【実施例】
【0039】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。また、「部」及び「%」は、特に明示しない限り重量部及び重量%を示す。
なお、実施例及び比較例で得られた記録用紙に対して行った試験・測定方法、及び評価基準は次の通りである。
【0040】
(1)白紙光沢度
JIS P8142:2005に準じた方法により測定した。
(2)平滑度
JIS P8155:2010に準じた方法(王研法)により測定した。
(3)透気抵抗度
JIS P8117:2009に準じた方法(王研式試験機法)により測定した。
(4)接触角
上述の方法により測定した。
【0041】
(5)表面強度(ドライピック)
記録層に、RI印刷機を用いて下記条件でインキを印刷し乾燥させた後、紙のピッキングと、ロールへの紙粉付着(裏取りにて確認)の状態を目視で以下の基準で評価した。評価が○、△であれば実用上問題がない。
インキ種類:SMXタックグレード黒(タック:20)
インキ量:0.4ml
使用ロール:ゴムロール
○:紙のピッキング、ロールへの紙粉付着共になし。
△:紙のピッキングまたはロールへの紙粉付着が若干ある。
×:紙のピッキングまたはロールへの紙粉付着が多い。
【0042】
(6)インキ着肉性
記録層に、RI印刷機を用いて下記条件でインキを印刷し乾燥させ、23℃/50%RHの環境下で24時間静置した後、印刷部の濃度(ブラック)を反射濃度計(GretagMacbeth RD−19I)で測定した。
インキ種類:TOYOインキ TK NEX MZ 墨
インキ量:0.3ml
使用ロール:ゴムロール
インキ着肉性を以下の基準で評価した。評価が○、△であれば、実用上問題がない。
○:印刷部の濃度(ブラック)が2.3以上
△:印刷部の濃度(ブラック)が2.1以上2.3未満
×:印刷部の濃度(ブラック)が2.1未満
【0043】
(7)セットオフ
記録層に、RI印刷機を用いて下記条件でインキを印刷し、印刷してから1分後、または5分後に一般コート紙(A2コート紙)と貼り合せて、RI印刷機でニップし、23℃、50%RHの環境下で1日静置した後、転移したインキの濃度(ブラック)を反射濃度計(GretagMacbeth RD−19I)で測定した。セットオフを以下の基準で評価した。評価が○、△であれば、実用上問題がない。
インキ種類:TOYOインキ TK NEX MZ 墨
インキ量:0.4ml
使用ロール:ゴムロール
○:1分後の濃度が0.1未満
△:1分後の濃度が0.1以上0.3未満、且つ、5分後の濃度が0.1未満
×:1分後の濃度が0.3以上または5分後の濃度が0.1以上
【0044】
(8)産業用インクジェット記録適性
記録層に、セイコーエプソン社製のカラーインクジェトプリンターPX−045A(印刷条件:普通紙、はやい)でインクジェット印字し、以下を評価した。なお、家庭用のインクジェットプリンターで印刷条件を普通紙、はやいモードに設定することにより、産業用インクジェットプリンターの解像度とインクの打ち込み量と同程度となる。
<印字濃度>
シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックについて各ベタ画像を印字し、23℃、50%RH環境下で24時間静置した後に、各画像部の印字濃度を反射濃度計(GretagMacbeth RD−19I)で測定した。
4色の印字濃度の合計値を以下の基準で評価した。評価が○、△であれば、実用上問題がない。
○:4色の印字濃度の合計値が7.0以上
△:4色の印字濃度の合計値が6.0以上7.0未満
×:4色の印字濃度の合計値が6.0未満
【0045】
<バンディング>
ブラックのベタ画像(縦5cm×横5cm)を印字し、23℃、50%RH環境下で24時間静置した後に、以下の基準で評価した。評価が○、△であれば、実用上問題がない。
○:白く抜けている箇所が無く、綺麗な黒のベタ画像である。
△:白く抜けている筋が若干ある。
×:白く抜けている筋が目立つ。
【0046】
<ビーディング>
グリーンのベタ画像(縦5cm×横5cm)を印字し、23℃、50%RH環境下で24時間静置した後に、以下の基準で評価した。評価が○、△であれば、実用上問題がない。
○:インクの粒状感や滲みが無く、綺麗な緑のベタ画像である。
△:若干インクの粒が見える。
×:インクの粒状感が目立つ。
【0047】
<実施例1>
パルプ原料としてCSF420mlの広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)100部を使用し、パルプ100部に対して、重質炭酸カルシウム10部、アルキルケテンダイマー0.2部及び硫酸アルミニウム0.5部を配合した紙料を長網抄造機で抄造した後、カレンダー処理を施して、坪量80g/m2の基紙を得た。
【0048】
下記配合からなる配合物をそれぞれ攪拌分散して、記録層用塗工液及び凝固液とした。
<記録層用塗工液>
カオリン(エンゲルハルド社製、製品名:ウルトラホワイト90) 50.0部
重質炭酸カルシウム(三共製粉社製、製品名:エスカロン2000) 50.0部
バインダー(スチレンブタジエンラテックス、JSR社製、
製品名:JSR0617) 20.0部
バインダー(カゼイン、ニュージーランド産、
製品名:ラクチックカゼイン) 6.0部
離型剤(ポリエチレン系、サンノプコ社製、製品名:SNコート 287) 4.0部
界面活性剤(サンノプコ社製、製品名:SNウェット964) 0.1部
【0049】
<凝固液>
蟻酸カルシウム 10.0部
水 90.0部
【0050】
次いで、上記基紙の片面に、上記記録層用塗工液を固形分で塗工量20g/m2となるようにしてロールコーターを用いて塗工した後、凝固液を塗工して凝固処理した。
【0051】
次いで、得られた記録層が湿潤状態にあるうちに、110℃に加熱されたキャストドラムの鏡面に圧着して乾燥してキャスト塗工層とし、記録用紙を得た。
【0052】
実施例2は、バインダーとしてSBLの配合割合を表1、表2のように変えたこと以外は、実施例1と同様にして記録用紙を得た。
実施例3は、バインダーとしてSBLとポリビニルアルコール(クラレ社製、製品名:PVA117)、カゼインを表1、表2の割合で用いたこと以外は、実施例1と同様にして記録用紙を得た。
実施例4は、バインダーとしてSBLの配合割合を表1、表2のように変えたこと以外は、実施例1と同様にして記録用紙を得た。
実施例5は、無機顔料としてカオリンと重質炭酸カルシウムの配合割合を表1、表2のように変えたこと以外は、実施例1と同様にして記録用紙を得た。
実施例6は、記録層の離型剤としてポリエチレン系(実施例1と同一)と高級脂肪酸カルシウム系(サンノプコ社製、商品名:SNコート246)を表1、表2の割合で用いたこと以外は、実施例1と同様にして記録用紙を得た。
【0053】
実施例7は、記録層用塗工液を固形分で塗工量12g/m2となるようにしてロールコーターを用いて塗工した以外は、実施例1と同様にして記録用紙を得た。
実施例8は、記録層用塗工液を固形分で塗工量35g/m2となるようにしてロールコーターを用いて塗工した以外は、実施例1と同様にして記録用紙を得た。
【0054】
比較例1は、無機顔料として重質炭酸カルシウムの代わりに軽質炭酸カルシウム(白石工業製、製品名:ユニバー70)を用いてカオリンと軽質炭酸カルシウムの配合割合を表1、表2のように変えたこと以外は、実施例1と同様にして記録用紙を得た。
【0055】
比較例2、3は、無機顔料としてカオリンと重質炭酸カルシウムの配合割合を表1、表2のように変えたこと以外は、実施例1と同様にして記録用紙を得た。
比較例4、5は、バインダーとしてSBLの配合割合を表1、表2のように変えたこと以外は、実施例1と同様にして記録用紙を得た。
【0056】
比較例6は、記録層の離型剤として高級脂肪酸カルシウム系を表1、表2の割合で用いたこと以外は、実施例1と同様にして記録用紙を得た。
比較例7は、記録層の離型剤としてポリエチレン系を表1、表2の割合で用いたこと以外は、実施例1と同様にして記録用紙を得た。
【0057】
比較例8は、無機顔料としてカオリン、重質炭酸カルシウムとシリカ(日本アエロジル社製、商品名:アエロジル300)を表1、表2の割合で用いたこと以外は、実施例1と同様にして記録用紙を得た。
【0058】
得られた記録用紙の白紙光沢度、接触角、平滑度、透気抵抗度は表1、表2に示した通りであり、一般印刷用紙として使用した場合に得られた印刷適性、及び産業用インクジェット用記録用紙として使用した場合に得られた記録適性は表1、表2に示した通りである。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
表1、表2から明らかなように、記録層の無機顔料として所定割合のカオリンと重質炭酸カルシウムを含むと共に、さらにバインダーとして所定割合のSBLを含み、接触角を規定した各実施例の場合、オフセット印刷やレタープレス等の一般印刷適性を確保すると共に、産業用インクジェット記録において発色性(印字濃度)が向上し、バンディング(筋抜け)及びビーディング(粒状感)の発生を抑制することができた。
【0062】
なお、平滑度(王研法)が4000秒未満、透気抵抗度(王研式試験機法)が3000秒未満の実施例3の場合、他の実施例に比べて、産業用インクジェット適性(印字濃度、バンディング、ビーディング)がやや劣ったが実用上問題はない。
【0063】
記録層が重質炭酸カルシウムを含まない比較例1の場合、産業用インクジェット記録における印字濃度が劣り、バンディング(筋抜け)も低下した。
これは、記録層の空隙が増えたために表層にインクを留める効果が低減したと考えられる。
記録層の重質炭酸カルシウムの割合が35重量%未満、カオリンの割合が65重量%を超えた比較例2の場合、産業用インクジェット記録においてビーディング(粒状感)が発生した。
これは、記録層の空隙が減少したため、インクが記録層の内部方向に浸透しない状態で、かつ平面方向にも広がらない状態となったものと考えられる。
【0064】
記録層の重質炭酸カルシウムの割合が60重量%を超え、カオリンの割合が40重量%未満である比較例3の場合、バンディングが発生した。これは、記録層の空隙が増えてインクが紙の中に浸透しやすくなり、更に平滑度が低くインクが広がり難くなったためと考えられる。
【0065】
記録層の無機顔料100重量部に対し、SBLが15重量部未満の比較例4の場合、産業用インクジェットプリンターで記録する際にバンディングが発生した。また、一般印刷適性としては記録層の強度が不十分となった。
【0066】
記録層の無機顔料100重量部に対し、SBLが25重量部を超えた比較例5の場合、産業用インクジェットプリンターで記録する際にビーディングが発生した。また、一般印刷適性としては、インクの乾燥性が劣ってセットオフが発生した。
【0067】
記録層の接触角が40度を超えた比較例6の場合、バンディングが発生した。
記録層の接触角が20度未満の比較例7の場合、ビーディングが発生した。
【0068】
記録層の無機顔料100重量%に対し、カオリンと重質炭酸カルシウムの合計が90重量%未満の比較例8の場合、一般印刷適性としては記録層の強度が不十分であり、インキ着肉性も劣った。