(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一弾性体及び前記第二弾性体の損失係数tanδは、所定条件下において、前記アクチュエータの損失係数tanδと同等以下である、請求項1−3の何れか一項に記載の振動提示装置。
前記第三弾性体の損失係数tanδは、所定条件下において、前記第一弾性体及び前記第二弾性体の損失係数tanδ以下である、請求項1−5の何れか一項に記載の振動提示装置。
前記振動提示装置は、前記第一弾性体と前記カバーとの対向面間に配置され、前記アクチュエータと前記カバーの対向面積より小さな面積を有するプッシャーを備える、請求項1−6の何れか一項に記載の振動提示装置。
前記振動提示装置は、前記マスと前記第二弾性体との対向面間に、前記アクチュエータと前記マスの対向面積より小さな面積を有するプッシャーを備える、請求項1−6の何れか一項に記載の振動提示装置。
前記第四弾性体は、さらに、前記カバーにおける前記積層体の積層方向に交差する方向に対向する面の外側に配置される、請求項12−14の何れか一項に記載の振動提示装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<1.第一実施形態>
(1−1.振動提示装置1の用途)
振動提示装置1は、部材を振動させる装置(加振器)、音を発生する装置(スピーカ)に適用できる。部材を振動させる装置としては、例えば、人間に触覚振動を付与する装置、構造物の制振のために構造物に逆位相の振動を付与する装置などである。音を発生する装置としては、人間の聴覚にて感じる音波を発生する装置、ノイズ音をキャンセルするサウンドマスキング装置などである。
【0015】
加振装置が発生する振動は、相対的に低周波振動であり、音発生装置が発生する音は、相対的に高周波振動である。本実施形態の振動提示装置1は、バネマス系の振動を利用するため、低周波振動の加振器、及び、低周波音の発生器に適している。
【0016】
ただし、本実施形態の振動提示装置1は、人間に触覚振動を付与する装置を例に挙げて説明する。特に、振動提示装置1は、携帯端末に設けられ、当該携帯端末を携帯している人間に対して触覚振動を付与する装置である。携帯端末としては、例えば、腕時計、携帯電話(スマートフォンを含む)、タブレット端末、介護用の携帯振動発生器などである。なお、本実施形態の振動提示装置1は、腕時計を例に挙げて説明する。
【0017】
(1−2.振動提示装置1の構成)
振動提示装置1の構成について
図1A及び
図1Bを参照して説明する。振動提示装置1は、腕時計の構成する部品である。つまり、振動提示装置1は、腕時計を装着している人間に対して、触覚振動を付与する。
【0018】
振動提示装置1は、
図1A及び
図1Bに示すように、アクチュエータ10、第一弾性体20、第二弾性体30、マス40、第三弾性体50、腕時計の筐体としてのカバー60を備える。そして、カバー60の内部において、第一弾性体20、アクチュエータ10、第二弾性体30、マス40、第三弾性体50の順に積層されている。第一弾性体20、アクチュエータ10、第二弾性体30、マス40及び第三弾性体50が、積層体を形成する。以下において、積層方向とは、カバー60の内部における積層体10−50の積層方向を意味する。なお、図示しないが、腕時計の時計機能の構成部品が、カバー60の内部に存在する。
【0019】
アクチュエータ10は、静電型のアクチュエータ、又は、圧電型のアクチュエータである。アクチュエータ10は、面状(扁平形状)に形成される。アクチュエータ10の外形は、長方形として図示するが、任意の形状とすることができる。アクチュエータ10の面方向が積層方向に直交する方向に一致するように、アクチュエータ10は、カバー60の内部に配置される。
【0020】
ここで、アクチュエータ10は、弾性率E
(10)を有すると共に、損失係数tanδ
(10)を有する材料が用いられる。例えば、アクチュエータ10が静電型の場合には、アクチュエータ10はエラストマーにより形成されており、厚み方向に伸縮する構造を有する。アクチュエータ10は、静電型の場合には、印加電圧に応じて厚みを変化させるように、伸縮変形する。そして、アクチュエータ10は、静電型の場合には、後述する支持構造によって、積層方向の伸縮に伴い曲げ変形する。また、アクチュエータ10は、圧電型の場合には、印加電圧に応じて、曲げ変形する。
【0021】
つまり、アクチュエータ10は、静電型及び圧電型の何れの場合にも、印加電圧に応じて曲げ変形する。そして、アクチュエータ10は、印加電圧に応じた曲げ変形によって、アクチュエータ10は積層方向に力を発生する。なお、アクチュエータ10の動作については後述する。
【0022】
第一弾性体20及び第二弾性体30は、面状(扁平形状)に形成される。第一弾性体20及び第二弾性体30は、同一材料により同一形状に形成される。ただし、第一弾性体20と第二弾性体30とは、異なる材料としてもよく、異なる形状としてもよい。また、第一弾性体20及び第二弾性体30の外周縁形状は、アクチュエータ10の外周縁形状と同一である。第一弾性体20は、アクチュエータ10の積層方向(厚み方向)の第一面(
図1A及び
図1Bの下面)の全面に接触して配置される。第二弾性体30は、アクチュエータ10の積層方向の第二面(
図1A及び
図1Bの上面)の全面に接触して配置される。なお、第一弾性体20及び第二弾性体30は、アクチュエータ10の第一面及び第二面の一部に接触するようにしてもよい。
【0023】
第一弾性体20及び第二弾性体30には、小さな弾性率E
(20),E
(30)を有すると共に、小さな損失係数tanδ
(20),tanδ
(30)を有する材料が用いられる。言い換えると、第一弾性体20及び第二弾性体30は、柔らかく、且つ、減衰特性が低い材料が好適である。
【0024】
特に、第一弾性体20及び第二弾性体30は、アクチュエータ10の積層方向の弾性率E
(10)より小さな弾性率E
(20),E
(30)を有する。アクチュエータ10の積層方向の弾性率E
(10)に対する第一弾性体20の弾性率E
(20)の比は、15%以下である。また、アクチュエータ10の積層方向の弾性率E
(10)に対する第二弾性体30の弾性率E
(30)の比は、15%以下である。これらの比は、好ましくは、10%以下である。
【0025】
さらに、第一弾性体20及び第二弾性体30は、所定条件下において、アクチュエータ10の損失係数tanδ
(10)と同等以下の損失係数tanδ
(20),tanδ
(30)を有する。所定条件下とは、温度を−10〜50℃、振動周波数を300Hz以下とする使用環境下を意味する。
【0026】
上記を満たす材料として、第一弾性体20及び第二弾性体30には、例えば、シリコーンゴムが好適である。例えば、ウレタンゴムは、シリコーンゴムに比べて減衰特性が良いため、第一弾性体20及び第二弾性体30には、ウレタンゴムはシリコーンゴムに比べてあまり適しない。ただし、目的の特性によっては、第一弾性体20及び第二弾性体30に、ウレタンゴムを使用することも可能である。
【0027】
マス40は、面状(扁平形状)に形成される部分を有する。マス40の面状の部分は、矩形状に形成される場合を図示するが、任意の形状とすることができる。マス40は、マス40の面状の部分における面法線方向に、アクチュエータ10に対して第二弾性体30を介して積層される。つまり、マス40の面法線方向と、アクチュエータ10の面法線方向とが、一致する。
図1A及び
図1Bにおいて、マス40は、第二弾性体30の
図1A及び
図1Bの上面に接触した状態で配置される。さらに、アクチュエータ10の重心とマス40の重心とが、アクチュエータ10の面法線方向の1つの軸上に位置する。
【0028】
ここで、本実施形態においては、マス40は、腕時計の制御基板41を収容する部品である。つまり、マス40は、制御基板41と、制御基板41を収容する筐体42とにより構成される。制御基板41は、時計機能を制御するための回路の他に、アクチュエータ10を駆動するための駆動回路、及び、当該駆動回路に電力を供給するバッテリが含まれている。つまり、マス40は、単なる材料の塊ではなく、腕時計の構成部品を兼用している。なお、マス40は、単なる材料の塊としてもよい。また、マス40は、面状の部分の他に、例えば、面状の部分から、アクチュエータ10、第一弾性体20及び第二弾性体30の周囲へ延びる部分を有するようにしてもよい。この場合、マス40は、U字形状、又は、開口を有する箱形状に形成される。
【0029】
第三弾性体50は、マス40における第二弾性体30とは反対側に配置され、マス40の面をアクチュエータ10側に付勢する。第三弾性体50は、例えば、金属製又は樹脂製のバネである。第三弾性体50は、板バネ、コイルバネ、皿バネなど種々のバネ、及び、エラストマーを適用できる。
【0030】
第三弾性体50には、弾性率E
(50)を有すると共に、損失係数tanδ
(50)を有する材料が用いられる。第三弾性体50の弾性率E
(50)は、アクチュエータ10の積層方向の弾性率E
(10)より小さく設定されている。さらに、第三弾性体50の弾性率E
(50)は、第一弾性体20の弾性率E
(20)及び第二弾性体30の弾性率E
(30)と同等に設定される。
【0031】
ここで、「同等」とは、完全に同一である場合に限られず、僅かに異なる程度を含み意味である。第三弾性体50の弾性率E
(50)は、カバー60に収容された初期状態(後述する)において第一弾性体20及び第二弾性体30が十分に圧縮変形される程度の弾性率であればよい。
【0032】
本実施形態においては、第三弾性体50には、上記のような弾性率E
(50)の条件を満たすように、板バネが好適である。
図1A及び
図1Bに示すように、第三弾性体50を構成する4個の板バネが、マス40の上面を下方に付勢している。
【0033】
さらに、第三弾性体50は、所定条件下において、アクチュエータ10の損失係数tanδ
(10)以下の損失係数tanδ
(50)を有する。所定条件下とは、温度を−10〜50℃、振動周波数を300Hz以下とする使用環境下を意味する。
【0034】
カバー60は、腕時計の筐体を兼用する。カバー60には、金属、樹脂など、種々の材料が適用される。カバー60は、第一弾性体20、アクチュエータ10、第二弾性体30、マス40、第三弾性体50の順で積層された積層体を積層方向に圧縮した状態で、当該積層体を内部に保持する。この状態において、各部材の弾性率Eの関係から、第一弾性体20、第二弾性体30及び第三弾性体50が、アクチュエータ10より大きく圧縮された状態となる。
【0035】
(1−3.アクチュエータ10の詳細構成)
アクチュエータ10の詳細構成について、
図2を参照して説明する。ここで、
図2の上下方向と、
図1A及び
図1Bの上下方向とは、共通する。
図2に示すように、アクチュエータ10は、第一電極11、第二電極12、誘電層13、第一絶縁層14及び第二絶縁層15を備え、これらは全て面状(扁平形状)に形成される。アクチュエータ10は、第一絶縁層14、第一電極11、誘電層13、第二電極12、第二絶縁層15の順に積層されて構成されている。アクチュエータ10の層11−15は、積層体10−50の積層方向に積層されている。
【0036】
アクチュエータ10は、材質が異なるが静電型、圧電型の何れ場合にも、各層11−15により構成される。アクチュエータ10全体としての厚み方向(上述した層11−15の積層方向に等しい)の弾性率は、E
(10)である。また、アクチュエータ10全体としての損失係数tanδは、tanδ
(10)である。
【0037】
第一電極11と第二電極12は、アクチュエータ10の厚み方向に距離を隔てて対向して配置される。第一電極11には、制御基板41に含まれるアクチュエータ10の駆動回路によって、周期的な電圧を供給する一方の端子が接続される。第二電極12には、周期的な電圧を供給する他方の端子が接続される。
【0038】
誘電層13が、第一電極11と第二電極12との間に挟まれる。誘電層13には、アクチュエータ10が静電型の場合には、誘電体が適用される。一方、誘電層13は、アクチュエータ10が圧電型の場合には、圧電体が適用される。本実施形態においては、誘電体と圧電体を総称する意味として、誘電層の表現を用いる。
【0039】
また、第一絶縁層14は、第一電極11のうち誘電層13とは反対の面に接触して配置され、第一電極11を被覆する。第二絶縁層15は、第二電極12のうち誘電層13とは反対の面に接触して配置され、第二電極12を被覆する。
【0040】
つまり、
図1A−
図2に示すように、第一弾性体20は、アクチュエータ10における第一電極11側の面、すなわち第一絶縁層14に接触した状態となる。一方、第二弾性体30は、アクチュエータ10における第二電極12側の面、すなわち第二絶縁層15に接触した状態となる。
【0041】
アクチュエータ10が静電型の場合には、各層11−15は、以下のように形成される。第一電極11及び第二電極12は、同形状に形成され、エラストマー中に導電性フィラーを配合させることにより成形する。そして、第一電極11及び第二電極12は、可撓性を有し且つ伸縮自在な性質を有する。第一電極11及び第二電極12を構成するエラストマーには、例えば、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴムなどが適用できる。また、第一電極11及び第二電極12に配合される導電性フィラーは、導電性を有する粒子であればよく、例えば、炭素材料や金属等の微粒子を適用できる。
【0042】
誘電層13、第一絶縁層14及び第二絶縁層15は、いずれもエラストマーにより成形される。そして、誘電層13、第一絶縁層14及び第二絶縁層15は、可撓性を有し且つ伸縮自在な性質を有する。誘電層13には、静電型のアクチュエータ10として誘電層として機能する材料が適用される。特に、誘電層13が、アクチュエータ10を構成する部材の中で最も厚みが厚く形成され、厚み方向の伸縮及び扁平面方向の伸縮を可能とする。また、第一絶縁層14及び第二絶縁層15には、絶縁性を有する材料が適用される。
【0043】
誘電層13、第一絶縁層14及び第二絶縁層15を構成するエラストマーには、例えば、シリコーンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴムなどが適用できる。
【0044】
(1−4.振動提示装置1の動作)
次に、振動提示装置1の動作について、
図2、
図3A及び
図3Bを参照して説明する。振動提示装置1の動作について、(a)アクチュエータ10によってマス40を振動させる動作、(b)マス40の振動によってカバー60を振動させる動作とに分けて説明する。
【0045】
(1−4−1.マス40の振動動作)
アクチュエータ10によってマス40が振動する動作について、
図2、
図3A及び
図3Bを参照して説明する。第一電極11及び第二電極12に周期的な電圧が印加される。ここで、周期的な電圧は、交流電圧(正負を含む周期的な電圧)としてもよいし、正値にオフセットされた周期的な電圧としてもよい。
【0046】
そして、第一電極11と第二電極12に蓄積される電荷が増加すると、誘電層13が圧縮変形する。つまり、
図2に示すように、アクチュエータ10の厚みが小さくなり、アクチュエータ10の面方向の大きさ(幅及び奥行き)が大きくなる。反対に、第一電極11及び第二電極12に蓄積される電荷が減少すると、誘電層13が元の厚みに戻る。つまり、
図2に示すように、アクチュエータ10の厚みが大きくなり、アクチュエータ10の面方向の大きさが小さくなる。このように、アクチュエータ10は、厚み方向に伸縮すると共に、面方向に伸縮する。
【0047】
アクチュエータ10が伸縮動作を行うときに、振動提示装置1は、以下のように動作する。振動提示装置1は、
図1A及び
図1Bに示すように、第一弾性体20及び第二弾性体30が圧縮された状態を初期状態とする。従って、電荷の増加によってアクチュエータ10の厚みが小さくなると、第一弾性体20及び第二弾性体30は、初期状態に対して圧縮量が小さくなるように変形する。反対に、電荷の減少によってアクチュエータ10の厚みが大きくなると、第一弾性体20及び第二弾性体30は初期状態に戻るように動作する。つまり、第一弾性体20及び第二弾性体30は、電荷の増加の場合に比べて、圧縮量が大きくなるように変形する。
【0048】
印加電圧は周期的に変化するため、上記動作が繰り返される。そうすると、
図3Aに示すようにアクチュエータ10の中央がマス40側に凹となる状態と、
図3Bに示すようにアクチュエータ10の中央がマス40側に凸となる状態とを繰り返すことになる。アクチュエータ10は、第一弾性体20及び第二弾性体30を介してマス40及びカバー60によって規制されているために、上記動作となる。
【0049】
アクチュエータ10の上記変形動作に伴って、アクチュエータ10の第二絶縁層15側の面の変位が、第二弾性体30を介して、マス40に伝達される。加えて、アクチュエータ10の伸縮動作によって第二弾性体30の弾性変形力が変化する。第二弾性体30の弾性変形力の変化が、マス40に伝達される。従って、初期状態として、第一弾性体20及び第二弾性体30が圧縮されていることにより、マス40に効率的に振動が付与される。つまり、アクチュエータ10単体としては小さな振動であっても、マス40は、マス40の面法線方向に大きな振動を発生する。
【0050】
ここで、仮に、第一弾性体20及び第二弾性体30の損失係数tanδ
(20),tanδ
(30)が非常に大きいとすると、アクチュエータ10が伸縮動作を行ったとしても、第一弾性体20及び第二弾性体30によって振動が吸収されてしまう。この場合、アクチュエータ10が伸縮動作を行ったとしても、アクチュエータ10の振動がマス40に伝達されにくい。
【0051】
しかし、本実施形態においては、第一弾性体20及び第二弾性体30は、損失係数tanδ
(20),tanδ
(30)の小さな材料を用いる。従って、アクチュエータ10の伸縮動作による振動が、第一弾性体20及び第二弾性体30にほとんど吸収されることなく、マス40に伝達される。
【0052】
さらに、第一弾性体20、第二弾性体30及び第三弾性体50の弾性率E
(10),E
(20),E
(50)は、アクチュエータ10の厚み方向の弾性率E
(10)より小さい。そのため、第一電極11及び第二電極12に電圧を印加していない初期状態において、アクチュエータ10はほとんど圧縮されていない状態となる。従って、マス40とカバー60がアクチュエータ10を押圧したとしても、アクチュエータ10の伸縮動作に影響を与えることはない。つまり、アクチュエータ10は確実に伸縮動作を行うことができる。
【0053】
(1−4−2.カバー60の振動動作)
次に、マス40の振動によってカバー60が振動する動作について説明する。マス40は、第三弾性体50を介してカバー60に支持されている。つまり、マス40と第三弾性体50とが、バネマス系を構成する。そのため、マス40の振動周波数が、マス40と第三弾性体50によるバネマス系の共振周波数付近になると、非常に大きな振動を発生する。
【0054】
マス40の振動が、第三弾性体50を介してカバー60に伝達される。ここで、第三弾性体50は、初期状態においてカバー60により圧縮されている。従って、マス40の振動が初期状態付近の振動であっても、マス40の振動がカバー60に確実に伝達される。
【0055】
ここで、仮に、第三弾性体50の損失係数tanδ
(50)が非常に大きいとすると、マス40が振動したとしても、第三弾性体50によって振動が吸収されてしまう。この場合、マス40が振動したとしても、マス40の振動がカバー60に伝達されにくくなる。しかし、本実施形態においては、第三弾性体50は、損失係数tanδ
(50)の小さな材料を用いる。従って、マス40の振動が、第三弾性体50にほとんど吸収されることなく、カバー60に伝達される。
【0056】
そして、第三弾性体50の損失係数tanδ
(50)は、第一弾性体20及び第二弾性体30の損失係数tanδ
(20),tanδ
(30)以下である。このことからも、マス40の振動が、第三弾性体50を介して、カバー60に確実に伝達される。
【0057】
<2.第二実施形態>
第二実施形態の振動提示装置2について、
図4を参照して説明する。振動提示装置2は、第一実施形態の振動提示装置1に対して、プッシャー270を備える点が相違する。両者の同一構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0058】
プッシャー270は、カバー60と第一弾性体20との対向面間に配置される。第二実施形態においては、プッシャー270は、カバー60に固定されており、第一弾性体20に対しては接触した状態となる。プッシャー270は、金属、樹脂などの硬質の材料であればよく、種々の材料により形成される。
【0059】
さらに、プッシャー270における第一弾性体20との接触面積は、アクチュエータ10とカバー60との対向面積に比べて小さな面積を有する。第二実施形態においては、プッシャー270におけるアクチュエータ10側は、球面凸状に形成される。従って、プッシャー270と第一弾性体20との接触面積は、アクチュエータ10とカバー60との対向面積に比べて、極めて小さい。さらに、プッシャー270は、アクチュエータ10の中央に対向する位置に配置されている。
【0060】
ここで、第二弾性体30はマス40に接着されている。従って、アクチュエータ10は、第二弾性体30を介してマス40に規制された状態で支持されている。そのため、アクチュエータ10は、第一実施形態にて説明したように、マス40側に凸となる状態と凹となる状態とを確実に繰り返す。つまり、アクチュエータ10の中央が最も振幅が大きくなる。プッシャー270がアクチュエータ10の中央の一部分に対向する位置に配置されることで、アクチュエータ10の振動がマス40に効果的に伝達される。その結果、カバー60は効果的に振動する。
【0061】
<3.第三実施形態>
第三実施形態の振動提示装置3について、
図5を参照して説明する。振動提示装置3は、第二実施形態の振動提示装置2に対して、プッシャー370の位置が相違すると共に、カバー360が制御基板361を備える点が相違する。両者の同一構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0062】
プッシャー370は、マス40と第二弾性体30との対向面間に配置される。第三実施形態においては、プッシャー370は、マス40に固定されており、第二弾性体30に対しては接触した状態となる。プッシャー370は、金属、樹脂などの硬質の材料であればよく、種々の材料により形成される。
【0063】
さらに、プッシャー370における第二弾性体30との接触面積は、アクチュエータ10とマス40との対向面積に比べて小さな面積を有する。第三実施形態においては、プッシャー370におけるアクチュエータ10側は、球面凸状に形成される。従って、プッシャー370と第二弾性体30との接触面積は、アクチュエータ10とマス40との対向面積に比べて、極めて小さい。さらに、プッシャー370は、アクチュエータ10の中央に対向する位置に配置されている。
【0064】
また、第一弾性体20はカバー360に接着されている。従って、アクチュエータ10は、第一弾性体20を介してカバー360に規制された状態で支持されている。そのため、アクチュエータ10は、第一実施形態にて説明したように、マス40側に凸となる状態と凹となる状態とを確実に繰り返す。この場合にも、第二実施形態と同様に、アクチュエータ10の振動がマス40に効果的に伝達され、その結果、カバー360が効果的に振動する。
【0065】
カバー360は、制御基板361を内蔵する。つまり、制御基板361とアクチュエータ10とは、電気的な接続が必要となる。プッシャー370と第二弾性体30との接触面積は非常に小さい。そのため、プッシャー370の部分に、アクチュエータ10と制御基板361とを接続する配線を設置するのは容易でない。そこで、アクチュエータ10と制御基板361との間にプッシャー370が介在しないように、制御基板361をカバー360に配置することとした。これにより、制御基板361とアクチュエータ10との電気的な接続が容易となる。
【0066】
この場合、マス40は、制御基板41(
図1Aに示す)を備えないため、単なる材料の塊としてもよい。ただし、本実施形態において、制御基板361は、カバー360に設けることとしたが、電気的な接続ができれば、第一実施形態と同様に、マス40に制御基板41を配置するようにしてもよい。
【0067】
<4.第四実施形態>
第四実施形態の振動提示装置4について
図6A及び
図6Bを参照して説明する。振動提示装置4は、第一実施形態の振動提示装置1に対して、マス440の向きが相違すると共に、カバー460の形状が相違する。
【0068】
マス440は、面状に形成される部分を有し、マス440の面状の部分における面方向にアクチュエータ10に対して積層されている。また、アクチュエータ10、第一弾性体20及び第二弾性体30は、マス440の厚み方向に対応する形状に形成されている。さらに、第三弾性体50は、マス440の厚み方向の面を付勢する。そのため、第四実施形態においては、第三弾性体50を構成する2個の板バネが、マス40の上面を下方に付勢している。カバー460は、マス440の面状の部分における面方向に対応するような扁平形状に形成される。この場合、マス440は、アクチュエータ10の駆動によって、面方向(
図6Aの上下方向)に振動する。
【0069】
<5.第五実施形態>
第五実施形態の振動提示装置5について
図7を参照して説明する。振動提示装置5は、第一実施形態の振動提示装置1に対して、第四弾性体580をさらに備える点が相違する。さらに、振動提示装置5は、取付部材6,7に固定される。そこで、本実施形態においては、カバー60に代えて取付部材6,7が、例えば、携帯端末の一例としての腕時計の筐体の一部を構成する。振動提示装置5において、第一実施形態の振動提示装置1と同一構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0070】
第四弾性体580は、カバー60の外面を被覆する。つまり、第四弾性体580は、積層面部580a,580bと、積層方向に交差する方向に対向する面の外側に配置される非積層面部580c,580dとを備える。
【0071】
第四弾性体580は、小さな弾性率E
(580)を有すると共に、小さな損失係数tanδ
(580)を有する材料が用いられる。言い換えると、第四弾性体580は、柔らかく、且つ、減衰特性が低い材料が好適である。特に、第四弾性体580の積層面部580a、580bの積層方向の弾性率E
(580)は、アクチュエータ10の積層方向の弾性率E
(10)より小さく設定される。アクチュエータ10の積層方向の弾性率E
(10)に対する第四弾性体580の一方の積層面部580aの弾性率E
(580)の比は、15%以下である。また、アクチュエータ10の積層方向の弾性率E
(10)に対する第四弾性体580の他方の積層面部580bの弾性率E
(580)の比は、15%以下である。これらの比は、好ましくは、10%以下である。
【0072】
さらに、第四弾性体580の損失係数tanδ
(580)は、所定条件下において、アクチュエータ10の損失係数tanδ
(10)と同等以下である。所定条件下とは、温度を−10〜50℃、振動周波数を300Hz以下とする使用環境下を意味する。
【0073】
上記を満たす材料として、第四弾性体580には、例えば、シリコーンゴムが好適である。例えば、ウレタンゴムは、シリコーンゴムに比べて減衰特性が良いため、第四弾性体580には、ウレタンゴムはシリコーンゴムに比べてあまり適しない。ただし、目的の特性によっては、第四弾性体580に、ウレタンゴムを使用することも可能である。なお、本実施形態においては、第四弾性体580は、第一弾性体20及び第二弾性体30と同一の材料により形成されている。
【0074】
振動提示装置5は、第一取付部材6及び第二取付部材7に挟まれた状態で保持されている。第一取付部材6及び第二取付部材7は、例えば、樹脂又は金属などにより形成される。ここで、第一取付部材6は、平面状の取付面を有している。第一取付部材6の取付面には、第四弾性体580の積層面部580bが接触した状態で設けられる。
【0075】
第二取付部材7は、振動提示装置5を第一取付部材6に押さえる部材として機能する。第二取付部材7は、鍵状に形成されている。第二取付部材7は、第一取付部材6に接地される固定部7a、固定部7aから立設される立設部7b、立設部7bから屈曲形成された挟持部7c、及び、挟持部7cから屈曲形成された引っ掛け端部7dを備える。
【0076】
固定部7aは、ボルト8により、第一取付部材6に固定される。立設部7bには、振動提示装置5の第四弾性体580の非積層面部580cが接触した状態で設けられる。挟持部7cは、第一取付部材6の取付面に対向する。挟持部7cは、振動提示装置5の第四弾性体580の積層面部580aが接触した状態とされる。つまり、振動提示装置5は、第一取付部材6と挟持部7cとにより、積層体10−50の積層方向に挟まれた状態で保持する。ここで、立設部7bの長さは、振動提示装置5における積層方向の幅より僅かに短い。そのため、第四弾性体580の積層面部580a,580bが、取付部材6,7とカバー60との間で、積層面部580a,580bの積層方向に圧縮された状態で保持される。
【0077】
引っ掛け端部7dは、立設部7bに対向する。引っ掛け端部7dには、第四弾性体580の非積層面部580dの一部が接触した状態で設けられる。ここで、挟持部7cの長さは、振動提示装置5における積層方向に直交する方向の幅より僅かに短い。そのため、第四弾性体580の非積層面部580c,580dが、立設部7bとカバー60との間、及び、引っ掛け端部7dとカバー60との間で、圧縮された状態で保持される。
【0078】
上述したように、第四弾性体580の積層面部580a,580bが圧縮された状態で、振動提示装置5は、取付部材6,7に挟まれた状態で保持されている。つまり、カバー60の振動は、第四弾性体580を介して取付部材6,7に伝達される。第四弾性体580の存在により、振動提示装置5の振動の共振周波数は、第四弾性体580が存在しない場合に比べて、より低周波となる。従って、取付部材6,7の振幅が小さいとしても、低周波であることにより、人間は触覚振動を感じやすくなる。また、第四弾性体580の積層面部580a,580b及び非積層面部580c,580dが圧縮された状態で、取付部材6,7に保持されている。従って、振動提示装置5を取付部材6,7に取り付けたときに、振動提示装置5の保持状態が安定する。
【0079】
なお、第五実施形態の振動提示装置5の一部は、第一実施形態の振動提示装置1を用いたが、第二実施形態−第四実施形態の振動提示装置2−4を用いることもできる。また、取付部材6,7は、上記構成に限られず、種々の構成を適用することができる。
【0080】
<5.実施形態の効果>
第一実施形態−第五実施形態の振動提示装置1−5は、第一電極11、第二電極12、及び、第一電極11と第二電極12の間に配置される誘電体又は圧電体を備える静電型又は圧電型のアクチュエータ10と、アクチュエータ10の第一電極11側に配置される第一弾性体20と、アクチュエータ10の第二電極12側に配置される第二弾性体30と、アクチュエータ10に対して第二弾性体30を介して積層されるマス40,440と、マス40,440における第二弾性体30の反対側に配置される第三弾性体50と、アクチュエータ10、第一弾性体20、第二弾性体30、マス40,440及び第三弾性体50により形成される積層体を積層方向に圧縮した状態で保持するカバー60,360,460とを備える。
【0081】
つまり、第一弾性体20、アクチュエータ10、第二弾性体30、マス40,440、第三弾性体50の順で、積層されている。この積層体が、カバー60,360,460によって、積層方向に圧縮されている。カバー60,360,460によって積層体が保持された初期状態は、以下のようになる。
【0082】
第一弾性体20、第二弾性体30及び第三弾性体50の積層方向の弾性率E
(20),E
(30),E
(50)は、アクチュエータ10の積層方向の弾性率E
(10)より小さく設定されている。従って、積層体がカバー60,360,460により圧縮された初期状態において、第一弾性体20、第二弾性体30及び第三弾性体50がアクチュエータ10より大きく圧縮された状態となる。
【0083】
そして、アクチュエータ10の第一電極11及び第二電極12に電圧を印加すると、アクチュエータ10は、積層方向に伸縮する。アクチュエータ10の伸縮動作によって生じるアクチュエータ10の変位が、第二弾性体30を介して、マス40,440に伝達される。ただし、マス40,440は、第三弾性体50によってカバー60,360,460に支持されている。そのため、マス40,440は、アクチュエータ10の変位に起因して、振動する。特に、アクチュエータ10単体としては小さな振動であったとしても、マス40,440によって、発生する振動を増幅することができる。
【0084】
加えて、アクチュエータ10の伸縮動作によって第一弾性体20及び第二弾性体30の弾性変形力が変化し、第一弾性体20及び第二弾性体30の弾性変形力の変化がマス40,440に伝達される。従って、初期状態として、第一弾性体20及び第二弾性体30が圧縮されていることにより、マス40,440に効率的に力を付与することができる。
【0085】
上記のようにマス40,440が振動することによって、第三弾性体50を介してカバー60,360,460に伝達される。従って、アクチュエータ10単体による振動発生力が小さいとしても、カバー60,360,460は、マス40,440の振動によって大きく振動することができる。つまり、大きな振動を外部に発生することができる。
【0086】
さらに、アクチュエータ10の弾性率E
(10)は、第一弾性体20及び第二弾性体30の弾性率E
(20),E
(30)より大きい。そのため、初期状態において、第一弾性体20及び第二弾性体30の圧縮量に比べて、アクチュエータ10の圧縮量は小さい。従って、カバー60,360,460により積層体を圧縮した状態であっても、圧縮力がアクチュエータ10の伸縮動作に与える影響は小さい。つまり、アクチュエータ10は、所望の振動を発生することができる。
【0087】
また、第一実施形態−第三実施形態,第五実施形態の振動提示装置1−3,5においては、マス40は、面状に形成される部分を有し、マス40の面状の部分における面法線方向にアクチュエータ10に対して積層されている。そして、マス40は、アクチュエータ10の駆動によって、マス40の面状の部分の面法線方向に振動する。つまり、振動提示装置1−3,5は、面状の部材の積層体により構成される。さらに、個々の構成部品の厚みを薄くすることで、振動提示装置1−3,5は、全体として扁平形状に形成できる。すなわち、カバー60,360は、扁平形状に形成できる。従って、振動提示装置1−3,5は、種々の装置に対する搭載自由度を高くできる。
【0088】
また、第四実施形態の振動提示装置4においては、マス440は、面状に形成される部分を有し、マス440の面状の部分における面方向にアクチュエータ10に対して積層されている。そして、マス440は、アクチュエータ10の駆動によって、マス440の面状の部分の面方向に振動する。つまり、振動提示装置4は、マス440の面状の部分の厚みの範囲内で、アクチュエータ10、第一弾性体20、第二弾性体30及び第三弾性体50を配置することで、振動提示装置4は、全体として扁平形状に形成できる。すなわち、カバー460は、扁平形状に形成できる。従って、振動提示装置4は、種々の装置に対する搭載自由度を高くできる。
【0089】
また、第一実施形態−第五実施形態の振動提示装置1−5において、第一弾性体20及び第二弾性体30の損失係数tanδ
(20),tanδ
(30)は、所定条件下において、アクチュエータ10の損失係数tanδ
(10)と同等以下としている。従って、アクチュエータ10の変形動作による振動が、第一弾性体20及び第二弾性体30にほとんど吸収されることなく、マス40に確実に伝達される。その結果、確実に、カバー60,360,460を振動させることができる。
【0090】
また、第一実施形態−第五実施形態の振動提示装置1−5において、第三弾性体50の弾性率E
(50)は、第一弾性体20及び第二弾性体30の弾性率E
(10),E
(20)と同等に設定される。これにより、初期状態において、第一弾性体20、第二弾性体30及び第三弾性体50が、確実に、圧縮変形した状態にできる。
【0091】
また、第一実施形態−第五実施形態の振動提示装置1−5において、第三弾性体50の損失係数tanδ
(50)は、所定条件下において、第一弾性体20及び第二弾性体30の損失係数tanδ
(20),tanδ
(30)以下としている。これにより、マス40の振動が、第三弾性体50を介して、カバー60に確実に伝達される。
【0092】
また、第二実施形態の振動提示装置2は、第一弾性体20とカバー60との対向面間に配置され、アクチュエータ10とカバー60の対向面積より小さな面積を有するプッシャー270を備える。また、第三実施形態の振動提示装置3は、マス40と第二弾性体30との対向面間に配置され、アクチュエータ10とマス40の対向面積より小さな面積を有するプッシャー370を備える。これにより、アクチュエータ10の振動を、マス40に効果的に伝達できる。その結果、カバー60は、効果的に振動できる。
【0093】
プッシャー270,370は、アクチュエータ10の中央に対向する位置に配置されている。アクチュエータ10の中央が最も振幅が大きくなる。プッシャー270,370がアクチュエータ10の中央の一部分に対向する位置に配置されることで、アクチュエータ10の振動がマス40に効果的に伝達される。
【0094】
また、プッシャー270,370は、アクチュエータ10側の面を球面凸状に形成されている。これにより、プッシャー270,370とアクチュエータ10側と接触する面積が非常に小さくなる。従って、アクチュエータ10の振動を、マス40に確実に伝達できる。
【0095】
また、第一実施形態−第五実施形態の振動提示装置1−5において、第一弾性体20及び第二弾性体30は、エラストマーにより形成され、第三弾性体50は、金属バネにより形成されている。これにより、第一弾性体20、第二弾性体30及び第三弾性体50は、所望の弾性率及び損失係数tanδの材料を確実に且つ容易に選択できる。
【0096】
第五実施形態の振動提示装置5は、カバー60における少なくとも積層体10−50の積層方向に対向する2面の外側に積層される第四弾性体580を備える。さらに、振動提示装置5は、積層体10−50の積層方向に取付部材6,7により挟まれた状態で保持される。そして、第四弾性体580の積層面部580a,580bは、取付部材6,7とカバー60との間で、第四弾性体580の積層面部580a,580bの積層方向に圧縮された状態で保持される。つまり、カバー60の振動は、第四弾性体580を介して取付部材6,7に伝達される。そして、第四弾性体580の存在により、振動提示装置5の振動の共振周波数は、第四弾性体580が存在しない場合に比べて、より低周波となる。従って、取付部材6,7の振幅が小さいとしても、低周波であることにより、人間が認識可能な触覚振動が発生される。さらに、第四弾性体580の積層面部580a,580bを介して取付部材6,7に取り付けられることで、振動提示装置5の保持状態が安定する。
【0097】
特に、第四弾性体580の積層方向の弾性率E
(580)は、アクチュエータ10の積層方向の弾性率E
(10)より小さく設定される。当然に、第四弾性体580の積層方向の弾性率E
(580)は、カバー60の弾性率より小さく設定される。そのため、第四弾性体580の積層面部580a,580bは、確実に圧縮された状態となる。
【0098】
さらに、第四弾性体580の損失係数tanδ
(580)は、所定条件下において、アクチュエータ10の損失係数tanδ
(10)と同等以下である。従って、アクチュエータ10の変形動作に伴うカバー60の振動が、第四弾性体580にほとんど吸収されることなく、取付部材6,7に確実に伝達される。その結果、確実に、取付部材6,7を振動させることができる。
【0099】
また、第四弾性体580の非積層面部580c,580dは、カバー60における積層体10−50の積層方向に交差する方向に対向する面の外側に配置される。これにより、振動提示装置5が、取付部材6,7に、より安定して保持される。なお、振動提示装置5は、第四弾性体580の非積層面部580c,580dを有しない構成でもよい。この場合にも、振動提示装置5は、積層面部580a,580bによる効果を奏することができる。
【0100】
また、第一実施形態,第二実施形態,第四実施形態の振動提示装置1,2,4において、カバー60,460は、携帯端末の筐体であって、マス40,440は、携帯端末の構成部品としている。また、第五実施形態の振動提示装置5において、取付部材6,7は、携帯端末の筐体であって、マス40は、携帯端末の構成部品としている。これらにおいては、携帯端末の構成部品をマス40,440として兼用することができ、専用のマスを設置する必要がない。