【課題を解決するための手段】
【0012】
蒸着されるべき層の所望の化学組成は、設定が容易であり全層に亘って均質であるべきである。更に、導電性ターゲット材料は、高熱衝撃安定性を有さなければならず、また、高加工安定性を有し、その結果、低コストが保証されなければならない。上述の欠点は、避けなければならない。
【0013】
この目的は、請求項1による導電性ターゲット材料及び請求項11による導電性ターゲット材料を製造するための方法により達成される。本発明の有利な展開は、従属請求項から明らかである。
【0014】
本発明の導電性ターゲット材料は、本質的に1つのリチウム化合物及び炭素並びに典型的な不純物を含有する。含有される炭素は、元素形状で、支配的に、50%を超える比率で、出現することを特徴とする。
【0015】
「本質的に1つのリチウム化合物」とは、ターゲット材料が、ターゲット材料の断面に基づいて計算された好ましくは80面積%又はそれ以上の面積比率を占める主に1つのリチウム化合物を含有することを意味すると解されるべきである。
【0016】
用語「リチウム化合物」は、ここでは、リチウムの結晶性及び非晶性化合物の全てを包含し、化学量論的に存在していてもよく又は非化学量論的に存在していてもよい。本発明の実施に用い得るリチウム化合物の例は、リン酸リチウム(Li
3PO
4)、炭酸リチウム(Li
2CO
3)、また、Li
2SO
4、Li
7La
3Zr
2O
12、Li
3P、Li
2O、Li
3N、LiBO
2、LiI又はLiBPである。
【0017】
本質的に1つのリチウム化合物の、導電性ターゲット材料の断面に基づいて計算された、面積比率の決定には、金属組織学的断片を作成し、光学顕微鏡法又は電子顕微鏡法により解析する。市場から入手可能な画像解析ソフトウエアにより、このようにして得られた顕微鏡画像の解析を実施することができる。これは、前述の構造の個々の相の決定のための画像解析により、典型的には、区別されるべき相にコントラストを付けることにより、行なわれる。
【0018】
本発明のターゲット材料に用いるのには、リチウム化合物:リン酸リチウム(Li
3PO
4)が特に有利であることが見いだされた。というのは、これにより、リチウムイオン電解質層の製造において、高い蒸着速度を達成することができるからである。この理由により、本発明の好適な実施態様において、本質的に1つのリチウム化合物は、リン酸リチウムである。
【0019】
好適には、本発明の導電性ターゲット材料は、リン酸リチウム及び炭素並びに典型的な不純物を含有する。含有される炭素は、元素形状で、支配的に、50%を超える比率で、出現することを特徴とする。
【0020】
更に好ましくは、本発明の導電性ターゲットに含有される炭素は,75%を超える比率で元素形状で出現する。
【0021】
更に好ましくは、本発明の導電性ターゲットに含有される炭素は,90%を超える比率で元素形状で出現する。
【0022】
更に好ましくは、本発明の導電性ターゲットに含有される炭素は,95%を超える比率で元素形状で出現する。
【0023】
更に好ましくは、本発明の導電性ターゲットに含有される炭素は,98%を超える比率で元素形状で出現する。
【0024】
含有される炭素が、もっぱら元素形状で出現し、本質的に1つのリチウム化合物、好ましくはリン酸リチウム、に溶解している部分が無視しうることが特に好ましい。
【0025】
「典型的な不純物」とは、使用した原料に由来するガス又は付随する元素による製造関連不純物をいう。本発明の導電性ターゲット材料におけるそのような不純物の割合は、領域において、1,000ppm未満である。よく知られているように、化学元素の分析に適切な方法は、分析すべき化学元素に依る。本発明の導電性ターゲット材料の化学分析には、IP−OES(誘導結合プラズマ発光分光分析)、RFA(X線蛍光分析)及びGDMS(グロー放電質量分析)が用いられる。
【0026】
炭素の元素形状とは、ここでは、例えばグラファイトの形状の、純粋な炭素をいう。従って、本発明の導電性ターゲット材料に含有される炭素は、好ましくは、本質的に1つのリチウム化合物中に、好適にはリン酸リチウム中に、少量又は無視しうる程度にのみ溶解し、追加的な化合物−もし存在するとして−の無視しうる程度の少量を構成する。
【0027】
元素状炭素の更なる表現は、例えば、ダイアモンド、フラーレン又は非晶性炭素であるが、他の結晶構造及びsp
2:sp
3混成状態も、本発明の文脈において、元素状炭素とみなされる。
【0028】
本発明のターゲット材料に含有される炭素の元素形状により、これまで述べてきたターゲット材料中の複数の異なる化合物の欠点が回避される。
【0029】
従って、本発明の導電性ターゲット材料において、炭素は、ミクロ構造の別個の成分を形成し、ミクロ構造のもう1つの成分の主要構成要素ではない。炭素のこの形状は、本発明の導電性ターゲット材料の電気伝導度に顕著な増加をもたらす。
【0030】
元素形状で出現する炭素の比率とは、ここで、ターゲット材料に含まれる全ての炭素に対する比率を意味すると解すべきである。
【0031】
元素形状で出現する炭素の比率が高くなればなるほど、本発明のターゲット材料において、一定の炭素含有量(例えば原子%)について達成しうる電気伝導度及び熱伝導度が、より高くなる。
【0032】
本発明の導電性ターゲット材料は、好ましくは、ターゲット材料の一側面からターゲット材料の反対側面へ浸透する少なくとも1つのカーボンクラスターを有することが好ましい。
【0033】
この種の浸透炭素クラスターは、浸透炭素クラスターを有しない従来のターゲット材料に比べて電気伝導性が顕著に増加する原因である。何故なら、電流は、この少なくとも1つの浸透炭素クラスターに沿って導電性ターゲット材料の片側からターゲット材料の反対側へ流れることができるからである。
【0034】
この種の浸透炭素クラスターは、本発明のターゲット材料中に存在する全炭素の一部であり、従って、好ましくは元素状炭素からなると理解されるべきである。
【0035】
浸透クラスターは、浸透理論からの中心的概念であり、これは、例えば合金の電気伝導
性のような現象を記述する手段として、当業者によく知られている。クラスターは、それが包埋スペースの反対側端と結合するときに浸透すると言われる。
【0036】
本発明の導電性ターゲット材料は、好適には、二相ミクロ構造を有しており、そこでは、炭素は、本質的に1つのリチウム化合物の豊富な領域、好適にはリン酸リチウムの豊富な領域、の周りにネットワーク状に配列されている。
【0037】
ミクロ構造とは、ここでは、ターゲット材料の特定の成分(相)の配列を意味すると理解すべきである。材料のミクロ構造は、例えば金属組織学的断片を製造した後に、常習的な方法、光学顕微鏡又は操作型電子顕微鏡(SEM)によって、視覚化される。
【0038】
図1は、例として、本発明の導電性ターゲット材料のミクロ構造の光学顕微鏡像を示す。図から、本質的に1つのリチウム化合物が豊富な領域、ここでは、リン酸リチウム豊富な領域1、元素状炭素の領域2、及び画像部分に対応する浸透炭素クラスター3の部分が示される。
【0039】
「二相の」とは、ここでは、異なる化学組成及び/又は結晶構造によって特徴づけられる少なくとも2つの異なる成分(相)が本発明の導電性ターゲット材料中に存在することを意味すると解されるべきである。本質的に1つのリチウム化合物、好ましくはリン酸リチウム、及び炭素並びに典型的な不純物を含有してなる本発明の導電性ターゲット材料の場合、本質的に1つのリチウム化合物、好ましくはリン酸リチウム、が、好適には二相のミクロ構造の第一の相を形成し、元素状炭素が第二の相を形成する。典型的な不純物の小部分は、本発明の導電性ターゲット材料の好適には二相のミクロ構造の別の相とみなされるべきではない。
【0040】
本発明の実施態様において、導電性ターゲット材料のミクロ構造は、本質的に1つのリチウム化合物、好ましくはリン酸リチウム、及び炭素のほかに、少量の別のリチウム化合物、例えば炭酸リチウム(Li
2CO
3)、を含有していてもよい。そのような化合物は、出発粉末中に既に存在しているか、製造プロセスの途中、例えば、圧縮の過程、で形成される。このような小部分の別のリチウム化合物は、本発明の導電性ターゲット材料の好適には二相のミクロ構造に関して、更なる相とみなされるべきではない。
【0041】
そのような化合物の存在は、(個々のX−線結晶構造解析検知限界を考慮した)適切なJCPDSカードを用いたX線回折法(XRD)によって検知され又は除外される。好適には二相のミクロ構造の存在は、この方法によっても、決定される。
【0042】
図2は、例として、本発明の導電性ターゲット材料のX−線回折(XRD)による相の決定を示す(使用したJCPDSカード:Li
3PO
4:00−015−0760、炭素(グラファイト):00−023−0064、Li
2O
3:00−022−1141)。
【0043】
本発明の導電性ターゲット材料において、相互に識別し得る少なくとも2つの成分(相)が存在する。ミクロ構造の大半は、本質的に1つのリチウム化合物、好適にはリン酸リチウム、からなり、このものは、顕微鏡で見たとき、均質な二次元の領域として、出現する。
【0044】
これらの二次元領域の周りにネットワーク状に、元素状炭素が配列されている。ここで、ネットワークとは、好適には、炭素の本来的な形状を意味する。このネットワークが製造プロセスにおいて形成される程度は、使用する出発粉末の粒径の選択及び実施された混合操作により影響され得る。
【0045】
更に、添加された炭素の含有量(例えば、原子%)は、用いられた出発粉末の粒径と相俟って、ネットワークの形成並びに本質的に1つのリチウム化合物、好適にはリン酸リチウム、の領域及びそれが形成する炭素領域の三次元の程度−従って、可視二次元−の程度に影響する。
【0046】
例えば、同一の炭素含有量では、出発粉末、とりわけ、本質的に1つのリチウム化合物、好適にはリン酸リチウム、の選択された粒径が小さくなればなるほど、ネットワークを形成するのが困難になる。
【0047】
典型的には、本発明の導電性ターゲット材料のミクロ構造は、三次元ターゲット材料を通る二次元断面において解析される。本発明の導電性ターゲット材料の三次元ミクロ構造は、本質的にアイソトロピックであり、即ち、ミクロ構造には、観察平面に関連して、全く又は実質的に全く差異がなく、即ち、材料特性の方向的依存性はない。
【0048】
本発明の導電性ターゲット材料は、好適には、ターゲット材料の切断面において測定して、3%から20%の間の炭素面積比率を有するのが好ましい。
【0049】
導電性ターゲット材料の切断面で測定した炭素の面積比率の決定のために、金属組織学的断片を作製し、光学顕微鏡検査法又は電子顕微鏡検査法により解析した。市場で入手可能な画像解析ソフトウエアにより、このようにして生成された顕微鏡画像の面積解析を行なうことが可能である。これは、前記ミクロ構造の個々の相成分の決定のための画像解析により、典型的には、識別すべき相のコントラスト付けにより、実施される。
【0050】
ターゲット材料の切断面について測定した炭素の面積比が3%未満であると、ターゲット材料の所望の電気的特性は、もはや、最適の程度に達成されない。3%未満の炭素面積比率が非常に低いことの更なる不利益は、特にスパークプラズマ焼結(SPS)による製造の場合に、操作性が低下することである。
【0051】
20%を超える炭素面積比率は、導電性ターゲット材料により蒸着された層中への炭素の導入を増加させることにつながる。この結果、所望の層特性が、もはや、最適の程度には達成されないことがあり得る。
【0052】
本発明の導電性ターゲット材料の切断面について測定した炭素の面積比率が5〜15%であることがより好ましい。この範囲内において、達成し得る特性の結合が特に有利になり、特に高い電力入力と蒸着速度を達成することが可能となる。とりわけ、これは、スパッタリングプロセス中の、測定された炭素面積比率についてのこれらの好ましい範囲内で最適化された熱の除去により保証される。
【0053】
本発明の導電性ターゲット材料は、3〜20原子%の炭素を含有することが好ましい。
【0054】
本発明の導電性ターゲット材料の原子%による炭素含有量は、重量%への換算及び適切な粉末量の定量により設定される。完成したターゲット材料において、原子%による炭素含有量は、高温ガス抽出(また、燃焼分析)によってチェックし乃至検出される。このとき、含有される炭素を、酸化アルミニウムるつぼ中、酸素気流下に、1,600℃未満の温度でカ焼し、その酸化物の形で、赤外セルにより、測定する。
【0055】
炭素含有量が3原子%未満では、製造において、とりわけ、スパークプラズマ焼結(SPS)による製造の場合に、操作性が低下し得る。炭素含有量が20原子%を超えると導電性ターゲット材料により蒸着された層に、導入される炭素が増加する。この結果、所望の層特性が、もはや、最適の形では達成されないことがあり得る。
【0056】
本発明の導電性ターゲット材料において、炭素含有量は、5〜15%であることが更に好ましい。約5原子%を超えると、達成される電気伝導度が十分に高くなり、5〜10倍の蒸着速度増加が達成される。スパッタリングプロセスを更に最適化すると、達成し得る蒸着速度が更に増加し得る。
【0057】
上述の含有量の炭素の添加により、本発明の導電性ターゲット材料の製造中の粉末混合物の熱
拡散率が調整され、これにより、圧縮性がより良くなる。
【0058】
本発明の導電性ターゲット材料の電気伝導度は、好ましくは、0.01S/mm以上である。
【0059】
好ましくは0.01S/mm以上の電気伝導度により、ターゲット材料がDC又はパルスDCスパッタリングプロセスにより蒸着できることが保証される。これにより、RFスパッタリングプロセスにより達成される蒸着速度の5〜10倍の蒸着速度が達成される。この結果、特定の必要な厚さを有するリチウムイオン電解質層の蒸着に必要な時間が大幅に短縮され、従って、発生するコストが劇的に低下する。
【0060】
本発明の導電性ターゲット材料の電気伝導度は、更に好ましくは、0.02S/mm以上である。
【0061】
かくして、達成される蒸着速度を更に上昇させ、蒸着プロセスのコストを更に低下させることが可能になる。
【0062】
電気伝導度は、従来の機器を用いて、輸送測定の手段、例えば4端子測定、により、簡単に測定することができ、材料の電流を通す能力を表す。
【0063】
本発明の導電性ターゲット材料の熱
拡散率は、好ましくは、2.5mm
2/秒以上である。
【0064】
純粋なリチウム化合物、例えばリン酸リチウム(Li
3PO
4)に比べて、本発明の導電性ターゲット材料の上昇した熱
拡散率により、スパッタリングプロセス中のより高い電力入力が可能になる。というのは、ターゲット材料中に生じる熱がより速く除去され、ターゲット材料中に確立された温度が低下されるからである。
【0065】
本発明の導電性ターゲット材料の熱
拡散率は、より好ましくは、3mm
2/秒以上である。というのは、それにより、ターゲット材料中への電力入力を更に高めることができるからである。これらの熱
拡散率の数値は、室温で適用される。典型的には、熱
拡散率は、温度上昇に連れて低下する。しかしながら、本発明の導電性ターゲット材料の熱
拡散率が1.5mm
2/秒以上であると、そのような材料の100〜250℃の間の典型的な使用温度において、有利である。
【0066】
熱
拡散率は、レーザーフラッシュ法により、簡単に決定することができるが、温度勾配の結果としての熱伝導に起因する空間温度分布の時間による変化を記述する特定の材料の性質である。
【0067】
本発明の導電性ターゲット材料は、好ましくは、10〜20ppm/Kの熱膨張係数を有する。
【0068】
この数値範囲は、本発明の導電性ターゲット材料の室温及び典型的な使用温度、約100〜250℃、において、達成される。これと比較して、例えば、純粋な単相リン酸リチウム(Li
3PO
4)は、室温において、約2ppm/Kの熱膨張係数を有しているが、これは、上昇温度においても顕著には上昇しない。
【0069】
本発明の導電性ターゲット材料の高められた熱膨張係数は、支持要素のために典型的な材料、例えば銅バックプレート(銅の熱膨張係数は約16ppm/Kである。)、に適合する。この熱膨張係数の調和により、耐熱衝撃性の向上及び使用中のターゲット材料の温度スイング安定性が保証される。更に、その結果、支持要素への任意の結合(任意の結合ステップ)後のターゲット材料の剥落を実質的に回避することができる。
【0070】
本発明の導電性ターゲット材料の熱膨張係数は、ディラトメーター測定により、簡単に測定することができる。
【0071】
本発明の導電性ターゲット材料の最適化された熱的特性の更なる利点は、これによって可能となる高融点はんだ材料、例えばSn、の支持要素への結合のための使用である。これにより、スパッタリングプロセスにおける電力入力を更に高めることができる。
【0072】
本発明の導電性ターゲット材料の相対密度は、好ましくは95%以上である。相対密度が高くなればなるほど、その有利な特性が多くなる。95%未満の相対密度を有するターゲット材料は、仮想のリークとして、そして不純物源として作用する多孔構造を有する。更に、低すぎる相対密度を有するターゲット材料は、水及び他の不純物を吸収する傾向があり、このことが、結果として制御困難な蒸着プロセスにつながる。
【0073】
よく知られているように、相対密度は、浮力法によりアルキメデスの原理によって簡単に測定することができる。
【0074】
本発明の導電性ターゲット材料の機械的強度は、製造プロセスの過程における考えられる機械的操作を可能とするのに十分なほど高いことが好ましい。
【0075】
本発明の導電性ターゲット材料は、好適には、薄膜バッテリーのためのリチウムイオン電解質層の蒸着のために用いることを意図している。
【0076】
様々な製造プラントにおける薄膜バッテリーのための、そして、塗被すべき種々の範囲の基板のための、リチウムイオン電解質の蒸着のために意図された用途により、本発明の導電性ターゲット材料に対する種々の種類の要求が生じる。従って、そのような材料は、プレート、ディスク、バー、チューブ又は他の複雑な形状の三次元体の形状であり得る。そのような複雑な形状の物体は、例えば、ポットの形状又は窪んだカソードの形状を有していてもよい。
【0077】
本発明のターゲット材料で蒸着されたリチウムイオン電解質層は、非常に低い導電性のみしか示さないか又は好適には電気絶縁性である。このような層の電解質としての適合性は、そのイオン電導度から明白である。従って、本発明の導電性ターゲット材料中に存在する炭素は、蒸着層に、全く又は実質的に導入されてはならない。好ましくは、存在する炭素は、スパッタリング雰囲気中の残存ガス中に存在する酸素によってCO又はCO
2の形で結合されていて、その結果、排出される。蒸着された層中の炭素含有量は、随意の反応性スパッタリングプロセスにより、減少させることができる。このようにして、本発明のターゲット材料で蒸着されたリチウムイオン電解質層の機能は、ターゲット材料中に存在する炭素によって損なわれない。
【0078】
本質的に1つのリチウム化合物及び炭素、並びに典型的な不純物から本発明の導電性ターゲット材料を製造する方法は、好適には、以下の工程を含んでなる。
− 本質的に1つのリチウム化合物及び炭素を含有する粉末混合物を製造する工程、
− この粉末混合物を型に導入する工程、及び
− 圧力及び/又は温度によりこの粉末混合物を圧縮する工程。
【0079】
リチウム化合物であるリン酸リチウム(Li
3PO
4)が、本発明の導電性ターゲット材料において使用するのに特に有利であることが見出されているので、粉末混合物の製造に用いられ、本発明による製造法に用いられる本質的に1つの化合物も、また、好適には、リン酸リチウムである。
【0080】
従って、本発明の好適な態様において、リン酸リチウム及び炭素並びに典型的な不純物から導電性ターゲット材料を製造する方法は、好適には、以下の工程を含有する。
− リン酸リチウム及び炭素の粉末混合物を製造する工程、
− この粉末混合物を型に導入する工程、及び
− 圧力及び/又は温度によりこの粉末混合物を圧縮する工程。
【0081】
本発明の導電性ターゲット材料のための粉末混合物の製造は、粉末の必要量を秤取し、適切な混合単位で混合して、粉末混合物中で均質な成分分布が確実になるまで混合する。
【0082】
このようにして製造された粉末混合物を型に導入する。この型は、後続する圧縮工程に対応して、種々の三次元寸法を有していてよく、異なる材料から製造されていてよい。このような型のための典型的な材料は、例えば、グラファイト、CFC(炭素繊維で強化した炭素)、Mo又はTZM(チタン−ジルコニウム−モリブデン)である。
【0083】
型に導入された粉末混合物は、次いで、圧縮される;圧縮工程は、圧力により、温度により又は圧力及び温度により実施される。
【0084】
圧縮工程のための適切な方法は、例えば、ホットプレス及びスパークプラズマ焼結(SPS)であるが、他の圧縮方法も可能である。
【0085】
本発明の導電性ターゲット材料の製造のための方法に存在してもよい随意の工程は、
− 粉末及び/又は粉末混合物を乾燥する工程、
− 機械的処理工程、
− 処理したブランクを1又はそれ以上の支持要素と結合させる工程
である。
【0086】
粉末及び/又は粉末混合物、とりわけ使用する本質的に1つのリチウム化合物の粉末、即ち好適にはリン酸リチウム粉末、の乾燥により、経験から示されるように、市場で入手可能な粉末中に存在する結晶水が消散させられ、従って、粉末の酸素含有量、そしてその結果として、粉末混合物の酸素含有量が減少する。これにより、導電性ターゲット材料の化学組成の、従って、また、それにより蒸着されるリチウムイオン電解質層の化学組成の、より厳密な制御が可能となる。乾燥工程を実施するために要求される最適温度の最適化は、例えば、熱重量測定の実施により、行なうことができる。
【0087】
粉末混合物を圧力及び/又は温度により圧縮したのち、得られたブランクについて機械的加工操作が必要とされる。そのような加工工程は、好ましくは乾燥形態で実施されなければならない。というのは、湿潤処理の場合、ブランクの少なくとも1つの面への攻撃が起こり得るからである。例えば、旋削、粉砕又は磨砕によるこの種の機械的加工操作により、導電性ターゲット材料の最終的な形状を調整し又は正確に規定し、また、その表面に特定の所望の粗さを付与することが可能になる。
【0088】
このような加工操作は、既に述べたように、粉末混合物を圧縮してブランクとした後、また、随意の結合工程の後、或いは最終的な加工操作として、実施することができる。
【0089】
本発明の導電性ターゲット材料は、更に、結合工程により、1又はそれ以上の対応する支持要素、例えばバックプレート又は支持チューブ、に結合してもよい。そのような支持要素は、例えばCu、Cu合金、Ti又はTi合金から製造することができる。また、対応する支持要素の製造のために、他の材料を用いることも可能である。そのような結合工程のために、低融点の元素又は合金、例えばインジウム、を使用することが好ましい。更に、よりよい湿潤を確実にするために、接着促進剤、例えばWNi、を、所望により、使用することもできる。
【0090】
本発明の導電性ターゲット材料の製造方法における圧縮工程は、好ましくは、ホットプレス(HP)又はスパークプラズマ焼結(SPS)により実施される。しかしながら、熱間等方加圧(HIP)又は冷間等方加圧(CIP)及び引き続く焼結といった他の圧縮方法も、また、可能である。
【0091】
SPSによる圧縮の場合、対応する型に充填された粉末混合物の圧縮は、圧力及び温度によって行なわれるが、このとき、電流の導入により型内の焼結温度まで直接加熱される。
【0092】
圧縮工程のためのSPSの使用の利点は、焼結に先立ってグリーン体を製造する必要がなくなるほどの、必要焼結時間の劇的な短縮である。
【0093】
本発明の導電性ターゲット材料のSPSによる圧縮は、700℃と900℃との間の温度で起きるのが好ましい。しかしながら、これは、この範囲の上下の温度での圧縮を排除するものではない。
【0094】
本発明の導電性ターゲット材料のSPSによる圧縮は、10バールと60バールとの間の圧力で起きるのが好ましい。しかしながら、これは、この範囲の上下の圧力での圧縮を排除するものではない。
【0095】
HPによる圧縮の場合、型内に充填された粉末混合物の圧縮は、圧力及び温度下に実施されるが、このとき、焼結温度への加熱は、加熱された型、例えばグラファイトモールドによって行なわれる。
【0096】
本発明の導電性ターゲット材料のHPによる圧縮は、700℃と900℃との間の温度で起きるのが好ましい。しかしながら、これは、この範囲の上下の温度での圧縮を排除するものではない。
【0097】
本発明の導電性ターゲット材料のHPによる圧縮は、10バールと60バールとの間の圧力で起きるのが好ましい。しかしながら、これは、この範囲の上下の圧力での圧縮を排除するものではない。
【0098】
圧縮に要する時間は、それぞれの場合に製造される導電性ターゲット材料の大きさに依存し、圧縮工程の実行の過程で、サイクル最適化により、簡単に確認することができる。
【0099】
本発明の利点及び便利な側面は、添付図を参照して、以下の実施例の記述から明らかである。