(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
インクジェットヘッドのメンテナンス時に、前記インクジェットヘッドのノズル面と対面して貯液空間を形成するよう近接して配置される上面を有し、かつ前記上面に開口する液体供給孔および液体回収孔を含む基台と、
前記貯液空間に液体を前記液体供給孔から供給することにより、前記貯液空間を前記液体で充満させるとともに保持した状態で前記ノズル面を洗浄する液体供給部と、
前記貯液空間内の前記液体を前記液体回収孔から回収する液体回収部と、を備えるインクジェットヘッドのメンテナンス装置。
さらに、前記液体供給孔から前記洗浄液を供給することと、前記液体回収孔から前記洗浄液を回収することとを、同時に行うステップを含む請求項6に記載のインクジェットヘッドのメンテナンス方法
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたインクジェットヘッドの洗浄装置では、洗浄液保持プレートに対するインクジェットヘッドの移動により、確かに洗浄液は撥液処理されたノズル面には残留せず、より濡れ性の高い洗浄液保持面に残留する。しかしながら、実用化されているインジェットヘッドでは、撥液処理されたノズル面だけが際立って突き出ているのではなくて、ヘッドを構成する部分がノズル面の周囲にノズル面と同一面上、あるいは数10〜数100μmの段差分離れた面上に存在する。ノズル面の周囲でインクジェットヘッドを構成する部分がある面をノズル周囲面と呼ぶことにすると、ノズル周囲面は通常は撥液処理されていない。したがって、洗浄液と接触するノズル面が移動して、ノズル面の移動方向に隣り合うノズル周囲面が洗浄液と接触すると、ノズル面には付着しなかった洗浄液がノズル周囲面には付着して残留することになる。ノズル周囲面に汚れを含んだ洗浄液が残存したまま、インクジェットヘッドで塗布を行おうとすると、インクジェットヘッドのノズル面を基板に近接させた時に、ノズル周囲面に残存した洗浄液を、基板に付着させて、基板を不良品にしてしまうとともに、インクジェットヘッドでの塗布作業を実行不能にしてしまう。さらにはインクジェットヘッドによっては、ノズル面とノズル周囲面とを区切る溝があるものがあり、ノズル面の移動時にこの溝に洗浄液が捕捉されて残留する。捕捉される洗浄液量が多いと、洗浄液の一部は溝をはみ出て、ノズル周囲面はもちろんのこと、ノズル面にも付着残留する。ノズル面とノズル周囲面を連続した同一面にし、ノズル面の移動方向に隣り合うノズル周囲面の部分に撥液処理を施せば、上記の問題はなく、特許文献1のインクジェットヘッドの洗浄装置で洗浄を行えるのであるが、撥液処理面積が増大して、インクジェットヘッドが非常に高価となる。1台の塗布装置では膨大な数のインクジェットヘッドを使用しており、単体のインクジェットヘッドが非常に高価となると、塗布装置に莫大な費用が必要となり、撥液処理面積の増大は実用的な解決策とならない。
【0006】
さらに特許文献1のインクジェットヘッドの洗浄装置では、上記したように、汚れを含む洗浄液からインクジェットヘッドのノズル面を引き離すことになるが、ノズル面の撥液性が低下してくると、ノズル面に汚れが再付着する可能性が非常に高くなる。その可能性を皆無とするには、洗浄液保持面上の汚れを含む洗浄液を、汚れを含まない新たな洗浄液に更新すればよいのであるが、洗浄液保持面の一端にある洗浄液供給穴から新たな洗浄液を供給しても、新たな洗浄液は洗浄液供給穴の近くで洗浄液保持面からあふれ出てしまい、離れた位置まで達しない。したがって、汚れを含む洗浄液が新たな洗浄液に更新されるのは、洗浄液供給穴の近くだけで、大半の部分では更新されない。このため、上記のノズル面に汚れが再付着する可能性は依然高いままで、少しも改善することができない。
【0007】
以上より、インクジェットヘッドのノズル面に、洗浄液のみを接触させていわゆる非接触洗浄を行うインクジェットヘッドの洗浄装置で、汚れが確実に除去できる高品質の洗浄が行えて、かつ実用化されているインクジェットヘッドに適用できるものはない、というのが現状である。
【0008】
この発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、インクジェットヘッドのノズル面に洗浄液等の液体のみを接触させて行う非接触洗浄などのメンテナンス時に、いかなるインクジェットヘッドであっても、ノズル面とその周囲にある部分に、確実に液体や汚れが付着・残存しないようにして高品質のメンテナンスを行うことが可能なインクジェットヘッドのメンテナンス装置およびインクジェットヘッドのメンテナンス方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のインクジェットヘッドのメンテナンス装置は、インクジェットヘッドのメンテナンス時に、インクジェットヘッドのノズル面と対面して貯液空間を形成するよう近接して配置される上面を有し、かつ上面に開口する液体供給孔および液体回収孔を含む基台と、貯液空間に液体を液体供給孔から供給する
ことにより、貯液空間を液体で充満させるとともに保持した状態でノズル面を洗浄する液体供給部と、貯液空間内の液体を液体回収孔から回収する液体回収部と、を備える。
【0010】
このインクジェットヘッドのメンテナンス装置では、上記の構成により、液体回収孔から直接、貯液空間内の液体を回収することができる。それにより、従来のようにインクジェットヘッドを移動させることなく静止した状態で、貯液空間の液体をノズル面に残存しないようにして回収することができるので、ノズル面の周囲にあって貯液空間の範囲外となるノズル周囲面に、洗浄液や汚れを付着・残存させることはない。その結果、ノズル面の汚れが完全に除去される非接触洗浄を、インクジェットヘッドのノズル面とその周囲にある部分に洗浄液や汚れを付着・残存させることなく、行うことができる。したがって、洗浄等のメンテナンス後にノズル面に残存した液体や汚れに起因して、インクジェットヘッドからインク(塗布液)が吐出できなくなることや、ノズル面に残存した液体が落下してメンテナンス位置から塗布作業位置に移動する途中の領域に付着したりすることなど、インクジェットヘッドの動作に関する不都合を排除することができる。
【0011】
上記のインクジェットヘッドのメンテナンス装置において、好ましくは、基台が、液体の回収を加速する液体回収促進手段を含む。この場合、好ましくは、液体回収促進手段は、液体を液体回収孔に引き寄せるものであって、液体回収孔の外部にある第1部分と液体回収孔の内部にある第2部分とを備え、第1部分は第2部分に連なっている。このように構成すれば、液体が第1部分と第2部分に沿って流れ落ちることで発生する液体回収促進手段の液体の引き寄せ作用によって、貯液空間に充満して貯液している液体を、液体回収促進手段のある液体回収孔の方に、早く引き寄せることが可能となる。その結果、液体回収促進手段によって、貯液空間内に貯液した液体の回収を加速することができ、短い時間での液体の回収が可能となる。
【0012】
さらに上記インクジェットヘッドのメンテナンス装置において、好ましくは、貯液空間からもれ出す液体を回収するもれ出し液体受け部をさらに備える。このように構成すれば、新たな液体を貯液空間に供給して、余剰となった液体を押し出して多量にもれ出させた場合でも、もれ出した液体をもれ出し液体受け部に容易に回収することができる。
【0013】
上記のインクジェットヘッドのメンテナンス装置において、好ましくは、基台の上面を加熱する加熱手段をさらに備える。このように構成すれば、貯液空間内の液体を加熱して、その温度を上昇させることができる。これにより、インクジェットヘッドのノズル面に付着したインク等の塗布液や汚れを、高い温度の洗浄液に溶解したり分離したりすることが容易にできる。その結果、加熱手段によって、インクジェットヘッドの洗浄性を高めることができる。
【0014】
この発明によるインクジェットヘッドのメンテナンス方法は、上記に記載のインクジェットヘッドのメンテナンス装置を用いたメンテナンス方法であって、液体供給孔からインクジェットヘッドのノズル面を洗浄する洗浄液を供給して貯液空間に貯液する
ことにより、貯液空間を洗浄液で充満させるとともに保持した状態でノズル面を洗浄するステップと、液体回収孔から貯液空間に貯液した洗浄液を回収するステップと、を含む。好ましくは、さらに、液体供給孔から洗浄液を供給することと、液体回収孔から洗浄液を回収することとを、同時に行うステップを含む。
【0015】
この発明によるインクジェットヘッドのメンテナンス方法では、上記したステップを実施することにより、液体回収孔から直接、洗浄が行われる貯液空間内の洗浄液を回収することができる。その結果、ノズル面の汚れが完全に除去される非接触洗浄を、インクジェットヘッドのノズル面とその周囲にある部分に洗浄液や汚れを付着・残存させることなく行うことができる。したがって、洗浄後にノズル面に残存した洗浄液や汚れに起因して、インクジェットヘッドからインクが吐出できなくなることや、ノズル面に残存した洗浄液が落下してメンテナンス位置から塗布作業位置に移動する途中の領域に付着したりすることなど、インクジェットヘッドの動作に関する不都合を排除することができる。さらにまた液体供給孔から洗浄液を供給することと、液体回収孔から洗浄液を回収することとを、同時に行うステップを実行することによって、貯液空間に貯液されている汚れを含む洗浄液を液体回収孔から回収しつつ、液体供給孔から新たな洗浄液を供給することができる。これによって新たな洗浄液で、汚れを含む洗浄液を液体回収孔の方に押し流していくことになるので、貯液空間内の汚れを含む洗浄液を新たな洗浄液に完全に更新することが可能となる。貯液空間に貯液されている汚れを含む洗浄液を単に回収するだけでは、汚れがノズル面に再付着する可能性が非常に高かったが、貯液空間内の汚れを含む洗浄液を新たな洗浄液に更新してから回収することができるようになった結果、汚れがノズル面に再付着する可能性が皆無となる。これによって、汚れが確実に除去できる高品質の洗浄が実現できる。
【0016】
この発明による別のインクジェットヘッドのメンテナンス方法は、上記に記載のインクジェットヘッドのメンテナンス装置を用いたメンテナンス方法であって、液体供給孔からインクジェットヘッドのノズル面を保護するための保護液を供給して貯液空間に貯液するステップと、貯液してから一定時間後に保護液を回収するステップと、を含む。なお、インクジェットヘッドのノズル面の保護とは、インクジェットヘッドを長期間使用しない場合などに、ノズル面やノズル面内にあるインク吐出口が空気に接触して乾燥しないように、インクジェットヘッドのノズル面に液膜を被覆して、空気との接触を断つことを示す概念である。
【0017】
この発明による別のインクジェットヘッドのメンテナンス方法では、上記したステップを実施することによって、インクジェットヘッドのノズル面や、インク吐出口が液体に被われて保護されるので、空気に接触して発生する乾燥や蒸発を、非常に長い時間にわたって防止することができる。これにより、インクジェットヘッドの長時間にわたる待機や長期間の保管、保存が可能となる。さらにはこれらの待機、保管、保存後すぐに、インクジェットヘッドの使用を再開することも可能となる。
【0018】
この発明によるさらに別のインクジェットヘッドのメンテナンス方法は、上記に記載のインクジェットヘッドのメンテナンス装置を用いたメンテナンス方法であって、インクジェットヘッドから塗布液を吐出して貯液空間に貯液するステップと、貯液空間に貯液した塗布液を液体回収孔から回収するステップと、を含む。
【0019】
この発明によるさらに別のインクジェットヘッドのメンテナンス方法では、上記したステップを実施することによって、インク吐出口の付着異物起因のつまりを解消する等のために、インクジェットヘッドから塗布液を高速で吐出するプリードを行っても、通常のブリード時には発生する塗布液粒を、ノズル面等に発生させないことが可能となる。また塗布液粒が発生しないまま、吐出された塗布液をノズル面等に付着・残存させることなく回収することもできる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のインクジェットヘッドのメンテナンス装置およびメンテナンス方法によれば、上記のように、インクジェットヘッドのノズル面と、基台の上面との間に形成する貯液空間に貯液される洗浄液等の液体を、インクジェットヘッドを基台に対して静止した状態で、ノズル面に残存しないようにして回収することができる。これによって、インクジェットヘッドのノズル面に洗浄液等の液体のみを接触させて行う非接触洗浄などのメンテナンス時に、いかなるインクジェットヘッドであっても、そのノズル面とその周囲にある部分に液体や汚れを付着・残存させることなく、確実に高品質のメンテナンスを行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
[第1実施形態]
(インクジェットのメンテナンス装置の構成)
図1を参照して、本発明の第1実施形態によるメンテナンス装置100aの構成について説明する。
【0024】
図1を見ると、本発明の第1実施形態であるインクジェットヘッド1のメンテナンス装置100aが示されている。メンテナンス装置100aは、インク等の塗布液を吐出するインク吐出口12を含む面となるノズル面11に対して、洗浄等のメンテナンスを行う装置で、インクジェット塗布装置100の一部として構成されている。たとえば、インクジェットヘッド1が、図示されていないインクジェット塗布装置100の他の部分で塗布を行っていて、インクジェットヘッド1の下端面13よりも撥液層の厚さだけ下方にあるノズル面11に、塗布を継続できない汚れが発生すれば、インクジェットヘッド1はメンテナンス装置100aの方に移動してくる。そしてメンテナンス装置100aでノズル面11の洗浄を行って汚れを除去すれば、インクジェットヘッド1はインクジェット塗布装置100のもとの場所に戻って、塗布作業を継続する。なお下端面13は、ノズル面11の周囲にある部分であるノズル周囲面となる。さて、上記の洗浄を含むメンテナンス機能を有するインクジェットヘッド1のメンテナンス装置100aは、基台3と、基台3を支持する支持部7と、基台3に洗浄液を供給する液体供給部2と、基台3に供給した洗浄液をすべて回収する回収部9と、基台3を加熱する加熱手段4と、から構成されている。そして、洗浄等のメンテナンスの動作は、インクジェットヘッド塗布装置100の一部となる図示されていないコンピュータからなる制御装置により制御される。次に、メンテナンス装置100aを構成する各部分の詳細について、順に説明する。
【0025】
まずインクジェットヘッド1の直下にある基台3の本体35の上部には、上面31が備えられている。略平坦に形成されている上面31は、インクジェットヘッド1のノズル面11と一定の長さだけ離れて対面(対向)可能となっており、インクジェットヘッド1のメンテナンス時に、両者間に貯液空間Sを形成する。さらに基台3の本体35の内部には、上面31の一部で開口する液体供給孔32と、液体回収孔33とが備えられている。この液体供給孔32と液体回収孔33はともに、上下方向(Z方向)に本体35を貫通する貫通孔となっており、上面31の上下方向での反対側となる下面34でも開口している。そして下面34でのそれぞれの開口で、液体供給孔32は液体供給部2に至る液体供給管23に接続され、液体回収孔33は液体回収部6のメイン回収トレイ63に至る液体回収管61に接続されている。なお液体回収部6は、回収部9の一部であり、貯液空間S内の液体を液体回収孔33から回収する。また液体供給部2は、洗浄液を貯蔵する貯蔵タンク21と、洗浄液を一定量送液するポンプ22と、ポンプ22からの液体供給管23を通じての送液/遮断を律する送液バルブ24より構成される。この構成によって、貯蔵タンク21内に貯えられた洗浄液は、ポンプ22から基台3に供給され、液体供給孔32の上面31上にある開口36から吐出される。このように液体供給孔32の上面31上にある開口36から吐出された洗浄液は、上面31の全面に広がりながら、上下方向に上側に向かって積み上げられて、ノズル面11に接触して貯液空間Sに充満することになる。そして、上面31とノズル面11の縁部で、洗浄液の表面張力により洗浄液の充満状態が維持されて、貯液空間Sに洗浄液が貯液されることになる。この時、液体回収管61の下流に接続されている、液体回収部6を構成する回収バルブ62が閉であると、貯液されている洗浄液は貯液空間S内に留まる。回収バルブ62が開であると、上面31上の洗浄液は、液体回収孔33の上面31上にある開口37から回収され、液体回収管61、回収バルブ62を順次通過して、メイン回収トレイ63に落下して貯えられる。
【0026】
また本体35の下面34のX方向中央部には、加熱手段4が密着して固定されている。加熱手段4は、基台3を加熱するヒータであり、板状のプレートヒータやラバーヒータ等が、好ましく適用される。加熱手段4によって基台3全体が加熱されるので、上面31も加熱される。したがって貯液空間S内に洗浄液が貯液されている場合は、貯液されている洗浄液を所定の温度まで加熱することができる。すなわち、インクジェットヘッドのメンテナンス装置100aは、基台3の上面31を加熱する加熱手段4をさらに備える。
【0027】
さらに基台3は、下面34のX方向両端部となる位置で、支持部7を構成する門型フレーム72の上側にある支持面73で支持されている。そして門型フレーム72そのものは、これまた支持部7を構成するベース71上に固定されている。ベース71上にはまた、もれ出し液体受け部8を構成するサブ回収トレイ81も固定されている。もれ出し液体受け部8は回収部9の一部分である。上記したように、貯液空間Sに洗浄液を貯液している時に、さらに洗浄液を液体供給孔32から供給すると、洗浄液の表面張力で液体の充満状態を維持できなくなって、貯液空間S内の洗浄液の一部が、貯液の形状を維持しながら、基台3の上面31の縁部からあふれてもれ出す。もれ出した洗浄液は、本体35の側面を伝わって落下し、さらに門型フレーム72の支持面73の端部に固定されたもれ出し液体受け部8の一部となる案内板83に案内されて、サブ回収トレイ81に回収される。なおサブ回収トレイ81は、上側から見ると「回」の字形状(すなわち、2重矩形)をしていて、
図1に示される2箇所ある液溜め部は連通している。すなわち、サブ回収トレイ81の液溜め部が、基台3とそれを支持する門型フレーム72との周囲を取り囲む構成となっている。そのため、サブ回収トレイ81に溜まった洗浄液は、1箇所だけ設置された液体排出管82を通って落下し、メイン回収トレイ63に最終的に回収される。なお基台3に供給された洗浄液は、蒸発分を除いたほぼ全てがメイン回収トレイ63に回収して貯えられるが、それがある一定量以上になった時には、排出するか廃棄することが好ましい。以上より、インクジェットヘッドのメンテナンス装置100aは、貯液空間Sからもれ出す液体を回収するもれ出し液体受け部8をさらに備える。
【0028】
次に、
図2を参照して、インクジェットヘッド1のメンテナンス装置100aを用いた本発明のインクジェットヘッドのメンテナンス方法である、ノズル面11の洗浄方法について説明する。
図2(a)〜(f)には、
図1で示されるインクジェットヘッド1と基台3の一部とその周囲を拡大して示す正面断面図(Y方向に見た図)が配置されている。またステップS0〜S5が
図2(a)〜(f)に対応していて、それぞれのステップの時の状況や各部の動作の結果が、対応する図に示される。ステップSは数字の大きい方が時間的に後になる。
図2にその実行状況が示されるステップSを実施することによって、液体供給孔32からインクジェットヘッド1のノズル面11を洗浄する洗浄液を供給して貯液空間Sに貯液するステップと、液体回収孔33から貯液空間Sに貯液した洗浄液を回収するステップと、を含むインクジェットヘッドのメンテナンス方法を実現することになる。それに加えて、液体供給孔32から洗浄液を供給することと、液体回収孔33から洗浄液を回収することとを、同時に行うステップを含むンクジェットヘッドのメンテナンス方法も実現することになる。以下、
図2のステップSをたどって、順番に説明する。
【0029】
(ステップS0)(
図2(a)の状況)
ノズル面11の洗浄の準備ステップである。インクジェットヘッド1が塗布を終了し、そのインクやインク固化物が汚れDiとして付着残留したノズル面11の洗浄のために、基台3の上面31の直上位置まで移動し一旦停止する。この時、ノズル面11と上面31は、XとY方向にほぼ重なる位置にある。すなわちZ方向にノズル面11と上面31を見ると、ほぼ重なってみえる。この状態でインクジェットヘッドユニット1をZ方向である上下方向に下降させ、上面31とノズル面11との間の間隙が長さLsとなる位置で、インクジェットヘッド1を停止させる。これによって、上面31とノズル面11との間に、間隙が長さLsである貯液空間Sが形成される。この時、送液バルブ24、回収バルブ62ともに閉である。洗浄液は、貯蔵タンク21から、ポンプ22、液体供給管23の送液バルブ24まで充満しており、送液バルブ24を開にして、ポンプ22を駆動すれば、いつでも洗浄液を基台3に送液できる状態にある。
(ステップS1)(
図2(b)の状況)
貯液空間Sに洗浄液を充填(供給)するステップである。ポンプ22を駆動し、送液バルブ24を開にしてから、洗浄液を所定流量Q1(単位時間当たりの液体量)にて一定の液体量V1(容積)だけ、ポンプ22から送液し、送液を終了すれば、送液バルブ24を閉にする。これによって、上面31にある液体供給孔32の開口36から洗浄液が吐出される。吐出された洗浄液で、上面31上を左側に向かうものと、紙面に直交する方向に向かうものは、上面31の縁部で表面張力の作用により一旦停止する。その間に上面31上を洗浄液が積みあがって、ノズル面11に接触し、貯液空間Sの液体供給孔32の開口36の周囲部分の領域で、一旦洗浄液が充満した状態になる。そして液体供給孔32の開口36から吐出された洗浄液で、上面31上を液体回収孔33の開口37のある右側に向かうものにあわせて、漸次充満領域が右側に拡大していき(
図2(b)で示される状態)、最終的に貯液空間S全体が洗浄液の充満領域となる。この状態からさらに洗浄液が供給されると、充満した状態を維持しながら、上面31の縁部から過剰分の洗浄液がもれ出す。もれ出した洗浄液は、本体35の側面、案内板83を伝わって、サブ回収トレイ81に向かう。ポンプ22からの送液が終了し、送液バルブ24が閉となった時に、貯液空間Sの全空間を充満した洗浄液は、表面張力の作用によって、その充満状況が維持される。なお、この液体の充満状況が維持されているのが、貯液されている状況となる。
(ステップS2)(
図2(c)の状況)
洗浄ステップ1(汚れDiのノズル面11からの分離)である。送液バルブ24を閉、回収バルブ62を閉にしておくと、貯液空間Sでの洗浄液の充満状態は維持される。この洗浄液充満状態維持(貯液)を、時間t1だけ継続する。この時間t1の間に、洗浄液に接触している汚れDiには、(1)液体状の汚れDiは洗浄液に混ざりこんで薄められる(洗浄液に含有される)、(2)乾燥固化物となっている汚れDiは、溶解して洗浄液中に含まれる、(3)乾燥固化物となっている汚れDiで、完全に溶解しないがノズル面11への付着は解かれて、洗浄液中に浮遊する、ということが起こる。すなわち、何らかの形態で、汚れDiのノズル面11からの分離が行われる。
(ステップS3)(
図2(d)の状況)
洗浄ステップ2(ノズル面11から分離した汚れDiの除去)である。再びポンプ22を駆動し、送液バルブ24を開にしてから、流量Q2にて洗浄液を開口36から貯液空間Sに送液する。これにつづけてすぐに回収バルブ62を開にし、貯液空間Sの汚れDiを含む洗浄液を開口37と液体回収孔33から回収する(
図2(d)で示される状態)。所定時間後に回収バルブ62を閉にし、開口37と液体回収孔33からの回収を終了する。それにつづいて送液バルブ24を閉にし、ポンプ22も停止する。以上の新たな洗浄液の貯液空間への送液と汚れDiを含む洗浄液の回収を同時に行うことによって、貯液空間Sに充満していた汚れDiを含む洗浄液は、新たに送液された洗浄液に確実に置きかえられる。すなわち、開口36の近くでは、新たに送液される洗浄液に押し出される形で、基台3の上面3の縁部から、貯液空間Sに充満していた汚れDiを含む洗浄液がもれ出して排出される。この排出された汚れDiを含む洗浄液は、本体35の側面を伝わって落下し、さらに門型フレーム72の支持面73と案内板83に案内されて、サブ回収トレイ81に回収される。一方開口36より離れた位置では、開口36から供給される新たな洗浄液で、貯液空間Sに充満している汚れDiを含む洗浄液を、上面31に沿って液体回収孔33の開口37の方に押し流していくことになるので、結果として、貯液空間S内の汚れDiを含む洗浄液は新たな洗浄液に完全に更新される。一方開口37の方に押し込まれた汚れDiを含む洗浄液は、液体回収孔33等を通過して、メイン回収トレイ63に回収される。貯液空間Sから排出される汚れを含む洗浄液と一緒に、洗浄液中に含まれる汚れDiや浮遊している汚れDiも排出される。以上の結果として、汚れDiがノズル面11から除去される。
(ステップS4)(
図2(e)の状況)
洗浄液の回収ステップである。回収バルブ62を開にする。これによって液体回収孔33の開口37から、貯液空間Sに充満している洗浄液が回収される。回収される洗浄液は、重力の作用によって、液体回収孔33、液体回収管61、回収バルブ62を順に下向きに伝わっていき、最後はメイン回収トレイ63に落下して、蓄えられる。貯液空間Sに充満している洗浄液は、上面31上を液体回収孔33の開口37に向かって、上面31とノズル面11に接触しながら移動する(
図2(e)で示される状態)。この洗浄液の移動時には、ノズル面11には撥液処理がされていて、洗浄液がはじかれるので、ノズル面11には洗浄液は残らない。しかし上面31にはそのような処理がなされておらず、若干の親液性があるために、上面31には微量の洗浄液が付着して残留する。また、貯液空間Sに充満している洗浄液中に、新たに分離した汚れDiが残留しているなら、この時洗浄液と一緒に、開口37を通過して、メイン回収トレイに63に回収される。
(ステップS5)(
図2(f)の状況)
終了ステップである。貯液空間Sから全ての洗浄液を回収できたら、回収バルブ62を閉にする。ノズル面11からは、汚れDiと、汚れDiの除去に使用した洗浄液が完全に除去されているので、インクジェットヘッド1は、次の塗布のために、一旦上昇してから、所定場所に移動する。
以降、インクジェットヘッド1が塗布を続けて、再びノズル面11に汚れDiが付着すれば、ステップS0〜S5を繰り返し、ノズル面11から汚れDiを除去する洗浄を行う。上記のメンテナンス方法で、ステップS2(汚れDiの溶解と分離)とステップS3(分離した汚れDiの除去と洗浄液の更新)を適宜繰り返してよい。例えば2回繰り返す場合は具体的に、ステップS0→S1→S2→S3→S2→S3→S4→S5、のようにステップを実行する。これによって溶解に時間がかかる汚れDiも分離することが可能となり、より洗浄性が向上する。また、ステップS3を省略して、ステップS0→S1→S2→S4→S5のようにしてもよい。これによってノズル面11から分離した汚れDiは、開口37から液体回収管61を通って、メイン回収トレイ63に回収されることになる。
【0030】
さらに洗浄液については、汚れDiを溶解したり、ノズル面11から分離できるものであればいかなるものでもよく、有機溶剤、水、アルカリ溶液等が好適に用いられる。ただし、ノズル面11に撥液性を付与している撥液物質にダメージを与えないものを選定することが好ましい。また、基台3の材質については、使用する洗浄液への耐性を有するものであれば、金属、セラミックス、合成樹脂等いかなるものでもよい。インクジェットヘッド用の洗浄液によく使用される有機溶剤や水に対して、耐性と耐食性を有するステンレス鋼等が好ましく用いられる。
【0031】
さらにまた、上記のステップS2で、確実に汚れDiを溶解させて分離するには、貯液空間S内で充満させた洗浄液を安定して保持しつづけることが重要となるが、それに大きく影響するのが、ノズル面11と上面31の形状関係と、両者間の間隙である長さLsである。すなわち、上下方向であるZ方向に見て、ノズル面11と上面31とが重なる位置にある時(X方向とY方向の中心を一致させる時)、両者の大小関係はどちらでもよいが、X方向とY方向の寸法の相違を、好ましくは±2mm以下、より好ましくは±1mm以下にする。これによって、貯液空間S内に充満する洗浄液を、ノズル面11と上面31のそれぞれの形状範囲内で保持し、その範囲からはみ出て、例えばノズル面11の周囲に洗浄液が付着することはない。
【0032】
また、ノズル面11と上面31との間の間隙である長さLsについては、好ましくは0.1mm以上〜2mm以下、より好ましくは0.5mm以上〜1mm以下にする。この範囲であれば、洗浄液は貯液空間S内で充満させた状態(貯液された状態)で安定して保持されつづける。
【0033】
さらに上記のステップS0〜S5で、加熱手段4を作動させ、基台3を加熱するようにしてもよい。この場合、ステップS2で、貯液空間S内に充満している洗浄液が、基台3の上面31から加熱されて温度が上昇し、汚れDiの溶解性やノズル面11からの分離性が高まるので、結果的に洗浄性が高まって、好ましい。貯液空間S内に充満している洗浄液が、好ましくは30℃以上、50℃以下、より好ましくは35℃以上、45℃以下に加熱されるように、加熱手段4で基台3を加熱する。
【0034】
さらに貯液空間Sに洗浄液を送液するポンプ22については、シリンジポンプ、モーノポンプ等が適用できるが、密閉性があって計量性が高いシリンジポンプ、ダイヤフラムポンプ、ベロフラムポンプ等の間欠型定量ポンプを使用するのが好ましい。さらにまた、液体供給部2からポンプ22を省略し、貯蔵タンク21を貯液空間Sよりも上下方向に上の位置におき、ヘッド差によって、貯液空間Sに洗浄液を送液するようにしてもよい。この場合は、ヘッド差の大きさと、送液バルブ24を開にする時間によって、送液する液体量V1を制御することになる。さらにまた、貯液空間Sに貯液された洗浄液の開口37、液体回収孔33からの回収を、重力作用ではなくて、吸引ポンプや真空圧を使用して行ってもよい。この場合は回収速度や回収量を制御することができる。さらにノズル面11と上面31がX方向に短い場合は、上記のステップS3を以下のステップS3’に入れ替えてもよい。
(ステップS3’)
洗浄ステップ2(ノズル面11から分離した汚れDiの除去)である。再びポンプ22を駆動し、送液バルブ24を開にしてから、流量Q2にて液体量V2だけ、洗浄液を貯液空間Sに送液する。送液が終了すれば送液バルブ24を閉にする。ノズル面11と上面31がX方向に短く、貯液空間SもX方向に短いと、この新たな洗浄液の貯液空間への送液によって、貯液空間Sに充満していた汚れDiを含む洗浄液は、新たに送液された洗浄液に置きかえられる。すなわち、新たに送液される洗浄液に押し出される形で、基台3の上面3の縁部から、貯液空間Sに充満していた汚れDiを含む洗浄液が全てもれ出して排出される。排出される汚れを含む洗浄液と一緒に、洗浄液中に含まれる汚れDiや浮遊している汚れDiが、貯液空間Sから排出される。以上の結果として、汚れDiがノズル面11から除去される。
【0035】
(第1実施形態の効果)
以上説明した第1実施形態であるインクジェットヘッドのメンテナンス装置100aは、インクジェットヘッドのメンテナンス時に、インクジェットヘッド1のノズル面11と対面して貯液空間Sを形成するよう近接して配置される上面31を有し、かつ上面31に開口する液体供給孔32および液体回収孔33を含む基台3と、貯液空間Sに液体を液体供給孔32から供給する液体供給部2と、貯液空間S内の液体を液体回収孔33から回収する液体回収部6と、を備える。これが基本構成のメンテナンス装置100aおよびこれを用いたメンテナンス方法では、以下のような作用効果を得ることができる。
【0036】
すなわちメンテナンス装置100aで、メンテナンスの一つである洗浄を行う時には、まず、インクジェットヘッド1のノズル面11と、基台3の上面31との間に形成する貯液空間Sに基台3の液体供給孔32から洗浄液を供給して貯液する。そしてノズル面11に付着している汚れDiを、洗浄液によって分離してその中に含ませてから、汚れDiを含む洗浄液を回収するようにした。これによって、ノズル面11に付着している汚れDiを非接触で除去することができる。さらに最後に、貯液空間Sに充満して残存している洗浄液を液体回収孔33から回収するようにした。これによって洗浄液は、上面31上の液体回収孔33の開口37に向かって、ノズル面11と上面31に沿いながら移動する。この移動する洗浄液の塊の最後尾では、洗浄液は、撥液処理されたノズル面11にはじかれるので、ノズル面11に付着して残存するということはなく、塊のまま開口37まで移動する。このようにして、インクジェットヘッド1を移動させることなく、基台3に対して静止した状態で、貯液空間Sの洗浄液を、ノズル面11に残存しないようにして回収することができる。さらにまた、以上の処理は、洗浄液をノズル面11以外のインクジェットヘッド1の他の部分に接触させることなく行えるので、下端面13等のノズル面11の周囲にある部分に洗浄液と汚れDiを付着して残存させることもない。その結果、ノズル面11の汚れDiが完全に除去される非接触洗浄を、インクジェットヘッドのノズル面とその周囲にある部分に洗浄液と汚れを付着・残存させることなく、行うことができる。それによって、メンテナンス後にノズル面11に残存した液体に起因して、インクジェットヘッド1からインク(塗布液)が吐出できなくなることや、ノズル面11に残存した液体が落下してメンテナンス位置から塗布作業位置に移動する途中の領域に付着したりすることなど、インクジェットヘッド1の動作に関する不都合を排除することができる。
さらにまた液体供給孔32から新たな洗浄液を供給することと、液体回収孔33から汚れDiを含む洗浄液を回収することとを同時に行っている。これによって新たな洗浄液で、汚れDiを含む洗浄液を液体回収孔の方に押し流していくことになるので、貯液空間Sに貯液されていた汚れDiを含む洗浄液を新たな洗浄液に完全に更新することが可能となる。この結果、貯液空間Sに貯液されている汚れを含む洗浄液を単に回収するだけでは、汚れDiがノズル面に再付着する可能性が非常に高かったが、貯液空間S内の汚れDiを含む洗浄液を新たな洗浄液に更新してから回収することができるようになったために、汚れDiがノズル面に再付着する可能性が皆無となる。これによって、汚れが確実に除去できる高品質の洗浄が、実際に行えるようになる。
【0037】
また、第1実施形態であるメンテナンス装置100aでは、貯液空間Sから基台3の周縁部を伝わってもれ出す液体を回収するための、もれ出し液体受け部8が設けられている。この構成により、たとえば貯液空間S内に洗浄液や汚れを含む洗浄液が充満している時に、新たな洗浄液を貯液空間Sに供給して、余剰となった洗浄液等が貯液空間Sから多量にもれ出しても、もれ出し液体受け部8を構成するサブ回収トレイ81に容易に回収することができる。
【0038】
さらに、第1実施形態であるメンテナンス装置100aでは、基台3の上面31を加熱する加熱手段4を設けたので、上面31に接する貯液空間S内の液体を加熱してその温度を上昇させることができる。これにより洗浄液の温度を上昇させて、インクジェットヘッド1のノズル面11に付着して固化しているインク等の塗布液や汚れを洗浄液に溶解させたり、分離したりすることが、容易に行うことができる。すなわち、加熱手段4によって、インクジェットヘッドの洗浄性を高めることができる。
【0039】
(第2実施形態)
以下、
図3と
図4を参照して、本発明の第2実施形態によるインクジェットヘッド1のメンテナンス装置200aの構成について説明する。
図3はメンテンス装置200aを模式的に示した正面断面図、
図4はメンテナンス装置200aの部分拡大図である。
【0040】
図3を見ると、メンテナンス装置200aは、インクジェット塗布装置200の一部であり、基台3の液体回収孔33の開口37に、回収誘引部材51が付加されているほかは、メンテナンス装置100aと全く同じである。回収誘引部材51は、開口37のある液体回収孔33に液体を引き寄せるもので、液体の回収を加速する液体回収促進手段5となる。すなわち、インクジェットヘッド1のメンテナンス装置200aは、基台3が、液体の回収を加速する液体回収促進手段5を含む、ものである。この液体回収促進手段5である回収誘引部材51とその近傍を上下方向の上から見た場合の拡大された平面図が
図4(a)に、拡大された正面断面図が
図4(b)に、示されている。
図4(b)を見ると、回収誘引部材51は長方形形状となっており、上下方向(Z方向)に開口37(上面31)よりも上側に位置する上側部分(第1部分)53と、開口37(上面31)よりも下側に位置する下側部分54(第2部分)より構成されている。下側部分54は、回収誘引部材51の全面積の約2/3を占めるとともに、完全に液体回収孔33の中に納まっている。そして上側部分53は下側部分54に、同じ幅W(X方向長さ)でZ方向に連なっている。また
図4(a)を見ると、回収誘引部材51は厚さTの板状物であり、上側部分53は下側部分54に、同じ厚さT(Y方向長さ)でZ方向に連なって重なり合っていることが示されている。すなわち液体回収促進手段5である回収誘引部材51は、液体回収孔33の外部にある第1部分である上側部分53と、液体回収孔33の内部にある第2部分である下側部分54とを備えている。さらに第1部分である上側部分53は、第2部分である下側部分54に連なっている。再び
図4(a)を見ると、回収誘引部材51の面積は、開口37(液体回収孔33の入口)の面積よりも小さく、回収誘引部材51(線状)と開口37および液体回収孔33(円形)との間には、液体が紙面に垂直な方向(Z方向)に流れて通るすきまがある。さらに
図4(b)を見ると、下側部分54の左側(
図3で開口36のある側)にある端部である下側側部56は、全て開口37の縁部と液体回収孔33の内面に接触しているが、全く接触していなくてもよい。さらには、下側側部56と液体回収孔33の内面が部分的に接触するように、両者の形状を定めてもよい。下側側部56と開口37および液体回収孔33の内面の接触状況は、回収誘引部材51の液体を引き寄せる作用には影響しないからである。また、上面31より突き出ている上側部分53の最上部となる上端52はインクジェットヘッド1のノズル面11に接触させてもよいが、上面31から上端52までの上下方向(Z方向)の長さLg(突出量Lg)は、好ましくは、貯液空間Sの上下方向長さLsの30%以上、90%以下にする。上側部分53の左側にある端部である上側側部55がこの長さLgであると、貯液空間Sに充満している液体を上側側部55と上端52で効率よく液体回収孔33の方に引き寄せることができる。この回収誘引部材51の引き寄せ作用によって、洗浄液の回収が促進され、短時間での回収が可能となる。なお液体を、上側部分53の一部となる上側側部55と上端52で液体回収孔33の方に引き寄せる力は、上側部分53と下側部分54の板状面に沿って液体が流れ落ちることで発生する。さらに液体回収孔33内にある下側部分54のY方向に見た形状については、液体回収孔33内にあれば、三角形、台形、多角形、円状、楕円状等、いかなる形状でもよい。また下側部分54の上下方向の長さも特に制約はないが、洗浄液が伝わって流れる長さがあることと設置のしやすさから、好ましくは1mm以上、20mm以下、より好ましくは5mm以上、15mm以下にする。また上面31から突き出ている上側部分53のY方向に見た形状についても、下側部分54に連なる形状であるなら、いかなる形状でもよく、例えば三角形、台形、多角形、円状、楕円状でもよい。さらに上側部分53は、X方向の長さが、液体回収孔33の開口37の直径よりも大きくなる形状、例えば長方形や台形等であってもよい。
【0041】
なお
図3および
図4に示す回収誘引部材51は、板状物であるが、線状物であっても同様の作用効果がえられる。線状物の場合、液体回収孔33内にある下側部分54、上面31から突き出る上側部分53を問わず、途中で折れ曲がる形状であってもよい。さらに上側部分53については、折れ曲がって、開口37からXとY方向に突き出てもよい。さらに上側部分53がZ軸に対して90度以上折れ曲がって、その一部や全部が上面31に接してもよい。さらに、回収誘引部材51を上下方向に上側から見た形状(XY平面内の形状)については、線状、円形、2重円、楕円状、3角形を含む多角形、U字状、V字状、Y字状、コの字状(U字を90度回転させた形状)、井桁状等、いかなる形状でもよい。また回収誘引部材51を、板状、線状を問わず、液体回収孔33内に複数設置してもよい。なお、メンテナンス装置200aを用いたインクジェットヘッドのメンテナンス方法である、ノズル面11の洗浄方法であるが、
図2で説明したステップS0〜S5をそのまま実行すればよい。特にステップS3とステップS4では、液体回収促進手段である回収誘引部材51の作用効果によって、貯液空間S内に充満している洗浄液の回収速度を非常に高くすることができるので、ステップS3とステップS4を非常に短い時間で完了させることができ、その結果として、メンテナンス時間を極めて短くすることが可能となる。また回収誘引部材51が板状物の場合、その厚さTは、自らの形状を十分保持する剛性を有することと液体回収孔33との間に液体が通過する十分なすきまを確保することのために、好ましくは0.05mm以上〜1mm以下、より好ましくは0.1mm以上〜0.5mm以下とする。
【0042】
(第2実施形態の作用効果)
第2実施形態であるメンテナンス装置200aでは、液体の回収を加速する液体回収促進手段5を含むように基台3を構成する。具体的には、基台3の液体回収孔33の開口37に、液体回収促進手段5である回収誘引部材51を付加するようにした。回収誘引部材51は板状で、液体回収孔33の外部にある第1部分である上側部分53と、液体回収孔33の内部にある第2部分である下側部分54とを備え、さらに上側部分53は下側部分54に連なる形状となっている。これによって、液体回収孔33外部にある液体が、上側部分53と下側部分54に沿って流れ落ちて、液体回収孔33の内部に回収されることで、回収誘引部材51の上側部分53で液体を引き寄せる力が発生する。この回収誘引部材51の液体の引き寄せ作用によって、貯液空間Sに充満して貯液している液体を、上面31に沿って回収誘引部材51のある液体回収孔33の方に、早く引き寄せることが可能となる。したがって、液体回収促進手段5である回収誘引部材51は、貯液空間S内に貯液した液体の回収を加速することができ、短い時間での液体の回収が可能となる。
【0043】
次に、メンテナンス装置100a、またはメンテナンス装置200aを用いた別のインクジェットヘッドのメンテナンス方法となる、インクジェットヘッド1の長時間待機方法について、
図5を参照して説明する。
図5は、インクジェットヘッド1の長時間待機方法の説明図であり、
図5(a)〜(e)には、は
図1で示されるインクジェットヘッド1と基台3の一部とその周囲を拡大して示す正面断面図(Y方向に見た図)が配置されている。またステップSW0〜SW4が
図5(a)〜(e)に対応していて、それぞれステップの時の状況や各部の動作の結果が、対応する図に示される。ステップSWは数字の大きい方が時間的に後になる。
図5にその実行状況が示されるステップSWを実施することによって、液体供給孔32からインクジェットヘッド1のノズル面11を保護するための保護液を供給して貯液空間Sに貯液するステップと、貯液してから一定時間後に保護液を回収するステップと、を含むインクジェットヘッドのメンテナンス方法を、実現することになる。以下、
図5のステップSWをたどって、順番に説明する。
(ステップSW0)(
図5(a)の状況)
本発明の別のメンテナンス方法であるインクジェットヘッドの長時間待機方法を実施するための準備ステップである。インクジェットヘッド1が長時間待機のために、基台3の上面31の直上位置まで移動し一旦停止する。ついでインクジェットヘッド1を上下方向に下降させ、上面31とノズル面11との間の間隙が長さLsとなる位置で、インクジェットヘッド1を停止させる。これによって、上面31とノズル面11との間に、間隙が長さLsである貯液空間Sが形成される。この時、送液バルブ24、回収バルブ62ともに閉である。保護液となる洗浄液は、貯蔵タンク21から、ポンプ22、液体供給管23の送液バルブ24まで充満しており、送液バルブ24を開にして、ポンプ22を駆動すれば、いつでも洗浄液を基台3に送液できる状態にある。
(ステップSW1)(
図5(b)の状況)
貯液空間Sに洗浄液を充填するステップで、上記したステップS1と全く同じである。最終的に、液体供給孔32から供給される保護液である洗浄液が、貯液空間Sの全領域に充満し、貯液される。
(ステップSW2)(
図5(c)の状況)
貯液空間Sに洗浄液を充満して貯液する状態を一定時間維持するステップである。送液バルブ24を閉、回収バルブ62を閉にしておくと、貯液空間Sでの洗浄液の充満状態は維持される。これによって、インクジェットヘッド1のノズル面11と、ノズル面11内にあるインク吐出口12が常時、保護液となる洗浄液で覆われるので、ノズル面11やインク吐出口12でのインク等の塗布液の蒸発や乾燥を防止することができる。その結果として、インク吐出口12のインク乾燥固化物等によるつまりを防止することができるので、長時間にわたる待機、保管が可能になるとともに、待機完了後すぐに塗布を再開することも可能となる。
(ステップSW3)(
図5(d)の状況)
保護液である洗浄液の回収ステップである。回収バルブ62を開にして、液体回収孔33の開口37から、貯液空間Sに充満している洗浄液が回収される。回収される洗浄液は、重力の作用によって、液体回収孔33、液体回収管61、回収バルブ62を順に下向きに伝わっていき、最後はメイン回収トレイ63に落下して、回収される。
(ステップSW4)(
図5(e)の状況)
終了ステップである。貯液空間Sから全ての洗浄液を回収できたら、回収バルブ62を閉にする。そしてインクジェットヘッド1は、次の工程作業のために、一旦上昇してから、所定場所に移動する。
なお上記のステップSW2で、貯液空間Sに一度充満した洗浄液をそのままずっと保持してもよいし、途中に液体供給孔32から新たな洗浄液を供給するとともに、液体回収孔33から貯液空間Sの洗浄液を回収して、貯液空間S内の洗浄液をフレッシュな洗浄液に適宜更新してもよい。
以上のステップを提示したメンテナンス方法を実行することによって、インクジェットヘッド1のノズル面11や、インク吐出口12が液体に被われて保護されるので、空気に接触して発生する乾燥や蒸発を、非常に長い時間にわたって防止することができる。これにより、長時間にわたる待機の他、長期間の保管、保存が可能となる。さらにはこれらの待機、保管、保存後すぐに、インクジェットヘッド1の使用を再開することも可能となる。なお保護液としては、インクジェットヘッド1の撥液処理されたノズル面11を劣化させないような液体を選択することが好ましい。たとえば上記したように、第1実施形態の洗浄液(インクジェットヘッド1のノズル面11に付着した乾燥したインクなどの汚れを溶解させる有機溶剤)を共用してもよいし、異なる種類の液体を使用してもよい。
【0044】
さらに次に、メンテナンス装置100a、またはメンテナンス装置200aを用いたさらに別のインクジェットヘッドのメンテナンス方法となる、インクジェットヘッドのブリード方法、について説明する。ブリードは、インクジェットヘッド1のインク吐出口12に異物が付着するなどして発生するつまりを解消するために、高い圧力をかけてインクジェットヘッド1内の塗布液を連続してインク吐出口12から押し出すものである。これによって高速で塗布液が吐出されるとともに、インク吐出口12に付着している異物等も押し出される。塗布液と異物は、通常はインクジェットヘッド1から下方の離れた位置にあるトレイに回収されるが、吐出された塗布液の一部は下方に落下せず、ノズル面11に沿って流れる。このようにして流れる塗布液は、
図6に示すように、いくつかの大きさも様々な塗布液粒300となって、インクジェットヘッド1のノズル面11とその周囲にある下端面13にぶら下がる形で残留する。この残留する塗布液粒300を除去するのに、従来は専用の除去装置が必要であった。本発明のさらに別のインクジェットヘッドのメンテナンス方法であるインクジェットヘッドのブリード方法では、このような塗布液粒300を発生させないでブリードを行い、さらにブリード時にインクジェットヘッド1から吐出される塗布液、異物等を回収する方法を提示する。
【0045】
そのインクジェットヘッドのブリード方法について、
図7を参照して説明する。
図7は、インクジェットヘッド1のブリード方法の説明図であり、
図7(a)〜(f)には、
図1で示されるインクジェットヘッド1と基台3の一部とその周囲を拡大して示す正面断面図(Y方向に見た図)が配置されている。またステップSB0〜SB5が
図7(a)〜(f)に対応していて、それぞれステップの時の状況や各部の動作の結果が、対応する図に示される。他のメンテナンス方法と同様にステップSBは数字の大きい方が時間的に後になる。
図7にその実行状況が示されるステップSBを実施することによって、インクジェットヘッド1から塗布液を吐出して貯液空間Sに貯液するステップと、貯液空間Sに貯液した塗布液を液体回収孔33から回収するステップと、を含むインクジェットヘッドのメンテナンス方法を、実現することになる。以下、
図7のステップSBをたどって、順番に説明する。
(ステップSB0)(
図7(a)の状況)
本発明のさらに別のメンテナンス方法であるインクジェットヘッドのブリード方法を実施するための準備ステップである。インクジェットヘッド1がブリードを行うために、基台3の上面31の直上位置まで移動し一旦停止する。ついでインクジェットヘッド1を上下方向に下降させ、上面31とノズル面11との間の間隙が長さLsとなる位置で、インクジェットヘッド1を停止させる。これによって、上面31とノズル面11との間に、間隙が長さLsである貯液空間Sが形成される。この時、送液バルブ24、回収バルブ62ともに閉である。洗浄液は、貯蔵タンク21から、ポンプ22、液体供給管23の送液バルブ24まで充満しており、送液バルブ24を開にして、ポンプ22を駆動すれば、いつでも洗浄液を基台3に送液できる状態にある。
(ステップSB1)(
図7(b)、(c)の状況)
ブリードを行うステップである。インクジェットヘッド1へ塗布液を供給して、インク吐出口12から所定流量(単位時間の液体量)にて、塗布液を吐出させる。インク吐出口12から吐出された塗布液は、貯液空間S内に充満し、貯液空間Sの容積を越える余剰の塗布液は基台3の上面31からもれ出す(
図7(b)で示される状態)。もれ出した塗布液は、サブ回収トレイ81に一旦回収されてから、メイン回収トレイ63に回収される。塗布液とともに吐出される異物についても、同様の経路をたどって、サブ回収トレイ81やメイン回収トレイ63に回収される。インク吐出口12からの塗布液の吐出が終了した時点で、貯液空間Sには最後に吐出された塗布液が残留して貯液される(
図7(c)で示される状態)。以上の工程で、インク吐出口12から吐出される塗布液は、一旦貯液空間Sに貯液されてから、基台3の上面31からもれ出て行くので、塗布液がインクジェットヘッドのノズル面11や、下端面13に流れて塗布液粒300(
図6参照)を形成することは全くない。
(ステップSB2)(
図7(d)の状況)
貯液空間Sに充満している塗布液を、洗浄液に入れ替えるステップである。この入れ替えにより洗浄液がノズル面11に接して、ノズル面11の汚れを分離して洗浄液にとりこみ、ノズル面11の洗浄が行えるというメリットがある。まずポンプ22を駆動し、送液バルブ24を開にしてから、流量Q3にて洗浄液を液体供給孔32の開口36から貯液空間Sに送液する。これにつづけてすぐに回収バルブ62を開にし、貯液空間Sの塗布液を開口37と液体回収孔33から回収する(
図7(d)で示される状態)。所定時間後に回収バルブ62を閉にし、開口37と液体回収孔33からの回収を終了する。それにつづいて送液バルブ24を閉にし、ポンプ22も停止して洗浄液の送液を終了する。この新たな洗浄液の貯液空間Sへの供給と塗布液の回収を同時に行うことによって、貯液空間Sに充満していた塗布液は、新たに送液された洗浄液に確実に置きかえられる。すなわち、開口36の近くでは、新たに送液される洗浄液に押し出される形で、基台3の上面31の周縁部から、貯液空間Sに充満していた塗布液がもれ出して排出され、サブ回収トレイ81からメイン回収トレイ63に回収される。一方開口36より離れた位置では、開口36から供給される新たな洗浄液で、貯液空間Sに充満している塗布液を、上面31に沿って液体回収孔33の開口37の方に押し流していくことになるので、結果として、貯液空間S内の塗布液は新たな洗浄液に更新される。これとあわせて、開口37から貯液空間Sに充満していた塗布液が液体回収孔37を通じて排出され、メイン回収トレイ63に回収される。以上の貯液空間Sに洗浄液が充満した状態(貯液した状態)を一定時間維持する。
(ステップSB3)(
図7(e)の状況)
洗浄液の回収ステップである。回収バルブ62を開にして、液体回収孔33の開口37から、貯液空間Sに充満している洗浄液が回収される。回収される洗浄液は、重力の作用によって、液体回収孔33を通過して、最後はメイン回収トレイ63に落下して、回収される。回収終了時には、ノズル面11には、全く洗浄液が残存しない。
(ステップSB4)(
図7(f)の状況)
終了ステップである。貯液空間Sから全ての洗浄液を回収できたら、回収バルブ62を閉にする。そしてインクジェットヘッド1は、次の工程作業のために、一旦上昇してから、所定場所に移動する。
図7にステップを示した以上のインクジェットヘッド1のメンテナンス方法を実施すれば、インクジェットヘッド1のインク吐出口12の付着異物を排除してつまりを解消することと、つまりを未然に防ぐこととのために、インクジェットヘッドから塗布液を高速で吐出するプリードを行っても、
図6に示すような塗布液粒300を、ノズル面11等に発生させることはない。また塗布液粒300が発生しないまま、吐出された塗布液もノズル11面等に付着・残存させることなく、回収することができる。さらにブリード実施後に、貯液空間Sに残存する塗布液を一旦洗浄液に入れ替えてから、その洗浄液を回収するようにしているので、ノズル面11やインク吐出口12の洗浄もあわせて行うことができる。
【0046】
なお以上のステップは、SB0→SB1→SB3→SB4のように、SB2を省略して、ブリード終了後すぐに貯液空間Sに充満して貯液している塗布液を回収してもよい。さらには、SB0→SB1→SB3→SB2→SB3→SB4のように、ブリード終了後すぐに貯液空間Sに残存している塗布液を回収してから、洗浄液を貯液空間Sに充満させて一定時間維持して洗浄後に、洗浄液を回収するようにしてもよい。この場合のステップSB2は、上記のステップS1にしてもよい。いずれのやり方でも、塗布液粒を発生させないでプリードを行って、インクジェットヘッドのつまりの解消や発生を防止するということが可能となる。さらには、SB0→SB2→SB1→SB2→SB3→SB4や、SB0→SB2→SB1→SB3→SB4のように、貯液空間Sに洗浄液を充満させてから、インクジェットヘッドから塗布液を吐出してブリードするようにしてもよい。この場合、貯液空間Sにあらかじめ貯液されていた洗浄液が塗布液に一旦入替ることになるが、これによってもノズル面11等に塗布液粒300を発生することはないので、有効である。なおこの場合の1回目のステップSB2を、上記のステップS1にしてもよい。
【0047】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示される。さらに特許請求の範囲と均等の意味となる範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0048】
第1および第2実施形態では、液体供給孔32と液体回収孔33が、基台3のX方向に正反対となる端部近傍に設けられた例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、どちらかを基台3の中央近傍に設けてもよい。さらには、両者を近接して並べ、それを基台3の端部、中央部等のどこに配置してもよい。さらにまた、液体供給孔32と液体回収孔33を共用する一つの孔にすることも可能である。
【0049】
さらに、第1および第2実施形態では、基台3の上面31を加熱する加熱手段4を設けた例を示したが、加熱手段4を設けなくてもよい。また、加熱手段4を基台3の外部ではなくて、内部に設けてもよい。この場合は、カートリッジヒータや熱媒となる流体が好ましく適用できる。
【0050】
また、第2実施形態では、案内物である回収案内部材51は、線状物でもよいとしたが、具体的には、金属のワイヤー、針金、ケーブル線、ファイバー、ステープル、より糸等であってもよい。