特許第6657044号(P6657044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6657044
(24)【登録日】2020年2月7日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】合成樹脂製パイプの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/80 20060101AFI20200220BHJP
   B29C 45/33 20060101ALI20200220BHJP
   B29C 45/44 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
   B29C45/80
   B29C45/33
   B29C45/44
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-160510(P2016-160510)
(22)【出願日】2016年8月18日
(65)【公開番号】特開2018-27645(P2018-27645A)
(43)【公開日】2018年2月22日
【審査請求日】2019年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108498
【氏名又は名称】タイガースポリマー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】廣井 清文
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−174441(JP,A)
【文献】 特開2010−076280(JP,A)
【文献】 特開平10−235684(JP,A)
【文献】 特開2004−270884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
B29C 33/00−33/76
F16L 13/00−15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主たる管路と、主たる管路から分岐する分岐管路を備える合成樹脂製パイプを、射出成形を利用して製造する方法であって、
射出成形金型を準備する工程を有し、
当該射出成形金型は、合成樹脂製パイプの外面形状を規定するキャビティ型と、合成樹脂製パイプの内面形状を規定するコア型を有し、
前記コア型は、主たる管路の内周面を形成する第1コア型と第2コア型、および、分岐管路の内周面を形成する第3コア型に分割されて構成されると共に、
第1コア型と第2コア型の端部同士が当接する部分に第3コア型の端部が対向するように構成され、
金型準備工程に引き続き、射出成形金型を型閉じする工程を有し、
型閉じした状態で、第1コア型と第2コア型が当接する一方で、第3コア型の端部は第1コア型および第2コア型に対し離間しており、
型閉じ工程に引き続き、金型のキャビティに合成樹脂を射出し充填する射出工程を有し、
射出工程で、合成樹脂パイプと一体に、第3コア型の端部と、第1コア型および第2コア型との間に樹脂膜を形成し、
射出工程に引き続き、第1コア型および第2コア型を、少なくとも第3コア型の端部と対向する部分が生じない位置まで後退させ、
第1コア型および第2コア型を後退させた状態で、第3コア型を所定距離だけ前進させて、前記樹脂膜を合成樹脂製パイプから切り離す工程を有し、
切り離し工程に引き続き、樹脂膜が除去された合成樹脂製パイプを金型から取り出す工程を有する、
合成樹脂製パイプの製造方法。
【請求項2】
主たる管路が屈曲形状であり、主たる管路の屈曲部から分岐管路が分岐している
請求項1に記載の合成樹脂製パイプの製造方法。
【請求項3】
主たる管路の断面が段付き管状に変化しており、段付き部分から分岐管路が分岐している
請求項1に記載の合成樹脂製パイプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製パイプの製造方法に関する。特に射出成形を利用した、分岐管路を有する合成樹脂製パイプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製パイプは、多彩な用途に使用されている。合成樹脂製パイプは、ホースやチューブのコネクタ部材などにも使用される。射出成形を利用して合成樹脂製パイプを製造すれば、製造効率が高く経済的である。特に、パイプの管路形状まで射出成形により形成すると、切削等の工程が不要となって好ましい。
【0003】
また、分岐管路を有する合成樹脂製パイプを射出成形により一体成形すると、かかる合成樹脂製パイプにより、チューブ等の配管を分岐させることができて便利である。
分岐管路を有する合成樹脂製パイプを射出成形する場合には、コア型を分岐部で分割して構成し、金型の型締め時に、コア型の先端部を互いに当接させ、コア型により分岐した管路が形成されるよう、射出成形が行われる。
【0004】
例えば、特許文献1には、Yの字状に分岐する管路を有する分岐管を射出成形する技術が開示されており、それぞれの管路に対応する3つのコア型を設けると共に、それら3つのコア型の端部が互いに当接可能なように金型が形成され、これら3つのコア型を当接させた状態で樹脂の射出を行って分岐管を製造する技術が開示されている。当該技術によれば、バリ等が発生しても、圧力損失が小さい分岐管が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−153283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示される技術は、3つのコア型の先端部を、互いに密着するように、精密に当接させるよう金型を製造する必要があり、そういった金型の製造は容易ではなかった。3つのコア型は、各コア型の軸線が1つの直線状にはならない配置をしており、それらが互いに強く押し付け合った状態で先端部を当接させる必要があるため、1つのコア型の押し付け力が他のコア型を傾かせるような力となり、コア型の合わせが狂いやすいからである。そのため、特許文献1に開示されるような技術は、コア型先端部の当接の調整が難しく、バリが発生しやすい。したがって、バリが許容されないような分岐管の用途においては、このような製造方法は採用しがたい。
【0007】
また、この様な、3つのコア型の先端部をより精密に当接させる技術としては、いわゆる「タッチ構造」や、「誘い込み構造」などが知られている。「タッチ構造」とは、図7にキャビティ型99とコア型91,92,93の構成を示すように、屈曲管状の主たる管路を構成するコア型91、92の端面同士を突合せたうえで、コア型91,92の突合せ部の角部に合致するような形状に端面形状を調整した分岐管路コア型93を当接させる金型構造である。また、「誘い込み構造」とは、図8にキャビティ型99とコア型94,95,96の構成を示すように、屈曲管状の主たる管路を構成するコア型94、95の端面同士を突合せたうえで、突き合わせ部分に分岐管路コア型96の延在方向に穴を設け、当該穴に分岐管路コア型96の端部を緊密に挿入する金型構造である。
【0008】
このようなタッチ構造や誘い込み構造の金型を採用すれば、バリの発生を少なくしながら、分岐管(9)を射出成形できる。しかしながら、こうした構造を採用してもなお、金型の構造が複雑になることや、合わせ面も複雑形状となることから、バリの発生を完全に防止するのは難しい。また、金型構造が複雑になることにより、金型部品の強度や耐久性に悪影響が出やすく、成形を繰り返すうちにバリが生じやすくなりがちである。
【0009】
また、分岐管路を有するような合成樹脂製パイプにおいては、管路の分岐部にバリが生じると、バリの除去がやりにくく、バリがあるかどうかの検査も難しいという課題がある。また、製造時に除去しきれなかったバリが、使用時に脱落して流体中に混入する可能性もある。
【0010】
本発明の目的は、分岐管路を有する合成樹脂製パイプを射出成形する際に、分岐部分におけるバリの発生および残存を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者は、鋭意検討の結果、主管路内周面を形成する第1コア型と第2コア型の当接部に対し、分岐管路内周面を形成する第3コア型の端面を当接させないように離間させた状態で、樹脂の射出を行い、第3コア型の端面と1コア型および第2コア型との間に樹脂膜を形成し、その後、第3コア型を前進させて、成形された合成樹脂製パイプから当該樹脂膜を切り離すようにすれば、分岐部分におけるバリの発生を抑制できることを知見し、本発明を完成させた。
【0012】
本発明は、主たる管路と、主たる管路から分岐する分岐管路を備える合成樹脂製パイプを、射出成形を利用して製造する方法であって、射出成形金型を準備する工程を有し、当該射出成形金型は、合成樹脂製パイプの外面形状を規定するキャビティ型と、合成樹脂製パイプの内面形状を規定するコア型を有し、前記コア型は、主たる管路の内周面を形成する第1コア型と第2コア型、および、分岐管路の内周面を形成する第3コア型に分割されて構成されると共に、第1コア型と第2コア型の端部同士が当接する部分に第3コア型の端部が対向するように構成され、金型準備工程に引き続き、射出成形金型を型閉じする工程を有し、型閉じした状態で、第1コア型と第2コア型が当接する一方で、第3コア型の端部は第1コア型および第2コア型に対し離間しており、型閉じ工程に引き続き、金型のキャビティに合成樹脂を射出し充填する射出工程を有し、射出工程で、合成樹脂パイプと一体に、第3コア型の端部と、第1コア型および第2コア型との間に樹脂膜を形成し、射出工程に引き続き、第1コア型および第2コア型を、少なくとも第3コア型の端部と対向する部分が生じない位置まで後退させ、第1コア型および第2コア型を後退させた状態で、第3コア型を所定距離だけ前進させて、前記樹脂膜を合成樹脂製パイプから切り離す工程を有し、切り離し工程に引き続き、樹脂膜が除去された合成樹脂製パイプを金型から取り出す工程を有する、合成樹脂製パイプの製造方法である(第1発明)。
【0013】
第1発明においては、主たる管路が屈曲形状であり、主たる管路の屈曲部から分岐管路が分岐していることが好ましい(第2発明)。また、第1発明においては、主たる管路の断面が段付き管状に変化しており、段付き部分から分岐管路が分岐していることが好ましい(第3発明)。
【発明の効果】
【0014】
本発明の合成樹脂製パイプの製造方法によれば、分岐管路を有する合成樹脂製パイプを射出成形する際に、分岐部分におけるバリの発生及び残存を抑制できる。
また、さらに、第2発明や第3発明のようにすれば、主管路が屈曲形状であっても、あるいは、主管路が段付き管状であっても、分岐部分におけるバリの発生及び残存を効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態の合成樹脂製パイプの形状を示す外観図である。
図2】第1実施形態の合成樹脂製パイプの形状を示す断面図である。
図3】第1実施形態の合成樹脂製パイプを成形するための射出成形金型を示す模式図である。
図4】第1実施形態の合成樹脂製パイプを成形する一連の射出成形の行程を示す模式図である。
図5】第2実施形態の合成樹脂製パイプの形状を示す断面図である。
図6】第2実施形態の合成樹脂製パイプを成形するための射出成形金型を示す模式図である。
図7】従来技術においてコア型が互いに当接する形態の例を示す模式図である。
図8】従来技術においてコア型が互いに当接する形態の他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面を参照しながら、ゴムチューブや合成樹脂製チューブのコネクタ部材として使用できる合成樹脂製パイプを例として、発明の実施形態について説明する。なお、発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態を変更して実施することもできる。
【0017】
図1及び図2には、本発明の合成樹脂製パイプ製造方法によって製造される第1実施形態の合成樹脂製パイプ1を外観及び断面図で示している。本実施形態では、合成樹脂製パイプ1は、ゴムチューブなどのコネクタ部材として利用できる。合成樹脂製パイプ1は、貫通穴(管路)を有する3本の直管状の管状部11,12,13を一体につなぎ合わせた形状をしており、いわゆる3つ股状である。すなわち、合成樹脂製パイプ1は、管状部11,12により形成される主たる管路1a,1bと、管状部13により形成される分岐管路1cを有しており、分岐管路1cは、主たる管路1a,1bがつながる部分から分岐していて、これら管路1a,1b,1cは互いに連通している。また、本実施形態の合成樹脂製パイプ1では、第1管状部11と第2管状部12、第3管状部13は、それぞれ、円筒状の外周面と円筒状の内周面を有する。
【0018】
さらに、必須ではないが、本実施形態の合成樹脂製パイプ1においては、主たる管路1a,1bが屈曲管形状である。すなわち、直管状の第1管状部11と第2管状部12とが約90度の角度で接続された屈曲管となるように、合成樹脂製パイプ1は形成されており、その内部には、主たる管路1a,1bがL字状に設けられている。
【0019】
合成樹脂製パイプ1は、各管状部11,12,13の端部にゴムチューブをかぶせるなどして、配管用のコネクタ部材として使用できる。分岐管路を有する合成樹脂製パイプ1を使用することで、流路を分岐させたチューブの配管がたやすく行える。また、合成樹脂製パイプ1の各管状部の端部を接続相手部材の接続穴に挿入して使用することもできる。合成樹脂製パイプ1は、必要に応じ、端部にチューブの抜け止めとなる環状の突起を備えていてもよい。また、合成樹脂製パイプ1に、取付用のステーやネジ穴などを備えさせてもよい。
【0020】
合成樹脂製パイプ1を構成する合成樹脂材料としては、特に限定されず、射出成形が可能な種々の合成樹脂が使用できる。好ましくは、ポリプロピレン樹脂などのオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂などの熱可塑性樹脂や、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマーなどが使用できる。本実施形態の合成樹脂製パイプ1はポリアミド樹脂により形成されている。合成樹脂製パイプ1の形成は、後述するように射出成形により行われるが、必要に応じ、切削加工や溶着等の他の成形法を併用してもよい。
【0021】
合成樹脂製パイプ1の製造方法について説明する。合成樹脂製パイプ1は合成樹脂の射出成形を利用して形成される。図3に、合成樹脂製パイプ1の成形に用いられる射出成形金型を、断面の模式図で示す。射出成形金型は、合成樹脂製パイプ1の外面形状を規定するキャビティ型Dと、合成樹脂製パイプ1の内面形状を規定するコア型C1,C2、C3を有する。本実施形態では、キャビティ型Dは、図の紙面奥行き方向に型開き可能に構成されている。また、コア型C1,C2、C3は、キャビティ型Dに取り付けられており、適宜スライド、回転などの動作が可能なように構成されている。キャビティ型Dの内周面とコア型C1,C2,C3の外周面とによって、いわゆるキャビティCが画成されて、キャビティCに樹脂が充填されて固化することにより、合成樹脂製パイプ1が形成される。
【0022】
コア型C1,C2,C3は、合成樹脂製パイプ1の管路の形状に対応する形状となるように、第1コア型C1と第2コア型C2及び第3コア型C3に分割されて構成されている。本実施形態では、これらコア型C1,C2,C3は、円柱状に設けられる。厳密な円柱である必要はなく、抜き勾配等を有していてもよい。
【0023】
第1コア型C1と第2コア型C2とは、それぞれ、主たる管路1a,1bの延在する方向に沿って進退可能に設けられており、主たる管路1aに対応して第1コア型C1が設けられ、主たる管路1bに対応して第2コア型C2が設けられるよう、分割がなされている。第1コア型C1と第2コア型C2は、金型を型閉じした際に、両コア型の先端部e1,e2同士が当接して密着し、樹脂の射出を行った際に、第1コア型C1と第2コア型C2により、主たる管路1a,1bが連続した形態で得られるよう、構成されている。
【0024】
本実施形態では、第1コア型C1と第2コア型C2の当接は、L字状の主たる管路1a,1bの折れ曲がり部で両者が当接している。第1コア型C1と第2コア型C2が当接する面ASは、第1コア型C1の中心軸mに対して傾斜した平面とされている。平面で当接させると端部同士を緊密に当接することができ、第1コア型C1と第2コア型C2の当接部にバリが発生することが効果的に抑制できる。
【0025】
第3コア型C3は、分岐管路1cの延在する方向に沿って進退可能に設けられており、第1コア型C1と第2コア型C2の端部e1,e2同士が当接する部分に、第3コア型C3の端部e3が対向するように構成されている。
【0026】
なお、型閉じした状態において、第1コア型と第2コア型の端部同士が当接する部分と、第3コア型C3の端部e3との間に、所定の隙間が生じ、両者が離間するように金型が構成される。この隙間が存在することにより、樹脂の射出を行った際に、第3コア型C3の端部e3と、第1コア型C1、第2コア型C2との間に、樹脂の膜が形成される。この膜の厚みが、好ましくは0.1mm〜1.5mm、より好ましくは0.2mm〜1mmとなるように、前記隙間が調整されることが好ましい。
【0027】
詳細な説明は省略するが、射出成形金型は、キャビティ型Dやコア型C1,C2,C3の他、一連の射出成形に必要な構成、例えば、スプルーやゲート、開閉機構、ガイドピン、スライド機構及び駆動機構、突出しピンなどを有する。特に、本実施形態の射出成形金型においては、コア型C1,C2、C3を軸方向に移動させるスライド機構を有している。これら機構は、金型の開閉動作と連動して、所定のタイミングで所定の位置に移動が行われるよう構成されることが好ましい。
【0028】
合成樹脂製パイプ1が射出成形される一連の工程を図4を用いて説明する。
まず、上述したような射出成形金型を準備する。
(型閉じ工程)
次いで、準備された金型を型閉じする。キャビティ型Dとコア型C1,C2,C3により、キャビティCが形成される(図4(a))。ここで、上述したように、型閉じした状態で、第1コア型C1と第2コア型C2が当接する一方で、第3コア型C3の端部e3は第1コア型および第2コア型に対し離間するように、型閉じがなされる。
【0029】
(射出工程)
キャビティCに対し、液状の樹脂を射出し、樹脂を固化させて、合成樹脂製パイプ1が金型内部にできる。樹脂の射出および固化は、樹脂の種類に応じ、既知の技術により行えばよい。この時、合成樹脂製パイプ1の成形と同時に、第3コア型C3の端部e3と、第1コア型C1および第2コア型C2との間に射出された樹脂が入り込んで、樹脂膜1dが、合成樹脂製パイプ1と一体に形成される(図4(b))。
【0030】
(切り離し工程)
樹脂が射出され合成樹脂製パイプ1が形成されたのちに、まず、コア型C1,C2を退避させる。退避は、第3コア型C3を他のコア型と干渉させずに進退させることが可能となるように、少なくとも第3コア型C3の端部e3と対向する部分が生じない位置まで、第1コア型C1および第2コア型C2を、後退(退避)させる(図4(c))。
【0031】
第1コア型C1および第2コア型C2を後退させた状態で、第3コア型C3を、樹脂膜1dに向かって所定距離だけ前進させる。そして、合成樹脂製パイプ1と一体に形成された樹脂膜1dを合成樹脂製パイプ1から切り離す(図4(d))。樹脂膜1dは、第3コア型C3の端部e3の角によって、合成樹脂製パイプ1の内周面から切り離される。
第3コア型C3は、少なくとも、樹脂膜1dの厚み程度、好ましくは第3コア型C3の端部e3が主たる管路1a,1b内に露出する程度に前進させて、樹脂膜1d全体が合成樹脂製パイプ1から切り離されるようにする。
【0032】
なお、このコア型の退避・切り離し動作は、いまだキャビティ型Dが開かれていない状態で行われることが好ましい。キャビティ型Dが閉じていることにより、第3コア型C3の前進と樹脂膜1dの切り離しに伴って、成形された合成樹脂製パイプ1が変形してしまうことが未然に防止され、正確な形状の合成樹脂成型品が得られるからである。合成樹脂製パイプ1の変形を防止できるのであれば、キャビティ型Dが開かれた後に第3コア型C3を前進させ、樹脂膜1dを切り離してもよい。
【0033】
(取り出し工程)
樹脂膜1dの切り離しを行った後に、射出成形金型を完全に開く。このとき、第1コア型C1や第2コア型C2、第3コア型C3は、必要に応じ、成形体の脱型に支障のない位置まで退避させる。金型が型開きしたら、金型から、樹脂膜1dが除去された合成樹脂製パイプ1を取り出す(図4(e))。除去した樹脂膜1dをエアー等により吹き飛ばし、合成樹脂製パイプ1の内部や金型内部に残存しないようにすることが好ましい。
以上の製造方法により、成形体(合成樹脂製パイプ1)が未だ金型内部にある間に、樹脂膜1dを成形体から除去し、分岐管路を備える合成樹脂製パイプ1を得ることができる。
【0034】
本発明の作用と効果について説明する。
以上のように、上記実施形態の合成樹脂製パイプの製造方法によれば、型閉じ時に第3コア型C3の端部e3を第1コア型C1や第2コア型C2から離間させて、当該部位に射出した樹脂により樹脂膜1dを形成し、その後、第3コア型を前進させて樹脂膜1dを合成樹脂製パイプ1から切り離すようにしたので、分岐管路を有する合成樹脂製パイプを射出成形する際に、分岐部分におけるバリの発生および残存を抑制できる。
【0035】
従来技術では、分岐管を射出成形する際には、3つのコア型の端部を緊密かつ精密に当接させる必要があり、金型製作の難度が高くなってしまい、バリが発生したりしやすかった。また、従来技術においても、発生したバリを除去するよう、コア型を前進/後退させることも可能ではあるが、生じたバリが小さい場合などには、バリが倒れるなどして、バリの除去が不十分となり、成形体にバリが残存しやすかった。
【0036】
上記実施形態の合成樹脂製パイプの製造方法では、第3コア型C3の端部e3付近では、一旦樹脂膜1dを形成し、その後、樹脂膜1dを除去するようにしたので、この部分におけるバリの発生が抑制できる。そして、第3コア型C3の端部e3の先端には樹脂膜1dが形成され、小さなバリは生じないので、この部分に小さなバリが残存することも抑制できる。樹脂膜1dが確実に形成され、かつ、第3コア型C3の前進により樹脂膜1dが分解せずに一体となって合成樹脂製パイプから除去されるよう、樹脂膜1dの厚みが、好ましくは0.1mm〜1.5mm、より好ましくは0.2mm〜1mmとなるように第3コア型C3の端部e3の離間量を決定することが好ましい。
【0037】
また、型閉じした際に、第3コア型C3の端部e3が第1コア型C1や第2コア型C2から離間するようにされているので、第1コア型C1と第2コア型C2の当接を、通常の2つのコア型を当接させる技術により行うことができ、金型製作の難度を下げることができて、第1コア型C1と第2コア型C2の間に生ずるバリの発生も抑制可能である。
【0038】
また、本実施形態のように、本発明の合成樹脂製パイプの製造方法を、屈曲管に分岐管が一体化された合成樹脂製パイプに応用すれば、製作難度が高い、主たる管路が屈曲形状であり、主たる管路の屈曲部から分岐管路が分岐している合成樹脂製パイプであっても、管路の分岐部におけるバリの発生及び残存を抑制できる。
【0039】
発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分についてはその詳細な説明を省略する。また、これら実施形態は、その一部を互いに組み合わせて、あるいは、その一部を置き換えて実施できる。
【0040】
図5には、第2実施形態として、主たる管路の形状が段付きの直管形状である合成樹脂製パイプ2を示す。合成樹脂製パイプ2においては、主たる管路2a,2bの断面が段付き管状に変化しており、段付き部分から分岐管路2cが分岐している。合成樹脂製パイプ2もゴムチューブ等の接続にコネクタ部材として利用可能である。
【0041】
第2実施形態の合成樹脂製パイプ2も、射出成形によって製造される。図6に示すように、キャビティ型Dに対し、主たる管路2aに対応する第1コア型C4、主たる管路2bに対応する第2コア型C5が配置されていて、第1コア型C4と第2コア型C5は、型閉じ時に端部が互いに当接するように構成される。また、分岐管路2cに対応する第3コア型C6は、第1コア型C4と第2コア型C5とが当接する部分に対して、第3コア型の端部e6が対向するように設けられ、かつ、型閉じ時に、第3コア型の端部e6が第1コア型C4と第2コア型C5から離間するよう、金型が構成されている。
【0042】
この様な実施形態であっても、第1実施形態と同様に、分岐部に生ずるバリの発生や残存を抑制できる。すなわち、本実施形態の金型を用いて射出成形を行うと、合成樹脂製パイプ2と一体に、第3コア型の端部e6が第1コア型C4及び第2コア型C5に対向する部分に、樹脂膜が生ずる。樹脂が固化した後、第1コア型C4及び第2コア型C5を退避させて、第3コア型C6を主たる管路2a,2bの内側まで前進させることにより、当該樹脂膜が合成樹脂製パイプ2から切り離され、当該部分でのバリの発生が抑制される。
【0043】
なお、本実施形態のように、第3コア型の端部e6と、第1コア型C4及び第2コア型C5の間に形成される樹脂膜に、第3コア型C6の延在方向(スライド方向)とほぼ平行に延在する部分が存在する場合には、樹脂膜の切り離しが効率的かつきれいに行われるように、第3コア型C6の前進と回転を組み合わせて樹脂膜の切り離しを行うようにしてもよい。
【0044】
型閉じした際に端部が互いに当接するよう設けられる第1コア型と第2コア型の、当接部の具体的形態は特に限定されないが、当接部にバリが生じないようにする観点からは、当接部が平面とされることが好ましい。あるいは、第2実施形態の合成樹脂製パイプ2のように、主たる管路が段付き管路とされる場合には、第1コア型と第2コア型をいわゆる誘い込み構造として、印籠状に当接させることで、当接部でのバリの発生抑制をより効果的に行える。
【0045】
各コア型の断面形状、即ち、各管路(1a,1b,1c)の断面形状は特に限定されない。第1コア型や第2コア型は、円柱状や角柱状などの形態とすることができる。また、第3コア型も円柱状や角柱状などの形態とすることができ、これらコア型をスライド可能にキャビティ型に取り付けることが可能であればよい。なお、3本の管路のうち、どの管路を主たる管路とし、どの管路を分岐管路とするかについては、特に限定されないが、3本の管路の内で一番細い管路を分岐管路に選択すると、第3コア型を前進させて樹脂膜を切り離す工程が行いやすくなって好ましい。
【0046】
上記実施形態において、第1コア型や第2コア型、第3コア型の進退には、種々の機構等が利用でき、進退の手段は特に限定されない。例えば、第1コア型や第2コア型は、モータと歯車を組み合わせた機構により前進/後退させてもよく、モータは電動モータでもよいし、油圧モータでもよい。電磁石、エアーシリンダー、油圧シリンダーなどにスライダ機構や歯車機構等を組み合わせて、進退機構を構成してもよい。また、カムやガイド溝、螺旋の溝、スライド機構、歯車、などを用いて、金型の開閉動作や、他のスライド機構の動作などが、コア型の進退動作に変換される機構によって、コア型を進退させてもよい。
【0047】
上記実施形態においては、合成樹脂製パイプを構成する各管状部(11,12,13)の外周面が単純な円筒状である例について説明したが、合成樹脂製パイプの外周面の形状はこれに限定されず、他の形態であってもよい。例えば、管状部の端部にOリングを装着するためのシール溝が設けられていてもよい。あるいは、管状部の端部が拡径されていて、挿入したゴムチューブの抜け止めとなるように形成されていてもよい。あるいは、管状部の端部が、他のコネクタ部材との接続や係止が可能な形状に形成されていてもよい。
【0048】
本発明に係る合成樹脂製パイプは、パイプのみからなるものに限定されない。パイプの外周にフランジを有していてもよい。また、本発明の合成樹脂製パイプは、屈曲管形状に形成されたパイプ部分の一端に、抜け止めのための環状の突起が形成され、パイプ部分の他端には、キャップが一体成形された物であってもよい。キャップはビンや容器の蓋になりうる。このように、合成樹脂製パイプには、他の部材が一体成形されていてもよい。
【0049】
また、合成樹脂製パイプの具体的用途は特に限定されない。合成樹脂製パイプはゴムチューブや合成樹脂製チューブの接続のためのコネクタ部材として使用することができるほか、合成樹脂製パイプはホースの接続部材としても使用できる。あるいは、合成樹脂製パイプを、油圧回路や空気圧回路等の圧力伝達回路のコネクタ部材として使用することもできる。これら用途においては、合成樹脂製パイプにシール溝を設けてもよいし、シール部材を一体に成形してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
上記合成樹脂製パイプの製造方法によれば、射出成形を利用して、分岐管路を有する合成樹脂製パイプが効率的に製造できて産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0051】
1 合成樹脂製パイプ
11,12,13 管状部
1a,1b,1c 管路
D キャビティ型
C1 第1コア型
C2 第2コア型
C3 第3コア型
AS 当接面
C キャビティ
1d 樹脂膜
図1
図2
図3
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図8