(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
化合物Aは、10個を超える芳香族環原子を有する縮合アリール基を含まず、かつ、14個を超える芳香族環原子を有する縮合ヘテロアリール基を含まないことを特徴とする、請求項1記載の材料。
ビスマス原子に結合するリガンドL中の基は、カルボン酸基、チオカルボン酸基、カルボキサアミド基およびカルボキシイミド基から選ばれることを特徴とする、請求項6または7記載の材料。
リガンドLは、フッ素化安息香酸誘導体、フッ素化もしくは非フッ素化フェニル酢酸誘導体およびフッ素もしくは非フッ素化酢酸誘導体から選ばれることを特徴とする、請求項8記載の材料。
請求項1〜10何れか1項記載の材料の、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機集積回路、有機電界効果トランジスタ、有機薄膜トランジスタ、有機発光トランジスタ、有機ソーラーセル、有機光学検査素子、有機光受容素子、有機電場消光素子、発光電子化学セルおよび有機レーザーダイオードから選ばれる電子素子での使用。
請求項1〜10何れか1項記載の材料を含む、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機集積回路、有機電界効果トランジスタ、有機薄膜トランジスタ、有機発光トランジスタ、有機ソーラーセル、有機光学検査素子、有機光受容素子、有機電場消光素子、発光電子化学セルもしくは有機レーザーダイオードから選ばれる電子素子。
前記材料を含む層と発光層との間に存在する一以上のさらなる層を持ち、アノードと発光層との間に置かれた正孔輸送層中に前記材料を含むことを特徴とする、請求項15記載の有機エレクトロルミッセンス素子。
正孔を輸送する層(HTL)と正孔を輸送する層と発光層との間の層(EBL)のHOMO準位が、以下の条件を満足することを特徴とする、請求項16記載の有機エレクトロルミッセンス素子。
HOMO(HTL)<=HOMO(EBL)
前記材料を含む層と発光層との間に置かれた一以上の層が、一以上の同一か異なる式(A)の化合物を含むことを特徴とする、請求項16または17記載の有機エレクトロルミッセンス素子。
【技術分野】
【0001】
本願は、定義された式(A)のモノアリールアミンとビスマス錯体を含む材料に関する。本願は、さらに、好ましくは、有機エレクトロルミッセンス素子(OLED)である電子素子の層での前記材料の使用に関する。
【0002】
用語「含む」は、本願の文脈では、さらなる構成成分または工程が存在してよいことを意味すると理解される。不定冠詞「a」は、複数を排除しない。
【0003】
本願の文脈での電子素子は、機能性材料として有機半導体を含む有機電子素子と呼ばれるものを意味すると理解される。
【0004】
有機化合物が機能性材料として使用されるOLEDの構造は、たとえば、US 4539507、US 5151629、EP0676461およびWO98/27136に記載されている。一般的に、用語OLEDは、有機化合物を含む一以上の層を有し、電圧の印加により発光する電子素子を意味すると理解される。
【0005】
電子素子の性能データは、正孔を輸送する機能を有する層(正孔を輸送する層)、たとえば、正孔注入層、正孔輸送層および電子ブロック層に大きく影響される。
【0006】
先行技術は、正孔輸送層のための材料として、モノアリールアミンの使用を開示する。このような、モノアリールアミンは、たとえば、JP 1995/053955、WO 2006/123667、JP 2010/222268、WO 2012/034627、WO 2013/120577、WO 2014/015938およびWO 2014/015935に記載されている。
【0007】
さらに、先行技術は、OLEDの正孔を輸送する層において正孔輸送材料と組み合わせたp-ドーパントの使用を開示している。ここで、p-ドーパントは、主成分に対して副成分として添加されると、その伝導性を著しく増加する化合物を意味すると理解される。
【0008】
先行技術で知られたp-ドーパントは、有機電子受容体化合物、たとえば、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-テトラフルオロキノジメタン(F4TCNQ)である。先行技術は、さらに、p-ドーパントとして、遷移金属カチオンと主属金属カチオンの金属錯体を、たとえば、WO 2011/33023およびWO 2013/182389に開示している。
【0009】
先行技術で知られた正孔輸送材料と先行技術で知られたp-ドーパントは、極めて多種の潜在的な可能性の組み合わせをもたらす。これらの中でも、わずかなものだけが、先行技術で開示されている。ここで、OLEDの正孔輸送層において、p-ドーパントとしての主族金属錯体とテトラアミン、たとえば、2,2',7,7'-テトラ(N-N-ジ-p-トリル)アミノ-9-9-スピロビフルオレンの組み合わせの例に言及される。これは、WO 2013/182389に開示されている。先行技術からのさらなる例は、OLEDの正孔輸送層における、モノアリールアミン、たとえば、トリス-パラ−ビフェニルアミンとF4TCNQとの組み合わせである。これは、WO 2013/135352に開示されている。
【0010】
しかしながら、正孔輸送層にこれらの材料を含むOLEDは、寿命と効率に関して改善の必要性が存在する。
【0011】
適切な電導性と低HOMOエネルギー準位の両者を有するドーパント-正孔輸送材料組み合わせを得ることが可能となるように、低位のHOMOを有する正孔輸送材料、特別には、−5.0〜−5.4eVの範囲内のHOMOを有する正孔輸送材料を効率的にドープすることができるp-ドーパントへのニーズが追加的に存在する。ここで、HOMOエネルギーは、実施例において特別な方法で決定される。適切で好ましい電導性は、10
−4S/m〜10
−3S/mの範囲であり、実施例において特別な方法で決定される。低位のHOMOを有する正孔輸送材料の使用が極めて望まれるが、それは、これが、正孔輸送層と発光層との間に低HOMOを有するさらなる層を挿入する必要性をなくすからである。これは、OLEDのより単純な構築を可能とし、そのためより効率的な製造プロセスを可能とする。さらなる層が、正孔輸送層と発光層との間に挿入される場合には、低HOMOを有する正孔輸送層の所望の場合に、正孔バリアーを回避し、正孔輸送層と発光層との間のHOMOより高くない正孔輸送層のHOMOにより、正孔輸送層と発光層との間の電圧低下を回避することができる。これは、正孔輸送層と、正孔輸送層および発光層との間のさらなる層において、同じ材料を使用することにより可能となる。
【0012】
可視域(VIS領域)で低い吸収だけを有する正孔輸送材料-ドーパント組み合わせに対するニーズが追加的に存在する。先行技術で知られるp-ドーパント、たとえば、NDP−2(Novaled AGから市販されている。)または酸化モリブデンドーパントは、標準的正孔輸送材料と組み合わせると、VIS領域に吸収を有する。VIS領域での顕著な吸収バンドの不在が、極めて望まれるが、それは、VIS領域での吸収が、OLEDの発光特性に影響し、その効率を悪化させるからである。
【0013】
正孔輸送層での使用のためのp-ドーパントと正孔輸送材料の可能な組み合わせの検討において、特定の式(A)のモノアリールアミンとビスマス錯体を含む材料が、寿命と効率に関して、先行技術と比べて優れた数値を与えることが予期せざることに今回見出された。さらに、本発明の材料は、先行技術による材料よりも、OLEDに使用されると、より低い漏洩電流を有する。理論に束縛されるつもりはないが、これは、OLEDのドープ層のより低い側面電導性により引き起こされた可能性がある。より小さくなった表示装置における画素では、漏洩電流は、大きな問題であるが、それらは画素間の混線をもたらし得るからである。したがって、その回避が望ましい。本発明の材料のさらに別の特徴は、VIS領域における低い吸収バンドだけがあることである。さらに別の特徴は、モノアリールアミンの低いHOMO位置のために、本発明の材料を含む正孔輸送層と発光層との間に如何なる追加的な層を持つ必要がなくなることが本発明の材料により可能となり、それゆえ、より効率的な方法で製造することができる。
【0014】
したがって、本願は、式(A)の化合物Aとビスマスの錯体である化合物Pとを含む材料を提供し:
【0015】
【化1】
【0016】
式中:出現する可変部分は、以下のとおりである:
Zは、CR
1であり;
Ar
1は、各場合に同一であるか異なり、1以上のR
1基により置換されてよい6〜30個の芳香族環原子を有する芳香族環構造または1以上のR
1基により置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族環構造であり;
R
1は、各場合に同一であるか異なり、H、D、F、C(=O)R
2、CN、Si(R
2)
3、P(=O)(R
2)
2、OR
2、S(=O)R
2、S(=O)
2R
2、1〜20個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜20個の炭素原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基、2〜20個の炭素原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基、6〜30個の芳香族環原子を有する芳香族環構造および5〜30個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族環構造から選ばれ;ここで、2個以上のR
1基は、互いに結合してよく、環構造を形成してよく;ここで、前記アルキル、アルコキシ、アルケニルおよびアルキニル基と前記芳香族環構造および複素環式芳香族環構造は、夫々、1以上のR
2基により置換されてよく、また、前記アルキル、アルコキシ、アルケニルおよびアルキニル基中の1以上のCH
2基は、-R
2C=CR
2-、-C≡C-、Si(R
2)
2、C=O、C=NR
2、-C(=O)O-、-C(=O)NR
2-、P(=O)(R
2)、-O-、-S-、SOもしくはSO
2で置き代えられてよく、
R
2は、各場合に、同一であるか異なり、H、D、F、CNまたは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、6〜30個の芳香族環原子を有する芳香族環構造および5〜30個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族環構造から選ばれ;ここで、2個以上のR
2基は、互いに結合してとく、環構造を形成してよく、また、前記アルキル基、芳香族環構造および複素環式芳香族環構造は、FまたはCNにより置換されてよい。
【0017】
本発明の文脈での芳香族環構造は、6〜60個の炭素原子を環構造中に含む。それは、芳香族環原子として、如何なるヘテロ原子も含まない。したがって、本発明の文脈での芳香族環構造は、如何なるヘテロアリール基も含まない。本発明の文脈での芳香族環構造は、アリール基のみを必ずしも含む必要はないが、単結合によりまたは一以上の随意に置換されたC、Si、N、OもしくはSのような非芳香族単位により結合もされ得る構造を意味すると理解される。この場合に、非芳香族単位は、好ましくは、H以外の原子を、構造中のH以外の合計原子数に基づいて10%未満含む。たとえば、9,9’-スピロビフルオレン、9,9-ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジアリールエーテルおよびスチルベン等の構造も、2個以上のアリール基が、たとえば、直鎖もしくは環状アルキル基によりまたはシリル基により結合される構造であるから、本発明の文脈での芳香族環構造ともみなされるべきである。さらに、2個以上のアリール基が、単結合を介して互いに結合する構造、たとえば、ビフェニルとテルフェニル等の構造も、本発明の文脈での芳香族環構造とみなされるべきである。
【0018】
本発明の文脈での複素環式芳香族環構造は、5〜60個の芳香族環原子を含み、その中の少なくとも1個はヘテロ原子である。複素環式芳香族環構造のヘテロ原子は、好ましくは、N、Oおよび/またはSから選ばれる。複素環式芳香族環構造は、芳香族環構造の上記定義に対応するが、芳香族環原子の一つとして少なくとも一つのヘテロ原子を有する。こうして、この定義によれば、芳香族環原子として如何なるヘテロ原子を含むことはできない本願の定義の意味での芳香族環構造とは異なる。
【0019】
本発明の文脈でのアリール基は、6〜40個の芳香族環原子を含むが、ヘテロ原子を含まない。本発明の文脈でのアリール基は、単純な芳香族環、すなわち、ベンゼン、または、縮合芳香族多環、たとえば、ナフタレン、フェナントレンもしくはアントラセンの何れかを意味するものと理解される。本願の文脈での縮合芳香族多環は、互いに縮合した2個以上の単純な芳香族環から成る。環間の縮合は、環が互いに少なくとも一つの端部を共有することを意味するものと理解される。
【0020】
本発明の文脈でのヘテロアリール基は、5〜40個の芳香族環原子を含みその中の一つはヘテロ原子である。ヘテロアリールのヘテロ原子は、好ましくは、N、OおよびSから選ばれる。本発明の文脈でのヘテロアリール基は、単純な複素環式芳香族環、たとえば、ピリジン、ピリミジンもしくはチオフェン、または、縮合複素環式芳香族多環、たとえば、キノリンもしくはカルバゾールの何れかを意味するものと理解される。本願の文脈での縮合複素環式芳香族多環は、互いに縮合した2個以上の単純な複素環式芳香族環から成る。環間の縮合は、環が互いに少なくとも一つの端部を共有することを意味するものと理解される。
【0021】
6〜40個の芳香族環原子を含む芳香族環構造または5〜40個の芳香族環原子を含む複素環式芳香族環構造は、特別には、上記アリール基とヘテロアリール基から誘導される基と、ビフェニル、テルフェニル、クアテルフェニル、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、インデノフルオレン、トルクセン、イソトルクセン、スピロトルクセン、スピロイソトルクセン、インデノカルバゾールまたはこれらの基の組み合わせから誘導される基を意味するものと理解される。
【0022】
アリールもしくはヘテロアリール基は、夫々、上記した基により置換されていてもよく、任意の所望の位置を介して、芳香族もしくは複素環式芳香族構造に連結していてもよいが、特別には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ジヒドロピレン、クリセン、ペリレン、トリフェニレン、フルオランテン、ベンズアントラセン、ベンゾフェナントレン、テトラセン、ペンタセン、ベンゾピレン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリドイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、ピラジン、フェナジン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジンおよびベンゾチアジアゾールから誘導される基を意味するものと解される。
【0023】
本発明の文脈では、1〜20個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3〜20個の炭素原子を有する分岐あるいは環状アルキル基、2〜20個の炭素原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基は、個々の水素原子またはCH
2基が、基の定義における前述の基により置き代えられていてもよく、好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、シクロペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、ネオヘキシル、n-ヘプチル、シクロヘプチル、n-オクチル、シクロオクチル、2-エチルヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニルまたはオクチニル基を意味すると理解される。
【0024】
1〜20個の炭素原子を有するアルコキシもしくはチオアルキル基は、個々の水素原子またはCH
2基が、基の定義における前述の基により置き代えられていてもよく、好ましくは、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペントキシ、s-ペントキシ、2-メチルブトキシ、n-ヘキソキシ、シクロヘキシルオキシ、n-ヘプトキシ、シクロヘプチルオキシ、n-オクチルオキシ、シクロオクチルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ、ペンタフルオロエトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシ、メチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、i-プロピルチオ、n-ブチルチオ、i-ブチルチオ、s-ブチルチオ、t-ブチルチオ、n-ペンチルチオ、s-ペンチルチオ、n-ヘキシルチオ、シクロヘキシルチオ、n-ヘプチチオル、シクロヘプチルチオ、n-オクチルチオ、シクロオクチルチオ、2-エチルヘキシルチオ、トリフルオロメチルチオ、ペンタフルオロエチルチオ、2,2,2-トリフルオロエチルチオ、エテニルチオ、プロペニルチオ、ブテニルチオ、ペンテニルチオ、シクロペンテニルチオ、ヘキセニルチオ、シクロヘキセニルチオ、ヘプテニルチオ、シクロヘプテニルチオ、オクテニルチオ、シクロオクテニルチオ、エチニルチオ、プロピニルチオ、ブチニルチオ、ペンチニルチオ、ヘキシニルチオ、ヘプチニルチオまたはオクチニルチオを意味すると理解される。
【0025】
2個以上の基が、一緒に環を形成してもよいという表現は、本願の文脈では、特に、2個の基が、化学結合により互いに結合する意味であると理解されるべきである。しかしながら、さらに、上記言及した表現は、2個の基の1つが水素である場合には、第2の基は、水素原子が結合した位置で結合して環を形成する意味であると理解されるべきである。
【0026】
化合物Aは、好ましくは、低位のHOMO、より好ましくは、−5.0〜−5.4eVの範囲内のHOMO、最も好ましくは、−5.1〜−5.3eVの範囲内のHOMOを有する。
【0027】
化合物Aは、モノアリールアミンである。ここで、モノアリールアミンは、単一で1個を超えないアリールアミノ基を有する化合物の意味であると理解される。本発明によれば、化合物Aは、モノトリアリールアミノ化合物であり、単一のトリアリールアミノ基を有することを意味する。用語「トリアリールアミノ基」は、好ましくは、アミノ窒素原子に結合したヘテロアリール基を含む化合物を意味すると理解される。さらに好ましくは、化合物Aは、単一のアミノ基を有する。本願の定義によれば、カルバゾール基はアリールアミノ基もしくはアミノ基として数えられないことに留意されたい。
【0028】
本発明の好ましい1態様によれば、化合物Aは、10個を超える芳香族環原子を有する縮合アリール基を含まず、かつ、14個を超える芳香族環原子を有する縮合ヘテロアリール基も含まない。
【0029】
A
1は、好ましくは、各場合に同一であるか異なり、1以上のR
1基により置換されてよい6〜24個の芳香族環原子を有する芳香族環構造または1以上のR
1基により置換されてよい5〜240個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族環構造である。
好ましくは、式(A)の化合物において、少なくとも一つのA
1基は、随意に1以上のR
1基により置換されてよい基であり、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、クアテルフェニル、ナフチル、フェナントリル、フルオランテニル、フルオレニル、インデノフルオレニル、スピロビフルオレニル、フラニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ジジベンゾフラニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾチオフェニル、ジベンゾチオフェニル、インドリル、イソインドリル、カルバゾリル、インドロカルバゾリル、インデノカルバゾリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、アクリジル、フェナンスリジル、ベンジイミダゾリル、ピリミジル、ピラジニルおよびトリアジニルから選ばれ、これらの中で特に好ましいものは、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、クアテルフェニル、ナフチル、フェナントリル、フルオランテニル、フルオレニル、インデノフルオレニル、スピロビフルオレニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、カルバゾリル、アクリジルおよびフェナンスリジルである。
【0030】
R
1は、好ましくは、各場合に同一であるか異なり、H、D、F、CN、Si(R
2)
3、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜10個の炭素原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基、6〜40個の芳香族環原子を有する芳香族環構造および5〜40個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族環構造から選ばれ;ここで前記アルキルおよびアルコキシ基、前記芳香族環構造および複素環式芳香族環構造は、夫々、1以上のR
2基により置換されてよく、また、前記アルキルもしくはアルコキシ基中の1以上のCH
2基は、-C≡C-、-R
2C=CR
2-、Si(R
2)
2、C=O、C=NR
2、-O-、-S-、-C(=O)O-もしくは-C(=O)NR
2-で置き代えられてよく、R
1は、より好ましくは、各場合に同一であるか異なり、H、F、CN、1〜8個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜8個の炭素原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基、6〜24個の芳香族環原子を有する芳香族環構造および5〜24個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族環構造から選ばれ;ここで、前記アルキル基、前記芳香族環構造および複素環式芳香族環構造は、夫々、1以上のR
2基により置換されてよい。これらの中で特に好ましいのは、H、F、メチル、エチル、tert-ブチルおよびフェニルである。
【0031】
より好ましくは、式(A)の化合物は、HではないR
1基を含まないか、Hではない丁度1個のR
1基を含むか、またはHではない丁度2個のR
1基を含む。
【0032】
式(A)の化合物において、好ましくは、少なくとも一つのA
1基は、より好ましくは、全A
1基は、各場合に同一であるか異なり、示された置換されない任意の位置で1以上のR
1により置換されてよい以下の基から選ばれる。
【0033】
【化2-1】
【0034】
【化2-2】
【0035】
【化2-3】
【0036】
【化2-4】
【0037】
【化2-5】
【0038】
【化2-6】
【0039】
【化2-7】
【0040】
式Aの化合物の好ましい態様は、以下の化合物である。
【0041】
【化3-1】
【0042】
【化3-2】
【0043】
【化3-3】
【0044】
式(A)の化合物の製造方法は、先行技術で知られている。特に、当業者は、文献WO 2012/034627の開示を参照し得る。
【0045】
化合物Pは、上記言及した定義の意味で、p-ドーパントである。理論に縛られるつもりはないが、化合物Pは、ルイス酸であり、化合物Aと混合されると、化合物Aの錯体を形成すると仮定される。ここで、化合物Aは、ルイス塩基である。理論に縛られるつもりはないが、錯体は、化合物Pのビスマス金属原子と相互作用する化合物Aにおいて、遊離電子により形成される。
【0046】
化合物Pは、単核ビスマス錯体、2核ビスマス錯体または多核ビスマス錯体であってよい。化合物Pは、気相に存在する場合には単核ビスマス錯体であることができ、固相に存在する場合には多核ビスマス錯体であることができる。これは、化合物Pは、状態により
重合するか解重合し得ることを意味する。
【0047】
ビスマス錯体は、好ましくは、(II)、(III)もしくは(V)酸化状態のビスマス錯体である。より好ましくは、(III)酸化状態のビスマス錯体である。
【0048】
好ましくは、ビスマス錯体は、有機化合物である少なくとも一つのリガンドLを有する。リガンドLは、好ましくは、単座、二座および三座リガンドから、より好ましくは、単座リガンドから選ばれる。さらに好ましくは、リガンドLは、負に、好ましくは、3荷、2荷もしくは1荷に負に、より好ましくは、1荷に負に帯電している。
【0049】
ビスマス原子に結合するリガンドLの基は、好ましくは、カルボン酸基、チオカルボン酸基、特に、チオ酸基、チオ酸基と2チオ酸基、カルボキサアミド基およびカルボキシイド基、より好ましくは、カルボン酸基から選ばれる。
【0050】
好ましくは、リガンドLは、以下の式(L−I)、(L−II)、(L−III)および(L−IV)の一つに対応し、
【0051】
【化4】
【0052】
式中
Wは、カルボン酸基、チオカルボン酸基、特に、チオ酸基、チオ酸基と2チオ酸基、カルボキサアミド基およびカルボキシイミド基、より好ましくは、カルボン酸基から選ばれる。
【0053】
Uは、各場合に同一であるか異なり、W基がそこに結合しない場合は、NおよびCR
3から選ばれ、W基がそこに結合する場合は、UはCである。
【0054】
R
3は、各場合に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、NO
2、CF
3、1〜20個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜20個の炭素原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基、2〜20個の炭素原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基、6〜40個の芳香族環原子を有する芳香族環構造および5〜40個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族環構造から選ばれ;ここで、前記アルキル、アルコキシ、アルケニルおよびアルキニル基と前記芳香族環構造および複素環式芳香族環構造は、夫々、1以上のR
4基により置換されてよく、また、前記アルキル、アルコキシ、アルケニルおよびアルキニル基中の1以上のCH
2基は、-R
4C=CR
4-、-C≡C-、Si(R
4)
2、C=O、C=NR
4、-C(=O)O-、-C(=O)NR
4-、P(=O)(R
4)、-O-、-S-、SOもしくはSO
2で置き代えられてよく、および
R
4は、各場合に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、CN、NO
2、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、6〜40個の芳香族環原子を有する芳香族環構造および5〜40個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族環構造から選ばれ;ここで、2個以上のR
4基は、互いに結合してよく、環構造を形成してよく;ここで、前記アルキル基、前記芳香族環構造および複素環式芳香族環構造は、F、Cl、CNおよびNO
2で置換されてよく;および
R
5は、各場合に同一であるか異なり、H、D、F、C(=O)R
4、CN、Si(R
4)
3、P(=O)(R
4)
2、OR
4、S(=O)R
4、S(=O)
2R
4、1〜20個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜20個の炭素原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基、2〜20個の炭素原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基、6〜40個の芳香族環原子を有する芳香族環構造および5〜40個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族環構造から選ばれ;ここで、2個以上のR
5基は、互いに結合してよく、環構造を形成してよく;ここで、前記アルキル、アルコキシ、アルケニルおよびアルキニル基と前記芳香族環構造および複素環式芳香族環構造は、夫々、1以上のR
4基により置換されてよく、また、前記アルキル、アルコキシ、アルケニルおよびアルキニル基中の1以上のCH
2基は、-R
4C=CR
4-、-C≡C-、Si(R
4)
2、C=O、C=NR
4、-C(=O)O-、-C(=O)NR
4-、P(=O)(R
4)、-O-、-S-、SOもしくはSO
2で置き代えられてよく;および
R
6は、各場合に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、NO
2、CF
3、1〜20個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜20個の炭素原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基、2〜20個の炭素原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基、6〜40個の芳香族環原子を有する芳香族環構造および5〜40個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族環構造から選ばれ;ここで、前記アルキル、アルコキシ、アルケニルおよびアルキニル基と前記芳香族環構造および複素環式芳香族環構造は、夫々、1以上のR
4基により置換されてよく、また、前記アルキル、アルコキシ、アルケニルおよびアルキニル基中の1以上のCH
2基は、-R
4C=CR
4-、-C≡C-、Si(R
4)
2、C=O、C=NR
4、-C(=O)O-、-C(=O)NR
4-、P(=O)(R
4)、-O-、-S-、SOもしくはSO
2で置き代えられてよい。
【0055】
好ましくは、式(L−I)〜(L−III)の夫々において、少なくとも一つのR
3基が存在し、F、Cl、Br、I、CN、NO
2と1〜20個の炭素原子を有するアルキル基およびF、Cl、CNおよびNO
2から選ばれる少なくとも一つの置換基から選ばれる。上記基の中で、特に好ましいものは、F、Cl、CNおよびCF
3である。より好ましくは、1、2または3個のこの種のR
6基が存在し、最も好ましくは、3個である。
【0056】
好ましいリガンドLは、フッ素化安息香酸誘導体、フッ素化もしくは非フッ素化フェニル酢酸誘導体およびフッ素もしくは非フッ素化酢酸誘導体から選ばれる。
【0057】
好ましいフッ素化安息香酸誘導体の例は、2-(トリフルオロメチル)安息香酸、3,5-ジフルオロ安息香酸、3-ヒドロキシ-2,4,6-トリヨード安息香酸、3-フルオロ-4-メチル安息香酸、3-(トリフルオロメトキシ)安息香酸、4-(トリフルオロメトキシ)安息香酸、4-クロロ-2,5--ジフルオロ安息香酸、2-クロロ-2,5-ジフルオロ安息香酸、2,4,5-トリフルオロ安息香酸、2-フルオロ安息香酸、4-フルオロ安息香酸、2,3,4-トリフルオロ安息香酸、2,3,5-トリフルオロ安息香酸、2,3-ジフルオロ安息香酸、2,4-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸、2,4-ジフルオロ安息香酸、2,5-ジフルオロ安息香酸、2,6-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸、2,6-ジフルオロ安息香酸、2-クロロ-6-フルオロ安息香酸、2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)安息香酸、2-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)安息香酸、2-フルオロ-6-(トリフルオロメチル)安息香酸、3,4,5-トリフルオロ安息香酸、3,4-ジフルオロ安息香酸、3,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸、3-(トリフルオロメチル)安息香酸、3-クロロ-4-フルオロ安息香酸、3-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)安息香酸、3-フルオロ安息香酸、4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)安息香酸、4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)安息香酸、5-フルオロ-2-メチル安息香酸、2-(トリフルオロメトキシ)安息香酸、2,3,5-トリクロロ安息香酸、4-(トリフルオロメチル)安息香酸、ペンタフルオロ安息香酸および2,3,4,5-テトラフルオロ安息香酸である。
【0058】
フッ素化もしくは非フッ素化フェニル酢酸誘導体の例は、2-フルオロフェニル酢酸、3-フルオロフェニル酢酸、4-フルオロフェニル酢酸、2,3-ジフルオロジフェニル酢酸、2,4-ジフルオロジフェニル酢酸、2,6-ジフルオロジフェニル酢酸、3,4-ジフルオロジフェニル酢酸、3-,5ジフルオロジフェニル酢酸、ペンタフルオロフェニル酢酸、2-クロロ-6-フルオロフェニル酢酸、2-クロロ-3,6-ジフルオロフェニル酢酸、3-クロロ-2,6-ジフルオロフェニル酢酸、3-クロロ-4-フルオロフェニル酢酸、5-クロロ-2-フルオロフェニル酢酸、2,3,4-トリフルオロフェニル酢酸、2,3,5-トリフルオロフェニル酢酸、2,3,6-トリフルオロフェニル酢酸、2,4,5-トリフルオロフェニル酢酸、2,4,6-トリフルオロフェニル酢酸、3,4,5-トリフルオロフェニル酢酸、3-クロロ-2-フルオロフェニル酢酸、6-フルオロフェニル酢酸、4-クロロ-2-フルオロフェニル酢酸、2-クロロ-4-フルオロフェニル酢酸である。
【0059】
フッ素もしくは非フッ素化酢酸誘導体の例は、ジフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、クロロジフルオロ酢酸、(3-クロロフェニル)ジフルオロ酢酸、(3,5-ジクロロフェニル)ジフルオロ酢酸、(4-ブチルフェニル)ジフルオロ酢酸、(4-tert-ブチルフェニル)ジフルオロ酢酸、(3,4-ジメチルフェニル)ジフルオロ酢酸、(3−クロロ-4-フルオロフェニル)ジフルオロ酢酸、(4-クロロフェニル)ジフルオロ酢酸、2-ビフェニル,3',5'-ジフルオロ酢酸、3-ビフェニル,3',5'-ジフルオロ酢酸、4-ビフェニル,3',5'-ジフルオロ酢酸、2-ビフェニル,3',4'-ジフルオロ酢酸、3-ビフェニル,3',4'-ジフルオロ酢酸、4-ビフェニル,3',4'-ジフルオロ酢酸および2,2-ジフルオロプロピオン酸とより高次のそのホモログである。
【0060】
上記リスト中の脱プロトン化形態の上記化合物は、本発明にしたがい、プロトン化形態で存在してもよい。それらは、好ましくは、脱プロトン化形態である。上記リスト中のプロトン化形態の上記化合物は、本発明にしたがい、脱プロトン化形態で存在してもよい。
【0061】
本発明の材料は、さらなる化合物を含んでよい。本質的に丁度1個の化合物Aと丁度1個の化合物Pだけを含むことが好ましい。さらなる化合物が存在する場合には、これらは、好ましくは、式(A)による化合物である。本発明の可能な1態様では、丁度2種の異なる化合物(A)と丁度1種の異なる化合物Pが、本発明の材料中に存在する。
【0062】
化合物Pは、好ましくは、本発明の材料中でドーパントとして存在する。本発明の材料は、0.1〜30%の、より好ましくは、0.5〜25%の、さらにより好ましくは、5〜20%の濃度で、化合物Pを含むことが好ましい。
【0063】
本願の文脈でのパーセントは、気相堆積の場合には体積%を、液相からの適用に場合には重量%を意味するように述べられる。
【0064】
本発明の材料は、好ましくは、薄層の形態で、より好ましくは、電子素子の機能性層の形態である。したがって、本発明は、本発明の材料を含む層、好ましくは、半導体層をも提供する。
【0065】
本発明の材料を含む層は、1〜500nm、より好ましくは、5〜300nm、最も好ましくは、8〜250nmの厚さを有する。以下により詳細に説明されるように、それは、電子素子において、好ましくは、OLEDの正孔輸送層として、好ましくは、使用される。
【0066】
本発明の材料を含む層は、好ましくは、10
−2S/m〜10
−5S/m、より好ましくは、10
−3S/m〜10
−4S/mの特定の電導度を有し、後者は実施例に特定されるとおりに決定される
本発明の材料は、気相から、たとえば、OVPD(有機気相堆積)によって、またはキャリアガス昇華により層の形態に適用することができる。この場合に、材料は、10
−5mbar〜1barの圧力で適用される。この方法の特別な場合は、OVJP(有機蒸気ジェット印刷)法であり、材料はノズルにより直接適用され、それにより構造化される(たとえば、M. S. Arnold et al., Appl. Phys. Lett. 2008, 92, 053301)。代替として材料は、液相から、たとえば、スピンコーティングにより、または、たとえば、スクリーン印刷、フレキソ印刷、ノズル印刷もしくはオフセット印刷などによって、好ましくはLITI(光誘導熱画像化、熱転写印刷)またはインクジェット印刷によって製造することもできる。
【0067】
液相からの、たとえば、上記方法による本発明の化合物の加工のためには、調合物を必要とする。これらの調合物は、たとえば、溶液、分散液もしくはエマルジョンであり得る。この目的のためには、2以上の溶媒の混合物を使用することが好ましい可能性がある。適切で好ましい溶媒は、たとえば、トルエン、アニソール、o-、m-もしくはp-キシレン、メチルベンゾエート、メシチレン、テトラリン、ベラトール、THF、メチル-THF、THP、クロロベンゼン、ジオキサン、フェノキシトルエン、特別に、3-フェノキシトルエン、(-)-フェンコンヌ、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン、1-メチルナフタレン、2-メチルベンゾチアゾール、2-フェノキシエタノール、2-ピロリジノン、3-メチルアニソール、4-メチルアニソール、3,4-ジメチルアニソール、3,5-ジメチルアニソール、アセトフェノン、α-テルピネオール、ベンゾチアゾール、ブチルベンゾエート、クメン、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、シクロヘキシルベンゼン、デカリン、ドデシルベンゼン、エチルベンゾエート、インダン、メチルベンゾエート、NMP、p-シメン、フェネトール、1,4-ジイソプロピルベンゼン、ジベンジルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエ−テル、トリプロピレングリコールジメチルエ−テル、テトラエチレングリコールジメチルエ−テル、2-イソプロピルナフタレン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ヘプチルベンゼン、オクチルベンゼン、1,1-ビス(3,4-ジメチルフェニル)エタンもしくはこれら溶媒の混合物である。
【0068】
したがって、本発明は、さらに、本発明の材料と少なくとも一つの溶媒、好ましくは、有機溶媒を含む調合物、特別には溶液、分散液もしくはエマルジョンを提供する。特別には溶液等のこのような調合物を調製することができる方法は、当業者に知られており、たとえば、WO 2002/072714、WO 2003/019694とそこに引用された文献に記載されている。
【0069】
気相堆積の場合には、化合物Pと化合物Aの両者は、好ましくは、異なる気相堆積源から共蒸発され、層として堆積される。液相からの適用の場合には、化合物Pと化合物Aは、溶媒中に溶解され、次いで、上記印刷技術により適用される。本発明の材料を含む層は、溶媒を蒸発することにより最終的に得られる。
【0070】
したがって、本願は、化合物Aと化合物Pが、共に気相から適用されること、または本発明の材料を含む調合物が、液相から適用されることを特徴とする本発明の材料を含む層の製造方法を提供する。
【0071】
本発明の材料は、電子素子での使用のために適しており、電子素子は、好ましくは、有機エレクトロルミネッセント素子(OLED)、有機集積回路(OIC)、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機薄膜トランジスタ(OTFT)、有機発光トランジスタ(OLET)、有機ソーラーセル(OSC)、有機光学検出器、有機光受容体、有機電場消光素子(OFQD)、発光電気化学セル(OLEC)および有機レーザーダイオード(O−laser)からなる群から選択さる。
【0072】
この材料は、異なる機能に使用されてよい。好ましいのは、正孔輸送層、特別には、正孔注入層、正孔輸送層もしくは励起子ブロック層における材料の使用である。材料の上記記載された使用も、同様に、本発明の主題の部分を形成する。
【0073】
より広義の本願による正孔輸送層は、アノードと発光層との間の正孔を輸送する機能を有する層である。特別には、本願による正孔輸送層は、正孔を輸送する機能を有する層であり、アノードと発光層との間に存在するか、または正孔注入層でもなく、電子ブロック層でもなく励起子ブロック層でもない。
【0074】
本発明は、さらに、本発明の材料を、好ましくは、層の形態で含む電子素子を提供する。電子素子は、好ましくは、上記言及された素子から選ばれる。より好ましくは、電子素子は、少なくとも一つの層が、好ましくは、正孔輸送層が、本発明の材料を含むアノード、カソードと少なくとも1つの発光層を含むOLEDである。
【0075】
カソード、アノードと発光層とは別に、OLEDは、好ましくは、なおさらなる機能層を含む。これらは、たとえば各場合において、1つ以上の正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層、電子ブロック層、励起子ブロック層、中間層、
電荷生成層(IDMC 2003, Taiwan; Session 21 OLED (5), T.Matsumoto, T. Nakada, J.Endo, K. Mori, N. Kawamura, A. Yokoi, J.Kido, 電荷生成層を有するマルチフォトン有機EL素子)および/または有機もしくは無機p/n接合から選ばれる。
【0076】
本発明の材料を含むOLEDの層配列は、好ましくは、以下のとおりである:
−アノード
−正孔注入層
−正孔輸送層
−随意に、さらなる正孔輸送層
−随意に、電子ブロック層
−発光層
−随意に、正孔ブロック層
−電子輸送層
−電子注入層
−カソード。
しかしながら、前記層の全てが必ずしも存在する必要がなく、さらなる層が追加的に存在してもよい。上記層配列において、本発明の材料が、正孔注入層と正孔輸送層から選ばれる一以上の層に、より好ましくは、正孔注入層に存在することが好ましい。
【0077】
特に好ましいのは、以下の層配列である:
−アノード
−正孔注入層
−正孔輸送層
−随意に、電子ブロック層
−発光層
−電子輸送層
−電子注入層
−カソード。
しかしながら、前記層の全てが必ずしも存在する必要がなく、さらなる層が追加的に存在してもよい。上記層配列において、本発明の材料が、正孔注入層と正孔輸送層から選ばれる一以上の層に、より好ましくは、正孔注入層に存在することが好ましい。
【0078】
本発明のOLEDは、複数の発光層を含んでいてもよい。より好ましくは、この場合、これらの発光層は、全体で複数の発光極大380nm〜750nmを有しており、その結果、全体的に白色発光が生じ、すなわち蛍光または燐光を発し、青色、緑色および橙色もしくは赤色発光することができる様々な発光化合物が、発光層において使用される。特別に好ましいのは、三層構造であり、すなわち、青色、緑色および橙色もしくは赤色発光を呈する三層構造(基本構造については、たとえばWO2005/011013参照)である。
【0079】
好ましくは、OLEDは、本発明の材料を含む層と発光層との間に存在する一以上のさらなる層と共に、アノードと発光層との間に置かれた正孔を輸送する層に発明の材料を含む。好ましくは、これらのさらなる層は、正孔輸送層、より好ましくは、電子ブロック層である。言及されたさらなる層は、p-ドープまたは非p-ドープであってよいが、好ましくは、非p-ドープである。
【0080】
本発明の好ましい1態様では、正孔を輸送する層(HTL)と正孔を輸送する層と発光層との間の層(EBL)のHOMO準位が、以下の条件を満足する。
HOMO(HTL)<=HOMO(EBL)
こうして、正孔バリアを回避し、それ故正孔輸送層と発光層との間の電圧低下を回避することができる。これは、たとえば、正孔輸送層と正孔輸送層および発光層との間のさらなる層に同じ材料を使用することにより、有利にも可能である。
【0081】
しかしながら、本発明の材料が、発光層に直接隣接する正孔を輸送する層に置かれることが選好されてもよい。
【0082】
本発明の材料を含む層と発光層との間に置かれた正孔輸送層は、好ましくは、1以上の同一か異なる式(A)の化合物、好ましくは、式(A)の同一の化合物を含む。しかしながら、それらは、他の化合物を含んでもよい。この場合に、前記化合物は、好ましくは、上記定義のとおりのモノアリールアミンから選ばれる。
【0083】
OLEDは、アノードに直接隣接する層に本発明の材料を含むことが、さらに選好される。
【0084】
より好ましくは、本発明のpOLEDは、以下の層構造の一つを含む:
a)アノード--本発明の材料を含む層--電子ブロック層--発光層;
b)アノード--本発明の材料を含む層--正孔輸送層--電子ブロック層--発光層;
c)アノード--本発明の材料を含む第1の層--正孔輸送層--本発明の材料を含む第2の層--電子ブロック層--発光層;
カソード側で好ましくは、発光層に隣接するこれらの層は、これらの位置で上記言及された好ましい層、すなわち、一以上の正孔ブロック層、電子輸送層および電子注入層に対応する。
【0085】
構造a)においては、本発明の材料を含む層と電子ブロック層両者は、式(A)の同じ化合物を含むことができる。構造c)においては、本発明の材料を含む層と正孔輸送層両者は、式(A)の同じ化合物を含むことができ、および/または本発明の材料を含む第2の層と電子ブロック層両者は、式(A)の同じ化合物を含み得る。
【0086】
本発明の材料が、一以上の燐光発光化合物を含むOLEDに使用される場合が選好される。用語「燐光発光化合物」は、典型的には、発光が、スピン禁制遷移、たとえば、励起三重項状態からの、またはより高いスピン量子数を有する状態、たとえば、五重項状態からの遷移により生じる化合物を包含する。
【0087】
適切な燐光発光化合物(=三重項エミッター)は、特別には、適切な励起により、好ましくは、可視域で発光する化合物であり、また、20より大きい、好ましくは、38〜84の、より好ましくは、56〜80の原子番号を有する少なくとも一つの原子を含む。好ましい燐光発光化合物は、銅、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀、金またはユウロピウムを含む化合物、特別には、イリジウム、白金または銅を含む化合物である。本発明の文脈では、すべてのルミネッセントイリジウム、白金または銅錯体が、燐光発光化合物であるとみなされる。
【0088】
上記発光化合物の例は、出願WO 00/70655、WO 01/41512、WO 02/02714、WO 02/15645、EP 1191613、EP 1191612、EP 1191614、WO 05/033244、WO 05/019373およびUS 2005/0258742に見出され得る。一般的には、先行技術による燐光OLEDのために使用され、有機エレクトロルミネッセンス素子分野の当業者に知られるようなすべての燐光錯体が、本発明の素子での使用のために適切である。また、当業者は、発明能力を行使することなく、本発明の材料と組み合わせて、さらなる燐光錯体をOLEDに使用することができるであろう。
【0089】
代替の1態様では、材料は、発光層に蛍光発光化合物を含むOLEDに使用されることが好まれる。好ましくは、発光層は、この場合、蛍光発光化合物として、より好ましくは、ホスト材料と組み合わせて、アリールアミノ化合物を含む。ホスト材料は、この場合に、好ましくは、一以上のアントラセン基を含む化合物から選ばれる。
【0090】
電子素子での異なる機能性材料の好ましい態様は、以後に挙げられる。
【0091】
好ましい燐光発光化合物は、上記言及した化合物である。
【0092】
好ましい蛍光発光化合物は、アリールアミンのクラスから選ばれる。本発明の文脈でのアリールアミンもしくは芳香族アミンは、窒素に直接結合した3個の置換あるいは非置換芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を含む化合物の意味であると理解される。好ましくは、これら芳香族もしくは複素環式芳香族環構造の少なくとも1個は縮合環構造であり、より好ましくは、少なくとも14個の芳香族環原子を有する。これらの好ましい例は、芳香族アントラセンアミン、芳香族アントラセンジアミン、芳香族ピレンアミン、芳香族ピレンジアミン、芳香族クリセンアミンもしくは芳香族クリセンジアミンである。さらに好ましい発光化合物は、たとえば、WO 2006/108497もしくはWO 2006/122630によるインデノフルオレンアミンもしくはインデノフルオレンジアミン、たとえば、WO 2008/006449によるベンゾインデノフルオレンアミンもしくはベンゾインデノフルオレンジアミン、および、たとえば、WO 2007/140847によるジベンゾインデノフルオレンアミンもしくはジベンゾインデノフルオレンジアミンおよび、WO 2010/012328に開示された縮合アリール基を含むインデノフルオレン誘導体である。同様に好ましいのは、WO2012/048780とWO2013/185871に開示されたピレンアリールアミンである。同様に好ましいのは、WO 2014/037077に開示されたベンゾインデノフルオレンアミン、WO 2014/106522に開示されたベンゾフルオレンアミンとWO 2014/111269に開示された拡張ベンゾインデノフルオレンである。
【0093】
好ましくは、蛍光発光化合物のための有用なマトリックス材料は、種々の物質クラスの材料である。好ましいマトリックス材料は、オリゴアリーレン(たとえば、EP 676461による2,2’,7,7’-テトラフェニルスピロビフルオレンもしくはジナフチルアントラセン)、特別に、縮合芳香族基を含むオリゴアリーレン、オリゴアリーレンビニレン(たとえば、DPVBiもしくはEP 676461によるスピロ-DPVBi)、ポリポダル金属錯体(たとえば、WO 2004/081017によるもの)、正孔を伝導する化合物(たとえば、WO 2004/058911によるもの)、電子を伝導する化合物、特別に、ケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシド等(たとえば、WO 2005/084081およびWO 2005/084082によるもの)、アトロプ異性体(たとえば、WO 2006/048268によるもの)、ボロン酸誘導体(たとえば、WO 2006/177052によるもの)またはベンズアントラセン(たとえば、WO2008/145239によるもの)のクラスから選択される。特に好ましいマトリックス材料は、ナフタレン、アントラセン、ベンゾアントラセンおよび/またはピレンを含むオリゴアリーレンもしくはこれら化合物のアトロプ異性体、オリゴアリーレンビニレン、ケトン、ホスフィンオキシドおよびスルホキシドのクラスから選択される。非常に特に好ましいマトリックス材料は、アントラセン、ベンゾアントラセン、ベンゾフェナントレンおよび/またはピレンを含むオリゴアリーレンもしくはこれら化合物のアトロプ異性体のクラスから選択される。本発明の文脈でのオリゴアリーレンは、少なくとも3個のアリールもしくはアリーレン基が互いに結合した化合物の意味であると理解される。
【0094】
燐光発光化合物のための好ましいマトリックス材料は、たとえば、WO 2004/013080、WO 2004/093207、WO 2006/005627もしくはWO 2010/006680による芳香族ケトン、芳香族ホスフィンオキシドまたは芳香族スルホキシドもしくはスルホン、トリアリールアミン、カルバゾール誘導体、たとえば、CBP(N,N-ビスカルバゾリルビフェニル)または、WO 2005/039246、US 2005/0069729、JP 2004/288381、EP1205527もしくはWO2008/086851に開示されたカルバゾール誘導体、たとえば、WO2007/063574もしくはWO2008/056746によるインドロカルバゾール誘導体、たとえば、WO 2010/136109、WO 2011/000455もしくはWO2013/041176によるインデノカルバゾール誘導体、たとえば、EP 1617710、EP 1617711、EP 1731584、JP 2005/347160によるアザカルバゾール誘導体、たとえば、WO 2007/137725によるバイポーラーマトリックス材料、たとえば、WO 2005/111172によるシラン、たとえば、WO2006/117052によるアザボロールもしくはボロン酸エステル、たとえば、WO2010/15306、WO2007/063754もしくはWO2008/056746によるトリアジン誘導体、たとえば、EP652273もしくはWO2009/062578による亜鉛錯体、たとえば、WO2010/054729によるジアザシロール誘導体もしくはテトラアザシロール誘導体、たとえば、WO2010/054730によるジアザホスホール誘導体、たとえば、US 2009/0136779、WO2010/050778、WO2011/042107、WO2011/088877もしくはWO2012/143080WOによる架橋カルバゾール誘導体、たとえば、WO2012/048781による、トリフェニレン誘導体、または、たとえば、WO2011/116865もしくはWO 011/137951によるラクタムである。
【0095】
本発明の電子素子の正孔注入もしくは正孔輸送層もしくは電子ブロック層中で、または電子輸送層中で使用することができる適切な電荷輸送材料は、式(A)の化合物と同様に、たとえば、Y. Shirota et al., Chem. Rev. 2007, 107(4), 953-1010に開示された化合物または先行技術によりこれらの層に使用される他の材料である。
【0096】
本発明の有機エレクトロルミッセンス素子において、正孔輸送、正孔注入もしくは電子ブロック層中で使用することができる好ましい材料の例は、式(A)の化合物と同様に、インデノフルオレンアミン誘導体(たとえば、WO 06/122630もしくはWO06/100896によるもの)、EP1661888に開示されたアミン誘導体、ヘキサアザトリフェニレン誘導体(たとえば、WO 01/049806によるもの)、縮合芳香族環を持つアミン誘導体(たとえば、US5,061,569によるもの)、WO95/09147に開示されたアミン誘導体、モノベンゾインデノフルオレンアミン(たとえば、WO08/006449によるもの)、ジベンゾインデノフルオレンアミン(たとえば、WO 07/140847によるもの)、スピロビフルオレンアミン(たとえば、WO2012/034627およびWO 2013/120577によるもの)、フルオレンアミン(たとえば、WO 2014/015937、 WO 2014/015938およびWO 2014/015935によるもの)、スピロジベンゾピランアミン(たとえば、WO 2013/083216によるもの)およびジヒドロアクリジン誘導体(たとえば、WO 2012/150001によるもの)である。
【0097】
電子輸送層のために使用されることのできる材料は、電子輸送層中で電子輸送材料として先行技術にしたがって使用されるとおりの任意の材料であり得る。特別に適切なものは、アルミニウム錯体、たとえば、Alq
3、ジルコニウム錯体、たとえば、Zrq
4、リチウム錯体、たとえば、Liq、ベンズイミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、キノキサリン誘導体、キノリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、芳香族ケトン、ラクタム、ボラーン、ジアザホスホール誘導体およびホスフィンオキシド誘導体である。
【0098】
電子素子の好ましいカソードは、低仕事関数を有する金属、金属合金、または様々な金属、たとえばアルカリ土類金属、アルカリ金属、主族金属もしくはランタノイド(たとえばCa、Ba、Mg、Al、In、Mg、Yb、Sm等)などを含む多層構造を含む。追加的に適しているのは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属および銀を含む合金、たとえばマグネシウムおよび銀を含む合金である。多層構造の場合、前記金属に加えて、相対的に高い仕事関数を有するさらなる金属、たとえばAgなどを使用してもよく、この場合、Ca/Ag、Mg/AgまたはBa/Agの金属の組合せが、たとえば、一般に使用される。好ましくは、金属カソードと有機半導体の間に、高い比誘電率を有する材料の薄い中間層を導入してもよい。この目的のために有益な材料の例は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属フッ化物であるが、対応する酸化物またはカルボナート(たとえばLiF、Li
2O、BaF
2、MgO、NaF、CsF、Cs
2CO
3等)でもある。この層の層厚は、好ましくは0.5〜5nmである。
【0099】
好ましいアノードは、高い仕事関数を有する材料である。アノードは、好ましくは真空に対して4.5eV超の仕事関数を有する。この目的では、まず、高い酸化還元電位を有する金属、たとえばAg、PtまたはAuなどが適している。他方では、金属/金属酸化物電極(たとえばAl/Ni/NiO
x、Al/PtO
x)も好ましい。いくつかの用途では、有機材料の照射(有機ソーラーセル)または発光(OLED、O−laser)を可能にするために、電極の少なくとも1つは、透明もしくは部分的に透明でなくてはならない。ここで好ましいアノード材料は、導電性の混合金属酸化物である。酸化インジウムスズ(ITO)または酸化インジウム亜鉛(IZO)が、特に好ましい。さらに、ドープされた有機材料、特別にドープされた導電性ポリマーが好ましい。さらに、アノードは、2以上の層、たとえば、ITOの内部層と金属酸化物、好ましくは、酸化タングステンもしくは酸化バナジウムの外部層から成ってもよい。
【0100】
水および空気の損傷作用を排除するために、素子は、適切に構造化され(用途に応じて)、接点が提供され、最後に密封される。
【0101】
好ましい1態様では、電子素子は、1つ以上の層が、昇華法により被覆されることを特徴とする。この場合に、その材料は、10
−5mbar未満、好ましくは10
−6mbar未満の初期圧力において真空昇華ユニットで気相堆積により適用される。しかしながら、この場合に、初期圧力をさらにより低く、たとえば10
−7mbar未満にすることも可能である。気相からの層の適用のための好ましい方法は、さらに説明され、本発明のOLEDでの層の製造のために一般的に適用される。
【0102】
代替の1態様では、電子素子は、1つ以上の層が、溶液から適用されることを特徴とする。溶液からの層の適用のための好ましい方法は、さらに説明され、本発明のOLEDでの層の製造のために一般的に適用される。
【0103】
本発明のOLEDは、表示装置、照明用途の光源と医療および/または美容用途(たとえば、光治療)での光源として使用することができる。
【0104】
例
A)合成
1)BiCの合成
【0105】
【化5】
【0106】
50g(113.56ミリモル)のトリフェニルビスムタン(CAS No.: 603-33-8)と89.40gの3,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸(340.36ミリモル)とを最初に、アルゴン下で不活性化されたフラスコ中に入れ、1lの無水トルエンを添加する。混合物を徐々に80℃に加熱し、次いでこの温度で、さらに12時間撹拌する。その後、混合物を室温に冷却し、保護ガスフリットを通して濾過し、トルエンで三度洗浄し、真空ポンプで脱水させ、次いで、高真空で昇華させる。
【0107】
2)ビスマス トリス(ペンタフルオロ安息香酸)Bi[OOC−C
6F
5]
3(BipFBz=BiC1)の合成
合成を、前述の合成と同じようにして、3,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸ではなく、リガンドとしてペンタフルオロ安息香酸を対応して使用することにより行う。
【0108】
B)導電率の測定
化合物DA1とMA1とを夫々、1体積%〜15体積%の割合の体積で、ドーパントBiCとBipFBz(構造については、以下の表2を参照)の一方と共蒸発する。これにより、異なる層の厚さが生まれる。
【0109】
それによって、層の特定の導電率が測定される。この目的のために、以下の方法を使用する:
ドープされた層の導電率は、フィンガー構造と呼ばれる手段によって測定される。これは、フィンガー様形状をした、2つの噛合構造にされたITO電極を含んでいる。フィンガー電極の間には、厚さdを有する(ドープされた)有機層がある。電極間のギャップ幅は、値Sを有する。供給源とITO電極間の安全マージンは、測定する電流が、ITOフィンガー間の電流の流れから得られることを確実にする。I(U)(電流-電圧特性)は、S(典型的には、数μm)とd(典型的には120nm)の種々の値について測定される。このことから、次式によって、ドープされた層の導電率を明確に決定できる。
【0110】
【数1】
【0111】
金属ドープされた層/ITO構造よりも、この方法の優れた点は、オーミック挙動が広い電圧域にわたり、2つの接触部が同じ材料からなり、よって接触部と有機物との間の電荷キャリア注入のためのバリア高さが、前方および逆方向で同一であることである。特定の導電率について得られた値が、次のホスト/ドーパントの組み合わせ:i)BipFBz(=BiC1):DA1;ii)BipFBz(=BiC1):MA1;iii)BiC:DA1;およびiv)BiC:MA1の各場合について、ドーパントの体積の割合に対して、
図1に示されており、本発明の組合せは、ii)とiv)である。
【0112】
本発明の場合、10
−4S/m〜10
−3S/mの所望の特定の導電率は、5%〜14体積%の広い範囲内で実現されることが分かる。5%〜14体積%の範囲のドーパント濃度は実用的であり、容易に確立されることができる。
【0113】
本発明のBiドーパントBiCとBipFBzの特別な利点は、よって、DA1(HOMO約−4.83eV)のような高位のHOMOを有する正孔輸送材料だけでなく、MA1(HOMO約−5.18eV)のような低位のHOMOを有する正孔輸送材料を、所望の特定の導電率にドープすることができることである(正孔輸送材料MA1を有する前述の組み合わせii)とiv)を参照)。低位のHOMOを有する正孔輸送材料の使用は非常に所望であり、その理由は、これが正孔輸送層と発光層との間に、低いHOMOを有するさらなる層を挿入する必要性をなくすからである。これはOLEDの構造をより簡単にし、よって製造プロセスをより効率的にする。
【0114】
C)本発明のドーパントの吸収特性の測定
B)で特定されたホスト/ドーパントの組み合わせii)とiv)と、先行技術のNDP−2:NHT−5の組み合わせ(2体積%のNDP−2)とを、VIS域でのそれらの吸収について分析する。Biドーパントを含む本発明の組合せは、VIS域では低い吸収のみを有することが分かる。対照的に、先行技術の材料NHT−5とNDP−2の組合せでは、吸収帯は、吸収の最大値が約500nmを有する可視域で観察される。可視域に著しい吸収帯が存在しないことは、本発明の正孔輸送材料とBiドーパントとの組合せの重要な使用利点である。VIS域での吸収は、OLEDの発光特性に影響し、その効率をより悪くする。
【0115】
D)素子の例
以下の例I1〜I4とC1〜C4では、種々のOLEDのデータを提示している。例C1〜C4は先行技術の比較例であり、例I1〜I4は本発明のOLEDのデータを示している。
【0116】
本発明のOLEDと先行技術のOLEDは、WO 2004/058911による一般的な方法で製造され、これはここで説明する状況(層の厚さの変化、材料)に適合している。50nm厚の構造化されたITO(インジウム錫酸化物)で被覆されたガラス薄板は、OLEDのための基板である。基板を湿式洗浄にかけ(洗浄機、Merck Extran洗浄剤)、次いで、250℃で15分間ベークし、被覆前に酸素プラズマで処理する。
【0117】
種々の層を、事前処理された基板に適用する:最初に、正孔輸送層(HTL1)/第2の正孔輸送層(HTL2)/随意に、第3の正孔輸送層(HTL3)/発光層(EML)/電子輸送層(ETL)/電子注入層(EIL)および最後に100nm厚のアルミニウムカソード。OLEDの正確な構造を、表1に見ることができる。OLEDの製造に使用される材料を、表2に示す。
【0118】
すべての材料は、真空室において、熱気相堆積により適用される。この場合、発光層は、常に、少なくとも一種のマトリックス材料と、共蒸発により特定の体積割合で一種または複数種のマトリックス材料に添加される発光化合物とから成る。ここでは、M1:D1(95%:5%)のような形で与えられている詳細は、材料M1が95体積%の割合で層中に存在し、D1が5体積%の割合で層中に存在することを意味する。同じように、電子輸送層も、二種の材料の混合物から成ってもよい。
【0119】
OLEDは、標準方法で特性決定される。この目的のために、エレクトロルミネセンススペクトル、ランベルト放射特性を仮定して、電流/電圧/輝度特性線(IUL特性線)から計算した、輝度の関数としての外部量子効率(EQE、パーセントで測定)および寿命が測定される。エレクトロルミネセンススペクトルは、輝度1000cd/m
2で測定され、CIE1931xおよびy色座標はそこから計算される。寿命LT80は、一定の電流密度で動作する間に、輝度が開始輝度から、開始値の80%に低下するまでの時間として定義される。
【0120】
【表1】
【0121】
【表2-1】
【0122】
【表2-2】
【0123】
いくつかの例を、本発明のOLEDの優位性を証明するために、以下により詳細に説明する。
【0124】
例1:
本発明の試料I1を比較試料C1と比較する。前者は、これがHTL1およびHTL2で、p−ドーパントF4TCNQではなく、p−ドーパントBiCを含む点で、C1と異なる。I1とC1との比較は、本願の試料ジオメトリーおよび2×2mm
2の画素サイズの1.6E−4mA/cm
2と比べて、1Vの印加電圧で、7.9E−6mA/cm
2という、非常により低いリーク電流を示している。リーク電流は、OLEDの有機層を通って流れない、アノードとカソードとの間を流れる電流を意味すると理解される。それらの原因の一つは、OLEDのp−ドープされた層における高い側方導電率であり得る。リーク電流は、画素間でクロストークを生じる可能性があるので、表示装置での画素サイズの減少では大きな問題である。
【0125】
例2:
本発明の試料I2を比較試料C2と比較する。前者は、これがHTL1で、p−ドーパントF4TCNQではなく、p−ドーパントBiCを含む点で、C2と異なる。I2とC2との比較は、10mA/cm
2における3.8Vの2つの試料の比較電圧を示している。しかし、効率は、比較試料C2(10mA/cm
2における8.5%のEQE)と比べて、I2(10mA/cm
2における8.9%のEQE)の場合では非常に高い。2つの試料の寿命は、60mA/cm
2におけるLT80で約300時間である。
【0126】
例3:
本発明の試料I4を比較試料C3およびC4と比較する。前者は、これがHTLの材料として式(A)の特定の化合物を含み、先行技術から知られている正孔輸送化合物を含まない点で、C3およびC4と異なる。p−ドーパントBiCは常に、存在する2つの正孔輸送層の第1の層で使用される。本発明の試料I4は、比較試料C3およびC4と比べて、類似の電圧値では、より良好な寿命と効率を有する(表3)。
【0127】
【表3】
【0128】
例は、OLEDにおける正孔輸送材料として、ビスマス錯体と式(A)の化合物とを組み合わせた本発明の優位性を示している。これらを限定として解釈すべきではない。この本発明の組み合わせの優位性は、特許請求の範囲に定義されている材料の組み合わせの全範囲にわたるものである。
【0129】
E)軌道エネルギー決定のための量子化学計算
材料のHOMOおよびLUMOのエネルギーを、量子化学計算によって決定する。本願の場合、ソフトウエアパッケージ「ガウシアン09、」、改訂D.01」(Gaussian Inc.)を使用する。金属を含まない有機物質を計算するために( “org”法と呼ばれる)、最初に、電荷0およびマルチプリシティ1による、準実験的方法AM1(ガウシアンインプットライン“#AM1 opt”)によって、幾何学的な最適化を実施する。
【0130】
続いて幾何学的な最適化を基準にして、電子基底状態および三重項準位についての一点エネルギー計算を実施する。これは、6−31G(d)ベースセット(ガウシアンインプットライン"# B3PW91/6-31G(d)td=(50-50,nstates=4)")とともにTDDFT(時間依存密度汎関数法)B3PW91を使用して行われる(電荷0、マルチプリシティ1)。有機金属化合物(“M-org”法と呼ばれる)に対しては、ジオメトリーは、ハートリー-フォック法およびLanL2MBベースセット(ガウシアンインプットライン"# HF/LanL2MB opt")(電荷0、マルチプリシティ1)によって最適化される。エネルギー計算は、前述したように有機物質と同じように実行されるが、「LanL2DZ」ベースセットが金属原子のために使用され、「6−31G(d)」ベースセットがリガンドのために使用されるという違いがある(ガウシアンインプットライン"#B3PW91/gen pseudo=lanl2 td=(50-50,nstates=4)")。エネルギー計算から、ハートリー単位で、2つの電子により占有される最後の軌道としてHOMO(アルファocc.固有値)と、ハートリー単位で、最初に占有されなかった軌道としてLUMO(アルファvirt.固有値)とが得られ、ここではHEhとLEhは、それぞれハートリー単位のHOMOエネルギーと、ハートリー単位のLUMOエネルギーとを表している。これは、以下のように、サイクリックボルタンメトリ測定によって較正された、電子ボルトでのHOMOおよびLUMO値を計算するために使用される:
HOMO(eV)=((HEh
*27.212)−0.9899)/1.1206
LUMO(eV)=((LEh
*27.212)−2.0041)/1.385
これらの値は、本願の文脈においては、材料のHOMOおよびLUMOとみなされるべきである。
【0131】
ここに記載された方法は、使用されるソフトウエアパッケージとは独立しており、常に同じ結果を与える。この目的のためによく利用されるプログラムの例は、「ガウシアン09 (Gaussian Inc.)とQ-Chem 4.1 (Q-Chem, Inc.)」である。本願の場合、ソフトウエアパッケージ「ガウシアン09、改訂D.01」を使用して、エネルギーを計算する。