特許第6657303号(P6657303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6657303
(24)【登録日】2020年2月7日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
   B66B 25/00 20060101AFI20200220BHJP
   B66B 31/00 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
   B66B25/00 B
   B66B31/00 C
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-108561(P2018-108561)
(22)【出願日】2018年6月6日
(65)【公開番号】特開2019-210114(P2019-210114A)
(43)【公開日】2019年12月12日
【審査請求日】2018年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】赤木 透央
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−273728(JP,A)
【文献】 特開2014−101209(JP,A)
【文献】 特開平06−263376(JP,A)
【文献】 特開2011−011874(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/035423(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 25/00
B66B 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に走行する踏段と、
前記踏段が進出する乗降板と、
前記踏段の左右両側に設けられた左右一対の欄干と、
前記踏段を走行させる駆動装置と、
前記駆動装置を用いて前記踏段の走行速度を制御する制御部と、
左右一対の前記欄干の乗降口に設けられた左右一対の正面スカートガードと、
左右一対の正面スカートガードの正面の少なくともどちらか一方に設けられ、外部から前記乗降口へ来る乗客を検出する1次センサと、
左右一対の正面スカートガードの相対向する側面に設けられ、左右一対の正面スカートガードの間を通過する前記乗客を検出する2次センサと、
を有し、
前記制御部は、
前記乗降板の先端の位置から前記乗降口に向かって、所定間隔を開けて複数の通過点が予め順番に設定され、
前記先端の位置から最も遠い前記通過点を前記乗客が通過したことを前記1次センサが検出した時間を基準時間として設定し、
前記乗客が最も遠い前記通過点以降の前記各通過点をそれぞれ通過したことを前記1次センサがそれぞれ検出した時間について、前記基準時間から経過している検出時間としてそれぞれ記憶し、
前記2次センサが前記乗客を検出したときの検出時間をさらに記憶し、
前記1次センサによるそれぞれの前記検出時間に、前記2次センサによる前記検出時間を加算して合計時間を求め、
前記合計時間が小さい程、前記踏段が停止している状態から通常速度に加速するための第1加速度を大きくする、
乗客コンベア。
【請求項2】
前記制御部は、
前記検出時間に関して、前記乗降板の前記先端の位置から最も遠い前記通過点において、前記乗客を検出したときから前記検出時間の計測を開始する、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記制御部は、前記通常速度より遅い低速で走行している前記踏段を、前記通常速度まで第2加速度で加速する場合に、前記合計時間が小さい程に前記第2加速度を大きくする、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
前記制御部は、前記合計時間が基準合計時間より大きい乗客の場合に、前記通常速度で走行している前記踏段を、前記通常速度より遅い速度で走行させる、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
前記乗降板の先端に設けられたコムから前記踏段が進出する、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項6】
左右一対の正面スカートガードの前記正面の両方に前記1次センサが設けられ、
前記制御部は、少なくともどちらか一方の前記1次センサが前記通過点における前記乗客を検出したときに、前記通過点における前記検出時間として記憶する、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項7】
前記1次センサは、ToFセンサである、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項8】
前記2次センサは、光電センサである、
請求項2に記載の乗客コンベア。
【請求項9】
前記乗客コンベアは、エスカレータ、又は動く歩道である、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エスカレータや動く歩道などの乗客コンベアにおいては、乗客が乗っている場合には通常速度で走行し、乗客が乗っていない場合には低速で走行したり停止したりして省エネを図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−11874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、乗客コンベアが低速で走行、又は停止している場合に、乗客が近付いた場合には通常速度まで加速している。しかし、老人や子供などの歩行速度が遅い乗客が乗り込んで、急に加速する踏段に乗った場合に、そのタイミングが合わず転倒したりする可能性があるという問題点があった。
【0005】
そこで本発明の実施形態は、乗り込む乗客の歩行速度に合わせて踏段が通常速度まで加速する乗客コンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、前後方向に走行する踏段と、先端から前記踏段が進出する乗降板と、前記踏段の左右両側に設けられた左右一対の欄干と、前記踏段を走行させる駆動装置と、前記駆動装置を用いて前記踏段の走行速度を制御する制御部と、左右一対の前記欄干の乗降口に設けられた左右一対の正面スカートガードと、左右一対の正面スカートガードの正面の少なくともどちらか一方に設けられ、外部から前記乗降口へ来る乗客を検出する1次センサと、左右一対の正面スカートガードの相対向する側面に設けられ、左右一対の正面スカートガードの間を通過する前記乗客を検出する2次センサと、を有し、前記制御部は、前記乗降板の先端の位置から前記乗降口に向かって、所定間隔を開けて複数の通過点が予め順番に設定され、前記先端の位置から最も遠い前記通過点を前記乗客が通過したことを前記1次センサが検出した時間を基準時間として設定し、前記乗客が最も遠い前記通過点以降の前記各通過点をそれぞれ通過したことを前記1次センサがそれぞれ検出した時間について、前記基準時間から経過している検出時間としてそれぞれ記憶し、前記2次センサが前記乗客を検出したときの検出時間をさらに記憶し、前記1次センサによるそれぞれの前記検出時間に、前記2次センサによる前記検出時間を加算して合計時間を求め、前記合計時間が小さい程、前記踏段が停止している状態から通常速度に加速するための第1加速度を大きくする、乗客コンベアである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態を示すエスカレータの側面説明図。
図2】エスカレータの上階側の平面図。
図3】エスカレータのブロック図。
図4】運転開始モードのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態のエスカレータ10を図1図4を参照して説明する。
【0009】
(1)エスカレータ10
エスカレータ10の構造について、図1に基づいて説明する。図1はエスカレータ10を側面から見た説明図である。
【0010】
図1に示すように、エスカレータ10の枠組みであるトラス12が、建屋1の上階と下階に跨がって支持アングル2,3を用いて前後方向に支持されている。
【0011】
トラス12の上端部にある上階側の機械室14内部には、踏段30を走行させる駆動装置18、左右一対の主駆動スプロケット24,24、左右一対のベルトスプロケット27,27が設けられている。駆動装置18は、誘導電動機(インダクションモータ)よりなるモータ20と、減速機と、この減速機の出力軸に取り付けられた出力スプロケットと、この出力スプロケットにより駆動する駆動チェーン22と、モータ20の回転を停止させ、かつ、停止状態を保持するディスクブレーキとを有している。この駆動チェーン22により主駆動スプロケット24が回転する。左右一対の主駆動スプロケット24,24と左右一対のベルトスプロケット27,27とは、不図示の連結ベルトにより連結されて同期して回転する。また、上階側の機械室14内部には、モータ20やディスクブレーキなどを制御する制御部50が設けられている。
【0012】
トラス12の下端部にある下階側の機械室16内部には、従動スプロケット26が設けられている。上階側の主駆動スプロケット24と下階側の従動スプロケット26との間には、左右一対の無端の踏段チェーン28,28が掛け渡されている。すなわち、左右一対の踏段チェーン28,28には、複数の踏段30の車輪301が等間隔で取り付けられている。踏段30の車輪301はトラス12に固定された不図示の案内レールに沿って走行すると共に、主駆動スプロケット24の外周部にある凹部と従動スプロケット26の外周部にある凹部に係合して、踏段30が上下に反転する。また、車輪302はトラス12に固定された案内レール25を走行する。
【0013】
トラス12の左右両側には、左右一対のスカートガード44,44と左右一対の欄干36,36が立設されている。欄干36の上部に手摺りレール39が設けられ、この手摺りレール39に沿って手摺りベルト38が移動する。欄干36の上階側の正面下部には上階側の正面スカートガード40が設けられ、下階側の正面下部には下階側の正面スカートガード42が設けられ、正面スカートガード40,42から手摺りベルト38の出入口であるインレット部46,48がそれぞれ突出している。スカートガード44は、欄干36の側面下部に設けられ、左右一対のスカートガード44,44の間を踏段30が走行する。上下階のスカートガード44の内側面には、操作盤52,56、スピーカ54,58がそれぞれ設けられている。
【0014】
手摺りベルト38は、上階側のインレット部46から正面スカートガード40内に侵入し、案内ローラ群64を介してベルトスプロケット27に掛け渡され、その後、案内ローラ群66を介してスカートガード44内を移動し、下階側のインレット部48から正面スカートガード42外に現れる。そして、手摺りベルト38は、ベルトスプロケット27が主駆動スプロケット24と共に回転することにより踏段30と同期して移動する。また、回転するベルトスプロケット27に、走行する手摺りベルト38を押圧するための押圧部材68を有する。
【0015】
上階側の機械室14の天井面にある乗降口には、上階側の乗降板32が水平に設けられ、下階側の機械室16の天井面にある乗降口には、下階側の乗降板34が水平に設けられている。乗降板32の先端には櫛歯状のコム60が設けられ、このコム60から踏段30が現れる。また、乗降板34にも櫛歯状のコム62が設けられている。
【0016】
欄干36の乗降口に当たる上階側の左右一対の正面スカートガード40,40の正面には、図1図2に示すように、1次センサ70L,70Rが設けられている。これら1次センサ70L,70Rは、距離センサであり、例えばToF(Time of Flight)センサが用いられている。「ToFセンサ」とは、近赤外線LEDの高速光源と、距離画像データを取得するためのCMOSイメージセンサを用い、投光した光パルスがターゲットに当たって戻る時間を画素毎にリアルタイムで測定することにより、距離画像イメージを取得するものであり、例えば、位相差法を用いた場合には、投光パルスを高速で点滅させ、反射光の位相遅れを計測することで距離計測を行うものである。
【0017】
欄干36の乗降口に当たる上階側の左右一対の正面スカートガード40の相対向する側面には、図1図2に示すように、2次センサ72が設けられている。この2次センサ72は、光電センサであって、一方の正面スカートガード40の側面に発光部が設けられ、他方の正面スカートガード40の側面に受光部が設けられ、この間を乗客が通過すると、その乗客を検出する。
【0018】
下階側の正面スカートガード42,42においても、上階側と同様に1次センサ70L,70R及び2次センサ72が設けられている。
【0019】
(2)エスカレータ10の電気的構成
エスカレータ10の電気的構成について図3を参照して説明する。図1に示す機械室14に設けられた制御部50には、モータ20の駆動装置18、上下階にある操作盤52,56、上下階にあるスピーカ54,58が接続され、また、記憶部74、外部と無線で通信を行う通信部76が接続されている。
【0020】
制御部50には、上階側の左右一対の1次センサ70L,70Rと2次センサ72、及び下階側の1次センサ70L,70Rと2次センサ72が接続されている。なお、上下階の左側の1次センサ70Lを図面において表現するときは簡略化のために、「L1次センサ」と表現し、右側の1次センサ70Rを表現するときは「R1次センサ」と記載する。
【0021】
(3)運転開始モード
エスカレータ10に乗客がなく、停止している状態から、乗客があらわれ踏段30に乗り込むときの運転開始モードについて説明する。なお、本説明では、踏段30が下降し、上階から乗客が乗り込むものとして説明する。
【0022】
制御部50には、上階のコム60の先端から乗り込み側に向かって1.6mの位置にA点があると設定され、1.4mの位置にB地点があると設定され、1.0mの位置にC点が設定されている。そして、2次センサ72の位置がD点であるとして設定されている。
【0023】
左右一対の1次センサ70は、乗り込み口に向かって来る乗客を検出し、その乗客までの距離を示す距離信号を制御部50にリアルタイムに出力する。なお、左右一対の1次センサ70を設けるのは、片側の1次センサ70の検出範囲だけでは乗客を検出できない場合があるので、より確実に検出するために左右に1個ずつ設けられている。そのため、制御部50は、少なくともどちらか一方の1次センサ70が乗客を検出すればA点、B点、又はC点を通過したものとする。1次センサ70が検出する乗客までの距離は、1次センサ70が取り付けられた位置を原点として、乗客までの距離であるため、制御部50は、この乗客に関する距離信号を上記で説明したコム60の先端からの距離に換算する。
【0024】
制御部50は、1次センサ70から乗客の距離信号に基づいて、乗客がA点を通過した時間を基準時間として検出時間の計測を開始し、次にB点を通過したときの検出時間T1を記憶し、次にC点を通過したときの検出時間T2を記憶し、次にD点を通過したときの検出時間T4を記憶する。例えば、A点では検出時間が0であり、B点ではT1=2秒、C点ではT2=4秒、D点ではT3=7秒である。
【0025】
制御部50は、検出時間T1、T2、T3を加算して合計時間Mを求める。この合計時間Mが、乗客の歩行速度を表したものであり、Mが大きいほど歩行速度が遅く、逆に小さいほど歩行速度が早いことになる。
【0026】
制御部50は、乗客の歩行速度に対応した合計時間Mと、基準歩行速度に対応した基準合計時間M0とを比較して、M=>M0のときには遅い歩行速度として踏段30の停止状態から通常速度に加速する加速度α=0.05m/秒として遅くし、M<M0のときには、早い歩行速度として加速度α=0.1m/秒として早くして加速させる。
【0027】
(4)運転開始モードの処理
上記で説明したエスカレータ10の運転開始モードの処理について、図4のフローチャートを参照して説明する。
【0028】
ステップS1において、制御部50は、1次センサ70からの距離信号に基づいて、乗客がA点を通過したか否かを検出し、検出していればステップS2に進み(yの場合)、検出していなければステップS1に戻る(nの場合)。
【0029】
ステップS2において、制御部50は、乗客がA点を通過したため、検出時間の計測を開始し、ステップS3に進む。
【0030】
ステップS3において、制御部50は、1次センサ70からの距離信号に基づいて、乗客がB点を通過したか否かを検出し、検出していればステップS4に進み(yの場合)、検出していなければステップS16に進む(nの場合)。但し、乗客がB点を通過したか否かについては、A点からの経過時間が所定時間内(例えば、5秒間)の間に判断する。これは、判断する時間を短くするとA点を通過してからB点まで歩行する歩行速度が遅い乗客についてタイムオーバーとなって検出できなくなり、逆に長くなりすぎると、他の乗客を検出する可能性があるからである。なお、以下で説明するステップS5、ステップS7において乗客の検出を判断する時間も同様である。
【0031】
ステップS4において、制御部50は、A点からB点までの検出時間T1を記憶し、ステップS5に進む。
【0032】
ステップS5において、制御部50は、1次センサ70からの距離信号に基づいて、乗客がC点を通過したか否かを検出し、検出していればステップS6に進み(yの場合)、検出していなければステップS16に進む(nの場合)。
【0033】
ステップS6において、制御部50は、A点からC点までの検出時間T2を記憶し、ステップS7に進む。
【0034】
ステップS7において、制御部50は、乗客がD点を通過したか否かを2次センサ72からの検出信号に基づいて検出し、検出していればステップS8に進み(yの場合)、検出していなければステップS16に進む(nの場合)。
【0035】
ステップS8において、制御部50は、A点からD点までの検出時間T3を記憶し、ステップS9に進む。
【0036】
ステップS9において、制御部50は、検出時間T1、T2、T3を全て加算して合計時間Mを求めると共に、計測している検出時間をリセットする。そしてステップS10に進む。
【0037】
ステップS10において、合計時間M=>基準合計時間M0であればステップS12に進み(yの場合)、M<M0であればステップS11に進む(nの場合)。
【0038】
ステップS11において、制御部50は、踏段30の加速度αを0.1m/秒と設定しステップS13に進む。
【0039】
ステップS12において、制御部50は、踏段30の加速度αを0.05m/秒と設定しステップS13に進む。
【0040】
ステップS13において、制御部50は、駆動装置18を用いて踏段30を停止状態から加速度αで加速し、ステップS14に進む。
【0041】
ステップS14において、踏段30の走行速度が通常速度に到達していればステップS15に進み(yの場合)、到達していなければステップS14を継続する(nの場合)。
【0042】
ステップS15において、制御部50は、踏段30を通常速度で運転を続け、運転開始モードを終了する。
【0043】
ステップS16において、乗客は素通りしてエスカレータ10に乗らなかったとして検出時間をリセットし、ステップS1に戻る。
【0044】
(5)効果
本実施形態によれば、踏段30が停止状態から通常速度に加速する加速度を、乗客の歩行速度に合わせて決定できるため、歩行速度が遅い人は遅い加速度で、歩行速度が速い人は早い加速度で踏段30が加速し、乗り込みのときにタイミングが合い、転倒を防ぐことができる。
【0045】
また、検出時間T1〜T3の合計時間Mが、基準合計時間M0より大きいか否かで判断している効果について説明する。
【0046】
まず、A点から計測を開始し、D点までにおける検出時間だけを確認しても乗客の歩行速度は判断できる。しかし、A点とD点だけで乗客を検出している場合に、A点からD点までの間に乗客がエスカレータ10に乗らず素通りした場合に直ちにその素通りを検出できない。これに対しA点、B点、C点、D点で乗客をそれぞれ検出しているとそれぞれの場所で素通りしているか否かを検出できる。
【0047】
また、乗客がA点からD点を通過するにしても、踏段30に真っ直ぐに近づく場合と、斜めに近づく場合とでは、歩く距離が異なってくるため、歩く距離に対応して検出時間も異なってくる。このときにA点とD点だけで乗客を検出していると、D点において乗客を検出する時間にかなり幅を持たせる必要があり、それだけ検出時間に誤差が発生しやすい。一方、本実施形態ではB点での検出する時間はA点での基準時間を基準に幅を少し持たせ、C点での検出する時間はB点での検出時間を基準に幅を少し持たせ、D点での検出する時間はC点での検出時間を基準に幅を少し持たせているので、それぞれの幅を持たせる時間が少なくなると共に、検出の誤差が小さくなる。
【変更例】
【0048】
次に、変更例について説明する。
【0049】
(1)変更例1
上記実施形態では、左右一対の正面スカートガード40,40にそれぞれ左右一対の1次センサ70を設けたが、これに代えてどちらか一方のみに1次センサ70を設けてもよい。
【0050】
(2)変更例2
上記実施形態では、A点〜D点までの4箇所であったが、5箇所以上を設定して、乗客を検出して、合計時間Mを算出してもよい。
【0051】
(3)変更例3
上記実施形態では、上階側で説明を行ったが、エスカレータ10が上昇している場合には、下階側の1次センサ70と2次センサ72を用いて踏段30の加速度の制御を行う。
【0052】
(4)変更例4
上記実施形態では、踏段30が停止している状態から通常速度に加速するときについて説明したが、これに代えて通常速度よりも遅い低速で走行しているときに、乗客が近づき通常速度に上げるときの加速度についても、上記実施形態と同様に算出すればよい。
【0053】
(5)変更例5
上記実施形態では、踏段30が停止している状態から通常速度に加速するときについて説明したが、踏段30が通常速度で走行しているときに、例えば歩行速度の遅い乗客が乗り込もうとしていると検出した場合には、通常速度よりも遅い低速で踏段30を走行させるように制御してもよい。すなわち、合計時間M=>基準合計時間M0のときは、通常速度から低速に変更する。
【0054】
(6)変更例6
上記実施形態では、A点〜C点を設定する際の基準の位置は、コム60の先端に設定したが、これ以外に乗降板32とコム60の境目などに設定してもよい。
【0055】
(7)変更例6
上記実施形態では、合計時間Mと基準合計時間M0で比較したが、これに代えて基準となる合計時間を複数設定し、合計時間Mが小さい程、加速度を大きくしてもよい。
【0056】
(8)変更例7
上記実施形態では、エスカレータ10に適用して説明したが、これに代えて動く歩道に適用してもよい。
【0057】
(9)その他
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
10・・・エスカレータ、30・・・踏段、40・・・正面スカートガード、42・・・正面スカートガード、50・・・制御部、70L・・・左側の1次センサ、70R・・・右側の1次センサ、72・・・2次センサ、74・・・記憶部、76・・・通信部
図1
図2
図3
図4