【実施例】
【0024】
本発明の一実施例にかかる情報生成装置を
図1乃至図
14を参照して説明する。本実施例にかかる段差検出装置としての演算装置1は、図
2に示したように、移動体としての車椅子100に搭載されている。
【0025】
図
2は、本発明の一実施例にかかる段差検出装置を有する凹凸検出システムの構成図である。図
2に示したように、車椅子100には、演算装置1の他にGPS受信機2と、速度検出手段としての速度センサ3と、加速度検出手段としての加速度センサ4と、送信手段としての通信機5と、が搭載されている。
【0026】
車椅子100に搭載された通信機5は、インターネット等のネットワーク網Nに無線通信で接続することができ、このネットワーク網Nを介してサーバ装置50と通信可能となっている。
【0027】
車椅子100は、車体に、左右一対の前輪101及び左右一対の後輪102が設けられている。前輪101は車体の前方側に設けられている。後輪102は車体の後方側に設けられている。前輪101は、その直径は後輪102の直径より小さくなっている。
【0028】
車椅子100の車体は、例えば鋼管製のフレームにより構成されたフレーム構造体である。そして、車体には、利用者が着席する座席や、利用者の足部を乗せるフットプレート等が設けられている。
【0029】
車椅子100に搭載されている機器の機能的構成図を図
3に示す。演算装置1は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリを備えたマイクロコンピュータ及び、GPS受信機2、速度センサ3、加速度センサ4、通信機5と接続するためのインタフェース等を有している。また、演算装置1は、ROM等に記憶される制御プログラムを実行することにより、加速度取得部11と、対数演算部12と、補正部13と、キャリブレーション部14と、凹凸判定部15と、して機能する。
【0030】
加速度取得部11は、加速度センサ4が検出した上下方向(垂直方向)の加速度データを取得する。
【0031】
対数演算部12は、加速度取得部11が例えば1mなど所定距離の間に取得した加速度データの標準偏差を算出し、算出された標準偏差の常用対数を演算する。
【0032】
補正部13は、対数演算部12が算出した結果に対して、速度センサ3が検出した走行速度(所定距離を走行する間の平均速度)に基づいて補正して車椅子100が走行した走行面の凹凸の度合いを示す値である凹凸値を算出する。凹凸値の算出方法については後述する。
【0033】
キャリブレーション部14は、サーバ装置50からの指示されたコースを走行した際に車椅子100の個体差による凹凸値の算出誤差を少なくするための係数やオフセット等を算出して設定する。詳細は後述する。
【0034】
凹凸判定部15は、補正部13で算出された凹凸値に基づいて走行面にバリアとなるような凹凸か否かを判定する。この判定結果は凹凸に関する情報としてサーバ装置50に出力されるが、この情報に上記した凹凸値も含めてもよい。
【0035】
GPS受信機2は、周知のように複数のGPS(Global Positioning System)衛星から発信される電波を受信して、現在位置情報(緯度、経度)を求めて演算装置1に出力する。
【0036】
速度センサ3は、車椅子100が走行する速度(走行速度)を検出する。速度センサ3は、例えば後輪102の回転数から検出するものや、電動車椅子の場合であればモータの回転数から検出するものであってもよい。
【0037】
加速度センサ4は、車椅子100が走行して移動する移動平面に対して垂直な方向(上下方向)の加速度(垂直加速度)を検出する。加速度センサ3は、例えば静電容量型やピエゾ抵抗型等、どのような方式のセンサでもよいが、車椅子100に搭載するので小型であることが好ましい。
【0038】
通信機5は、演算装置1で演算された結果をサーバ装置50へ無線通信により送信する。通信機5は、LTE(Long Term Evolution)やW−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)等の携帯電話網で利用されている通信方式でもよい。また、Wi−Fi(登録商標)等の無線LANの通信方式であってもよいし、それらを切り替えて利用できるものであってもよい。
【0039】
サーバ装置50の機能的構成図を図
4に示す。サーバ装置50は、通信機51と、演算装置52と、記憶装置53と、を備えている。通信機51は、通信機5から送信された演算装置1で演算された結果を受信する。
【0040】
演算装置52は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリを備えたマイクロコンピュータを有している。また、演算装置52は、ROM等に記憶される制御プログラムを実行することにより更新部521として機能する。
【0041】
更新部521は、演算装置1から送信された凹凸に関する情報に基づいて、記憶装置53に記憶されている地図情報532のバリア情報を更新する。
【0042】
記憶装置53には、前記した地図情報532の他に、キャリブレーション部14がキャリブレーション部14を行うためのコースに関する情報であるキャリブレーション区間情報531が記憶されている。
【0043】
次に、本実施例における凹凸に関する情報の生成方法について
図1及び
図5乃至
図7を参照して説明する。
図5は、平坦路と凹凸路とを走行した場合の垂直加速度(上段)と垂直加速度の標準偏差(中段)と走行速度(下段)との関係を示したグラフである。
図5(a)は設定速度(走行速度)が2.5km/hの場合、
図5(b)は設定速度が6.0km/hの場合である。また、
図5に示した標準偏差は、1m間に計測された複数の垂直加速度から算出した標準偏差である。
【0044】
図5によれば、凹凸路では平坦路に比べて大きな加速度が発生している。また、同じ路面を走行したにも関わらず、走行速度が大きいと生じる加速度も大きくなっていることが分かる。したがって、垂直加速度から凹凸を検出することができるが、その際には、この走行速度による影響への対応が必要である。
【0045】
しかしながら、
図5に示した標準偏差は、
図1に示したように、それ自体がバラつきを持つことが明らかとなった。したがって、標準偏差をそのまま走行速度で補正するだけでは速度依存性を取りきれないため不十分である。
【0046】
そこで、本実施例では、垂直加速度の標準偏差の常用対数を算出し、その算出結果を走行速度に基づいて補正した値を「凹凸値」として走行面の凹凸の評価に用いる。凹凸値をRとすると、凹凸値Rは、標準偏差をAs、標準偏差Asを算出する加速度データを取得する期間(例えば1m)の平均走行速度をV、予め定めた基準速度をVref、予め定めた速度補正係数をα、予め定めた所定のオフセットをβとしたときに以下の(1)式で算出される。なお、速度補正係数αは
図6の回帰直線rの傾きであり、オフセットβは回帰直線r上のV=Vrefのときの値である。これらは、キャリブレーション部14で算出、設定されるが詳細な算出方法は後述する。なお、(1)式では、常用対数で演算するが、対数演算の底は10に限らず、他の値であってもよい。
R=log
10As+α(Vref−V)−β・・・(1)
【0047】
(1)式から明らかなように、標準偏差Asの常用対数を、所定距離を走行する間の平均走行速度Vと基準速度Vrefとの速度差に基づいて補正している。なお、(1)式の2項目は、走行速度Vについての一次式を加減算するものであれば(1)式に限らない。
【0048】
図6に対数変換後の垂直加速度の標準偏差と走行速度との関係のグラフを示す。
図6に示したように、対数変換により、
図1と比較して走行速度が上がるにしたがって走行速度によるバラつきの増大が抑制できる。
【0049】
図7に
図6の結果に速度補正を施した後の垂直加速度の標準偏差(即ち凹凸値R)と走行速度との関係のグラフを示す。
図7に示したように、走行速度に関わらず、加速度の標準偏差が同程度の値に補正できる。
【0050】
次に、
図5に示したデータに対して、凹凸値Rを算出した結果を
図8に示す。
図8に示したように、走行速度が違っても、凹凸値Rは同程度の値を示している。したがって、凹凸値Rを用いることにより走行速度にかかわらず同じ基準で路面凹凸を評価することができる。即ち、速度依存性の少ない凹凸に関する情報を生成することができる。
【0051】
また、任意に閾値を定め、凹凸値Rが閾値よりも小さい場合は平坦路,凹凸値Rが閾値以上の場合は凹凸路と判定することで、平坦路と凹凸路の識別が可能となる。
図8の例では、閾値を0.4とすれば平坦路と凹凸路を識別することができる。
【0052】
図9に、
図3に示した構成の演算装置1における走行面上の凹凸の検出動作(情報生成方法)のフローチャートを示す。
図9のフローチャートは、演算装置1を構成するROM等にコンピュータプログラムとして格納されCPUで実行される。
【0053】
まず、ステップS101において、垂直加速度Azを加速度センサ4で、車椅子100の走行速度Vを速度センサ3で、車椅子100の位置(現在位置)PをGPS受信機2で、それぞれ計測し演算装置1が取得(収集)する。
【0054】
次に、ステップS102において、対数演算部12が所定距離(例えば1m)に亘る垂直加速度Azの標準偏差Asを計算する。
【0055】
次に、ステップS103において、標準偏差Asと走行速度V(所定距離の平均速度)とから凹凸値Rを計算する。つまり、対数演算部12で標準偏差Asの常用対数を算出し、補正部13で、常用対数に走行速度Vに基づく補正を行って凹凸値Rが算出される。即ち、上記(1)式の1項目の演算を対数演算部12で行い、1項目の演算に対して2項目の演算行って加算する演算を補正部13で行っている。
【0056】
次に、ステップS104において、凹凸判定部15が予め定めた閾値に基づいてステップS103で算出された凹凸値Rがバリアとなるような凹凸か否かを判定する。つまり、凹凸値R(補正後の値)が閾値以上であれば走行面上に凹凸を検出したと判定する。
【0057】
次に、キャリブレーション部14におけるキャリブレーション動作について説明する。加速度センサ4等のセンサから得られる信号レベルには、例えば、高機能電動車椅子、電動車椅子、手動車椅子等の車椅子の種類により個体差がある。また、車椅子の種類以外にも、走行時の重量(荷物や利用者の重量+車椅子100の重量)や利用者の操作の癖などの様々な要因に起因してセンサ出力の差異が生じることがある。したがって、多くの利用者から収集したデータを統計処理するためには、このような個体差による影響を少なくする必要がある。そこで、本実施例では、車両毎(車椅子100毎)にキャリブレーションを行う。
【0058】
図10にキャリブレーション動作のフローチャートを示す。
図10のフローチャートは、演算装置1を構成するROM等にコンピュータプログラムとして格納されCPUで実行される。まず、ステップS201において、キャリブレーション用のコース(校正用コース)を走行し、センサデータ(垂直加速度、走行速度)を収集する。なお、キャリブレーション用のコースは複数の速度でそれぞれ最低1回は走行する必要がある。これは
図6に示した回帰直線rを算出する必要があるからである。即ち、所定の校正用コースを走行速度を変えて複数回走行する。
【0059】
また、キャリブレーション用のコースは、平坦な路面がキャリブレーションに適する。キャリブレーション用のコースは、本実施例の場合サーバ装置50の記憶装置53に記憶されているキャリブレーション区間情報531に基づいてサーバ装置50から指定される。キャリブレーション用のコースの指定は、予め定めた特定のコースであってもよいし、利用者の現在位置周辺の平坦路の場所が分かる場合は、その平坦路を指定してもよい。
【0060】
或いは、サーバが利用者にキャリブレーション用のコースの条件のみを提供し、ユーザ自身がキャリブレーション用のコースを決定してもよい。例えば、サーバ装置50が演算装置1に「平坦なアスファルト路でキャリブレーション走行して下さい」といったメッセージを送信し、音声出力手段や表示手段等によりそのメッセージを出力し、利用者は、サーバ装置50から受け取ったキャリブレーション用のコースの条件に合致するような場所を探して実行してもよい。
【0061】
なお、キャリブレーション用のコースは、サーバ装置50から指定されるに限らず、演算装置1に予め記憶させたり、メモリーカード等の記憶媒体を介して演算装置1が取得するようにしてもよい。
【0062】
次に、ステップS202において、対数演算部12と補正部13とで、所定距離(例えば1m)毎の垂直加速度の標準偏差As’の常用対数と走行速度V(所定距離の平均速度)を計算する。なお標準偏差As’は、キャリブレーション用に算出されるために(1)式の標準偏差Asと区別しているのであって算出方法は同じでよい。
【0063】
次に、ステップS203において、キャリブレーション部14で、垂直加速度の標準偏差As’の常用対数と走行速度Vとの特性を決定する。この特性とは
図6に示したようなグラフである。
【0064】
次に、ステップS204において、キャリブレーション部14で、ステップS203で決定した特性における回帰直線rの傾きから速度補正係数αを決定する。
【0065】
次に、ステップS205において、キャリブレーション部14で、ステップS203で決定した特性における回帰直線r上の走行速度VがVref(予め定めた基準速度)のときの標準偏差As’の値から所定のオフセットβを決定する。即ち、速度補正係数αと所定のオフセットβとは、所定の校正用コースを移動体が走行速度を変えて複数回走行した結果に基づいて設定される。
【0066】
次に、ステップS206において、キャリブレーション部14で、ステップS204で決定した速度補正係数αとステップS205で決定した所定のオフセットβとに基づいてステップS203で決定した特性を
図7のように補正し、その補正した特性から凹凸と判定するための閾値を決定し凹凸判定部15に設定する。閾値の決定方法としては、例えば、
図7における凹凸値(
図7中のプロット)の標準偏差σを算出し、その3倍(3σ)を閾値とすることが挙げられる。
【0067】
速度補正係数αと所定のオフセットβとは、上述したように、キャリブレーションにより求められるデータであり、同じ車椅子で走行したとしても利用者により異なる場合がある。したがって、特定の利用者であっても車椅子を変更した場合や、特定の車椅子であっても利用者が変更された場合は原則としてキャリブレーションを実行し、速度補正係数αと所定のオフセットβとを求める。
【0068】
なお、キャリブレーションは車椅子100側(演算装置1)で行うに限らずサーバ装置50で行ってもよい。
図11に概略構成図、
図12にサーバ装置50でキャリブレーションを行う場合のフローチャートを示す。
図11の構成は、
図3のキャリブレーション部14をサーバ装置50の演算装置52内にキャリブレーション部522として移動したものである。
図12(a)は車椅子100(演算装置1)側のフローチャート、
図12(b)はサーバ装置50側のフローチャートである。
図12(a)のフローチャートは、演算装置1を構成するROM等にコンピュータプログラムとして格納されCPUで実行される。
図12(b)のフローチャートは、演算装置52を構成するROM等にコンピュータプログラムとして格納されCPUで実行される。
【0069】
図12(a)のステップS301は、
図10のステップS201と同様である。続くステップS302において、演算装置1は、ステップS301で収集したセンサデータ(垂直加速度、走行速度)をキャリブレーション用データとして通信機5を介してサーバ装置50に送信する。
【0070】
一方、
図12(b)のステップS401においては、サーバ装置50の通信機51は、車椅子100からキャリブレーション用データを受信して演算装置52に出力する。即ち、移動体から位置情報、上下方向への加速度データ、走行速度に関する情報を受信する受信手段として機能する。続くステップS402〜S406は、
図10のステップS202〜S206と同様である。即ち、
図12の場合の演算装置52は、対数演算部12、補正部13、キャリブレーション部14としての機能を有する。
【0071】
また、サーバ装置50側で車椅子100から送信されてきたデータの中からキャリブレーション用のデータとして適切なデータを抽出し、随時キャリブレーションを行ってもよい。
図13に概略構成図、
図14にフローチャートを示す。
図13構成は、
図3の対数演算部12、補正部13、キャリブレーション部14、凹凸判定部15をサーバ装置50の演算装置52内にそれぞれキャリブレーション部522、対数演算部523、補正部524、凹凸判定部525として移動したものである。
図14のフローチャートは、演算装置52を構成するROM等にコンピュータプログラムとして格納されCPUで実行される。
【0072】
まず、ステップS501において、演算装置52は、通信機51を介して移動体(車椅子100)からセンサデータ(垂直加速度、走行速度、移動体の位置)を受信する。
【0073】
次に、ステップS502において、演算装置52は、ステップS501で受信したセンサデータにキャリブレーション用のコースが含まれているか否かを判断し、含まれている場合(YESの場合)はステップS503に進み、含まれていない場合(NOの場合)はフローチャートを終了する。キャリブレーション用のコースが含まれているか否かは、記憶装置53のキャリブレーション区間情報531に基づいて受信した移動体の位置から判断すればよい。
【0074】
次に、ステップS503において、演算装置52は、ステップS501で受信したデータからキャリブレーション用データを抽出する。つまり、キャリブレーション用のコースに対応する位置における垂直加速度、走行速度を抽出する。
【0075】
次に、ステップS504において、演算装置52は、ステップS503で抽出されたデータから所定距離(例えば1m)毎の垂直加速度の標準偏差As’の常用対数と走行速度V(所定距離の平均速度)を計算する。このステップは
図10のステップS202と同様の動作である。
【0076】
次に、ステップS505において、演算装置52は、キャリブレーションは1回目か否かを判断し、1回目の場合(YESの場合)はステップS506に進み、2回目以降の場合(NOの場合)はステップS510に進む。1回目か否かは、例えば、キャリブレーション回数を記憶するカウンタ等を用意し、そのカウンタの値に基づいて判断すればよい。
【0077】
続くステップS506〜S509は、
図10のステップS203〜S206と同様である(演算装置52で実行される)。
【0078】
一方、ステップS510においては、演算装置52は、新たなキャリブレーションデータを追加して、キャリブレーション部14で、垂直加速度の標準偏差As’の常用対数と走行速度Vとの特性を再計算する。つまり、新たなデータに基づいて
図6に示したようなグラフを再度作成する。
【0079】
次に、ステップS511において、演算装置52は、ステップS510で再計算した特性における回帰直線rの傾きから速度補正係数αを更新する。
【0080】
次に、ステップS512において、演算装置52は、ステップS510で再計算した特性における回帰直線r上の走行速度VがVref(予め定めた基準速度)のときの標準偏差As’の値から所定のオフセットβを更新する。
【0081】
次に、ステップS513において、演算装置52は、ステップS511で更新した速度補正係数αとステップS512で更新した所定のオフセットβとに基づいてステップS510で決定した特性を
図7のように補正し、その補正した特性から凹凸と判定するための閾値を更新する。
【0082】
なお、上記したサーバ装置50側で車椅子100から送信されてきたデータの中からキャリブレーション用のデータとして適切なデータを抽出し、随時キャリブレーションを行う場合、一度キャリブレーションを実行した後であれば、同時にサーバ装置50で凹凸の判定を行ってもよい。つまり、この場合のサーバ装置50の演算装置52は、対数演算部12、補正部13、キャリブレーション部14、凹凸判定部15の機能を有してもよい。
【0083】
本実施例によれば、対数演算部12が車椅子100が所定距離を走行する間に取得された垂直加速度データの標準偏差Asの常用対数を算出し、補正部13が算出された常用対数Asを車椅子100の走行速度Vに基づき補正して、凹凸判定部15が車椅子100が走行した走行面の凹凸に関する情報を生成する。このようにすることにより、常用対数を算出することで垂直加速度の標準偏差Asのバラつきを抑えることができ、さらに、走行速度Vで補正することで、バラつきを抑えた状態で走行速度による依存性を取ることができる。したがって、精度良く走行面上の凹凸を検出して、凹凸に関する情報を生成することができる。
【0084】
また、補正部13は、標準偏差Asの常用対数を、所定距離を走行する間の車椅子100の平均走行速度Vと所定の基準速度Vrefとの速度差に基づいて補正している。このようにすることにより、基準速度Vrefを基準とした標準偏差のバラつきに対応して、より精度良く走行面上の凹凸を検出することができる。また、常用対数を用いることで、プログラムや回路を構成する際に既存のライブラリや回路部品等を用いることができ、設計工数を削減することができる。
【0085】
また、対数演算部12と補正部13とで(1)式に示した算出式を実行して凹凸値Rを算出しているので、標準偏差Asと、平均走行速度Vのみを代入することで容易に凹凸の度合いを求めることができる。
【0086】
また、凹凸判定部15は、凹凸値Rに予め定めた閾値に基づいて凹凸を検出している。このようにすることにより、凹凸の判断を容易にすることができる。
【0087】
また、速度補正係数α及び所定のオフセットβを、所定の校正用コースを車椅子100が走行速度を変えて複数回走行した結果に基づいて設定するキャリブレーション部14を更に備えてもよい。このようにすることにより、車椅子100等の個体差による凹凸に関する情報の誤差を少なくすることができる。
【0088】
また、車椅子100から、位置情報、垂直加速度データ、走行速度に関する情報を受信する通信機51を備えるサーバ装置50でキャリブレーションを行ってもよい。このようにすることにより、例えば車椅子100では、凹凸の度合いを示す情報を生成するためのデータのみを取得し、サーバ装置50により集中的に凹凸の度合いを示す情報を生成してバリアフリーマップ等への反映を行うことができる。また、車椅子100側の装置構成を簡便にすることができ、小型化や省電力化を図ることが容易となる。
【0089】
なお、上述した
図11〜
図14の形態は、例えば、演算装置1と演算装置52とで対数演算部、補正部、キャリブレーション部、凹凸判定部を有するようにしておき、
図3、
図4の構成、
図11の構成及び
図13の構成のいずれかを任意に選択できるようにしてもよい。
【0090】
なお、上述した実施例では、情報生成装置として車椅子100に搭載される演算装置1で説明したが、専用の装置でなくてもよく、例えば、GPS受信機、加速度センサおよび、速度センサを搭載した(又は接続可能な)スマートフォン等の通信機能を持った端末機器であれば、上述したフローチャートをアプリ(コンピュータプログラム)とすることで、情報生成装置として機能させることができる。この場合は、車椅子にホルダ等を設け、そのホルダにスマートフォン等を取り付ければよい。即ち、移動体に着脱自在な情報生成装置となる。
【0091】
また、上述した実施例では、移動体として車椅子で説明したが、シニアカー、ベビーカー、ゴルフカート、自転車、自動車、台車、車輪を有するロボット等、走行路面上を走行するための車輪を備えるものであればよい。
【0092】
また、本発明は上記実施例に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の情報生成装置の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。