(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6656923
(24)【登録日】2020年2月7日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】基材の金属表面の被覆法およびこの方法により被覆された物品
(51)【国際特許分類】
C23C 22/34 20060101AFI20200220BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20200220BHJP
B05D 7/14 20060101ALI20200220BHJP
C25D 13/20 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
C23C22/34
B05D1/36 A
B05D7/14 Z
C25D13/20 C
【請求項の数】19
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-543450(P2015-543450)
(86)(22)【出願日】2013年11月25日
(65)【公表番号】特表2016-504493(P2016-504493A)
(43)【公表日】2016年2月12日
(86)【国際出願番号】EP2013074575
(87)【国際公開番号】WO2014080007
(87)【国際公開日】20140530
【審査請求日】2016年11月22日
(31)【優先権主張番号】102012221520.4
(32)【優先日】2012年11月26日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500399116
【氏名又は名称】ヒェメタル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Chemetall GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ヴァッサーファレン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル シュヴァンプ
(72)【発明者】
【氏名】アリアクサンドル フレンケル
(72)【発明者】
【氏名】ヴェラ ゾトケ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング ブレムザー
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ドロル
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー ゼーヴァルト
(72)【発明者】
【氏名】ロン アイリングホフ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファニー ゲロルト
(72)【発明者】
【氏名】エフゲニヤ ニーゼン
(72)【発明者】
【氏名】ラース シャハトズィーク
(72)【発明者】
【氏名】マヌエル トラウト
【審査官】
▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−157586(JP,A)
【文献】
特表2007−527465(JP,A)
【文献】
特開2003−201576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 22/00−22/86
C23C 24/00−30/00
B05D 1/36
B05D 7/14
C25D 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程:
I.清浄化された金属表面を有する基材を準備する工程、
II.金属表面を分散
液の形の水性組成物と接触させ、かつ当該水性組成物で被覆して有機被覆を形成する工程、および
IV.前記有機被覆を乾燥させ、および/または焼き付ける工程
を含む、基材の金属表面を被覆する方法であって、
工程IIにおいて
、前記水性組成物が0.5〜7.0のpH値の範囲内で安定性である、2〜40質量%の固体含量および10〜1000nmの平均粒度を有する、皮膜形成性ポリマーからなるアニオン的に安定化された分散液
中に、少なくとも1つのアニオン性高分子電解質を、生じる混合物の全質量に対して、0.01〜5.0質量%の量で
含有し、ならびに元素のチタン、ジルコニウム、ハフニウム、ケイ素、アルミニウムおよび/またはホウ素の六フッ化物または四フッ化物からなる群から選択されたフッ化物錯体を、前記水性組成物1リットルあたりフッ化物錯体1.1×10-6モル〜0.30モルの量で含有し、その際に、前記水性組成物は、0.5〜7.0の範囲内のpH値を有し、かつ前記金属表面から溶出されたカチオンを結合する、イオノゲン性のゲルをベースとする被覆を形成させ、かつ、前記金属表面から溶出されたカチオンは、前処理段階および/または工程IIにおける接触に由来し、前記アニオン性高分子電解質は、ペクチンおよび/またはゲランガムをベースとする、少なくとも1つのアニオン性多糖類を含有するか、または少なくとも1つの前記アニオン性多糖類からなり、かつ前記アニオン性多糖類は、式(1)〜(8):
【化1】
[式中、R1、R2、R3は、それぞれ独立に、水素、又は、炭素数1〜10の直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基、アルケニル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルケニル基、アリール基、アリールアルキル基、ヒドロキシアリール基又はヒドロキシアリールアルキル基であり、Xは、水酸イオン、ハロゲンイオン、硫酸イオン、スルホン酸イオン、リン酸イオン及びホスホン酸イオンから選ばれる1種又は2種以上のイオンである]の含窒素官能基を有していないことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記フッ化物錯体は、水性組成物1リットルあたりフッ化物錯体1.1×10-5モル〜0.15モルの量で含有され、その際に、水性組成物は、1.0〜6.0の範囲内のpH値を有することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記水性組成物および/または前記水性組成物から製造された有機被覆は、2種類の異なるペクチンからなる混合物を含有することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記水性組成物および/または前記水性組成物から製造された有機被覆は、アルコール基およびカルボキシ基の全体数に対して、5〜75%の範囲内のカルボキシ官能基のエステル化度を有する、少なくとも1つのさらなるアニオン性高分子電解質を含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記水性組成物および/または前記水性組成物から製造された有機被覆は、500〜1000000g/molの範囲内の分子量を有する少なくとも1つのさらなるアニオン性高分子電解質を含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記水性組成物および/または前記水性組成物から製造された有機被覆は、1〜50%の範囲内のカルボキシ官能基のアミド化度および/または80%までのカルボキシ官能基のエポキシ化度を有する少なくとも1つのさらなるアニオン性高分子電解質を含有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記さらなるアニオン性高分子電解質は、多官能性エポキシド、イソシアネート、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アミン、アミド、イミド、イミダゾール、ホルムアミド、マイケル反応製造物、カルボジイミド、カルベン、環式カルベン、シクロカーボネート、多官能性カルボン酸、アミノ酸、核酸、メタクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸誘導体、ポリビニルアルコール、ポリフェノール、少なくとも1個のアルキル基および/またはアリール基を有するポリオール、カプロラクタム、リン酸、リン酸エステル、エポキシエステル、スルホン酸、スルホン酸エステル、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、カテコール、シランならびに当該シランから形成されたシラノールおよび/またはシロキサン、トリアジン、チアゾール、チアジン、ジチアジン、アセタール、半アセタール、キノン、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、アルキド、エステル、ポリエステル、エーテル、グリコール、環式エーテル、クラウンエーテル、無水物、ならびにアセチルアセトンおよびβ−ジケト基、カルボニル基およびヒドロキシ基の化学基からなる群から選択された付着を媒介する付着基で変性されるかまたは変性されていることを特徴とする、請求項4から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記水性組成物および/または前記水性組成物から製造された有機被覆は、金属カチオンのための少なくとも1つの錯形成剤の含量または金属カチオンが錯形成されて変性されているポリマーの含量を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記水性組成物および/または前記水性組成物から製造された有機被覆は、マレイン酸、アレンドロン酸、イタコン酸、シトラコン酸もしくはメサコン酸またはこれらのカルボン酸の無水物もしくは半エステルをベースとする、少なくとも1つの錯形成剤から選択された当該の少なくとも1つの錯形成剤の含量を有することを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記水性組成物および/または前記水性組成物から製造された有機被覆は、メラミン塩、ニトロソ塩、オキソニウム塩、アンモニウム塩、第四級窒素カチオンを有する塩、アンモニウム誘導体の塩、およびAl、B、Ba、Ca、Cr、Co、Cu、Fe、Hf、In、K、Li、Mg、Mn、Mo、Na、Nb、Ni、Pb、Sn、Ta、Ti、V、W、Znおよび/またはZrの金属塩に由来する少なくとも1種類のカチオンを含むことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記金属表面から溶出されるか、または溶出されており、および/または前記水性組成物に添加されるか、または添加されているカチオンとして、Al、Cu、Fe、Mgおよび/またはZnが選択されることを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記水性組成物および/または前記水性組成物から製造された有機被覆は、前記皮膜形成性ポリマーとして、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリエポキシドおよび/またはこれらのハイブリッドをベースとする有機粒子を含有することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記水性組成物および/または前記水性組成物から製造された有機被覆は、少なくとも1つの乳化剤の含量を有することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記水性組成物および/または前記水性組成物から製造された有機被覆は、アニオン性乳化剤をベースとする、少なくとも1つの乳化剤から選択された、当該の少なくとも1つの乳化剤の含量を有することを特徴とする、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記水性組成物および/または前記水性組成物から製造された有機被覆は、殺生剤、分散助剤、皮膜形成助剤、pH値を調整するための酸性助剤および/または塩基性助剤、増粘剤および流展剤の群からなる添加剤から選択された、少なくとも1つの添加剤を含有することを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記水性組成物は、イオノゲン性のゲルをベースとする被覆を形成すること、および、その際に形成されるか、または後に形成される乾燥皮膜は、少なくとも1μmの厚さを有することを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記有機被覆は、浸漬浴中で0.05〜20分間で形成され、かつ乾燥後に5〜100μmの範囲内の乾燥膜厚を有することを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
金属表面に被覆を製造するための水性組成物であって、当該水性組成物が0.5〜7.0のpH値の範囲内で安定性である、2〜40質量%の固体含量および10〜1000nmの平均粒度を有する、皮膜形成性ポリマーからなるアニオン的に安定化された分散液中に、少なくとも1つのアニオン性高分子電解質を、生じる混合物の全質量に対して、0.01〜5.0質量%の量で含有し、ならびに元素のチタン、ジルコニウム、ハフニウム、ケイ素、アルミニウムおよび/またはホウ素の六フッ化物または四フッ化物からなる群から選択されたフッ化物錯体を、前記水性組成物1リットルあたりフッ化物錯体1.1×10
-6モル〜0.30モルの量で含有し、その際に、前記水性組成物は、4〜11の範囲内のpH値を有しており、前記アニオン性高分子電解質は、ペクチンおよび/またはゲランガムをベースとする、少なくとも1つのアニオン性多糖類を含有するか、または少なくとも1つの前記アニオン性多糖類からなり、かつ前記アニオン性多糖類は、式(1)〜(8):
【化2】
[式中、R1、R2、R3は、それぞれ独立に、水素、又は、炭素数1〜10の直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基、アルケニル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルケニル基、アリール基、アリールアルキル基、ヒドロキシアリール基又はヒドロキシアリールアルキル基であり、Xは、水酸イオン、ハロゲンイオン、硫酸イオン、スルホン酸イオン、リン酸イオン及びホスホン酸イオンから選ばれる1種又は2種以上のイオンである]の含窒素官能基を有していない、前記金属表面に被覆を製造するための水性組成物。
【請求項19】
皮膜形成性ポリマーからなる分散液中で、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリエポキシドおよび/またはこれらのハイブリッドをベースとする有機粒子の含量、マレイン酸、アレンドロン酸、イタコン酸、シトラコン酸もしくはメサコン酸またはこれらのカルボン酸の無水物もしくは半エステルをベースとする少なくとも1つの錯形成剤から選択された当該錯形成剤の含量、およびペクチンまたはゲランガムをベースとする、少なくとも1つのアニオン性高分子電解質を有することを特徴とする、請求項18記載の水性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面の被覆法、相応する被覆、ならびに前記方法により被覆された物品の使用に関する。殊に、金属表面上に浸漬法を用いて均一な被覆を製造するための方法は、数多く存在する。ここで、主に、有機マトリックスおよび/または有機添加成分および/または無機添加成分からなる殊に防食被覆の製造には、とりわけ以下に記載された技術が利用される。
【0002】
古典的方法は、接合された工作物の完全な被覆を達成するために、使用された配合物のレオロジー特性の利用に基づくものである。前記浸漬工程後の当該工作物の連続的なローテーションによって、危機的箇所での被覆材の蓄積が減少されうるとしても、前記方法で完全に均一な被覆を達成することは、不可能である。さらに、より高い被覆割合を有する箇所で、乾燥工程および/または架橋工程中に、被覆全体の品質を損なう欠陥箇所、例えば気泡形成および浮きまだら(Kocher)が生じることがある。
【0003】
電気泳動法は、浸漬中に均一な被覆を析出する目的で電流を使用することにより、前記問題を回避する。前記方法を用いると、金属工作物上での均一な被覆の製造に成功する。析出された被覆は、湿潤状態で金属下地に対して格別に良好な付着力を示す。前記被覆が剥離することなく、前記工作物を後続の洗浄工程で処理することが可能である。このことは、前記工作物の到達しにくい箇所から上方にある塗装液を取り除き、それによって乾燥工程中に欠陥箇所が生じ得ないことをもたらす。この技術は、費用の上昇をまねく、電気エネルギー量および必要とされる浸漬槽の他に、いわゆる縁部の塗膜不足(Kantenfluchten)を起こすという欠点を有する。それというのも、電界が巨視的な縁部に不均一に形成されて、前記縁部は不均一かつ任意に不完全にも被覆されるからである。そのうえ、前記工作物の構造の場合には、空隙は避けなければならない。それというのも、この箇所でファラデーケージの現象と同等である効果が発生するからである。前記析出に必要とされる電界強さが低下するために、前記工作物による当該範囲では前記方法による被覆が施されないか、または前記方法による著しく低減された被覆だけが施される可能性があり(均一電着性の問題)、このことは、被覆品質に支障をきたす。さらに、前記技術は、電着塗装(elektrische Tauchlackierung:ETL)、例えば陰極浸漬塗装(Kathodische Tauchlackierung:KTL)の場合に次の欠点を有する:相応する浸漬浴は、温度管理、電力供給および電気絶縁の全ての電気的装置および機械的装置、電解被覆の際に生じる陽極液の酸が廃棄されるまでの循環装置および供給装置、および塗料再循環のための限外ろ過ならびに制御装置と一緒に極めて費用をかけて構成されている。また、このプロセス実施は、電流強さおよびエネルギー量が大きいために、ならびに浴容積にわたって電気パラメーターを均一化する場合、およびあらゆるプロセスパラメーターを正確に調節する場合、ならびに前記設備の整備および掃除の場合に、極めて高い技術的な費用を必要とする。
【0004】
公知の自己析出法(autophoretischen Verfahren)は、使用される基材表面の酸洗腐食からなる無電解の概念に基づいており、金属イオンが前記表面から溶出され、金属イオンの濃度に基づいて、生じる界面で乳濁液が凝固される。この方法は、ファラデーケージ効果に関連して電解法の上述の制約を有していないにもかかわらず、前記プロセスで生じた被覆は、第1の活性化工程後に、費用のかかる多段階の浸漬法で固定させる必要がある。さらに、酸洗腐食は、活性帯域から除去されねばならない金属イオンによって、前記活性帯域の避けることのできない汚染をまねく。そのうえ、前記方法は、化学的な析出プロセスに基づくものであり、この析出プロセスは、自己調整的ではなく、必要のある場合、例えば、電解法では、電流のスイッチオフによって中断することができない。したがって、活性帯域中での金属基材の待機時間が比較的長い場合には、過度に厚い層厚の形成を避けることができない。
【0005】
均一な被覆を浸漬プロセスで効率的かつ安価に形成することは、このことから可能なかぎり密閉されかつ基本的には平らな被覆を比較的厚い厚みで製造する目的のために、長い間追求されてきた願望である。
【0006】
したがって、塗料配合物が、液体系により、および必要のある場合に、金属表面に対して耐洗浄性にあって均一に表面を覆い、簡単に析出されうる方法を提案することが課題である。さらに、このために、できるだけ簡単な方法を提案するという課題が課された。
【0007】
この課題は、次の工程:
I.清浄化された金属表面を有する基材を準備する工程、
II.金属表面を分散液および/または懸濁液の形の水性組成物と接触させかつ当該水性組成物で被覆する工程、
III.任意に、有機被覆を洗浄する工程および
IV.前記有機被覆を乾燥させ、および/または焼き付ける工程または
V.任意に、乾燥前および/または焼付け前に、前記有機被覆を乾燥させかつ同じ種類の被覆組成物またはさらなる被覆組成物で被覆する工程を含むかまたは当該工程からなる、基材の金属表面を被覆する方法であって、
工程IIにおいて、元素のチタン、ジルコニウム、ハフニウム、ケイ素、アルミニウムおよび/またはホウ素の六フッ化物または四フッ化物からなる群から選択されたフッ化物錯体を、カチオンに対して、1.1 10
-6モル/l〜0.30モル/lの量で含有する、分散液および/または懸濁液の形の水性組成物による被覆が行なわれ、その際に、0.5〜7.0のpH値の範囲内で安定性である、2〜40質量%の固体含量および10〜1000nmの平均粒度を有する、皮膜形成性ポリマーからなるアニオン的に安定化された分散液および/または皮膜形成性無機粒子からなる懸濁液に、少なくとも1つのアニオン性高分子電解質が、生じる混合物の全質量に対して、0.01〜5.0質量%の量で添加され、その際に、前記水性組成物は、0.5〜7.0の範囲内のpH値を有しかつ前記金属表面から溶出されたカチオンを結合する、イオノゲン性のゲルをベースとする被覆を形成させ、その際に、前記カチオンは、前処理段階および/または工程IIでの接触工程に由来する、前記方法で解決される。フッ化物錯体の本発明による添加は、亜鉛メッキ鋼板上で20μm〜100μmの範囲内の乾燥層厚を有する、可能な限り均一な被覆をもたらしかつ冷間圧延鋼板またはアルミニウム上で1μmを上回る乾燥層厚をもたらす。
【0008】
とりわけ、フッ化物錯体は、カチオンに対して、1.1 10
-5モル/l〜0.15モル/l、特に1.1 10
-4モル/l〜0.05モル/lの量で使用され、その際に、水性組成物は、1.0〜6.0、特に有利に1.5〜5.0の範囲内のpH値を有する。
【0009】
本発明による被覆は、単層構造を示し、その際に、多少とも均一な被覆が形成されるかまたは存在することができ、或いは粒子の含量が金属表面の近くで若干より高く増加されている被覆が形成されるかまたは存在することができる。
【0010】
金属表面を有する被覆すべき基材とは、本発明によれば、金属カチオンがなお溶出されうる、金属、金属被覆された表面またはプライマーで前処理された金属表面であると解釈される。殊に、“被覆すべき、単数または複数の表面”の概念は、本発明の範囲内で、任意に例えば、亜鉛または亜鉛合金をベースとする金属被覆および/または例えばクロム酸塩、Cr
3+、Ti化合物、Zr化合物、シラン/シラノール/シロキサン/ポリシロキサンおよび/または有機ポリマーをベースとする前処理組成物または処理組成物の少なくとも1つの被覆で予め被覆されていてよい、金属物品および/または金属粒子の表面を含む。
【0011】
金属工作物とは、原則的に、全ての種類の金属工作物、殊にアルミニウム、鉄、銅、チタン、亜鉛、マグネシウム、錫、および/またはアルミニウム、鉄、カルシウム、銅、マグネシウム、ニッケル、クロム、モリブデン、チタン、亜鉛および/または錫の含量を有する合金からなる当該金属工作物であり、その際に、これらの金属工作物の使用は、近接して行なわれてもよいし、および/または順次に行なわれてもよい。工作物表面は、任意に、例えば亜鉛またはアルミニウム含有合金および/または亜鉛含有合金で予め被覆されてもよいし、および/または予め被覆されていてもよい。
【0012】
被覆すべき物品として、原則的に、金属工作物からなるかまたは少なくとも1つの金属被覆を備えている、全ての種類の物品、殊に金属被覆されたポリマーまたは繊維補強されたポリマー工作物が使用されてよい。特に好ましい物品は、殊にケーブル(コイル)、板、部材、例えば小型部材、接合された素子、複雑に形成された素子、異形材、ロッドおよび/または線材である。
【0013】
“無電解被覆”の概念は、本発明の範囲内で、溶液および/または分散液(=懸濁液および/または乳濁液)を含む組成物による被覆の際に、後続被覆を製造する公知の電解法とは異なり、外側から100V未満の電圧を印加することを意味する。
【0014】
とりわけ、本発明は、a)グリコーゲン、アミロース、アミロペクチン、カロース、寒天、アルギン、アルギン酸塩、ペクチン、カラゲーン、セルロース、キチン、キトサン、カードラン、デキストラン、フルクタン、コラーゲン、ゲランガム、アラビアゴム、澱粉、キサンタン、トラガカント、カラヤゴム(Karayanen)、タラ種子粉末(Tarakernmehl)およびグルコマンナンをベースとする多糖類;b)ポリアミノ酸、コラーゲン、ポリペプチド、リグニンをベースとする天然起源のアニオン性高分子電解質および/またはc)ポリアミノ酸、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸コポリマー、アクリルアミドコポリマー、リグニン、ポリビニルスルホン酸、ポリカルボン酸、ポリリン酸またはポリスチレンをベースとする合成アニオン性高分子電解質の群から選択された、少なくとも1つのアニオン性高分子電解質を含むかまたはこれらから構成される方法に関する。
【0015】
とりわけ、本発明による方法は、水性組成物および/または当該水性組成物から製造された有機被覆が、メラミン塩、ニトロソ塩、オキソニウム塩、アンモニウム塩、第四級窒素カチオンを有する塩、アンモニウム誘導体の塩、およびAl、B、Ba、Ca、Cr、Co、Cu、Fe、Hf、In、K、Li、Mg、Mn、Mo、Na、Nb、Ni、Pb、Sn、Ta、Ti、V、W、Znおよび/またはZrの金属塩からなる群から選択されたカチオン作用を有する塩をベースとする少なくとも1種類のカチオンから選択された、当該カチオンを含む当該方法である。
【0016】
“コポリマー”の概念は、本発明の範囲内で、2個以上の異なる種類のモノマー単位から構成されているポリマーを説明するものである。その際に、コポリマーは、5つのクラスに分けることができ、例えば2つの異なるコモノマーAおよびBから構成されている二成分系コポリマーにつき具体的に示される:
1.鎖中での2つのモノマーの分布が偶然であるランダムコポリマー(AABABBBABAABBBABBABAB...);
2.原則的にランダムコポリマーに類似しているが、しかし、鎖長の延び具合においてモノマーの割合が変化する、勾配コポリマー(AAAAAABAABBAABABBBAABBBBBB);
3.鎖に沿ってモノマーの規則的な配置を有する、交互コポリマーまたは交替型コポリマー(ABABABABABABABABABAB...);
4.より長い配列または全てのモノマーのブロックからなるブロックコポリマー(AAAAAAAAABBBBBBBBBBBB...)、その際に、ブロックの数に応じて、ジブロックコポリマー、トリブロックコポリマー、マルチブロックコポリマーとも呼ばれる;
5.モノマーのブロックが他のモノマーの骨格(主鎖)にグラフトされているグラフトコポリマー。
【0017】
“誘導体”の概念は、本発明の範囲内で、相応する基本物質と類似した構造の誘導された物質を示す。誘導体は、その分子がH原子または官能性基の箇所で単数の他の原子または複数の他の原子を有する物質であるか、または1個の原子または複数の原子が除去された物質である。
【0018】
“単数または複数のポリマー”の概念は、本発明の範囲内で、単数または複数のモノマー、単数または複数のオリゴマー、単数または複数のポリマー、単数または複数のコポリマー、単数または複数のブロックコポリマー、単数または複数のグラフトコポリマー、これらの混合物およびこれらのモノマー、オリゴマー、ポリマーまたはコポリマーの有機ベースおよび/または基本的には有機ベースの配合物を表わす。通常、“単数または複数のポリマー”は、本発明の範囲内で、主に、または、全面的に、単数または複数のポリマーおよび/または単数または複数のコポリマーとして存在する。
【0019】
特に好ましくは、本発明による方法は、水性組成物および/またはこれから製造された有機被覆がポリアクリレート、ポリウレタン、ポリエポキシドおよび/またはこれらのハイブリッドをベースとする有機粒子の含量を有する当該方法である。
【0020】
いわゆる、ポリアクリレート−ポリウレタンハイブリッド樹脂は、さまざまな分散液の純粋な混合によって製造されるハイブリッド系(ブレンドまたは配合物)において、さまざまなポリマー種間の化学結合を有する当該ハイブリッド系において、ならびにさまざまなポリマー種が相互貫通網状組織(IPN)を形成する当該ハイブリッド系において、タイプにより区別されうる。
【0021】
通常、ポリウレタン−ポリアクリレートハイブリッド分散液は、ビニルポリマー(“ポリアクリレート”)の乳化重合によって、水性ポリウレタン分散液中で製造される。しかし、ポリウレタン−ポリアクリレートハイブリッド分散液を二次分散液として製造することも可能である。
【0022】
水性ポリアクリレート−ポリエポキシドハイブリッド分散液は、通常、二官能性エポキシドと二官能性アミン系モノマー構成単位との付加反応およびポリアクリレートと十分なカルボキシル官能基との引き続く反応によって製造される。その際に、水分散性は、ポリウレタン二次分散液の場合と同様に、例えばアミンでアニオン性基に変換されたカルボキシレート基および水中での引き続く分散によって達成されうる。
【0023】
基材上に層を形成するハイブリッド分散液は、ポリウレタン成分およびポリエポキシド成分とともに、有利にポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリブチルアクリレートおよび/または他のアクリル酸エステルをベースとする有機ポリマーおよび/または有機コポリマーを含有していてよい。アクリル酸エステルは、アクリル酸(CH
2=CH−COOH)に由来し、ひいては官能性基(CH
2=CH−COOR)を有するエステルである。とりわけ、アクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル、アクリル酸ブチルエステルおよびエチルヘキシルアクリレートが大量に製造される。アクリル酸エステルの主な用途は、例えばアクリル酸、アクリルアミド、メタクリレート、アクリルニトリル、フマル酸、イタコン酸、マレエート、ビニルアセテート、塩化ビニル、スチレン、ブタジエンおよび不飽和ポリエステル、ポリエポキシドエステル、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテル、ポリスチレンブタジエン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、アクリル酸エステルとのポリビニルアセテートコポリマーおよび/またはジブチルマレエートとのコポリマーおよび/または少なくとも1つのコッホ酸のビニルエステルとのコポリマー、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリルニトリル、ポリエポキシド、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイソブタジエン、ポリイソプレン、シリコーン、シリコーンゴムおよび/またはこれらの誘導体を含むホモポリマーおよびコポリマーにある。前記アクリル酸エステルは、殊に固体物質および作用物質の少なくとも50質量%が水性組成物中に含有されている。
【0024】
“前処理”の概念は、引き続き、任意に後続の被覆後に、一連の層、および物品を保護するためのさらなる被覆、例えば少なくとも1つの塗料が施される処理(=被覆すべき表面と通常の液状組成物との接触)を表わす。
【0025】
表面を静電帯電することに役立つ、活性化剤による表面の活性化前の先の前処理の場合、処理すべき表面は、必要な場合に最初にアルカリ清浄化され、かつ任意に前処理のための組成物と接触させることができ、この後者の接触処理により、殊に、変換層が形成される。次に、このように処理された表面および/または被覆された表面は、任意にプライマーで、および/または任意に、変形可能な保護層で、殊に防食プライマーで被覆されてよく、および/または、任意に油処理されてよい。前記油処理は、殊に処理された、および/または、被覆された、殊に金属表面の一時的な保護に利用される。
【0026】
前処理として、原則的に、あらゆる種類の前処理が可能である:ホスフェート、ホスホネート、シラン/シラノール/シロキサン/ポリシロキサン、ランタニド化合物、チタン化合物、ハフニウム化合物、ジルコニウム化合物、酸、金属塩および/または有機ポリマーをベースとする水性前処理組成物が使用されうる。
【0027】
前記の被覆された基材のさらなる処理の場合、必要な場合には、その前に油が施されているか否かとは無関係に、殊にアルカリ清浄化を行なうことができる。
【0028】
錆止めプライマー、例えば溶接プライマーによる被覆は、例えば折り畳み、接着および/または溶接の際に、殊に基材の空隙内および出入りするのが困難な部分における、さらなる錆止め、変形性および/または接合性を可能にすることができる。工業的実地において、錆止めプライマーは、殊に、当該錆止めプライマーで被覆された基材、例えば板が錆止めプライマーによる被覆後に変形され、および/または、さらなる成分と接合される場合、およびその後に初めてさらなる被覆が施される場合に使用されるのかもしれない。この方法の経過中に、さらに、錆止めプライマーが活性化層の下方および粒子被覆の下方に施される場合には、通常、明らかに改善された錆止めが生じる。
【0029】
“基本的には耐洗浄性にあって”の概念は、本発明の範囲内で、そのつどのプラントおよび一連の方法の条件下で、そのつど最後の被覆が洗浄工程(=洗浄)によって完全には除去されず、その結果、被覆、特に密閉された被覆が製造されうることを意味する。
【0030】
本発明による方法の場合、粒子として、多種多様の粒子種、粒子寸法および粒子形が使用されうる。
【0031】
層を形成する水性組成物中の粒子として、とりわけ、酸化物、水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、ホスホケイ酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩、コポリマーおよびその誘導体を含めて有機ポリマー、ワックスおよび/または配合された粒子、殊に錆止め顔料、有機ポリマー、ワックスおよび/または配合された粒子をベースとする当該粒子および/またはこれらの混合物が使用されうる。前記粒子は、とりわけ、5nm〜15μm、有利に20nm〜1μm、特に有利に50nm〜500nmの範囲内の粒子寸法を有する。前記粒子は、とりわけ水不溶性粒子である。
【0032】
配合された粒子は、粒子中に少なくとも2つのさまざまな物質の混合物を有する。配合された粒子は、しばしば、極めて異なる性質を有する他の物質を有していてよい。前記の配合された粒子は、例えば部分的または全体的に、任意にむしろ非粒子状に形成された物質、例えば界面活性剤、消泡剤、分散剤、塗料助剤、さらなる種類の添加剤、染料、腐食防止剤、難水溶性錆止め顔料および/または相応する混合物に対して通常であり、および/または公知である他の物質の含量を有する、塗料のための組成物を含有していてよい。当該塗料成分は、例えば、変形に対する有機被覆、錆止めプライマーおよび他のプライマー、着色塗料、フィラーおよび/またはクリヤーラッカーに適しており、および/またはしばしば利用されてよい。
【0033】
錆止めプライマーは、通常、導電性粒子を有しかつ電気溶接可能である。この場合、一般に、a)化学的にさまざまな種類の粒子および/または物理的にさまざまな種類の粒子の混合物、b)化学的にさまざまな種類の粒子および/または物理的にさまざまな種類の粒子からなる粒子、凝集体および/または凝集塊および/またはc)組成物中および/またはこれから形成された粒子層中で配合された粒子が使用されることは、しばしば有利である。
【0034】
しばしば、前記粒子を含有する組成物および/またはそれから形成された粒子層が少なくとも1種類の粒子と共に少なくとも1つの非粒子状物質、殊に添加剤、染料、腐食防止剤および/または難水溶性錆止め顔料を含有することは、好ましい。殊に、前記組成物中および/またはそれから形成された粒子層中の粒子として、殊にフラーレンおよび黒鉛類似の構造を有する他の炭素化合物および/またはカーボンブラック、任意にナノコンテナおよび/またはナノチューブをベースとする、着色粒子および/または任意に制限された割合の導電性粒子は、含まれていてよい。この場合、他方において、殊に前記組成物中および/またはそれから形成された被覆中の粒子として、被覆された粒子、化学的に変性された粒子および/または物理的に変性された粒子、コアシェル型粒子、さまざまな種類の物質からなる,配合された粒子、カプセル化された粒子および/またはナノコンテナを使用することができる。
【0035】
本発明による方法の場合、前記粒子を含む組成物、当該組成物から形成された粒子層および/または当該組成物から、例えば皮膜形成および/または架橋により形成された被覆が、少なくとも1種類の粒子の他に、そのつど少なくとも1つの染料、着色顔料、錆止め顔料、腐食防止剤、導電性顔料、さらなる種類の粒子、シラン/シラノール/シロキサン/ポリシロキサン/シラザン/ポリシラザン、塗料添加剤および/または添加剤、例えばそれぞれ少なくとも1つの界面活性剤、消泡剤および/または分散剤を含有することは、好ましい。
【0036】
本発明による方法の場合、前記組成物および/または当該組成物から形成された被覆が少なくとも1種類の粒子の他に、および任意に、少なくとも1つの非粒子状物質の他に、部分的または全体的に、プライマー、塗料、例えばフィラー、トップコートおよび/またはクリヤーラッカーに対する化学組成を有することは、好ましい。
【0037】
前記粒子の有機ポリマーの添加剤として、数多くの実施態様において、塗料中および/またはプライマー中にしばしば使用される、顔料および/または添加剤が推奨される。
【0038】
皮膜形成は、熱可塑性ポリマーの使用によって、および/または一時的な可塑剤として使用される物質の添加によって改善されうる。皮膜形成助剤は、ポリマー粒子の表面を軟化しかつこうして当該表面の溶融を可能にする特別な溶剤として作用する。その際に、前記可塑剤が一方で十分に長く水性組成物中に留まり、粒子表面上に長時間作用を及ぼすことができ、その後に蒸発し、ひいては皮膜から逃出することは、好ましい。さらに、乾燥工程中に十分に長く残留した水分が存在していることは、好ましい。
【0039】
いわゆる、長鎖状アルコール、殊に4〜20個のC原子を有する当該長鎖状アルコール、例えば
ブタンジオール、
ブチルグリコール、
ブチルジグリコール、
エチレングリコールエーテル、例えば
エチレングリコールモノブチルエーテル、
エチレングリコールモノエチルエーテル、
エチレングリコールモノメチルエーテル、
エチレングリコールプロピルエーテル、
エチレングリコールヘキシルエーテル、
ジエチレングリコールメチルエーテル、
ジエチレングリコールエチルエーテル、
ジエチレングリコールブチルエーテル、
ジエチレングリコールヘキシルエーテル、または
ポリプロピレングリコールエーテル、例えば
プロピレングリコールモノメチルエーテル、
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、
トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、
プロピレングリコールモノブチルエーテル、
ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、
トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、
プロピレングリコールモノプロピルエーテル、
ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、
トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、
プロピレングリコールフェニルエーテル、
トリメチルペンタンジオールジイソブチレート、
ポリテトラヒドロフラン、
ポリエーテルポリオールおよび/またはポリエステルポリオールは、皮膜形成助剤として殊に好ましい。
【0040】
架橋は、例えば一定の反応性基、例えばイソシアネート基、イソシアヌレート基および/またはメラミン基を用いて行なうことができる。
【0041】
とりわけ、後続被覆は、殊に存在する有機ポリマー粒子が皮膜形成されてよく、その結果、可能な限り均一な被覆または完全に均一な被覆が形成されるように乾燥される。その際に、乾燥温度は、数多くの実施態様において、有機ポリマー成分が架橋されうる程度に高く選択されてよい。
【0042】
本発明による方法の場合、幾つかの実施態様において、基本的には有機粒子を含む粒子層が形成されかつ例えば乾燥時に皮膜形成され、および/または架橋されることは、好ましい。この皮膜形成は、数多くの実施態様において、皮膜形成助剤の存在なしでも行なわれる。この場合、被覆の粒子は、殊に当該粒子が主に、または、全面的に有機ポリマーとして存在する場合には、殊に乾燥の際に皮膜形成されて、とりわけ、基本的には密閉された被覆または密閉された被覆となってよい。この場合、主に、または、全面的に有機ポリマーからなる被覆の乾燥温度が、基本的には密閉された被覆または密閉された被覆が形成されるように選択されることは、しばしば、好ましい。必要な場合には、皮膜形成のために、殊に少なくとも1つの長鎖状アルコールをベースとする、少なくとも1つの皮膜形成助剤が添加されうる。上下に複数の粒子層を有する実施態様の場合には、とりわけ、最初に全ての粒子層が施され、かつその後に一緒になって皮膜形成され、および/または架橋される。
【0043】
少なくとも1つの皮膜形成助剤の含量は、水性組成物中、殊に浴中で、作用物質を含めて固体に対して、0.01〜50g/l、有利に0.08〜35g/l、特に有利に0.2〜25g/lであることができる。水性組成物中での皮膜形成助剤の含量に対する有機皮膜形成剤の含量の質量比。
【0044】
この場合、乾燥、皮膜形成および/または架橋が、炉温度に対して、および/またはメタルピーク温度(PMT)に対して、5〜350℃の温度範囲内、特に80〜200℃、特に有利に150〜190℃の温度範囲内で行なわれることは、しばしば好ましい。選択された温度範囲は、可能な限り、有機成分の種類および量に依存し、かつ任意には、無機成分の種類および量にも依存し、かつ任意には、当該成分の皮膜形成温度および/または架橋温度にも依存する。
【0045】
とりわけ、本発明は、水性組成物および/または当該水性組成物から製造された有機被覆が金属カチオンのための少なくとも1つの錯形成剤の含量または金属カチオンが錯形成されて変性されているポリマーの含量を有する方法に関する。
【0046】
特に好ましくは、本発明による方法は、水性組成物および/または当該水性組成物から製造された有機被覆がマレイン酸、アレンドロン酸、イタコン酸、シトラコン酸もしくはメサコン酸またはこれらのカルボン酸の無水物もしくは半エステルをベースとする当該錯形成剤から選択された少なくとも1つの錯形成剤の含量を有する当該方法である。
【0047】
好ましくは、水性組成物および/または当該水性組成物から製造された有機被覆は、少なくとも1つの乳化剤の含量を有する。
【0048】
特に好ましくは、水性組成物および/または当該水性組成物から製造された有機被覆は、無機乳化剤をベースとする当該乳化剤から選択された、少なくとも1つの乳化剤の含量を有する。
【0049】
とりわけ、水性組成物および/または当該水性組成物から製造された有機被覆は、少なくとも2つのさまざまなアニオン性高分子電解質からなる混合物を含有する。
【0050】
特に好ましくは、水性組成物および/または当該水性組成物から製造された有機被覆は、2つのペクチンからなる混合物を含有する。
【0051】
さらに、好ましくは、水性組成物および/または当該水性組成物から製造された有機被覆は、アルコール基およびカルボキシ基の全体数に対して、5〜75%の範囲内のカルボキシ官能基のエステル化度を有するアニオン性多糖類から選択された、少なくとも1つの当該アニオン性多糖類を含有する。
【0052】
殊に好ましくは、水性組成物および/または当該水性組成物から製造された有機被覆は、500〜1000000g/mol
-1の範囲内の分子量を有する、アニオン性多糖類および/またはさらなるアニオン性高分子電解質から選択された、少なくとも1つの当該アニオン性多糖類および/または少なくとも1つの当該のさらなるアニオン性高分子電解質を含有する。
【0053】
とりわけ、水性組成物および/または当該水性組成物から製造された有機被覆は、1〜50%の範囲内のカルボキシ官能基のアミド化度、80%までのカルボキシ官能基のエポキシ化度を有する、アニオン性多糖類および/またはさらなるアニオン性高分子電解質から選択された、少なくとも1つの当該アニオン性多糖類および/または少なくとも1つの当該のさらなるアニオン性高分子電解質を含有する。
【0054】
特に好ましくは、本発明による方法において、アニオン性高分子電解質は、多官能性エポキシド、イソシアネート、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アミン、アミド、イミド、イミダゾール、ホルムアミド、マイケル反応製造物、カルボジイミド、カルベン、環式カルベン、シクロカーボネート、多官能性カルボン酸、アミノ酸、核酸、メタクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸誘導体、ポリビニルアルコール、ポリフェノール、少なくとも1個のアルキル基および/またはアリール基を有するポリオール、カプロラクタム、リン酸、リン酸エステル、エポキシエステル、スルホン酸、スルホン酸エステル、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、カテコール、シランならびに当該シランから形成されたシラノールおよび/またはシロキサン、トリアジン、チアゾール、チアジン、ジチアジン、アセタール、半アセタール、キノン、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、アルキド、エステル、ポリエステル、エーテル、グリコール、環式エーテル、クラウンエーテル、無水物、ならびにアセチルアセトンおよびβ−ジケト基、カルボニル基およびヒドロキシ基の化学基からなる群から選択された付着を媒介する付着基で変性されるかまたは変性されている。
【0055】
好ましくは、金属表面から溶出されるかまたは溶出されている、および/または、水性組成物に添加されるかまたは添加されているカチオンとして、Al、Cu、Fe、Mg、Caおよび/またはZnが選択される。
【0056】
特に好ましくは、水性組成物および/または当該水性組成物から製造された有機被覆は、殺生剤、分散助剤、皮膜形成助剤、pH値を調整するための酸性助剤および/または塩基性助剤、増粘剤および流展剤の群からなる添加剤から選択された、少なくとも1つの添加剤を含有する。
【0057】
殊に好ましくは、方法の工程II.において、金属表面を水性組成物と接触させて被覆する前に、金属表面は、清浄化され、酸洗され、および/または前処理される。
【0058】
好ましくは、水性組成物はイオノゲン性のゲルをベースとする被覆を形成し、ここで、その際に形成されるかまたは後に形成される乾燥皮膜は、少なくとも1μmの厚さを有する。
【0059】
特に好ましくは、有機被覆は、浸漬浴中で0.05〜20分間で形成され、かつ乾燥後に5〜100μmの範囲内の乾燥膜厚を有する。
【0060】
さらに、本発明は、2〜40質量%の固体含量および10〜1000nmの平均粒度を有する、皮膜形成ポリマーからなる分散液および/または皮膜形成無機粒子の懸濁液中に、少なくとも1つのアニオン性高分子電解質を、生じる混合物の全質量に対して、0.01〜5.0質量%の量で含有する水性組成物に関し、その際に、この水性組成物は、4〜11の範囲内のpH値を有する。
【0061】
とりわけ、前記水性組成物は、皮膜形成ポリマーからなる分散液中で、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリエポキシドおよび/またはこれらのハイブリッドをベースとする有機粒子の含量、マレイン酸、アレンドロン酸、イタコン酸、シトラコン酸もしくはメサコン酸またはこれらのカルボン酸の無水物もしくは半エステルをベースとする錯形成剤から選択された、少なくとも1つの当該錯形成剤の含量、およびペクチンまたはゲランガムをベースとする、少なくとも1つのアニオン性高分子電解質を有する当該水性組成物である。
【0062】
本発明により被覆された表面から引き続き、5nm〜50μmの範囲内、殊に10nm〜40μmの範囲内、特に15nm〜1μmの層厚を有する、基本的には密閉された被覆または密閉された被覆を製造しうることが判明した。個々の被覆は、当該被覆の皮膜形成前および/または皮膜形成後および/または当該被覆の架橋前に、相応する層厚を有することができる。
【0063】
本発明により被覆された表面から引き続いて、基本的には密閉された被覆または密閉された被覆が製造されたが、この本発明により被覆された表面は、例えば電着塗膜、自己析出による浸漬塗膜または粉末塗膜よりも明らかに簡単かつ明らかに安価な方法で製造しうることが判明した。
【0064】
さらに、この種の本発明により製造された被覆は、現在の工業的実地における電着塗膜、自己析出による浸漬塗膜または粉末塗膜であって、これらの塗膜の性質の点で等価値であることができることが判明した。
【0065】
意外なことに、本発明による方法は、ほんのわずかに電圧で支えられる場合でも、電解法ではないし、基本的に電解法でもなく、したがって、通常は外部電圧の印加は不要であり、簡単に、費用のかかる制御なしに運転しうることが確認された。この方法は、広い温度範囲内で使用されてよいし、ならびに後続の乾燥を除く場合には、室温で使用されてもよい。
【0066】
意外なことに、一様かつ均一な被覆を達成するために、本発明による方法の場合には、活性剤の施与に関連して、費用のかかる制御手段を必要としないこと、および、僅かな化学薬品消費量で、500nm〜30μmの範囲内の厚さを達成する、価値の高い連続保護被覆が形成されることが確認された。
【0067】
意外なことに、殊に後続被覆の析出に関連する本発明による方法は、費用のかかる制御手段を必要とせずかつ僅かな化学薬品消費量で価値の高い保護被覆を形成する、自己調整的な方法であることが確認された。
【0068】
意外なことに、本発明により析出された後続被覆は、従来の電気泳動法または自己析出法により析出された塗料層の品質と同等な、一様の乾燥層厚を有する均一な層を、複雑に形成された加工物上に形成させることが確認された。
【0069】
本発明による被覆は、とりわけ、線材、ワイヤーメッシュ、ケーブル、板、異形材、被覆材、乗り物もしくは飛行物品の部材、家庭用器具の部材、建築における部材、支持枠(Gestell)、防護板部材、ラジエーター部材もしくはフェンス部材、複雑な幾何学的形状の部材もしくは小型部品、例えばボルト、ナット、フランジもしくはばねとしての被覆された基材に使用されうる。特に好ましくは、前記の本発明による被覆は、自動車の組立において、建築において、設備の組立のため、家庭用器具のため、またはヒーターの組み立てにおいて使用される。本発明による方法の使用は、電着塗料による被覆の際に問題を引き起こす、基材の被覆にとって特に好ましい。
【実施例】
【0070】
次に、本発明は、16の実施例および2つの比較例につき、詳説される。その際に、工程Iにおける基材として、次のものが使用された:
1:5μmの亜鉛被覆層を有する、電気亜鉛メッキされた鋼板、板厚0.81mm;
2:冷間圧延鋼、板厚約0.8mm;
3:品質クラスAC 170のアルミニウム合金、板厚約1.0mmおよび次の一般的な処理工程が実施された:
II.アルカリ清浄化:
工業用アルカリ清浄化剤、例えばChemetall GmbH社のGardoclean(登録商標)S 5176 30g/lおよびGardobond(登録商標)Additiv H 7406 4g/lを、水中で、とりわけ水道水品質または飲料水品質で調合した。前記板を噴射中に60℃で180秒間清浄化し、かつ引き続き浸漬中に水道水で120秒間および脱イオン水で120秒間洗浄した。
III.有機被覆の形成のための本発明による分散液による表面被覆
分散液Aの組成
【表1】
【0071】
略符号:
NH
3: アンモニア溶液(25%)、
AS: アクリル酸、
DPE: ジフェニルエチレン、
MMA: メチルメタクリレート、
APS:アンモニウムペルオキソジスルフェート、
BMA: ブチルメタクリレート、
HEMA: ヒドロキシエチルメタクリレート、
MS: マレイン酸、
VTES: ビニルトリエトキシシラン、
nfA:不揮発性画分(固体含量に相当する)。
分散液B
25℃の皮膜形成温度、49〜51%の固体含量、7.0〜8.0のpH、20〜200mPasの粘度、1.04g/cm
3の密度、約160nmの粒度および−14〜−18mVを有する、アニオン的に安定化された分散液。前記分散液をさらなる処理工程のために完全脱塩水で10%の固体含量に調節する。
【0072】
比較例1〜3のために、本発明による使用に該当する高分子電解質を添加することなく、分散液Aだけを使用した。混合物を、必要な場合には、利用前に酸、特に硝酸および/またはリン酸で4のpHに調節した。比較例4〜6のためには、本発明による使用に該当する高分子電解質だけを使用した。比較例7〜9においては、次のとおり行なった:
IV:有機被覆の洗浄:
有機被覆後の洗浄は、配合物の非付着性成分および配合物の蓄積物を除去しかつ自動車工業と同様の方法の工程を普通にできるだけ現実に即して実施するために利用される。それというのも、自動車工業においては、水による洗浄は、通常、浸漬洗浄によって行なわれるかまたは噴射洗浄によって行なわれるからである。
V:被覆の乾燥および/または架橋:
乾燥または殊に有機ポリマー成分の皮膜形成下での乾燥:175℃、15分間。
渦電流膜厚計(Wirbelstrom−Messgeraet)および走査型電子顕微鏡法(REM)を用いる同時試験は、本発明による被覆が、可能な限り密閉された被覆または密閉された被覆が表面と分散液および/または配合物との接触によって形成されうるように形成されたことを明確に示す。
【0073】
実施例1
基材1を、生じる混合物の全体量に対して、0.25質量%の、約70000g/molの分子量、0%のアミド化度、52%のエステル化度、0%のエポキシ化度、87%のガラクツロン酸含量を有するペクチンと、生じる混合物の全体量に対して、0.25質量%の、約70000g/molの分子量、0%のアミド化度、10%のエステル化度、0%のエポキシ化度、85%のガラクツロン酸含量を有するペクチンと、99.5質量%の前記分散液Aとの混合物と混合した。この混合物に20%のヘキサフルオロジルコン酸2.0g/lを添加した。渦電流膜厚計(Wirbelstrom−Messgeraet)およびREMを用いて測定して55μm〜65μmの乾燥膜厚を算出した。
【0074】
実施例2
試験1を基材2で繰返し、かつREMで15μm〜25μmの乾燥膜厚を算出した。
【0075】
実施例3
試験1を基材3で繰返し、かつREMで3μm〜4μmの乾燥膜厚を算出した。
【0076】
実施例4
基材1を、生じる混合物の全体量に対して、0.25質量%の、約70000g/molの分子量、0%のアミド化度、52%のエステル化度、0%のエポキシ化度、87%のガラクツロン酸含量を有するペクチンと、生じる混合物の全体量に対して、0.25質量%の、約70000g/molの分子量、0%のアミド化度、10%のエステル化度、0%のエポキシ化度、85%のガラクツロン酸含量を有するペクチンと、99.5質量%の前記分散液Aとの混合物と混合した。この混合物に20%のヘキサフルオロジルコン酸4.0g/lを添加した。渦電流膜厚計(Wirbelstrom−Messgeraet)およびREMを用いて測定して63μm〜67μmの乾燥膜厚を算出した。
【0077】
実施例5
試験4を基材2で繰返し、かつ10μm〜20μmの乾燥膜厚をREMで算出した。
【0078】
実施例6
試験4を基材3で繰返し、かつREMで4μm〜5μmの乾燥膜厚を算出した。
【0079】
実施例7
基材1を、生じる混合物の全体量に対して、0.25質量%の、約70000g/molの分子量、0%のアミド化度、52%のエステル化度、0%のエポキシ化度、87%のガラクツロン酸含量を有するペクチンと、生じる混合物の全体量に対して、0.25質量%の、約70000g/molの分子量、0%のアミド化度、10%のエステル化度、0%のエポキシ化度、85%のガラクツロン酸含量を有するペクチンと、99.5質量%の前記分散液Aとの混合物と混合した。この混合物に20%のヘキサフルオロジルコン酸6.0g/lを添加した。渦電流膜厚計(Wirbelstrom−Messgeraet)およびREMを用いて測定して70μm〜85μmの乾燥膜厚を算出した。
【0080】
実施例8
試験7を基材2で繰返し、かつREMで5μm〜7μmの乾燥膜厚を算出した。
【0081】
実施例9
試験7を基材3で繰返し、かつREMで5μm〜6μmの乾燥膜厚を算出した。
【0082】
実施例10
基材2を、生じる混合物の全体量に対して、0.25質量%の、約70000g/molの分子量、0%のアミド化度、52%のエステル化度、0%のエポキシ化度、87%のガラクツロン酸含量を有するペクチンと、生じる混合物の全体量に対して、0.25質量%の、約70000g/molの分子量、0%のアミド化度、10%のエステル化度、0%のエポキシ化度、85%のガラクツロン酸含量を有するペクチンと、99.5質量%の前記分散液Aとの混合物と混合した。この混合物に20%のヘキサフルオロジルコン酸8.0g/lを添加した。渦電流膜厚計(Wirbelstrom−Messgeraet)およびREMを用いて測定して5μm〜10μmの乾燥膜厚を算出した。
【0083】
実施例11
試験10を基材3で繰返し、かつREMで7μm〜8μmの乾燥膜厚を算出した。
【0084】
実施例12
基材3を、生じる混合物の全体量に対して、0.25質量%の、約70000g/molの分子量、0%のアミド化度、52%のエステル化度、0%のエポキシ化度、87%のガラクツロン酸含量を有するペクチンと、生じる混合物の全体量に対して、0.25質量%の、約70000g/molの分子量、0%のアミド化度、10%のエステル化度、0%のエポキシ化度、85%のガラクツロン酸含量を有するペクチンと、99.5質量%の前記分散液Aとの混合物と混合した。この混合物に20%のヘキサフルオロジルコン酸10.0g/lを添加した。渦電流膜厚計(Wirbelstrom−Messgeraet)およびREMを用いて測定して8μm〜9μmの乾燥膜厚を算出した。
【0085】
実施例13
基材3を、生じる混合物の全体量に対して、0.25質量%の、約70000g/molの分子量、0%のアミド化度、52%のエステル化度、0%のエポキシ化度、87%のガラクツロン酸含量を有するペクチンと、生じる混合物の全体量に対して、0.25質量%の、約70000g/molの分子量、0%のアミド化度、10%のエステル化度、0%のエポキシ化度、85%のガラクツロン酸含量を有するペクチンと、99.5質量%の前記分散液Aとの混合物と混合した。この混合物に20%のヘキサフルオロジルコン酸14.0g/lを添加した。渦電流膜厚計(Wirbelstrom−Messgeraet)およびREMを用いて測定して16μm〜21μmの乾燥膜厚を算出した。
【0086】
実施例14
基材3を、生じる混合物の全体量に対して、0.25質量%の、約70000g/molの分子量、0%のアミド化度、52%のエステル化度、0%のエポキシ化度、87%のガラクツロン酸含量を有するペクチンと、生じる混合物の全体量に対して、0.25質量%の、約70000g/molの分子量、0%のアミド化度、10%のエステル化度、0%のエポキシ化度、85%のガラクツロン酸含量を有するペクチンと、99.5質量%の前記分散液Aとの混合物と混合した。この混合物に20%のヘキサフルオロジルコン酸24.0g/lを添加した。渦電流膜厚計(Wirbelstrom−Messgeraet)およびREMを用いて測定して20μm〜22μmの乾燥膜厚を算出した。
【0087】
実施例15
基材3を、生じる混合物の全体量に対して、0.25質量%の、約70000g/molの分子量、0%のアミド化度、52%のエステル化度、0%のエポキシ化度、87%のガラクツロン酸含量を有するペクチンと、生じる混合物の全体量に対して、0.25質量%の、約70000g/molの分子量、0%のアミド化度、10%のエステル化度、0%のエポキシ化度、85%のガラクツロン酸含量を有するペクチンと、99.5質量%の前記分散液Aとの混合物と混合した。この混合物に20%のヘキサフルオロジルコン酸44.0g/lを添加した。渦電流膜厚計(Wirbelstrom−Messgeraet)およびREMを用いて測定して24μmの乾燥膜厚を算出した。
【0088】
実施例16
基材1を、生じる混合物の全体量に対して、0.25質量%の、約70000g/molの分子量、0%のアミド化度、52%のエステル化度、0%のエポキシ化度、87%のガラクツロン酸含量を有するペクチンと、生じる混合物の全体量に対して、0.25質量%の、約70000g/molの分子量、0%のアミド化度、10%のエステル化度、0%のエポキシ化度、85%のガラクツロン酸含量を有するペクチンと、99.5質量%の前記分散液Aとの混合物と混合した。この混合物に20%のヘキサフルオロチタン酸1.0g/lを添加した。渦電流膜厚計(Wirbelstrom−Messgeraet)およびREMを用いて測定して52μm〜55μmの乾燥膜厚を算出した。
【0089】
実施例17
試験16を基材2で繰返し、かつREMで18μm〜24μmの乾燥膜厚を算出した。
【0090】
実施例18
試験16を基材3で繰返し、かつREMで6μm〜7μmの乾燥膜厚を算出した。
【0091】
実施例19
基材1を、生じる混合物の全体量に対して、
0.25質量%の、約70000g/molの分子量、0%のアミド化度、52%のエステル化度、0%のエポキシ化度、87%のガラクツロン酸含量を有するペクチンと、生じる混合物の全体量に対して、0.25質量%の、約70000g/molの分子量、0%のアミド化度、10%のエステル化度、0%のエポキシ化度、85%のガラクツロン酸含量を有するペクチンと、99.5質量%の前記分散液Aとの混合物と混合した。この混合物に20%のヘキサフルオロチタン酸2.0g/lを添加した。渦電流膜厚計(Wirbelstrom−Messgeraet)およびREMを用いて測定して60μm〜70μmの乾燥膜厚を算出した。
【0092】
実施例20
試験19を基材2で繰返し、かつREMで20μm〜22μmの乾燥膜厚を算出した。
【0093】
実施例21
試験19を基材3で繰返し、かつREMで8μm〜9μmの乾燥膜厚を算出した。
【0094】
実施例22
基材1を、生じる混合物の全体量に対して、0.25質量%の、約70000g/molの分子量、0%のアミド化度、52%のエステル化度、0%のエポキシ化度、87%のガラクツロン酸含量を有するペクチンと、生じる混合物の全体量に対して、0.25質量%の、約70000g/molの分子量、0%のアミド化度、10%のエステル化度、0%のエポキシ化度、85%のガラクツロン酸含量を有するペクチンと、99.5質量%の前記分散液Aとの混合物と混合した。この混合物に20%のヘキサフルオロチタン酸4.0g/lを添加した。渦電流膜厚計(Wirbelstrom−Messgeraet)およびREMを用いて測定して67μm〜73μmの乾燥膜厚を算出した。
【0095】
実施例23
試験22を基材2で繰返し、かつREMで6μm〜11μmの乾燥膜厚を算出した。
【0096】
実施例24
試験22を基材3で繰返し、かつREMで8μm〜10μmの乾燥膜厚を算出した。
【0097】
実施例25
基材1を、生じる混合物の全体量に対して、0.25質量%の、約70000g/molの分子量、0%のアミド化度、52%のエステル化度、0%のエポキシ化度、87%のガラクツロン酸含量を有するペクチンと、生じる混合物の全体量に対して、0.25質量%の、約70000g/molの分子量、0%のアミド化度、10%のエステル化度、0%のエポキシ化度、85%のガラクツロン酸含量を有するペクチンと、99.5質量%の前記分散液Aとの混合物と混合した。この混合物に20%のヘキサフルオロチタン酸6.0g/lを添加した。渦電流膜厚計(Wirbelstrom−Messgeraet)およびREMを用いて測定して70μm〜90μmの乾燥膜厚を算出した。
【0098】
実施例26
試験25を基材2で繰返し、かつREMで6μm〜12μmの乾燥膜厚を算出した。
【0099】
実施例27
試験25を基材3で繰返し、かつREMで7μm〜9μmの乾燥膜厚を算出した。
【0100】
実施例28
基材3を、生じる混合物の全体量に対して、0.25質量%の、約70000g/molの分子量、0%のアミド化度、52%のエステル化度、0%のエポキシ化度、87%のガラクツロン酸含量を有するペクチンと、生じる混合物の全体量に対して、0.25質量%の、約70000g/molの分子量、0%のアミド化度、10%のエステル化度、0%のエポキシ化度、85%のガラクツロン酸含量を有するペクチンと、99.5質量%の前記分散液Aとの混合物と混合した。この混合物に20%のヘキサフルオロチタン酸8.0g/lを添加した。渦電流膜厚計(Wirbelstrom−Messgeraet)およびREMを用いて測定して8μm〜11μmの乾燥膜厚を算出した。
【0101】
実施例29
基材3を、生じる混合物の全体量に対して、0.25質量%の、約70000g/molの分子量、0%のアミド化度、52%のエステル化度、0%のエポキシ化度、87%のガラクツロン酸含量を有するペクチンと、生じる混合物の全体量に対して、0.25質量%の、約70000g/molの分子量、0%のアミド化度、10%のエステル化度、0%のエポキシ化度、85%のガラクツロン酸含量を有するペクチンと、99.5質量%の前記分散液Aとの混合物と混合した。この混合物に20%のヘキサフルオロチタン酸10.0g/lを添加した。渦電流膜厚計(Wirbelstrom−Messgeraet)およびREMを用いて測定して8μm〜12μmの乾燥膜厚を算出した。
【0102】
実施例30
基材3を、生じる混合物の全体量に対して、0.25質量%の、約70000g/molの分子量、0%のアミド化度、52%のエステル化度、0%のエポキシ化度、87%のガラクツロン酸含量を有するペクチンと、生じる混合物の全体量に対して、0.25質量%の、約70000g/molの分子量、0%のアミド化度、10%のエステル化度、0%のエポキシ化度、85%のガラクツロン酸含量を有するペクチンと、99.5質量%の前記分散液Aとの混合物と混合した。この混合物に20%のヘキサフルオロチタン酸14.0g/lを添加した。渦電流膜厚計(Wirbelstrom−Messgeraet)およびREMを用いて測定して9μm〜11μmの乾燥膜厚を算出した。
【0103】
実施例31
基材3を、生じる混合物の全体量に対して、0.25質量%の、約70000g/molの分子量、0%のアミド化度、52%のエステル化度、0%のエポキシ化度、87%のガラクツロン酸含量を有するペクチンと、生じる混合物の全体量に対して、0.25質量%の、約70000g/molの分子量、0%のアミド化度、10%のエステル化度、0%のエポキシ化度、85%のガラクツロン酸含量を有するペクチンと、99.5質量%の上記分散液Aとの混合物と混合した。この混合物に20%のヘキサフルオロチタン酸24.0g/lを添加した。渦電流膜厚計(Wirbelstrom−Messgeraet)およびREMを用いて測定して12μm〜17μmの乾燥膜厚を算出した。
【0104】
実施例32
基材3を、生じる混合物の全体量に対して、0.25質量%の、約70000g/molの分子量、0%のアミド化度、52%のエステル化度、0%のエポキシ化度、87%のガラクツロン酸含量を有するペクチンと、生じる混合物の全体量に対して、0.25質量%の、約70000g/molの分子量、0%のアミド化度、10%のエステル化度、0%のエポキシ化度、85%のガラクツロン酸含量を有するペクチンと、99.5質量%の上記分散液Aとの混合物と混合した。この混合物に20%のヘキサフルオロチタン酸44.0g/lを添加した。渦電流膜厚計(Wirbelstrom−Messgeraet)およびREMを用いて測定して16μm〜24μmの乾燥膜厚を算出した。
【0105】
実施例33
基材1を、生じる混合物の全体量に対して、0.5質量%の、1%の酢酸中に溶解されて75〜85%のジアセチル化度を有するキトサンと、99.5質量%の分散液Aとの混合物と混合した。この混合物に20%のヘキサフルオロジルコン酸2.8g/lを添加した。渦電流膜厚計(Wirbelstrom−Messgeraet)およびREMを用いて測定して4μm〜6μmの乾燥膜厚を算出した。
【0106】
実施例34
基材1を、生じる混合物の全体量に対して、0.5質量%の、1%の酢酸中に溶解されて75〜85%のジアセチル化度を有するキトサンと、99.5質量%の上記分散液Bとの混合物と混合した。この混合物に20%のヘキサフルオロジルコン酸2.4g/lを添加した。渦電流膜厚計(Wirbelstrom−Messgeraet)およびREMを用いて測定して45μm〜50μmの乾燥膜厚を算出した。
【0107】
実施例35
試験35を基材3で繰返し、かつREMで3μm〜4μmの乾燥膜厚を算出した。
【0108】
実施例36
基材1を、生じる混合物の全体量に対して、0.5質量%の、約70000g/molの分子量および僅かなアシル含量を有するゲランガムと、99.5質量%の上記分散液Aとの混合物と混合した。この混合物に20%のヘキサフルオロジルコン酸2.0g/lを添加した。渦電流膜厚計(Wirbelstrom−Messgeraet)およびREMを用いて測定して5μm〜6μmの乾燥膜厚を算出した。
【0109】
実施例37
試験33を基材2で繰返し、かつREMで7μm〜8μmの乾燥膜厚を算出した。
【0110】
実施例38
試験33を基材3で繰返し、かつREMで7μm〜8μmの乾燥膜厚を算出した。
【0111】
比較例1
基材1を分散液Aで被覆した。乾燥膜厚は、REMで算出されなかった。
【0112】
比較例2
基材2を分散液Aで被覆した。乾燥膜厚は、REMで算出されなかった。
【0113】
比較例3
基材3を分散液Aで被覆した。乾燥膜厚は、REMで算出されなかった。
【0114】
比較例4
本明細書中に挙げられた高分子電解質による基材1の被覆は、分散液Aとの混合なしに、300nm〜500nmの乾燥膜厚をもたらした。
【0115】
比較例5
本明細書中に挙げられた高分子電解質による基材2の被覆は、分散液Aとの混合なしに、300nm〜500nmの乾燥膜厚をもたらした。
【0116】
比較例6
本明細書中に挙げられた高分子電解質による基材3の被覆は、分散液Aとの混合なしに、300nm〜500nmの乾燥膜厚をもたらした。
【0117】
顕微鏡写真は、例外なく均一な層形成を示し、このことは、信頼できる、自己調整的に良好に制御可能な被覆法を示す。