐水性、耐チップ性及び耐候性などの耐久性の確保が難しい問題がある。また、フィルムと塗料の付着性が既存のABS樹脂に比べて格段に低下し、耐候性も良くない欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような問題を解決するために、本発明は、アクリル樹脂及びポリエステルポリオール樹脂にエポキシ変性アクリル樹脂と2種の光吸収剤を混合して付着力を改善し、短波長及び長波長を同時に遮断して耐候性を向上させ、反応型シリコンを含む硬化剤を混合することによって、耐チップ性、耐汚染性及び耐水性を向上させることができるという事実が分かって本発明を完成した。
【0006】
したがって、本発明の目的は、耐水性、耐チップ性及び耐汚染性が向上したホットスタンピングフィルム用クリア塗料組成物を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、ホットスタンピングフィルムを保護するとともに耐久性が向上したプライマー層及びクリア層を含むホットスタンピングフィルム用塗料組成物を用いた塗装方法を提供することにある。
【0008】
また、本発明のさらに他の目的は、下記化学式1で表示される繰り返し単位構造を持つエポキシ変性アクリル樹脂を提供することにある。
【化1】
【0009】
(前記化学式1で、K、L、M、N及びOは、各繰り返し単位の個数比がK+L+M+N+O=1であり、メチルメタクリレート繰り返し単位Kは0.2〜0.6、エポキシアクリレート繰り返し単位Lは0.1〜0.25、メチルメタクリレート繰り返し単位Mは0.1〜0.2、ブチルメタクリレート繰り返し単位Nは0.1〜0.15、2−ヒドロキシエチルメタクリレート繰り返し単位Oは0.1〜0.2である。)
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、エポキシ変性アクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステルポリオール、反応触媒剤、湿潤添加剤、光安定剤及び溶剤を含む主剤部;及びヘキサメチレンジイソシアネートトリマー系硬化剤及び反応型シリコン硬化剤を含む硬化剤部;を含むことを特徴とする、ホットスタンピングフィルム用クリア塗料組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、被塗装物上にエポキシ変性アクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステルポリオール、反応触媒剤、湿潤添加剤、光安定剤及び溶剤を含むプライマー塗料組成物を塗布してプライマー層を形成する段階;及び前記プライマー層上に前記クリア塗料組成物を塗布してクリア層を形成する段階;を含むホットスタンピングフィルム用クリア塗料組成物を用いた塗装方法を提供する。
【0012】
また、本発明は、下記化学式1で表示される繰り返し単位構造を持つエポキシ変性アクリル樹脂を提供する。
【化2】
【0013】
(前記化学式1で、K、L、M、N及びOは、各繰り返し単位の個数比がK+L+M+N+O=1であり、メチルメタクリレート繰り返し単位Kは0.2〜0.6、エポキシアクリレート繰り返し単位Lは0.1〜0.25、メチルメタクリレート繰り返し単位Mは0.1〜0.2、ブチルメタクリレート繰り返し単位Nは0.1〜0.15、2−ヒドロキシエチルメタクリレート繰り返し単位Oは0.1〜0.2である。)
【発明の効果】
【0014】
本発明によるホットスタンピングフィルム用クリア塗料組成物は、アクリル樹脂及びポリエステルポリオール樹脂にエポキシ変性アクリル樹脂及び2種の光吸収剤を混合して付着力を改善し、短波長及び長波長を同時に遮断して耐候性を向上させることができる。
【0015】
また、反応型シリコンを含む硬化剤を混合することによって耐チップ性、耐汚染性及び耐水性を向上させることができる。
【0016】
また、既存のホットスタンピングフィルムを単独で適用する代わりに、フィルム上に2回塗装コートする方法を用いることにより、フィルムを保護し、耐久性を確保するとともに既存のメッキ及びマスキング塗装に比べて製造コストを節減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を一実施例に基づいてより詳細に説明する。
【0018】
本発明は、エポキシ変性アクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステルポリオール、反応触媒剤、湿潤添加剤、光安定剤及び溶剤を含む主剤部;及びヘキサメチレンジイソシアネートトリマー系硬化剤及び反応型シリコン硬化剤を含む硬化剤部;を含むことを特徴とする、ホットスタンピングフィルム用クリア塗料組成物を提供する。
【0019】
本発明の好適な具現例によれば、前記主剤部は、前記エポキシ変性アクリル樹脂50〜60重量%、前記アクリル樹脂10〜15重量%、前記ポリエステルポリオール5〜10重量%、前記反応触媒剤0.1〜1.5重量%、前記湿潤添加剤0.1〜1重量%、前記光安定剤1〜2重量%、及び前記溶剤20〜30重量%を含むことができる。
【0020】
本発明の好適な具現例によれば、前記主剤部と前記硬化剤部との混合比は、2.0:1〜4.0:1重量比であることができる。具体的に、前記混合比を外れる場合、硬化しなくて塗膜がうまく形成できなく、塗膜が形成されても要求物性を確保しにくい。本発明の塗料組成物は、前記主剤部と前記硬化剤部とを混合した後、塗装してから硬化することで、透明塗膜を形成することができる。
【0021】
本発明の好適な具現例によれば、前記エポキシ変性アクリル樹脂は、酸価が3〜10mg/KOH、水酸基含量が1〜5%、重量平均分子量(Mw)が8,000〜20,000のものを使うことができる。具体的に、前記エポキシ変性アクリル樹脂は、塗膜のべたつきを最小化するために、ガラス転移温度が60〜70℃、固形分含量が50%以上のものを使い、50〜60重量%を混合して塗膜の信頼性、特に付着性及び耐水性を向上させることができる。この際、前記含量が50重量%より少なければ塗膜の信頼性を具現しにくく、60重量%より多ければ付着性及び耐水性を低下させることができる。
【0022】
本発明の好適な具現例によれば、前記エポキシ変性アクリル樹脂は、下記化学式1で表示される繰り返し単位構造を持つエポキシ変性アクリル樹脂であることができる。
【化3】
【0023】
(前記化学式1で、K、L、M、N及びOは、各繰り返し単位の個数比がK+L+M+N+O=1であり、メチルメタクリレート繰り返し単位Kは0.2〜0.6、エポキシアクリレート繰り返し単位Lは0.1〜0.25、メチルメタクリレート繰り返し単位Mは0.1〜0.2、ブチルメタクリレート繰り返し単位Nは0.1〜0.15、2−ヒドロキシエチルメタクリレート繰り返し単位Oは0.1〜0.2である。)
【0024】
本発明の好適な具現例によれば、前記アクリル樹脂は、酸価が0.01〜0.05mg/KOH、水酸基含量が0.1〜0.5%、重量平均分子量(Mw)が9,000〜15,000のものを使うことができる。具体的に、前記アクリル樹脂は、ガラス転移温度が70〜80℃、固形分含量が50%以上のものを使い、10〜15重量%を使って塗膜に硬度を付与し、チッピング性を向上させることができる。この際、前記含量が10重量%より少なければ素材とのチッピング性が低下することができ、15重量%より多ければ塗装作業性(レベリング)を低下させることができる。
【0025】
本発明の好適な具現例によれば、前記アクリル樹脂は、アクリル系又はビニル系モノマーなどの二重結合を持つ種々の単量体を熱分解開始剤で溶液内でラジカル重合させることで製造することになる。前記アクリル系又はビニル系モノマーとしては、非官能性モノマー、カルボキシル系モノマー、水酸基系モノマー、ビニル系モノマーなどを含むことができる。
【0026】
前記非官能性モノマーを具体的に例示すれば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、N−ブチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、及びラウリルメタクリレートなどを含むことができる。前記カルボキシル系モノマーを具体的に例示すれば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、及びクロロ酸などを含むことができる。前記水酸基系モノマーを具体的に例示すれば、2−ヒドロキシメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、及び2−ヒドロキシエチルアクリレートなどを含むことができる。前記ビニル系モノマーを具体的に例示すれば、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、グリシジルメタクリレート、スチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、及びビニルアセテートなどを含むことができる。
【0027】
本発明は、エポキシ変性アクリル樹脂を合成するために、アクリル樹脂としてグリシジルメタクリレートを使うことができ、エポキシ基を持っているので、同じガラス転移温度(Tg)を持つ他のモノマーに比べ、硬度及び耐化学性に優れ、付着力に優れて、難付着素材の付着力を向上させることができる利点がある。
【0028】
本発明の好適な具現例によれば、前記ポリエステルポリオールは、水酸基含量が2〜4%、重量平均分子量(Mw)が3,000〜10,000、固形分含量が80重量%のものを使うことができる。前記ポリエステルポリオールは、硬化剤のイソシアネートと架橋して耐水性を補うことができ、5〜10重量%を使うことができる。この際、前記含量が5重量%より少なければ耐水性効果が低下することができ、10重量%より多ければ塗膜硬度が低くなり、表面のべたつきが発生することができる。
【0029】
本発明の好適な具現例によれば、前記ポリエステルポリオールは次のような方法で製造することができる。まず、撹拌器が装着された反応器に酸成分及び多価アルコール成分と触媒及び各種の添加剤を投入し、反応器の温度を200〜230℃に維持しながら低分子量のエステル縮合副産物を系外に除去するとともにエステル反応を進行させた。その後、エステル反応の転換率が低分子量エステル副産物の理論流出量の通常95%以上流出した時点を基準に反応を終結した。前記エステル反応が終決すれば、反応器の温度を250〜280℃に上昇させながらポリエステル縮合反応を誘導した。このように縮合反応を進行させ、酸価(2〜4mgKOH/g以下)で反応を中断させることで、反応物であるポリエステルポリオール樹脂を製造することができる。
【0030】
本発明の好適な具現例によれば、前記反応触媒剤は、ジブチル錫ジラウレートを使うことができる。前記反応触媒剤は、主剤(水酸基)と硬化剤(イソシアネート)の反応速度を向上させる役目をし、0.1〜1.5重量%を使うことができる。この際、前記含量が0.1重量%より少なければ主剤及び硬化剤の反応速度が遅くなることができ、1.5重量%より多ければ可使時間が短くなって作業性が低下することができる。
【0031】
本発明の好適な具現例によれば、前記湿潤添加剤は、ポリジメチルシロキサン系のものを使うことができる。前記湿潤添加剤は、塗装時に湿潤性及び塗膜のレベリング性を向上させることができる。
【0032】
本発明の好適な具現例によれば、前記光安定剤は、ベンゾフェノン系、オキサニリド系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、及び2,4−ジ−テルト−ブチルフェニル−3,5−ジ−テルト−ブチル−ヒドロキシベンゾエートからなる群から選択された2種以上のものを使うことができる。具体的に、前記光安定剤としては、光安定剤(Hindered Amine Light Stabilizer、HALS)であるTinuvin 292と光吸収剤(UV Absorber)であるTinuvin 1130及びTinuvin 479を使うことができ、好ましくは光安定剤及び光吸収剤の混合物を使うことができる。特に、Tinuvin 479はUV長波長領域を吸収する光吸収剤で、1Layer有光クリア塗料システムに適用するとき、耐候性の確保に大きな影響を及ぼし、総重量の0.1〜0.5重量%を使うことがよい。このような光安定剤は短波長及び長波長を同時に遮断して耐候性を向上させることができる。
【0033】
本発明の好適な具現例によれば、前記溶剤は、エステル系、炭化水素系又はこれらの混合物を使うことができる。前記溶剤は塗装作業を容易にし、溶剤の揮発速度の調節によって塗膜の平滑性及び外観を確保することができる。また、前記溶剤の含量は要求される塗膜の厚さ及び塗膜形成法によって変更できるが、総重量の20〜30重量%であることがよい。このような溶剤の含量調節によって塗装の粘度を約13.0〜15.0sec(フォードカップ#4)にして塗装することが好ましい。
【0034】
本発明の好適な具現例によれば、前記硬化剤部は、前記ヘキサメチレンジイソシアネートトリマー系硬化剤90〜99重量%、及び前記反応型シリコン硬化剤1〜10重量%を含むことができる。具体的に、前記反応型シリコン硬化剤の含量が1重量%より少なければ耐チップ性及び耐汚染性が低下することができ、10重量%より多ければ十分に硬化しないこともある。好ましくは1〜5重量%を含み、より好ましくは3重量%を含むことができる。また、前記ヘキサメチレンジイソシアネートトリマー系硬化剤は、無黄変と耐候性に優れた特性がある。
【0035】
本発明の好適な具現例によれば、前記反応型シリコン硬化剤は、耐チップ性及び耐汚染性を具現するために、イソホロンジイソシアネート(IPDI)にトリエトキシシランを合成して製造したもので、シリコン(Si)に対してイソシアネート基0.1〜1重量%を含むことができる。具体的に、前記イソシアネート基の含量が0.1重量%より少なければ耐汚染性の効果を期待しにくく、1重量%より多ければ強い疎水性のため、塗料配合時の相溶性が良くない。好ましくは、0.1〜0.2重量%を含むことができる。このような反応型シリコン硬化剤を化学構造式で示すと、下記の化学式2で示すことができる。
【化4】
【0036】
また、本発明は、被塗装物上にエポキシ変性アクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステルポリオール、反応触媒剤、湿潤添加剤、光安定剤及び溶剤を含むプライマー塗料組成物を塗布してプライマー層を形成する段階;及び前記プライマー層上に前記クリア塗料組成物を塗布してクリア層を形成する段階;を含むホットスタンピングフィルム用クリア塗料組成物を用いた塗装方法を提供する。
【0037】
本発明の好適な具現例によれば、前記プライマー塗料組成物は、エポキシ変性アクリル樹脂50〜60重量%、アクリル樹脂10〜15重量%、ポリエステルポリオール5〜10重量%、反応触媒剤0.1〜1.5重量%、湿潤添加剤0.1〜1重量%、光安定剤1〜2重量%及び溶剤20〜30重量%を含むことができる。
【0038】
本発明の好適な具現例によれば、前記被塗装物は、ホットスタンピング処理して形成した高分子フィルムであることができる。好ましくは、前記高分子フィルムは、ASA(Acrylonitrile−Styrene−Acrylate)素材からなったホットスタンピングフィルム層であることができる。
【0039】
前記塗装方法は、被塗装物上に前記プライマー塗料組成物を1次塗装してプライマー層を形成し、その上にクリア層を形成する2段階のコーティングを実施することにより、被塗装物との付着性を向上させて高圧洗車性を大きく向上させることができる。
【0040】
一方、本発明は、下記化学式1で表示される繰り返し単位構造を持つエポキシ変性アクリル樹脂を提供する。
【化5】
【0041】
(前記化学式1で、K、L、M、N及びOは、各繰り返し単位の個数比がK+L+M+N+O=1であり、メチルメタクリレート繰り返し単位Kは0.2〜0.6、エポキシアクリレート繰り返し単位Lは0.1〜0.25、メチルメタクリレート繰り返し単位Mは0.1〜0.2、ブチルメタクリレート繰り返し単位Nは0.1〜0.15、2−ヒドロキシエチルメタクリレート繰り返し単位Oは0.1〜0.2である。)
【0042】
したがって、本発明によるホットスタンピングフィルム用クリア塗料組成物は、アクリル樹脂及びポリエステルポリオール樹脂にエポキシ変性アクリル樹脂及び2種の光吸収剤を混合して付着力を改善し、短波長及び長波長を同時に遮断して耐候性を向上させることができる。また、反応型シリコンを含む硬化剤を混合することにより、耐チップ性、耐汚染性及び耐水性を向上させることができる。
【0043】
また、既存のホットスタンピングフィルムを単独で適用する代わりに、フィルム上に2回塗装コートする方法によってフィルムを保護し、耐久性を確保するとともに既存のメッキ及びマスキング塗装に比べて製造コストを節減することができる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明が次の実施例に限定されるものではない。
【0045】
実施例1〜4及び比較例1〜10
【0046】
下記表1に示したような成分及び成分比でホットスタンピングフィルム用クリア塗料を製造し、これを用いて2回塗装コートされたホットスタンピングフィルムを製造した。具体的には、前記クリア塗料は、主剤部と硬化剤部を3:1の重量比で混合した後、溶剤としてブチルアセテートを使って塗装粘度15sec(フォードカップ#4)条件で塗装して硬化させた。
【0047】
また、ホットスタンピングフィルムを2回塗装コートする方法は、射出されたASA素材にホットスタンピング処理(Stamping層形成)した後、塗装を準備した。まず、スタンピング処理された素材に異物除去の目的で前処理した(静電Blower)。その後、ホットスタンピングフィルム層上に下記表2に示した成分比で製造されたプライマー塗料組成物を塗布し、常温で5分間放置してプライマー層(10〜15μm)を形成した後、その上にクリア塗料(25〜35μm)を塗布した。その後、80℃で30分間硬化させることで、2層にコートされたホットスタンピングフィルムを製造した。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
[使用成分]
1)エポキシ変性アクリル樹脂:重量平均分子量(Mw)が8,000〜20,000、水酸基含量が1〜5%、ガラス転移温度が60〜70℃、酸価が3〜10mg/KOHである。
【0051】
2)アクリル樹脂:重量平均分子量(Mw)が9,000〜15,000、水酸基含量が0.1〜0.5%、ガラス転移温度が70〜80℃、酸価が0.01〜0.05mg/KOHである。
【0052】
3)ポリエステルポリオール:重量平均分子量(Mw)が3,000〜10,000、水酸基含量が2〜4%である。
【0053】
4)反応型シリコン硬化剤:固形分含量(N.V)が10%以下、イソシアネート基含量が0.1〜0.2%である。
【0054】
5)湿潤添加剤:ポリジメチルシロキサン系
【0055】
6)光安定剤:Tinuvin 1130(UVA)、及びTinuvin 292(HALS)混用
【0056】
7)溶剤:ブチルアセテート
【0057】
8)硬化剤:ヘキサメチレンイソシアネートトリマー系硬化剤97重量%、及び前記反応型シリコン硬化剤3重量%を含む混合物
【0058】
実験例
前記実施例1〜4及び比較例1〜10で製造された塗料の物性を測定するために、塗装及び硬化して試片塗膜を製作した後、下記の実験方法で物性を測定した。その結果は下記表3及び4に示した。
【0059】
[実験方法]
1)耐洗車性:
試片塗膜の初期光沢を測定した(60度)。そして、試片を試験台に装着し、規定のDUST液を撹拌した後、持続的に噴射しながらポリスチレンからなったブラシを移動速度5m/minの速度で10cycle往復テストした。評価が終わり、試片をせっけん水できれいに洗って室温に放置した後、有機洗浄剤で表面の異物を除去した。最終試片の光沢を測定し、自動洗車前後の光沢維持率を計算した。
【0060】
2)耐チップ性:グラベロメーター(GRAVELOMETER:SAF J 400 規格品)を使い、規定の砕石砂利(JIS Crushed gravel No7 stone、2.5〜5mm 350〜400個)50gを発射距離(100mm)、発射角度(45°)、発射圧力(5.0Kgf/cm)の条件でテストを進めた。
【0061】
3)耐水性:試験温度50±2℃の水槽に試験片を240時間浸漬してから取り出して、外観評価及び初期付着性実験を実施して評価した。
【0062】
4)耐汚染性/接触角:規定の汚染性テスト液(KS A0090+DIW 1:1混合液)塗膜に塗布し、24時間放置した後、試験片高圧洗車機で洗車した後、易汚染除去性を肉眼評価(1〜5等級)で実施した。
【0063】
【表3】
【0064】
表3の結果によれば、比較例1は、無塗装仕様でASAフィルムのみ存在する場合、耐チップ性、耐水性及び耐汚染性などのすべての評価項目で不足な物性を示すことを確認した。
【0065】
また、硬化剤を適用しなかった比較例2〜5の場合、樹脂内のエポキシ変性アクリル樹脂の含量が増加するほど付着力が向上して高圧洗車性は向上したが、一定値以上に増加すればポリエステルポリオールの含量が減少して耐水性が低下することを確認した。
【0066】
これに対し、エポキシ変性アクリル樹脂、アクリル樹脂及びポリエステルポリオールが一定の割合で含まれ、反応型シリコン硬化剤を含む硬化剤を適用した実施例1及び2の場合、高圧洗車性、耐チップ性及び耐久性を満たすとともに耐汚染性及び水に対する接触角に優れることが分かった。
【0067】
【表4】
【0068】
表4の結果によれば、クリア層が同一組成であるとき、プライマー層をさらに適用した比較例7〜10の場合、プライマー層を適用しなかった比較例1〜6に比べ、付着性が向上し、特に高圧洗車性及び耐汚染性/接触角が向上したことを確認した。しかし、依然として耐チップ性及び耐水性が良くないことが分かった。
【0069】
これに対し、実施例3及び4の場合、前記と同様にプライマー層をさらに適用することにより、耐チップ性、耐水性及び耐汚染性などの耐久性に優れるとともにホットスタンピングフィルム層との付着性を向上させ、特に高圧洗車性が向上したことを確認した。
【0070】
したがって、本発明によるクリア塗料組成物は、アクリル樹脂及びポリエステルポリオール樹脂にエポキシ変性アクリル樹脂及び2種の光吸収剤を混合して付着力を改善し、短波長及び長波長を同時に遮断して耐候性を向上させることができる。また、反応型シリコンを含む硬化剤を混合することにより、耐チップ性、耐汚染性及び耐水性を向上させることができる。