(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6656927
(24)【登録日】2020年2月7日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】シアノアクリレート組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 4/04 20060101AFI20200220BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
C09J4/04
C09J11/06
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-562372(P2015-562372)
(86)(22)【出願日】2014年2月21日
(65)【公表番号】特表2016-511317(P2016-511317A)
(43)【公表日】2016年4月14日
(86)【国際出願番号】IB2014000732
(87)【国際公開番号】WO2014140798
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2017年2月20日
【審判番号】不服2018-12884(P2018-12884/J1)
【審判請求日】2018年9月27日
(31)【優先権主張番号】13/838,303
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514056229
【氏名又は名称】ヘンケル アイピー アンド ホールディング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】ゴフ、 シアラ
(72)【発明者】
【氏名】フェラン、 マリサ
(72)【発明者】
【氏名】ガスリー、 ジョーン
(72)【発明者】
【氏名】ダッフィー、 コーマック
(72)【発明者】
【氏名】ホルン、 サビーネ
(72)【発明者】
【氏名】デスポトポーロー、 クリスティーナ
【合議体】
【審判長】
冨士 良宏
【審判官】
牟田 博一
【審判官】
蔵野 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】
特表昭57−501529(JP,A)
【文献】
特開昭50−048039(JP,A)
【文献】
特表2009−500517(JP,A)
【文献】
特開昭52−080336(JP,A)
【文献】
特開昭52−078933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00-201/10
CAPlus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アリル−2−シアノアクリレートと、
(b)芳香族酸無水物成分と、
を含み、
前記芳香族酸無水物成分が無水フタル酸または4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)であり、前記アリル−2−シアノアクリレートの量が50重量%〜99.98重量%である、シアノアクリレート接着剤組成物。
【請求項2】
安定化する量の酸性安定剤及びフリーラジカル抑制剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
H2C=C(CN)−COOR(式中、Rは、C1〜15アルキル、アルコキシアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アラルキル、アリール及びハロアルキル基から選択される)の構造の範囲内の物質、およびビスシアノアクリレートから選択されるシアノアクリレートモノマーを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
カリックスアレーン、オキサカリックスアレーン、シラクラウン、シクロデキストリン、クラウンエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、エトキシル化ヒドロキシ化合物、及びこれらの組合せからなる群から選択される促進剤成分を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記クラウンエーテルが、15−クラウン−5、18−クラウン−6、ジベンゾ−18−クラウン−6、ベンゾ−15−クラウン−5−ジベンゾ−24−クラウン−8、ジベンゾ−30−クラウン−10、トリベンゾ−18−クラウン−6、asym−ジベンゾ−22−クラウン−6、ジベンゾ−14−クラウン−4、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−24−クラウン−8、シクロヘキシル−12−クラウン−4、1,2−デカリル−15−クラウン−5、1,2−ナフト−15−クラウン−5、3,4,5−ナフチル−16−クラウン−5、1,2−メチル−ベンゾ−18−クラウン−6、1,2−メチルベンゾ−5、6−メチルベンゾ−18−クラウン−6、1,2−t−ブチル−18−クラウン−6、1,2−ビニルベンゾ−15−クラウン−5、1,2−ビニルベンゾ−18−クラウン−6、1,2−t−ブチル−シクロヘキシル−18−クラウン−6、asym−ジベンゾ−22−クラウン−6、及び1,2−ベンゾ−1,4−ベンゾ−5−オキシゲン−20−クラウン−7、並びにこれらの組合せからなる群内の構成物質から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記芳香族酸無水物成分の量が0.05重量%〜0.5重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
水素化した芳香族酸無水物成分を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の組成物の反応生成物。
【請求項9】
二つの基材を接合する方法であって、
基材の少なくとも一つに、請求項1に記載のシアノアクリレート接着剤組成物を塗布するステップと、
接着剤を硬化させるのに十分な時間、基材を一体にするステップと、
を含む方法。
【請求項10】
請求項1に記載のシアノアクリレート接着剤組成物を調製する方法であって、
アリル−2−シアノアクリレートを用意するステップと、
混合によりアリル−2−シアノアクリレートと酸無水物成分とを組み合わせるステップと、
を含む方法。
【請求項11】
鋼から構成される少なくとも一つの基材を有する接着体において硬化したシアノアクリレート組成物の耐水性を向上する方法であって、
基材の少なくとも一つに、請求項1に記載のシアノアクリレート接着剤組成物を塗布するステップであって、一体にする基材の少なくとも一つが鋼から構成されるステップと、
接着剤を硬化させるのに十分な時間、基材を一体にするステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
硬化時に向上した耐水性を付与する芳香族酸無水物成分を含む、アリルシアノアクリレート含有組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
シアノアクリレート接着剤組成物は周知であり、多種多様な用途をもつ、短時間で硬化する瞬間接着剤として広範に使用される。H.V.Coover、D.W.Dreifus及びJ.T.O’Connor、「Cyanoacrylate Adhesives」Handbook of Adhesives中、27、463〜77、I.Skeist編、Van Nostrand Reinhold、New York、第3版(1990)を参照のこと。G.H.Millet、「Cyanoacrylate Adhesives」Structural Adhesives:Chemistry and Technology中、S.R.Hartshorn編、Plenun Press、New York、249〜307ページ(1986)も参照のこと。
【0003】
産業市場において、硬化したシアノアクリレート接着剤の耐水性の向上が必要とされている。実際に、低耐水性は、温水で洗浄すると剥離する傾向のある組織接着剤など、シアノアクリレート系組織接着剤(商品名INDERMILで市販されているものなど)の特徴である。
【0004】
耐水性の欠如は、金属基材において特に明白であり、これにより産業的な利用が困難となっている。硬化したシアノアクリレート接着剤は水分に暴露した際、加水分解しやすく、これにより、硬化したシアノアクリレートの分子量が急速に減少する。結果として、接着強度が損なわれる。
【0005】
過去には、硬化したシアノアクリレート組成物の高い温度への暴露に着目した耐性を向上させるための取り組みが行われてきた。
【0006】
例えば、米国特許第3,832,334号は、無水マレイン酸の添加を対象とし、これにより、迅速な硬化速度を維持しつつ、向上した耐熱性(硬化時)を有するシアノアクリレート接着剤が製造されることが報告されている。
【0007】
米国特許第4,196,271号は、トリ−、テトラ−及びそれ以上のカルボン酸又はそれらの酸無水物を対象とし、これらは、硬化したシアノアクリレート接着剤の耐熱性の向上に有用であることが報告されている。
【0008】
米国特許第4,450,265号は、シアノアクリレート接着剤の耐熱性を向上させるための無水フタル酸の使用を対象とする。より具体的には、’265号特許は、主要部分が少なくとも1種の2−シアノアクリル酸のエステルを含む重合性の構成成分を含む接着剤組成物であり、当該組成物が、水分又は高い温度への暴露下において、当該組成物から形成される接着結合の強度及び/又は耐性に有利な影響を与えることに有効な比率の無水フタル酸を追加的に含むことを特徴とする接着剤組成物を対象とし、その権利を主張する。その有効な量とは、当該組成物の重量に対して0.1%〜5.0%、例えば0.3%〜0.7%と報告されている。’265号特許は、添加剤不使用の組成物、及び無水マレイン酸を使用した組成物に対する無水フタル酸の優位性を報告している(しかし、ステンレス鋼でのラップシェア試験の場合、アルミニウムでの同試験の場合に比してあまり明確ではない)。
【0009】
米国特許第4,532,293号は、シアノアクリレート接着剤に優れた耐熱性を付与するためのベンゼフェノンテトラカルボン酸又はその酸無水物の使用を対象とする。
【0010】
米国特許第4,490,515号は、熱間強度特性を改良する特定のマレイミド又はナジイミド化合物を含有するシアノアクリレート組成物を対象とする。
【0011】
最初の硬化が生じた後に(追加の工程段階又はそれが使用される環境の影響のいずれかとして)ポストベークが行われると、アリルシアノアクリレートがアリル官能基を介した架橋反応を示すことは既知のことである。これにより熱安定性の向上が得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
こうした取り組みにもかかわらず、特に相対湿度が高い条件下で、シアノアクリレート組成物からより強固な接着性能を得るという長年求められているが、いまだ満たされていない要望がある。したがって、この要望を解決することは非常に有益と考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、硬化時に向上した耐水性を付与するシアノアクリレート組成物に関して記載することにより、その解決策を提供する。概して、当該シアノアクリレート組成物は(a)アリルシアノアクリレートと、(b)芳香族酸無水物成分と、を含む。
【0014】
また本発明は、二つの基材を接合する方法であって、基材の少なくとも一つに上記組成物を塗布するステップと、その後基材を一体にするステップと、を含む方法、及び硬化したシアノアクリレート組成物の耐水性を向上させる方法も対象とする。
【0015】
また本発明は、本発明の組成物を調製する方法も対象とする。
【0016】
更に本発明は、本発明の組成物の反応生成物も対象とする。
【0017】
本発明は、下記の「発明を実施するための形態」と題される項を読むことでより十分に理解されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】軟鋼基材における(温度40℃及び相対湿度98%の条件下)酸無水物を添加した場合と添加していない場合のエチル−2−シアノアクリレートの接着強度、及び酸無水物を添加したアリル−2−シアノアクリレートの接着強度を示す図である。
【
図2】軟鋼基材における(温度65℃及び相対湿度95%の条件下)酸無水物を添加したエチル−2−シアノアクリレート、及びアリル−2−シアノアクリレートの接着強度を示す図である。
【
図3】軟鋼基材における、温度65℃及び相対湿度95%の条件下での多種類のシアノアクリレート組成物の経時的な(数週間)接着強度を示す図である。
【
図4】軟鋼基材における、温度40℃及び相対湿度98%の条件下での、アリルシアノアクリレート及びエチルシアノアクリレートを様々な濃度で含有する多種類のシアノアクリレート組成物の経時的な(数週間)接着強度を示す図である。
【
図5】軟鋼基材における、温度65℃及び相対湿度95%の条件下での、アリルシアノアクリレート及びエチルシアノアクリレートを様々な濃度で含有する多種類のシアノアクリレート組成物の経時的な(数週間)接着強度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
上記のとおり、本発明は、硬化時に向上した耐水性を付与するシアノアクリレート組成物を対象とする。当該シアノアクリレート組成物は、(a)アリルシアノアクリレートと、(b)酸無水物成分と、を含む。
【0020】
アリル−2−シアノアクリレートは、全組成物の約50重量%〜約99.98重量%の範囲内の量で組成物中に含まれるべきであり、約90重量%〜約99重量%の範囲内であることが望ましく、約95重量%が特に望ましい。
【0021】
アリル−2−シアノアクリレートに加えて、当該シアノアクリレート組成物は、H
2C=C(CN)−COOR(式中、Rは、C
1〜15アルキル、アルコキシアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アラルキル、アリール及びハロアルキル基より選択される)と表記されるものなどの他のシアノアクリレートモノマーも含んでもよい。望ましくは、シアノアクリレートモノマーは、メチルシアノアクリレート、エチル−2−シアノアクリレート、プロピルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート(n−ブチル−2−シアノアクリレートなど)、オクチルシアノアクリレート、β−メトキシエチルシアノアクリレート及びこれらの組合せから選択される。ビスシアノアクリレートも含まれてもよい。
【0022】
芳香族酸無水物成分は、任意の芳香族酸無水物であってよいが、無水フタル酸又は4,4’−(4,4’−イソプロピリドンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)が望ましい。
【0023】
芳香族酸無水物成分に加え、水素化した又は部分的に水素化した芳香族酸無水物も含んでもよい。水素化した芳香族酸無水物の一つの例は、3,4,5,6−テトラヒドロ無水フタル酸などの水素化した無水フタル酸である。またその異性体及び無水フタル酸が部分的に水素化したものも使用してよい。
【0024】
芳香族酸無水物成分は、例えば、約0.05重量%〜約0.5重量%の範囲内など、約1重量%以下の量で使用されるべきである。
【0025】
本発明のシアノアクリレート組成物中には、例えば、カリックスアレーン及びオキサカリックスアレーン、シラクラウン、クラウンエーテル、シクロデキストリン、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、エトキシル化ヒドロキシ化合物及びこれらの組合せから選択されるいずれか1種又は複数の促進剤も含まれてもよい。
【0026】
カリックスアレーン及びオキサカリックスアレーンの多くは既知であり、特許文献で報告されている。米国特許第4,556,700号、第4,622,414号、第4,636,539号、第4,695,615号、第4,718,966号、及び第4,855,461号などを参照すること。これにより、その各開示が参照によって本明細書に明確に組み込まれる。
【0027】
例えば、カリックスアレーンに関しては、以下の構造の範囲内のものが、本明細書において有用である。
【0028】
【化1】
式中、R
1はアルキル、アルコキシ、置換されたアルキル又は置換されたアルコキシ、R
2はH又はアルキル、nは4、6又は8である。
【0029】
一つの特に望ましいカリックスアレーンは、テトラブチルテトラ[2−エトキシ−2−オキソエトキシ]カリックス−4−アレーンである。
【0030】
多くのクラウンエーテルは既知である。例えば、本明細書において個別又は組合せのいずれかで使用してもよい例として、15−クラウン−5、18−クラウン−6、ジベンゾ−18−クラウン−6、ベンゾ−15−クラウン−5−ジベンゾ−24−クラウン−8、ジベンゾ−30−クラウン−10、トリベンゾ−18−クラウン−6、asym−ジベンゾ−22−クラウン−6、ジベンゾ−14−クラウン−4、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−24−クラウン−8、シクロヘキシル−12−クラウン−4、1,2−デカリル−15−クラウン−5、1,2−ナフト−15−クラウン−5、3,4,5−ナフチル−16−クラウン−5、1,2−メチル−ベンゾ−18−クラウン−6、1,2−メチルベンゾ−5、6−メチルベンゾ−18−クラウン−6、1,2−t−ブチル−18−クラウン−6、1,2−ビニルベンゾ−15−クラウン−5、1,2−ビニルベンゾ−18−クラウン−6、1,2−t−ブチル−シクロヘキシル−18−クラウン−6、asym−ジベンゾ−22−クラウン−6及び1,2−ベンゾ−1,4−ベンゾ−5−オキシゲン−20−クラウン−7が挙げられる。米国特許第4,837,260号(Sato)を参照すること。これにより、その開示が参照によって本明細書に明確に組み込まれる。
【0031】
シラクラウンの多くもまた既知であり、文献で報告されている。
【0032】
本発明の組成物において有用なシラクラウン化合物の具体的な例として、
【0033】
【化2】
ジメチルシラ−11−クラウン−4、
【0034】
【化3】
ジメチルシラ−14−クラウン−5、
【0035】
【化4】
及びジメチルシラ−17−クラウン−6が挙げられる。
米国特許第4,906,317号(Liu)などを参照すること。これにより、その開示が参照によって本明細書に明確に組み込まれる。
【0036】
本発明に関して多くのシクロデキストリンを使用できる。例えば、その開示がこれにより参照によって本明細書に明確に組み込まれる米国特許第5,312,864号(Wenz)に、α、β又はγ−シクロデキストリンの水酸基誘導体として記載され、その権利が主張されるシクロデキストリンは、促進剤成分として適切な選択である。
【0037】
例えば、本明細書における使用に適したポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレートには、以下の構造の範囲内のものが含まれる。
【0038】
【化5】
式中、nは3よりも大きく、例えば3〜12の範囲内であって、nが9であることが特に望ましい。より具体的な例として、PEG 200 DMA(nは約4)、PEG 400 DMA(nは約9)、PEG 600 DMA(nは約14)、及びPEG 800 DMA(nは約19)が挙げられる。ここで、数値(例えば400)は、二つのメタクリレート基を除外した当該分子のグリコール部分の平均分子量を、グラム/モル(すなわち、400g/mol)で表記したものである。特に望ましいPEG DMAはPEG 400 DMAである。
【0039】
また、エトキシル化ヒドロキシ化合物(ethoxylated hydric compound)(または、使用され得るエトキシル化された脂肪族アルコール)のうち、適切なものは、以下の構造の範囲内のものから選択してもよい。
【0040】
【化6】
式中、C
mは、直鎖状又は分岐状のアルキル鎖又はアルケニル鎖であることができ、mは、例えば5〜20など、1〜30の間の整数、nは、例えば5〜15など、2〜30の間の整数、及びRは、H又はC
1〜6アルキルなどのアルキルであってよい。
【0041】
使用する際、上記構造に含まれる促進剤は、組成物中に、全組成物の約0.01重量%〜約10重量%の範囲内の量で含まれるべきであり、約0.1重量%〜約0.5重量%の範囲内であることが望ましく、約0.4重量%が特に望ましい。
【0042】
通常、安定剤パッケージもシアノアクリレート組成物中に含まれる。前記安定剤パッケージは、1種又は複数のフリーラジカル安定剤及びアニオン安定剤を含んでもよく、それぞれの内容及び量は、当業者に周知である。米国特許第5,530,037号及び第6,607,632号を参照すること。これにより、その各開示が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0043】
特定の酸性物質(クエン酸など)、チクソトロピー剤又はゲル化剤、ゴム強化剤、増粘剤、着色剤、及びこれらの組合せなど、他の添加剤が本発明のシアノアクリレート組成物中に含まれてもよい。
【0044】
本発明の別の態様では、二つの基材を接合する方法であって、基材の少なくとも一つに上記組成物を塗布するステップと、その後接着剤を固定させるのに十分な時間、基材を一体にするステップと、を含む方法が提供される。多くの応用のため、基材は本発明の組成物により、約150秒未満、基材によっては約30秒程度で固定されるべきである。
【0045】
本発明の更に別の態様では、上記組成物の硬化した反応生成物が提供される。
【0046】
また本発明の別の態様では、上記組成物を調製する方法が提供される。
【0047】
本発明を、以下の実施例により更に説明する。
【実施例】
【0048】
すべての試料は、記載した構成成分を、十分な均質性が確保されるのに十分な時間、共に混合することにより調製した。使用する構成成分の量に対する工程にもよるが、通常は約30分で十分である。
【0049】
初めに、試料B〜E(酸無水物を含まない試料Aを対照として用いる)を作成し、それぞれPMMAを6.5重量%、クラウンエーテルを0.1重量%及びBF
3を7ppm含有する種々の芳香族酸無水物及び水素化した酸無水物を、エチルシアノアクリレート組成物中、評価した。当該配合の詳細は以下の表1に明記する。
【0050】
【表1】
【0051】
また、試料F〜Jを作成し、それぞれPMMAを6.5重量%、クラウンエーテルを0.1重量%及びBF
3を7ppm含有する種々の芳香族酸無水物及び水素化した芳香族酸無水物を、アリルシアノアクリレート(「アリルCA」又は「ACA」)組成物中、評価した。試料Eを対照として用いる。当該配合の詳細は表2に明記する。
【0052】
【表2】
【0053】
表3〜5は、相対湿度98%又は95%及び温度40℃又は65℃のいずれかにおける、軟鋼重ねせん断組立品の経時的な接着強度維持を示す。
図1〜3の資料は、当該データをグラフで示す。
【0054】
次に、アリルシアノアクリレート及びエチルシアノアクリレート(「エチルCA」又は「ECA」)を表6に示すとおり、個別又は10%単位で増減した組合せで使用した。また各試料には、PMMAを6.5重量%、クラウンエーテルを0.1重量%、BF
3を7ppm及び無水フタル酸を0.5重量%で使用した。
【0055】
表3は、軟鋼ラップシェア用組立品における経時的な接着強度データを示す。
図1の参照により、無水フタル酸を0.5%添加したアリルシアノアクリレート組成物(試料J)は、その対応物であるエチルシアノアクリレート組成物(試料C)より著しく優れることが認められる。3種すべての酸無水物を添加したアリルシアノアクリレート組成物(試料I)と、その対応物であるエチルシアノアクリレート組成物(試料D)との比較により、同様の所見がみられた。表4は、軟鋼基材における経時的な接着強度データを示す。
図2の参照により、3種すべての酸無水物を0.09%未満の濃度で添加したアリルシアノアクリレート組成物(試料I)は、その対応物であるエチルシアノアクリレート組成物(試料D)より著しく優れることが認められる。表5は、軟鋼基材における経時的な接着強度データを示す。
図3の参照により、いずれかの酸無水物を添加したアリルシアノアクリレート組成物(試料F、H、I及びJ)は、その対応物であるエチルシアノアクリレート組成物より著しく優れることが認められる。
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】
【0059】
【表6】
【0060】
湿気性能評価のため、試料番号1〜13を、それぞれラップシェア用軟鋼に塗布し、接着組立品を準備した。表7及び8は、相対湿度98%又は95%及び40℃又は65℃のいずれかにおける、鋼ラップシェア用組立品の経時的な接着強度維持を示す。表7に示されるデータは、
図4の資料にグラフで表示される。表8に示されるデータは、
図5の資料にグラフで表示される。
【0061】
【表7】
【0062】
【表8】
【0063】
図4及び5の参照により、特に、アリルシアノアクリレート濃度が全組成物の40重量%以上である組成物から得られたデータをみると、アリルシアノアクリレート/酸無水物組成物が、エチルシアノアクリレート/酸無水物組成物より優れることが認められる。