(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1による流体注入治具を示す正面図であり、
図2は
図1の流体注入治具を示す側面図であり、
図3は
図1の流体注入治具を示す平面図である。本実施の形態の流体注入治具は、例えば高圧水等の流体を拡張型鋼管杭に注入するための治具である。周知のように、拡張型鋼管杭は拡張溝を有する鋼管杭の両端を封止したものであり、拡張型鋼管杭に流体が注入されることで拡張溝が拡げられて拡張型鋼管杭が径方向に拡張される。拡張型鋼管杭を地盤に圧入した後に、その拡張型鋼管杭を拡張することで地盤補強を行うことができる。ここでいう圧入とは、静荷重及び動荷重の少なくとも一方からなる圧力を拡張型鋼管杭に加えて拡張型鋼管杭を地盤に押し入れることを意味する。静荷重のみで拡張型鋼管杭を地盤に押し入れることもでき、静荷重を拡張型鋼管杭に加えつつ、打撃による動荷重を拡張型鋼管杭に加えて、拡張型鋼管杭を地盤に押し入れることもできる。
【0011】
図1〜
図3に示すように、流体注入治具には、注入ヘッド1、軸体2、ブラケット3、取手4、操作弁5及びホース6が設けられている。
【0012】
注入ヘッド1は、拡張型鋼管杭に流体を注入する際に拡張型鋼管杭の杭頭スリーブに取り付けられるものである。拡張型鋼管杭の杭頭スリーブ及び注入ヘッド1の構造については後に図を用いて説明する。
【0013】
注入ヘッド1の上部には、軸体2の一端2aが取り付けられている。軸体2は中空又は中実の1本の長手状の部材により構成されており、軸体2の長手方向2bは注入ヘッド1への杭頭スリーブの挿入方向と一致されている。
【0014】
軸体2の他端2cには、ブラケット3の一端3aを介して取手4が取り付けられている。取手4は、杭頭スリーブに注入ヘッド1を取り付ける際に作業者によって把持されるものである。
【0015】
ブラケット3は、断面クランク形状の部材である。ブラケット3の他端3bには、取手4の近傍に操作弁5が位置するように操作弁5が取り付けられている。すなわち、本実施の形態では、取手4及び操作弁5が、長手状の軸体2を介して注入ヘッド1に接続されており、軸体2の長手方向2bに沿って注入ヘッド1から離れた位置に配置されている。このため、拡張型鋼管杭の杭頭スリーブが地中に位置されているときでも、容易に地中の杭頭スリーブに注入ヘッド1を取り付けて操作弁5を操作することができる。
【0016】
なお、軸体2は、長手状の軸本体20と、軸体2の一端2aを構成する下部固定部21と、軸体2の他端2cを構成する上部固定部22とを有している。下部固定部21は締結部材により注入ヘッド1に締結され、上部固定部22は締結部材によりブラケット3及び取手4に締結されている。軸本体20は、端部に設けられたネジにより下部固定部21及び上部固定部22に着脱可能に取り付けられている。軸体2は、軸本体20を他の長さの軸本体20に取り換えることで長さが調節可能に構成されている。軸体2の長さを調節可能に設けることで、後述のホース6の張り及び弛みを調整でき、細い穴の奥に拡張型鋼管杭の杭頭スリーブが位置する場合でも細い穴の壁とホース6との干渉を避けることができる。なお、ホース6を軸本体20の長さに応じたものに取り換えることもできる。このようにホース6を取り換え可能とすることによっても、細い穴の奥に拡張型鋼管杭の杭頭スリーブが位置する場合でも細い穴の壁とホース6との干渉を避けることができる。
【0017】
操作弁5は、入力端5a、出力端5b、開放端5c及び操作ハンドル5dを有する三方弁により構成されるものであり、作業者による操作ハンドル5dの操作に応じて出力端5bの連通先を入力端5aと開放端5cとの間で切り替えることができるように設けられている。
【0018】
入力端5aには図示しない流体供給装置が接続され、出力端5bにはホース6を介して注入ヘッド1が接続されている。開放端5cは、大気に開放されている。入力端5aが出力端5bに連通されているとき、流体供給装置からの流体が操作弁5、ホース6及び注入ヘッド1を通して拡張型鋼管杭に注入され得る。これに対して、開放端5cが出力端5bに連通されているとき、注入ヘッド1内が大気に開放される。例えば拡張型鋼管杭に流体を注入した後に拡張型鋼管杭の杭頭スリーブから注入ヘッド1を取り外すとき等に、開放端5cが出力端5bに連通される。
【0019】
ホース6は操作弁5に対して固定されていてもよいが、例えばホースジョイントを介して操作弁5の出力端5bにホース6を接続する等して、ホース6が操作弁5に回動自在に接続されていてもよい。ホース6が操作弁5に回動自在に接続されていることで、細い穴の奥に拡張型鋼管杭の杭頭スリーブが位置する場合でも細い穴の壁とホース6との干渉を避けることができる。
【0020】
次に、
図4は、
図1の注入ヘッド1が取り付けられる杭頭スリーブ7を示す正面図である。
図4に示すように、杭頭スリーブ7は頂壁70を有する筒状体により構成されている。杭頭スリーブ7の周壁71には、周方向に延在された溝部72が設けられている。溝部72には、拡張型鋼管杭の内部に連通された注入口73が設けられている。注入ヘッド1から供給される流体は、注入口73を通して拡張型鋼管杭の内部に注入される。
【0021】
次に、
図5は
図1の注入ヘッド1の断面図である。注入ヘッド1には、円筒状ハウジング10、上蓋体11、第1環状パッキン12、スペーサリング13及び第2環状パッキン14が設けられている。
【0022】
円筒状ハウジング10は、注入ヘッド1の外周壁を構成する筒状体である。円筒状ハウジング10には、ハウジング本体100と突壁部101とが設けられている。ハウジング本体100は円筒状に形成されており、ホース6が接続されるホース接続口100aがハウジング本体100の側部に設けられている。突壁部101は、ハウジング本体100の先端部から径方向内方に突出された環状壁である。突壁部101の先端は、円筒状ハウジング10の先端開口を区画している。杭頭スリーブ7は先端開口を通って注入ヘッド1内に挿入される。
【0023】
上蓋体11は、円筒部110とフランジ部111と有する部材である。円筒部110は、円筒状ハウジング10の後端開口から円筒状ハウジング10の内部に挿入されている。フランジ部111は、円筒状ハウジング10の後端に当接されている。
【0024】
第1環状パッキン12、スペーサリング13及び第2環状パッキン14は、円筒状ハウジング10の突壁部101と上蓋体11の円筒部110との間に挟み込まれている。スペーサリング13は、注入ヘッド1内に挿入された杭頭スリーブ7の溝部72に対向するように配置されている。第1及び第2環状パッキン12,14は、スペーサリング13を挟むように配置されており、注入ヘッド1内に挿入された杭頭スリーブ7の溝部72の両側において杭頭スリーブ7の周壁71に密接されるように配置されている。
【0025】
スペーサリング13には、スペーサリング13の周方向に互いに間隔をおいて複数の吐出穴130が設けられている。吐出穴130の間隔は、等間隔であることが好ましい。スペーサリング13の裏面と円筒状ハウジング10の内周面との間には、ホース接続口100aに連通された環状の空隙部131が設けられている。ホース6を通して注入ヘッド1に供給された流体は、空隙部131に満たされるとともに吐出穴130から吐出される。杭頭スリーブ7が注入ヘッド1内に挿入されているとき、吐出穴130から吐出された流体が杭頭スリーブ7の注入口73を通して拡張型鋼管杭の内部に注入される。
【0026】
スペーサリング13の吐出穴130の数は、2個以上かつ12個以下であることが好ましい。
【0027】
吐出穴130の数が1個である場合、吐出穴130から吐出される流体の勢いが強くなりすぎて、注入ヘッド1に杭頭スリーブ7が挿入されていないときに吐出された流体により第1及び第2環状パッキン12,14が所定位置から飛び出てしまうことがある。すなわち、吐出穴130の数を2個以上とすることで、吐出穴130から吐出される流体の勢いを抑え、注入ヘッド1に杭頭スリーブ7が挿入されていないときに吐出された流体により第1及び第2環状パッキン12,14が所定位置から飛び出てしまうこと回避することができる。
【0028】
吐出穴130の数が13個以上の場合、吐出穴130の間の間隔が狭くなりすぎて、スペーサリング13の強度が低くなることが考えられる。また、13個以上の吐出穴130が設けられても、12個の吐出穴130が設けられた場合と比較して吐出穴130から吐出される流体の勢いが同程度となる。すなわち、吐出される流体の勢いを抑える効果は、吐出穴130の数を12個とした場合に飽和してしまう。このため、吐出穴130の数は12個以下であることが好ましい。
【0029】
特に、吐出穴130の数を8個以上とすることで、スペーサリング13のほぼ全周から流体を吐出させることができる。注入ヘッド1に杭頭スリーブ7が挿入されていないときにスペーサリング13のほぼ全周から流体を吐出させることで、注入ヘッド1内を効果的に洗浄することができる。また、スペーサリング13からの流体の吐出は杭頭スリーブ7の洗浄にも利用できる。なお、スペーサリング13は、外径を54.5mmとし、周長を172mmとすることができる。このスペーサリング13に8個の吐出孔130を設ける場合、φ2.5mmの吐出孔130を約20mm間隔で設けることができる。
【0030】
このような流体注入治具では、取手4及び操作弁5が、長手状の軸体2を介して注入ヘッド1に接続されており、軸体2の長手方向2bに沿って注入ヘッド1から離れた位置に配置されているので、より容易に地中の杭頭スリーブ7に注入ヘッド1を取り付けて操作弁5を操作することができる。
【0031】
また、軸体2を伸縮可能に設けることで、ホース6の張り及び弛みを調整でき、細い穴の奥に拡張型鋼管杭の杭頭スリーブが位置する場合でも細い穴の壁とホース6との干渉を避けることができる。
【0032】
さらに、ホース6を操作弁5に回動自在に接続することで、細い穴の奥に拡張型鋼管杭の杭頭スリーブが位置する場合でも細い穴の壁とホース6との干渉を避けることができる。
【0033】
また、注入ヘッド1のスペーサリング13に設けられる吐出穴130の数が2個以上かつ12個以下とされるので、注入ヘッド1に杭頭スリーブ7が挿入されていないときに吐出された流体により第1及び第2環状パッキン12,14が所定位置から飛び出てしまうこと回避しつつ、注入ヘッド1の強度が低下することを避けることができる。
【0034】
実施の形態2.
図6は、本発明の実施の形態2による流体注入治具を示す正面図である。
図6に示すように、操作弁5の入力端5aには圧力計8が接続されていてもよい。圧力計8は、図示しない流体供給装置から操作弁5を通して拡張型鋼管杭に供給される流体の圧力を計る。
【0035】
拡張型鋼管杭に流体が供給され始めると、拡張型鋼管杭内の空気を追い出すか又は圧縮しながら拡張型鋼管杭に流体が徐々に溜まる。拡張型鋼管杭内が流体で満たされると、流体の圧力により拡張型鋼管杭が拡張され始める。圧力計8の計測値は、拡張型鋼管杭に流体が徐々に溜まる際に上昇する。また、圧力計8の計測値は、拡張型鋼管杭の拡張中に一定値を示す。さらに、圧力計8の計測値は、拡張型鋼管杭が最大限に拡張された際に所定値まで上昇する。流体供給装置は、流体供給装置の2次側吐出圧力が予め設定した値に達すると流体の供給を停止するように構成されている。しかしながら、作業者が手元に配置された圧力計8の計測値を監視することで、地盤中の拡張型鋼管杭の拡張具合を把握することができ、地中での拡張型鋼管杭の拡張不足をより確実に回避することができる。
【0036】
また、実施の形態1では操作弁5が取手4の上方に位置するように配置されるように説明したが、
図6に示すように操作弁5が取手4の下方に位置するように配置されていてもよい。その他の構成は、実施の形態1と同じである。
【0037】
このような流体注入治具では、操作弁5に圧力計8が接続されているので、地盤中の拡張型鋼管杭の拡張具合を把握することができ、地中での拡張型鋼管杭の拡張不足を回避することができる。
【0038】
なお、実施の形態1及び2では、軸本体20を他の長さの軸本体20に取り換えることで軸体2の長さが調節可能に構成されているように説明したが、例えば同軸に配置された複数の筒体からなる多重筒(テレスコピック)等により軸体2を構成することによって軸体2を伸縮自在として、伸縮により軸体2の長さが調節可能とされてもよい。
【0039】
また、図示しない流体供給装置の1次側(低圧)または2次側(高圧)には、図示しない積算流量計が接続されていてもよい。この積算流量計により、拡張型鋼管杭にどの程度の流体を注入したか、すなわち地盤中の拡張型鋼管杭の拡張具合を把握することができ、地中での拡張型鋼管杭の拡張不足を回避することができる。