(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
[本実施形態の構成]
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜4において、本実施形態に係る荷揚装置1は、建築物の下階から上階へボード状荷物であるサッシ2を荷揚げするものであり、支持体3と、荷台4とを備えている。本実施形態では、サッシ2は、四周枠組みし、かつ枠内に面材を保持して構成されている。
図1(A)は荷揚装置1の縮み状態を示す正面図であり、
図1(B)は荷揚装置1の縮み状態を示す側面図である。
図2(A)は荷揚装置1の伸び状態を示す正面図であり、
図2(B)は荷揚装置1の伸び状態を示す側面図である。
図3(A)は支持体3を示す正面図であり、
図3(B)は支持体3を示す平面図である。
図4(A)は荷台4を示す正面図であり、
図4(B)は荷台4を示す側面図であり、
図4(C)は荷台4を示す背面図であり、
図4(D)は荷台4を運搬のために傾けた状態を示す説明図である。
【0016】
支持体3は、支持基体30と、支持基体30に下端部が固定された一つの支軸31と、支持基体30から支軸31の軸方向に直交する方向であって四方にそれぞれ伸びたキャスター脚32および固定支持脚35とを備えている。支持基体30には、後述する規制ベルト5が掛けられるベルト掛け部301が設けられている。
【0017】
支軸31は、複数の円筒状の筒体311を入れ子式で伸縮自在にしたテレスコピック機構を備えている。
支軸31は、その内部に圧縮ガスが供給されることによって当該内部のガス圧が高まることで
図2に示すように上下方向に伸びる一方、当該内部から圧縮ガスが排出されることによって当該内部のガス圧が低くなることで
図1に示すように上下方向に縮む構成とされている。
【0018】
キャスター脚32は、
図3に示すように、キャスター脚本体33と、キャスター脚本体33に装着されたキャスター34(車輪)とを備えている。キャスター脚本体33は、支持基体30から軸方向に直交する方向に延びており、先端部にキャスター34が取り付けられている。
【0019】
固定支持脚35は、固定支持脚本体36と、固定支持脚本体36に装着されたアジャスター37と、アジャスター37に高さ位置調整可能に取り付けられた接地プレート38とを備えている。
固定支持脚本体36は、支軸31の軸方向に直交する方向に沿った状態から
図3(A)に示す支軸31に沿った状態へ折畳み可能に支持基体30に軸支されている。
アジャスター37は、固定支持脚本体36の先端部に螺合したねじ軸によって構成されており、この先端に接地プレート38が取り付けられている。
固定支持脚35の長さ寸法は、キャスター脚32の長さ寸法よりも大きくされる。また、四つの固定支持脚35のうちの一対の固定支持脚35Aの各長さ寸法は、他の一対の固定支持脚35Bの各長さ寸法よりも小さくされる。
なお、固定支持脚35は、支軸31の軸方向に直交する方向に沿った状態で支持基体30にロックされ、その状態を維持する。このロックは手動操作によって解除可能である。
【0020】
荷台4は、
図4に示すように、サッシ2を受ける傾斜荷受部41と、サッシ2の下縁を受ける下荷受部51とを有している。
傾斜荷受部41は、断面矩形筒状の一対の縦フレーム42,43と、縦フレーム42,43の上部に取り付けられた上フレーム44と、縦フレーム42,43の下部に取り付けられた下フレーム45と、上フレーム44および下フレーム45間に配置されて縦フレーム42,43に固定された支軸取付体46とを備えている。縦フレーム42,43の上端には、延設用の縦フレーム47,48を差し込み可能な開口が形成されている。
下フレーム45の背面には、後述する規制ベルト5が掛けられるベルト掛け部451が取り付けられている。また、下フレーム45の背面両端側には、ローラー452がそれぞれ回転可能に取り付けられている。
【0021】
支軸取付体46の背面側には、支軸31の先端が抜出可能に差し込まれる取付筒部461が形成されている。支軸31が取付筒部461に差し込まれた状態では、傾斜荷受部41は、上下方向に沿った仮想の垂直面に対して傾斜して配置される。この傾斜角度は、5度から15度の範囲内で設定され、例えば50〜100kg程度のサッシ2を荷台4に載せる場合には10度前後であるとよい。このように角度設定することでサッシ2の転びおよび荷台4の支軸31への接触を抑制できる。
【0022】
下荷受部51は、縦フレーム42,43の下部および下フレーム45に固定された底片部511と、底片部511の側縁から立ち上げられた立上片部512とを有している。底片部511上には、クッション材として角材が固定されている。
【0023】
支持体3および荷台4は、支軸31の軸方向における所定長さ以上の伸長を規制する規制ベルト5(
図2参照)によって連結される。規制ベルト5の一端は荷台4のベルト掛け部451に掛けられ、規制ベルト5の他端は支持体3のベルト掛け部301に掛けられる。規制ベルト5は長さ調整可能に構成され、サッシ2をリフトする荷揚げ高さに対応したベルト長さに適宜調整されるが、テレスコピックが最も縮んだ時に弛み、脚部やキャスターなどに引っ掛からないように巻き取り式のものが望ましい。また、規制ベルト5としては、被服ワイヤー、布ベルトやロープなど、テレスコピックのシリンダーを傷つけないようにすることが望ましい。
【0024】
傾斜荷受部41の支軸31への取付位置Jに対する下荷受部51の高さ位置は、荷台4に載置された状態におけるサッシ2の重心位置Gが支軸31の軸心位置を通る鉛直線Vを中心とする所定範囲内に位置するように、サッシ2の想定最大縦寸法Hに対応して設定されている。ここで、支軸31の軸心位置を通る鉛直線Vを中心とする所定範囲は、想定最大縦寸法Hを有するサッシ2を荷台4に載置した状態であって支軸31を最大長まで延ばした状態で生じ得る荷台4の振れがサッシ2に転びを生じさせない程度となる範囲で設定される。なお、サッシ2の重心位置Gが支軸の軸心位置を通る鉛直線V上に位置することが荷台4の振れが最も小さくなって理想的である。
【0025】
[本実施形態の使用]
以下、本実施形態に係る荷揚装置1の使用に関して説明する。
荷揚装置1を自動車等で運搬している場合、支持体3と荷台4とは分離された状態とされ、固定支持脚35は折り畳まれた状態とされて積載スペースの自由度が向上されている。支軸31は縮んだ状態である。
【0026】
荷揚装置1の使用現場では、荷台4の取付筒部461に支軸31の先端を差し込み、延設用の縦フレーム47,48を縦フレーム42,43の上端の開口に差し込むことで荷揚装置1を組み立てる。この荷揚装置1はキャスター脚32を備えているので、建築物の下階の設置箇所まで簡単に移動させられる。このとき、固定支持脚35は折り畳まれた状態としておけば、建築物の狭い通路などでも荷揚装置1を簡単に搬入できる。
なお、荷台4単体を移動する場合、
図4(D)に示すように、荷台4を地面に対して傾けてローラー452を地面に当接し、走行させることできる。
【0027】
設置箇所では、固定支持脚35を展開して支軸31の軸方向に直交する方向に沿って延びた状態とし、アジャスター37によって接地プレート38の高さ位置を調整し、地面に接地させることで荷揚装置1を建築物の下階の設置箇所に固定する。なお、規制ベルト5は、ベルト掛け部301,451に掛けて適宜長さ調整する。
【0028】
次に、荷台4にサッシ2を載せる。このとき、サッシ2の荷台4に対する左右位置は適宜調整される。サッシ2全体は傾斜荷受部41に寄りかかった状態とされ、サッシ2の下縁は下荷受部51の底片部511上の角材に載せられる。ここでは、想定最大縦寸法Hを有するサッシ2が荷台4に載せられ、サッシ2の重心位置Gが支軸31の軸心位置を通る鉛直線V上に位置することとする。
【0029】
次に、支軸31の内部に圧縮ガスを供給して支軸31を伸ばし、荷台4を
図2に示すように所定高さ位置まで上昇させる。所定高さ位置では規制ベルト5が張った状態となって荷台4の更なる上昇を規制する。
続いて、サッシ2を荷台4から降ろして建築物の上階に搬入する。搬入後、支軸31の内部の圧縮ガスを排出し、荷台4の自重によって支軸31を縮める。
このように荷揚装置1を使用し、サッシ2を建築物の下階から上階へ荷揚げする。
【0030】
なお、
図5(A)に示すように、想定最大縦寸法Hよりも小さい縦寸法H1を有するサッシ2Aを荷台4に載せた場合、サッシ2Aの重心位置Gは支軸31の軸心位置を通る鉛直線Vから外れて位置するが、前述したように縦寸法H1が小さい分だけサッシ2Aの重量も軽いので、荷台4に大きな振れは生じず安定して荷揚げできる。
【0031】
また、荷揚装置1の設置スペースが柱や壁近くで狭い場合であっても、
図5(B)に示すように、柱や壁側に位置する固定支持脚35を折り畳み、その接地プレート38を柱や壁に当接させることで、荷揚装置1を設置することができる。
【0032】
[本実施形態の効果]
(1)前記実施形態では、荷揚装置1は、上下方向に伸縮可能な支軸31を備える支持体3と、支軸31に支持される荷台4とを備え、荷台4は、傾斜荷受部41と、下荷受部51とを有し、傾斜荷受部41は、上下方向に沿った垂直面に対して傾斜して支軸31の上端に取り付けられていることを特徴とする。
上記構成を有するため、傾斜荷受部41を上下方向に沿った仮想面に対して傾斜して支軸31の上端に取り付けることで、荷台4に載せたサッシ2を安定して荷揚できる。そのうえ、梯子を備える荷揚装置と比べて軽量化できて、運搬や設置を容易に行うことができる。
さらに、本実施形態では、以下の各効果を発揮できる。
(2)前記実施形態では、一対の縦フレーム42,43の上端には、延設用の縦フレーム47,48を差し込み可能な開口が形成される。
このため、一対の縦フレーム42,43の上端の開口に延設用の縦フレーム47,48を差し込むことで、荷台4自体の縦寸法を大きくでき、より大きな縦寸法を有するサッシ2を荷台4に載置できる。
(3)前記実施形態では、傾斜荷受部41は、支軸31の上端に着脱可能に取り付けられる。このため、運搬や保管時に荷台4を支軸31から取り外しておけるので、運搬・保管スペースの自由度を向上できる。また、荷台4を支軸31から取り外した状態では、支持体3は、梯子を有する荷揚装置の当該梯子よりも小型であるので、狭いスペースでも支持体3を容易に運搬、保管できる。
(4)前記実施形態では、支持体3は、支軸31の下端部が固定された支持基体30と、支持基体30から支軸31の軸方向に直交する方向に延びて形成された複数のキャスター脚32および固定支持脚35とを備え、複数の固定支持脚35の長さ寸法は、複数のキャスター脚32の長さ寸法よりも大きくされ、複数の固定支持脚35は、支持基体30に折畳み可能に連結される。
このため、複数の固定支持脚35を折畳んだ状態では、支軸31の周囲には固定支持脚35よりも長さ寸法が小さいキャスター脚32が展開して配置されるだけであるので、荷揚装置1の設置位置までの運搬や保管に必要なスペースを小さくでき、かつキャスター脚32のキャスター34を利用して容易に移動できる。
また、複数の固定支持脚35を支軸31の軸方向に直交する方向に沿って展開した状態では、固定支持脚35をキャスター脚32よりも広範囲に展開できる。このため、キャスター脚32のみによって支軸31を支持する場合と比べ、複数の固定支持脚35によって支軸31を安定して固定支持できる。
(5)前記実施形態では、支軸31は、複数の筒体311を入れ子式で伸縮自在にしたテレスコピック機構を備え、支軸31は、その内部に供給される圧縮ガスのガス圧変化によって伸縮可能に構成され、支持体3および荷台4は、支軸31の軸方向における荷揚げ高さを超える伸長を規制する規制ベルト5によって連結される。
このため、サッシ2を荷台4から降ろした際に、支軸31がガス圧によってさらに伸長しようとするが、この伸長を規制ベルト5によって規制できる。
(6)前記実施形態では、傾斜荷受部41の仮想の垂直面に対する傾斜角度は5度から15度の範囲内で設定される。このため、前述した傾斜角度を5度以上とすることで、サッシ2を荷台4に寄り掛からせて載せることができ、サッシ2の重みで荷台4が支軸31に干渉することを低減できる。また、傾斜角度を15度以下とすることで、サッシ2が転ぶことを減らすことができ、各種縦寸法を有するサッシ2の重心位置Gが支軸31の軸心位置を通る鉛直線V上から過度に離れることを抑制でき、荷台4の振れを抑えることができる。
(7)前記実施形態では、支持体3は複数のキャスター脚32や固定支持脚35を備えるので、荷揚装置1を柱などに立て掛けることなく自立した状態で設置できる。
【0033】
[変形例]
本発明は、以上の実施形態で説明した構成のものに限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形例は、本発明に含まれる。
例えば、支軸31に取り付けられる支軸取付体46が縦フレーム42,43に固定された荷台4を備えているが、これに限られず、例えば
図6に示すように、傾斜荷受部41は、一対の縦フレーム42,43に沿ってスライド可能に当該一対の縦フレーム42,43に取り付けられるスライダとしての支軸取付体46Aを備える荷台4Aを備えていてもよい。
図6(A)は、支軸取付体46Aが縦フレーム42,43の下部に配置された状態の荷台4Aを示す正面図であり、
図6(B)は、支軸取付体46Aが縦フレーム42,43の中間部に配置された状態の荷台4Aを示す正面図であり、
図6(C)は、支軸取付体46Aが縦フレーム42,43の上部に配置された状態の荷台4Aを示す正面図であり、
図6(D)は、
図6(C)に示す状態の荷台4Aを示す側面図である。
【0034】
荷台4Aの一対の縦フレーム42,43は、傾斜荷受部41が垂直面に対して傾斜した傾斜方向に沿って配置されるとともに下部に下荷受部51が固定されている。
支軸取付体46Aは、矩形板状の板状本体460と、板状本体460の背面に固定されているとともに支軸31が差し込まれて取り付けられる取付筒部461と、板状本体460の左右両縁に形成されたガイド部462,463とを有している。ガイド部462,463は、断面矩形筒状に形成されており、その内部に縦フレーム42,43がそれぞれ摺動可能に挿通されている。
【0035】
縦フレーム42,43には、支軸取付体46Aの位置決めピン挿通用の孔が上下方向に沿って三箇所形成されており、支軸取付体46のガイド部462,463には、位置決めピン挿通用の孔が上下方向に沿って二箇所に形成されている。これら各孔に位置決めピンが挿通されることで、荷台4の支軸31に対する取付位置Jを
図6(A)に示す下方位置、
図6(B)に示す中間位置、および
図6(C)に示す上方位置のいずれかに調整可能である。これにより、下荷受部51の取付位置Jに対する高さ位置を三段階に調整可能である。
【0036】
このように荷揚装置1が
図6に示す荷台4Aを備える場合には、支軸取付体46Aは支軸31に取り付けられるので、一対の縦フレーム42,43は、支軸取付体46Aに対する相対移動によって傾斜荷受部41が垂直面に対して傾斜した傾斜方向に沿ってスライド移動する。これにより、一対の縦フレーム42,43の下部に取り付けられた下荷受部51も傾斜方向にスライド移動するので、当該下荷受部51の高さ位置を支軸取付体46Aの支軸31への取付位置Jに対して調整できる。従って、荷台4Aに載置されるサッシ2の重心位置Gを傾斜荷受部41の支軸31への取付位置Jに対して調整できる。
【0037】
前記実施形態では、縦フレーム42,43の上端に延設用の縦フレーム47,48を差し込み可能に開口が形成されているが、これに限られず、縦フレーム47,48を延設する必要がない場合、前記開口はエンドキャップなどで塞がれていてもよい。
【0038】
前記実施形態では、傾斜荷受部41は支軸31の上端に着脱可能に取り付けられているが、これに限られず、溶接等によって取外しできないように固着されてもよい。
【0039】
前記実施形態では、支持体3は、複数のキャスター脚32および固定支持脚35を備えているが、これに限られず、キャスター脚32および固定支持脚35のいずれか一方だけを備えていてもよい。
また、固定支持脚35を折畳み可能に支持基体30に連結されているが、これに限られず、支持基体30に折畳み不能に固定されていてもよい。
【0040】
前記実施形態では、固定支持脚35Aの長さ寸法が固定支持脚35Bの長さ寸法よりも小さくされているが、同寸法であってもよい。
【0041】
前記実施形態では、テレスコピック機構を備える支軸31は、その内部に圧縮ガスが供給されて上下方向に伸縮可能なガス伸縮式が採用されているが、これに限られず、例えば複数の筒体311に張り渡されたワイヤーの巻き取りによって上下方向に伸ばされ、ワイヤーの繰り出しによって上下方向に縮められるワイヤー伸縮式が採用されてもよい。なお、ワイヤー伸縮式は、比較的軽いサッシ2を荷揚げする場合に適している。
【0042】
前記実施形態では、傾斜荷受部41の傾斜角度は5度から15度の範囲内で設定されるが、これに限られず、仮想の垂直面に対する傾斜角度が小さすぎて荷台4が振れて支軸31に接触することなく、かつ前記傾斜角度が大きすぎてサッシ2が転ぶことがない角度範囲内で傾斜角度が設定されていればよい。
【0043】
前記実施形態では、荷揚装置1によって荷揚げするボード状荷物としてサッシ2を説明したが、このほか、各種窓、床材、コンクリートパネル、石膏ボードなどであってもよい。