(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リードフレーム基材に前記ダイパッド部と前記リード部を形成した後に、前記ダイパッド部と前記リード部の少なくとも一部もしくは全面の何れかをなす前記リードフレーム基材の表面に、光沢度が2.5以上3.5以下、表面粗さがRaで0.02μm以上0.05μm以下の光沢Niめっき層を形成し、該光沢Niめっき層の表面に、最表層が光沢度1.6以上のAgめっき層からなる貴金属めっき層を積層することを特徴とする請求項10に記載のリードフレームの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0026】
実施形態の説明に先立ち、本発明の作用効果について説明する。
本発明の一態様のリードフレームは、光半導体装置に用いられるリードフレームであって、光半導体素子を搭載するダイパッド部と光半導体素子と電気的に接続可能なリード部とを備え、ダイパッド部及びリード部の少なくとも一部もしくは全面の何れかをなす
、Cu系材料を用いた金属板からなるリードフレーム基材の表面に、光沢度
が2.5以上3.5以下
、表面粗さがRaで0.02μm以上0.05μm以下の光沢Niめっき層
が形成され、光沢Niめっき層の表面に、最表層が光沢度1.6以上のAgめっき層からなる貴金属めっき
層が積層されている。
光沢Niめっき層の光沢度を
2.5以上3.5以下にすれば、Agめっきの光沢度に影響を及ぼすことなく、Agめっき層表面に窪みを生じる虞もなく、めっき表面のめっきムラを防止することができる。
そして、最表層の光沢度1.6以上のAgめっき層を、めっき厚0.3μm以上2.5μm以下で形成することで、めっき表面の光沢度を1.6以上に維持し、かつ、めっき表面のめっきムラを防止し、貴金属のめっき厚を薄くしてコスト削減をすることができる。
【0027】
また、本発明の一態様のリードフレーム
のように、光沢Niめっき層の表面粗さ
をRaで0.02μm以上0.05μm以
下にすれば、下地の結晶粒の大きさの影響を受けることなく、Agめっき層の光沢度が低下することなく、めっき表面のめっきムラを防止することができる。
また、本発明の一態様のリードフレームにおいては、好ましくは、光沢Niめっき層のめっき厚さが、0.5μm以上3.0μm以下である。
【0028】
また、本発明の一態様のリードフレームにおいては、好ましくは、光沢Niめっき層の結晶配向性は、面指数(111)が、面指数(200)よりも優位である。
また、本発明の一態様のリードフレームにおいては、好ましくは、Agめっき層の表面の反射率(460nm)が、90%以上である。
【0029】
また、本発明の一態様のリードフレームにおいては、好ましくは、Agめっき層のめっき厚さが、0.3μm以上2.5μm以下である。
このようにすれば、貴金属のめっき厚を薄くしてコスト削減をすることができる。
【0030】
また、本発明の一態様のリードフレームにおいては、好ましくは、光沢Niめっき層とAgめっき層の間に、Auめっき層が形成されている。
このようにすれば、めっき表面のめっきムラを防止できることに加えて、Cuの熱拡散防止効果も得られる。
【0031】
また、本発明の一態様のリードフレームにおいては、好ましくは、光沢Niめっき層とAuめっき層の間に、Pdめっき層が形成されている。
このようにすれば、めっき表面のめっきムラを防止できることに加えて、Cuの熱拡散防止と同時にAuめっき層の厚さを薄くして高価なAuの使用量を低減させることもできる。
【0032】
また、本発明の一態様の樹脂付きリードフレームは、上記本発明のいずれかのリードフレームと、光半導体素子を搭載するダイパッド部及び光半導体素子と電気的に接続可能なリード部の周囲を囲むリフレクタ外側樹脂部と、を備えてなる。
このようにすれば、樹脂付きリードフレームにおける最表層の光沢度1.6以上のAgめっき層を、めっき厚0.3μm以上2.5μm以下で形成することで、めっき表面の光沢度を1.6以上に維持し、かつ、めっき表面のめっきムラを防止し、貴金属のめっき厚を薄くしてコスト削減をすることが可能な樹脂付きリードフレームが得られる。
【0033】
また、本発明の一態様の光半導体装置は、上記本発明のいずれかの樹脂付きリードフレームと、ダイパッド部に搭載された光半導体素子と、光半導体素子とリード部とを電気的に接続した接続体と、リフレクタ樹脂部に囲まれた、光半導体素子と接続体とを含む領域を充填する透明樹脂で形成された封止樹脂部と、を備えてなる。
このようにすれば、光半導体装置における最表層の光沢度1.6以上のAgめっき層のめっき厚を0.3μm以上2.5μm以下で形成することで、めっき表面の光沢度を1.6以上に維持し、かつ、めっき表面のめっきムラを防止し、貴金属のめっき厚を薄くしてコスト削減をすることが可能な光半導体装置が得られる。
【0034】
また、本発明の一態様によるリードフレームの製造方法は、光半導体装置に用いるリードフレームの製造方法であって、
Cu系材料を用いた金属板からなるリードフレーム基材における、光半導体素子を搭載するダイパッド部及び前記光半導体素子と電気的に接続可能なリード部に対応する箇所の少なくとも一部もしくは全面の何れかの表面に、光沢度
が2.5以上3.5以下
、表面粗さがRaで0.02μm以上0.05μm以下の光沢Niめっき層
を形成し、光沢Niめっき層の表面に、最表層が光沢度1.6以上のAgめっき層からなる貴金属めっき
層を積層する。
このようにすれば、最表層の光沢度1.6以上のAgめっき層を、めっき厚0.3μm以上2.5μm以下で形成することで、めっき表面の光沢度を1.6以上に維持し、かつ、めっき表面のめっきムラを防止し、貴金属のめっき厚を薄くしてコスト削減をすることが可能なリードフレームが得られる。
【0035】
また、本発明の一態様のリードフレームの製造方法においては、好ましくは、Agめっき層を、表面粗さが、Raで0.02μm以上0.05μm以下となるように形成する。
このようにすれば、下地の結晶粒の大きさの影響を受けることなく、Agめっき層の光沢度が低下することなく、めっき表面のめっきムラを防止することが可能なリードフレームが得られる。
【0036】
また、本発明の一態様のリードフレームの製造方法においては、好ましくは、光沢Niめっき層を形成する際におけるめっき浴を、硫黄を含む光沢剤入りスルファミン酸浴とし、電流密度を3〜10A/dm
2とする。
このようにすれば、緻密なNi粒子を成長させて、光沢Niめっき面を形成することができ、光沢Niめっき面の上に、最表層がAgめっき層からなる貴金属めっきが積層されることによって形成されるめっき表面のめっきムラを防止することが可能なリードフレームが得られる。
【0037】
また、本発明の一態様のリードフレームの製造方法においては、好ましくは、最表層のAgめっき層を、めっき厚が0.3μm以上2.5μmと以下なるように形成する。
このようにすれば、貴金属のめっき厚を薄くしてコスト削減をすることが可能なリードフレームが得られる。
【0038】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではなく、また、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0039】
[リードフレーム、樹脂付きリードフレーム、光半導体装置]
図1は本発明の一実施形態に係る光半導体装置用リードフレームの構成を概略的に示す断面図である。
本実施形態の光半導体装置用リードフレーム50は、リードフレーム基材をなす金属板をエッチング加工等して形成された、ダイパッド部30と、リード部40とを、備えて構成されている。
リードフレーム基材をなす金属板は、材質が一般的な銅系合金で、板厚が0.1mm〜0.3mmのものが用いられている。
ダイパッド部30は、光半導体素子を搭載するための領域である。リード部40は、ダイパッド部30に搭載された光半導体素子の電極を電気的に接続するための端子を構成する領域である。
ダイパッド部30及びリード部40の光半導体素子搭載面側の、少なくとも何れかをなすリードフレーム基材の表面には、めっきが施されており、ダイパッド部表面めっき層10及びリード部表面めっき層20の少なくとも何れかが形成されている。なお、
図1では便宜上、ダイパッド部表面めっき層10とリード部表面めっき層20の両方が形成された状態を示している。
これらのめっき層は、光半導体素子の搭載やワイヤーボンディングの用途に加えて、光半導体装置における光半導体素子から発せられた下方向へ向かう光を効率よくめっき表面で反射させる機能を有している。
【0040】
図2は本実施形態の光半導体装置用リードフレームのめっき構成を概略的に示す説明図で、(A)はその一例を示す図、(B)は他の例を示す図である。
ダイパッド部表面めっき層10及びリード部表面めっき層20は、
図2(A)に示すように、金属板を加工して形成されたダイパッド部30及びリード部40の少なくとも一部もしくは全面の何れかをなすリードフレーム基材の表面に、光沢度
が2.5以上3.5以下
、表面粗さがRaで0.02μm以上0.05μm以下の光沢Niめっき層11、21
が形成され、光沢Niめっき層11、21の表面に、最表層が光沢度1.6以上でAgめっき厚0.3μm〜2.5μmのAgめっき層12、22からなる貴金属めっき
層が積層されて、夫々構成されている。
なお、ダイパッド部表面めっき層10及びリード部表面めっき層20は、
図2(B)に示すように、金属板の表面側から、光沢度
が2.5以上3.5以下
、表面粗さがRaで0.02μm以上0.05μm以下の光沢Niめっき層11、21
が形成され、光沢Niめっき層11、21の表面に、Auめっき層13、23、最表層が光沢度1.6以上でAgめっき厚0.3μm〜2.5μmのAgめっき層12、22からなる貴金属めっき
層が積層されて、夫々構成されていてもよい。
あるいは、ダイパッド部表面めっき層10及びリード部表面めっき層20は、光沢度2.0以上3.5以下の光沢Niめっき層と、Pdめっき層、Auめっき層、最表層が光沢度1.6以上でAgめっき厚0.3μm〜2.5μmのAgめっき層からなる貴金属めっき層と、が積層されて、夫々構成されていてもよい。
なお、本実施形態のリードフレームにおけるダイパッド部表面めっき層10及びリード部表面めっき層20の構造、メカニズム等の詳細については後述する。
【0041】
図3は本発明の一実施形態に係る樹脂付きリードフレームの構成を概略的に示す断面図である。
本実施形態の樹脂付きリードフレームは、
図3に示すように、
図1に示した本実施形態のリードフレームと、リフレクタ樹脂部110と、を備えている。
リフレクタ樹脂部110は、リードフレームにおけるダイパッド部30の光半導体素子搭載部10aと、リード部40のボンディングワイヤー等の接続部20aを囲むように、ダイパッド部30及びリード部40の表面側に形成されている。
また、リフレクタ樹脂部110は、同時にダイパッド部30とリード部40が対向する空隙部111等にもリフレクタ樹脂が充填されて形成されている。
リフレクタ樹脂部110は、光半導体素子から発せられた横方向及び下方向へ向かう光を上方へ反射させる機能を有している。
【0042】
図4は本発明の一実施形態に係る光半導体装置の一例の構成を概略的に示す断面図である。
本実施形態の光半導体装置150は、
図3に示す樹脂付きリードフレーム100を用いて構成されている。
詳しくは、樹脂付きリードフレーム100におけるダイパッド部30の表面に形成されためっき層10の上面の光半導体素子搭載部10aに光半導体素子160が搭載されている。
また、光半導体素子160の電極161とリード部40の表面に形成されためっき層20の上面のボンディングワイヤー等の接続部20aとがボンディングワイヤー170等により電気的に接続されている。
また、リフレクタ樹脂部110に囲まれた、光半導体素子160とボンディングワイヤー170とを含む領域には、透明樹脂を充填して形成した封止樹脂部180が設けられている。
【0043】
上述したように、本実施形態の光半導体装置用リードフレーム50は、光半導体素子160を搭載するダイパッド部30及び光半導体素子160と電気的に接続可能なリード部40の少なくとも一部もしくは全面の何れかをなすリードフレーム基材(
銅系合金を用いた金属板)の表面に、光沢度
が2.5以上3.5以下
、表面粗さがRaで0.02μm以上0.05μm以下の光沢Niめっき層11、21
が形成され、光沢Niめっき層11、21の表面に、最表層が光沢度1.6以上でAgめっき厚0.3μm〜2.5μmのAgめっき層12、22からなる貴金属めっき
層が積層されて構成されためっき層10、20とを有する点に特徴がある。
本実施形態の光半導体装置用リードフレーム50のように、ダイパッド部表面めっき層10及びリード部表面めっき層20を構成すると、めっき表面の光沢度を1.6以上に維持し、かつ、めっき表面のめっきムラを防止し、しかも、貴金属のめっき厚を薄くしてコスト削減をすることができる。
【0044】
ここで、本実施形態のリードフレームにおけるめっき層の構成により、めっきムラを防止できる理由、貴金属のめっき厚を薄くできる理由を詳細に説明する。
まず、
図5を用いて、めっきムラ発生のメカニズムについて説明する。
図5は従来技術を用いてリードフレーム基材をなす金属板に形成しためっき表面における、めっきムラが発生していない正常部とめっきムラが発生しためっきムラ部の夫々のめっき層の画像で、(A)は正常部のAgめっき層の表面の状態を示す画像、(B)はめっきムラ部のAgめっき層の表面の状態を示す画像、(C)は正常部のめっき層の断面の状態を示す走査イオン顕微鏡(SIM:Scanning Ion Microscope)画像、(D)はめっきムラ部のめっき層の断面の状態を示す走査イオン顕微鏡画像である。
めっきムラが発生していない正常部では、
図5(A)に示すように、Agめっき層の表面はほぼ平滑な面となっている。
これに対して、めっきムラが発生しためっきムラ部では、
図5(B)に示すように、Agめっき層の表面は、面が荒れた状態で凹凸がある。この凹凸は、撮影倍率5000倍にすることで、認識しうる程度の極小の凹凸である。
ここで、本発明者は、正常部とめっきムラ部の夫々におけるめっき層の断面の結晶状態を、走査イオン顕微鏡を用いて観察した。
めっきムラが発生していない正常部では、
図5(C)に示すように、Agめっき層の上面はほぼ平坦となっていることが認められた。
これに対して、めっきムラが発生しためっきムラ部では、
図5(D)に示すように、Agめっき層の上面が窪んでいることが認められた。
また、
図5(C)と
図5(D)を比較すると、
図5(D)に示すめっきムラ部では、特にAgめっき層の上面に窪みがある領域でNiめっき層及びCu材の結晶が大きくなっていることが認められた。
めっきの結晶の大きさは、めっき条件により制御することができるが、めっき条件が同一である場合は、めっき層の結晶の大きさは、その下地にある結晶粒の大きさに相関する傾向がある。
図5に示すめっき層の場合、Agめっき層の結晶の大きさは、Agめっき層の下地めっき層であるNiめっき層やリードフレーム基材である金属板の結晶状態の影響を受けたものと考えられる。
【0045】
めっき層は、金属板表面の結晶粒の大きさに相関して成長する。金属板表面の結晶粒が微細な場合は、緻密なめっき結晶が成長し、金属板表面の結晶粒が大きい場合は、めっきの結晶も粗大化する。
しかるに、金属結晶は一つ一つの結晶体積がほぼ等しく結晶成長することから、粗大化した金属結晶は、高さが低くなる。
このため、結晶粒が微細な部分に比べて結晶粒が粗大化した部分は、その周囲の結晶粒が微細な部分に比べて陥没した形状になる。
この陥没がめっき表面の凹凸となり、平滑な正常部に比べて、凹凸部分の明るさに差を生じ、その明るさの差が、外観上、めっきムラと判断されるものと考えられる。
【0046】
しかるに、本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、リードフレームを、ダイパッド部30及びリード部40の少なくとも一部もしくは全面の何れかをなす
、銅系合金を用いた金属板からなるリードフレーム基材の表面に、光沢度
が2.5以上3.5以下
、表面粗さがRaで0.02μm以上0.05μm以下の光沢Niめっき層
が形成され、光沢Niめっき層の表面に、最表層が光沢度1.6以上のAgめっき厚0.3μm〜2.5μmのAgめっき層からなる貴金属めっき
層が積層された構成とすることで、めっき表面の光沢度を1.6以上に維持し、かつ、めっきムラ等外観上の不良を防止し、しかも、貴金属のめっき厚を薄くしてコスト削減をすることができることを見出した。
【0047】
本実施形態のリードフレーム50におけるめっき層は、上述のように、リードフレームの最表面が光沢度1.6以上のAgめっき層12、22からなる貴金属めっき層を形成し、その貴金属めっき層の下地に、光沢度
が2.5以上3.5以下
、表面粗さがRaで0.02μm以上0.05μm以下の光沢Niめっき層11、21が
、銅系合金を用いた金属板からなるリードフレーム基材の表面に形成された構成となっている。
本実施形態のリードフレーム50では、リードフレームの光半導体素子搭載面側のめっき層は、最表層のAgめっき層12、22を光沢度1.6以上のAgめっき厚0.3μm以上2.5μm以下にしたことで、光半導体素子から発せられた下方向へ向かう光を効率よくめっき表面で反射させるようにしている。このとき、特にAgめっき面の光沢度を2.0以上の高光沢を維持するには、光沢度1.6以上のAgめっき層を設けるだけではなく、Agめっき層の下地となる下地めっき層の品質も重要である。
なお、本明細書中における光沢度とは、例えば日本電色社製のマイクロカラーメーターVSR400を用いて、コリメーター径0.05mmφ、光源角度45°の条件で測定した光沢度の値である。
【0048】
従来のリードフレームでは、Niめっき層で下地めっき層を形成していた。Niめっき層は上述したように、基本的には緻密で微細な結晶粒を形成するが、その下側にあるリードフレーム基材である金属板の表面の結晶粒の大きさの影響を受けやすい。
そこで、本実施形態のリードフレーム50では、Niめっき液中に硫黄を含む光沢剤を加えることによって得られる光沢度
が2.5以上3.5以下
、表面粗さがRaで0.02μm以上0.05μm以下の光沢Niめっき層11、21を
、リードフレーム基材である
、銅系合金を用いた金属板の表面に形成している。
光沢剤を用いない通常のNiめっきに比べて、光沢剤を加えることによって得た光沢度
が2.5以上3.5以下
、表面粗さがRaで0.02μm以上0.05μm以下の光沢Niめっきは結晶粒が小さくなる。このため、金属板の結晶粒径が大きな箇所でも、光沢Niめっき層の結晶粒径は小さく、その微細結晶が層状に形成されて光沢Niめっき表面では鏡状の平坦性が得られる。
そして、光沢Niめっき層が均一な微細結晶粒径となっていることにより、光沢Niめっき層の上に形成するAgめっき層は、均一なめっき粒径のめっき層として形成される。
その結果、めっき表面のめっきムラの発生を防止することができる。
【0049】
Niめっき結晶成長は金属板表面のCu結晶に従いエピタキシャル成長することが一般的に論じられている。Niめっき層の上にさらにAgめっき層を形成する場合のエピタキシャル成長は、CuとNi及びAgの異種の結晶にてヘテロエピタキシャルと呼ばれる。
ヘテロエピタキシャル成長では、層成長から島成長に移り変わる場合が指摘されている。
結晶格子の整合が取れた面での結晶成長は、フランク・ファンデルメルヴェ成長様式と呼ばれ、層成長となる。これに対し、結晶格子が不整合な状態での結晶成長は、フォルマー・ウェーバー成長様式と呼ばれ、島成長となる。
金属板表面の加工変質層の有無や結晶成長方向の差等により部分的に島成長した箇所のめっき結晶が最終的に表面上で窪んで見える結果となる現象であると言える。
図5(B)及び(D)のめっきムラ部は窪んだ表面状態を示している。
【0050】
本実施形態のリードフレーム50に用いられる光沢Niめっき層11、21は、Niめっき液中に硫黄を含む光沢剤を加えることによって、Niめっき結晶成長過程で上記島成長を優位にする手法でNiめっき成長を全域で均一に島成長をさせて層成長を低減させることによって得た構造を有している。島成長を均一化させた層構造の上に積層させるAgめっき結晶成長が均一化されて層成長と島成長の混在の差が軽減されることで最終表面の均一化を得ている。層成長を低減させることによって、層成長の中に介在する島成長による結晶表面窪みを結果的に軽減している。
【0051】
図6は本実施形態の光半導体装置用リードフレームのめっき層の断面の状態を示す走査イオン顕微鏡画像である。
図6に示すように、金属板表面は大きなCuの結晶が形成された面であるが、その上に光沢Niめっき層が形成されている。光沢Niめっき層は、大きなNiめっきの結晶はなく、均一な微細結晶粒となっている。また、Agめっき層の上面の窪みも生じていない。
【0052】
次にモデル図を用いてめっきムラ防止のメカニズムを説明する。
図7は従来技術により形成しためっき層の、めっきムラが発生しためっきムラ部と、本実施形態の光半導体装置用リードフレームにおいて形成されためっき層の、めっきムラが発生していない正常部の夫々における、各めっき層の結晶粒子を模式的に示す説明図で、(A)は従来技術によるめっきムラ部における各めっき層の結晶粒子を示す図、(B)は本実施形態のリードフレームによる正常部における各めっき層の結晶粒子を示す図である。
従来技術により形成しためっき層では、
図7(A)に示すように、金属板結晶粒径の大きさに影響を受けて、その上のNi粒子も成長し、さらにその上のAgめっき層に影響し、結果としてAgめっき面が窪み、めっきムラとなる。
これに対して、本実施形態のリードフレーム50では、
図7(B)に示すように、均一な微細結晶粒の光沢Niめっき層を形成することで、金属板結晶粒径の大きさに影響を受けず、光沢Ni結晶粒径のそれぞれの大きさの差が小さい状態で成長し、さらにその上のAgめっき面が窪むことなく平滑なめっき面とすることができ、めっきムラを防止できる。
また、光沢Niめっき層を形成することで、光沢Niめっき層を形成した後に光沢度を上げるためのエッチング粗化をする必要がないので、製造効率を向上させることができる。
【0053】
また、本実施形態のリードフレーム50における光沢Niめっき層11、21の表面粗さは、
上述のように、Raで0.02μm以上0.05μm以下の範囲である。
光沢Niめっき層11、21の表面粗さがRa0.02μm未満の場合、下地の結晶粒の大きさの影響を受けやすく、めっきムラの発生を防止できない。
一方、光沢Niめっき層11、21の表面粗さがRa0.05μmを超える場合、光沢Niめっき面全体に微細な凹凸形状が形成され、その上に形成されるAgめっき層の光沢度が低下し、最終的に光の反射率も低下してしまう。
本実施形態のリードフレーム50における光沢Niめっき層11、21の表面粗さは、好ましくは、Raで0.03μm以上0.04μm以下の範囲である。
なお、本明細書中における表面粗さとは、中心線平均粗さであって、例えばオリンパス社製の走査型共焦点レーザー顕微鏡 LEXT OLS3000で測定した値である。
【0054】
また、本実施形態のリードフレーム50における光沢Niめっき層11、21の光沢度は、
上述のように、2.5以上3.5以下の範囲である。
光沢Niめっき層は、スルファミン酸系のめっき液に硫黄を含む光沢剤等を加えたものを使用して形成する。
光沢Niめっき層の光沢度が
2.5未満の場合、最表層のAgめっき層の光沢度に影響し、所定の光沢を出すことができなくな
り易い。
一方、光沢度が3.5を超えると過剰なNiめっき液中の光沢剤が必要となり経済的な無駄を生じる。
本実施形態のリードフレーム50における光沢Niめっき層11、21の光沢度は、好ましくは、2.5以上3.0以下の範囲である。
【0055】
また、本実施形態のリードフレーム50における光沢Niめっき層11、21のめっき厚さは、0.5μm以上3.0μm以下である。
光沢Niめっき層11、21のめっき厚さが0.5μm未満では、下地めっき層の役割を果たせず、その上に形成されるAgめっき層の光沢度を低下させてしまい、また、Agめっき層の硫化腐蝕を防止する効果を維持することができない。
一方、光沢Niめっき層11、21のめっき厚さが3.0μmを超えると、めっき層の生産時間が長くなり生産性が低下する。また、めっき応力が発生しやすく、反り発生の原因となり、めっき剥がれの原因となる虞がある。
本実施形態のリードフレーム50における光沢Niめっき層11、21のめっき厚さは、好ましくは、2.0μm前後である。
【0056】
また、本実施形態のリードフレーム50における光沢Niめっき層11、21の上側には光沢度1.6以上のAgめっき層12、22が形成されている。Agめっき層12、22のめっき厚は0.3μm以上2.5μm以下が好ましい。
Agめっき層のめっき厚さが2.5μmを超えると、Ag使用量が増加してコストアップとなり、また、めっき層の生産時間が長くなり生産性が低下する。
一方、Agめっき層のめっき厚さが0.3μm未満では、ワイヤーボンディング特性を得られない虞がある。
本実施形態のリードフレーム50におけるAgめっき層12、22のめっき厚さは、好ましくは、1.0μm前後である。
【0057】
また、本実施形態のリードフレーム50におけるAgめっき層12、22の表面粗さは、Raで0.02μm以上0.05μm以下である。
Agめっき層は、下地の光沢Niめっき層の表面粗さを継承するため、Agめっき層の表面粗さは光沢Niめっき層の表面粗さと同等の数値が得られることとなる。このような範囲の表面粗さにすると、Agめっき層の表面は、90%以上の反射率(460nm)が得られる。
【0058】
また、本実施形態のリードフレーム50における光沢Niめっき層11、21の結晶配向性は、面指数(111)が、面指数(200)よりも優位である。
【0059】
また、本実施形態のリードフレーム50においては、光沢Niめっき層11、21と最表層のAgめっき層12、22の間に、他の貴金属めっき層を形成しても良い。例えば、Auめっき層13、23を形成しても良い。Auめっき層を追加すると、リードフレーム基材に用いる金属材であるCuの最表面への熱拡散防止効果がある。Auめっき層13、23の厚さは、0.001μm以上0.01μm以下である。
Auめっき層の厚さが0.001μm未満では、下地のCuの熱拡散防止の役割を果たせない。
一方、Auめっき層の厚さが0.01μmを超えると、めっき層の生産時間が長くなり生産性が低下する。また、高価であるAuの使用量が多くなり生産コストが上昇してしまう。
本実施形態のリードフレーム50におけるAuめっき層13、23の厚さは、好ましくは、0.005μm前後である。
【0060】
また、本実施形態のリードフレーム50においては、光沢Niめっき層11、21と最表層のめっき層であるAgめっき層12、22の間に、Pdめっき層及びAuめっき層を形成しても良い。Pdめっき層は、下地のCuの熱拡散防止と同時にAuめっき層の厚さを軽減させ高価なAuの使用量を低減する役目がある。
しかるに、この場合、その下地めっき層である光沢Niめっき層の均一な微細結晶粒をそのまま引き継ぐようなめっき厚さにする必要がある。
Pdめっき層の厚さは、0.01μm以上0.1μm以下である。
Pdめっき層の厚さが0.01μm未満では、下地のCuの熱拡散防止の役割を果たせない。
一方、Pdめっき層の厚さが0.1μmを超えると、めっき層の生産時間が長くなり生産性が低下する。また、高価であるPdの使用量が多くなり生産コストが上昇してしまう。
本実施形態のリードフレーム50におけるPdめっき層の厚さは、好ましくは、0.03μm前後である。
【0061】
また、本実施形態のリードフレーム50を使用することで、本実施形態の光半導体装置用樹脂付きリードフレーム100及びこれを用いた本実施形態の半導体装置150を作製することができる。
本実施形態の半導体装置150によれば、リードフレーム50において、光沢Niめっき層11、
21が、最表層のAgめっき層12、22の表面の反射層に生じるムラ(表面の微細窪み)を軽減させることにより反射率の安定化を図れる。
また、本実施形態の樹脂付きリードフレーム100、半導体装置150によれば、Agめっき層12、22における外観上の検査歩留まりを大きく改善できる。そして、Agめっき厚を薄く設定することで、貴金属のめっき厚を薄くしてコスト削減をすることが可能となる。
【0062】
[リードフレームの製造方法]
次に、本発明の一実施形態に係るリードフレームの製造方法を説明する。リードフレームを作製する方法は、大きく分けて2つの方法がある。所定のパターンを形成したリードフレームにめっきを施す後めっき法と、所定のパターンを形成する前に金属板表面に必要な個所、すなわちダイパッド部とリード部が形成される該当箇所へめっきを先に施し、その後レジスト層等でマスクし所定のパターンを形成しリードフレームを作製する先めっき法である。
なお本明細書中における該当箇所とは、ダイパッド部とリード部をこれから作製する箇所と作製した後の箇所の両方を含む。以下、先めっき法を用いたリードフレームの製造方法について説明する。
【0063】
図8は本発明の一実施形態に係るリードフレームの製造方法の一連の工程を模式的に示す説明図である。
本実施形態の光半導体素子実装用のリードフレームの製造に際しては、まず、リードフレーム基材をなす金属板60を準備する(
図8(A)参照)。使用する金属板60の材質は
、Cu合金又はCuを使用する。
次に、金属板60の表裏面にフォトレジスト(例えば、ドライフィルムレジスト)をラミネートしてフォトレジスト層を設け、その上にめっきパターンが形成されたガラスマスクを被せ、露光しレジストに転写し現像することでめっき用レジストマスク70を形成する(
図8(B)参照)。
次に、めっき用レジストマスク70を用いて、レジストマスクの開口部に電解めっき法によって、ダイパッド部表面めっき層10及びリード部表面めっき層20を形成するために、
図2(A)に示すような光沢Niめっき層11、
21、Agめっき層12、22、あるいは、
図2(B)に示すような光沢Niめっき層11、
21、Auめっき層13、23、Agめっき層12、22を形成する(
図8(C)参照)。なお、ダイパッド部表面めっき層10及びリード部表面めっき層20として、光沢Niめっき層、Pdめっき層、Auめっき層、Agめっき層の順でめっき層を形成してもよい。
光沢Niめっきに用いるめっき液は、スルファミン酸系のめっき液に硫黄を含む光沢剤を加えたものを使用する。電流密度は 3〜10A/dm
2で結晶が均一な微細結晶粒状になるようにする。光沢度は、電流密度、搬送速度等により所定の光沢度になるように適宜調整する。このようにすれば
図6、
図7(B)に示したように、光沢Niの均一な微細結晶粒を成長させて、光沢Niめっき層の平滑な表面を形成することができる。また、光沢Niめっき層の表面の中心線平均粗さRaを0.02μm以上0.05μm以下とすることができる。それにより下地の結晶粒の大きさの影響を受けることなく、そしてAgめっき層の光沢度が低下することなく、めっき表面のめっきムラを防止することができる。
Agめっき層のめっき厚は0.3μm以上2.5μm以下で調整する。下地の光沢Niめっき光沢度が
2.5以上3.5以下で仕上がった状態をAgめっき層も継承する結果、Agめっき層最表面の光沢度も1.6〜2.6程度の高い光沢度が得られることとなる。
通常のNiめっき層の上に形成するAgめっき層では、下地の影響を防止するために、一般的にAgめっき厚を2.5μm以上とする必要がある。
これに対し、本実施形態のリードフレームでは、光沢Niめっきで均一な微細結晶粒を形成するため、その表面状態を継承できるAgめっき厚であれば足り、Agめっき層表面へのワイヤーボンディング可能な層厚だけを考慮した0.3μm以上2.5μm以下のAgめっき厚が実現でき、Ag使用量の削減により大幅なコスト削減が可能となる。
【0064】
次に、金属板の両面に形成されているめっき用レジストマスク70を水酸化ナトリウム水溶液により剥離する(
図8(D)参照)。
次に、再度、金属板60上にフォトレジストをラミネートし、ダイパッド部やリード部のリードフレームパターンが形成されたガラスマスクをフォトリソグラフィ工程でレジストに転写し現像することで、エッチング用レジストマスク75を形成する(
図8(E)参照)。
次に、塩化第二鉄液等を用いたエッチングで余分な金属部分を除去してダイパッド部30やリード部40のリードフレーム形状を形成する(
図8(F)参照)。
次に、金属板の両面に形成されているエッチング用レジストマスク75を水酸化ナトリウム水溶液により剥離する(
図8(G)参照)。
これにより、ダイパッド部及びリード部に、部分的に光沢Niめっき層、Agめっき層、又は光沢Niめっき層、Auめっき層、Agめっき層、又は光沢Niめっき層、Pdめっき層、Auめっき層、Agめっき層が積層されたダイパッド部表面めっき層10及びリード部表面めっき層20が形成された、本実施形態のリードフレーム50が完成する。
【0065】
なお、本実施形態のリードフレームを後めっき法で製造する場合は、先に、
図8(E)〜
図8(G)に示したダイパッド部やリード部のリードフレームのパターン形状を、エッチング法にて形成し、その後、
図8(C)に示しためっきを施す。
部分めっきの場合、めっきを行う以外の箇所にゴムマスク等メカニカルなマスクやカバーフィルム、レジスト等のマスク等で覆い、その後、先めっき法を用いたリードフレームの製造方法において説明したのと同様のめっき法でめっき層10、20を形成する。
全面にめっきを施す場合は、先めっき法を用いたリードフレームの製造方法において説明しためっき用レジストマスク70を使用せず、リードフレームのパターン形状を形成した後、めっきを施す。
【0066】
なお、本実施形態のリードフレームにおけるめっき層の構成は、少なくとも半導体素子搭載面側の透明樹脂部と接触する領域が確保されていればよい。よって、外部端子部となるリードフレームの裏面側のめっき層は、同一のめっき層であっても良いし、違うめっき構成としてもよい。但し、表裏同一のめっき構成の方が同時にめっきを形成することができ生産性、コスト的に有利である。また、所定のリードフレームのパターンの形成については、エッチング法でなく、プレス法で行ってもよい。
【0067】
[樹脂付きリードフレームの製造方法]
次に、本発明の一実施形態に係る樹脂付きリードフレームの製造方法について説明する。
図9は本発明の一実施形態に係る樹脂付きリードフレームの一連の工程を模式的に示す説明図である。
本実施形態の樹脂付きリードフレーム製造工程では、本実施形態のリードフレーム50を準備する(
図9(A)参照)。
次に、リードフレーム50をトランスファーモールドや射出成形することにより、リードフレーム50にリフレクタ樹脂部110を形成する(
図9(B)参照)。リフレクタ樹脂としては、一般的には熱可塑性樹脂を使用する。リフレクタ樹脂部110は、リードフレーム50上のダイパッド部30及びリード部40の周囲であって、後述する光半導体素子160及びワイヤーボンディング170等でリード部40と電気的に接続した接続部の周囲を囲むように形成すると共に、ダイパッド部30とリード部40が対向する空隙部等にも同時にリフレクタ樹脂を充填して形成する。また、ダイパッド部30及びリード部40の周囲を囲むリフレクタ樹脂部110における内側の面は、光半導体素子160から発せられた横方向へ向かう光を、リフレクタ樹脂部110により上方へ反射させるようにテーパー形状に形成する。
これにより、本実施形態の樹脂付きリードフレーム100が完成する。
【0068】
[光半導体装置の製造方法]
次に、本発明の一実施形態に係る光半導体装置の製造方法について説明する。
図10は本発明の一実施形態に係る光半導体装置の製造方法の一連の工程を模式的に示す説明図である。
まず、
図9に示す工程を経て得た樹脂付きリードフレーム100を準備し、ダイパッド部表面めっき層10上に光半導体素子160を搭載する(
図10(A)参照)。より詳しくは、予め、Agペースト等をダイパッド部表面めっき層10の表面に塗布し、光半導体素子160をダイパッド部表面めっき層10上に固定する。
次に、光半導体素子160の電極とリード部表面めっき20とをワイヤーボンディング等の接続方法により、ボンディングワイヤー170等の接続手段を用いて電気的に接続する(
図10(B)参照)。
次に、リフレクタ樹脂部110で囲まれた光半導体素子160とボンディングワイヤー170等でリード部表面めっき20と電気的に接続された接続部を含む領域に透明樹脂を充填して封止樹脂部180を形成する(
図10(C)参照)。
次に、所定のパッケージ寸法になるように個片化する(
図10(D)参照)。一括で樹脂封止されている場合は、ダイシング等により、個別に樹脂封止されている場合は、プレス等で打ち抜き、個片化する。
これにより、本実施形態の光半導体装置150が完成する。
【実施例】
【0069】
次に、本発明の一実施形態に係るリードフレーム、樹脂付きリードフレーム、光半導体装置について実施例により詳しく説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0070】
[実施例1]
実施例1の光半導体装置用リードフレームは、リードフレームのパターンを形成した後、めっきを施す後めっき法でパターン全面にめっきを行う全面めっきでリードフレームを作製した。
詳しくは、まず、リードフレーム基材をなす金属板として板厚0.2mmのCu板を幅140mmの長尺板状に加工したものを準備し、次に、厚み0.05mmの感光性ドライフィルムレジストをラミネートロールで、金属板の両面に貼り付けた。
次に、表裏面側に、ダイパッド部及びリード部を形成するための所定のパターンが形成されたガラスマスクをドライフィルムレジストの上に被せ、紫外光で露光した。その後、炭酸ナトリウム溶液を用いて、紫外光の照射が遮られ、感光しなかった未硬化のドライフィルムレジストを溶かす現像処理を行った。
次に、レジスト層が除去された開口部の金属板の露出部表面をエッチングした。エッチング液としては、塩化第二鉄溶液を使用した。次に、水酸化ナトリウム溶液でドライフィルムレジストを剥離した。これにより、ダイパッド部及びリード部の形状が形成された。
次に、めっきマスク等を使用せず、全面にめっきを施した。まず、光沢Niめっきを施した。光沢Niめっきは、スルファミン酸系のめっき液に硫黄を含む光沢剤を適量加えたものを用い、電流密度5A/dm
2にて行った。なお、めっき条件を適宜調整し、光沢Niめっき層の厚さは2.0μm、表面粗さはRa0.04μmとし、そのときの光沢Niめっき面の光沢度が3.0となるようにした。その後、Agめっきを施した。Agめっきは、シアン系Agめっき液を用い、電流密度7A/dm
2にて行った。なお、めっき液条件を適宜調整し、Agめっき層の厚さは1.0μm、Agめっき面の光沢度は2.0となるようにした。その後、所定寸法に切断することにより、実施例1のリードフレームを完成させた。
次に、作製したリードフレームに、リフレクタ樹脂部を形成した。リフレクタ樹脂部は、光半導体素子及びワイヤーボンディング等でリード部と電気的に接続した接続部を囲うように形成した。また、同時に、ダイパッド部とリード部の対向する空隙部等にもリフレクタ樹脂を充填した。これにより、実施例1の樹脂付きリードフレームを完成させた。
次に、作製した樹脂付きリードフレームのダイパッド部に予め、Agペースト等を表面に塗布し、光半導体素子をダイパッド部上に搭載した。次に、光半導体素子の電極とリード部とをワイヤーボンディングにて接続した。次に、光半導体素子及びワイヤーボンディング部を含め、リフレクタ樹脂部の開口部に透明樹脂を充填して封止樹脂部を形成した。
次に、所定の光半導体装置の寸法になるように切断し、実施例1の光半導体装置を完成させた。
【0071】
〔実施例2〕〜〔実施例7〕
実施例2では、光沢Niめっき層の厚さを0.5μmとした以外は実施例1と同様に、リードフレーム、樹脂付きリードフレーム、光半導体装置を作製した。
実施例3では、光沢Niめっき層の厚さを3.0μmとした以外は実施例1と同様に、リードフレーム、樹脂付きリードフレーム、光半導体装置を作製した。
実施例4では、光沢Niめっき層の表面粗さをRa0.02μm、光沢Niめっき面の光沢度を3.1となるようにし、Agめっき面の光沢度を2.1となるようにした以外は実施例1と同様に、リードフレーム、樹脂付きリードフレーム、光半導体装置を作製した。
実施例5では、光沢Niめっき層の表面粗さをRa0.05μm、光沢Niめっき面の光沢度を3.1となるようにし、Agめっき層の厚さを0.9μm、Agめっき面の光沢度を2.1となるようにした以外は実施例1と同様に、リードフレーム、樹脂付きリードフレーム、光半導体装置を作製した。
実施例6では、Agめっき層の厚さを0.3μm、Agめっき面の光沢度を2.2となるようにした以外は実施例1と同様に、リードフレーム、樹脂付きリードフレーム、光半導体装置を作製した。
実施例7では、Agめっき層の厚さを2.5μm、Agめっき面の光沢度を1.9となるようにした以外は実施例1と同様に、リードフレーム、樹脂付きリードフレーム、光半導体装置を作製した。
【0072】
〔実施例8〕
実施例8では、実施例1で用いた後めっき法ではなく、金属板にまず所定の箇所にめっきを施し、その後リードフレームのパターンを形成する先めっき法でリードフレームを作製した。
詳しくは、まず、リードフレーム基材をなす金属板として板厚0.2mmのCu板を幅140mmの長尺板状に加工したものを準備し、次に、厚み0.05mmの感光性ドライフィルムレジストをラミネートロールで、金属板の両面に貼り付けた。
次に、表面側は、ダイパッド部及びリード部のパターン、裏面側は、外部端子部のパターンが形成されたガラスマスクをドライフィルムレジストの上に被せ、紫外光で露光した。その後、炭酸ナトリウム溶液を用いて、紫外光の照射が遮られ感光しなかった未硬化のドライフィルムレジストを溶かす現像処理を行った。
次に、レジスト層が除去された開口部の金属板の露出部表面に、光沢Niめっきを施した。光沢Niめっきは、スルファミン酸系のめっき液に硫黄を含む光沢剤を適量加えたものを用い、電流密度5A/dm
2にて行った。なお、めっき条件を適宜調整し、光沢Niめっき層の厚さは2.0μm、表面粗さはRa0.04μmとし、そのときの光沢Niめっき面の光沢度が3.0となるようにした。その後、Pdめっきを厚さ0.03μm施した。次に、Auめっきを厚さ0.007μm施した。次に、Agめっきを施した。Agめっきは、シアン系Agめっき液を用い、電流密度7A/dm
2にて行った。なお、めっき液条件を適宜調整し、Agめっき層の厚さは1.0μm、Agめっき面の光沢度は2.0となるようにした。
次に、水酸化ナトリウム溶液でドライフィルムレジストを剥離した。これにより、金属板のダイパッド部及びリード部の所定の領域にめっき層を形成した。次に、再度、厚み0.05mmの感光性ドライフィルムレジストをラミネートロールで、金属板の両面に貼り付けた。
次に、表裏面側に、ダイパッド部及びリード部を形成するための所定のパターンが形成されたガラスマスクをドライフィルムレジストの上に被せ、紫外光で露光した。その後、炭酸ナトリウム溶液を用いて紫外光の照射が遮られ感光しなかった未硬化のドライフィルムレジストを溶かす現像処理を行った。
次に、レジスト層が除去された開口部の金属板の露出部表面をエッチングした。エッチング液としては、塩化第二鉄溶液を使用した。これにより、ダイパッド部及びリード部の形状が形成された。次に、水酸化ナトリウム溶液でドライフィルムレジストを剥離した。その後、所定寸法に切断することにより、本発明の実施例8のリードフレームを完成させた。
以下、実施例1と同様に、樹脂付きリードフレーム、光半導体装置を作製した。
【0073】
〔比較例1〕
比較例1では、実施例1の光沢Niめっきで使用するスルファミン酸系のめっき液に光沢剤を添加しないでNiめっきを行った。Niめっき面の光沢度を1.8、Niめっき層の表面粗さをRa0.07μm、Agめっき層の厚さを3.0μm、Agめっき面の光沢度を1.5となるようにした。その他は、実施例1と同様に、リードフレーム、樹脂付きリードフレーム、光半導体装置を作製した。
【0074】
〔比較例2〕、〔比較例3〕
比較例2では、光沢Niめっきの表面粗さをRa0.01μm、光沢Niめっき面の光沢度を3.6とし、Agめっき面の光沢度は2.7となるようにした以外は、実施例1と同様に、リードフレーム、樹脂付きリードフレーム、光半導体装置を作製した。
比較例3では、光沢Niめっきの表面粗さをRa0.06μm、光沢Niめっき面の光沢度を1.9、Agめっき面の光沢度を1.5となるようにした以外は、実施例1と同様に、リードフレーム、樹脂付きリードフレーム、光半導体装置を作製した。
【0075】
めっき表面のめっきムラの有無評価及び製造コスト評価
実施例1〜8、比較例1〜3のリードフレームを夫々1000枚作製し、リードフレーム作製段階にて自動外観検査装置を用いて、めっき表面の外観状態を検査し、めっきムラの有無を評価した。
その評価結果を表1に示す。めっきムラの発生率が0.3%未満のものを「◎」、0.3%以上1%以下のものを「〇」、1%超のものを「×」で示した。また、実施例1〜8、比較例1〜3のリードフレームの製造コストも評価した。コストの評価は、使用しためっき薬品と貴金属の価格に関し、従来のものと相対的に評価し、コストが従来のものよりも安価となるものを「◎」、従来のものと同等のものを「〇」、従来のものよりも高価となるものを「×」で示した。
なお、ここでの「従来のもの」は、めっき薬品の価格の比較基準に関しては「光沢剤を含有しないNiめっき液を用いてNiめっきすることにより、Niめっき面の光沢度が2.0以下(一般的には光沢度が1.0〜1.5の範囲)となるもの」を対象とし、貴金属の価格の比較基準に関しては「Agめっき層の厚さが2.5μm以上(一般的には2.5〜5.0μmの範囲)のもの」を対象とした。
また、実施例1〜8、比較例1〜3のリードフレームの夫々について、光沢Niめっき層(比較例1ではNiめっき層)の結晶配向性と、Agめっき層の表面の反射率(460μm)とを調べた。
光沢Niめっき層(比較例1ではNiめっき層)の結晶配向性は、樹脂付きリードフレームや光半導体装置の製造工程における加熱環境を考慮し、夫々のリードフレームを200℃で2時間加熱したものを用い、加熱後のリードフレームに対し、X線回折装置を用いて積層された状態のAgめっき層表面からX線回折による光沢Niめっき層(比較例1ではNiめっき層)における面指数に対する回折強度を検出し、検出結果から、優位となる配向性を調べた。
表1中、光沢Niめっき層(比較例1ではNiめっき層)の結晶配向性は、面指数(111)、面指数(200)のうち、回折強度が優位となる面指数を示している。
また、Agめっき層表面の反射率は、反射率計を用いて測定した正反射率と拡散反射率を合計した値で示した。
【0076】
【表1】
【0077】
表1に示すように、実施例1〜8のリードフレームは、いずれも、めっきムラの発生率が0.3%未満であり、コストも従来のものに比べて安価となることが認められた。
一方、比較例1のリードフレームでは、めっきムラによる外観不具合が4%程度発生し、貴金属使用量も多く、コストが高価となることが認められた。
また、比較例2のリードフレームは、比較例1のリードフレームに比べればめっきムラの発生率は軽微であったが、実施例1〜8のリードフレームに比べるとめっきムラの発生率が高く、また、薬品使用量が多く、コストが高価となることが認められた。
また、比較例3のリードフレームは、コストは安価となったが、光沢Niめっき層の表面粗さが粗くかつ光沢度も低くAgめっき面の光沢度が1.6を下まわるために、めっきムラによる外観不具合が3%程度発生した。
【0078】
また、実施例1〜8のリードフレームを使用した樹脂付きリードフレーム及び光半導体装置については、工程上問題なく生産することができた。
これにより、実施例1〜8のリードフレーム、樹脂付きリードフレーム、光半導体装置では、光沢度
が2.5以上3.5以下
、表面粗さがRaで0.02μm以上0.05μm以下の光沢めっきからなるNiめっき層
が形成され、光沢Niめっき層の表面に、最表層が光沢度1.6以上のAgめっき層からなる貴金属めっき
層が積層された構成とすることで、めっき表面の光沢度を1.6以上に維持し、かつ、めっき表面のめっきムラ等、外観上の不具合を防止し、しかも、貴金属のめっき厚を薄くしてコスト削減
をすることが実証できた。
【0079】
なお、上述のように本発明の各実施形態及び各実施例について詳細に説明したが、本発明のリードフレーム、樹脂付きリードフレーム及び光半導体装置、並びにリードフレームの製造方法は、新規事項及び効果から実体的に逸脱しない範囲で多くの変形が可能であり、そのような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、リードフレーム、樹脂付きリードフレーム、光半導体装置、及びリードフレームの製造方法、動作も本発明の各実施形態及び各実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。