(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6657223
(24)【登録日】2020年2月7日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】医薬調製物用の(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミド組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/444 20060101AFI20200220BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20200220BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
A61K31/444
A61K47/38
A61P35/00
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-532078(P2017-532078)
(86)(22)【出願日】2015年12月14日
(65)【公表番号】特表2017-538720(P2017-538720A)
(43)【公表日】2017年12月28日
(86)【国際出願番号】US2015065428
(87)【国際公開番号】WO2016100147
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2018年12月11日
(31)【優先権主張番号】62/093,607
(32)【優先日】2014年12月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596129215
【氏名又は名称】メルク・シャープ・アンド・ドーム・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Merck Sharp & Dohme Corp.
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】グプタ,プラナフ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】タルツァスカ,スコット・ティー
【審査官】
古閑 一実
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/105500(WO,A1)
【文献】
国際公開第2014/196519(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0189192(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0158020(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0160807(US,A1)
【文献】
薬剤学,2013年,Vol.73, No.4,p.214-222
【文献】
PHARM TECH JAPAN,2011年,Vol.27, No.10,p.57-63
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
A61P 1/00−43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)及び(B)を含む組成物であって、
(A)は、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミド遊離塩基水和物形態2、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミドHCl形態1、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミドHCl水和物形態1、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミドHCl水和物形態2、および、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミド非晶質よりなる群から選択され、そして、
(B)は、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルの等級Mであり、
ここで、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミド非晶質は、(i)X線回折は、結晶性ピークを欠き、(ii)133℃における溶解吸収を欠き、そして(iii)DSCサーモグラムは、約110℃における吸熱転移を有することを特徴とし、
(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミド遊離塩基水和物形態2は、粉末X線回折において、12.78、18.89、20.41および20.76の2θ値を有することを特徴とし、
(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミドHCl形態1は、粉末X線回折において、3.99、16.00、17.78および18.81の2θ値を有することを特徴とし、
(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミドHCl水和物形態1は、粉末X線回折において、17.31、19.41、20.21および22.58の2θ値を有することを特徴とし、そして、
(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミドHCl水和物形態2は、粉末X線回折において、17.59、18.31、20.20および22.01の2θ値を有することを特徴とする、
前記組成物。
【請求項2】
(A)の(B)に対する重量比は、約1:1から1:5である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記重量比は約1:3である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
(A)が、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミド非晶質である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
(A)が、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミド遊離塩基水和物形態2である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
(A)が、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミドHCl形態1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
(A)が、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミドHCl水和物形態1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
(A)が、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミドHCl水和物形態2である、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
国際公開第2009/105500号は、ERK阻害剤を記載しており、ERK阻害剤を製造する手順、およびERK阻害剤を含む医薬組成物を調製する手順が挙げられている。記載される医薬組成物として、患者への直接投与用の、粉末、錠剤、分散性顆粒、カプセル、カシェ剤および坐剤を含む固体形態の調製物;患者への直接投与用の、溶液、懸濁液およびエマルジョンを含む液体形態の調製物;吸入に適したエアロゾル調製物;患者への続いて起こる投与用の、使用直前に溶液、懸濁液およびエマルジョンを含む液体形態の調製物に変換されることが意図される固体形態の調製物;ならびに患者への直接塗布用または経皮パッチを介した投与用のクリーム、ローション、エアロゾルおよび/またはエマルジョンを含む経皮組成物が挙げられる。
【0002】
国際公開第2009/105500号に記載される具体的なERK阻害剤、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミドは、結晶水和物形態2で最も安定している。当該形態は溶解度が低く、安全かつ有効な経口投与に適した錠剤およびカプセルを含む患者に投与するための特定の医薬組成物を効率的に調製するために、非晶質分散系を作製して溶解度を向上させることが非常に所望され、薬物の非晶質形態は、その結晶性の対応物と比較して見掛けの溶解度がより高くなるであろう。
【0003】
本発明は、溶解度が向上した(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミドの分散物を提供し、これにより患者への安全かつ有効な経口投与に適した錠剤およびカプセルの効率的な調製が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/105500号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミドおよびヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルを含む組成物、当該組成物を調製する方法、ならびに患者への投与用の、カプセル調製物を含む医薬調製物を調製するための組成物の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミド遊離塩基水和物形態2に関連する粉末X線回折データのグラフである。
【
図2】(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミドHCl形態1に関連する粉末X線回折データのグラフである。
【
図3】(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミドHCl水和物形態1に関連する粉末X線回折データのグラフである。
【
図4】(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミドHCl水和物形態2に関連する粉末X線回折データのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミドおよびヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルを含む組成物である。
【0008】
一実施形態において、組成物は、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミドおよびヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルを含み、ここで、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミドの、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルに対する重量比は、約1:1から1:5である。別の実施形態において、重量比は約1:3である。
【0009】
本発明はまた、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミドを含む硬ゼラチンカプセルの調製用のフィルムキャストプロセスであり、当該プロセスは、
a)(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミド遊離塩基水和物形態2およびヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルを溶媒中に溶解させて溶液を形成する工程と、
b)溶液から溶媒を蒸発させて、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミド非晶質形態を含むフィルムキャストを形成する工程と、
c)フィルムキャストを粉砕して、粉砕産物を形成する工程と、を含む。
【0010】
次に、粉砕産物は、硬ゼラチンカプセルまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセルに充填するために用いられ、又は、従来の錠剤化手順を用いて錠剤に製剤化されてもよい。
【0011】
フィルムキャストプロセスの一実施形態において、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミドの、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルに対する重量比は、約1:1から1:5である。フィルムキャストプロセスの別の実施形態において、当該比は約1:3である。フィルムキャストプロセスの別の実施形態において、溶媒はアセトンである。
【0012】
本発明はまた、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミドを含む硬ゼラチンカプセルの調製用の熱溶融押出プロセスであり、当該プロセスは、
a)(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミド遊離塩基水和物形態2およびヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルを混合して混合物を形成する工程と、
b)混合物を二軸スクリュー熱溶融押出機に通して押し出して、押出物を形成する工程と、
c)空冷コンベヤーベルト上でまたは冷却ローラを用いて、押出物を急冷して、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミド非晶質形態を含む急冷された押出物を形成する工程と、
d)押出物をペレット化してペレットを形成し、そして、続いてペレットを粉砕して粉砕産物を形成する工程と、を含む。
【0013】
次に、粉砕産物は、超崩壊剤と混合されてから、硬ゼラチンカプセル中に充填されてよい。あるいは、急冷された押出物は、ペレット化され、粉砕され、篩分けされ、従来の錠剤化手順を用いて錠剤を形成するために用いられる。
【0014】
熱溶融押出プロセスの一実施形態において、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミドの、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルに対する重量比は、約1:1から1:5である。別の実施形態において、当該比は約1:3である。
【0015】
先のプロセスにおいて用いられるヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルは、粒状形態または微粉末であり得る。様々な等級が適しており、pH感度が≧6.0である等級M;pH感度が≧5.5である等級L、およびpH感度が≧6.8である等級Hが挙げられる。超崩壊剤は、クロスポビドンであってよい。
【0016】
本発明はまた、遊離塩基水和物形態2、HCl形態1、HCl水和物形態1、およびHCl水和物形態2から選択される、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミドの化合物形態である。本発明の一実施形態において、当該形態は、遊離塩基水和物形態2である。本発明の一実施形態において、当該形態は、HCl形態1である。本発明の一実施形態において、当該形態は、HCl水和物形態1である。本発明の一実施形態において、当該形態は、HCl水和物形態2である。
【0017】
以下の構造Iの、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミド:
【化1】
【0018】
およびその調製方法が、国際公開第2009/105500号(化合物A6)に記載されている。(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミドはまた、Active Biochem CAT#A−1191から入手可能である。ERK活性(すなわち、ERK1およびERK2活性)を阻害する化合物は、広範囲の癌、例えばメラノーマ、膵癌、甲状腺癌、結腸直腸癌、肺癌、乳癌および卵巣癌の治療に有用であり得る。
【0019】
調製:
(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミド遊離塩基の合成は、19工程である。化合物調製物が、3つの中間体調製物A、B、およびCに分かれ、中間体のカップリングに続く。全ての中間体が、市販の化合物から出発する。化合物5が、市販のブロモ−4−シアノベンゼンのメチルヒドラジンとの酸性条件下での反応によって調製され、ヒドラジノイミデート2が適度な収率で形成される。2工程におけるギ酸との反応後、ブロモフェニル−N−メチルトリアゾール中間体3が得られる。テトラヒドロピリジン環は、市販のBoc保護テトラヒドロピリジン−ボロネートの鈴木反応によって導入され、三環系4が得られる。脱保護された4のクロロアセチルクロライドとの反応により、クロロアセトアミド5が優れた収率で得られる。ピロリジンコア10aは、市販の6から出発して5工程で良好な収率で得られる。塩化チオニルとの反応により、チオメチルオレフィン7が得られた。付加環化(2+3)により8が得られ、続いてベンジル保護基が除去されて9が得られた。ピロリジン核のL−酒石酸分割により、メタノールからの濾過後に純粋な(S)エナンチオマー9が得られる。Boc誘導体としての保護およびメチルエステルの加水分解の後、全体で50%の収率で10が得られる。化合物17が、市販のインダゾール11から得られる。インダゾール11の3位での臭素化がクロマトグラフィなしで優れた収率で進行し、12が得られた。ブロモ化合物12の14との鈴木反応により、クロマトグラフィ後にニトロインダゾール16が得られた。16の還元により、アニリン17が油として定量的な収率でクロマトグラフィなしで得られた。中間体の最終カップリングは、17を10aとカップリングさせることによって進行し、18が良好な収率で得られた。Boc基およびトリチル基の脱保護後、5との最終カップリングにより、クロマトグラフィ後に、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミドが得られた。メタノール/ジエチルエーテルからの結晶化によって、最終精製が実行された。この合成経路は、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミド遊離塩基(化合物I)をもたらしたスケールで行われた。
【0020】
主要な中間体5,10および17からの合成
調製A:
【化2】
【0024】
遊離塩基水和物形態2の調製
化合物Iを周囲温度にて純水中に懸濁させた。混合物を少なくとも1日成熟させ、結晶形態(遊離塩基水和物形態2)を得た。
【0025】
HCl形態1の調製
HCl水和物形態1またはHCl水和物形態2を、周囲温度にて、酢酸エチル、トルエン、アセトニトリル、酢酸イソプロピル、アセトンまたはテトラヒドロフラン(THF)中に懸濁させた。混合物を少なくとも1日成熟させ、結晶形態(HCl形態1)を得た。
【0026】
HCl水和物形態1の調製
化合物Iを、水性イソプロパノール混合液中に懸濁させてから、塩酸を添加した。混合物を周囲温度にて少なくとも1日成熟させ、結晶塩(HCl水和物形態1)を得た。
【0027】
HCl水和物形態2の調製
化合物Iを、水性アセトン混合液中に懸濁させてから、塩酸を添加した。混合物を周囲温度にて少なくとも1日成熟させ、結晶塩(HCl水和物形態2)を得た。
【0028】
HCl形態1を周囲温度にて純水中に懸濁させた。混合物を少なくとも1日成熟させ、結晶形態(HCl水和物形態2)を得た。
【0029】
遊離塩基水和物形態2の粉末X線回折データ
【表1】
【0030】
HCl形態1の粉末X線回折データ
【表2】
【0031】
HCl水和物形態1の粉末X線回折データ
【表3】
【0032】
HCl水和物形態2の粉末X線回折データ
【表4】
【0033】
フィルムキャストプロセス
フィルムキャスティング法は、分子的に分散された薬物を与えることができる薬物−ポリマーまたは可塑剤組合せの正確な量を決定するための予備的スクリーニング技術として用いられ得る。簡潔には、薬物およびポリマーは、薬物ポリマー溶解度が適切な一般的な溶媒/溶媒混合液中で様々な比率で溶解し、続いて24℃にて24時間の溶媒の蒸発によって、ガラス表面上にフィルム形成させ、普通なら固体分散系の安定性に影響を及ぼす虞があるフィルムキャスト内の残留溶媒を除去する。水または高沸点溶媒よりも揮発性溶媒が好ましく、なぜなら、溶媒は、蒸発するのにより長い時間がかかることとなりフィルムの乾燥が不完全になる虞があるからである。その後、フィルムは、乳鉢および乳棒を用いて粉砕されて、適切なサイズの固体分散系を得るために篩分けされてから、カプセル中に充填される。粉砕されたフィルムは、DSC、XRDおよび他の分析ツールを介して、その非晶質性について分析される。
【0034】
熱溶融押出プロセス
(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミドの固体分散物が、押出プロセス、例えば熱溶融押出プロセスを用いて製造され得る。簡潔には、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミド水和物形態2(DS)、およびポリマー例えばヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルが、混合機、例えばTurbula混合機内で、約1:1から1:5のDS:ポリマー重量比で混合され、続いて、バイブレーションフィーダを用い、粉末混合物が、押出機例えばLeistritz Nano 16mm二軸スクリュー押出機にフィードされる。薬物ポリマー混合物は押し出され、生じた押出物が例えば液体窒素中で急冷され、その後、粉砕機を用いて粉砕される。粉砕された押出物は、篩分けされ、そして混合機例えばTurbula混合機を用いて、押出物の10w/w%の超崩壊剤例えばクロスポビドンと、5分間混合され、そして、押出物/崩壊剤混合物は、カプセルに充填することによって、医薬調製物例えば硬ゼラチンカプセルを調製するために用いられる。
【0035】
フィルムキャスト法または熱溶融押出しを介して調製された固体分散組成物は、非晶質形態を形成し、これは粉砕後にカプセル中に充填され、それは、薬物生物学的利用能を向上させるために可溶化を高める所望の形態である。
【0036】
フィルムキャスティングまたは熱溶融押出しを介して調製される(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミド非晶質形態を含む錠剤が、従来の錠剤化手順を用いて形成され得、そして、製剤の化学的安定性を向上させるためのビヒクルおよび他の賦形剤として、希釈剤(例えば、ラクトース、アビセル、マンニトール、リン酸水素カルシウム)、崩壊剤(例えば、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム)、塩崩壊剤(例えば、NaCl、NaHCO
3、KH
2PO
4、K
2SO
4、KCl)、結合剤(例えば、ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース)、滑剤/流動促進剤(例えば二酸化ケイ素)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム)、および抗酸化剤(例えば、BHT、BHA、没食子酸プロピル)が挙げられる。
【0037】
XRD分析によって証明される結晶性ピークの不在は、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミドが固体分散製剤中で非晶質であることを示した。固体分散製剤のDSCサーモグラムは、物理的安定性を意味する110℃のTgを示した。また、133℃((S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミド水和物形態2の融点は133℃である)での溶融吸熱の不在は、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミドが固体分散製剤中で非晶質であることを示した。
【0038】
[実施例]
[実施例1]
(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミドの固体分散物
[実施例1a]フィルムキャストプロセス
ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルとの、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミド固体分散物のフィルムを、以下の手順に従う溶媒キャスティング技術を介して調製した。
【0039】
工程1:(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミド結晶水和物形態2(HF−2)および粒状ポリマーヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル等級Mを、アセトン中1:3(w/w%)の比(薬物負荷25%)で溶解させ、溶媒を蒸発させた後に、更にあらゆる残留溶媒を除去するためにフィルムキャストを真空乾燥した。
【0040】
工程2:フィルムキャストを破砕/粉砕し、#16メッシュに通して篩分けした。
【0041】
その後、破砕した分散物を、サイズ00の硬ゼラチンカプセル中に充填した。100mgの(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミドおよび300mgのヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルを、カプセル中にロードした。
【0042】
ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルとの固体分散物は、約50mg用量の結晶性HF−2と比較して、2段階溶出研究において、約10倍の暴露増加により溶出を有意に高めた。さらに、DSCデータは、固体分散物の良好な物理的安定性を示し、Tgが約120℃であった。
【0043】
前臨床イヌ薬物動態研究は、フィルムキャスティングを介して調製した固体分散物が、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミド水和物形態2の他の懸濁液ベースの製剤よりも性能が優れていることを示している。
【0044】
表1a
(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミド実施例1a(50mg用量)の前臨床イヌ薬物動態研究の結果
【表5】
【0045】
「HF−2」は、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミド結晶水和物形態2である。「AF」は、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミド非晶質形態である。「HPMCAS」はヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルである。「hg」は手粉砕である。「np」はナノ粒子である。
【0046】
[実施例1b]熱溶融押出プロセス
以下のプロセス条件(約120〜130℃のバレル温度);スクリュー速度:−250rpm、および、バレルについて、25:1 L/D構成、を用いる共回転スクリューによる16mm Leistritz二軸スクリュー押出機を用いて、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミド(薬物)の、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル(pH感度がそれぞれ5.5および6.0であるL等級およびM等級)との熱溶融押出製剤を、25%の薬物負荷にて調製した。
【0047】
(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミド結晶水和物形態2およびヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルを、Turbula混合機内で、1:3の比率(25%の薬物負荷)で混合し、続いてバイブレーションフィーダを用いて、粉末混合物を、Leistritz Nano 16mm二軸スクリュー押出機にフィードした。先に述べた押出条件を用いて、薬物ポリマー混合物を押し出した。押出しに続いて、押出物を液体窒素中で急冷し、粉砕機を用いて粉砕した。破砕した押出物を、サイズ30のメッシュに通した。篩分けした押出物を、Turbula混合機を用いて5分間、押出物の10w/w%の超崩壊剤クロスポビドンと顆粒外に混合した。
【0048】
その後、押出物および崩壊剤の混合物を、サイズ00の硬ゼラチンカプセル中に充填した。100mgの(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミド、300mgのヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル、および40mgのクロスポビドンを、カプセル中にロードした。
【0049】
押出しによって調製した製剤は、薬物の溶出を有意に高めた。2段階溶出試験において、M等級はL等級よりも優れていた。押出物のDSC分析は、約110℃のTgを示す良好な物理的安定性を示した。XRD分析は、結晶性ピークの欠如を示し、このことは、薬物がヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルMおよびヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルLの押出物の双方について非晶質であることを示した。
【0050】
50mg/kg用量での様々な(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミド製剤のイヌPK研究の結果
熱溶融押出しによって調製した製剤は、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミド結晶水和物形態2よりも25〜40倍高い暴露をもたらした。熱溶融押出しによって調製した製剤はまた、薬物の非晶質懸濁液製剤よりも1.6倍高い暴露をもたらした。熱溶融押出製剤の製剤性能は、混合物/懸濁液形態として存在する薬物の(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミド結晶水和物形態2HCL塩に匹敵した。
【0051】
表1b
(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミド実施例1b(50mg用量)の前臨床イヌ薬物動態研究の結果
【表6】
【0052】
「HF−2」は、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミド結晶水和物形態2である。「AF」は、(S)−N−(3−(6−イソプロポキシピリジン−3−イル)−1H−インダゾール−5−イル)−1−(2−(4−(4−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)フェニル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)−2−オキソエチル)−3−(メチルチオ)ピロリジン−3−カルボキサミド非晶質形態である。「HPMCAS L」は、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル等級Lである。「HPMCAS M」は、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル等級Mである。「CV(%)」は、変動係数である。