【実施例】
【0040】
  以下、図面を参照しながら、情報出力装置、情報出力方法及びコンピュータプログラムの実施例について説明する。尚、以下では、本発明の情報出力装置、情報出力方法及びコンピュータプログラムが、被験者900の自律神経機能を評価する評価装置10を備える評価システム1に適用された実施例について説明を進める。但し、本発明の情報出力装置、情報出力方法及びコンピュータプログラムは、自律神経機能とは異なる被験者900の生体機能を評価する任意の評価装置に適用されてもよい。或いは、本発明の情報出力装置、情報出力方法及びコンピュータプログラムは、自律神経機能又は生体機能を評価に寄与する任意の情報を出力する任意の情報出力装置に適用されてもよい。
【0041】
  (1)評価システム1の構成
  図1を参照して、本実施例の評価システム1の構成について説明する。
図1は、本実施例の評価システム1の構成を示すブロック図である。
【0042】
  図1に示すように、評価システム1は、人間等の被験者900の自律神経機能を評価するための評価試験を行うシステムである。評価システム1は、評価装置10と、血流計20と、ディスプレイ30と、入力機器40とを備える。
【0043】
  評価装置10は、制御部11と、取得部12と、指示部13と、評価部14とを備えている。尚、制御部11、取得部12、指示部13及び評価部14は、例えば専用のICチップ等によって物理的に実現されてもよい。或いは、制御部11、「第1取得部」の一具体例である取得部12、指示部13及び評価部14は、例えば、CPU(Central  Processing  Unit)上で動作するソフトウェアによって論理的に実現されてもよい。
【0044】
  制御部11は評価装置10全体の動作を制御する。
【0045】
  取得部12は、血流計20が出力する被験者900の血流情報を取得する。血流情報は、被験者900の血流量を示す情報である。例えば、血流情報は、血流量の時間波形(つまり、血流量の推移(言い換えれば、血流量の時間的な変化)を示す血流波形)を示す情報含んでいる。
【0046】
  指示部13は、評価装置10によって自律神経機能が評価される被験者900に対して、所望の指示を出力する。本実施例では、指示部13は、所望の指示を、ディスプレイ30上に表示される画像(例えば、所望の指示を文字や図形等で示す画像)として出力する。但し、指示部13は、所望の指示を、その他の態様で出力してもよい。例えば、指示部13は、所望の指示を、スピーカから出力される音声(例えば、所望の指示を通知する音声等)として出力してもよい。
【0047】
  評価部14は、取得部12が取得する血流情報に基づいて、被験者900の自律神経機能を評価する。評価部14は、その内部に物理的に又は論理的に実現される処理ブロックとして、「出力部」の一具体例であるガイド線出力部141と、「第2取得部」の一具体例であるガイド線調整部142と、パラメータ演算部143と、「評価部」及び「出力部」の一具体例である評価結果出力部144とを備える。
【0048】
  ガイド線出力部141は、取得部12が取得した血流情報をディスプレイ30に出力する。その結果、ディスプレイ30は、血流情報が示す血流量の時間波形を表示する。加えて、ガイド線出力部141は、ガイド線IPを示すガイド情報をディスプレイ30に出力する。その結果、ディスプレイ30は、ガイド情報が示すガイド線IPを、血流量の時間波形に重ねて表示する。
【0049】
  ガイド線IPは、血流情報(或いは、血流量の時間波形)を特定可能な変数に関連するガイド線である。例えば、血流量の時間波形は、通常、時間という変数及び血流量という変数によって特定可能である。このため、ガイド線IPは、時間に関連するガイド線を含んでいてもよい。例えば、ガイド線IPは、血流量の時間波形上で所望の時間を指し示すガイド線を含んでいてもよい。例えば、ガイド線IPは、血流量の時間波形が所望の条件を満たす所望の時間を指し示すガイド線を含んでいてもよい。或いは、ガイド線IPは、血流量に関連するガイド線を含んでいてもよい。例えば、ガイド線IPは、血流量の時間波形上で所望の血流量を指し示すガイド線であってもよい。
【0050】
  ガイド線IPは、血流情報に基づいて自律神経機能を評価するために評価部14によって参照される。例えば、評価部14は、血流量の時間波形のうちガイド線IPに対応する波形部分(言い換えれば、ガイド線IPが指し示す波形部分によって特定される血流量)に基づいて、自律神経機能を評価する。
【0051】
  ガイド線調整部142は、評価システム1のユーザ(例えば、医師等の医療従事者又は被験者900等)の操作に基づいて、ガイド線IPを調整する。具体的には、例えば、ガイド線IPが時間に関連するガイド線を含んでいる場合には、ガイド線調整部142は、ガイド線IPが指し示す所望の時間を調整してもよい。例えば、ガイド線IPが血流量に関連するガイド線を含んでいる場合には、ガイド線調整部142は、ガイド線IPが指し示す所望の血流量を調整してもよい。
【0052】
  パラメータ演算部143は、取得部12が取得する血流情報及びガイド線出力部141が出力するガイド線情報に基づいて、自律神経機能を評価するために用いられる評価パラメータを算出する。つまり、パラメータ演算部143は、血流情報のうちガイド線IPに対応する情報部分(例えば、血流量の時間波形のうちガイド線IPに対応する波形部分)に基づいて、評価パラメータを算出する。
【0053】
  評価結果出力部144は、パラメータ演算部143が算出した評価パラメータに基づいて、被験者900の自律神経機能を評価する。加えて、評価結果出力部144は、被験者900の自律神経機能の評価結果を出力する。本実施例では、評価結果出力部144は、自律神経機能の評価結果を、ディスプレイ30上に表示される画像(例えば、自律神経機能の評価の結果を文字や図形等で示す画像)として出力する。但し、評価結果出力部144は、自律神経機能の評価結果を、その他の態様(例えば、音声等)で出力してもよい。
【0054】
  血流計20は、被験者900の血流量を検出する。血流計20は、被験者900の頭部の血流量(或いは、頭部の近傍にある血管の血流量)を検出することが好ましい。血流計20は、被験者900に装着される。血流計20は、当該検出した血流量を示す血流情報を評価装置10(特に、取得部12)に出力する。血流計20としては、例えばレーザードップラーフローメトリー法を用いて血流波形を検出するレーザー血流計が一例としてあげられる。
【0055】
  ディスプレイ30は、所望の画像を表示する装置である。例えば、本実施例では、ディスプレイ30は、評価システム1の動作状態を示すための画像(言い換えれば、画面)や、指示部13から出力される所望の指示を示す画像(画面)や、評価結果出力部144から出力される自律神経機能の評価の結果を示す画像(画面)等を表示する。
【0056】
  入力機器40は、ユーザの操作を受け付ける。例えば、入力機器40は、ディスプレイ30の表示画面に重ねて設置される又はディスプレイ30の表示画面と一体化されるタッチパネルであってもよい。或いは、入力機器40は、ユーザの操作を受け付ける任意の機器(例えば、キーボードやマウスやタッチパッド等)であってもよい。以下では、説明の便宜上、入力機器40は、タッチパネルであるものとする。
【0057】
  (2)評価装置10の動作
  続いて、
図2及び
図3を参照して、本実施例の評価装置10の動作の流れについて説明する。
図2は、本実施例の評価装置10の動作の流れを示すフローチャートである。
図3は、評価試験が行われている期間中に評価装置10の制御下でディスプレイ30が表示する表示ウインドウ31を示す平面図である。
【0058】
  図2に示すように、自律神経機能の評価試験が開始される前であっても、血流計20が血流情報を出力している場合には、取得部12は、血流情報を取得してもよい(ステップS11)。評価試験が開始される前に取得された血流情報は、後に詳述する評価部14が評価パラメータを算出する際に評価部14によって参照されてもよい。尚、ステップS11の動作は、必ずしも行われなくともよい。
【0059】
  その後、制御部11は、評価試験の開始を指示する開始操作が、評価システム1のユーザによって行われたか否かを判定する(ステップS12)。ユーザは、ディスプレイ30が表示する表示ウインドウ31を参照しながら、入力機器40を用いて開始操作を行う。表示ウインドウ31は、
図3に示すように、指示ボタン領域311を含む。指示ボタン領域311には、評価試験の開始を指示するためにユーザによって押下される開始ボタン311aが表示されている。
【0060】
  ステップS12の判定の結果、評価試験の開始を指示する操作が行われていないと判定される場合には(ステップS12:No)、ステップS11の動作が繰り返される。つまり、評価試験の開始の指示が行われるまでは、評価装置10は実質的に待機することになる。
【0061】
  他方で、ステップS12の判定の結果、評価試験の開始を指示する操作が行われたと判定される場合には(ステップS12:Yes)、続いて、指示部13は、座位開始時刻Taに座位姿勢をとると共にその後第1維持時間だけ(或いは、第1維持時間以上)座位姿勢を維持し続けることを被験者900に指示するための姿勢統制指示を出力する(ステップS13)。その結果、被験者900は、姿勢統制指示に従って、座位開始時刻Taに座位姿勢をとると共に、座位姿勢を第1維持時間以上維持する。尚、「座位姿勢」の一例として、椅子等の器具に被験者900が座っている姿勢があげられる。「座位姿勢」の他の一例として、被験者900の体重を折り曲げた足で支えるように被験者900が座っている姿勢(言い換えれば、しゃがみこんでいる姿勢)があげられる。「座位姿勢」の他の一例として、足を折り曲げた状態で椅子等の器具に被験者900が座っている姿勢があげられる。
【0062】
  指示部13は、表示ウインドウ31を用いて、ステップS13の姿勢統制指示を出力する。表示ウインドウ31は、
図3に示すように、姿勢統制領域312を含む。姿勢統制領域312には、第1維持時間(
図3に示す例では、YY秒)だけ座位姿勢を維持し続けることを被験者900に指示する指示ボックス312aが表示される。指示部13は、座位開始時刻Taの到来と共に指示ボックス312aを強調表示するようにディスプレイ30を表示する。その結果、被験者900は、指示ボックス312aが強調表示されたタイミングで、座位姿勢をとると共に、指示ボックス312aに表示された第1維持時間だけ座位姿勢を維持し続ける。
【0063】
  その後、制御部11は、座位開始時刻Taを起点として、第1維持時間が経過したか否かを判定する(ステップS14)。つまり、制御部11は、被験者900が第1維持時間以上座位姿勢を維持し続けたか否かを判定する。
【0064】
  ここで、後に詳述するように、本実施例では、被験者900が座位姿勢から立位姿勢に移行した後の血流量の変化の態様に基づいて、被験者900の自律神経機能が評価される。従って、高精度な(言い換えれば、信頼性の高い)評価を行うという観点からは、立位姿勢に移行する直前の被験者900の血流量は、十分に安定している(言い換えれば、変動が少ない)ことが好ましい。つまり、立位姿勢に移行する直前の被験者体900の血流量には、座位姿勢を取る前の被験者900の活動状況(例えば、運動状況)に起因したノイズ成分が重畳されていないことが好ましい。このため、第1維持時間は、被験者900の血流量が十分に安定するようになるまでに必要な時間に応じて設定されることが好ましい。あるいは、立位姿勢に移行する直前の座位姿勢を、足を台座に乗せる姿勢やしゃがむ姿勢とする場合は、被験者900は、その姿勢をとる以前に座位姿勢にて所定時間の安静を行った後に足を台座に乗せる姿勢やしゃがむ姿勢をとり、立位姿勢に移行することが好ましい。
【0065】
  ステップS14の判定の結果、第1維持時間が経過していないと判定される場合には(ステップS14:No)、評価装置10は、第1維持時間が経過するまで待機する。従って、被験者900は、座位姿勢を維持し続ける。
【0066】
  他方で、ステップS14の判定の結果、第1維持時間が経過したと判定される場合には(ステップS14:Yes)、指示部13は、立位開始時刻Tsに座位姿勢から立位姿勢に移行すると共にその後第2維持時間だけ(或いは、第2維持時間以上)立位姿勢を維持し続けることを被験者900に指示するための姿勢統制指示を出力する(ステップS15)。その結果、被験者900は、姿勢統制指示に従って、立位開始時刻Tsに座位姿勢から立位姿勢に移行すると共に、立位姿勢を第2維持時間以上維持する。尚、「立位姿勢」の一例として、被験者900が足を概ね伸ばした状態で立っている姿勢又は立ち上がった姿勢(つまり、足を概ね延ばした状態で被験者900の体重を足で支えている姿勢)があげられる。
【0067】
  このとき、被験者900は、被験者900自身の筋肉を使用することで立ち上がる能動起立を行うことで、座位姿勢から立位姿勢に移行してもよい。或いは、被験者900は、例えば他者の力を借りて立ち上がる受動起立(例えば、電動ベッドに寝ている被験者900が、電動ベッドが自動的に起き上がる力を借りて立ち上がる受動起立やヘッドアップチルトを用いた受動起立等)を行うことで、座位姿勢から立位姿勢に移行してもよい。
【0068】
  指示部13は、表示ウインドウ31を表示することで、ステップS15の姿勢統制指示を出力する。表示ウインドウ31は、
図3に示すように、姿勢統制領域312を含む。姿勢統制領域312には、第2維持時間(
図3に示す例では、ZZ秒)だけ立位姿勢を維持し続けることを被験者900に指示する指示ボックス312bが表示される。指示部13は、立位開始時刻Tsの到来と共に(言い換えれば、第1維持時間の経過と共に)指示ボックス312bを強調表示するようにディスプレイ30を表示する。その結果、被験者900は、指示ボックス312bが強調表示されたタイミングで、座位姿勢から立位姿勢に移行すると共に、指示ボックス312bに表示された第2維持時間だけ立位姿勢を維持し続ける。
【0069】
  その後、制御部11は、立位開始時刻Tsを起点として、第2維持時間が経過したか否かを判定する(ステップS16)。つまり、制御部11は、被験者900が第2維持時間以上立位姿勢を維持し続けたか否かを判定する。
【0070】
  ここで、後に詳述するように、本実施例では、被験者900が立位姿勢に移行することで減少した血流量が回復する態様に基づいて、被験者900の自律神経機能が評価される。具体的には、立位開始時刻Tsから被験者900が立位姿勢に移行することで減少した血流量が立位姿勢に移行する前の所定期間中の血流量の平均値Fave(或いは、任意の所定量)にまで回復した回復時刻Tr(或いは、所定のカットオフ時刻Tc)までの間の血流量の変化の態様に基づいて、被験者900の自律神経機能が評価される。従って、第2維持時間は、立位開始時刻Tsから回復時刻Tr(或いは、カットオフ時刻Tc)までの間の時間よりも長いことが好ましい。
【0071】
  ステップS16の判定の結果、第2維持時間が経過していないと判定される場合には(ステップS16:No)、評価装置10は、第2維持時間が経過するまで待機する。従って、被験者900は、立位姿勢を維持し続ける。
【0072】
  他方で、ステップS16の判定の結果、第2維持時間が経過したと判定される場合には(ステップS16:Yes)、パラメータ演算部143は、ステップS13からステップS16の動作が行われている間に取得部12によって取得された血流情報に基づいて、自律神経機能を評価するために用いられる評価パラメータを算出する(ステップS18)。尚、ステップS19においてパラメータ演算部143によって評価パラメータが算出されることを考慮すれば、
図2では明示的に記載していないものの、取得部12は、ステップS13からステップS16の動作が行われている間も血流情報を取得する。
【0073】
  本実施例では、パラメータ演算部143は、「回復時間T」という第1の評価パラメータ及び「回復率R」という第2の評価パラメータを算出する。回復時間Tは、立位開始時刻Tsから回復時刻Trまでの時間(つまり、被験者900が立位姿勢に移行したことで減少した血流量が平均値Faveにまで回復するために要する時間)である。回復率Rは、被験者900が立位姿勢に移行したことに起因した血流量の減少量ΔFに対する回復量ΔFRの比率を示す。但し、パラメータ演算部143は、回復時間T及び回復率Rの少なくとも一方に加えて又は代えて、任意の評価パラメータを算出してもよい。
【0074】
  ここで、
図4(a)から
図4(c)を参照しながら、「回復時間T」という第1の評価パラメータ及び「回復率R」という第2の評価パラメータを、ステップS13からステップS16の動作が行われている間に取得部12によって取得される血流情報が示す血流量の一例と共に説明する。
図4(a)から
図4(c)は、夫々、「回復時間T」という第1の評価パラメータ及び「回復率R」という第2の評価パラメータを、血流情報が示す血流量の時間波形と共に示すグラフである。
【0075】
  図4(a)は、被験者900が立位姿勢に移行することで減少した血流量が立位姿勢に移行する前の所定期間中の血流量の平均値Faveにまで回復するために要する時間が相対的に短い場合に取得される血流情報(血流量の時間波形)を示す。このような血流情報は、被験者900が健常者である(つまり、被験者900の自律神経機能が悪化していない)場合に取得される。
図4(a)に示すように、被験者900が座位姿勢から立位姿勢に移行すると、血流量は減少する。なぜならば、立位姿勢への移行時に重力による血液の下方シフトが生じるからであり、また、被験者900が座位姿勢をとっている間に生じていた足関節の曲げ等による血管の圧迫が、被験者900が立位姿勢に移行することで解消されるからである。従って、被験者900の姿勢が座位姿勢から立位姿勢に移行するという動作(状態変化)は、被験者900の血流量を変化させるための状態変化の一例に相当する。その後、被験者900の血圧調整機能に起因して、血流量は再び増加していく。その結果、血流量は、平均値Faveにまで回復する。
図4(a)に示す血流量の時間波形は、通常回復型の時間波形に分類される。尚、被験者900が健常者である場合には、立位開始時刻Tsから回復時刻Trまでの間の期間の長さは、概ね十数秒程度になる。
【0076】
  尚、
図4(a)では、説明の便宜上、立位姿勢に移行する前の所定期間中の血流量の平均値Faveが、被験者900が座位姿勢をとっている所定期間中の血流量の平均値Faveであるものとする。以下の説明においても同様である。但し、上述したように立位姿勢に移行する直前の座位姿勢を、足を台座に乗せる姿勢やしゃがむ姿勢とする場合は、平均値Faveは、足を台座に乗せる姿勢やしゃがむ姿勢を被験者900がとっている所定期間中の血流量の平均値Faveであってもよい。
【0077】
  図4(b)は、被験者900が立位姿勢に移行することで減少した血流量が平均値Faveにまで回復するために要する時間が相対的に長い場合に取得される血流情報(血流量の時間波形)を示す。このような血流情報は、被験者900の自律神経機能が悪化している場合に取得される。
図4(b)に示すように、被験者900が座位姿勢から立位姿勢に移行すると、血流量は減少する。その後、被験者900の血圧調整機能に起因して、血流量は再び増加していく。しかしながら、自律神経機能の悪化に起因して血圧調整機能もまた悪化しているがゆえに、血流量が増加していく速度は、被験者900が健常者である場合に血流量が増加していく速度よりも遅い。従って、被験者900の自律神経機能が悪化している場合に血流量が平均値Faveにまで回復するために要する時間は、被験者900が健常者である場合に血流量が平均値Faveにまで回復するために要する時間よりも長くなる。
図4(b)に示す血流量の時間波形は、回復遅延型の時間波形に分類される。
【0078】
  図4(c)は、被験者900が立位姿勢に移行することで減少した血流量が所定時間(例えば、30秒から60秒の範囲内の任意の時間)以内に平均値Faveにまで回復しない場合に取得される血流情報(血流量の時間波形)を示す。このような血流情報は、被験者900の自律神経機能が悪化している場合に取得される。
図4(c)に示すように、被験者900が座位姿勢から立位姿勢に移行すると、血流量は減少する。その後、被験者900の血圧調整機能に起因して、血流量は再び増加していく。しかしながら、自律神経機能の悪化に起因して血圧調整機能もまた悪化しているがゆえに、血流量が増加していく速度は、被験者900が健常者である場合に血流量が増加していく速度よりも遅い。その結果、
図4(c)に示す例では、血流量は、立位開始時刻Tsから所定時間以内に(
図4(c)に示す例では、カットオフ時刻Tc以前に)平均値Faveにまで回復することはない。
図4(c)に示す血流量の時間波形は、不完全回復型の時間波形に分類される。
【0079】
  尚、カットオフ時刻Tcは、自律神経機能が悪化している被験者900が立位姿勢に移行してから当該被験者900の血流量が平均値Faveにまで回復するために要した時間に基づいて設定されることが好ましい。例えば、自律神経機能が悪化している複数の被験者900を対象に立位姿勢に移行してから血流量が平均値Faveにまで回復するために要した時間が計測され、当該計測された時間の平均値が算出され、立位開始時刻Tsから当該算出された平均値に相当する時間だけ進んだ時刻がカットオフ時刻Tcに設定されてもよい。或いは、例えば、立位開始時刻Tsから当該算出された平均値に対して所定のマージン(例えば、当該算出された平均値の標準偏差に基づいて算出されるマージン)を加算若しくは減算することで得られる値に相当する時間だけ進んだ時刻がカットオフ時刻Tcに設定されてもよい。或いは、例えば、立位開始時刻Tsから当該算出された平均値に対して所定の係数を掛け合わせることで得られる値に相当する時間だけ進んだ時刻がカットオフ時刻Tcに設定されてもよい。
【0080】
  このような血流量の時間波形に基づいて回復時間Tを算出するために、パラメータ演算部143は、立位開始時刻Ts及び回復時刻Trを算出する。具体的には、パラメータ演算部143は、指示部13が出力する姿勢統制指示に基づいて、立位開始時刻Tsを算出する。更に、パラメータ演算部143は、立位開始時刻Tsよりも後において血流量が平均値Faveと一致した時刻を算出すると共に、当該算出した時刻を回復時刻Trとして設定する。その後、パラメータ演算部143は、回復時間T=回復時刻Tr−立位開始時刻Tsという数式を用いて、回復時間Tを算出する。但し、血流量の時間波形が不完全回復型の時間波形である場合には、パラメータ演算部143は、回復時刻Trを算出することができない。この場合には、パラメータ演算部143は、回復時間Tが算出不可能であると取り扱ってもよい。
【0081】
  更に、このような血流量の時間波形に基づいて回復率Rを算出するために、パラメータ演算部143は、被験者900が立位姿勢に移行する前の所定期間中の血流量の平均値Faveを算出する。更に、パラメータ演算部143は、被験者900が立位姿勢に移行した後の血流量の最小値Fminを算出する。例えば、パラメータ演算部143は、血流量の微分結果がマイナスからプラスに変化する時刻を、最小時刻Tminとして算出する。更に、パラメータ演算部143は、当該算出した最小時刻Tminにおける血流量を最小値Fminとして算出する。その後、パラメータ演算部143は、減少量ΔF=平均値Fave−最小値Fminという数式を用いて、減少量ΔFを算出する。更に、パラメータ演算部143は、回復時刻Trを算出する。更に、パラメータ演算部143は、当該算出した回復時刻Trにおける血流量を回復値Frとして算出する。その後、パラメータ演算部143は、回復量ΔFR=回復値Fr−最小値Fminという数式を用いて回復量ΔFRを算出する。尚、血流量の時間波形が通常回復型又は回復遅延型の時間波形である場合には、回復時刻Trにおける血流量は、平均値Faveとなる。一方で、血流量の時間波形が不完全回復型の時間波形である場合には、パラメータ演算部143は、回復時刻Trを算出することができない。この場合には、パラメータ演算部143は、回復量ΔFR=カットオフ時刻Tcにおける血流量−最小値Fminという数式を用いて回復量ΔFRを算出する。その後、パラメータ演算部143は、回復率R=回復量ΔFR/減少量ΔFという数式を用いて、回復率Rを算出する。
【0082】
  このように、パラメータ演算部143は、「回復時間T」という第1の評価パラメータを算出する場合には、血流情報等に基づいて、立位開始時刻Ts及び回復時刻Trという2種類の必要パラメータを算出する必要がある。パラメータ演算部143は、「回復率R」という第2の評価パラメータを算出する場合には、血流情報等に基づいて、平均値Fave、最小値Fmin(最小時刻Tmin)及び回復時刻Trという3種類の必要パラメータを算出する必要がある。
【0083】
  一方で、
図4(a)から
図4(c)に示すように、血流量の時間波形には個体差がある。従って、個体差の影響を受けて、血流情報に基づいてパラメータ演算部143が算出した必要パラメータが適切でない可能性がある。
【0084】
  例えば、必要パラメータが最小値Fminである場合について検討する。パラメータ演算部143は、上述したように、血流量の微分結果に基づいて最小値Fminを算出する。しかしながら、微分結果がマイナスからプラスに変化する時刻が複数表れる場合には、パラメータ演算部143は、最小値Fminを適切に算出することができない可能性がある。
【0085】
  例えば、必要パラメータが回復時刻Trである場合について検討する。例えば、血流量は、最小値Fminとなった後に徐々に増加していく。その後、血流量は平均値Faveにまで回復する。しかしながら、血流量の増加が瞬間的な増加に過ぎない(いわば、異常動作としての増加に過ぎない)場合には、瞬間的な増加に起因して血流量が平均値Faveにまで回復した時刻は、本来の回復時刻Trとは異なる可能性がある。
【0086】
  このように、パラメータ演算部143は、何らの指標も参照することなく必要パラメータ(例えば、回復時刻Trや最小時刻Tminや平均値Fave等)を算出するだけでは、高精度な必要パラメータを算出することができない可能性がある。そこで、本実施例では、ガイド線出力部141は、必要パラメータの算出のためにパラメータ演算部143によって参照されるガイド線IPを、必要パラメータを算出するための指標として、血流量の時間波形と共に表示するように、ディスプレイ30を制御する。更に、ガイド線調整部142は、ユーザの操作に基づいて、ガイド線IPを調整する。
【0087】
  具体的には、再び
図2において、パラメータ演算部143が評価パラメータを算出する前に、ガイド線出力部141は、表示ウインドウ31を用いてガイド線IPを血流量の時間波形と共に表示するように、ディスプレイ30を制御する(ステップS17)。表示ウインドウ31は、
図3に示すように、波形領域313を含む。波形領域313には、血流量の時間波形を示すグラフが表示される。更に、波形領域313には、ガイド線IPが表示される。尚、
図3は、「回復時間T」という第1の評価パラメータ及び「回復率R」という第2の評価パラメータを算出するためにパラメータ演算部143が参照する4つのガイド線IP1からIP4が表示される例を示す。
【0088】
  ガイド線IP1は、被験者900が座位姿勢から立位姿勢に移行したと推定される時刻(つまり、立位開始時刻Tsであると推定される時刻)を指し示す。ガイド線出力部141は、指示部13が出力する姿勢統制指示に基づいて、ガイド線IP1を設定する。つまり、ガイド線出力部141は、指示部13が立位姿勢に移行することを指示した時刻T1を、ガイド線IP1が示すべき時刻に設定する。その結果、ガイド線出力部141は、指示部13が立位姿勢に移行することを指示した時刻T1を示すガイド線IP1を表示するように、ディスプレイ30を制御する。
【0089】
  ガイド線IP2は、被験者900が立位姿勢に移行したことに起因して血流量が最小になったと推定される時刻(つまり、最小時刻Tminであると推定される時刻)を指し示す。ガイド線出力部141は、ガイド線IP1が指し示す時刻T1から固定の又は可変な第1所定時間が経過した時刻T2を、ガイド線IP2が示すべき時刻に設定する。第1所定時間は、例えば、健常者が座位姿勢から立位姿勢に移行してから当該健常者の血流量が最小になるまでに要する時間の平均値であってもよい。その結果、ガイド線出力部141は、ガイド線IP1が指し示す時刻T1から第1所定時間が経過した時刻T2を示すガイド線IP2を表示するように、ディスプレイ30を制御する。
【0090】
  ガイド線IP3は、被験者900が立位姿勢に移行したことに起因して減少した血流量が平均値Faveにまで回復したと推定される時刻(つまり、回復時刻Trであると推定される時刻)を指し示す。ガイド線出力部141は、ガイド線IP1が指し示す時刻T1から固定の又は可変な第2所定時間が経過した時刻T3を、ガイド線IP3が示すべき時刻に設定する。第2所定時間は、例えば、健常者が座位姿勢から立位姿勢に移行してから当該健常者の血流量が平均値Fave(或いは、平均値Faveよりも小さい中間値Fcであって、平均値Faveの90%以上となる中間値Fc)にまで回復するために要する時間の平均値であってもよい。その結果、ガイド線出力部141は、ガイド線IP1が指し示す時刻T1から第2所定時間が経過した時刻T3を示すガイド線IP3を表示するように、ディスプレイ30を制御する。
【0091】
  ガイド線IP4は、立位姿勢に移行する前の所定期間中の血流量の平均値Faveを指し示す。ガイド線出力部141は、血流情報に基づいて平均値Faveを算出する共に、当該算出した平均値Faveを、ガイド線IP4が示すべき血流量に設定する。
【0092】
  その後、パラメータ演算部143は、血流情報及びガイド線IPに基づいて、評価パラメータを算出する(ステップS18)。
【0093】
  具体的には、パラメータ演算部143は、ガイド線IP1が指し示す時刻T1を、立位開始時刻Tsに設定する。更に、パラメータ演算部143は、ガイド線IP3が指し示す時刻T3を、回復時刻Trに設定する。その後、パラメータ演算部143は、設定した立位開始時刻Ts及び回復時刻Trに基づいて、回復時間Tを算出する。
【0094】
  更に、パラメータ演算部143は、ガイド線IP4が指し示す血流量を、平均値Faveに設定する。更に、パラメータ演算部143は、ガイド線IP2が指し示す時刻T2を、最小時刻Tminに設定すると共に、当該最小時刻Tminにおける血流量を、最小値Fminに設定する。その後、パラメータ演算部143は、設定した平均値Fave及び最小値Fminに基づいて、減少量ΔFを算出する。更に、パラメータ演算部143は、ガイド線IP3が指し示す時刻T3を、回復時刻Trに設定すると共に、当該回復時刻Trにおける血流量を、回復値Frに設定する。その後、パラメータ演算部143は、設定した最小値Fmin及び回復値Frに基づいて、回復量ΔFRを算出する。その後、パラメータ演算部143は、算出した減少量ΔF及び回復量ΔFRに基づいて、回復率Rを算出する。
【0095】
  その後、評価結果出力部144は、ステップS19で算出された評価パラメータに基づいて、被験者900の自律神経機能を評価する(ステップS19)。例えば、評価結果出力部144は、評価パラメータが閾値TH1未満である場合には、被験者900の自律神経機能が「優(めまい度:低)」であると判定してもよい。例えば、評価結果出力部144は、評価パラメータが閾値TH1以上であり且つ閾値TH2(但し、TH2>TH1)未満である場合には、被験者900の自律神経機能が「良(めまい度:中)」であると判定してもよい。例えば、評価結果出力部144は、評価パラメータが閾値TH2以上である場合には、被験者900の自律神経機能が「悪(めまい度:高)」であると判定してもよい。
【0096】
  その後、評価結果出力部144は、自律神経機能の評価結果を出力する(ステップS19)。評価結果出力部144は、表示ウインドウ31を用いて、評価結果を出力する。表示ウインドウ31は、
図3に示すように、結果領域315を含む。結果領域315は、第1の評価パラメータ(回復時間T)を表示する表示領域315aと、第2の評価パラメータ(回復率R)を表示する表示領域315bと、評価結果を表示する表示領域315cとを含む。
【0097】
  但し、評価結果出力部144は、自律神経機能の評価結果を、ディスプレイ30上に表示される画像(例えば、自律神経機能の評価結果を文字や図形等で示す画像)として出力しなくてもよい。評価結果出力部144は、自律神経機能の評価結果を、必ずしも出力しなくともよい。
【0098】
  その後、ガイド線調整部142は、ガイド線IPを調整するための操作をユーザが行ったか否かを判定する(ステップS20)。ガイド線IPの調整は、ガイド線IPが指し示す時刻の調整や、ガイド線IPが指し示す血流量の調整を意味する。その結果、ガイド線IPが実際に指し示す時刻と、ガイド線IPが本来示すべき時刻との間のずれに起因した評価試験の精度の悪化が抑制される。
【0099】
  例えば、上述したように、最小時刻Tminであると推定される時刻を本来は指し示すべきガイド線IP2は、ガイド線IP1が指し示す時刻T1から固定の又は可変な第1所定時間が経過した時刻T2を指し示す。従って、
図5(a)に示すように、被験者900の個体差に起因して、ガイド線IP2が実際に指し示す時刻と、本来の最小時刻Tminとの間に大きなずれが生ずる可能性がある。ガイド線IP2の調整は、
図5(b)に示すように、このようなずれの縮小を主たる目的としてユーザによって行われる。
【0100】
  尚、
図5(a)は、被験者900の個体差に起因して、ガイド線IP3が実際に指し示す時刻と、本来の回復時刻Trとの間に大きなずれが生ずる例も合わせて示している。ガイド線IP3の調整は、
図5(b)に示すように、このようなずれの縮小を主たる目的としてユーザによって行われる。尚、ガイド線IP1からIP3のずれの具体例については、本願明細書の末尾に参考例として記載する。
【0101】
  ユーザは、表示ウインドウ31を参照しながら、ガイド線IPを調整するための操作を行う。表示ウインドウ31は、
図3に示すように、調整領域314を含む。調整領域314には、ガイド線IP1が指し示す時刻を調整するための操作を受け付ける操作領域314aと、ガイド線IP2が指し示す時刻を調整するための操作を受け付ける操作領域314bと、ガイド線IP3が指し示す時刻を調整するための操作を受け付ける操作領域314cとが含まれる。
図3に示す例では、操作領域314aでは、ガイド線IP1が指し示す時刻が四角枠で囲まれた状態で表示されると共に、ユーザは、当該時刻をスクロールすることでガイド線IP1が指し示す時刻を調整することができる。操作領域314b及び314cについても同様である。また、調整領域314には、ガイド線IP4が指し示す血流量を調整するための操作を受け付ける操作領域314dが含まれていてもよい。但し、ユーザは、波形領域313に表示されているガイド線IP1からIP4のうちの少なくとも一つを直接的に操作することで、ガイド線IPが指し示す時刻を調整してもよい。
【0102】
  ステップS20における判定の結果、ガイド線IPを調整するための操作をユーザが行っていると判定される場合には(ステップS20:Yes)、ガイド線調整部142は、ガイド線IPを調整するための操作結果を示す調整情報を取得する。更に、ガイド線調整部142は、調整情報をガイド線出力部141に出力する。調整情報を取得したガイド線出力部141は、調整情報に基づいてガイド線IPが指し示す時刻又は血流量を調整すると共に、調整前のガイド線IPに代えて調整後のガイド線IPを表示するように、ディスプレイ30を制御する(ステップS22)。更に、パラメータ演算部143は、血流情報及び調整後のガイド線IPに基づいて、評価パラメータを算出し直す(ステップS18)。更に、評価結果出力部144は、調整後のガイド線IPに基づいて算出し直された評価パラメータに基づいて、被験者900の自律神経機能を評価し直す(ステップS19)。更に、評価結果出力部144は、調整前のガイド線IPに基づく自律神経機能の評価結果に代えて、調整後のガイド線IPに基づく自律神経機能の評価結果を出力する(ステップS19)。つまり、ガイド線出力部141による調整後のガイド線IPの表示動作、パラメータ演算部143による調整後のガイド線IPに基づく評価パラメータの算出動作及び評価結果出力部144による自律神経機能の評価動作(更には、評価結果の出力動作)の夫々は、入力機器40を用いたガイド線IPの調整動作に連動して行なわれる動作である。
【0103】
  但し、ガイド線出力部141によるガイド線IPの表示動作は、入力機器40を用いたガイド線IPの調整動作の後にユーザが行う「表示動作を再度行う旨の指示」に応じて行われてもよい。パラメータ演算部143による評価パラメータの算出動作は、入力機器40を用いたガイド線IPの調整動作の後にユーザが行う「算出動作を再度行う旨の指示」に応じて行われてもよい。評価結果出力部144による自律神経機能の評価動作(更には、評価結果の出力動作)は、入力機器40を用いたガイド線IPの調整動作の後にユーザが行う「評価動作(更には、出力動作)を再度行う旨の指示」に応じて行われてもよい。この場合、ユーザは、ディスプレイ30が表示する表示ウインドウ31中に含まれる「各動作の再実行」を指示するためのボタン等を用いて、これらの指示を行ってもよい。
【0104】
  他方で、ステップS20における判定の結果、ガイド線IPを調整するための操作をユーザが行っていないと判定される場合には、制御部11は、再度の評価試験(つまり、再試験)の開始を指示する操作が、評価システム1のユーザによって行われたか否かを判定する(ステップS21)。ステップS21の判定の結果、再度の評価試験の開始を指示する操作が行われたと判定される場合には(ステップS21:Yes)、ステップS13以降の動作が繰り返される。他方で、ステップS21の判定の結果、再度の評価試験の開始を指示する操作が行われていないと判定される場合には(ステップS21:No)、評価システム1の動作が終了する。
【0105】
  (3)技術的効果
  続いて、本実施例の評価装置10によって得られる技術的効果について説明する。
【0106】
  上述したように、評価装置10は、ガイド線IPに基づいて、評価パラメータを算出するために必要な必要パラメータ(例えば、立位開始時刻Tsや、最小時刻Tminや、回復時刻Trや、平均値Fave等)を設定(言い換えれば、算出、以下同じ)する。このため、評価装置10は、ガイド線IPを何ら参照することなく血流情報を解析することで必要パラメータを設定する比較例の評価装置と比較して、必要パラメータをより高精度に設定することができる。特に、ガイド線IPがユーザによって調整可能であるがゆえに、評価装置10は、ユーザの知見に基づいて適切に調整されたガイド線IPに基づいて、必要パラメータを設定することができる。従って、ユーザの知見をも必要パラメータの設定に際して考慮することができると言う点においても、評価装置10は、比較例の評価装置と比較して、必要パラメータをより高精度に設定することができる。その結果、評価装置10は、比較例の評価装置と比較して、自律神経機能をより高精度に評価することができる。
【0107】
  (4)変形例
  以下、本実施例の評価システム1の変形例について説明する。
【0108】
  被験者900が立位姿勢に移行することで血流量が変化(例えば、減少)し始めることを考慮すれば、ガイド線IP1は、被験者900が座位姿勢から立位姿勢に移行したと推定される時刻を指し示すと共に、被験者900が立位姿勢に移行したことに起因して血流量が減少し始めたと推定される時刻をも指し示すとも言える。一方で、被験者900の個体差を考慮すれば、被験者900が座位姿勢から立位姿勢に移行したと推定される時刻と、被験者900が立位姿勢に移行したことに起因して血流量が減少し始めたと推定される時刻とが一致しない場合もある。従って、ガイド線出力部141は、ガイド線IP1として、被験者900が座位姿勢から立位姿勢に移行したと推定される時刻を指し示すガイド線IP1−1と、被験者900が立位姿勢に移行したことに起因して血流量が減少し始めたと推定される時刻を指し示すガイド線IP1−2とのうちの少なくとも一方を表示するように、ディスプレイ30を制御してもよい。
【0109】
  上述の説明では、ガイド線出力部141は、指示部13が立位姿勢に移行することを指示した時刻T1を、ガイド線IP1が示すべき時刻に設定している。しかしながら、被験者900が立位姿勢に移行したことを確認したユーザが、被験者900が立位姿勢に移行した時刻T1aを評価システム1に通知する場合には、ガイド線出力部141は、ユーザから通知された時刻T1aを、ガイド線IP1が示すべき時刻に設定してもよい。或いは、被験者900の移動量を検出するセンサ(例えば、加速度センサ等)を評価システム1が備えている場合には、ガイド線出力部141は、被験者900が立位姿勢に移行したことをセンサの出力値が示すことになった時刻T1bを、ガイド線IP1が示すべき時刻に設定してもよい。
【0110】
  上述の説明では、ガイド線出力部141は、血流情報に基づくことなく、ガイド線IP1が示すべき時刻を設定している。しかしながら、ガイド線出力部141は、血流情報に基づいて、ガイド線IP1が示すべき時刻を設定してもよい。例えば、被験者900が立位姿勢に移行することで血流量が変化(例えば、減少)し始めることを考慮すれば、被験者900が立位姿勢に移行した時刻は、血流量が変化し始めた時刻と一致する可能性が高い。このため、ガイド線出力部141は、血流量の微分値が所定閾値を超えた時刻T1cを、ガイド線IP1が示すべき時刻に設定してもよい。
【0111】
  上述の説明では、ガイド線出力部141は、血流情報に基づくことなく、ガイド線IP2が示すべき時刻を設定している。しかしながら、ガイド線出力部141は、血流情報に基づいて、ガイド線IP2が示すべき時刻を設定してもよい。例えば、ガイド線出力部141は、血流量が実際に最小になる時刻T2aを、ガイド線IP2が示すべき時刻に設定してもよい。例えば、ガイド線出力部141は、被験者900が立位姿勢に移行してから第1所定期間以内に血流量が実際に最小になる時刻T2bを、ガイド線IP2が示すべき時刻に設定してもよい。
【0112】
  上述の説明では、ガイド線出力部141は、血流情報に基づくことなく、ガイド線IP3が示すべき時刻を設定している。しかしながら、ガイド線出力部141は、血流情報に基づいて、ガイド線IP3が示すべき時刻を設定してもよい。例えば、ガイド線出力部141は、血流量が実際に平均値Fave(或いは、中間値Fc)にまで回復した時刻T3aを、ガイド線IP3が示すべき時刻に設定してもよい。例えば、ガイド線出力部141は、被験者900が立位姿勢に移行してから第2所定期間以内に血流量が最大になる時刻T3bを、ガイド線IP3が示すべき時刻に設定してもよい。
【0113】
  上述した実施例では、ガイド線出力部141は、線状の表示物であるガイド線IPを表示するようにディスプレイ30を制御している。しかしながら、ガイド線出力部141は、ガイド線IPに加えて又は代えて、血流情報(或いは、血流量の時間波形)を特定可能な変数に関連すると共に任意の形状を有する任意の表示物を表示するようにディスプレイ30を制御してもよい。
【0114】
  上述したガイド線IP1からIP4は、回復時間T及び回復率Rという評価パラメータを算出するためにパラメータ演算部143が参照するガイド線である。しかしながら、パラメータ演算部143がその他の評価パラメータを算出する場合には、ガイド線出力部141は、上述したガイド線IP1からIP4に加えて又は代えて、その他の評価パラメータを算出するためにパラメータ演算部143が参照するガイド線を表示するように、ディスプレイ30を制御してもよい。
【0115】
  上述した実施例では、被験者900の血流量を変化させる(具体的には、一時的に血流量を減少させる)ための状態変化として、被験者900の姿勢が座位姿勢から立位姿勢に移行するという状態変化が用いられている。しかしながら、被験者900の血流量を変化させるための状態変化として、被験者900の状態が任意の第1状態から任意の第2状態に移行するという任意の状態変化が用いられてもよい。以下、被験者900の血流量を変化させるための状態変化の他の一例について説明する。
被験者900の血流量を変化させるための状態変化は、被験者900がベッド上での臥位姿勢から床へ立位姿勢をとるという状態変化であってもよい。この場合、状態変化が生ずる前の被験者900の第1状態は、被験者900が臥位姿勢をとっている状態である。一方で、状態変化が生じた後の被験者900の第2状態は、被験者900が立位姿勢であるという状態である。
【0116】
  被験者900の血流量を変化させるための状態変化は、被験者900の下肢大腿部(或いは、その他任意の部位)を圧迫しているカフが取り外される又は緩められるという状態変化であってもよい。この場合、状態変化が生ずる前の被験者900の第1状態は、被験者900の下肢大腿部がカフで圧迫されているという状態である。一方で、状態変化が生じた後の被験者900の第2状態は、被験者900の下肢大腿部がカフで圧迫されていないという状態である。
【0117】
  被験者900の血流量を変化させるための状態変化は、被験者900の下半身(その他任意の部位)を負圧環境下にさらすという状態変化であってもよい。この場合、状態変化が生ずる前の被験者900の第1状態は、被験者900の下半身が負圧環境下にさらされていないという状態である。一方で、状態変化が生じた後の被験者900の第2状態は、被験者900の下半身が負圧環境下にさらされているという状態である
  被験者900の血流量を変化させるための状態変化は、被験者900の交感神経を刺激するという状態変化であってもよい。この場合、状態変化が生ずる前の被験者900の第1状態は、被験者900の交感神経が未だ刺激されていないという状態である。一方で、状態変化が生じた後の被験者900の第2状態は、被験者900の交感神経が既に刺激されているという状態である。尚、ここで言う刺激とは、被験者900の体に直接的に触れる物理的な刺激であってもよい。或いは、ここで言う刺激とは、被験者900の精神に影響を与える精神的な刺激であってもよい。
【0118】
  (5)ガイド線IP1からIP3のずれの具体例
  続いて、
図6(a)から
図6(c)、
図7及び
図8を参照しながら、ガイド線IPが実際に指し示す時刻とガイド線IPが本来示すべき時刻との間のずれの具体例について説明する。
【0119】
  図6(a)は、ガイド線IP1(特に、変形例で説明した、被験者900が座位姿勢から立位姿勢に移行したと推定される時刻を指し示すガイド線IP1−1)が実際に指し示す時刻とガイド線IP1が本来示すべき時刻との間にずれが生じている例を示す。上述したように、ガイド線IP1が示すべき時刻は、指示部13が立位姿勢に移行することを指示した時刻T1に設定される。ここで、姿勢統制指示に従って被験者900が即座に立位姿勢に移行した場合には、ガイド線IP1が実際に指し示す時刻とガイド線IP1が本来示すべき時刻との間にずれが生じないと想定される。しかしながら、被験者900の反応速度を考慮すると、指示部13が姿勢統制指示を出力した時刻と、姿勢統制指示を認知した被験者900が実際に立位姿勢に移行する時刻との間にはずれが生ずる。その結果、
図6(a)に示すように、被験者900の反応速度に起因して、ガイド線IP1が実際に指し示す時刻T1とガイド線IP1が本来示すべき立位開始時刻Tsとの間にずれが生ずる。この場合には、ユーザは、時刻T1を指し示すガイド線IP1が立位開始時刻Tsを指し示すガイド線IP1に変わるように、ガイド線IP1を調整してもよい。
【0120】
  図6(b)もまた、ガイド線IP1(特に、変形例で説明した、血流量が減少し始めたと推定される時刻を指し示すガイド線IP1−2)が実際に指し示す時刻とガイド線IP1が本来示すべき時刻との間にずれが生じている例を示す。座位姿勢から立位姿勢に移行してすぐに被験者900の血流量が減少し始める場合には、ガイド線IP1が実際に指し示す時刻とガイド線IP1が本来示すべき時刻との間にずれが生じないと想定される。しかしながら、座位姿勢から立位姿勢に移行してからしばらくした後に被験者900の血流量が減少し始める被験者900も存在する。この場合には、ガイド線IP1が実際に指し示す時刻(つまり、立位開始時刻Ts)とガイド線IP1が本来示すべき時刻(つまり、血流量が実際に減少し始めた時刻)との間にずれが生ずる。この場合には、ユーザは、立位開始時刻Tsを指し示すガイド線IP1が、血流量が実際に減少し始めた時刻を指し示すガイド線IP1に変わるように、ガイド線IP1を調整してもよい。
【0121】
  図6(c)もまた、ガイド線IP1(特に、変形例で説明した、血流量が減少し始めたと推定される時刻を指し示すガイド線IP1−2)が実際に指し示す時刻とガイド線IP1が本来示すべき時刻との間にずれが生じている例を示す。被験者900の血圧は、立位姿勢への移行に起因して瞬間的に増加する可能性がある。その結果、血圧の瞬間的な増加に起因して、血流量もまた瞬間的に増加する可能性がある。或いは、被験者900の血流量のゆらぎと同期したタイミングで被験者900が立位姿勢に移行した場合にも、血流量が瞬間的に増加する可能性がある。この場合には、ガイド線IP1が実際に指し示す時刻(つまり、立位開始時刻Ts)とガイド線IP1が本来示すべき時刻(つまり、血流量が実際に減少し始めた時刻)との間にずれが生ずる。この場合には、ユーザは、立位開始時刻Tsを指し示すガイド線IP1が、血流量が実際に減少し始めた時刻を指し示すガイド線IP1に変わるように、ガイド線IP1を調整してもよい。
なお、
図6(c)は、血流量が実際に減少し始めた時刻が、一点鎖線で示すように瞬間的に増加した血流量が減少し始めた時刻である例を示している。しかしながら、血流量が実際に減少し始めた時刻は、二点鎖線で示すように、瞬間的に増加した血流量が減少して平均値Fave以下になった時刻であってもよい。
【0122】
  図7は、ガイド線IP2が実際に指し示す時刻とガイド線IP2が本来示すべき時刻との間にずれが生じている例を示す。変形例において上述したように、ガイド線IP2が示すべき時刻は、血流情報に基づいて、血流量が実際に最小になる時刻T2aに設定されることがある。しかしながら、
図7に示すように、血流情報が示す時間波形が立位開始時刻Ts以降に複数の極小値を有する時間波形である場合には、血流情報に基づいて設定される時刻T2aと、本来の最小時刻Tminとが一致しない可能性がある。その結果、
図7に示すように、血流情報によっては、ガイド線IP2が実際に指し示す時刻T2aとガイド線IP2が本来示すべき最小時刻Tminとの間にずれが生ずる。この場合には、ユーザは、時刻T2aを指し示すガイド線IP2が最小時刻Tminを指し示すガイド線IP2に変わるように、ガイド線IP2を調整してもよい。
【0123】
  図8は、ガイド線IP3が実際に指し示す時刻とガイド線IP3が本来示すべき時刻との間にずれが生じている例を示す。変形例において上述したように、ガイド線IP3が示すべき時刻は、血流情報に基づいて、血流量が実際に平均値Faveにまで回復した時刻T3aに設定されることがある。しかしながら、
図8に示すように、被験者900の血流量のゆらぎと同期したタイミングで血流量が瞬間的に(一時的に)平均値Faveにまで回復してしまう可能性がある。その結果、
図8に示すように、血流情報によっては、ガイド線IP3が実際に指し示す時刻T3aとガイド線IP3が本来示すべき回復時刻Trとの間にずれが生ずる。この場合には、ユーザは、時刻T3aを指し示すガイド線IP3が回復時刻Trを指し示すガイド線IP3に変わるように、ガイド線IP3を調整してもよい。
【0124】
  また、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う情報出力装置、情報出力方法、及び、コンピュータプログラムもまた本発明の技術思想に含まれる。