【0010】
軽焼マグネシアは、例えば、炭酸マグネシウムを主成分とする固形原料を650〜1,200℃で焼成することで得ることができる。
炭酸マグネシウムを主成分とする固形原料としては、例えば、マグネサイト、ドロマイト等の鉱物や、マグネシウム塩を含む海水等に、炭酸アルカリを加えることで得られる塊状物または粉粒状物等が挙げられる。
固形原料中の炭酸マグネシウムの含有率は、より多くの軽焼マグネシアを得る観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
また、焼成温度は、好ましくは650〜1,200℃、より好ましくは750〜1,100℃、特に好ましくは800〜1,000℃である。該温度が650℃以上であれば、軽焼マグネシアの生成の効率が向上する。該温度が1,200℃以下であれば、重金属等の溶出をより抑制することができる。
焼成時間は、固形原料の仕込み量や粒度等によって異なるが、通常、30分間〜5時間である。
【0014】
本発明の不溶化材、または、不溶化混合物(以下、「不溶化材等」ともいう。)を、不溶化処理の対象となる土壌(重金属等で汚染された土壌)に、添加し、混合することで、土壌中の重金属等を不溶化して、重金属等の溶出を抑制することができる。
本発明において、不溶化の対象となる重金属等とは、例えば、ひ素、鉛、セレン、カドミウム、水銀、シアン、六価クロム、ふっ素、および、ほう素からなる群より選ばれる一種以上である。
土壌1m
3に対する不溶化材等の添加量は、対象となる土壌の性状、施工条件、不溶化処理後の土壌に求められる重金属等の溶出量の上限値(基準値)等によっても異なるが、好ましくは20〜300kg、より好ましくは25〜200kg、特に好ましくは30〜150kgである。該量が20kg以上であれば、重金属等の溶出をより抑制することができる。該量が300kg以下であれば、コストの増大を防ぐことができる。
不溶化材等の添加および混合方法としては、対象となる土壌に不溶化材等を粉体のまま添加し、混合するドライ添加や、不溶化材に水を加えてスラリーとし、該スラリーを添加し、混合するスラリー添加が挙げられる。スラリー添加の場合の水/不溶化材の質量比は、好ましくは0.6〜1.5、より好ましくは0.8〜1.2である。
【実施例】
【0015】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
(1)軽焼マグネシアa:マグネサイト(炭酸マグネシウムの含有率:93質量%)を、1,000℃で焼成した後、得られた軽焼マグネシアを粉砕したもの(ブレーン比表面積:6,120cm
2/g)
(2)軽焼マグネシアb:天然の軽焼マグネシアを粉砕したもの(ブレーン比表面積:
6,300cm
2/g)
(3)軽焼マグネシアc:マグネサイト(炭酸マグネシウムの含有率:94質量%)を、950℃で焼成した後、得られた軽焼マグネシアを粉砕したもの(ブレーン比表面積:5,970cm
2/g)
(4)土壌A〜H:重金属等を含む土壌(各土壌に含まれる重金属等の種類や、溶出量等の詳細は表1に記載した。)
【0016】
【表1】
【0017】
[不溶化材A〜E及び不溶化混合物A〜Hの調製]
以下の不溶化材A〜E、及び、不溶化混合物A〜Hを調製した。
(1)不溶化材A:軽焼マグネシアaのみからなるもの
(2)不溶化材B:軽焼マグネシアaと軽焼マグネシアbを、不溶化材B中、軽焼マグネシアaの含有率が69質量%、軽焼マグネシアbの含有率が31質量%となるように、混合したもの
(3)不溶化材C:軽焼マグネシアaと軽焼マグネシアbを、不溶化材C中、軽焼マグネシアaの含有率が35質量%、軽焼マグネシアbの含有率が65質量%となるように、混合したもの
(4)不溶化材D:軽焼マグネシアbのみからなるもの
(5)不溶化材E:軽焼マグネシアcのみからなるもの
【0018】
(6)不溶化混合物A:軽焼マグネシアa100質量部に対して、表2に示す量の炭酸カルシウム(石灰石粉末、ブレーン比表面積:4,000cm
2/g、炭酸カルシウムの含有率:98.4質量%、有燐興業社製)を添加し混合したもの
(7)不溶化混合物B:軽焼マグネシアa100質量部に対して、表2に示す量の高炉スラグ微粉末(ブレーン比表面積:4,140cm
2/g、デイ・シイ社製)を添加し混合したもの
(8)不溶化混合物C:軽焼マグネシアa100質量部に対して、表2に示す量の水酸化マグネシウム(関東化学社製、鹿1級)を添加し混合したもの
(9)不溶化混合物D:軽焼マグネシアa100質量部に対して、表2に示す量のリン酸水素カルシウム2水和物(第二リン酸カルシウム、関東化学社製、鹿特級)を添加し混合したもの
(10)不溶化混合物E:軽焼マグネシアa100質量部に対して、表2に示す量の硫酸カルシウム(ブレーン比表面積:4,440cm
2/g、タイ産無水石膏、太平洋セメント社製)を添加し混合したもの
(11)不溶化混合物F:軽焼マグネシアa100質量部に対して、表2に示す量のゼオライト(奥多摩工業社製、商品名「タマライト」)を添加し混合したもの
(12)不溶化混合物G:軽焼マグネシアa100質量部に対して、表2に示す量の硫酸第一鉄(国産化学社製、食品添加物)を添加し混合したもの
(13)不溶化混合物H:軽焼マグネシアa100質量部に対して、表2に示す量の硫酸アルミニウム14〜18水和物(関東化学社製、鹿特級)を添加し混合したもの
【0019】
不溶化材A〜E及び不溶化混合物A〜H中、フォルステライト及びふっ素の含有率を表2に示す。
なお、フォルステライトは、粉末X線回折装置を用いた検量線法によって測定した。また、ふっ素(全含有量)は、特開2010−44034号公報に記載の方法(具体的には、測定対象物に、反応促進剤であるWO
3微粉末を混合して加熱するにあたり、キャリアーガスとして非加湿の空気を用いて1,050℃で加熱し、発生したフッ化物を、吸収液である酢酸ナトリウム水溶液に捕集し、この水溶液中のふっ素の量を、イオンクロマトグラフ法で定量する方法)に準拠して測定した。
【0020】
【表2】
【0021】
[実施例1]
表3に示す土壌1m
3と、表3に示す添加量の不溶化材を、ホバートミキサを用いて3分間混合した。得られた混合物を20℃の条件下で、7日間封緘養生を行った。養生後、環境省告示第18号に準拠して、使用した土壌に含まれる重金属等(ふっ素)の溶出試験を行い、重金属等(ふっ素)の溶出量を測定した。
また、重金属等(ふっ素)溶出量測定用検液のpHを、pHメーター(堀場製作所社製、商品名「F−52」)およびpH電極(堀場製作所社製、商品名「9615−10D」)を用いて測定した。
【0022】
[実施例2〜3、比較例1〜2]
実施例1と同様にして、各土壌に含まれる重金属等の溶出量、及び、重金属等溶出量測定用検液のpHを測定した。
[実施例4〜11]
不溶化材の代わりに表3に示す不溶化混合物を使用する以外は、実施例1と同様にして、各土壌に含まれる重金属等の溶出量、及び、重金属等溶出量測定用検液のpHを測定した。
結果を表3に示す。
なお、六価クロムを含む土壌については、実験を行わなかった。
【0023】
【表3】
【0024】
表3から、本発明の不溶化材(実施例1〜3)および不溶化混合物(実施例4〜11)によれば、土壌の重金属等の溶出量を環境基準値以下に抑えうることがわかる。特に、実施例1〜3から、不溶化材の全量100質量%中のフォルステライトの含有率が小さいほど、土壌の重金属等の溶出量が小さくなることがわかる。
一方、比較例1〜2の不溶化材によれば、土壌の重金属等の溶出量が環境基準値を超えることがわかる。