(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6657767
(24)【登録日】2020年2月10日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】電磁弁装置とその製造方法
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20200220BHJP
F16K 27/02 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
F16K31/06 305M
F16K27/02
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-208396(P2015-208396)
(22)【出願日】2015年10月22日
(65)【公開番号】特開2017-82815(P2017-82815A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】日本電産トーソク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118496
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 耕三
(74)【代理人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村岡 敬一郎
【審査官】
角田 貴章
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−176750(JP,A)
【文献】
特開2008−267569(JP,A)
【文献】
特開2011−133072(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0099256(US,A1)
【文献】
再公表特許第2010/024280(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/00−27/12
31/06−31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に可動するロッドピンと、
前記ロッドピンの周囲に設けられ、前記ロッドピンを案内する磁性材からなる円筒状コアと、
前記円筒状コアの側面を覆う樹脂製のボビンと、
前記ボビンに巻かれたコイルと、
前記ロッドピン、円筒状コア、ボビンおよびコイルを収容し、軸方向一端側が開口した有底円筒状ケースと、
前記ケースの軸方向一端側のケース開口部に取り付けられた樹脂製のノズルと、
前記ノズルに設けられた第1ポートと第2ポートと、
前記ノズルに設けられ、前記ロッドピンによって駆動されて前記第1ポートと第2ポート間を開閉する弁体と、
前記ノズルの外側面を覆う筒状の金属製カバーと、を備え、
前記第1ポートと第2ポートの少なくとも1つが前記ノズルの側面に開口し、前記カバーには前記ノズルに開口したポートの位置に合わせてカバー開口部が設けられ、前記ノズルの一部が前記カバー開口部と係合している、 電磁弁装置。
【請求項2】
前記カバーは、その内面に凹部または凸部を備え、前記凹部または凸部によって前記ノズルと係合している請求項1に記載の電磁弁装置。
【請求項3】
軸方向に可動するロッドピンと、
前記ロッドピンの周囲に設けられ、前記ロッドピンを案内する磁性材からなる円筒状コアと、
前記円筒状コアの側面を覆う樹脂製のボビンと、
前記ボビンに巻かれたコイルと、
前記ロッドピン、円筒状コア、ボビンおよびコイルを収容し、軸方向一端側が開口した有底円筒状ケースと、
前記ケースの軸方向一端側のケース開口部に取り付けられた樹脂製のノズルと、
前記ノズルに設けられた第1ポートと第2ポートと、
前記ノズルに設けられ、前記ロッドピンによって駆動されて前記第1ポートと第2ポート間を開閉する弁体と、
前記ノズルの外側面を覆う筒状の金属製カバーと、を備え、
前記カバーは、その内面に凹部または凸部を備え、前記凹部または凸部によって前記ノズルと係合している、 電磁弁装置。
【請求項4】
前記カバーが、前記ノズルの外側面の全周囲を覆うものである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電磁弁装置。
【請求項5】
前記カバー開口部が前記ポートのノズルに開口した部分よりも大きく、前記カバー開口部の内縁と前記ポートの開口部の周縁の間に、前記ノズルの表面が前記カバーの表面と同一面となるように露出している請求項1又は2に記載の電磁弁装置。
【請求項6】
前記カバーがアルミパイプからなる請求項1から請求項5のいずれかに記載の電磁弁装置。
【請求項7】
前記ノズルは、軸方向一端側にロッドピンが挿通されるピン受入部を備え、他端側に軸方向に伸びる前記第1ポートが配置され、
前記ピン受入部と前記第1ポートとの間に設けられた弁座内に弁体を収容した弁部材が配置され、弁部材から径方向に側面まで伸びた前記第2のポートが配置され、
前記カバーの側面には前記第2のポートに相当する位置に開口を備えた請求項1から請求項6のいずれかに記載の電磁弁装置。
【請求項8】
前記ピン受入部と第1のポートは、樹脂製ノズルの軸方向の端部から中央に向かうに従い、その内径が細くなる請求項7に記載の電磁弁装置。
【請求項9】
前記ノズルが、コントロールバルブに設けられた電磁弁の装着孔に嵌め込まれるものであり、前記金属製カバーが電磁弁の装着孔の内周面と樹脂製ノズルの外周面との隙間を塞ぐものである請求項1から請求項8のいずれかに記載の電磁弁装置。
【請求項10】
軸方向に可動するロッドピンと、
前記ロッドピンの周囲に設けられ、前記ロッドピンを案内する磁性材からなる円筒状コアと、
前記円筒状コアの側面を覆う樹脂製のボビンと、
前記ボビンに巻かれたコイルと、
前記ロッドピン、円筒状コア、ボビンおよびコイルを収容し、軸方向一端側が開口した有底円筒状ケースと、
前記ケースの軸方向一端側のケース開口部に取り付けられた樹脂製のノズルと、
前記ノズルに設けられた第1ポートと第2ポートと、
前記ノズルに設けられ、前記ロッドピンによって駆動されて前記第1ポートと第2ポート間を開閉する弁体と、
前記ノズルの外側面を覆う筒状の金属製カバーと、を備えた電磁弁装置の製造方法において、
前記金属製カバーを、前記樹脂製ノズルに対してインサート成型することで固定する電磁弁装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両の自動変速機に使用される電磁弁装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の自動変速機には、変速機構を制御するためのコントロールバルブが設けられている。このコントロールバルブは、電磁弁装置を使用して変速機構に対して所定の大きさの油圧を供給・停止することにより、変速機構を制御する。
【0003】
このような電磁弁装置は、例えば、特許文献1や特許文献2に記載されている。特許文献1の電磁弁装置は、ON/OFFタイプの電磁弁であって、この電磁弁装置は、弁体を収容したノズルと、弁体を駆動するためのソレノイドとを備えている。ソレノイドは円筒状のケースの内部に、コイルを巻き付けたボビンと、固定側のコアと、コイルの中心部で往復動するロッドピンを収容している。電磁弁装置は、ソレノイドのコイルに通電することでロッドピンを往復動させ、ロッドピンの先端で弁体を開閉させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−207069号公報
【特許文献2】特開1999−173449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、電磁弁装置をコントロールバルブに装着する場合、特許文献1や特許文献2のように、外周にO−リングを設けたノズルを装着孔内に嵌め込んで、ノズルと装着孔の隙間をシールすることが行われている。しかし、このような従来技術は、O−リングのような樹脂製のシール材を使用することから、樹脂の耐年劣化を避けることができず、車両用のように長期間使用する場合にはシール材を定期的に交換する必要があった。例えば、広く使用されているナイロン樹脂のシール材などでは、周囲の水分を吸収した樹脂が加水分解し、劣化するおそれがあった。
【0006】
また、シール材は、電磁弁装置やコントロールバルブに比較して柔軟な樹脂で形成されていることから、電磁弁装置のノズルをコントロールバルブの装着孔に嵌め込む場合に、シール材と装着孔の縁とが接触して、シール材が傷つき、シール性能が損なわれることがないように、装着作業に十分な注意を払うことが要求され、電磁弁装置の取付作業に手間取ることもあった。
【0007】
このような問題点を改善するため、ノズル自体を金属製としてノズル周囲の加工精度を向上することにより、ノズルと装着孔の内周との隙間を極力少なくすることで、シール材を使用としなくても、十分なシール性能を確保するようにした電磁弁装置も提案されている。
【0008】
この種の電磁弁装置は、シール材の経年劣化や、ノズル取り付け時におけるシール材の傷付きなどが発生しない利点があるものの、従来技術ではノズル全体を金属製としたため、その製造が困難であった。特に、電磁弁装置はノズル内部に弁体を移動可能に組み込むと共に、インポートやアウトポート、弁室など中空部をノズル内部に設ける必要があることから、ノズル全体を金属によって構成することは、その製作がシール材を使用した樹脂製ノズルに比較して格段に困難であった。
【0009】
本発明の目的は、樹脂製のノズルを使用しながら、O−リングなどのシール材を使用することなく、コントロールバルブに対して優れた密封性を持って固定することができる電磁弁装置とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電磁弁装置は、次のような構成を有することを特徴とする。
(1)軸方向に可動するロッドピン。
(2)前記ロッドピンの周囲に設けられ、前記ロッドピンを案内する磁性材からなる円筒状コア。
(3)前記円筒状コアの側面を覆う樹脂製のボビン。
(4)前記ボビンに巻かれたコイル。
(5)前記ロッドピン、円筒状コア、ボビンおよびコイルを収容し、軸方向一端側が開口した有底円筒状ケース。
(6)前記ケースの軸方向一端側のケース開口部に取り付けられた樹脂製のノズル。
(7)前記ノズルに設けられた第1ポートと第2ポート。
(8)前記ノズルに設けられ、前記ロッドピンによって駆動されて前記第1ポートと第2ポート間を開閉する弁体。
(9)前記ノズルの外側面を覆う筒状の金属製カバー。
【0011】
本発明において、以下の構成とすると良い。
(1)前記カバーが、前記ノズルの外側面の全周囲を覆うものである。
(2)前記第1ポートと第2ポートの少なくとも1つが前記ノズルの側面に開口し、前記カバーには前記ノズルに開口したポートの位置に合わせてカバー開口部が設けられ、前記ノズルの一部が前記カバー開口部と係合している。
【0012】
(3)前記カバー開口部が前記ポートのノズルに開口した部分よりも大きく、前記カバー開口部の内縁と前記ポートの開口部の周縁の間に、前記ノズルの表面が前記カバーの表面と同一面となるように露出している。
(4)前記カバーは、その内面に凹部または凸部を備え、前記凹部または凸部によって前記ノズルと係合している。
(5)前記カバーがアルミパイプからなる。
【0013】
(6)前記ノズルは、軸方向一端側にロッドピンが挿通されるピン受入部を備え、他端側に軸方向に伸びる前記第1ポートが配置され、
前記ピン受入部と前記第1ポートとの間に設けられた弁座内に弁体を収容した弁部材が配置され、弁部材から径方向に側面まで伸びた前記第2のポートが配置され、
前記カバーの側面には前記第2のポートに相当する位置に開口を備える。
【0014】
(7)前記ピン受入部と第1のポートは、樹脂製ノズルの軸方向の端部から中央に向かうに従い、その内径が細くなる。
(8)前記ノズルが、コントロールバルブに設けられた電磁弁の装着孔に嵌め込まれるものであり、前記金属製カバーが電磁弁の装着孔の内周面と樹脂製ノズルの外周面との隙間を塞ぐものである。
【0015】
(9)前記金属製カバーを、前記樹脂製ノズルに対してインサート成型する電磁弁装置の製造方法も本件発明の一態様である。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、別体に製作されたソレノイドユニットとノズルユニットを組み合わせて電磁弁装置を構成したので、例えば、ソレノイドユニットを共通として、各種のノズルユニットを組み合わせることで、多様な構成の電磁弁装置を簡単に製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態のケースを外して上方から見た分解状態の斜視断面図
【
図2】第1実施形態のケースを外して下方から見た分解状態の斜視断面図
【
図3】第1実施形態の結合状態の下方から見た斜視図
【
図6】第1実施形態のカバー開口部とノズルのポート部分の拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
[1.第1実施形態]
[1−1.構成]
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態において軸とは、油導入部の長手方向に沿った中心軸をいい、単に周方向あるいは軸方向と言った場合は、中心軸の周方向あるいは中心軸の軸方向を示す。
【0019】
本実施形態のノズルユニット2は、ノーマルロータイプ、すなわち、通常は弁が閉じて、弁が開放した際に高圧の油を出力するタイプの電磁弁装置である。本実施形態の電磁弁装置は、
図1及び
図2に示すように、別体に構成されたソレノイドユニット1とノズルユニット2とから構成される。
【0020】
(1)ソレノイドユニット
ソレノイドユニット1は、その軸方向一端側が開口した有底円筒状ケース10を備える。ケース10の中心部には、ソレノイドユニット1の軸方向に可動するロッドピン11が設けられる。ロッドピン11の第1の端部はユニット2側に向かってケース10の開口部から突出し、第2の端部はケース10の底部中央に向き合う。
【0021】
ロッドピン11の周囲には磁性材製の円筒状コア12が設けられ、ロッドピン11は円筒状コア12に案内される。円筒状コア12の側面は樹脂製のボビン13によって覆われ、ボビン13の外周にコイル14が巻かれる。すなわち、ボビン13は円筒部13aとその両端に設けられたフランジ13b,13cを備え、円筒部13aにコイル14が巻かれる。一方のフランジ13bはケース10の底の部分に向き合い、他方のフランジ13cはケース10の開口部を塞ぐように位置する。ボビン13の内側に設けられた円筒状コア12及びロッドピン11の端部は、フランジ13c及びケース10の開口部の縁からノズルユニット2側に突出する。
【0022】
ロッドピン11、円筒状コア12、ボビン13およびコイル14は、ケース10内に収容される。ケース10の底の部分には、円盤状の吸着板16が円筒状コア12の端面およびフランジ13aに向き合って配置され、この吸着板16の中心部にロッドピン11の第2の端部が固定される。
【0023】
ボビン13およびコイル14の外周は、ケース10の内面に沿って設けられた円筒状のモールド材17で被覆される。モールド材17には、ケース10の外部に設けられたコネクタ18が一体に成型される。すなわち、ケース10の開口部側の端部に切欠10aが設けられ、モールド材17とコネクタ18の連結部分17aが切欠10aに位置することで、ケース10の内外のモールド材17とコネクタ18が接続される。
【0024】
フランジ13cにおけるケース10の外側の面には、請求項に記載した第2の金属部材が固定される。本実施形態おいて、第2の金属部材は、円筒状コア12の周囲に固定されたリング状のプレート19である。このプレート19は、その中心部にロッドピン11及び円筒状コア12のノズルユニット2側の端部が挿入される開口部を有し、その外径寸法はケース10の内周に嵌まり込む大きさである。
【0025】
プレート19には、複数の第1の孔19aと複数の第2の孔19bが、交互に形成される。第1の孔19a内にボビン13を構成する樹脂が貫通して位置し、プレート19とボビン13が固定される。第1の孔19a内に位置するボビン13の樹脂の先端部は、プレート19の表面からノズルユニット2側に突出した突出部13dになっている。
【0026】
プレート19の第1の孔19a内にボビン13の樹脂を位置させるには、ボビン13の成型加工時に、ボビン13のフランジ13cの表面に突出部13dを形成しておき、その突出部13dを第1の孔19a内に挿入した後、突出部13dの先端を熱溶着することで、プレート19とフランジ13cを固定する。また、ボビン13に対してプレート19をインサート成型することで、プレート19とボビン13を固定しても良い。
【0027】
ケース10の開口部の内周には、ケース10の縁の肉厚を他の円筒状部分よりも薄くすることで、ケース10の底側の内径が小さく、開口部側の外径が大きい段部10bが設けられる。この段部10bは請求項に記載した係止部に相当するもので、この段部10bにプレート19の外周部が係合し、プレート19のケース10内部への移動が阻止される。ケース10の開口部の肉厚が薄くなった部分は、その軸方向の寸法が、プレート19と後述するノズルユニット2のプレート26の2枚を重ね合わせた厚さよりも大きい。ケース10の開口部における2枚のプレート19,26の厚さを超えた部分が、ケース10の内側に屈曲する加締め部10cになっている。この加締め部10cは請求項に記載した固定部に相当するもので、ノズルユニット2に設けた第1の金属部材であるプレート26を、前記段部10bとの間で固定する。
【0028】
(2)ノズルユニット
ノズルユニット2は、内部に中空部21を有する略円筒状の樹脂製のノズル20を備える。ノズル20のソレノイドユニット1側には、ロッドピン11を挿入するピン受入部22が中空部21と連通して設けられる。
【0029】
ノズル20には、中空部21と連通する第1ポート23と第2ポート24と、ロッドピン11によって駆動されて第1ポート23と第2ポート24間を開閉する弁体25が収容される。本実施形態において、第1のポート23がインポートで、第2のポート24がアウトポートである。
【0030】
弁体25を樹脂内部の中空部21に設けるには、
図1に示すノーマリーロータイプでは、ノズル20のポート23に弁体25を挿入した後、樹脂キャップ33をノズル20に超音波溶着または熱溶着にて固定し弁体25を封じる。なお、
図4に示すノーマリーハイタイプでは、弁体25を収容した金属製の弁座部材を、ノズル20を構成する樹脂内部にインサート成型する。その際、金型をノズル20の軸方向に引き抜きやすいように、ピン受入部22と第1のポート23は、ノズル20の軸方向の端部から中央に向かうに従い、その内径が細くなっている。
【0031】
ノズル20におけるピン受入部22の端部には、ノズル20と一体にフランジ20aが設けられ、このフランジ20aのソレノイドユニット1側の表面に、請求項に記載した第1の金属部材が固定される。本実施形態おいて、第1の金属部材は、ピン受入部22の周囲に固定されたリング状のプレート26である。このプレート26は、その中心部にロッドピン11及び円筒状コア12のノズルユニット側の端部が挿入される開口部を有し、その外径寸法はケース10の内周に嵌まり込む大きさである。
【0032】
プレート26には、複数の第1の孔26aと複数の第2の孔26bが、交互に形成される。第1の孔26a内にノズル20を構成する樹脂が貫通して位置し、プレート26とノズル20が固定される。第1の孔26a内に位置するノズル20の樹脂の先端部は、プレート26の表面からソレノイドユニット1側に突出した突出部20dになっている。第1の孔26a内にノズル20の樹脂が位置するように、プレート26をノズル20に固定するには、プレート19と同様に、第1の孔26a内に挿入した突出部20dの先端を熱溶着したり、ノズル20に対してプレート26をインサート成型する。
【0033】
2枚のプレート19,26に設けられた第1の孔19a,26aと第2の孔19b,26bは、次のような位置関係にある。すなわち、ソレノイドユニット1のプレート19における第2の孔19bに、ノズルユニット2のプレート26における第1の孔26aから突出した先端部20dが嵌め込まれ、ノズルユニット2のプレート26における第2の孔26bに、ソレノイドユニット1のプレート19における第1の孔19aから突出した先端部20dが嵌め込まれる。
【0034】
本実施形態では、ノズル20の外周面に、円筒状の金属製カバー30が設けられている。この金属製カバー30は、一例としてアルミパイプから成り、その外径は、コントロールバルブに設けられた電磁弁装置の装着孔に隙間なく嵌まり込む寸法である。金属製カバー30は、ノズル20の外側面の全周囲、すなわちノズル20の周方向及び軸方向の全周囲を覆うものである。
【0035】
金属製カバー30は、樹脂製ノズル20の製造時にインサート成型により、ノズル20に固定される。金属製カバー30の内周面には、一例として、2本の凹部31a,31bが周方向に設けられ、この凹部31a,31b内にノズル20を構成する樹脂が入り込むことで、ノズル20から金属製カバー30が抜け出ることがないように固定される。
【0036】
金属製カバー30におけるノズル20の第2のポート24に対応する位置には、第2のポート24よりも一回り大きなカバー開口部32が設けられる。すなわち、カバー開口部32が、第2のポート24が開口部よりも大きく、カバー開口部32の内縁と第2のポート24の開口部の周縁の間に、ノズル20の表面が金属製カバー30の表面と同一面となるように露出している。
【0037】
ノズル20に対する金属製カバーの30のインサート成型時において、この開口部32の内周にノズル20の樹脂が流入して固化することにより、
図6に示すように、第2のポート24の周囲と金属製カバー30の開口部32とが係合し、前記凹部31a,31bと共に、金属製カバー30がノズル20の周方向及び軸方向に移動することを阻止している。
【0038】
[1−2.作用]
本実施形態の電磁弁装置を製作するには、まず、
図1及び
図2に示すように、ソレノイドユニット1とノズルユニット2とを別々に組み立てる。その後、ソレノイドユニット1のプレート19とノズルユニット2のプレート26を重ね合わせて、
図3及び
図4に示すように、ソレノイドユニット1とノズルユニット2を結合する。すなわち、
図3に示すように、プレート26の中央の開口部にロッドピン11及びコア12の先端を貫通させながら、ケース10の開口部の内側にプレート26が嵌まり込むようにして、2枚のプレート19,26を重ね合わせる。
【0039】
この場合、ソレノイドユニット1のプレート19の表面には樹脂製ボビン13の突出部13dが突出しているので、この突出部13dをノズルユニット2のプレート26に設けた第2の孔26b内に嵌め込む。同時に、ノズルユニット21のプレート26の表面から突出した樹脂製ノズル20の突出部20dを、ソレノイドユニット1のプレート19に設けた第2の孔19b内に嵌め込む。その結果、2枚のプレート19,26の周方向の移動が阻止され、ソレノイドユニット1とノズルユニット2との周方向の位置決めがなされる。
【0040】
この状態で、
図5に示すように、プレート19の周囲はケース10の内周に設けられた段部10bに係合するので、2枚のプレート19,26及びプレート26を固定したノズルユニット2は、それ以上ケース10の底部方向に移動することはない。一方、ケース10の開口部の肉厚が薄くなった部分は、重ね合わされた2枚のプレート19,26の肉厚よりもノズルユニット2側に突出した加締め部10cになっているので、この加締め部10cをケース10の内側に巻き込むように変形することで、加締め部10cと段部10bとの間でプレート19,26を強く挟み込む。その結果、ソレノイドユニット1とノズルユニット2とが金属製のケース10の加締め加工によって強固に固定される。
【0041】
このようにして製作された電磁弁装置は、ノズル20部分を変速機のコントロールバルブに設けられた装着孔に嵌め込むことで、コントロールバルブに取り付ける。この場合、ノズル20の外周面には、円筒状の金属製カバー30が設けられ、この金属製カバー30の外径は、コントロールバルブに設けられた電磁弁装置の装着孔に隙間なく嵌まり込む寸法であるため、装着孔の内周と金属製カバー30の外周が密着し、装着孔に対する電磁弁装置の取り付け部分から圧力油が漏出しない程度の密封性が確保される。
【0042】
[1−3.効果]
本実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)ノズル20自体は樹脂で製作されているので、複数のポートを設けたり、内部に弁体を組み込んだ複雑な形状のノズルを、ノズル全体を金属で製作する場合に比較して、容易に作成することができる。
【0043】
(2)樹脂製のノズル20を使用しながら、その周囲の金属製カバー30により、ノズル20とコントロールバルブ側の装着孔とを、O−リングなどのシール材を使用することなく、金属同士の嵌め合いにより密封することができる。その結果、電磁弁装置とコントロールバルブの嵌め込み部分における高い耐久性を確保できると共に、ノズルの嵌め込み時におけるシール材の破損などもなく、嵌め込み部分のシール性能が損なわれるおそれがない。
【0044】
(3)金属としては比較的柔軟なアルミ製の金属製カバー30を使用したので、コントロールバルブ側の装着孔内に金属製カバー30を円滑に挿入することができると共に、金属製カバー30の外周面と装着孔の内周面とがなじんで両者の密封性が良い。
【0045】
(4)ノズル20の軸方向の全周囲にわたって金属製カバー30を設けたので、金属製カバー30とコントロールバルブの装着孔との接触面積が大きく、両者の密封性能を高いものとすることができる。
【0046】
(5)金属製カバー30の内周に凸部や凹部31a,31bを設けることで、インサート成型によって両者を固定した場合でも、金属製カバー30とノズル20との結合を強固にすることができ、コントロールバルブや電磁弁装置に加わる振動によって金属製カバー30とノズル20が剥離したり、電磁弁装置がコントロールバルブに対して位置ずれを起こすおそれがない。特に、金属製カバー30と樹脂製のノズル20とは熱膨張係数が異なることから、単に嵌め込んだだけでは温度変化により両者の間に隙間が発生する可能性があるが、凸部や凹部を設けることで、金属製カバー30とノズル20の密着性が向上し、温度変化にも強い利点がある。
【0047】
(6)ノズル20の側面に開口したポート24を取り囲むカバー開口部32を金属製カバー30に設け、カバー開口部32の内周縁にポート24周囲の樹脂が露出するようにしたので、ノズル20の樹脂と金属製カバー30とが係合し、金属製カバー30がノズル20の周方向及び軸方向に移動することかない。
【0048】
(7)ピン受入部22と第1のポート23は、ノズル20の軸方向の端部から中央に向かうに従い、その内径が細くなっているので、ノズル20と金属製カバー30をインサート成型する場合に、金型を軸方向に簡単に抜くことができ、金型構造を簡略化できる。
【0049】
(8)別体に製作したソレノイドユニット1とノズルユニット2を組み合わせて電磁弁装置を作製したので、コントロールバルブ側の装着孔の内径に合わせて、異なる外径のノズルを有する複数種類のノズルユニット2を用意しておき、共通のソレノイドユニット1に対してノズルユニット2を適宜組み合わせることで、異なる内径の装着孔に適合する電磁弁装置を簡単に製作できる。
【0050】
[2.他の実施形態]
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではない。以上の実施形態は例として提示したものであって、その他の様々な形態で実施されることが可能である。発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲、要旨、その均等の範囲に含まれる。以下、その一例を示す。
【0051】
(1)図示の実施形態は、電磁弁装置をソレノイドユニット1とノズルユニット2とを組み合わせて構成したが、特許文献1や特許文献2に記載のように、ボビンとノズルを樹脂によって一体化した電磁弁装置にも適用可能である。プレート19,26は2枚に分割する必要がなく1枚を樹脂にインサート成形すればよい。
【0052】
(2)金属製カバーにノズル側面に開口したポートよりも大きなカバー開口部を設けたが、金属製カバーとノズルとを他の箇所で係合することができれば、カバー開口部の大きさや形状をポートの開口部と等しくして、カバー開口部からノズルを構成する樹脂が露出しないようにしても良い。
【0053】
(3)金属製カバーは、ノズル側面の全周囲、すなわち、ノズルの軸方向の長さ全体を覆うものに限定されず、ノズル側面の軸方向の一部を覆う円筒状でも良い。金属製カバーの軸方向の長さは、コントロールバルブに設ける装着孔と金属製カバーとの接触面積が、コントロールバルブ及び電磁弁装置内を流れる油の漏出を阻止できる広さになる寸法であれば良い。
【0054】
(4)金属製カバーの軸方向の上端または下端を内側に屈曲させ、その屈曲部分をノズルの樹脂内部にインサート成型して、金属製カバーとノズルとを軸方向に移動しないように係合させることができる。金属製カバーの中央部分を内側に切り起こして凸部を形成し、その凸部をノズルの樹脂内部にインサート成型しても良い。
【0055】
(5)金属製カバー30の素材としては、アルミに限らず、ステンレスやその他の金属を使用することができる。また、パイプに限らず、ブロック状の素材から切削加工により削り出しても良い。
【0056】
(6)ノズルの側面にポートが開口している場合、その部分を避けて金属製カバーを設けることができる。
【0057】
(7)樹脂製のノズルとその周囲を覆う金属製カバーを有するものであれば、ソレノイド部分や弁の構造はどのようなものでも良く、ノズルに設けた弁体がノーマルハイタイプの電磁弁装置や、弁体とロッドピンが一体化された電磁弁装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0058】
1…ソレノイドユニット、10…ケース、10a…切欠、10b…段部、10c…加締め部、11…ロッドピン、12…コア、13…ボビン、13a…円筒部、13b,13c…フランジ、13d…突出部、14…コイル、16…吸着板、17…モールド材、18…コネクタ、19…プレート、19a,19b…孔、2…ノズルユニット、20…ノズル、20a…フランジ、20b,20c…溝、20d…突出部、21…中空部、22…ピン受入部、23…第1ポート、24…第2ポート、25…弁体、26…プレート、26a…第1の孔、26b…第2の孔、30…金属製カバー、31a,31b…凹部、32…カバー開口部、33…樹脂キャップ。