(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記吸収性シート部材において、前記高吸水性ポリマーは、少なくとも2枚の親水性不織布の間にホットメルト接着剤で担持される、請求項1又は2に記載のパンツ型吸収性物品。
前記吸収性シート部材の長手方向の寸法が50mm以上90mm以下であり、幅方向の寸法が20mm以上50mm以下である、請求項1から4のいずれかに記載のパンツ型吸収性物品。
【背景技術】
【0002】
従来、幼児、成人、及び病人の排泄物を吸収するため、パンツ型の紙おむつ(パンツ型吸収性物品)が使用されている。パンツ型吸収性物品は、ウエスト開口部と一対の脚開口部とを形成するとともに、排泄物を吸収する吸収性本体とその支持部材である外装体を有し、吸収性本体が前後から着用者の股間部を覆っている。そして、脚開口部に着用者の両足を入れ、紙おむつ本体を胴回りへ引っ張り上げて着用する。ここで、従来のパンツ型吸収性物品は、胴回りから股領域にかけて吸収体が配置されているため、排尿後に吸収体が膨らみ、下向きに重みが加わることで、股下域の吸収体が垂れ下がって身体とパンツ型吸収性物品との間に間隙を形成することがあり、このような間隙の形成が排泄物の漏れ等の原因になっていた。また、股下域の吸収体が垂れ下がることにより、歩行等の際に重みを感じたり、パンツ型吸収性物品が股部に不必要に干渉して着用者が動きづらさを感じたりすることもあり、パンツ型吸収性物品着用の際の不快感につながる。
【0003】
ここで、パンツ型吸収性物品の着用の際のずれ落ちの問題に対処した発明として、特許文献1には、外装体と、吸収性本体とからなり、ウエスト開口部及び左右1対の脚開口部が形成されたパンツ型吸収性物品であって、外装体には、腹側部の右側縁部から股下域を通って背側部の左側縁部に至る第1の弾性部材と、この第1の弾性部材と股下部で交差するように腹側部の左側縁部から股下域を通って背側部の右側縁部に至る第2の弾性部材と、左右の脚開口部と吸収体との間にそれぞれ位置するとともに、両端部が第1の弾性部材及び第2の弾性部材と重なりあう第3の弾性部材と、が配置されたパンツ型吸収性物品が開示されている。
【0004】
また、パンツ型吸収性物品の着用の際の違和感等を低減することを目的とした発明としては、特許文献2に、吸収性本体とその外面側に一体的に設けられた外装体とからなり、ウエスト開口部及び左右1対の脚開口部が形成されたパンツ型吸収性物品において、吸収性本体の股下域における吸収体の厚みよりも、前方域及び/又は後方域における吸収体の厚みを薄く形成したことを特徴とするパンツ型吸収性物品が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の発明は、パンツ型吸収性物品の着用の際のずれ落ちの問題を、所定の弾性部材を配置することのみで解決しようとする発明であるため、特許文献1の発明の構成を採用することにより、股下域の吸収体の垂れ下がりの問題を解決しようとする場合、胴回り部や脚部の弾性部材の張力が過剰になり、着用者にストレスを与える可能性があった。また、特許文献2の発明についても、前方域及び/又は後方域における吸収体の厚みを薄く形成したとしても、厚みの厚い吸収性本体の股下域の吸収体の重量により、股下域の垂れ下がりが起こる可能性もあった。
【0007】
したがって、本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、胴回り領域や脚部の弾性部材の張力を過剰なものとすることなく、股下域の吸収体の垂れ下がりの問題を改善することが可能なパンツ型吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者は、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、吸収性本体と、外装体とを有するパンツ型吸収性物品において、吸収性本体の前方域及び後方域に、それぞれ前方域吸収体及び後方域吸収体を配置し、股下域には、前方域吸収体と後方域吸収体とを架橋する吸収性シートを配置して固定し、前方域、股下域、及び後方域に、所定の湾曲弾性部材を配置することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
(1)本発明の第1の態様は、上部にウエスト開口部を形成し、股領域の両側に脚開口部を形成した、パンツ型吸収性物品であって、液透過性のトップシート、液不透過性のバックシート、並びに上記トップシート及び上記バックシートの間に配置される吸収体を含む吸収性本体と、上記パンツ型吸収性物品の外形形状を構成する、外装シート及び上記外装シートの身体側の内装シートからなる外装体と、を有し、上記パンツ型吸収性物品は、着用者の腹部に当接する前側胴回り領域と、着用者の背部に当接する後側胴回り領域と、吸収性本体が配置された股領域と、を有しており、上記吸収性本体は、前方域、股下域、及び後方域を有し、上記前方域には、前方域吸収体が配置されるとともに、上記後方域には後方域吸収体が配置され、上記前方域吸収体及び上記後方域吸収体は、それぞれ、吸収性繊維及び高吸水性ポリマーを含有し、上記股下域には、親水性不織布の間に高吸水性ポリマーが担持された吸収性シート部材が、上記前方域吸収体と上記後方域吸収体とを架橋して配置されて固定され、
前記吸収体が、前記前方域吸収体と、前記後方域吸収体と、前記吸収性シート部材に分割して配置され、上記股下域には、複数の第1の湾曲弾性部材が配置されるとともに、複数の第1の湾曲弾性部材の端部は、一部が上記前側胴回り領域に、残部が上記後側胴回り領域にそれぞれ延在し、上記前方域及び上記後方域には、複数の第2の湾曲弾性部材が配置されるとともに、複数の第2の湾曲弾性部材の端部は、上記前側胴回り領域及び上記後側胴回り領域にそれぞれ延在する、パンツ型吸収性物品である。
【0010】
(2) 本発明の第2の態様は、(1)に記載のパンツ型吸収性物品であって、上記前方域吸収体及び上記後方域吸収体は、10mm以上30mm以下離間することを特徴とするものである。
【0011】
(3) 本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載のパンツ型吸収性物品であって、上記吸収性シート部材において、上記高吸水性ポリマーは、少なくとも2枚の親水性不織布の間にホットメルト接着剤で担持されることを特徴とするものである。
【0012】
(4) 本発明の第4の態様は、(1)から(3)のいずれかに記載のパンツ型吸収性物品であって、上記吸収性シート部材が、上記吸収体の身体側、上記吸収体の外装体側、又は上記吸収体の間に配置されることを特徴とするものである。
【0013】
(5) 本発明の第5の態様は、(1)から(4)のいずれかに記載のパンツ型吸収性物品であって、上記吸収性シート部材の長手方向の寸法が50mm以上90mm以下であり、幅方向の寸法が20mm以上50mm以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、吸収性本体の股下域に、親水性不織布の間に高吸水性ポリマーが担持された吸収性シート部材が配置され、この吸収性シート部材が前方域吸収体及び後方域吸収体とを架橋して配置されて固定されている。このため、股下域に吸収されて保持される体液の量が低減するとともに、吸収性シート部材に吸収された体液が、架橋部を介して前方域吸収体及び後方域吸収体に拡散して吸収され、排泄された体液が股下域に集中して滞留することが抑制される。よって、股下域の吸収体が重みにより垂れ下がる問題を防止することができる。さらに、股下域、前方域、及び後方域のそれぞれを、前側胴回り領域や後側胴回り領域にも延在する弾性部材により支持するため、胴回り領域や脚部の弾性部材の張力を過剰なものとすることなく、パンツ型吸収性物品のフィット性を向上させ、結果的に股下域の吸収体が垂れ下がる問題をより一層防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係るパンツ型吸収性物品1について説明する。なお、パンツ型吸収性物品1を着用したときに着用者の腹側となる位置を「前」又は「前側」と称し、着用者の背側となる位置を「後」又は「後側」と称する。また、パンツ型吸収性物品1を着用したときに着用者の肌側となる面を「内側」と称する。
【0017】
<パンツ型吸収性物品>
図1は、本発明のパンツ型吸収性物品1の斜視図であり、
図2は、本発明のパンツ型吸収性物品1の展開図である。パンツ型吸収性物品1は、着用者の股間部を前後から覆う前後方向に細長い形態を有する吸収性本体20と、吸収性本体20の外側に重なりつつ吸収性本体20の周囲に延びてパンツ型吸収性物品1の外形形状を構成する外装体30と、を有している。そして、
図1に示すように、外装体30によりその外形形状が構成されるパンツ型吸収性物品1は、上部にウエスト開口部11が、股領域14の両側に脚開口部12が形成されており、大きく区分して、着用者の腹部に当接する前側胴回り領域13、着用者の背部に当接する後側胴回り領域15、及び吸収性本体20が配置された股領域14に区分される。
【0018】
[吸収性本体]
図2に示すように、吸収性本体20は、液透過性のトップシート24と、液不透過性のバックシート25と、トップシート24及びバックシート25の間に配置される吸収体29とを含み、着用者の腹側と接する前方域21、着用者の股間部と接する股下域22、及び着用者の背側と接する後方域23に区分される。
【0019】
(トップシート)
トップシート24は、体液が吸収体へと移動するような液透過性を備えた基材から形成すればよく、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の不織布、サーマルボンド/スパンボンドを積層した複合不織布等の親水性の不織布材料等、感触が柔らかで肌に刺激を与えない材料から構成される。また、トップシート24には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート24には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。さらに、強度及び加工性の点から、トップシート24の坪量は、18g/m
2以上40g/m
2以下であることが好ましい。トップシート24の形状としては特に制限はないが、漏れがないように体液を吸収体29へと誘導するために必要とされる、吸収体29を覆う形状であればよい。
【0020】
(バックシート)
バックシート25は、吸収体29が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成すればよく、通気性又は非通気性の樹脂フィルムから形成される。ここで、使用できる樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。強度及び加工性の点から、バックシート25の坪量は、15g/m
2以上40g/m
2以下であることが好ましい。また、装着時の蒸れを防止するため、通気性を有する樹脂フィルムをバックシート25として使用することが好ましい。バックシート25に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート25にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0021】
(吸収体)
吸収性本体20は、トップシート24及びバックシート25の間に配置される吸収体29を有している。本発明においては、吸収体29は、前方域21に配置される前方域吸収体26、後方域23に配置される後方域吸収体28を有しており、さらに、股下域22に配置され、前方域吸収体26と後方域吸収体28とを架橋して配置された状態で固定された吸収性シート部材27を有する。吸収体29が、後述する前方域吸収体26、後方域吸収体28、及び吸収性シート部材27に分割して配置されていることにより、股下域22に配置され、吸収性繊維を含まない吸収性シート部材27が吸収した体液が、前方域吸収体26及び後方域吸収体28に拡散して吸収させることができ、吸収体29に保持される体液が股下域22に集中して滞留することが抑制される。これにより、股下域22に保持される体液の量が低減され、股下域22の吸収体29の重みにより、股下域22の吸収体29が垂れ下がることを防止することができる。
【0022】
((前方域吸収体及び後方域吸収体))
前方域吸収体26及び後方域吸収体28は、それぞれ、基材としての吸収性繊維と、高吸水性ポリマー(SAP)と、を含有する。吸収性繊維は、一般に生理用ナプキンやおむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布等を挙げることができる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。斯かるフラッフパルプとしては、木材パルプ、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。前方域吸収体26及び後方域吸収体28の吸収性繊維は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、100g/m
2以上800g/m
2以下の坪量とすることが好ましい。
【0023】
前方域吸収体26及び後方域吸収体28の高吸水性ポリマーとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン−アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。前方域吸収体26及び後方域吸収体28のSAP量は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、50g/m
2以上500g/m
2以下の坪量とすることが好ましく、15質量%以上50質量%以下の含有量とすることが好ましい。
【0024】
前方域吸収体26及び後方域吸収体28において、吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成した積層マットの形態であることが好ましい。また、SAP粒子の漏洩防止や前方域吸収体26及び後方域吸収体28の形状の安定化の目的から、前方域吸収体26及び後方域吸収体28をキャリアシートに包むことが好ましい。キャリアシートの基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。キャリアシートを複数備える場合は、キャリアシートの基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0025】
前方域吸収体26及び後方域吸収体28は、
図3において、上層吸収体(前方域上層吸収体261及び後方域上層吸収体281)と下層吸収体(前方域下層吸収体262及び後方域下層吸収体282)とを積層してなるものであることが好ましい。この場合、上層吸収体と下層吸収体の長手方向及び幅方向の寸法は、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法より大きくてもよく、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法と同じであってもよく、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法より小さくてもよい。
【0026】
本発明においては、前方域吸収体26と後方域吸収体28とが10mm以上30mm以下離間していることが好ましい。前方域吸収体26と後方域吸収体28とがこのような距離で離間していることにより、股下域22の吸収性シート部材27に吸収された体液が、迅速に前方域吸収体26及び後方域吸収体28に拡散して吸収されることを担保するとともに、吸収体29に吸収された体液の重みが股下域22に集中しすぎることを回避できる。
【0027】
((吸収性シート部材))
図3は、本発明のパンツ型吸収性物品1における吸収体29の長手方向の断面から見た配置を示す図面であり、
図4は、本発明のパンツ型吸収性物品1における吸収性シート部材27の幅方向の断面から見た構成を示す図面である。本発明において、
図4に示すように、股下域22に設けられる吸収性シート部材27は、親水性不織布(上層親水性不織布271及び下層親水性不織布275)の間に高吸水性ポリマー276が担持されたものである。このような吸収性シート部材27は、保持可能な体液の量が制限されているので、吸収性シート部材27を股下域22に配置することにより股下域22に集中して体液が滞留することを回避することができ、吸収性シート部材27に吸収された体液も、前方域吸収体26及び後方域吸収体28との架橋部を介してこれら前方域吸収体26及び後方域吸収体28に拡散して吸収される。なお、本発明においては、
図4に示すように、上層親水性不織布271及び下層親水性不織布275の間に、更に1枚の中間層親水性不織布273を設け、上層親水性不織布271と中間層親水性不織布273との間、及び中間層親水性不織布273と下層親水性不織布275との間に高吸水性ポリマー276を担持するような構造としてもよい。以下、本明細書においては、一例として、
図4(b)を参照して、吸収性シート部材27が上層親水性不織布271、中間層親水性不織布273、及び下層親水性不織布275を有し、上層親水性不織布271及び中間層親水性不織布273の間、及び中間層親水性不織布273及び下層親水性不織布275の間に高吸水性ポリマー276(1次吸水層272及び2次吸水層274)が担持される態様について説明することとする。
【0028】
1次吸水層272、及び2次吸水層274は、高吸水性ポリマー及びホットメルト接着剤を含み、このホットメルト接着剤によって、上記上層親水性不織布271、1次吸水層272、中間層親水性不織布273、2次吸水層274、及び下層親水性不織布275は、相互に接着されている。
【0029】
ここで、高吸水性ポリマーの吸収速度の指標として、Vortex法による生理食塩水の吸収速度がある。これは、回転子を入れた100mLのビーカーに、生理食塩水を50mL加え、マグネチックスターラーを使用して600rpmで撹拌し、高吸水性ポリマー2.000gを精秤して渦中に投入し、投入後からストップウォッチにて時間計測を開始し、マグネチックスターラーの回転子が止まるまでの時間を計測するものである。計測した数値が小さいほど吸収速度が速いことを表す。
【0030】
1次吸水層272(上層親水性不織布271と中間層親水性不織布273とに挟持される吸水層)に用いられる高吸水性ポリマーAのVortex法による生理食塩水の吸収速度は、吸収性シート部材27による体液の吸収速度を速めるとともに、1次吸水層272における体液の滞留を回避して、体液を前後左右及び下層の2次吸水層274にすばやく拡散させる観点から、30秒から70秒が好ましく、35秒から60秒がより好ましく、35秒から55秒が更に好ましい。
【0031】
2次吸水層274(中間層親水性不織布273と下層親水性不織布275とに挟持される吸水層)に含有される高吸水性ポリマーは、1次吸水層272で吸収しきれなかった体液をすばやく吸収し、保持する役目を持つ。そのためには、吸収速度の速い高吸水性ポリマーを使用することが好ましい。2次吸水層274に含有される高吸水性ポリマーBのVortex法による生理食塩水の吸収速度は、1秒から30秒が好ましく、2秒から25秒がより好ましく、3秒から20秒が更に好ましい。
【0032】
1次吸水層272に用いられる高吸水性ポリマーAの吸収速度から、2次吸水層274に含まれる高吸水性ポリマーBの吸収速度を差し引いた値が、正の値であり、かつ斯かる差が大きいほど、1次吸水層272における体液の滞留を回避し、かつ2次吸水層274において体液が効率よく保持される。具体的には、上記の差が10秒以上であることが好ましく、15秒以上であることがより好ましく、20秒以上であることが更に好ましい。
【0033】
吸収性シート部材27に使用される高吸水性ポリマーの中位粒子径は、100μm以上600μm以下が好ましく、200μm以上500μm以下がより好ましい。高吸水性ポリマーの中位粒子径を斯かる数値の範囲内のものとすることにより、流動性の悪い微粉末の使用を避けて、吸収性シート部材27の基本性能を高めつつも、吸収性シート部材27が堅くなることを防ぐとともに、ゴツゴツした感触を低減して、触感を改善することができる。
【0034】
吸収性シート部材27が含有する高吸水性ポリマー(1次吸水層272と2次吸水層274とを合わせた)の全含有量は、要求される吸収性能に応じて適宜設定することができるが、100g/m
2以上1000g/m
2以下であることが好ましく、200g/m
2以上800g/m
2以下であることがより好ましく、250g/m
2以上600g/m
2以下であることが更に好ましい。高吸水性ポリマーの含有量を斯かる数値の範囲内のものとすることにより、十分な吸収性能を発揮できる上に、体液吸収後のさらさら感も保持され、かつ超薄型に成形可能で、柔らかく動きやすい着用感を有する吸収性シート部材27を提供することができる。
【0035】
高吸水性ポリマーが1次吸水層272及び2次吸水層274に分画されて設けられている場合、1次吸水層272における高吸水性ポリマーAと2次吸水層274における高吸水性ポリマーBの含有比率は、(1次吸水層272における高吸水性ポリマーA)/(2次吸水層274における高吸水性ポリマーB)の値が98/2以上50/50以下であることが好ましい。1次吸水層272及び2次吸水層274に含有される高吸水性ポリマーの含有比率を上記の範囲内のものとすることにより、2次吸水層274の吸収性を充分に発揮させ、1次吸水層272の液戻りを少なくすることができる。
【0036】
高吸水性ポリマーとしては、ポリアクリル酸系、デンプン系、セルロース系等の公知のものを使用することができ、基本的には、前方域吸収体26及び後方域吸収体28に使用されるものと同類のものを使用することができる。
【0037】
親水性不織布と高吸水性ポリマーとの接着のために用いることができるホットメルト接着剤としては、融点が100℃から180℃程度の、スチレン−ブタジエン−スチレン系共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン系共重合体等の合成ゴム系接着剤、又はエチレン−酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系接着剤等を使用することができる。ホットメルト接着剤の塗布方法としては、溶融状態のホットメルト接着剤をノズルから非接触で塗布するカーテンコート法やスパイラル法、接触式で塗布するスロット法等、公知の方法を使用することができる。
【0038】
本発明においては、上層親水性不織布271、1次吸水層272、中間層親水性不織布273、2次吸水層274、及び下層親水性不織布275をホットメルト接着剤によって一体化した吸収性シート部材27全体に熱エンボス加工を施すことが好ましい。これにより、吸収性シート部材27全体への体液の拡散の効率を高めることができ、吸収性シート部材27中での高吸水性ポリマーの固定が強化される。エンボス形状としては、直線、曲線、ドット状等特に限定されず、またエンボスパターン形状も格子状、波状、エイコンパターン(どんぐりの連続形状)等、体液の拡散を効率よくするためのものが適宜選択される。
【0039】
吸収性シート部材27を構成する上層親水性不織布271、下層親水性不織布275、及び中間層親水性不織布273は、20g/m
2以上のものであれば使用できるが、少なくとも1枚は、親水性が高く、それ自身が保水して一時的に液体を保持するスパンレース不織布であることが好ましく、下層親水性不織布275がスパンレース不織布であることが更に好ましい。スパンレース不織布はレーヨンやコットンのセルロース系、及び合成繊維系等の不織布を使用することができ、その坪量は適宜選択できるものの、20g/m
2以上のものが好ましい。スパンレース不織布以外としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の合成繊維系からなるエアースルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布を使用することができる。本発明においては、特に液戻りの防止性能に優れるエアースルー不織布を使用することが好ましい。
【0040】
吸収性シート部材27の形状は、略矩形で、角部で肌を傷めることを防止するために、四隅が弧を描いていることが好ましい。
【0041】
図3に示すように、吸収性シート部材27は、前方域吸収体26及び後方域吸収体28の身体側に配置してもよく(
図3(b))、前方域吸収体26及び後方域吸収体28の外装体30側に配置してもよく(
図3(c))、前方域上層吸収体261及び前方域下層吸収体262の間と後方域上層吸収体281及び後方域下層吸収体282の間とに配置してもよい(
図3(a))。なお、前方域吸収体26及び後方域吸収体28と、吸収性シート部材27とを接合させる際には、ホットメルト系接着剤等を使用して吸収性シート部材27を前方域吸収体26及び後方域吸収体28に固定する。このようにすることにより、吸収性シート部材27から前方域吸収体26及び後方域吸収体28へ、体液が確実に拡散するものとなる。
【0042】
吸収性シート部材27は、長手方向の寸法が50mm以上90mm以下であり、幅方向の寸法が20mm以上50mm以下であることが好ましい。吸収性シート部材27の寸法を斯かる範囲内のものとすることにより、股下域22に排泄された体液を迅速に吸収しつつも、吸収した体液が大量に股下域22に滞留することを防止することができる。
【0043】
[外装体]
外装体30は、パンツ型吸収性物品1の外形形状を構成し、ウエスト開口部11及び脚開口部12を形成する外装シート301と、外装シートの身体側の内装シート302から構成される。
【0044】
(外装シート及び内装シート)
外装シート301は、股部となる中心線を中心としてほぼ対称な前側胴回り領域13と後側胴回り領域15とを有し、吸収性本体20も上記中心線を中心としてほぼ対称に配置されている。そして、吸収性本体20が内側となるように外装シート301(及び吸収性本体20)が上記中心線で二つ折りにされ、前側胴回り領域13及び後側胴回り領域15の両側縁が重なり部を有して接続されている。これにより、外装シート301は、伸縮性のウエスト開口部11と、一対の脚開口部12とを形成し、パンツ型吸収性物品1を全体として着脱可能なパンツ状に構成する。そして、パンツ型吸収性物品1を着用すると、腹側部が着用者の腹側で腰部及び股間部を覆い、背側部が着用者の背側で腰部及び股間部を覆うようになっている。
【0045】
外装シート301の内側には、内装シート302が積層されており、外装体30の強度を高めるようになっている。また、外装体30には、外装シート301及び内装シート302に加えて、吸収性本体20の周縁を覆う補助シートが設けられ、これが内装シート302に積層されていてもよい。外装シート301及び内装シート302には、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の不織布であって、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなる不織布を用いることができる。これらの不織布を用いる場合、その坪量は、18g/m
2以上40g/m
2以下とすればよい。
【0046】
[第1の湾曲弾性部材及び第2の湾曲弾性部材]
本発明のパンツ型吸収性物品1は、前側胴回り領域13及び後側胴回り領域15から、股領域14に向かって、第1の湾曲弾性部材31及び第2の湾曲弾性部材32が配置されている。より詳細に説明すれば、吸収性シート部材27が配置される吸収性本体20の股下域22には、複数の第1の湾曲弾性部材31が配置されており、その一部が前側胴回り領域13、残部が後側胴回り領域15に延在しており、前方域吸収体26が配置される吸収性本体20の前方域21、及び後方域吸収体28が配置される吸収性本体20の後方域23には、複数の第2の湾曲弾性部材32が配置されており、前方域21に配置された第2の湾曲弾性部材32は、前側胴回り領域13に延在し、後方域23に配置された第2の湾曲弾性部材32は、後側胴回り領域15に延在している。このように、股下域22、前方域21、及び後方域23に、前側胴回り領域13又は後側胴回り領域15に延在する弾性部材を配置することにより、吸収性シート部材27、前方域吸収体26、及び後方域吸収体28のそれぞれが、弾性部材により支持され、パンツ型吸収性物品1のフィット性が向上して股下域22の吸収体が垂れ下がることが効果的に防止されるとともに、弾性部材が前側胴回り領域13と後側胴回り領域15から支持される構成を採用したので、脚部や腰部の過度な締め付けによる着用者へのストレスを防止できる。なお、第1の湾曲弾性部材31及び第2の湾曲弾性部材32を構成する弾性部材としては、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状又は帯状の天然ゴム等を使用することができ、股下域22に配置される第1の湾曲弾性部材31は、脚開口部12を形成する外装体30の縁部を通過して、パンツ型吸収性物品1のレッグギャザーを構成していてもよい。