(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1または2に記載の黒ずみ抑制用添加剤及び結合材を含む水硬性組成物であって、上記結合材100質量部に対する上記黒ずみ抑制用添加剤の配合量が0.0005〜0.05質量部である水硬性組成物。
請求項1または2に記載の黒ずみ抑制用添加剤を用いた水硬性組成物の黒ずみ抑制方法であって、上記水硬性組成物の材料として、少なくとも、未燃炭素を含む結合材、及び、上記黒ずみ抑制用添加剤を用い、上記黒ずみ抑制用添加剤と上記結合材を混合することによって、上記結合材に含まれている未燃炭素の、上記水硬性組成物の硬化体の表面への浮き出しを抑制する、水硬性組成物の黒ずみ抑制方法。
【背景技術】
【0002】
フライアッシュは、石炭火力発電所等における微粉炭燃焼ボイラから発生する燃焼ガス中の灰を電気集塵器等で採取したものである。
モルタルまたはコンクリート(以下、「コンクリート等」ともいう。)に混和材として用いるフライアッシュは、「JIS A 6201(コンクリート用フライアッシュ)」において、I種からIV種まで規定されている。また、JISでは、フライアッシュをセメントの内割りの置換材料として使用すること、すなわち、セメントの一部をフライアッシュで置換したセメント(フライアッシュ混合セメント)の使用を想定している。
【0003】
フライアッシュ混合セメントは、水酸化カルシウムとフライアッシュが反応するポゾラン反応により、安定な化合物が生成して緻密な組織を形成するため、水密性や化学抵抗性に優れ、かつ、長期にわたり強度が増進するものである。また、ポゾラン反応による発熱量は、ポルトランドセメントの水和発熱量に比べて小さいため、フライアッシュ混合セメントの水和熱はポルトランドセメントよりも小さいものである。また、フライアッシュはそれ自体が球状の微粒子であることから、ボールベアリング作用によりコンクリート等の流動性が改善し、単位水量を減少させることができるため、フライアッシュ混合セメントを含む水硬性組成物を硬化させてなる硬化体の乾燥収縮を小さくすることができる。
さらに、フライアッシュ混合セメントは、クリンカの配合量を大幅に減らすことができるため、セメント産業におけるCO
2排出量および原料である石灰石や化石燃料などの天然資源の使用量を低減することができることや、石炭火力発電所等における副産物であるフライアッシュを活用することができること等の、多くの環境負荷低減効果を有している。
【0004】
このように、フライアッシュ混合セメントは多くの長所を有する。しかし、一般社団法人セメント協会のホームページによると、2014年度のフライアッシュセメントの生産量は74千t/年であり、セメントの総生産量56700千t/年の0.13%に過ぎない。このようにフライアッシュ混合セメントが普及していない理由の1つに、フライアッシュに多く含まれる未燃炭素が挙げられる。
【0005】
未燃炭素を多く含むフライアッシュをコンクリート等の材料として使用した場合、かかる未燃炭素は、コンクリート等に含まれる有機系混和剤を多量に吸着する。このため、有機系混和剤の品質改善効果が低下し、コンクリート等に必要な品質を確保するための有機系混和剤の使用量が増え、コンクリート等の製造コストが増加する。
さらに、AE剤やポリカルボン酸系セメント分散剤等を吸着した、コンクリート等の中の未燃炭素が、コンクリート等の表面に浮き出して、該表面に黒い斑状の色ムラを生じさせ、あるいは該表面全体を黒ずませて、コンクリート等の水硬性組成物の硬化体表面の美観が損なわれるという問題がある。
また、石炭火力発電所等の排煙脱硫プロセスで副産され、セメントの材料として使用される排煙脱硫石こうも、未燃炭素を多く含むことから、同様の問題を有している。
【0006】
上述したフライアッシュ等に含まれる未燃炭素による、コンクリート等の水硬性組成物の硬化体表面の美観損失という問題に対して、該表面の再処理や、該表面を各種仕上げ材で処理すること等が行われている。しかし、これらの作業は非常に煩雑である。
【0007】
このため、コンクリート等の水硬性組成物の硬化体表面の美観の損失を抑制するための各種技術が提案されている。
例えば、特許文献1では、目立った黒斑や黒縞が表面に生じることが無く、美観を損なうことのない硬化体と成すことができる水硬性組成物として、疎水性黒色系粒子、セメント、分散剤並びに消泡剤を含有してなる水硬性組成物が記載されている。
また、コンクリート等の水硬性組成物の硬化体表面の美観の損失を抑制できる添加剤として、特許文献2では、炭素数6〜14のオレフィン由来の構成単位とマレイン酸由来の構成単位とを有する、重量平均分子量が1,000〜20,000のオレフィン−マレイン酸共重合体と該共重合体以外のポリカルボン酸系重合体とを含有するコンクリート混和剤が記載されている。
また、特許文献3では、特定の一般式で表される基を有するリン酸エステル又はその塩の1種以上からなる、水硬性組成物硬化体の黒ずみ防止用添加剤が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、コンクリート等の水硬性組成物の調製時における当該組成物の硬化体表面の黒ずみの発生を抑制することのできる黒ずみ抑制用添加剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の式で表されるポリオキシアルキレン誘導体を含む黒ずみ抑制用添加剤によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[4]を提供するものである。
[1] 下記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン誘導体を含むことを特徴とする黒ずみ抑制用添加剤。
RO−[(PO)
a/(EO)
b]−H (1)
(式(1)中、Rは炭素数10〜24のアルキル基、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を表す。[(PO)
a/(EO)
b]は、EOの単独付加またはPOとEOのブロック状またはランダム状の付加を表す。a及びbは平均付加モル数を表し、aとbの合計は1〜55である。POとEOのモル比(PO:EO)は、0:100〜70:30である。)
[2] グリフィン法によるHLBが5.0〜18.5である前記[1]に記載の黒ずみ抑制用添加剤。
[3] 前記[1]または[2]に記載の黒ずみ抑制用添加剤及び結合材を含む水硬性組成物であって、上記結合材100質量部に対する上記黒ずみ抑制用添加剤の配合量が0.0005〜0.05質量部である水硬性組成物。
[4] 前記[1]または[2]に記載の黒ずみ抑制用添加剤を用いた水硬性組成物の黒ずみ抑制方法であって、上記水硬性組成物の材料として、少なくとも、未燃炭素を含む結合材、及び、上記黒ずみ抑制用添加剤を用い、上記黒ずみ抑制用添加剤と上記結合材を混合することによって、上記結合材に含まれている未燃炭素の、上記水硬性組成物の硬化体の表面への浮き出しを抑制する、水硬性組成物の黒ずみ抑制方法。
【0011】
本発明の黒ずみ抑制用添加剤によれば、フライアッシュ等の未燃炭素を含む材料を含むコンクリート等の水硬性組成物において、当該組成物の硬化体表面に未燃炭素が浮き出して、黒ずみを発生させることを抑制することができ、美観の低下を防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の黒ずみ抑制用添加剤は、下記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン誘導体を含むものである。
RO−[(PO)
a/(EO)
b]−H (1)
(式(1)中、Rは炭素数10〜24のアルキル基、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を表す。[(PO)
a/(EO)
b]は、EOの単独付加またはPOとEOのブロック状またはランダム状の付加を表す。a及びbは平均付加モル数を表し、aとbの合計は1〜55である。POとEOのモル比(PO:EO)は、0:100〜70:30である。)
【0014】
上記式(1)におけるRは、炭素数10〜24のアルキル基であり、具体的には、テトラデシル基、ヘキサデシル基、イソセチル基、オクタデシル基、イソステアリル基、ベヘニル基等が挙げられる。これらのアルキル基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。
Rの炭素数は10〜24、好ましくは12〜22である。炭素数が9以下の場合、黒ずみ抑制効果が小さくなる。炭素数が25以上の場合、黒ずみ抑制用添加剤の製造が困難になる。
また、本発明の黒ずみ抑制用添加剤は、上記式(1)においてRで表されるアルキル基の種類が異なる複数種のポリオキシアルキレン誘導体を含んでいてもよい。
【0015】
上記式(1)において、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基である。
[(PO)
a/(EO)
b]は、EOの単独付加(aが0の場合)またはPOとEOのブロック状またはランダム状の付加(aが0ではない場合)を意味する。ブロック状の付加の場合、POとEOのブロックの順序は、特に限定されるものではない。
上記式(1)において、aはオキシプロピレン基の平均付加モル数であり、bはオキシエチレン基の平均付加モル数である。
aとbの合計は1〜55、好ましくは2〜54である。該量が1未満であると、黒ずみ抑制効果を得ることが困難となる。該量が55を超えると、黒ずみ抑制効果が低下するため、十分な効果を得るために必要な黒ずみ抑制用添加剤の量が多くなる。
【0016】
POとEOのモル比(PO:EO)は、0:100〜70:30、好ましくは0:100〜60:40である。POとEOのモル比が、(70を超える値):(30未満の値)である場合、黒ずみ抑制効果が顕著に低下する。
【0017】
本発明の黒ずみ抑制用添加剤のグリフィン法によるHLB(Hydrophile−Lipophile Balance)は、好ましくは5.0〜18.5、より好ましくは5.5〜18.0、特に好ましくは6.0〜17.5である。HLBが上記数値範囲内であれば、黒ずみ抑制効果の顕著な低下を防ぐことができる。
ここで、HLBとは、グリフィン法で定義された下記式(2)で表される、親水基の割合の指標をいう。
HLB=(親水基の分子量)/(親水基の分子量+疎水基の分子量)×100÷5 (2)
HLBは、非イオン性界面活性剤の基本物性を表す指標のひとつであり、0〜20までの値を取る。該値が0に近いほど親油性が高く、20に近いほど親水性が高いことを意味する。
なお、上記式(1)における、POとEOのモル比を制御することによって、上記式(2)で表されるHLBを制御することができる。具体的には、POとEOのモル比(PO:EO)において、POの数値が大きくなるほど、HLBは小さくなる。
【0018】
また、本発明の黒ずみ抑制用添加剤に含まれるポリオキシアルキレン誘導体は、公知の方法により得ることができる。具体的には、炭素数10〜24のアルキル基を有するアルコール化合物に、プロピレンオキシドとエチレンオキシド、または、エチレンオキシドを付加重合することにより製造することができる。
【0019】
本発明の黒ずみ抑制用添加剤は、結合材と混合して用いられる。
黒ずみ抑制用添加剤の配合量は、結合材100質量部に対して、好ましくは0.0005〜0.05質量部、より好ましくは0.00075〜0.025質量部、特に好ましくは0.001〜0.01質量部である。該量が0.0005質量部以上であれば、黒ずみ抑制効果をより安定的に発現させることができる。該量が0.05質量部以下であれば、コンクリート等の水硬性組成物の製造コストを低減することができる。
【0020】
本発明の黒ずみ抑制用添加剤は、未燃炭素を含む結合材を使用したコンクリート等の水硬性組成物に用いられるものである。未燃炭素を含む結合材としては、例えば、フライアッシュ又は排煙脱硫石こうを含む各種セメント等が挙げられる。
フライアッシュは、コンクリート混和材料またはセメント混合材として使用されるフライアッシュであれば特に限定されるものではなく、例えば、「JIS A 6201(コンクリート用フライアッシュ)」に規定されているI種〜IV種に相当するフライアッシュが挙げられる。
【0021】
また、結合材として、フライアッシュと組み合わされるセメント(フライアッシュと共に用いるセメント)としては、例えば、「JIS R 5210(ポルトランドセメント)」に規定されている、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、及び、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントや、「JIS R 5214(エコセメント)」に規定されているエコセメントや、「JIS R 5211(高炉セメント)」に規定されている高炉セメントや、「JIS R 5212(シリカセメント)」に規定されているシリカセメント等の、フライアッシュセメント以外の各種混合セメントが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
さらに、結合材としては、フライアッシュとセメントをプレミックスしたセメントであってもよく、例えば、「JIS R 5213(フライアッシュセメント)」に規定されているA種〜C種のフライアッシュセメントや、マスコンクリート等に使用される、フライアッシュの混合率が30質量%を超える中庸熱フライアッシュセメント等が挙げられる。なお、フライアッシュとセメントをプレミックスしたセメントには、「JIS R 5210(ポルトランドセメント)」に規定されている少量混合成分としてI種またはII種のフライアッシュを、混合後のセメントの全量中の割合として、5質量%以下の含有率で混合してなる普通ポルトランドセメントが含まれる。
【0022】
コンクリート等中のフライアッシュの使用量(配合量)は、コンクリート等に必要な品質を確保できる範囲であれば、特に限定されるものではない。
フライアッシュ中の未燃炭素量と「JIS A 6201(コンクリート用フライアッシュ)」に規定されている強熱減量には、正の相関関係があるが、両者は一対一に対応せず、強熱減量は、未燃炭素量よりも常に大きな値となる。
なお、フライアッシュ中の未燃炭素量は、例えば、「JIS M 8819(石炭類及びコークス類−機器分析装置による元素分析方法)」、または、「JIS R 1603(ファインセラミックス用窒化けい素微粉末の化学分析方法)」に準拠した方法によって測定することができる。
【0023】
また、本発明で用いられる結合材は、石こうを含んでいてもよい。石こうは、凝結を調整する目的で、セメント系水硬性材料に混合される石こうであれば特に限定されるものではなく、例えば、排煙脱硫石こう等の化学石こうや、「JIS R 9151(セメント用天然せっこう)」に規定されている天然石こう等が挙げられる。
中でも、石炭火力発電所等における排ガス処理で副産される排煙脱硫石こうは、排ガス中のばいじんに含まれる未燃炭素を含む場合があるため、排煙脱硫石こうを含む結合材を使用したコンクリート等の水硬性組成物は、本発明の適用対象となる。
【0024】
本発明の黒ずみ抑制用添加剤と、コンクリート等の水硬性組成物の他の材料を混合することによって、黒ずみ抑制用添加剤が、水硬性組成物の硬化体の表面に未燃炭素が浮き出ることを抑制して、水硬性組成物の硬化体表面の黒ずみの発生を抑制することができる。
黒ずみ抑制用添加剤と、水硬性組成物の他の材料の混合方法は、特に限定されるものではなく、例えば、減水剤等の一般的なコンクリート混和剤と同様に、水硬性組成物の製造時に、混練水と共に黒ずみ抑制用添加剤を、水硬性組成物の他の材料に添加すればよい。混合(混練)に用いる水は、「JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)」の付属書C「レディーミクストコンクリートの練混ぜに用いる水」に規定されている水であれば特に限定されるものではなく、例えば、上水道水,上水道水以外の水、及び回収水等の各種の水が挙げられる。
【0025】
また、水硬性組成物は、上述した黒ずみ抑制用添加剤及び結合材の他に、必要に応じて、骨材、各種混和剤等を含んでいてもよい。
骨材は、「JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)」の付属書A「レディーミクストコンクリート用骨材」に規定されている骨材であれば特に限定されるものではなく、例えば、砕石、砕砂、スラグ骨材、人工軽量骨材、再生骨材、砂利、及び砂等の各種骨材が挙げられる。
【0026】
混和剤は、コンクリートやモルタルの製造に用いられる一般的な混和剤であれば特に限定されるものではなく、例えば、「JIS A 6204(コンクリート用化学混和剤)」に規定されている、AE剤、高性能減水剤、硬化促進剤、減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤及び流動化剤等の各種化学混和剤や、遅延剤、起泡剤、保水剤、増粘剤、防水剤、撥水剤、分離抵抗抑制剤、消泡剤、及び収縮低減剤等が挙げられる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
5リットルの加圧反応器に、ステアリルアルコール271g(1.0モル)と、触媒として水酸化カリウム2.7gを量り取り、系内の空気を窒素ガスで置換した後、100〜120℃の条件下で、プロピレンオキシド116g(2.0モル)およびエチレンオキシド968g(22.0モル)を、約0.05〜0.5MPa(ゲージ圧)で徐々に圧入して付加反応を行い、上記式(1)で表されるポリオキシアルキレン誘導体である黒ずみ抑制用添加剤を得た。得られたポリオキシアルキレン誘導体の詳細を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
得られた黒ずみ抑制用添加剤と、以下に示す材料を用いて、モルタルを作製して、評価試験を行った。
(1)フライアッシュ;「JIS A 6201(コンクリート用フライアッシュ)」に規定されるII種に相当するもの(詳細は表2参照)
(2)セメント;太平洋セメント社製の普通ポルトランドセメント(化学組成の詳細は表3参照)、ブレーン比表面積:3,290cm
2/g、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」に準拠して測定した材齢3日、7日、28日におけるモルタル圧縮強さ:30.0N/mm
2(3日)、45.7N/mm
2(7日)、63.7N/mm
2(28日)
(3)細骨材;一般社団法人セメント協会のセメント強さ試験用標準砂
(4)AE減水剤;BASFジャパン社製、商品名「マスターポゾリスNo.70」
(5)消泡剤;日華化学社製、商品名「フォームレックス747」
(6)水;千葉県佐倉市の上水道水
なお、表2のフライアッシュの未燃炭素量は、炭素硫黄同時分析装置(堀場製作所社製、商品名「EMIA−810W」)を用いて測定した。
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
[黒ずみ抑制効果の評価]
「JIS R 5201(セメントの物理試験方法):10.4.3 練混ぜ方法」と同様の手順で、黒ずみ抑制用添加剤と上記材料を、表4に示す配合で混練し、モルタルを得た。次いで、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法):10.1(2)」のモルタル供試体成形用型に、モルタルを、型の内部の9割程度まで投入した後、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法):10.1(3)」の型詰め機(テーブルバイブレーター)を用いて、120秒間振動を加えた。振動を加えた後のモルタルを、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法):10.3」に規定する湿気箱内に、3日間保管した。
なお、表4に示す配合は、消泡剤を用いることにより、フライアッシュの未燃炭素の浮き出しが生じやすいものである。
【0033】
【表4】
【0034】
3日後に、モルタル硬化体の上面の黒ずみを目視で、「○」、「△」、「×」の3段階で評価した。結果を表1に示す。
表1中、「○」は、モルタル硬化体の表面に黒色物の析出がほとんどなく、表面の美観が良好であることを示す。「△」は、モルタル硬化体の表面の一部に黒色物の析出があり、表面の美観がやや悪いことを示す。「×」は、モルタル硬化体の表面全体に黒色物の析出があり、表面の美観が悪いことを示す。
【0035】
[実施例2〜10および比較例1〜3]
表1に示す、原料を用いる以外は実施例1と同様にして、ポリオキシアルキレン誘導体(黒ずみ抑制用添加剤)を得た。得られたポリオキシアルキレン誘導体の詳細を表1に示す。
得られた黒ずみ抑制用添加剤を用いて、実施例1と同様にして黒ずみ抑制効果の評価を行った。結果を表1に示す。
また、黒ずみ抑制用添加剤を使用して調製された、結合材としてフライアッシュを含む実施例5のモルタル硬化体(a)、黒ずみ抑制用添加剤を使用しない以外は実施例5と同様にして調製された、結合材としてフライアッシュを含むモルタル硬化体(b)、黒ずみ抑制用添加剤を使用せず、かつ、結合材としてフライアッシュを含まない以外は実施例5と同様にして調製されたモルタル硬化体(c)、の各々の表面の写真を
図1に示す。
【0036】
[モルタル圧縮強さの評価]
実施例2または実施例5で得られた黒ずみ抑制用添加剤を添加してなるモルタル硬化体を作製して、モルタル圧縮強さの評価を行った。
モルタル硬化体は、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法):10.4.3 練混ぜ方法」と同様の手順で、黒ずみ抑制用添加剤と上記材料を、表4に示す配合で混練した後、得られたモルタルを直径50mm、高さ100mmの円柱の型枠内に流し込み、20℃で24時間湿空養生を行った後、脱型して、所定の期間水中養生を行うことで作製した。
また、参考例として、黒ずみ抑制用添加剤を添加しないモルタル硬化体を作製した。
得られたモルタル硬化体の材齢7日および28日におけるモルタル圧縮強さを測定した。結果を表5に示す。
【0037】
【表5】
【0038】
表1から、本発明の黒ずみ抑制用添加剤によれば、モルタル硬化体の黒ずみを抑制しうることがわかる。また、表5から、本発明の黒ずみ抑制用添加剤を用いた場合、モルタル硬化体のモルタル圧縮強さは、本発明の黒ずみ抑制用添加剤を含まないモルタル硬化体と同程度であることがわかる。