特許第6657420号(P6657420)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6657420クロピドグレル及びアスピリンを含む複合製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6657420
(24)【登録日】2020年2月7日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】クロピドグレル及びアスピリンを含む複合製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/616 20060101AFI20200220BHJP
   A61K 31/4365 20060101ALI20200220BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20200220BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20200220BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20200220BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20200220BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20200220BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20200220BHJP
【FI】
   A61K31/616
   A61K31/4365
   A61P7/02
   A61K9/48
   A61K47/38
   A61K47/32
   A61K47/04
   A61K47/42
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-548696(P2018-548696)
(86)(22)【出願日】2017年3月16日
(65)【公表番号】特表2019-508464(P2019-508464A)
(43)【公表日】2019年3月28日
(86)【国際出願番号】KR2017002846
(87)【国際公開番号】WO2017160101
(87)【国際公開日】20170921
【審査請求日】2018年10月5日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0031712
(32)【優先日】2016年3月16日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515254389
【氏名又は名称】コリア ユナイテッド ファーマ. インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,ヨン ウン
(72)【発明者】
【氏名】ハ,ダエ チュル
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ヒ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】クウォン,イン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン,レ フン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,スン ジン
(72)【発明者】
【氏名】ユ,クォン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】ウィ,テ イン
【審査官】 今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0103384(KR,A)
【文献】 特開2016−017066(JP,A)
【文献】 特開2014−015442(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0048335(KR,A)
【文献】 特表2008−543843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00− 9/72
A61K 31/00−31/80
A61K 33/00−33/44
A61K 47/00−47/69
A61P 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロピドグレル、その異性体またはその薬学的に許容可能な塩、コロイド性二酸化ケイ素、および崩壊剤を含むクロピドグレル錠剤;及び
アスピリン、その異性体またはその薬学的に許容可能な塩を含むアスピリンコア、及び前記コアを包む腸溶性コーティング層を含むアスピリン含有粒子を含む複合製剤であって、
前記複合製剤は、硬質カプセルであり、
前記コロイド性二酸化ケイ素の含有量は、クロピドグレル錠剤の総重量基準で2〜10重量%である、複合製剤
【請求項2】
前記崩解剤は、クロピドグレル錠剤の総重量基準で2〜8重量%で含まれる、請求項に記載の複合製剤。
【請求項3】
前記崩解剤は、澱粉グリコール酸ナトリウム、トウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉、プレゼラチン化澱粉、ベントナイト、モンモリロナイト、ビーガム(veegum)、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、クロスカルメロース(croscarmellose)ナトリウム、グアーガム、キサンタンガム、架橋ポリビニルピロリドン(crospovidone)及びその混合物からなる群の選択された一つ以上である、請求項に記載の複合製剤。
【請求項4】
前記クロピドグレル錠剤は、乾燥減量が5重量%以下の賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の複合製剤。
【請求項5】
前記クロピドグレル錠剤は、乾燥減量が1.5重量%以下の賦形剤をさらに含む、請求項に記載の複合製剤。
【請求項6】
前記賦形剤は、微結晶セルロースである、請求項に記載の複合製剤。
【請求項7】
前記腸溶性コーティング層は、シェラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテート、ポリビニルアルコールフタレート、メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体、メチルアクリル酸−メタクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体、メタクリル酸−エチルアクリル酸共重合体及びその混合物からなる群から選択された一つ以上の腸溶性コーティング剤を含む、請求項1に記載の複合製剤。
【請求項8】
前記カプセルの素材は、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である、請求項に記載の複合製剤。
【請求項9】
前記クロピドグレル錠剤は、崩解時間が11分以内である、請求項1に記載の複合製剤。
【請求項10】
クロピドグレル、その異性体またはその薬学的に許容可能な塩、及びコロイド性二酸化
ケイ素をまず混合した後、崩壊剤を添加してクロピドグレル錠剤を準備する段階;
アスピリン、その異性体またはその薬学的に許容可能な塩を含むアスピリンコアを準備する段階;及び
前記アスピリンコアを腸溶性コーティング剤でコーティングする段階を含む、クロピドグレル錠剤及びアスピリンコアを含む複合製剤の製造方法であって、
前記複合製剤は、硬質カプセルであり、
前記コロイド性二酸化ケイ素の含有量は、クロピドグレル錠剤の総重量基準で2〜10重量%である、複合製剤の製造方法
【請求項11】
前記崩解剤は、クロピドグレル錠剤の総重量基準で2〜8重量%で含まれる、請求項10に記載の複合製剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロピドグレル及びアスピリンを含む複合製剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明においてクロピドグレルは、脳卒中、血栓症、塞栓症、心筋梗塞のような末梢または冠状動脈疾患の治療に効果的な血小板凝集抑制剤であり、化学名称はメチル(+)−(S)−α−(2−クロロフェニル)−6,7−ジヒドロチエノ[3,2−c]ピリジン−5(4H)−アセテートである。
【0003】
クロピドグレルは、血栓の形成に重要な役割をすることが知られているアデノシン二リン酸(Adenosinediphosphate、以下「ADP」という)受容体に対するADP結合の直接的な抑制及びそれに続く糖タンパク質GPIIb/IIa複合体のADP−媒介された活性化の直接的な抑制により、ADP−誘導された血小板凝集を特異的に抑制する。また、クロピドグレルは、放出されたADPによる血小板活性化の増幅を遮断することによりADPを除いたアゴニスト(agonist)により誘発された血小板凝集を抑制する。
【0004】
このようなクロピドグレルの薬理作用は、クロピドグレルが経口投与された後、肝臓で代謝されて形成される活性型代謝体により行われる。この活性型代謝体は選択的に、そして不可逆的に血小板にあるADP受容体を変形させることにより、ADPがADP受容体と結合することを妨害する。したがって、クロピドグレルの効果は、肝臓でクロピドグレルを代謝させる酵素に大きく依存する。
【0005】
クロピドグレルの代表的な製薬原料であるクロピドグレルビスルフェート(またはクロピドグレル硫酸水素塩)の化学名称はメチル(+)−(S)−α−(2−クロロフェニル)−6,7−ジヒドロチエノ[3,2−c]ピリジン−5(4H)−アセテート硫酸(1:1)であり、分子量は419.9であり、実験式はC1616ClNOS・HSOである。
【0006】
クロピドグレルビスルフェートは急性(recent)心筋梗塞(myocardial infarction、以下「MI」という)、急性脳卒中(stroke)、または確立された(established)動脈疾患(arterial disease)のような血栓性イベント(thrombotic event)の減少のために処方され、新たな(new)虚血性脳卒中(ischemic stroke)、新たなMI、及びその他の血管性死亡(vascular death)の複合した終点(combined end point)の速度を減少させることが明らかになった。急性冠症候群の患者の場合、クロピドグレルビスルフェートは、心臓血管死、MI、脳卒中、または難治性虚血(refractory ischemia)の複合した終点の速度を減少させることが明らかになった。
【0007】
また、血栓の生成を予防する最も効果的な薬物の一つとして知られているアスピリン(一般名:アセチルサリチル酸)は、鎮痛剤(わずかな痛みや疼痛に対して)、解熱剤(発熱に対して)、及び抗炎症剤としてしばしば使用される。アスピリンはまた、抗凝固(血液を薄くする、blood thinning)の効果があり、長期間の低投与量で心臓発作(heart attack)を防止するために使用される。
【0008】
アスピリンは、一過性虚血発作の予防及び動脈血栓症の予防のために、投与は、一般に、1回または数回の投与で、一日当り30mg〜1200mgが投与される。アスピリンは、危険な血液凝固物(blood clot)が生成することを防ぐことにより、心臓発作、脳卒中、または血管が血液凝固物により詰まったときに発生し得るその他の問題の可能性を減らすために使用することができる。
【0009】
アスピリンは、長期間の少ない投与量でも、血小板においてトロンボキサンA2の生成を不可逆的に遮断し、血小板の凝集を抑制する効果を奏し、このように血液を薄くする特徴が心臓発作の発生率を減少させるのに有用である。
【0010】
また、アスピリンはクロピドグレルを肝臓で活性型代謝体に変化させる酵素を活性化させることが知られている。したがって、クロピドグレルとアスピリンを共に投与する剤形について多くの研究がなされてきたが、両薬物が直接接触する場合、共晶(eutectic)現象が発生する問題がある。何よりも、アスピリンは、胃腸の吸収が少ない物質であるため、一定量以上を投与しなければならないが、アスピリン自体が胃腸を損傷させる性質があり、その使用量に制限が相当である。このような危険性は、クロピドグレルの代謝増大のためにアスピリンが先に溶出される剤形において、その問題がさらに深刻になる。
【0011】
また、クロピドグレルまたはその塩は、物性が非常に悪く、製剤化が非常に困難な代表的な薬物である。これらは水分に敏感であり、水溶液と接触すると、互いに固まってゲル化する現象が発生するなど、崩解が遅延される問題がある。特にクロピドグレルまたはその塩は、吸湿性が非常に高く、水分の存在下で加水分解され、安定性が低くなるため、保管に特別の注意が要求される。
【0012】
そこで、本発明者らはクロピドグレルを含む製剤の保管及び流通中の安定性低下の問題を解決し、クロピドグレルが錠剤の場合に発生する崩解速度減少の問題を解決するために、以下のような発明を考案した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、保管及び流通中に安定性が高められたクロピドグレル錠剤及びアスピリン含有粒子を含む複合製剤を提供しようとし、前記アスピリン含有粒子は、顆粒またはペレットの形態であってもよい。
【0014】
また、本発明は、前記複合製剤中に存在するクロピドグレル錠剤の崩解速度が増加した複合製剤を提供しようとする。
【0015】
さらに、本発明は、クロピドグレルを錠剤形態で含む、クロピドグレル及びアスピリンの複合製剤をカプセル形態で提供しようとする場合、カプセル内に含まれるように錠剤の大きさを調節しなければならないが、この場合、錠剤内のクロピドグレルの含有量比の増加に応じて、打錠時にパンチにくっつくスティッキング(sticking)、キャッピング(capping)現象が発生することがある。このような問題を防止するために、本発明では、また、コロイド性二酸化ケイ素を主成分とまず混合して製造したクロピドグレル錠剤及びこれを含む複合製剤を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の目的を達成するための一つの様態として、本発明は、クロピドグレル、その異性体またはその薬学的に許容可能な塩を含むクロピドグレル錠剤;及びアスピリン、その異性体またはその薬学的に許容可能な塩を含むアスピリンコア、及び前記コアを包む腸溶性コーティング層を含むアスピリン粒子を含む複合製剤を提供する。
本開示は、以下の[1]から[16]を含む。
[1]クロピドグレル、その異性体またはその薬学的に許容可能な塩を含むクロピドグレル錠剤;及び
アスピリン、その異性体またはその薬学的に許容可能な塩を含むアスピリンコア、及び上記コアを包む腸溶性コーティング層を含むアスピリン含有粒子を含む複合製剤。
[2]上記クロピドグレル錠剤は、崩壊剤をさらに含む、上記[1]に記載の複合製剤。
[3]上記崩解剤は、クロピドグレル錠剤の総重量基準で2〜8重量%で含まれる、上記[2]に記載の複合製剤。
[4]上記崩解剤は、澱粉グリコール酸ナトリウム、トウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉、プレゼラチン化澱粉、ベントナイト、モンモリロナイト、ビーガム(veegum)、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、クロスカルメロース(croscarmellose)ナトリウム、グアーガム、キサンタンガム、架橋ポリビニルピロリドン(crospovidone)及びその混合物からなる群の選択された一つ以上である、上記[2]に記載の複合製剤。
[5]上記クロピドグレル錠剤は、乾燥減量が5重量%以下の賦形剤をさらに含む、上記[1]に記載の複合製剤。
[6]上記クロピドグレル錠剤は、乾燥減量が1.5重量%以下の賦形剤をさらに含む、上記[5]に記載の複合製剤。
[7]上記賦形剤は、微結晶セルロースである、上記[5]に記載の複合製剤。
[8]上記クロピドグレル錠剤は、コロイド性二酸化ケイ素をさらに含む、上記[1]に記載の複合製剤。
[9]上記コロイド性二酸化ケイ素の含有量は、クロピドグレル錠剤の総重量基準で2〜10重量%である、上記[8]に記載の複合製剤。
[10]上記腸溶性コーティング層は、シェラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテート、ポリビニルアルコールフタレート、メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体、メチルアクリル酸−メタクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体、メタクリル酸−エチルアクリル酸共重合体及びその混合物からなる群から選択された一つ以上の腸溶性コーティング剤を含む、上記[1]に記載の複合製剤。
[11]上記複合製剤は、カプセル剤形である、上記[1]〜[10]のいずれか一項に記載の複合製剤。
[12]上記カプセルの素材は、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である、上記[11]に記載の複合製剤。
[13]上記クロピドグレル錠剤は、崩解時間が11分以内である、上記[1]に記載の複合製剤。
[14]クロピドグレル、その異性体またはその薬学的に許容可能な塩、及びコロイド性二酸化
ケイ素をまず混合した後、崩壊剤を添加してクロピドグレル錠剤を準備する段階;
アスピリン、その異性体またはその薬学的に許容可能な塩を含むアスピリンコアを準備する段階;及び
上記アスピリンコアを腸溶性コーティング剤でコーティングする段階を含む、クロピドグレル錠剤及びアスピリンコアを含む複合製剤の製造方法。
[15]上記崩解剤は、クロピドグレル錠剤の総重量基準で2〜8重量%で含まれる、上記[14]に記載の複合製剤の製造方法。
[16]上記コロイド性二酸化ケイ素の含有量は、クロピドグレル錠剤の総重量基準で2〜10重量%である、上記[14]に記載の複合製剤の製造方法。
【0017】
本明細書において、「クロピドグレル」について開示した部分は、「クロピドグレル、その異性体またはその薬学的に許容可能な塩」を全て含む意味で解釈されてもよい。
【0018】
もう一つの様態として、本発明は、クロピドグレル、その異性体またはその薬学的に許容可能な塩、及びコロイド性二酸化ケイ素をまず混合した後、崩壊剤を添加してクロピドグレル錠剤を準備する段階を含む、複合製剤の製造方法を提供する。
【0019】
本発明は、クロピドグレル、その異性体またはその薬学的に許容可能な塩を含むクロピドグレルを錠剤形態にすることにより、保管及び流通中に複合製剤の安定性が低下する問題を解決した。
【0020】
前記複合製剤は、クロピドグレル錠剤及びアスピリン含有粒子を含むカプセルであってもよく、一実施形態において前記カプセルは硬質カプセルであってもよい。
【0021】
クロピドグレルを顆粒形態ではなく、錠剤形態にしてカプセル内に封入する場合、クロピドグレルの崩解が遅延される問題が発生することがあり、これに対し、本発明は、クロピドグレル錠剤の総重量基準で崩解剤を2〜8重量%、より具体的には3〜5重量%を含むことにより、これを解決した。崩壊剤の含有量がクロピドグレル錠剤の総重量基準で2重量%未満である場合、望ましい崩解速度を得ることができず、8重量%を超える場合、錠剤が大気中に露出時、安定性が低下する問題が発生する。一般に知られているクロピドグレル及びアスピリンの複合製剤内に存在するクロピドグレル錠剤の崩解時間は12分以上であるが、本発明の複合製剤では、これよりクロピドグレルがより速い速度で崩解できる点をもう一つの特徴とする。本発明の複合製剤では、クロピドグレルを錠剤形態として含み、顆粒形態のクロピドグレルを含む場合に比べて崩解速度の減少の問題を示しうるが、崩壊剤を前記のようにさらに含むことにより、このような問題を改善することができる。また、本発明の複合製剤は、まず胃でクロピドグレルが溶出され、アスピリン顆粒は、後で腸で溶出されるが、前記のように崩解速度を改善させることにより、クロピドグレルとアスピリンの接触による問題を防止し、薬剤の安定性を向上させることができる。
【0022】
本発明の複合製剤内に存在するクロピドグレル錠剤は崩壊剤を含むことにより、崩解時間がそれ未満、具体的には11分以下、より具体的には7分以下に短縮することができる。
【0023】
前記崩壊剤は、澱粉グリコール酸ナトリウム、トウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉またはプレゼラチン化澱粉などの澱粉または変性澱粉と、ベントナイト、モンモリロナイト、ビーガム(veegum)などのクレイと、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースなどのセルロース類と、アルギン酸ナトリウムまたはアルギン酸などのアルギン類と、クロスカルメロース(croscarmellose)ナトリウムなどの架橋セルロース類と、グアーガム、キサンタンガムなどのガム類と、架橋ポリビニルピロリドン(crospovidone)及びその混合物からなる群から選択された一つ以上であってもよい。より具体的には、前記崩解剤は、ポリビニルピロリドンなどであってもよい。
【0024】
また、カプセル内にクロピドグレル錠剤を封入する場合、クロピドグレル錠剤の重量は120〜350mg、具体的には150〜250mg、より具体的には、180〜240mgであってもよく、実処方基準に基づいて異なって製造することができる。
【0025】
カプセル内にクロピドグレル錠剤を封入した場合、クロピドグレルの錠剤サイズに制限があり、クロピドグレル錠剤重量に対するクロピドグレルの重量比が50%程度またはそれ以上まで高くなることがあるため、打錠時にパンチにくっつくスティッキング(sticking)、キャッピング(capping)現象が発生する問題がある。
【0026】
これを解決するために、コロイド性二酸化ケイ素をクロピドグレルとまず混合した後、崩壊剤などの他の添加剤を添加してクロピドグレル錠剤を製造することができる。
【0027】
また、クロピドグレル錠剤は、乾燥減量が5重量%未満、より好ましくは1.5重量%以下の賦形剤を使用することができる。ここで、賦形剤の乾燥減量が5重量%以上である場合、スティッキングなどの打錠障害が発生することがある。
【0028】
前記賦形剤は、白糖、D−マンニトール、微結晶セルロース、ポリエチレングリコール、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、コロイド性二酸化ケイ素及びこれらの組み合わせなどからなる群から選択されてもよく、前記賦形剤は微結晶セルロース(microcrystalline cellulose、MCC)であってもよい。また、一実施形態において、前記賦形剤はMCC 112である。
【0029】
一実施形態において、カプセルの素材は、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)であってもよく、HPMCであることがより好ましいが、特にこれに限定されるものではない。
【0030】
以下、本発明における複合製剤を具体的に説明する。一方、本願で開示されたそれぞれの説明及び実施形態は、それぞれの異なる説明及び実施形態にも適用することができる。即ち、本願で開示された多様な要素のすべての組み合わせが本発明の範囲に属する。また、下記記述された具体的な叙述により、本発明の範疇が限定されるとは見られない。
【0031】
本発明の複合製剤に含まれるクロピドグレル及びアスピリンは薬学的に許容可能な塩の形態で存在することができる。塩としては、薬学的に許容可能な遊離酸(free acid)により形成された酸付加塩が有用でありうるが、特にこれに限定されない。
【0032】
前記塩の種類は特に限定されない。ただし、個体、例えば、哺乳類に安全かつ効果的な形態であることが望ましいが、特にこれに限定されるものではない。
【0033】
前記用語、「薬学的に許容可能な」とは、医薬学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、またはアレルギー反応などを引き起こすことなく、目的とする用途に効果的に使用可能な物質を意味する。
【0034】
本発明において、用語、「薬学的に許容可能な塩」とは、薬学的に許容される無機酸、有機酸、または塩基から誘導された塩を含む。適切な酸の例としては、塩酸、臭素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン−p−スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などを挙げることができる。適切な塩基から誘導された塩は、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、及びアンモニウムなどを含むことができる。
【0035】
酸付加塩は、通常の方法、例えば、化合物を過量の酸水溶液に溶解させ、この塩を水混和性有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、アセトンまたはアセトニトリルを使用して沈殿させて製造することができる。同モル量の化合物及び水中の酸またはアルコール(例えば、グリコールモノメチルエーテル)を加熱し、次いで混合物を蒸発させて乾燥させるか、または析出された塩を吸引濾過することができる。
【0036】
また、塩基を使用して薬学的に許容可能な金属塩を作ることができる。アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩は、例えば、化合物を過量のアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物の溶液中に溶解させ、非溶解化合物の塩をろ過した後、ろ液を蒸発、乾燥させて得ることができる。
【0037】
より具体的には、本発明のクロピドグレルの薬学的に許容可能な塩は、クロピドグレルの硫酸水素塩、樹脂酸塩、カムシラート、ベシル酸塩、ナパジシル酸一水和物塩、塩酸塩及びその混合物からなる群から選択されることができる。
【0038】
コロイド性二酸化ケイ素(fumed silica、colloidal silicon dioxide)は、CAS No.7631−86−9であり、本発明では、賦形剤としての役割をし、打錠時に打錠障害を減少させる効果を有する。
【0039】
前記コロイド性二酸化ケイ素の含有量は、クロピドグレル錠剤の総重量基準で2〜10重量%であってもよい。前記範囲未満で含まれる場合には、打錠時にスティッキングが起こり商業的に連続生産が難しく、前記範囲を超えて含まれる場合には、打錠時にキャッピングが起こり崩解が遅延することがある。
【0040】
コロイド性二酸化ケイ素の粒径は、約7〜16nmであってもよく、200〜400m/gの比表面積を有してもよい。
【0041】
本発明のクロピドグレル錠剤は、さらにコーティングされてもよく、コーティング物質としては制限なく可能であり、一実施形態においてコーティング物質はネオコート(neocoat)であってもよい。
【0042】
アスピリン含有粒子は、粉末、顆粒、ペレット、ミニ錠剤形態であってもよく、一実施例において顆粒またはペレットであってもよい。
【0043】
前記アスピリン含有粒子は、具体的に、賦形剤を含む内核、前記内核の外部に隣接し、薬理学的活性成分としてアスピリン、その異性体またはその薬剤学的に許容可能な塩及び結合剤を含むアスピリン外核、及び前記外核の外部に隣接し、腸溶性コーティング剤を含む腸溶性コーティング層を含むことができる。前記内核及びアスピリン外核はアスピリンコアに相当する。具体的には、前記内核の賦形剤は、球状白糖であってもよく、前記腸溶性コーティング層は、可塑剤をさらに含むことができる。
【0044】
アスピリンコアを囲む腸溶性コーティング層は、前記アスピリンコアを保護するために前記コアを包む層を意味し、コーティング層の素材である腸溶性コーティング剤は、高pHである腸液環境で崩解される物質であれば制限なく使用可能であり、例えば、シェラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテート、ポリビニルアルコールフタレート、メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体、メチルアクリル酸−メタクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体、メタクリル酸−エチルアクリル酸共重合体及びその混合物からなる群から選択された一つ以上の物質を含むことができる。
【0045】
この中でメタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体は、エボニック・デグサ(Evonik Degussa)(ドイツ)のオイドラギット(Eudragit)L 100、オイドラギットL 12.5、オイドラギットL 100 Pのようなメタクリル酸、メチルメタクリル酸のモル比が1:1であるか、オイドラギットS 100、オイドラギットS 12.5、オイドラギットS 100 Pのようなメタクリル酸、メチルメタクリル酸のモル比が1:2であることが望ましい。
【0046】
また、メチルアクリル酸−メタクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体は、エボニック・デグサ(ドイツ)のオイドラギットFS 30Dのようなメチルアクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸のモル比が7:3:1であることが望ましい。
【0047】
さらに、メタクリル酸−エチルアクリル酸共重合体は、エボニック・デグサ(ドイツ)のオイドラギットL 30、D−55、オイドラギットL 100−55のようなメタクリル酸、エチルアクリル酸のモル比が1:1であることが望ましい。
【0048】
前記腸溶性コーティング層は、アスピリン粒子の総重量基準で一実施形態において2.0重量%〜20重量%、他の一実施形態において5〜15重量%、また他の一実施形態において5〜12重量%で含まれてもよい。前記範囲未満でコーティング層を形成する場合、胃で目的としない放出が起こることがあり、前記範囲を超えてコーティング層を形成する場合、溶出率が減少し、酸抵抗性が不良であり、生体利用率が減少する欠点があり、長期投与時に問題が発生することがある。
【0049】
また、前記クロピドグレル錠剤またはアスピリン含有粒子は、希釈剤、結合剤、滑沢剤、安定化剤、フィルムコーティング剤、可塑剤及びその混合物からなる群から選択された添加剤をさらに含むことができる。
【0050】
前記結合剤は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、コポビドン、マクロゴール、硬質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウムまたはマグネシウムメタシリケートアルミネートのようなケイ酸塩誘導体;リン酸水素カルシウムのようなリン酸塩;炭酸カルシウムのような炭酸塩;及びこれらの混合物からなる群から選択されてもよく、より好ましくはヒプロメロース、ポリビニルピロリドン及びその混合物からなる群から選択されてもよい。錠剤または粒子の総重量を基準に、前記結合剤は1重量%〜5重量%であり、より具体的には1重量%〜4重量%である。
【0051】
前記希釈剤は、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、セルロース、デキストリン、デキストロース、エチルセルロース、果糖、グリセリルパルミトステアレート、マルトース、スクロース、澱粉、微結晶性セルロース、乳糖、ブドウ糖、マンニトール、アルギネート、アルカリ土金属類塩、クレイ、ポリエチレングリコール、ジカルシウムホスフェート及びその混合物からなる群から選択されてもよい。
【0052】
前記滑沢剤は、タルク、ステアリン酸及びその塩類、ラウリル硫酸ナトリウム、水素化植物油、ナトリウムベンゾエート、ステアリルフマル酸ナトリウム、グリセリルモノステアレート、ポリエチレングリコール及びその混合物からなる群から選択されることができ、より好ましくは、ステアリルフマル酸ナトリウムであってもよい。
【0053】
前記安定化剤は、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸、トコフェロール、エデト酸(EDTA)及びその混合物からなる群から選択されてもよい。
【0054】
前記フィルムコーティング剤は、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、シェラック、エチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンと酢酸ビニルの重合体、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体(例えば、商品名、オイドラギット(Eudragit)RSまたはRL、デグサ)、メタクリル酸メチルアクリル酸エチル共重合体(例えば、商品名、オイドラギット(Eudragit)NE30D、デグサ)、ポリビニルアセチルジメチルアミノアセテート及びその混合物からなる群から選択されてもよい。
【0055】
前記可塑剤は、グリコール、エステル、オイル、グリセリン、グリセリン誘導体及びその混合物からなる群から選択されてもよいが、この中でグリコールはプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、及びその混合物からなる群から選択されてもよく、エステルはフタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、ジブチルセバケート、トリエチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、トリアセチン及びその混合物からなる群から選択されてもよい。前記オイルはヒマシ油、ココナッツ油及びその混合物からなる群から選択されてもよく、グリセリン及びグリセリン誘導体はグリセリン、モノステアリングリセリン及びその混合物からなる群から選択されてもよい。
【0056】
本発明の複合製剤において、前記クロピドグレル錠剤またはアスピリン含有粒子は、速放出物質をさらに含んで放出速度を増加させることができ、前記速放出物質は発泡剤、緩衝剤及びその混合物から選択することができる。
【0057】
前記発泡剤は、炭酸を含む無機物及び有機酸を含むことができる。
【0058】
前記緩衝剤は、炭酸カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、または多様な塩及びその混合物からなる群から選択することができる。
【0059】
一実施形態において、複合製剤内のクロピドグレル錠剤100重量部に対して、アスピリンの総粒子は10〜1000重量部、具体的には30〜200重量部であってもよい。
【0060】
一実施例において、複合製剤はクロピドグレルとして75mg及びアスピリンとして100mg、またはクロピドグレルとして75mg及びアスピリンとして75mgを含むことができる。
【0061】
本発明の複合製剤は、まず胃でクロピドグレル錠剤が溶出され、アスピリン粒子は腸で溶出される。したがって、クロピドグレルとアスピリンの相互補完的な薬理効果を発現させることができ、かつ、アスピリンによる胃壁の損傷を防止することができる。さらに、クロピドグレルとアスピリンが直接接触することを遮断することにより、共晶現象を防止し、含有量や溶出特性の変化を防ぎ、薬剤の安定性を向上させることができる。
【0062】
本発明の複合製剤の製造方法は、クロピドグレル、その異性体またはその薬学的に許容可能な塩、及びコロイド性二酸化ケイ素を混合した後、添加剤を添加してクロピドグレル錠剤を準備する段階;アスピリン、その異性体またはその薬学的に許容可能な塩を含むアスピリンコアを準備する段階;及び前記アスピリンコアを腸溶性コーティング剤でコーティングする段階を含むことができる。また、前記クロピドグレル錠剤及びコーティングされたアスピリン粒子をカプセルに充填する段階をさらに含むことができる。
【0063】
本発明の複合製剤は、薬学的に有効な量のクロピドグレル錠剤及びアスピリン含有粒子を含むことができる。
【0064】
本発明において、用語「薬学的に有効な量」とは、医学的治療に適用可能な合理的な恩恵/リスク比で疾患を治療するのに十分な量を意味し、一般に0.001〜1000mg/kgの量、好ましくは0.05〜200mg/kg、より好ましくは0.1〜100mg/kgの量を一日1回〜数回に分けて投与することができる。しかし、本発明の目的上、特定の患者に対する具体的な治療的有効量は、達成しようとする反応の種類と程度、場合によっては他の製剤が使用されるかどうかをはじめとした具体的な組成物、患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別及び食事、投与時間、投与経路及び組成物の分泌率、治療期間、具体的な組成物と共に使用されたり、同時に使用される薬剤をはじめとする多様な因子と医薬分野においてよく知られている類似因子に応じて異なって適用することが望ましい。
【0065】
本発明に係る複合製剤は、さらに薬学的に活性のある別途の成分を含むことができる。
【0066】
本発明の製剤は、粉末形状を含むことができ、固体形態の製剤として製造されることが望ましいが、液体の形態への製造が不可能ではなく、これを権利範囲から排除することはない。
【0067】
本発明の製剤は、個別の治療剤として投与することもでき、他の治療剤と併用して投与することができ、従来の治療法とは、順次または同時に投与することができる。そして、単一または多重投与されてもよい。
【0068】
本発明で使用される用語「投与」とは、任意の適切な方法で患者に本発明の薬学的組成物を導入することを意味し、本発明の組成物の投与経路は、目的とする組織に到達することができる限り、経口または非経口の多様な経路を通じて投与することができる。好ましくは、経口投与であってもよい。本発明に係る製剤は、目的とする投与方法に応じて、多様な剤形に製作することができる。一実施形態において、複合製剤は、カプセル形態であってもよく、硬質カプセルであってもよい。カプセルの素材は、ゼラチンまたはHPMCであり、HPMCであることがより好ましい。
【0069】
投与は、予防的にまたは治療的に実施することができる。
【0070】
本発明の製剤の投与頻度は、特にこれに限定されないが、1日1回投与するか、または容量を分割して数回投与することができる。
【0071】
本発明に係る製剤の投与対象となる個体は、ヒトを含めたすべての動物を意味することができる。前記動物は、ヒトだけでなく、これと類似した症状の治療を必要とする牛、馬、羊、豚、ヤギ、ラクダ、カモシカ、犬、猫などの哺乳動物であってもよいが、これらに限定されない。
【発明の効果】
【0072】
本発明の複合製剤は、保管及び流通中にも安定性が維持され、クロピドグレル錠剤の崩解速度を速くすることにより、カプセル内にクロピドグレル錠剤を含ませることによるクロピドグレルの溶出遅延を防ぐことができる。また、その他の添加剤を加える前に、コロイド性二酸化ケイ素を主成分と混合して錠剤を製造することにより、主成分であるクロピドグレル、その異性体またはその薬学的に許容可能な塩の含有量比が高まることによる、打錠時にパンチにくっつくスティッキング(sticking)、キャッピング(capping)現象が発生することを防止することができる。また、本発明は、カプセル内に錠剤を含める場合に発生する問題を解決することができる。
【0073】
本発明の複合製剤は、有効成分であるクロピドグレルとアスピリンが物理的に直接接触しないように設計することにより、両成分の共晶(eutectic)現象を根本的に遮断することができる。また、共晶現象を排除し、各成分の物理化学的性質の変化を防止することにより、短期的に製剤の含有量、溶出特性、生物学的同等性(bioequivalence)の変化を防止し、長期的に製剤の安定性を向上させる効果がある。
【0074】
それだけではなく、本発明の複合製剤は、アスピリンが胃壁を刺激して損傷を引き起こす問題の予防のために、アスピリンは腸のみで溶出され、胃では溶出しないようにアスピリンを腸溶層でコーティングした。したがって、本発明の複合製剤を経口投与すると、クロピドグレルが胃で先に溶出され、アスピリンは腸で後で溶出されることにより、胃壁の損傷を予防する効果がある。
【0075】
さらに、クロピドグレルとアスピリンを同時にまたは時間差をおいて、別々に服用する場合に比べて、服用の利便性とコンプライアンスを増大させることはもちろん、相互に補完的な両薬物の薬理作用により従来の製剤に比べて少ない用量でも同様な結果を奏することができ、薬理成分による副作用と製造コストを削減するという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0076】
以下、本発明を下記例により詳しく説明する。ただし、下記例は、本発明を例示するためのものに過ぎず、下記例により、本発明の範囲が制限されるものではない。
【0077】
比較例1及び2
クロピドグレル硫酸水素塩とPEG 6000、マンニトール300 DC、MCC 102及びL−HPCを下記表1の含有量で混合した。表1の含有量は、1錠剤当りの含有量を示す。その後、前記混合物とコロイダルシリコンジオキシド、タルク及びステアリルフマル酸ナトリウム(PRUV(登録商標))を後混合した後、打錠した。その結果、打錠時にスティッキングとキャッピング現象が発生した。
【0078】
【表1】
【実施例】
【0079】
実施例1
下記表2の成分及び含有量に応じて錠剤を製造した。クロピドグレル硫酸水素塩とコロイダルシリコンジオキシドをまず混合した後、前記混合物とPEG 6000、マンニトール300 DC、MCC 102、及びL−HPCを後混合した。その後、滑沢剤であるタルク及びPRUV(登録商標)を添加した後、打錠した。表2の含有量は、1錠剤当りの含有量を示す。この場合、コロイダルシリコンジオキシドを後混合し、MCC 102を使用した前記比較例1及び2とは異なり、実施例1の錠剤は、打錠時にスティッキングやキャッピングの障害が発生しなかった。前記成分の含有量を表2に示した。
【0080】
【表2】
【0081】
実施例2〜7
打錠時のスティッキング及びキャッピング障害現象をさらに向上させるために、乾燥減量が低い(1.5重量%)MCC112を使用した。クロピドグレル硫酸水素塩とコロイダルシリコンジオキシドをまず混合した後、前記混合物とPEG 6000、マンニトール300 DC、MCC 112、L−HPC、CL−PVP及びPVP K−30を後混合した。その後、滑沢剤であるPRUV(登録商標)を添加した後、打錠した。前記成分の含有量をそれぞれ表3に示した。表3の含有量は、1錠剤当りの含有量を示す。
【0082】
【表3】
【0083】
実施例8〜10及び比較例3〜6
コロイダルシリコンジオキシドが崩解剤を含む本願の剤形に及ぼす影響を把握するために、前記実施例2〜7と、主にコロイダルシリコンジオキシドの含有量を変えて下記表4の組成を有する錠剤を製造した。
【0084】
【表4】
【0085】
実験例1.実施例2〜7の崩解試験
前記実施例2〜7により製造された錠剤を対象に崩解試験を行った。崩解試験は、大韓薬典の一般試験法中、崩解試験法に従った(試験液:水)。その結果は、下記表5の通りであり、対照群としてプラビックス錠を使用した。実施例2〜7の場合、崩解時間が11分以内と示され、対照群より崩解時間が短縮されることが分かった。実施例2〜7の場合、打錠の障害なしに打錠が可能であった。
【0086】
【表5】
【0087】
実験例2.実施例8〜10及び比較例3〜6の崩解試験及びキャッピング及びスティッキング有無の確認試験
前記表4で記載された実施例8〜10及び比較例3〜6のクロピドグレル錠剤をもってスティッキング、キャッピング実験及び崩解時間の実験(本願実験例1と同様の方法を使用)をした結果は下記表6の通りである。
【0088】
【表6】
【0089】
コロイド性二酸化ケイ素をクロピドグレル錠剤の総重量基準で1重量%使用した比較例3及び4の場合、打錠時にスティッキング及び/またはキャッピング障害が発生し、また、コロイド性二酸化ケイ素を11重量%使用した比較例5の場合、キャッピング障害が発生し、比較例6の場合には、崩解時間が15分と非常に大きな値を示したことを確認することができた。
【0090】
一方、コロイド性二酸化ケイ素をクロピドグレル錠剤の総重量を基準として、3または10重量%を使用した実施例8〜10は、スティッキング及びキャッピングが発生せず、かつ、崩解時間が11分以内と示された。
【0091】
このような結果を通じて、崩解剤を含有し、コロイダルシリコンジオキシドをクロピドグレル錠剤の総重量を基準として2〜10重量%で含む錠剤が短縮された崩解時間を有し、同時に打錠に優れることが分かった。
【0092】
製剤例1
− クロピドグレル硫酸塩コーティング錠の製造
1錠剤当りヒドロキシプロピルセルロース0.5mg及びネオコート8038HP 3.5mgと、有機溶媒である塩化メチレン(有機溶媒中、5重量%)及びエタノール(有機溶媒中、99.5重量%)を混合してフィルムコーティング液を調製した後、前記実施例3で製造したクロピドグレル硫酸塩の裸錠をコーティングした。
【0093】
− アスピリン顆粒の製造
これとは別途に、1カプセル当り塩化メチレン600mg及びエタノール300mgの混合溶媒にアスピリン(Rhodia、タイ)100mg及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(Shin-Etsu、日本)5.0mgを溶解させた後、平均粒径600〜710μmの球状白糖(IPS、イタリア)顆粒30mgに流動層コーティング機(Glatt GmbH Process Technology、ドイツ)で、前記混合物を噴霧してアスピリン外核を形成した。次いで、塩化メチレン250mg及びエタノール250mgの混合溶媒にヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(Shin-Etsu、日本、置換度200731、粘度40mPa.s)9.5mg、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(置換度2910、粘度15mPa.s)5mg及びトリエチルシトレート(Morimurabros.INC、日本)0.5mgを溶解させた後、前記アスピリン外核に噴霧して腸溶層を形成することにより、アスピリン顆粒を製造した。
【0094】
前記製造されたクロピドグレル錠剤204mg及びアスピリン顆粒145mgをゼラチン及びHPMC硬質カプセルにそれぞれ充填してクロピドグレル75mg及びアスピリン100mgを含む複合製剤を製造した。
【0095】
製剤例2
前記製剤例1と同様に実施するものの、前記実施例3で製造したクロピドグレル硫酸塩の裸錠を使用し、アスピリン顆粒の製造時に下記成分の含有量を表7のように製剤例1とは異にして、クロピドグレル錠剤75mg及びアスピリン75mgを含む複合製剤を製造した。
【0096】
【表7】
【0097】
比較製剤例1
− クロピドグレル顆粒の製造
1カプセル当り無水エタノール300mg、塩化メチレン1000mgを溶媒にしてクロピドグレル硫酸水素塩97.875mg、ヒドロキシプロピルメチルセルロース25.5mgを溶解させた後、平均粒径600〜710μmの球状白糖(IPS、イタリア)顆粒103.625mgに流動層コーティング機(Glatt GmbH Process Technology、ドイツ)で、前記混合物を噴霧してクロピドグレル外核を形成した。次いで、無水エタノール200mg、塩化メチレン500mgにヒドロキシプロピルメチルセルロース20mgとポリエチレングリコール3.0mgを溶解させた後、前記クロピドグレルの外核に噴霧して速放保護層を形成することにより、クロピドグレル顆粒を製造した。
【0098】
− アスピリン顆粒の製造
前記製剤例1のアスピリン顆粒と同様の方法で製造した。
【0099】
その後、前記製造されたクロピドグレル錠剤245mg及びアスピリン顆粒145 mgをゼラチン及びHPMC硬質カプセルにそれぞれ充填し、クロピドグレル75mg及びアスピリン100mgを含む複合製剤を製造した。
【0100】
実験例3.性状変化の試験
製剤例1で製造された複合製剤を使用してカプセルがゼラチンである場合とHPMCである場合に分けて、試験条件40℃、75%RHに露出して過酷試験を行って性状の変化を観察した。その結果は下記表8の通りである(〇:良好な状態、×:不良状態)。
【0101】
【表8】
【0102】
苛酷試験において、ゼラチンカプセルの場合、4日になるまで性状の変化が観察されず、HPMCカプセルの場合、21日以上経過しても外観上の変化が観察されないため、ゼラチンカプセルに比べてより安定性を示した。
【0103】
実験例4.安定性の試験
前記製剤例1により製造された本発明の複合製剤に対して6ヶ月間の加速試験(温度40℃、75%RH PEボトル)を行って安定性を評価し、評価の結果を表9に示した。
【0104】
製剤例1及び比較製剤例1の場合、時間に応じて総不純物量の増加が目立ったが、製剤例1の場合、不純物の増加が顕著に減少した。
【0105】
【表9】
【0106】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本発明の範囲は上記詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導かれるあらゆる変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈すべきである。