特許第6656917号(P6656917)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6656917
(24)【登録日】2020年2月7日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】インキ補充器具
(51)【国際特許分類】
   B43K 11/00 20060101AFI20200220BHJP
   B43K 8/02 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
   B43K11/00 100
   B43K8/02
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-255468(P2015-255468)
(22)【出願日】2015年12月26日
(65)【公開番号】特開2017-114100(P2017-114100A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】栗田 哲宏
【審査官】 藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭34−011932(JP,Y1)
【文献】 実開昭51−150727(JP,U)
【文献】 実開昭52−015947(JP,U)
【文献】 実公昭08−009308(JP,Y1)
【文献】 米国特許第04614163(US,A)
【文献】 特開2008−023755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00− 1/12
B43K 5/00−19/18
B43L 1/00−12/02
B43L 15/00−27/04
B65D 1/00− 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキを含浸状態に保持可能なペン先と、
先端部において前記ペン先を突出状態に保持する軸筒部材と、
前記軸筒部材内に設けられ、前記ペン先との間でインキ流通可能なインキ保持体と、
を有するインキペンに対してインキを補充するためのインキ補充器具であって、
インキが液体状態で貯留される空間を提供するインキ容器本体部と、
前記空間に連通すると共に当該空間の外側に延出する一方で当該空間の内側には延出しないインキ連通路を形成する管状インキ連通部材と、
前記管状インキ連通部材の延出側端部を覆うように設けられた中詰部材と、
前記中詰部材を覆うと共にペン先用開口部を有する被覆部と、
前記ペン先用開口部を開閉可能に塞ぐキャップ部材と、
を備えたことを特徴とするインキ補充器具。
【請求項2】
前記管状インキ連通部材の延出側端部の近傍に、空気進入促進孔が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のインキ補充器具。
【請求項3】
前記インキ容器本体部は、平坦面によって支持可能な底部を有しており、
前記管状インキ連通部材は、前記インキ容器本体部の上面側から前記底部に対して略垂直な方向に延出するように設けられており、
前記ペン先用開口部は、前記管状インキ連通部材の延出側端部の更に上方側に位置している
ことを特徴とする請求項1または2に記載のインキ補充器具。
【請求項4】
前記ペン先用開口部は、前記管状インキ連通部材の延出側端部の上方側0.3cm〜2.0cmの範囲の高さに位置している
ことを特徴とする請求項に記載のインキ補充器具。
【請求項5】
前記管状インキ連通部材は、1mm〜7mmの範囲の内径を有している
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のインキ補充器具。
【請求項6】
前記管状インキ連通部材は、複数本が互いに略平行に設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のインキ補充器具。
【請求項7】
インキを含浸状態に保持可能なペン先と、
先端部において前記ペン先を突出状態に保持する軸筒部材と、
前記軸筒部材内に設けられ、前記ペン先との間でインキ流通可能なインキ保持体と、
を有するインキペンに対してインキを補充するためのインキ補充器具であって、
インキが液体状態で貯留される空間を提供するインキ容器本体部と、
前記空間に連通すると共に当該空間の外側に延出するインキ連通路を形成する管状インキ連通部材と、
前記管状インキ連通部材の延出側端部を覆うように設けられた中詰部材と、
前記中詰部材を覆うと共にペン先用開口部を有する被覆部と、
前記ペン先用開口部を開閉可能に塞ぐキャップ部材と、
を備え、
前記被覆部は、前記インキ容器本体部の上面側に固定されており、
前記キャップ部材は、前記被覆部に対して螺合されるようになっている
ことを特徴とするインキ補充器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インキを含浸状態に保持可能なペン先と、先端部において前記ペン先を突出状態に保持する軸筒部材と、前記軸筒部材内に設けられ、前記ペン先との間でインキ流通可能なインキ保持体と、を有するインキペンに対してインキを補充するためのインキ補充器具に関している。
【背景技術】
【0002】
インキを含浸状態に保持可能なペン先と、先端部において前記ペン先を突出状態に保持する軸筒部材と、前記軸筒部材内に設けられ前記ペン先との間でインキ流通可能なインキ保持体と、を有するインキペンは、従来からよく知られている。例えば、インキとして油性インキを採用し、低コストでの商品化を実現したものが複数ある。
【0003】
このようなインキペンは、廉価であるので、使い捨てされることが一般的である。しかしながら、環境保護(省資源)に対する消費者の意識の高まりを受けて、インキ補充についての検討がなされてきた。
【0004】
従来のインキ補充器具の典型例が、特許文献1に記載されている。特許文献1の図1を、図6として引用する。特許文献1に記載されている通り、従来は、インキ補充用具が略水平面上に載置され、インキペン(マーキングペン)のペン先が鉛直下方向きの姿勢でインキ補充体に対して挿入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4848544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたインキ補充器具では、補充されるインキは、重力に対抗しながら補充されていく。従って、インキ補充の速度が遅い。このようなインキ補充形式を、倒立インキ補充形式と呼ぶことにする。
【0007】
本件発明者は、実際に、注入量1.4gの細身丸芯タイプの市販のインキペンについて、78%のインキ(1.09g)を消費した後、倒立インキ補充形式によるインキ補充量を測定した。この結果、10分後:6%(0.08g)、1時間後:19%(0.26g)、2時間後:25%(0.36g)、12時間後:28%(0.39g)、という結果であった。
【0008】
本発明は、以上のような知見に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、インキ補充時間を短縮化することができるインキ補充器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、インキを含浸状態に保持可能なペン先と、先端部において前記ペン先を突出状態に保持する軸筒部材と、前記軸筒部材内に設けられ、前記ペン先との間でインキ流通可能なインキ保持体と、を有するインキペンに対してインキを補充するためのインキ補充器具であって、インキが液体状態で貯留される空間を提供するインキ容器本体部と、前記空間に連通すると共に当該空間の外側に延出する一方で当該空間の内側には延出しないインキ連通路を形成する管状インキ連通部材と、前記管状インキ連通部材の延出側端部を覆うように設けられた中詰部材と、前記中詰部材を覆うと共にペン先用開口部を有する被覆部と、前記ペン先用開口部を開閉可能に塞ぐキャップ部材と、を備えたことを特徴とするインキ補充器具である。
【0010】
本発明のインキ補充器具は、インキペンのペン先を鉛直上方向きの姿勢としてインキ補充することが予定されている。このような姿勢で補充されるインキは、重力に応援されながら補充されていくため、インキ補充の速度が高い(速い)。このようなインキ補充形式を、正立インキ補充形式と呼ぶことにする。また、本発明によれば、管状インキ連通部材がインキを高効率にインキ容器本体部から中詰部材へと移動させることによっても、インキ補充の速度が高められている。
【0011】
更に、本発明によれば、中詰部材の密度を調整しておくことによって、インキペンのペン先を鉛直上方向きの姿勢としてペン先用開口部に挿入させた状態でも、中詰部材からインキが漏れ出てしまうことを容易に回避できる。具体的には、管状インキ連通部材の延出側端部の近傍領域において中詰部材の密度を高めておくことが好ましい。そのような局所的な密度調整は、例えば、均一な密度の中詰部材に対して管状インキ連通部材を押し込み、中詰部材を局所的に押圧圧縮することで得られる。管状インキ連通部材の延出側端部の近傍領域において中詰部材の密度が高い領域にインキが滞留すると、管状インキ連通部材の連通作用が阻害され、すなわち、インキの移動が滞る。このことにより、インキが漏れ出ることが抑制される。
【0012】
また、インキペンのペン先を鉛直上方向きの姿勢としてペン先用開口部に挿入させたインキ補充状態について、当該ペン先用開口部と管状インキ連通部材の延出側端部との位置関係を予め調整しておくことで、より一層好適なインキ補充状態を実現することができる。
【0013】
具体的な形態としては、前記インキ容器本体部は、平坦面によって支持可能な底部を有しており、前記管状インキ連通部材は、前記インキ容器本体部の上面側から前記底部に対して略垂直な方向に延出するように設けられており、前記ペン先用開口部は、前記管状インキ連通部材の延出側端部の更に上方側に位置していることが好ましい。
このような形態の場合、インキペンのペン先を鉛直上方向きの姿勢としてペン先用開口部に挿入させたインキ補充状態において、管状インキ連通部材が略鉛直姿勢となり且つペン先用開口部が管状インキ連通部材の延出側端部の下方側に位置することになるため、より一層好適なインキ補充状態を実現することができる。
前記ペン先用開口部は、前記管状インキ連通部材の延出側端部の上方側0.3cm〜2.0cmの範囲の高さに位置していることが、特に好ましい。
【0014】
また、インキ補充時に、中詰部材からペン先用開口部を介してインキが落下する(「ボタ落ちする」という)ことが無いよう、管状インキ連通部材の内径は、1mm〜7mmの範囲から選択されることが好ましい。また、管状インキ連通部材の断面形状を、円形でなく、楕円、多角形、十字等とすることもできる。この場合、断面積が0.7〜40mmの範囲から選択されることが好ましい。
【0015】
更に、インキ補充時に、インキと空気との置換作用を効果的に促すべく、管状インキ連通部材は、複数本が互いに略平行に設けられていることが好ましい。2本の管状インキ連通部材を設けた場合において、1本がインキ供給を担っている状態であれば、他の1本は空気経路として機能することが、本件発明者による実験結果から知見されている。
【0016】
なお、中詰部材は、例えば中綿(繊維束)によって構成されている。あるいは、インキを含浸可能な連続気孔を有する部材(即ち多孔質材料)からなるもの、例えば、繊維束の熱融着加工体、繊維束の樹脂加工体、フェルトの樹脂加工体、フェルトのニードルパンチ加工体、合成樹脂の連続気泡体等が挙げられる。また、前記中詰部材は、その外周面に合成樹脂フィルム等よりなる外皮を備える構成でもよい。これらの中詰部材は、インキを含浸するとともに、ペン先や管状インキ連通部材が挿入された箇所の先端近傍が高密度になる材質である。
【0017】
また、更に具体的な形態として、前記被覆部は、前記インキ容器本体部の上面側に固定されており、前記キャップ部材は、前記インキ容器本体部または前記被覆部に対して螺合されるようになっていることが好ましい。螺合という結合形態を採用することは、インキの揮発等を防ぐためにも有効である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、インキペンのペン先を鉛直上方向きの姿勢としてインキ補充されるため、インキ補充の速度が高い(速い)。特に本発明によれば、管状インキ連通部材がインキを高効率にインキ容器本体部から中詰部材へと移動させることによっても、インキ補充の速度が高められている。
更に、本発明によれば、中詰部材の密度を調整しておくことによって、インキペンのペン先を鉛直上方向きの姿勢としてペン先用開口部に挿入させた状態でも、中詰部材からインキが漏れ出てしまうことを容易に回避できる。具体的には、管状インキ連通部材の延出側端部の近傍領域において中詰部材の密度を高めておくことが好ましい。そのような局所的な密度調整は、例えば、均一な密度の中詰部材に対して管状インキ連通部材を押し込み、中詰部材を局所的に押圧圧縮することで得られる。管状インキ連通部材の延出側端部の近傍領域において中詰部材の密度が高い領域にインキが滞留すると、管状インキ連通部材の連通作用が阻害され、すなわち、インキの移動が滞る。このことにより、インキが漏れ出ることが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施の形態におけるインキ補充器具の概略断面図である。
図2図1のインキ補充器具の要部拡大図である。
図3図1のインキ補充器具を用いて正立インキ補充形式によるインキ補充を実施している時の状態を示す概略断面図である。
図4】本発明の第2の実施の形態におけるインキ補充器具の概略断面図である。
図5図4のインキ補充器具を用いて正立インキ補充形式によるインキ補充を実施している時の状態を示す概略断面図である。
図6】従来のインキ補充器具の典型例を示す概略図(特許文献1の図1)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施の形態におけるインキ補充器具の概略断面図であり、図2は、図1のインキ補充器具の要部拡大図であり、図3は、図1のインキ補充器具を用いて正立インキ補充形式によるインキ補充を実施している時の状態を示す概略断面図である。
図1乃至図3に示すように、本実施の形態におけるインキ補充器具10は、インキを含浸状態に保持可能なペン先21と、先端部においてペン先21を突出状態に保持する軸筒部材22と、軸筒部材22内に設けられペン先21との間でインキ流通可能なインキ保持体23と、を有するインキペン20に対してインキを補充するためのインキ補充器具である。
【0021】
本実施の形態におけるインキ補充器具10は、インキが液体状態で貯留されるインキ容器本体部11と、インキ容器本体部11から延出するように設けられた2本の管状インキ連通部材12と、管状インキ連通部材12の延出側端部12eを覆うように設けられた中詰部材13と、中詰部材13を覆うと共にペン先用開口部14rを有する被覆部14と、ペン先用開口部14rを開閉可能に塞ぐキャップ部材40と、を備えている。
【0022】
インキ容器本体部11は、平坦面によって支持可能な円環状の底部11cを有しており、インキ連通部材12は、インキ容器本体部11の上面側から底部11cに対して略垂直な方向に延出するように設けられている。ペン先用開口部14rは、管状インキ連通部材12の延出側端部12eの更に上方側に位置している。
【0023】
本実施の形態では、ペン先用開口部14rは、管状インキ連通部材12の延出側端部12eの上方側0.8cmの高さに位置している。もっとも、本件発明者による知見によれば、ペン先用開口部14rの好ましい位置は、管状インキ連通部材12の延出側端部12eの上方側0.3〜2.0cmの範囲の高さであればよい。
【0024】
また、本実施の形態では、管状インキ連通部材12の内径は、各2.5mmである。もっとも、本件発明者による知見によれば、インキ補充時に中詰部材13からペン先用開口部14rを介してインキが落下する(ボタ落ちする)ことが無いためには、管状インキ連通部材12の内径は、1mm〜7mmの範囲から選択されればよい。
【0025】
また、本実施の形態では、管状インキ連通部材12の長さは、各15mmである。また、本実施の形態では、管状インキ連通部材12は2本であって、互いに略平行に、軸線に対して略対称に9mmの間隔を空けて設けられている。このような実施の形態によれば、インキと空気との置換作用がより効果的に促される。1本の管状インキ連通部材12がインキ供給を担っている状態であれば、他の1本の管状インキ連通部材12が空気進入経路として機能することが、本件発明者による実験結果から知見されている。
【0026】
また、本実施の形態の中詰部材13は、略円筒形状の中綿であり、被覆部14は、中詰部材13の側方を取り囲む側方被覆部14sと、中詰部材13の下方を覆う下被覆部14bと、中詰部材13の上方を覆う上被覆部14uと、を有している。ペン先用開口部14rは、上被覆部14uに設けられている。側方被覆部14sと下被覆部14bとは、本実施の形態では、管状インキ連通部材12の下端部と一体化されている。そして、側方被覆部14sと上被覆部14uとが、インキ容器本体部11の上面側の筒状部11aに固定されており、キャップ部材40は、インキ容器本体部11の当該筒状部11aの外面側に対して螺合される螺合部40cを有している。
【0027】
一方、キャップ部材40は、上面側に設けられインキペン20の後端側24が嵌入される保持穴44と、保持穴44と対向する下面側に設けられ平坦面によって支持可能な底部40bと、を有しており、キャップ部材40が底部40bによって略水平面上に載置される時、保持穴44に後端側24が嵌入されるインキペン20は略鉛直姿勢に維持されるようになっている(図3参照)。
【0028】
そして、図1乃至図3に示すように、インキ容器本体部11は、略軸対称の外観形状を有しており、キャップ部材40も、略軸対称の外観形状を有しており、キャップ部材40が底部40bによって略水平面上に載置され、インキペン20の後端側24が保持穴44に嵌入されると共に当該インキペン20のペン先21がインキ容器本体部10(インキ補充本体部)のペン先用開口部14rに受容される時(図3参照)、インキ容器本体部10とキャップ部材40とは、互いに同心状の位置関係となるようになっている。
インキ容器本体部11は、上方の小径の筒状部11aと、下方の大径の略円筒部11bと、両者の間のテーパ状の推移部11tと、を有しており、略円筒部11bの最大直径は、70mmであり、インキ容器本体部11の高さは、64mmである。
【0029】
キャップ部材40は、螺合部40cの外側にスカート部40sを有していて、当該スカート部40sは、保持穴44の上端縁から下方にラッパ状(大まかには切頭円錐形状)に大径になっていき底部40bに至っている。本実施の形態では、保持穴44は円筒状であり、底部40bは平面視において円形であり、底部40bの直径は68mmであり、保持穴44の直径は15mmである。このように、本件発明者の知見によれば、底部40bの直径が保持穴44の直径の3倍以上であることが好ましい。更に、底部40bから保持穴44の底面までの高さは44mmである。このように、本件発明者の知見によれば、底部40bから保持穴44の底面までの高さが底部40bの直径よりも大きいことが好ましい。また、保持穴44の深さは、16mmである。このように、本件発明者の知見によれば、保持穴44の深さが保持穴44の直径よりも大きいことが好ましい。なお、円形が採用されない場合においても、本件発明者の知見によれば、底部40bの平面視での面積が保持穴44の断面面積の9倍以上であれば、正立インキ補充形式によるインキ補充時の安定性が高くて好ましい。
その他、キャップ部材40は、10gの重量を有しており、インキ容器本体部11は、60gのインキを含めて、80gの重量を有している。
【0030】
さて、図3に示すように、本実施の形態のインキ補充器具10は、インキペン20のペン先21を鉛直上方向きの姿勢としてインキ補充することが予定されている。このような姿勢で補充されるインキは、重力に応援されながら補充されていくため、インキ補充の速度が高い(速い)。
また、本実施の形態によれば、管状インキ連通部材12がインキを高効率にインキ容器本体部11から中詰部材13へと移動させる。このことによっても、インキ補充の速度が高められている。
【0031】
また、本実施の形態によれば、インキペン20のペン先21を鉛直上方向きの姿勢としてペン先用開口部14rに挿入させたインキ補充状態について、管状インキ連通部材12が略鉛直姿勢となることに加えて、ペン先用開口部14rが管状インキ連通部材12の延出側端部12eの下方側0.8cmに予め調整されているため、より一層好適なインキ補充状態を実現している。この0.8cmという数値は、インキの種類や性質によって、0.3cm〜2.0cmの範囲内で変更され得る。
【0032】
本件発明者は、本実施の形態のインキ補充器具を用いて、インキ注入量3.8gの市販のインキペンについて、78%のインキ(2.97g)を消費した後、正立インキ補充形式によるインキ補充量を測定した。この結果、10分後:13%(0.49g)、1時間後:62%(2.37g)、2時間後:96%(3.66g)、12時間後:98%(3.71g)、という結果であった。
【0033】
なお、本実施の形態において対象としたインキペン20は、ペン先21までの長さが133mmで、インキ補充時のインキ容器本体部11の上端までの長さが115mmであったが、後者の長さについて、60mm〜125mmまで対応可能であることも確認された。
【0034】
更に、本実施の形態によれば、中詰部材13が被覆部14(14u、14b、14s)によって覆われており、インキペン20のペン先21を鉛直上方向きの姿勢としてペン先用開口部14rに挿入させた状態で、被覆部14の上被覆部14uがインキペン20の軸筒部材22の先端と気密状態に当接するようになっている(図3参照)。そして、予め中詰部材13の密度を調整しておくことによって、インキペン20のペン先21を鉛直上方向きの姿勢としてペン先用開口部14rに挿入させた状態でも、中詰部材13からインキが漏れ出てしまうことが抑制されている。具体的には、管状インキ連通部材12の延出側端部12eの近傍領域において中詰部材13の密度が高められている。このような局所的な密度調整は、均一な密度の中詰部材13に対して管状インキ連通部材12を押し込み、中詰部材13を局所的に押圧圧縮することで得られる。管状インキ連通部材12の延出側端部12eの近傍領域において中詰部材13の密度が高い領域にインキが滞留すると、管状インキ連通部材12の連通作用が阻害され、すなわち、インキないし空気の移動が滞る。このことにより、インキが漏れ出ることが抑制される。
【0035】
また、管状インキ連通部材12の内径や断面積が大き過ぎないため、インキ補充時に、中詰部材13からペン先用開口部14rを介してインキが落下する(ボタ落ちする)ことが無い。
【0036】
また、キャップ部材40は、インキ容器本体部11に対して螺合されるようになっているため、インキの揮発等を防ぐ上で効果的である。
【0037】
更に、本実施の形態によれば、キャップ部材40がその底部40bによって略水平面上に載置された状態において、キャップ部材40の保持穴44にインキペン20の後端側24を嵌入することで当該インキペン20を略鉛直姿勢に維持することができるため、正立インキ補充形式によるインキ補充をより容易に実施することができる。
【0038】
特に、キャップ部材40及びインキ容器本体部11が共に略軸対称の形態を有していて正立インキ補充時に互いに同心状の位置関係となることにより、インキペン20が倒れてしまうことが抑制される。また、本件発明者による知見によれば、インキ補充本体部11の最大外径がキャップ部材40の最大外径に対して105%以下であれば、正立インキ補充形式によるインキ補充時の安定性が高い(本実施の形態では、70/68=103%)。
【0039】
更に、本実施の形態によれば、底部40bの直径(68mm)が保持穴44の直径(15mm)の3倍以上であることも、インキ補充時の姿勢安定性に貢献する。また、底部40bから保持穴44の底面までの高さ(44mm)が底部40bの直径(68mm)よりも小さいことも、インキ補充時の姿勢安定性に貢献する。また、保持穴44の深さ(16mm)が保持穴44の直径(15mm)よりも大きいことも、インキ補充時の姿勢安定性に貢献する。その他、キャップ部材40の重量が10gであるのに対して、インキ容器本体部11の重量が80gに留まっていることも、インキ補充時の姿勢安定性に貢献する。本件発明者による知見によれば、インキ容器本体部11の重量は100gまでであれば、十分なインキ補充時の姿勢安定性を得ることができる。
【0040】
続いて、図4は、本発明の第2の実施の形態におけるインキ補充器具の概略断面図であり、図5は、図4のインキ補充器具を用いて正立インキ補充形式によるインキ補充を実施している時の状態を示す概略断面図である。図4及び図5に示す本実施の形態では、図1乃至図3に示した実施の形態に対して、管状インキ連通部材の本数が1本だけであるため、インキと空気との置換流通を促すべく、管状インキ連通部材112の上端近傍に空気進入促進孔112hが設けられている。
【0041】
その他、本実施の形態によれば、図1乃至図3に示した実施の形態と略同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0042】
10 インキ補充器具
11 インキ容器本体部(インキ補充本体部)
11a 筒状部
11b 略円筒部
11c 底部
11t 推移部
12、112 管状インキ連通部材
12e 延出側端部
12h 空気進入促進孔
13 中詰部材
14 被覆部
14r ペン先用開口部
14s 側方被覆部
14u 上被覆部
14b 下被覆部
20 インキペン
21 ペン先
22 軸筒部材
23 インキ保持体
24 後端部
40 キャップ部材
40b 底部
40c 螺合部
40s スカート部
44 保持穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6