特許第6656963号(P6656963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6656963後発酵型ドリンクヨーグルトおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6656963
(24)【登録日】2020年2月7日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】後発酵型ドリンクヨーグルトおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23C 9/123 20060101AFI20200220BHJP
【FI】
   A23C9/123
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-49264(P2016-49264)
(22)【出願日】2016年3月14日
(65)【公開番号】特開2016-178922(P2016-178922A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2018年8月22日
(31)【優先権主張番号】特願2015-58857(P2015-58857)
(32)【優先日】2015年3月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505249104
【氏名又は名称】トモヱ乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100086221
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 裕也
(72)【発明者】
【氏名】伊東 一樹
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 吉彦
(72)【発明者】
【氏名】中條 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】小泉 祐亮
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 なつき
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 智江
【審査官】 池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−511176(JP,A)
【文献】 特表2010−517515(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/110108(WO,A1)
【文献】 特開平06−014708(JP,A)
【文献】 特開平03−198738(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/121131(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C 1/00 − 23/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
AGRICOLA(STN)
CABA(STN)
FSTA(STN)
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨーグルトミックス液に乳酸菌スターターを添加した後、容器に充填してから発酵を行うことにより製造される後発酵型ドリンクヨーグルトであって、ヨーグルトに含まれる乳タンパク質の含有量が1.5質量%〜2.5質量%であり、かつ乳タンパク質に含まれるカゼインタンパクとホエイタンパクとの質量比が65:35〜35:65である、後発酵型ドリンクヨーグルト。
【請求項2】
発酵後のカード粉砕をすることなく得られた、請求項1に記載の後発酵型ヨーグルト。
【請求項3】
ホエイタンパク質の熱安定性向上処理を行うことなく得られた、請求項1又は2に記載の後発酵型ヨーグルト。
【請求項4】
ヨーグルトミックス液に乳酸菌スターターを添加した後、容器に充填してから発酵を行う後発酵型ドリンクヨーグルトを製造するにあたり、ヨーグルトに含まれる乳タンパク質の含有量を1.5質量%〜2.5質量%とし、かつ乳タンパク質に含まれるカゼインタンパクとホエイタンパクとの質量比を65:35〜35:65としたことを特徴とする、後発酵型ドリンクヨーグルトの製造方法。
【請求項5】
発酵後のカード粉砕を行わない、請求項4に記載の後発酵型ヨーグルトの製造方法。
【請求項6】
ホエイタンパク質の熱安定性向上処理を行わない、請求項4又は5に記載の後発酵型ヨーグルトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動性に優れた後発酵型ドリンクヨーグルトおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヨーグルトの製造方法には、ヨーグルトミックス液に乳酸菌スターターを添加し、発酵させた後、カードを粉砕してから容器に充填する前発酵型製法と、ヨーグルトミックス液に乳酸菌スターターを添加した後、容器に充填してから発酵を行う後発酵型製法の2種類の製造方法がある。
カードの粉砕が必要なソフトヨーグルトやドリンクヨーグルトは前発酵型製法で製造され、一方で、カードの粉砕が必要ないプレーンヨーグルトやハードヨーグルトは後発酵型製法で製造されている。
【0003】
近年、場所を選ばず手軽に飲めるという利便性等から、ドリンクヨーグルトの市場が拡大している。
上述の通り、ドリンクヨーグルトは、流動性に優れている必要がある為、発酵後にカードの粉砕を行ってから充填を行う前発酵型製法で製造される。
【0004】
しかし、前発酵型製法は、発酵後行うカードの粉砕にアセプティックホモゲナイザー等の無菌的にカード粉砕を行うことのできる装置が必要であり、この工程での微生物汚染リスクや製造コストの増加といった側面が存在する。
【0005】
ヨーグルトは、乳酸菌が発酵によって、乳酸を生成することでヨーグルトミックス液中のpHが下がり、それにより乳に含まれているタンパク質のカゼインが変性し、凝固することでカードが形成される。
後発酵製法でドリンクタイプのヨーグルトを製造する方法の一つとして、ヨーグルトミックス液中のカゼイン濃度を下げることで(カゼイン:ホエイタンパク比4:96〜12:88)、ヨーグルトのカード形成が阻害され、発酵後にカード粉砕を行わなくても製造できるという方法が知られている(特許文献1参照)。
【0006】
乳に含まれているタンパク質には、およそ80%を占めるカゼインと、およそ20%を占めるホエイタンパク質との2種類のタンパク質があり、カード形成が生じないようカゼイン濃度を下げる為には、もう一方のホエイタンパク質の濃度を上げなければならない。
しかし、ホエイタンパク質は酸への耐性は強いが、熱安定性が低く、加熱により変性し、凝集やゲル化が生じる性質がある。
【0007】
その為、後発酵製法でドリンクヨーグルトを製造する為に、ホエイタンパク質の濃度を上げた場合、加熱殺菌時に凝集やゲル化が生じ、製品の品質に悪影響を及ぼしてしまうという問題がある。
すなわち、後発酵型製法で、カード粉砕を行うことなくドリンクヨーグルトを製造する為には、カゼイン濃度を下げ、ホエイタンパク質濃度を上げる必要があるが、ホエイタンパク質濃度を上げると加熱殺菌の際に凝集やゲル化が発生する恐れがある。
【0008】
後発酵型製法で、カード粉砕を行うことなくドリンクヨーグルトを製造する際に、カゼイン濃度を下げ、ホエイタンパク質濃度を上げた場合に起こる、加熱殺菌の際に凝集やゲル化が発生する恐れを回避する方法の一つとして、ホエイタンパク質を物理的又は化学的に処理して熱安定性を向上させる方法が知られている(特許文献2、3参照)。
しかしながら、この場合、ホエイタンパク質を物理的又は化学的に処理するための装置や薬剤等が必要であり、製造コストの増加に繋がってしまう問題点が生じている。
【0009】
また、ホエイタンパク質を含むホエイ原材料は、良質なタンパク質を含むことから、その有用性が着目されてはいるが、従来は廃棄されていたものが多くあり、現在でも脱脂粉乳の一部を置き換える為の原材料としての側面が強い。
以上より、ホエイ原材料を多く使用してドリンクヨーグルトを製造するということはあまり見られず、その為、ドリンクヨーグルトは、カゼイン濃度を下げ、ホエイタンパク質濃度を上げる後発酵型製法でなく、発酵後にカードの粉砕を行う前発酵型製法で製造されるのが一般的となっているのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第5421123号公報
【特許文献2】特許第3733748号公報
【特許文献3】特許第4431181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のように、従来の技術で、ドリンクヨーグルトの製造を行うには、前発酵型製法では発酵後のカード粉砕の為のアセプティックホモゲナイザー等の設備が必要であり、一方、後発酵型製法ではホエイタンパク質を物理的又は化学的に処理して熱安定性を向上させる工程等が必要であり、通常の後発酵型製法のヨーグルトに比べ、製造コストの増加といった問題が生じている。
【0012】
従って、本発明の課題は、前発酵型製法のような発酵後のカード粉砕の為のアセプティックホモゲナイザー等の設備が不要な、後発酵型ドリンクヨーグルトでありながら、加熱殺菌の際に凝集やゲル化が発生する恐れを回避するためのホエイタンパク質の物理的又は化学的処理を不要とした、風味および流動性に優れた後発酵型ドリンクヨーグルトと、その製造方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討を行った。その結果、ヨーグルトに含まれる乳タンパク質の含有量を1.5質量%〜2.5質量%とし、かつ乳タンパク質に含まれるカゼインタンパクとホエイタンパクとの質量比が65:35〜35:65になるようにしたヨーグルトを調整することで、発酵後のカード粉砕やホエイタンパク質の熱安定性向上処理を行わなくても、風味および流動性の良好な後発酵型ドリンクヨーグルトが得られることを見出した。
【0014】
すなわち、本発明者らは、ヨーグルトに含まれる乳タンパク質の含有量を1.5質量%〜2.5質量%とし、かつ乳タンパク質に含まれるカゼインタンパクとホエイタンパクとの質量比が65:35〜35:65になるように添加した後発酵型ドリンクヨーグルトを調整することで、ホエイタンパク質の加熱による凝集やゲル化を防止しできること、およびカゼインの酸変性による強固なカード形成を阻害できることを見出したものである。
本発明者らは、上述のカゼインタンパクとホエイタンパクとの質量比に調整した後発酵型ドリンクヨーグルトは、ホエイタンパク質の凝集やゲル化による品質への悪影響は見られず、また配送等で品質劣化の要因となる離水もほとんど無く、適度で滑らかな流動性を維持していることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明は、次の(1)〜(6)に関する。
(1)ヨーグルトミックス液に乳酸菌スターターを添加した後、容器に充填してから発酵を行うことにより製造される後発酵型ドリンクヨーグルトであって、ヨーグルトに含まれる乳タンパク質の含有量が1.5質量%〜2.5質量%であり、かつ乳タンパク質に含まれるカゼインタンパクとホエイタンパクとの質量比が65:35〜35:65である、後発酵型ドリンクヨーグルト。

(2)発酵後のカード粉砕をすることなく得られた、前記(1)に記載の後発酵型ヨーグルト。

(3)ホエイタンパク質の熱安定性向上処理を行うことなく得られた、前記(1)又は(2)に記載の後発酵型ヨーグルト。

(4)ヨーグルトミックス液に乳酸菌スターターを添加した後、容器に充填してから発酵を行う後発酵型ドリンクヨーグルトを製造するにあたり、ヨーグルトに含まれる乳タンパク質の含有量を1.5質量%〜2.5質量%とし、かつ乳タンパク質に含まれるカゼインタンパクとホエイタンパクとの質量比を65:35〜35:65としたことを特徴とする、後発酵型ドリンクヨーグルトの製造方法。

(5)発酵後のカード粉砕を行わない、前記(4)に記載の後発酵型ヨーグルトの製造方法。

(6)ホエイタンパク質の熱安定性向上処理を行わない、前記(4)又は(5)に記載の後発酵型ヨーグルトの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、前発酵型製法のような発酵後のカード粉砕の為のアセプティックホモゲナイザー等の設備が不要な、後発酵型ドリンクヨーグルトでありながら、加熱殺菌の際に凝集やゲル化が発生する恐れを回避するためのホエイタンパク質の物理的又は化学的処理を不要とした、風味および流動性に優れた後発酵型ドリンクヨーグルトと、その製造方法とが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のヨーグルトは、後発酵型ドリンクヨーグルトである。
ここで、後発酵型のヨーグルトとは、原料であるヨーグルトミックス液に、乳酸菌スターターを添加し、容器に充填した後に発酵させる(後発酵)ことにより製造されるタイプのヨーグルトを指している。さらに、ドリンクヨーグルトであることから、容器内で固まっている、いわゆる食べるヨーグルトとは異なり、流動性を付与しているドリンクタイプのヨーグルト、いわゆる飲むヨーグルトに関するものである。
【0018】
本発明の後発酵型ドリンクヨーグルトは、ヨーグルトに含まれる乳タンパク質の含有量が1.5質量%〜2.5質量%であり、かつ乳タンパク質に含まれるカゼインタンパクとホエイタンパクとの質量比が65:35〜35:65のものである。
本発明においては、この2つの条件を共に具備することが必要であって、いずれか一方のみの条件を具備したとしても、本発明の目的を達成することはできない。
【0019】
まず、本発明の後発酵型ドリンクヨーグルトは、ヨーグルトに含まれる乳タンパク質の含有量が1.5質量%〜2.5質量%、好ましくは1.8質量%〜2.5質量%、より好ましくは2.0質量%〜2.5質量%のものである。
ヨーグルトに含まれる乳タンパク質の含有量が1.5質量%未満のものであると、風味が悪いものとなってしまう。一方、ヨーグルトに含まれる乳タンパク質の含有量が2.5質量%を超えたものであると、カゼインの凝固による強固なカード形成が見られるおそれ又は、加熱の影響によるホエイタンパク質の凝集が見られ、ヨーグルトがゲル化するおそれがある。
【0020】
次に、本発明の後発酵型ドリンクヨーグルトは、乳タンパク質に含まれるカゼインタンパクとホエイタンパクとの質量比が65:35〜35:65、好ましくは60:40〜40:60、より好ましくは55:45〜45:55のものである。
乳タンパク質に含まれるカゼインタンパクとホエイタンパクとの質量比が65:35を超えたもの(カゼインタンパクの割合がこれより多いもの)であると、カゼインの凝固による強固なカード形成が見られるおそれがあるため好ましくない。一方、乳タンパク質に含まれるカゼインタンパクとホエイタンパクとの質量比が35:65未満のもの(カゼインタンパクの割合がこれより少ないもの)であると、加熱の影響によるホエイタンパク質の凝集が見られ、ヨーグルトがゲル化するおそれがあるため好ましくない。
【0021】
本発明の後発酵型ドリンクヨーグルトは、発酵後のカード粉砕をすることなく得られたものである。
また、本発明の後発酵型ドリンクヨーグルトは、ホエイタンパク質の熱安定性向上処理を行うことなく得られたものである。
【0022】
このような本発明の後発酵型ドリンクヨーグルトは、例えば以下に示す本発明の方法により好適に製造することができる。
【0023】
即ち、本発明の方法は、ヨーグルトミックス液に乳酸菌スターターを添加した後、容器に充填してから発酵を行う後発酵型ドリンクヨーグルトを製造するにあたり、ヨーグルトに含まれる乳タンパク質の含有量を1.5質量%〜2.5質量%とし、かつ乳タンパク質に含まれるカゼインタンパクとホエイタンパクとの質量比を65:35〜35:65としたことを特徴とする、後発酵型ドリンクヨーグルトの製造方法である。
【0024】
本発明におけるヨーグルトミックス液としては、原料乳(乳原料)と、必要に応じて用いられる、果汁などの添加成分とを原料としたものが挙げられる。
【0025】
ここで原料乳(乳原料)としては、主として乳を原料としたものが用いられ、例えば生乳、牛乳、脱脂粉乳、ホエイパウダー、ホエイタンパク質濃縮物(WPC)、ホエイタンパク質分離物(WPI)、生クリーム、乳タンパク等を挙げることができる。
【0026】
また、必要に応じて用いられる添加成分としては、例えば果汁、果肉、油脂、糖質、安定剤、乳化剤、甘味料、栄養強化剤、保存料、香料や着色料等を挙げることができる。
【0027】
本発明の方法においては、ヨーグルトに含まれる乳タンパク質の含有量を1.5質量%〜2.5質量%とし、かつ乳タンパク質に含まれるカゼインタンパクとホエイタンパクとの質量比を65:35〜35:65とすることが必要である。
本発明の方法においては、この2つの条件を共に具備することが必要であって、いずれか一方のみの条件を具備したとしても、本発明の方法の目的を達成することはできない。
ここで、ヨーグルトに含まれる乳タンパク質の含有量の好適範囲やその理由は、前記の後発酵型ドリンクヨーグルトについての箇所で述べたとおりである。
また、乳タンパク質に含まれるカゼインタンパクとホエイタンパクとの質量比の好適範囲やその理由も、前記の後発酵型ドリンクヨーグルトについての箇所で述べたとおりである。
【0028】
これらの原料を所定量計量した後、温水にて溶解し、5〜30MPaの均質圧で処理し、ヨーグルトミックス液とする。
【0029】
本発明の方法においては、このヨーグルトミックス液を殺菌し、冷却した後、乳酸菌スターターを添加する。
【0030】
殺菌は、バッチ式で行う場合、85〜95℃で5〜15分間保持して行う。HTST(高温短時間殺菌)で行う場合は、95〜120℃で20秒〜3分間の保持を行うが、好ましくは100〜110℃で20秒〜1分間殺菌を行う。UHT(超高温短時間殺菌)での120℃、1〜3秒殺菌も可能であるが、これ以上の温度での殺菌はホエイタンパク質の熱変性凝集が促進されやすくなるため好ましくない。
【0031】
殺菌し、40℃前後まで(40℃程度まで)冷却した後、乳酸菌スターターを添加する。
乳酸菌スターターとしては、ラクトバチルス・ブルガリクス、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ラクトコッカス・ラクティス、ラクトバチルス・ガセリ、ビフィドバクテリウム・ビフィダムなどのヨーグルトの製造に一般的に用いられる乳酸菌や酵母を用いることができ、これらを単独で、或いは、2種以上を混合して用いることができる。
【0032】
乳酸菌スターター添加後、容器に充填し、容器開口部をシールした後、発酵させる。
発酵は、40〜44℃、好ましくは41〜43℃で行い、乳酸酸度が0.6〜0.8%、好ましくは0.65〜0.75%になったときに発酵を終了し、1〜10℃に冷却する。
【0033】
冷却後、風味および流動性が良好で、滑らかな後発酵型ドリンクヨーグルト(製品)を得ることができる。
得られたヨーグルトは、好ましくはストローで飲用すると、より滑らかで良好な流動性のヨーグルトとなる。
【実施例】
【0034】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0035】
[実施例1]
生乳20.00%、脱脂粉乳1.22%、ホエイパウダー5.68%、上白糖7.00%および水64.10%の割合で原料を混合した。
この時の乳タンパク質の含有量は、1.80質量%であり、乳タンパク質に含まれるカゼインとホエイタンパク質の質量比は50:50であった。
【0036】
この原料を混合し溶解後、70℃に加温し、15MPaの均質圧で均質化した。
次いで、このヨーグルトミックス液を90℃で10分間保持し殺菌した後、42℃まで冷却した。
冷却したヨーグルトミックス液に、乳酸菌スターターを2.00%添加した後、容器に充填し、シールを行った。
乳酸菌スターターとして、ラクトバチルス・ブルガリクス、ストレプトコッカス・サーモフィルスおよびビフィズス菌からなる混合乳酸菌スターターを使用した。
42℃の温度で、乳酸酸度が0.65%になるまで発酵を行った後、5℃まで冷却して、後発酵型ドリンクヨーグルトを得た。
【0037】
得られた後発酵型ドリンクヨーグルトについて、風味、カード、ざらつきの3要素について官能パネル5人による官能検査を行い、以下の基準にて評価した。なお、風味については、「良い−悪い」で「良い」方から高い点をつけ、カードについては、「滑らか−固い」で「滑らか」な方から高い点をつけ、「ざらつき」については、「無し−有り」で「無し」の方から高い点をつけた。
【0038】
評価結果を、原料の配合割合、乳タンパク質の含有量、乳タンパク質に含まれるカゼインとホエイタンパク質の質量比と併せて、表1に示す。
なお、総合評価は、3要素(風味、カード、ざらつき)の最も悪い評価を採用した。
【0039】
<評価基準>
◎:極めて良好(5点満点中、4.5点以上)
○:良好(5点満点中、3.5点以上、4.5点未満)
△:普通(5点満点中、2.5点以上、3.5点未満)
▲:やや不良(5点満点中、1.5点以上、2.5点未満)
×:不良(5点満点中、1.5点未満)
【0040】
発酵、冷却後の容器中のヨーグルトは、良好な風味を有し、かつ、ざらつきのないなめらかな流動性のヨーグルトであった。
【0041】
[実施例2]
実施例1において、脱脂粉乳とホエイパウダーと水の使用割合を表1に示すように変えて、乳タンパク質の含有量を2.20質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして行い、後発酵型ドリンクヨーグルトを得た。
条件と結果を表1に示す。
発酵、冷却後の容器中のヨーグルトは、良好な風味を有し、かつ、ざらつきのないなめらかな流動性のヨーグルトであった。
【0042】
[実施例3]
実施例1において、脱脂粉乳とホエイパウダーと水の使用割合を表1に示すように変えて、乳タンパク質の含有量を2.50質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして行い、後発酵型ドリンクヨーグルトを得た。
条件と結果を表1に示す。
発酵、冷却後の容器中のヨーグルトは、良好な風味を有し、かつ、ざらつきのないなめらかな流動性のヨーグルトであった。
【0043】
[実施例4]
実施例3において、脱脂粉乳とホエイパウダーと水の使用割合を表1に示すように変えて、乳タンパク質に含まれるカゼインとホエイタンパク質の質量比を65:35としたこと以外は、実施例3と同様にして行い、後発酵型ドリンクヨーグルトを得た。
条件と結果を表1に示す。
発酵、冷却後の容器中のヨーグルトは、良好な風味を有し、かつ、ざらつきのないなめらかな流動性のヨーグルトであった。
【0044】
[実施例5]
実施例3において、脱脂粉乳とホエイパウダーと水の使用割合を表1に示すように変えて、乳タンパク質に含まれるカゼインとホエイタンパク質の質量比を35:65としたこと以外は、実施例3と同様にして行い、後発酵型ドリンクヨーグルトを得た。
条件と結果を表1に示す。
発酵、冷却後の容器中のヨーグルトは、良好な風味を有し、かつ、ざらつきのないなめらかな流動性のヨーグルトであった。
【0045】
[比較例1]
実施例1において、脱脂粉乳とホエイパウダーと水の使用割合を表1に示すように変えて、乳タンパク質の含有量を2.50質量%とし、かつ、乳タンパク質に含まれるカゼインとホエイタンパク質の質量比を70:30としたこと以外は、実施例1と同様にして行い、後発酵型ドリンクヨーグルトを得た。
条件と結果を表1に示す。
発酵、冷却後の容器中のヨーグルトは、風味は良好でかつ、ざらつきはなかったが、カゼインによる強固なカードが形成されており、流動性が悪かった。
【0046】
[比較例2]
実施例1において、脱脂粉乳とホエイパウダーと水の使用割合を表1に示すように変えて、乳タンパク質の含有量を2.50質量%とし、かつ、乳タンパク質に含まれるカゼインとホエイタンパク質の質量比を30:70としたこと以外は、実施例1と同様にして行い、後発酵型ドリンクヨーグルトを得た。
条件と結果を表1に示す。
発酵、冷却後の容器中のヨーグルトは、加熱の影響によるホエイタンパク質の凝集によりざらつき、ゲル化が見られ、風味も良くなかった。
【0047】
次に、カゼインとホエイタンパク質の重量比を35:65に固定し、乳タンパク質の含有量を種々変化させた試験を行い、下記の実施例6〜8、比較例3〜4とした。なお、実施例8は、前述の実施例5と同様の配合となっている。
【0048】
[実施例6]
生乳20.00%、脱脂粉乳0.48%、ホエイパウダー9.45%、上白糖7.00%および水61.07%の割合で原料を混合した。
この時の乳タンパク質の含有量は、2.00質量%であり、乳タンパク質に含まれるカゼインとホエイタンパク質の質量比は35:65であった。
【0049】
この原材料を混合し溶解後、70℃に加温し、15MPaの均質圧で均質化した。
次いで、このヨーグルトミックス液を90℃で10分間保持し殺菌した後、42℃まで冷却した。
冷却したヨーグルトミックス液に乳酸菌スターターを2.00%添加した後、容器に充填し、シールを行った。
乳酸菌スターターとして、ラクトバチルス・ブルガリクス、ストレプトコッカス・サーモフィルスおよびビフィズス菌からなる混合乳酸菌スターターを使用した。
42℃の温度で、乳酸酸度が0.65%になるまで発酵を行った後、5℃まで冷却して、後発酵型ドリンクヨーグルトを得た。
【0050】
得られた後発酵型ドリンクヨーグルトについて、実施例1と同様にして評価した。評価結果を、原料の配合割合、乳タンパク質の含有量、乳タンパク質に含まれるカゼインとホエイタンパク質の質量比と併せて、表2に示す。
発酵、冷却後の容器中のヨーグルトは、良好な風味を有し、かつ、ざらつきのないなめらかな流動性のヨーグルトであった。
【0051】
[実施例7]
実施例6において、生乳と脱脂粉乳とホエイパウダーと水の使用割合を表2に示すように変えて、乳タンパク質の含有量を1.50質量%としたこと以外は、実施例6と同様にして行い、後発酵型ドリンクヨーグルトを得た。
条件と結果を表2に示す。
発酵、冷却後の容器中のヨーグルトは、良好な風味を有し、かつ、ざらつきのないなめらかな流動性のヨーグルトであった。
【0052】
[実施例8]
実施例6において、脱脂粉乳とホエイパウダーと水の使用割合を表2に示すように変えて、乳タンパク質の含有量を2.50質量%としたこと以外は、実施例6と同様にして行い、後発酵型ドリンクヨーグルトを得た。
条件と結果を表2に示す。
発酵、冷却後の容器中のヨーグルトは、良好な風味を有し、かつ、ざらつきのないなめらかな流動性のヨーグルトであった。
【0053】
[比較例3]
実施例6において、生乳と脱脂粉乳とホエイパウダーと水の使用割合を表2に示すように変えて、乳タンパク質の含有量を1.30質量%としたこと以外は、実施例6と同様にして行い、後発酵型ドリンクヨーグルトを得た。
条件と結果を表2に示す。
発酵、冷却後の容器中のヨーグルトは、カードはなめらかであったが、乳タンパク質量が少ない為、風味が良くなかった。
【0054】
[比較例4]
実施例6において、脱脂粉乳とホエイパウダーと水の使用割合を表2に示すように変えて、乳タンパク質の含有量を2.70質量%としたこと以外は、実施例6と同様にして行い、後発酵型ドリンクヨーグルトを得た。
条件と結果を表2に示す。
発酵、冷却後の容器中のヨーグルトは、加熱の影響によるホエイタンパク質の凝集によりざらつき、ゲル化が見られ、風味も良くなかった。
【0055】
次に、カゼインとホエイタンパク質の重量比を65:35に固定し、乳タンパク質の含有量を種々変化させた試験を行い、下記の実施例9〜11、比較例5〜6とした。なお、実施例11は、前述の実施例4と同様の配合となっている。
【0056】
[実施例9]
生乳20.00%、脱脂粉乳2.69%、ホエイパウダー3.15%、上白糖7.00%および水65.16%の割合で原料を混合した。
この時の乳タンパク質の含有量は、2.00質量%であり、乳タンパク質に含まれるカゼインとホエイタンパク質の質量比は65:35であった。
この原材料を混合し溶解後、70℃に加温し、15MPaの均質圧で均質化した。
次いで、このヨーグルトミックス液を90℃で10分間保持し殺菌した後、42℃まで冷却した。
冷却したヨーグルトミックス液に乳酸菌スターターを2.00%添加した後、容器に充填し、シールを行った。
乳酸菌スターターとして、ラクトバチルス・ブルガリクス、ストレプトコッカス・サーモフィルスおよびビフィズス菌からなる混合乳酸菌スターターを使用した。
42℃の温度で、乳酸酸度が0.65%になるまで発酵を行った後、5℃まで冷却して、後発酵型ドリンクヨーグルトを得た。
【0057】
得られた後発酵型ドリンクヨーグルトについて、実施例1と同様にして評価した。評価結果を、原料の配合割合、乳タンパク質の含有量、乳タンパク質に含まれるカゼインとホエイタンパク質の質量比と併せて、表3に示す。
発酵、冷却後の容器中のヨーグルトは、良好な風味を有し、かつ、ざらつきのないなめらかな流動性のヨーグルトであった。
【0058】
[実施例10]
実施例9において、生乳と脱脂粉乳とホエイパウダーと水の使用割合を表3に示すように変えて、乳タンパク質の含有量を1.50質量%としたこと以外は、実施例9と同様にして行い、後発酵型ドリンクヨーグルトを得た。
条件と結果を表3に示す。
発酵、冷却後の容器中のヨーグルトは、良好な風味を有し、かつ、ざらつきのないなめらかな流動性のヨーグルトであった。
【0059】
[実施例11]
実施例9において、脱脂粉乳とホエイパウダーと水の使用割合を表3に示すように変えて、乳タンパク質の含有量を2.50質量%としたこと以外は、実施例9と同様にして行い、後発酵型ドリンクヨーグルトを得た。
条件と結果を表3に示す。
発酵、冷却後の容器中のヨーグルトは、良好な風味を有し、かつ、ざらつきのないなめらかな流動性のヨーグルトであった。
【0060】
[比較例5]
実施例9において、生乳と脱脂粉乳とホエイパウダーと水の使用割合を表3に示すように変えて、乳タンパク質の含有量を1.30質量%としたこと以外は、実施例9と同様にして行い、後発酵型ドリンクヨーグルトを得た。
条件と結果を表3に示す。
発酵、冷却後の容器中のヨーグルトは、カードはなめらかであったが、乳タンパク質量が少ない為、風味が良くなかった。
【0061】
[比較例6]
実施例9において、脱脂粉乳とホエイパウダーと水の使用割合を表3に示すように変えて、乳タンパク質の含有量を2.70質量%としたこと以外は、実施例9と同様にして行い、後発酵型ドリンクヨーグルトを得た。
条件と結果を表3に示す。
発酵、冷却後の容器中のヨーグルトは、風味は良好でかつ、ざらつきはなかったが、カゼインによる強固なカードが形成されており、流動性が悪かった。
【0062】
以上の結果より、実施例1〜11に示すように、乳タンパク質の含有量が1.5質量%以上〜2.5質量%以内であり、かつ、カゼインタンパクとホエイタンパクとの質量比が65:35〜35:65である場合には、風味および流動性の良好な後発酵型ドリンクヨーグルトとなることが分かる。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
[実施例12]
実施例6において、さらに7倍濃縮のりんご果汁と重曹を加え、水の使用割合を変えて表4に示す原料組成のものとしたこと以外は、実施例6と同様にして行い、後発酵型ドリンクヨーグルトを得た。
なお、7倍濃縮のりんご果汁は、8.57質量%加え、還元果汁換算60質量%とした。また、果汁中和の為に、重曹0.10質量%を加えた。
条件と結果を表4に示す。
発酵、冷却後の容器中のヨーグルトは、良好な風味を有し、かつ、ざらつきのないなめらかな流動性のヨーグルトであった。
【0067】
[実施例13]
実施例6において、さらに7倍濃縮のりんご果汁と重曹を加え、水の使用割合を変えて表4に示す原料組成のものとしたこと以外は、実施例6と同様にして行い、後発酵型ドリンクヨーグルトを得た。
なお、7倍濃縮のりんご果汁は、14.29質量%加え、還元果汁換算100質量%とした。また、果汁中和の為に、重曹0.17質量%を加えた。
条件と結果を表4に示す。
発酵、冷却後の容器中のヨーグルトは、りんご風味に富み、ざらつきのないなめらかな流動性のヨーグルトであった。
【0068】
[実施例14]
実施例6において、さらに2.23倍濃縮のマンゴーピューレと重曹を加え、水の使用割合を変えて表4に示す原料組成のものとしたこと以外は、実施例6と同様にして行い、後発酵型ドリンクヨーグルトを得た。
なお、2.23倍濃縮のマンゴーピューレは、26.90質量%加え、還元果汁換算60質量%とした。また、果汁中和の為に、重曹0.10質量%を加えた。
条件と結果を表4に示す。
発酵、冷却後の容器中のヨーグルトは、マンゴーの風味に富み、ざらつきのないなめらかな流動性のヨーグルトであった。
【0069】
以上の結果より、実施例12、13、14に示すように、後発酵ヨーグルトに、果汁やピューレを添加し、スムージーテイストの後発酵型ドリンクヨーグルトをつくることも可能であることを確認した。
【0070】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、前発酵型製法のような発酵後のカード粉砕の為のアセプティックホモゲナイザー等の設備が不要な、後発酵型ドリンクヨーグルトでありながら、加熱殺菌の際に凝集やゲル化が発生する恐れを回避するためのホエイタンパク質の物理的又は化学的処理を不要とした、風味および流動性に優れた後発酵型ドリンクヨーグルトと、その製造方法とを提供される。
従って、本発明は、乳製品を製造する分野において有効に用いることができるものと期待される。