(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記連通空間は、前記内側ハウジングの外周に形成されている、又は、前記内側ハウジングの外周の一部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の流路切換弁。
前記少なくとも2つの内側ポートと前記外側ポートとが、軸線方向で視て反対側もしくは同じ側に開口せしめられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の流路切換弁。
前記連通ポートは、前記少なくとも2つの内側ポートより上側及び前記少なくとも2つの内側ポートより下側に、前記少なくとも2つの弁体のうち最も上側の弁体と最も下側の弁体との間隔と同間隔をあけて開口せしめられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の流路切換弁。
前記外側ポートは、前記連通空間に開口せしめられて前記連通空間に常時連通するようになっている、あるいは、前記内側ハウジングにおける前記連通ポートと同じ高さに開口せしめられた開口を介して前記連通空間に常時連通するようになっていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の流路切換弁。
前記昇降駆動部が、前記弁軸と一体に連結されたロータと該ロータを回転させるためのステータとを有するステッピングモータで構成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の流路切換弁。
前記少なくとも2つの弁体の外周にシール部材が装着されるとともに、該シール部材の外側に該シール部材より硬度の高いパッキンが装着されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の流路切換弁。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る流路切換弁の実施形態を図面を参照して説明する。
【0025】
[第1実施形態]
図1及び
図2は、本発明に係る流路切換弁の第1実施形態を示す縦断面図であり、
図1は、第1流れ状態(弁軸:下降位置)、
図2は、第2流れ状態(弁軸:上昇位置)を示している。
【0026】
なお、本明細書において、上下、左右、前後等の位置、方向を表わす記述は、説明が煩瑣になるのを避けるために図面に従って便宜上付けたものであり、実際の使用状態での位置、方向を指すとは限らない。
【0027】
また、各図において、部材間に形成される隙間や部材間の離隔距離等は、発明の理解を容易にするため、また、作図上の便宜を図るため、各構成部材の寸法に比べて大きくあるいは小さく描かれている場合がある。
【0028】
本実施形態の流路切換弁1は、例えばヒートポンプ式冷暖房システム等において流体(冷媒)の流れ方向(流路)を多方向に切り換える電動式の多方切換弁(第1実施形態では、四方切換弁)である。
【0029】
図示実施形態の流路切換弁1は、主として、同軸上に配置された板金製の筒状基体(内径は一定)からなる外側ハウジング9及び内側ハウジング9Aを有する弁本体10と、弁本体10に固着されたキャン58と、弁本体10及びキャン58によって画成された内部空間で弁本体10に固定配置された支持部材19と、支持部材19により支持されて前記内部空間に昇降可能に配置された弁体(上側から、第1弁体21、第2弁体22、第3弁体23)を有する弁軸20と、弁軸20を昇降させるべく弁本体10の上方に取り付けられたステッピングモータ(昇降駆動部)50と、を備えている。
【0030】
弁本体10の外側ハウジング9の下部開口には、例えば金属製の蓋状部材11が、溶接、かしめ、ろう付け等により気密的に取り付けられている。詳細には、蓋状部材11は、
図1及び
図2と併せて
図3を参照すればよく分かるように、段付き短円柱状を呈しており、下側から、大径接合部11c、中径嵌合部11b、及び小径突設部11aを有している。この蓋状部材11は、中径嵌合部11bを内側ハウジング9Aの下部開口に気密的に嵌合させた状態で(言い換えれば、内側ハウジング9Aの下部開口を中径嵌合部11bで気密的に封止するように)、大径接合部11cの外周下端に設けられた鍔状部11dに外側ハウジング9の下端部が溶接等により接合されており、内側ハウジング9Aの内部に円筒状空所からなる弁室7が画成されるとともに、内側ハウジング9Aと外側ハウジング9の間に、円筒状の連通空間8が画成されている。また、小径突設部11aには、その中心部に、(弁軸20が下降位置にあるときに)後述する弁軸20の連結軸29の貫通孔29aに連通するとともに前記貫通孔29aより若干大径の縦孔11vが形成され、その側部に複数個(図示例では、90°の角度間隔をあけて4個)の横孔11uが形成されている。また、ここでは、小径突設部11aの上端は、流路切換時に、第3弁体23に衝接して弁軸20の下方移動(下降)を制限する(言い換えれば、弁軸20の下降位置を規定する)ストッパ部11sとされている。
【0031】
外側ハウジング9の内側に配在された内側ハウジング9Aは、外側ハウジング9より若干厚肉に形成されており、その側部の中央付近には、軸線O方向(縦方向)に並んで3つの内側ポートp1、p2、p3が開口せしめられるとともに、上側の内側ポートp1より上側に、弁室7と連通空間8を連通する連通ポートp11が開口せしめられ、下側の内側ポートp3より下側に、弁室7と連通空間8を連通する連通ポートp12が開口せしめられている。より詳細には、連通ポートp11は、弁軸20が下降位置にあるときにおいて第1弁体21の上側かつ弁軸20が上昇位置にあるときにおいて第1弁体21の下側に位置するように形成され、連通ポートp12は、弁軸20が下降位置にあるときにおいて第3弁体23の上側かつ弁軸20が上昇位置にあるときにおいて第3弁体23の下側に位置するように形成されるとともに、連通ポートp11と連通ポートp12は、第1弁体21と第3弁体23との間隔と同間隔をあけて開口せしめられている(詳細は後述)。
【0032】
また、外側ハウジング9の側部の中央付近には、連通空間8に開口する横向きの外側ポートp10が形成されており、外側ポートp10は、前記連通空間8と常時連通せしめられている。
【0033】
なお、本例では、平面視(すなわち、軸線O方向)で視たときに、軸線O方向に離間して設けられた3つの内側ポートp1、p2、p3が同じ位置に形成され、2つの連通ポートp11、p12が同じ位置に形成され、3つの内側ポートp1、p2、p3と2つの連通ポートp11、p12とは反対側(180°の角度間隔をあけて)形成されている。また、外側ポートp10は、平面視で視たときに前記した内側ポートp1、p2、p3と反対側(言い換えれば、2つの連通ポートp11、p12と同じ側)に形成されている。
【0034】
3つの内側ポートp1、p2、p3にはそれぞれ、(外側ハウジング9を貫通するようにして)導管継手#1、#2、#3がろう付け等により横向きに取り付けられ、外側ポートp10には、導管継手#10がろう付け等により横向きに取り付けられている。
【0035】
弁本体10の外側ハウジング9の上部開口には、段付きの筒状基台13が取り付けられ、その筒状基台13の下面は前記連通空間8の天井面を形成している。筒状基台13の上端部には、天井部付き円筒状のキャン58の下端部が溶接等により接合されている。
【0036】
支持部材19は、底壁14c付き筒状保持部材14及び雌ねじ15i付き軸受部材15を有し、前記筒状基台13の内側に、筒状保持部材14が圧入等により固定され、筒状保持部材14の上部に、内周下半部に雌ねじ15iが螺設された筒状の軸受部材15がかしめ等により固定されている。筒状保持部材14の底壁14cには、内側ハウジング9Aの上部開口に気密的に嵌合(内嵌)されるとともに、後述する円筒状の引き上げばね受け体28が摺動可能に挿通される筒状嵌合部14bが下方に向けて突設されている。また、軸受部材15の外周は段付きで形成されており、筒状保持部材14と軸受部材15との間にばね室14aが画成され、該ばね室14aに、弁軸20を上方に付勢する圧縮コイルばね25が収納されている。軸受部材15の内周のうち雌ねじ15iより上側部分は、後述する減速機構40の出力軸46の下部基体部が嵌挿される嵌挿穴15aとされている。
【0037】
一方、ステッピングモータ50は、ヨーク51、ボビン52、コイル53、樹脂モールドカバー54等からなるステータ55と、キャン58の内部に該キャン58に対して回転自在に配置され、ロータ支持部材56がその上部内側に固着されたロータ57と、を有している。ステータ55は、キャン58に外嵌固定されている。また、ロータ57の内周側には、ロータ支持部材56に一体に形成された太陽歯車41、筒状保持部材14の上部に固着された筒状体43の上端に固定された固定リング歯車47、太陽歯車41と固定リング歯車47との間に配置されてそれぞれに歯合する遊星歯車42、遊星歯車42を回転自在に支持するキャリア44、遊星歯車42に外側から歯合する有底リング状の出力歯車45、出力歯車45の底部に形成された孔にその上部嵌合部が圧入等によって固着された出力軸46等からなる不思議遊星歯車式減速機構40が設けられている。ここで、固定リング歯車47の歯数は、出力歯車45の歯数とは僅かに異なるように設定されている。
【0038】
出力軸46の上部嵌合部の中心部には孔が形成され、該孔には太陽歯車41(ロータ支持部材56)とキャリア44の中心部を挿通した支持軸49の下部が挿通されている。この支持軸49の上部は、キャン58の内径と略同一の外径を有し、ロータ支持部材56の上側でキャン58に内接して配置される支持部材48の中心部に形成された孔に挿通されている。ロータ57自体は、支持部材48等によってキャン58の内部で上下動しないようになっており、キャン58に外嵌固定されたステータ55との位置関係が常に一定に維持されている。
【0039】
減速機構40の出力軸46の下部基体部は、雌ねじ15i付き軸受部材15の上部に形成された嵌挿穴15aに回転自在に嵌挿され、出力軸46の下部基体部には、その中心を通るように横方向に延びる縦長スリット状の嵌合部46aが形成されている。軸受部材15の内周に螺設された雌ねじ15iと螺合する雄ねじ17aが螺設された回転昇降軸17の上端には板状部17cが突設され、板状部17cが縦長スリット状の嵌合部46aに摺動自在に嵌合されている。出力軸46がロータ57の回転に応じて回転すると、出力軸46の回転が回転昇降軸17に伝達され、軸受部材15の雌ねじ15iと回転昇降軸17の雄ねじ17aのねじ送りによって回転昇降軸17が回転しながら昇降する。
【0040】
回転昇降軸17の下方には、該回転昇降軸17の下方への推力がボール18、ボール受座16を介して伝達される弁軸20が軸線O(昇降方向)に沿って配置されている。
【0041】
ここで、上述のように、筒状保持部材14の底壁14cより上側のばね室14aに収納された圧縮コイルばね25は、その下端を底壁14cに当接させた状態で配置されるとともに、この圧縮コイルばね25の付勢力(引き上げ力)を弁軸20に伝達すべく、上下に鍔状の引っ掛け部を有する円筒状の引き上げばね受け体28が配在されている。この引き上げばね受け体28は、軸受部材15(の下部小径部)に摺動自在に外嵌されるとともに、筒状保持部材14の底壁14cから下方に延びる筒状嵌合部14bに摺動自在に内嵌され、その上側の引っ掛け部は圧縮コイルばね25の上部に載置され、下側の引っ掛け部は弁軸20(の推力伝達軸27の大径上部27aの下端段差面)に掛止される。つまり、引き上げばね受け体28は、軸受部材15(の下部小径部)及び筒状保持部材14の筒状嵌合部14bにガイドされて軸線O方向(昇降方向)に移動する。また、筒状保持部材14には、前記ばね室14aとキャン58の内部を連通する連通孔14dが形成されている。
【0042】
弁軸20は、基本的に、ボール18及びボール受座16を介して前記回転昇降軸17に連結される段付き円筒状の推力伝達軸27と、該推力伝達軸27(の小径下部27c)に連結される合成樹脂製かつ円筒状の連結軸29とを有し、その連結軸29に、軸線O方向に離間して短円柱状の3つの弁体(第1弁体21、第2弁体22、第3弁体23)が一体的に形成されている。
【0043】
推力伝達軸27は、上側から、内周に前記ボール受座16が嵌め込まれる大径上部27a、引き上げばね受け体28の下側に形成された引っ掛け部に挿通される中間胴部27b、連結軸29の中央に(軸線Oに沿って)設けられた貫通孔29aに嵌挿されて圧入、ろう付け等により固定される前記中間胴部27bより小径の小径下部27cから構成され、その内部には、弁軸20内に設けられた連通路32の上部を構成する縦向きの貫通孔27d及び後述する上側背圧室30に開口する複数個の横孔27eが形成されている。なお、貫通孔27dの上端開口はボール受座16によって閉塞されている。
【0044】
連結軸29は、縦方向(軸線O方向)に沿って配在されており、各弁体(第1弁体21、第2弁体22、第3弁体23)は、内側ハウジング9Aの内径と略同径に形成されるとともに、各弁体間に、内側ハウジング9Aに開口せしめられた3個の内側ポートp1〜p3のうちの隣り合うポートp1−p2間、p2−p3間を連通させ得るような大きさの空間を画成するように、前記連結軸29に配設されている。また、上述のように、第1弁体21は、弁軸20が下降位置にあるときにおいて連通ポートp11の下側かつ弁軸20が上昇位置にあるときにおいて連通ポートp11の上側に位置するように連結軸29に配設され、第3弁体23は、弁軸20が下降位置にあるときにおいて連通ポートp12の下側かつ弁軸20が上昇位置にあるときにおいて連通ポートp12の上側に位置するように連結軸29に配設されている。
【0045】
本例では、連結軸29の上端部に第1弁体21が形成され、その下端部に第3弁体23が形成され、その上下中央に第2弁体22が形成され、第1弁体21と第2弁体22の間に形成される空間と第2弁体22と第2弁体23の間に形成される空間とが略同一に設計されている。
【0046】
また、各弁体(第1弁体21、第2弁体22、第3弁体23)の外周に形成された環状溝には、各弁体と内側ハウジング9Aとの間の摺動面隙間を封止すべく、Oリング等のシール部材21A、22A、23Aが装着されるとともに、内側ハウジング9Aに対する各弁体の摺動抵抗を低減すべく、各シール部材の21A、22A、23Aの外側には、PTFE(テフロン(登録商標))等からなるリング状のパッキン(キャップシールともいう)21B、22B、23Bが装着されている。
【0047】
そして、推力伝達軸27の横孔27e及び貫通孔27d、連結軸29の貫通孔29aによって、弁軸20に作用する押し下げ力と弁軸20に作用する押し上げ力とをバランス(差圧をキャンセル)させるべく、弁室7における第1弁体21の上側に画成される上側背圧室30と弁室7における第3弁体23の下側に画成される下側背圧室31とを常時連通する連通路32が構成されている。
【0048】
かかる構成の流路切換弁1では、ステッピングモータ50のロータ57を回転駆動させると、回転昇降軸17が回転しながら昇降するが、回転昇降軸17と弁軸20との間にボール18を介在させることにより、回転昇降軸17から弁軸20へ下方への推力のみが伝達されて(回転力は伝達されない)、回転昇降軸17と弁軸20とが一体となって軸線O方向へ昇降する。ここで、弁軸20に設けられた各弁体(第1弁体21、第2弁体22、第3弁体23)は、内側ハウジング9A(の内周)に対接せしめられており、各弁体(第1弁体21、第2弁体22、第3弁体23)が内側ハウジング9Aに内接せしめられた状態で弁室7内で弁軸20が昇降することにより、3つの内側ポートp1、p2、p3及び外側ポートp10の間の連通状態(流れ方向、流路)が切り換えられる。
【0049】
すなわち、ステッピングモータ50のロータ57を一方向に回転駆動させると、減速機構40の出力軸46を介してロータ57の回転が回転昇降軸17に減速されて伝達され、軸受部材15の雌ねじ15iと回転昇降軸17の雄ねじ17aによるねじ送りによって回転昇降軸17が回転しながら例えば下降され、回転昇降軸17の推力により弁軸20が圧縮コイルばね25の付勢力に抗して押し下げられて下降位置(ここでは、弁軸20の下端部に設けられ第3弁体23が蓋状部材11のストッパ部11sに衝接して停止せしめられた位置)がとられる。この下降位置では、第1弁体21が連通ポートp11と内側ポートp1との間に位置し、第2弁体22が内側ポートp2と内側ポートp3との間に位置し、第3弁体23が連通ポートp12の下側に位置せしめられ、第1弁体21と第2弁体22の間の空間が、内側ポートp1と内側ポートp2の真横に位置し、第2弁体22と第3弁体23の間の空間が、内側ポートp3と連通ポートp12の間に位置せしめられるので、内側ポートp1と内側ポートp2が、第1弁体21と第2弁体22の間の空間を介して連通し、内側ポートp3と外側ポートp10が、第2弁体22と第3弁体23の間の空間、連通ポートp12、連通空間8を介して連通する(
図1に示す第1流れ状態)。
【0050】
それに対し、ステッピングモータ50のロータ57を他方向に回転駆動させると、減速機構40の出力軸46を介してロータ57の回転が回転昇降軸17に減速されて伝達され、前記雌ねじ15iと雄ねじ17aによるねじ送りによって回転昇降軸17が回転しながら例えば上昇され、それに伴い弁軸20が圧縮コイルばね25の付勢力によって引き上げられて上昇位置がとられる。この上昇位置では、第1弁体21が連通ポートp11の上側に位置し、第2弁体22が内側ポートp1と内側ポートp2との間に位置し、第3弁体23が内側ポートp3と連通ポートp12の間に位置せしめられ、第1弁体21と第2弁体22の間の空間が、連通ポートp11と内側ポートp1の間に位置し、第2弁体22と第3弁体23の間の空間が、内側ポートp2と内側ポートp3の真横に位置せしめられるので、内側ポートp2と内側ポートp3が、第2弁体22と第3弁体23の間の空間を介して連通し、内側ポートp1と外側ポートp10が、第1弁体21と第2弁体22の間の空間、連通ポートp11、連通空間8を介して連通する(
図2に示す第2流れ状態)。
【0051】
ここで、本実施形態では、弁軸20内に設けられた連通路32を介して、第1弁体21の上側に画成される上側背圧室30(弁室7の上部)と第3弁体23の下側に画成される下側背圧室31(弁室7の下部)とが常時連通している。すなわち、前記第1弁体21の上面(上側背圧室30側の面)と前記第3弁体23の下面(下側背圧室31側の面)とが均圧されるとともに、各弁体(第1弁体21、第2弁体22、第3弁体23)の上下方向で対向する面同士も均圧されている。そのため、弁体(第1弁体21、第2弁体22、第3弁体23)の軸線O方向への移動による流路切換時に弁体の移動方向(弁軸20の軸線O方向)に作用する力(弁体に作用する押し下げ力と押し上げ力)をバランス(差圧を全てキャンセル)させられる。
【0052】
このように、本実施形態においては、弁軸20に設けられた3つの弁体(第1弁体21、第2弁体22、第3弁体23)を内側ハウジング9Aに内接せしめた状態でステッピングモータ50を制御して弁室7内で弁軸20を昇降させることにより、内側ハウジング9Aに設けられた3つの内側ポートp1、p2、p3及び外側ハウジング9に設けられた外側ポートp10の間の連通状態(流れ方向)が切り換えられるので、比較的シンプルな構成でもって効率的に流体の流れ方向(流路)の切り換えを行うことができるとともに、3つの弁体のうち最も上側の第1弁体21より上側の上側背圧室30と最も下側の第3弁体23より下側の下側背圧室31とが常時連通せしめられているので、その流路切換時に弁体に作用する荷重を可及的に小さくして、弁体の駆動トルクを低減でき、もって、更なる小型化、大容量化、省電力化等を図ることもできる。
【0053】
また、本実施形態では、各弁体の外周(内側ハウジング9Aとの摺動面)に設けられたシール部材21A、22A、23Aの外側に、内側ハウジング9Aに対する各弁体の摺動抵抗を低減するとともに、シール部材21A、22A、23Aの弾性変形を抑制すべく(特に、流路切換時にシール部材21A、22A、23Aが各内側ポート及び連通ポート上を通過するときに生じる弾性変形を抑制して、当該シール部材21A、22A、23Aが各内側ポート及び連通ポート上を通過するときの抵抗を低減すべく)、比較的硬度の高いPTFE(テフロン(登録商標))等からなるパッキン21B、22B、23Bが装着されているので、これによっても、流路切換時に弁体に作用する荷重を可及的に小さくでき、弁体の駆動トルクをより効果的に低減することができる。
【0054】
さらに、本実施形態では、ステッピングモータ50を制御して弁軸20を弁室7内で徐々に昇降させるように構成されているので、例えば、暖房運転から除霜運転へ及び除霜運転から暖房運転への切り換え時に、高圧側と低圧側の圧力差を小さくでき、そのため、騒音を効果的に低減することができるという効果もある。
【0055】
[第2実施形態]
図4及び
図5は、本発明に係る流路切換弁の第2実施形態を示す縦断面図であり、
図4は、第1流れ状態(弁軸:下降位置)、
図5は、第2流れ状態(弁軸:上昇位置)を示している。
【0056】
本第2実施形態の流路切換弁2は、上記第1実施形態における流路切換弁1に対し、基本的に、内側ハウジングに形成された内側ポート及び弁軸に形成された弁体の数のみが相違している。したがって、第1実施形態と同様の機能を有する構成については同様の符号を付してその詳細な説明は省略し、以下では、前記した相違点のみについて詳細に説明する。
【0057】
本実施形態の流路切換弁2は、例えばヒートポンプ式冷暖房システム等において六方切換弁として使用されるものであり、その内側ハウジング9Aの側部に、軸線O方向(縦方向)に並んで5つの内側ポートp1、p2、p3、p4、p5が開口せしめられるとともに、上側の内側ポートp1より上側に、弁室7と連通空間8を連通する連通ポートp11が開口せしめられ、下側の内側ポートp5より下側に、弁室7と連通空間8を連通する連通ポートp12が開口せしめられている。なお、各内側ポートp1、p2、p3、p4、p5にはそれぞれ、(外側ハウジング9を貫通するようにして)導管継手#1、#2、#3、#4、#5がろう付け等により横向きに取り付けられている。
【0058】
また、弁軸20を構成する連結軸29には、軸線O方向に離間して短円柱状の4つの弁体(第1弁体21、第2弁体22、第3弁体23、第4弁体24)が一体的に形成されている。本例では、連結軸29の上端部に第1弁体21が形成され、その下端部に第4弁体24が形成され、各弁体(第1弁体21、第2弁体22、第3弁体23、第4弁体24)は、軸線O方向で略等間隔に配設されている。また、本例でも、各弁体(第1弁体21、第2弁体22、第3弁体23、第4弁体24)の外周に形成された環状溝には、Oリング等のシール部材21A、22A、23A、24Aが装着されるとともに、各シール部材の21A、22A、23A、24Aの外側には、PTFE(テフロン(登録商標))等からなるリング状のパッキン(キャップシールともいう)21B、22B、23B、24Bが装着されている。
【0059】
かかる構成の流路切換弁2でも、ステッピングモータ50のロータ57を回転駆動させると、各弁体(第1弁体21、第2弁体22、第3弁体23、第4弁体24)が内側ハウジング9Aに内接せしめられた状態で弁室7内で弁軸20が昇降することにより、5つの内側ポートp1、p2、p3、p4、p5及び外側ポートp10の間の連通状態(流れ方向、流路)が切り換えられる。
【0060】
すなわち、ステッピングモータ50のロータ57を一方向に回転駆動させると、上記第1実施形態と同様、弁軸20が下降位置(ここでは、弁軸20の下端部に設けられ第4弁体24が蓋状部材11のストッパ部11sに衝接して停止せしめられた位置)をとるが、この下降位置では、第1弁体21が連通ポートp11と内側ポートp1との間に位置し、第2弁体22が内側ポートp2と内側ポートp3との間に位置し、第3弁体23が内側ポートp4と内側ポートp5との間に位置し、第4弁体24が連通ポートp12の下側に位置せしめられ、第1弁体21と第2弁体22の間の空間が、内側ポートp1と内側ポートp2の真横に位置し、第2弁体22と第3弁体23の間の空間が、内側ポートp3と内側ポートp4の真横に位置し、第3弁体23と第4弁体24の間の空間が、内側ポートp5と連通ポートp12の間に位置せしめられる。これにより、内側ポートp1と内側ポートp2が、第1弁体21と第2弁体22の間の空間を介して連通し、内側ポートp3と内側ポートp4が、第2弁体22と第3弁体23の間の空間を介して連通し、内側ポートp5と外側ポートp10が、第3弁体23と第4弁体24の間の空間、連通ポートp12、連通空間8を介して連通する(
図4に示す第1流れ状態)。
【0061】
それに対し、ステッピングモータ50のロータ57を他方向に回転駆動させると、上記第1実施形態と同様、弁軸20が上昇位置をとるが、この上昇位置では、第1弁体21が連通ポートp11の上側に位置し、第2弁体22が内側ポートp1と内側ポートp2との間に位置し、第3弁体23が内側ポートp3と内側ポートp4との間に位置し、第4弁体24が内側ポートp5と連通ポートp12の間に位置せしめられ、第1弁体21と第2弁体22の間の空間が、連通ポートp11と内側ポートp1の間に位置し、第2弁体22と第3弁体23の間の空間が、内側ポートp2と内側ポートp3の真横に位置し、第3弁体23と第4弁体24の間の空間が、内側ポートp4と内側ポートp5の真横に位置せしめられる。これにより、内側ポートp2と内側ポートp3が、第2弁体22と第3弁体23の間の空間を介して連通し、内側ポートp4と内側ポートp5が、第3弁体23と第4弁体24の間の空間を介して連通し、内側ポートp1と外側ポートp10が、第1弁体21と第2弁体22の間の空間、連通ポートp11、連通空間8を介して連通する(
図5に示す第2流れ状態)。
【0062】
ここで、本実施形態においても、弁軸20内に設けられた連通路32を介して、第1弁体21の上側に画成される上側背圧室30と第4弁体24の下側に画成される下側背圧室31とが常時連通しているので、上記第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0063】
なお、本例では、外側ポートp10が、平面視で視たときに内側ポートp1、p2、p3、p4、p5と反対側(言い換えれば、2つの連通ポートp11、p12と同じ側)に形成されているが、外側ポートp10、内側ポートp1〜p5、及び連通ポートp11、p12の位置は、流路切換弁2の適用箇所等に応じて適宜に変更できることは勿論である。例えば、
図6に示される如くに、外側ポートp10及び内側ポートp1〜p5を平面視で視て同じ側に形成してもよい。なお、
図6に示す例では、外側ポートp10が内側ポートp1〜p5の上側に形成されているが、外側ポートp10を内側ポートp1〜p5の下側に形成してもよいことは当然である。
【0064】
また、本例では、同軸上に配置された筒状基体からなる外側ハウジング9及び内側ハウジング9Aによって、内側ハウジング9Aと外側ハウジング9の間(内側ハウジング9Aの外周)に、円筒状の連通空間8が形成されているが、例えば、
図7(A)、(B)に示される如くに、内側ハウジング9Aの外周(詳細には、内側ハウジング9Aに形成された連通ポートp11、p12を覆う位置)に例えば横断面コの字状の筐体からなる外側ハウジング9を(溶接、ろう付け等により)接続し、その外側ハウジング9と筒状基体からなる内側ハウジング9Aの間(内側ハウジング9Aの外周の一部)に、略ストレート状の連通空間8を形成してもよい。なお、この場合、
図7(A)、(B)に示す例では、内側ハウジング9Aの下端部が、蓋状部材11の大径接合部11cと中径嵌合部11bの間に形成された段差部に溶接等により接合されるとともに、内側ハウジング9Aの上端に拡径部9Bが設けられ、その拡径部9Bに、段付きの筒状基台13が取り付けられている。
【0065】
[第3実施形態]
図8及び
図9は、本発明に係る流路切換弁の第3実施形態を示す縦断面図であり、
図8は、第1流れ状態(弁軸:下降位置)、
図9は、第2流れ状態(弁軸:上昇位置)を示している。
【0066】
本第3実施形態の流路切換弁3は、上記第2実施形態における流路切換弁2に対し、基本的に、外側ポートの開口位置及び外側ハウジングと内側ハウジングの間の連通空間の形状が相違している。したがって、第2実施形態と同様の機能を有する構成については同様の符号を付してその詳細な説明は省略し、以下では、前記した相違点のみについて詳細に説明する。
【0067】
本実施形態の流路切換弁3は、上記第2実施形態と同様、例えばヒートポンプ式冷暖房システム等において六方切換弁として使用されるものであり、内側ハウジング9Aの外径が外側ハウジング9の内径と略同一に形成され、内側ハウジング9Aが外側ハウジング9に内嵌されるとともに、内側ハウジング9Aの外周(詳細には、連通ポートp11、p12が形成された部分)に(上下方向に亘って)Dカット面9Cが形成され、そのDカット面9Cと外側ハウジング9の内周面とによって前記連通空間8が形成されている(
図10も併せて参照)。
【0068】
なお、本例においては、内側ハウジング9Aの上部開口と筒状保持部材14(の底壁14c)に設けられた筒状嵌合部14bとの間に、Oリング等からなるシール部材14Aが介装されている。
【0069】
また、外側ポートp10は、外側ハウジング9における内側ポートp1〜p5の上側であって連通ポートp11と略同じ高さに形成されており、外側ポートp10に連設するように内側ハウジング9Aに設けられた開口p10a及び連通ポートp11を介して前記連通空間8と常時連通せしめられている。
【0070】
かかる構成の流路切換弁3でも、ステッピングモータ50のロータ57を回転駆動させると、各弁体(第1弁体21、第2弁体22、第3弁体23、第4弁体24)が内側ハウジング9Aに内接せしめられた状態で弁室7内で弁軸20が昇降することにより、5つの内側ポートp1、p2、p3、p4、p5及び外側ポートp10の間の連通状態(流れ方向、流路)が切り換えられる。
【0071】
すなわち、ステッピングモータ50のロータ57を一方向に回転駆動させると、上記第2実施形態と同様、弁軸20が下降位置(ここでは、弁軸20の下端部に設けられ第4弁体24が蓋状部材11のストッパ部11sに衝接して停止せしめられた位置)をとるが、この下降位置では、第1弁体21が連通ポートp11及び外側ポートp10に連なる開口p10aと内側ポートp1との間に位置し、第2弁体22が内側ポートp2と内側ポートp3との間に位置し、第3弁体23が内側ポートp4と内側ポートp5との間に位置し、第4弁体24が連通ポートp12の下側に位置せしめられ、第1弁体21と第2弁体22の間の空間が、内側ポートp1と内側ポートp2の真横に位置し、第2弁体22と第3弁体23の間の空間が、内側ポートp3と内側ポートp4の真横に位置し、第3弁体23と第4弁体24の間の空間が、内側ポートp5と連通ポートp12の間に位置せしめられる。これにより、内側ポートp1と内側ポートp2が、第1弁体21と第2弁体22の間の空間を介して連通し、内側ポートp3と内側ポートp4が、第2弁体22と第3弁体23の間の空間を介して連通し、内側ポートp5と外側ポートp10が、第3弁体23と第4弁体24の間の空間、連通ポートp12、連通空間8、連通ポートp12、第1弁体21より上側の上側背圧室30、開口p10aを介して連通する(
図8に示す第1流れ状態)。
【0072】
それに対し、ステッピングモータ50のロータ57を他方向に回転駆動させると、上記第2実施形態と同様、弁軸20が上昇位置をとるが、この上昇位置では、第1弁体21が連通ポートp11及び外側ポートp10に連なる開口p10aの上側に位置し、第2弁体22が内側ポートp1と内側ポートp2との間に位置し、第3弁体23が内側ポートp3と内側ポートp4との間に位置し、第4弁体24が内側ポートp5と連通ポートp12の間に位置せしめられ、第1弁体21と第2弁体22の間の空間が、連通ポートp11及び開口p10aと内側ポートp1の間に位置し、第2弁体22と第3弁体23の間の空間が、内側ポートp2と内側ポートp3の真横に位置し、第3弁体23と第4弁体24の間の空間が、内側ポートp4と内側ポートp5の真横に位置せしめられる。これにより、内側ポートp2と内側ポートp3が、第2弁体22と第3弁体23の間の空間を介して連通し、内側ポートp4と内側ポートp5が、第3弁体23と第4弁体24の間の空間を介して連通し、内側ポートp1と外側ポートp10が、第1弁体21と第2弁体22の間の空間を介して連通する(
図9に示す第2流れ状態)。
【0073】
ここで、本実施形態においても、弁軸20内に設けられた連通路32を介して、第1弁体21の上側に画成される上側背圧室30と第4弁体24の下側に画成される下側背圧室31とが常時連通しているので、上記第1及び第2実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0074】
なお、本例では、外側ポートp10が、外側ハウジング9における内側ポートp1〜p5の上側であって連通ポートp11と略同じ高さに形成されているが、例えば、外側ポートp10を、外側ハウジング9における内側ポートp1〜p5の下側であって連通ポートp12と略同じ高さに形成し、連通ポートp12を介して前記連通空間8と常時連通するようにしてもよいことは言うまでも無い。
【0075】
[第4実施形態]
図11及び
図12は、本発明に係る流路切換弁の第4実施形態を示す縦断面図であり、
図11は、第1流れ状態(弁軸:下降位置)、
図12は、第2流れ状態(弁軸:上昇位置)を示している。
【0076】
本第4実施形態の流路切換弁4は、上記第2実施形態における流路切換弁2に対し、基本的に、上側背圧室30と下側背圧室31とを常時連通する連通路32の構成が相違している。したがって、第2実施形態と同様の機能を有する構成については同様の符号を付してその詳細な説明は省略し、以下では、前記した相違点のみについて詳細に説明する。
【0077】
本実施形態の流路切換弁4は、上記第2実施形態と同様、例えばヒートポンプ式冷暖房システム等において六方切換弁として使用されるものであり、ここでは、弁軸20を構成する連結軸29がほぼ中実に形成され、連結軸29の上端部に形成された中心穴29bに、段付き円筒状の推力伝達軸27の小径下部27cが嵌挿されて圧入、ろう付け等により連結されている。
【0078】
また、筒状保持部材14(の底壁14c)に設けられた筒状嵌合部14bが若干長く形成され、底壁14cと内側ハウジング9Aの上端部との間に隙間を持つように前記筒状嵌合部14bが内側ハウジング9Aの上部開口に嵌合(内嵌)されるとともに、その筒状嵌合部14bの上部(詳細には、筒状嵌合部14bのうち前記隙間に対応する部分)に横孔32aが形成されている。なお、この横孔32aは、内側ハウジング9Aにおける連通ポートp11より上側であって弁軸20が上昇位置にあるときの第1弁体21より上側に形成してもよい。
【0079】
さらに、内側ハウジング9Aにおける連通ポートp12より下側であって蓋状部材11の小径突設部11aの側方(すなわち、下側背圧室31に対応する部分)に横孔32bが形成されている。
【0080】
これにより、本実施形態の流路切換弁4では、筒状保持部材14の筒状嵌合部14bの横孔32a、内側ハウジング9Aの上端部と筒状保持部材14の底壁14cとの間に形成される隙間を含む内側ハウジング9Aと外側ハウジング9との間(言い換えれば、内側ハウジング9Aの外側)の連通空間8、及び、内側ハウジング9Aの横孔32bによって、上側背圧室30と下側背圧室31とを常時連通する連通路32が構成されている。
【0081】
かかる構成の流路切換弁4でも、ステッピングモータ50のロータ57を回転駆動させると、各弁体(第1弁体21、第2弁体22、第3弁体23、第4弁体24)が内側ハウジング9Aに内接せしめられた状態で弁室7内で弁軸20が昇降することにより、上述の第2実施形態と同様に、5つの内側ポートp1、p2、p3、p4、p5及び外側ポートp10の間の連通状態(流れ方向、流路)が切り換えられるが、内側ハウジング9Aと外側ハウジング9との間の連通空間8を含む連通路32を介して、第1弁体21の上側に画成される上側背圧室30と第4弁体24の下側に画成される下側背圧室31とが常時連通しているので、上記第1、第2、及び第3実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0082】
また、本実施形態では、弁軸20を構成する連結軸29における貫通孔を省略できるので、弁軸20自体を比較的シンプルな構成とすることもできるといった効果もある。
【0083】
なお、この場合、上側背圧室30と下側背圧室31とは、内側ハウジング9Aの外側の連通空間8等を含む連通路32を介して常時連通しているので、内側ハウジング9Aの連通ポートp11、p12の一方を省略してもよいし、前記連通ポートp11、p12とは異なる位置に弁室7と連通空間8とを連通する連通ポートを形成してもよい。
【0084】
[第5実施形態]
図13及び
図14は、本発明に係る流路切換弁の第5実施形態を示す縦断面図であり、
図13は、第1流れ状態(弁軸:下降位置)、
図14は、第2流れ状態(弁軸:上昇位置)を示している。
【0085】
本第5実施形態の流路切換弁5は、上記第4実施形態における流路切換弁4に対し、基本的に、内側ハウジング9Aに形成された内側ポートp1〜p5や連通ポートp11、p12の内周付近の形状が相違している。したがって、第4実施形態と同様の機能を有する構成については同様の符号を付してその詳細な説明は省略し、以下では、前記した相違点のみについて詳細に説明する。
【0086】
本実施形態の流路切換弁5は、上記第4実施形態と同様、例えばヒートポンプ式冷暖房システム等において六方切換弁として使用されるものであり、ここでは、弁軸20を構成する連結軸29が、3つの第1連結軸構成体29A〜29Cと1つの第2連結軸構成体29Dとから構成されている。
【0087】
各第1連結軸構成体29A〜29Cの上端部には、短円柱状の弁体(第1弁体21、第2弁体22、第3弁体23)が一体的に形成されるとともに、その下端部には、推力伝達軸27の小径下部27cと同形の小径嵌挿部29Aa〜29Caが形成されている。また、第2連結軸構成体29Dの上端部には、短円柱状の弁体(第4弁体24)が一体的に形成されている。
【0088】
第1連結軸構成体29Aの上端部に形成された中心穴29Abに、推力伝達軸27の小径下部27cが上側から嵌合されて圧入、ろう付け等により一体的に連結され、第1連結軸構成体29Bの上端部に形成された中心穴29Bbに、第1連結軸構成体29Aの小径嵌挿部29Aaが上側から嵌合されて一体的に連結され、第1連結軸構成体29Cの上端部に形成された中心穴29Cbに、第1連結軸構成体29Bの小径嵌挿部29Baが上側から嵌合されて一体的に連結され、第2連結軸構成体29Dの上端部に形成された中心穴29Dbに、第1連結軸構成体29Cの小径嵌挿部29Caが上側から嵌合されて一体的に連結されることで、軸線O方向に沿って配在されるとともに、軸線O方向に離間して短円柱状の4つの弁体(第1弁体21、第2弁体22、第3弁体23、第4弁体24)が設けられた前記弁軸20が構成されている。
【0089】
また、ここでは、第1連結軸構成体29Aの第1弁体21の上端面と推力伝達軸27の中間胴部27bの下端段差面との間に、小径下部27cの圧入時において押さえ部材21Cが挟み込まれて固定され、この押さえ部材21Cと第1弁体21の上端外周に形成された段差部とで形成される環状溝に、第1弁体21(の外周面)と内側ハウジング9A(の内周面)との間(に形成される摺動面隙間)をシールする前記シール部材21Aが装着されるとともに、そのシール部材21Aの外側に、PTFE(テフロン(登録商標))等からなる前記パッキン21Bが装着されている。
【0090】
また、第1連結軸構成体29Bの第2弁体22と第1連結軸構成体29Aとの間、第1連結軸構成体29Cの第3弁体23と第1連結軸構成体29Bとの間、及び、第2連結軸構成体29Dの第4弁体24と第1連結軸構成体29Cとの間にも、同様に、押さえ部材22C〜24Cが挟み込まれて固定されており、各押さえ部材22C〜24Cと第2〜第4弁体22〜24とで形成される環状溝に、前記シール部材22A〜24A及び前記パッキン22B〜24Bが装着されている。
【0091】
また、本実施形態では、内側ハウジング9Aの内周における内側ポートp1〜p5及び連通ポートp11、p12が形成された部分が、全周に亘って凹状に形成されており(凹面部s1〜s5、s11、s12)(リセス加工ともいう)、その凹面部s1〜s5、s11、s12の上面及び下面に、円錐台面からなるテーパ面部t1〜t5、t11、t12が設けられている。
【0092】
なお、図示例では、テーパ面部t1〜t5、t11、t12が円錐台面から構成され、縦断面で視たときに直線状を有しているが、例えば、テーパ面部t1〜t5、t11、t12を、縦断面で視たときに内側へ向かって凸あるいは外側へ向かって凸となるような曲線状に形成してもよい。また、内側ポートp1〜p5及び連通ポートp11、p12と内側ハウジング9Aとの境界部分、あるいは、テーパ面部t1〜t5、t11、t12と内側ハウジング9Aとの境界部分をR付けしてもよい。
【0093】
かかる構成の流路切換弁5でも、ステッピングモータ50のロータ57を回転駆動させると、各弁体(第1弁体21、第2弁体22、第3弁体23、第4弁体24)が内側ハウジング9Aに内接せしめられた状態で弁室7内で弁軸20が昇降することにより、上述の第4実施形態と同様に、5つの内側ポートp1、p2、p3、p4、p5及び外側ポートp10の間の連通状態(流れ方向、流路)が切り換えられるが、内側ハウジング9Aと外側ハウジング9との間(言い換えれば、内側ハウジング9Aの外側)の連通空間8を含む連通路32を介して、第1弁体21の上側に画成される上側背圧室30と第4弁体24の下側に画成される下側背圧室31とが常時連通しているので、上記第4実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0094】
また、本実施形態では、内側ハウジング9Aの内周における内側ポートp1〜p5及び連通ポートp11、p12が形成された部分に、全周に亘って凹面部s1〜s5、s11、s12が設けられているので、流路切換時における各弁体の外周(各弁体の外周に設けられたパッキン21B、22B、23B、24Bやシール部材21A、22A、23A、24Aを含む)と内側ハウジング9Aの内周との摺動抵抗を低減できるため、これによっても、流路切換時に弁体に作用する荷重を可及的に小さくでき、弁体の駆動トルクをより効果的に低減することができる。
【0095】
また、各弁体の外周に設けられたシール部材21A、22A、23A、24Aの外側には、シール部材21A、22A、23A、24Aの弾性変形を抑制すべく、比較的硬度の高いPTFE(テフロン(登録商標))等からなるパッキン21B、22B、23B、24Bが装着されているものの、流路切換時にシール部材21A、22A、23A、24Bが各内側ポート及び連通ポート上を通過するときに弾性変形して、パッキン21B、22B、23B、24Bやシール部材21A、22A、23A、24Aの外周部分が、各弁体の外周に形成された環状溝から突出する可能性はある。本実施形態では、内側ハウジング9Aの内周における内側ポートp1〜p5及び連通ポートp11、p12が形成された部分(の上部及び下部)に、円錐台面からなるテーパ面部t1〜t5、t11、t12が設けられているので、例えば
図15に拡大図示されている如くに、流路切換時にパッキン21B、22B、23B、24Bやシール部材21A、22A、23A、24Aが各内側ポート及び連通ポート上を滑らかに通過するようになり、パッキン21B、22B、23B、24Bやシール部材21A、22A、23A、24Aが各内側ポート及び連通ポート上を通過するときの抵抗(図示例では、各内側ポート及び連通ポートが形成された部分に設けられた凹面部と内側ハウジングの内周との間の段差に起因する抵抗)を更に低減できるため、これによっても、流路切換時に弁体に作用する荷重を可及的に小さくでき、弁体の駆動トルクを更に効果的に低減することができる。
【0096】
[第6実施形態]
図16及び
図17は、本発明に係る流路切換弁の第6実施形態を示す縦断面図であり、
図16は、第1流れ状態(弁軸:下降位置)、
図17は、第2流れ状態(弁軸:上昇位置)を示している。
【0097】
本第6実施形態の流路切換弁6は、上記第1実施形態における流路切換弁1に対し、基本的に、内側ハウジングに形成された内側ポート及び弁軸に形成された弁体の数が相違している。したがって、第1実施形態と同様の機能を有する構成については同様の符号を付してその詳細な説明は省略し、以下では、前記した相違点のみについて詳細に説明する。
【0098】
本実施形態の流路切換弁6は、例えばヒートポンプ式冷暖房システム等において三方切換弁として使用されるものであり、その内側ハウジング9Aの側部に、軸線O方向(縦方向)に並んで2つの内側ポートp1、p2が開口せしめられるとともに、上側の内側ポートp1より上側に、弁室7と連通空間8を連通する連通ポートp11が開口せしめられ、下側の内側ポートp2より下側に、弁室7と連通空間8を連通する連通ポートp12が開口せしめられている。より詳細には、連通ポートp11は、弁軸20が上昇位置にあるときにおいて第1弁体21の上側に位置するように形成され、連通ポートp12は、弁軸20が下降位置にあるときにおいて第2弁体22の下側に位置するように形成されている。すなわち、ここでは、連通ポートp11は、第1弁体21より常時上側に位置するように形成され、連通ポートp12は、第2弁体22より常時下側に位置するように形成されている。各内側ポートp1、p2にはそれぞれ、(外側ハウジング9を貫通するようにして)導管継手#1、#2がろう付け等により横向きに取り付けられている。
【0099】
また、弁軸20を構成する推力伝達軸27の中間胴部27bが若干長く形成されるとともに、推力伝達軸27(の小径下部27c)に連結される連結軸29には、軸線O方向に離間して短円柱状の2つの弁体(第1弁体21、第2弁体22)が一体的に形成されている。各弁体(第1弁体21、第2弁体22)は、内側ハウジング9Aに開口せしめられた2個の内側ポートp1、p2の穴径とほぼ同じ距離だけ離間して、言い換えれば、各弁体間に、内側ハウジング9Aに開口せしめられた2個の内側ポートp1、p2のうちの一方に連通される大きさの空間を画成するように、前記連結軸29に配設されている。また、第1弁体21は、弁軸20が下降位置にあるときにおいて2つの内側ポートp1、p2の間かつ弁軸20が上昇位置にあるときにおいて内側ポートp1と連通ポート
p11との間に位置するように連結軸29に配設され、第2弁体22は、弁軸20が下降位置にあるときにおいて内側ポートp2と連通ポートp12との間かつ弁軸20が上昇位置にあるときにおいて2つの内側ポートp1、p2の間に位置するように連結軸29に配設されている。
【0100】
本例では、連結軸29の上端部に第1弁体21が形成され、その下端部に第2弁体22が形成されている。また、本例でも、各弁体(第1弁体21、第2弁体22)の外周に形成された環状溝には、Oリング等のシール部材21A、22Aが装着されるとともに、各シール部材の21A、22Aの外側には、PTFE(テフロン(登録商標))等からなるリング状のパッキン(キャップシールともいう)21B、22Bが装着されている。
【0101】
かかる構成の流路切換弁6でも、ステッピングモータ50のロータ57を回転駆動させると、各弁体(第1弁体21、第2弁体22)が内側ハウジング9Aに内接せしめられた状態で弁室7内で弁軸20が昇降することにより、2つの内側ポートp1、p2及び外側ポートp10の間の連通状態(流れ方向、流路)が切り換えられる。
【0102】
すなわち、ステッピングモータ50のロータ57を一方向に回転駆動させると、上記第1実施形態と同様、弁軸20が下降位置(ここでは、弁軸20の下端部に設けられ第2弁体22が蓋状部材11のストッパ部11sに衝接して停止せしめられた位置)をとるが、この下降位置では、第1弁体21が内側ポートp1と内側ポートp2との間に位置し、第2弁体22が内側ポートp2と連通ポートp12との間に位置せしめられ、第1弁体21と第2弁体22の間の空間が、内側ポートp2の真横に位置せしめられる。これにより、内側ポートp1と外側ポートp10が、弁室7における第1弁体21より上側の空間(上側背圧室30)、連通ポートp11、連通空間8を介して連通するとともに、弁室7における第1弁体21より上側の空間(上側背圧室30)、弁軸20内に設けられた連通路32A(推力伝達軸27の横孔27e及び貫通孔27d、連結軸29の貫通孔29a)、蓋状部材11(の小径突設部11a)の縦孔11v及び横孔11u、弁室7における第2弁体22より下側の空間(下側背圧室31)、連通ポートp12、連通空間8を介して連通する(
図16に示す第1流れ状態)。
【0103】
それに対し、ステッピングモータ50のロータ57を他方向に回転駆動させると、上記第1実施形態と同様、弁軸20が上昇位置をとるが、この上昇位置では、第1弁体21が連通ポートp11と内側ポートp1との間に位置し、第2弁体22が内側ポートp1と内側ポートp2との間に位置せしめられ、第1弁体21と第2弁体22の間の空間が、内側ポートp1の真横に位置せしめられる。これにより、内側ポートp2と外側ポートp10が、弁室7における第2弁体22の下側の空間(下側背圧室31)、連通ポートp12、連通空間8を介して連通するとともに、弁室7における第2弁体22の下側の空間(下側背圧室31)、弁軸20内に設けられた連通路32A(推力伝達軸27の横孔27e及び貫通孔27d、連結軸29の貫通孔29a)、弁室7における第1弁体21より上側の空間(上側背圧室30)、連通ポートp11、連通空間8を介して連通する(
図17に示す第2流れ状態)。
【0104】
ここで、本実施形態においても、弁軸20内に設けられた連通路32A、及び、内側ハウジング9Aと外側ハウジング9との間の連通空間8を含む連通路32B(詳細には、内側ハウジング9Aの2つの連通ポートp11、p12、及び、内側ハウジング9Aと外側ハウジング9との間の連通空間8によって構成される連通路32B)を介して、第1弁体21の上側に画成される上側背圧室30と第2弁体22の下側に画成される下側背圧室31とが常時連通しているので、上記第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0105】
なお、この場合、上側背圧室30と下側背圧室31とは、内側ハウジング9Aの外側の連通空間8等を含む連通路32Bを介して常時連通しているので、上記第4実施形態と同様に、弁軸20を構成する連結軸29をほぼ中実に形成する等して、弁軸20内に設けられた連通路32Aを省略してもよいことは勿論である。
【0106】
また、本第6実施形態の流路切換弁6と同様の構成を採用することにより、五方切換弁等といった流体(冷媒)の流れ方向(流路)を奇数方向に切り換える流路切換弁を構成し得ることは言うまでも無い。
【0107】
なお、上記第1〜第6実施形態では、主に、弁体を昇降させるための昇降駆動部としてステータとロータとを有するステッピングモータを用いた電動式の流路切換弁を採用しているが、例えば昇降駆動部としてソレノイド等を用いた電磁式の流路切換弁を採用してもよいことは勿論である。