(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1の拘束枠は、複数の蓄熱材の全体を囲む枠状のフレームと、フレームの内側に設けられた平面視にて十字状の中枠と、を有している。この中枠は、フレームの各辺の中央部に連結されており、蓄熱材の膨張力による当該中央部の変位を抑えている。
【0005】
しかしながら、蓄熱材の膨張力が大きい場合では、フレームの各辺における中央部(中枠との連結部分)と両端との間で、フレームの各辺が変位し、蓄熱材の膨張を効果的に抑制することができない場合がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、蓄熱材の膨張を効果的に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、反応媒体と結合して発熱する、又は反応媒体が脱離して蓄熱する複数の蓄熱材と、前記蓄熱材の片側に積層され、前記蓄熱材との間で熱交換する熱交換部と、前記熱交換部と前記蓄熱材との積層方向に見て前記複数の蓄熱材のそれぞれを囲む複数の第一枠と、前記積層方向に見て前記複数の第一枠を囲む第二枠と、を有する拘束枠と、を備える。
【0008】
請求項1の構成によれば、蓄熱材は反応媒体と結合して発熱する、又は、蓄熱材は反応媒体が脱離して蓄熱する。また、蓄熱材の片側に積層された熱交換部が、蓄熱材との間で熱交換する。
【0009】
ここで、請求項1の拘束枠は、複数の蓄熱材のそれぞれを囲む複数の第一枠と、複数の第一枠を囲む第二枠と、を有している。
【0010】
このため、各蓄熱材の膨張力を第一枠が個別に抑え、さらに、複数の蓄熱材の膨張力を第二枠が一括で抑えることができる。このように、請求項1の拘束枠では、第一枠と第二枠との二段階で、蓄熱材の膨張を抑制することができるので、蓄熱材の膨張を効果的に抑制することができる。
【0011】
請求項2の発明では、前記第一枠は、他の前記第一枠又は前記第二枠に接触した状態で、前記第二枠内に収容されている。
【0012】
第一枠が他の第一枠に接触することで、第一枠内の蓄熱材の膨張力と他の第一枠内の蓄熱材の膨張力とを互いに打ち消し合うことができる。これにより、第一枠及び他の第一枠の内側に配置された各蓄熱材の膨張を抑制することができる。また、第一枠が第二枠に接触することで、第一枠内の蓄熱材の膨張力を第一枠と第二枠とによって抑えることができる。
【0013】
さらに、第一枠は、他の第一枠又は第二枠に接触した状態で第二枠内に収容されているので、蓄熱材が膨張した際にのみ第一枠が他の第一枠又は第二枠に接触する場合に比べ、蓄熱材の膨張を効果的に抑制できる。
【0014】
請求項3の発明では、前記第一枠は、接触する前記他の第一枠又は前記第二枠に接合されている。
【0015】
このため、第一枠の強度を向上させることができる。また、第一枠が接触する他の第一枠又は第二枠に対して変位せず、第一枠の接触位置が変化しない。
【0016】
請求項4の発明では、前記第一枠及び前記第二枠は、前記積層方向に直交する方向に厚みを有し、前記第一枠の厚みは、前記第二枠の厚み以下とされている。
【0017】
このように、個々の蓄熱材を囲む第一枠を、複数の蓄熱材の全体を囲む第二枠の厚さ以下にすることで、拘束枠における軽量化と強度の確保との両立ができる。
【0018】
請求項5の発明では、前記複数の第一枠及び前記第二枠の少なくとも1つは、一部品で構成されている。
【0019】
請求項5の構成によれば、複数の第一枠及び第二枠の少なくとも1つを一部品で構成することで、簡易な構造で、蓄熱材の膨張力に対抗する強度を確保することができる。
【0020】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の反応器と、前記反応器と連通し、前記反応器への反応媒体の供給及び前記反応器からの反応媒体の受け取りのうち少なくとも一方を行う媒体器と、を有する。
【0021】
請求項6の構成によれば、各蓄熱材の膨張力を第一枠が個別に抑え、さらに、複数の蓄熱材の膨張力を第二枠が一括で抑えることができる。このように、請求項6の構成では、第一枠と第二枠との二段階で、蓄熱材の膨張を抑制することができるので、蓄熱材の膨張を効果的に抑制できる。これにより、蓄熱材の膨張による蓄熱材の粒状化を抑制し、蓄熱システムとしての性能の低下を抑制できる。
【0022】
請求項7の発明は、反応媒体と結合して発熱する、又は反応媒体が脱離して蓄熱する複数の蓄熱材のそれぞれの周囲を囲む複数の第一枠と、前記複数の第一枠の周囲を囲む第二枠と、を備える。
【0023】
このため、各蓄熱材の膨張力を第一枠が個別に抑え、さらに、複数の蓄熱材の膨張力を第二枠が一括で抑えることができる。このように、請求項7の拘束枠では、第一枠と第二枠との二段階で、蓄熱材の膨張を抑制することができるので、蓄熱材の膨張を効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、上記構成としたので、蓄熱材の膨張を効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
【0027】
(化学蓄熱システム10)
化学蓄熱システム10(蓄熱システムの一例)は、
図1及び
図2に示されるように、蒸発凝縮器12(媒体器の一例)と、化学蓄熱反応器20(反応器の一例)と、連通路14と、を備えている。以下、蒸発凝縮器12、化学蓄熱反応器20及び連通路14の具体的な構成について説明する。
【0028】
(蒸発凝縮器12)
蒸発凝縮器12は、貯留した水を蒸発させて化学蓄熱反応器20に水蒸気(反応媒体の一例)を供給する蒸発部、化学蓄熱反応器20から受け取った水蒸気を凝縮する凝縮部、及び水蒸気が凝縮されることで生成された水を貯留する貯留部、としての各機能を備えている。具体的には、蒸発凝縮器12は、一例として、以下のように構成される。
【0029】
すなわち、蒸発凝縮器12は、
図1及び
図2に示されるように、内部に水が貯留される容器16を備えている。この容器16内には、水蒸気を凝縮するための冷媒(例えば、冷水)と、水を蒸発させるための熱媒(例えば、温水)と、が選択的に流通可能な流路17が設けられている。
【0030】
(連通路)
連通路14は、蒸発凝縮器12の内部と化学蓄熱反応器20の内部とを連通する通路であり、一端部が蒸発凝縮器12に接続され、他端部が化学蓄熱反応器20に接続されている。
【0031】
連通路14は、蒸発凝縮器12(容器16)と化学蓄熱反応器20(後述する反応容器22)との連通、非連通を切り替えるための開閉弁19を備えている。そして、容器16、反応容器22、連通路14、及び開閉弁19は、互いの接続部位が気密に構成されており、これらの内部空間が予め真空脱気されている。
【0032】
(化学蓄熱反応器20)
化学蓄熱反応器20は、
図3及び
図4に示されるように、反応容器22と、反応容器22内に配置され複数の部材が積層されて構成された積層体30と、を備えている。以下、反応容器22及び積層体30の具体的な構成について説明する。
【0033】
(反応容器22)
反応容器22は、ステンレス鋼板等で形成され、上下方向を軸方向とする円筒状の本体部22Aと、本体部22Aの上端を閉止する板状の上蓋部材22Bと、本体部22Aの下端を閉止する板状の下蓋部材22Cと、備えている。そして、本体部22Aと上蓋部材22B、及び本体部22Aと下蓋部材22Cとが溶接されることで、本体部22Aと上蓋部材22Bとの間、及び本体部22Aと下蓋部材22Cとの間がシールされている。
【0034】
反応容器22の内部は反応容器22の外部と隔離され、前述したように、反応容器22の内部が真空脱気されている。そして、反応容器22の内部には、積層体30との間に水蒸気が流通可能な流通空間26が確保されている。
【0035】
(積層体30)
積層体30は、
図5及び
図6に示されるように、一対のエンドプレート90、91と、一対のエンドプレート90、91の間に配置された一対の熱交換器50、51(熱交換部の一例)と、一対の熱交換器50、51の間に配置された蓄熱材32、33と、を備えている。また、積層体30は、蓄熱材32、33の間に配置された一対のフィルタ34、35と、一対のフィルタ34、35の間に配置された蒸気流路形成部材40と、蓄熱材32、33を囲む枠状の拘束枠60、61と、を備えている。
【0036】
エンドプレート90、91、熱交換器50、51、蓄熱材32、33を含む拘束枠60、61、フィルタ34、35及び蒸気流路形成部材40は、上下方向に厚みを有する板状であって、平面視にて略矩形状に形成されている。積層体30では、下側から、エンドプレート90、熱交換器50、蓄熱材32を含む拘束枠60、フィルタ34、蒸気流路形成部材40、フィルタ35、蓄熱材33を含む拘束枠61、熱交換器51、エンドプレート91の順で積層されている。
【0037】
なお、積層体30は、
図4に示されるように、反応容器22の内部において、円柱状の4個(
図4では3個のみ図示)の支持部材79で支持されている。
【0038】
以下、エンドプレート90、91、蓄熱材32、33、熱交換器50、51、蒸気流路形成部材40、フィルタ34、35、及び拘束枠60、61の具体的な構成について説明する。
【0039】
(エンドプレート90、91)
エンドプレート90、91は、
図7に示されるように、積層方向から見て矩形状の本体部92と、本体部92の四隅から突出する4個の突出部94と、を備えている。4個の突出部94のそれぞれには、上下方向に貫通する貫通孔94Aが形成されている。
【0040】
そして、エンドプレート90、91は、熱交換器50、51、蓄熱材32、33を含む拘束枠60、61、フィルタ34、35及び蒸気流路形成部材40を挟み込むようになっている。この状態で、エンドプレート91の突出部94に形成された各貫通孔94Aにボルト96を通し、さらに各ボルト96の先端側をエンドプレート90の突出部94に形成された各貫通孔94Aに通す。また、各ボルト96の先端部にナット97を締め込むことで、積層体30が組み立てられる(形成される)。このように、各ボルト96にナット97を締め込むことで、一対のエンドプレート90、91に挟まれた熱交換器50、51、蓄熱材32、33を含む拘束枠60、61、フィルタ34、35及び蒸気流路形成部材40に上下方向の拘束力が生じる。
【0041】
(蓄熱材32、33)
蓄熱材32、33には、一例として、アルカリ土類金属の酸化物の1つである酸化カルシウム(CaO)の成形体が用いられている。この成形体は、例えば、酸化カルシウム粉体(粒状体)をバインダ(例えば粘土鉱物等)と混練し、焼成することで、
図8に示されるように、直方体状に形成されている。
【0042】
蓄熱材32、33は、具体的には、9(3×3)個が、拘束枠60、61の内部空間に配置(収容)されている。なお、拘束枠61及び蓄熱材33は、拘束枠60及び蓄熱材32と同様の構成を有しているので、
図8では、拘束枠60及び蓄熱材32を示し、拘束枠61及び蓄熱材33の図示を省略している。
【0043】
ここで、蓄熱材32、33は、反応媒体と結合して発熱する、又は反応媒体が脱離して蓄熱する。具体的には、蓄熱材32、33は、水和に伴って放熱(発熱)し、脱水に伴って蓄熱(吸熱)する化学蓄熱材であり、以下に示す反応で放熱、蓄熱を可逆的に繰り返し得る構成とされている。
【0044】
CaO + H
2O ⇔ Ca(OH)
2
この式に蓄熱量、発熱量Qを併せて示すと、
CaO + H
2O → Ca(OH)
2 + Q
Ca(OH)
2 + Q → CaO + H
2O
となる。
【0045】
なお、一例として、蓄熱材32、33の1kg当たりの蓄熱容量は、1.86[MJ/kg]とされている。また、蓄熱材32、33は、水和反応により膨張する。さらに、蓄熱材32、33は膨張すると、蓄熱材32、33の平面視における各辺が、その中央部分が最も外側に張り出す凸状に膨出する。
【0046】
(熱交換器50、51)
熱交換器50は、
図6に示されるように、蓄熱材32の下側(片側)に積層されており、蓄熱材32との間で熱交換する構成とされている。熱交換器51は、蓄熱材33の上側(片側)に積層されており、蓄熱材33との間で熱交換する構成とされている。
【0047】
熱交換器50、51には、熱媒体(冷媒又は熱媒)を熱交換器50、51へ供給する供給管70と、熱交換器50、51から排出された熱媒体が流通する流通管72と、が接続固定されている。
【0048】
熱交換器50、51の内部には、
図10に示されるように、熱媒体が蛇行して流れる流路52Aが形成されている。この流路52Aの一端部が供給管70(
図4参照)と連通し、流路52Aの他端部が流通管72(
図4参照)と連通している。なお、熱交換器50及び熱交換器51は、同様に構成されているので、
図10では、熱交換器50を示し、熱交換器51の図示を省略している。
【0049】
そして、熱交換器50、51に接続された流通管72を流通する熱媒体によって、反応容器22の外部に配置された熱源200(
図1参照)又は熱利用対象物202(
図1参照)に、温熱又は冷熱が輸送される。なお、供給管70及び流通管72の連通先は、切替部材76(
図1参照)によって、熱源200及び熱利用対象物202の一方に切り替えられる。
【0050】
(蒸気流路形成部材40)
蒸気流路形成部材40は、
図5及び
図6に示されるように、蓄熱材32に対する熱交換器50とは反対側であって、蓄熱材33に対する熱交換器51とは反対側に、積層されている。この蒸気流路形成部材40は、蓄熱材32、33へ供給される水蒸気、又は蓄熱材32、33から排出される水蒸気が流通する流路が形成された部材である。具体的には、蒸気流路形成部材40は、
図11(A)に示されるように、フレーム部材46と、フレーム部材46に取り付けられると共に平面視にて矩形状の4個の流路部材48と、を備えている。
【0051】
フレーム部材46は、平面視にて矩形枠状とされる共に上下方向に離間した一対の外形フレーム46Aと、隣り合う流路部材48を仕切る十字状の仕切フレーム46Bと、を備えている。そして、仕切フレーム46Bは断面矩形状とされ、平面視にて十字状の仕切フレーム46Bの端部の上面及び下面に、一対の外形フレーム46Aが固定されている。これにより、4個の流路部材48が取り付けられる矩形状の取付スペース46Cが形成されている。
【0052】
この流路部材48は、凹凸を繰り返す断面が矩形波状とされた波板47(
図11(B)参照)から形成されており、凹凸部が延びる流路方向が、鉛直方向から見てフレーム部材46の対角線に沿うようになっている。そして、流路部材48の流路がフレーム部材46の角部に向かって開放されている。これにより、流路方向に沿って流れる水蒸気が上方に開放される上方流路48Aと、水蒸気が下方に開放される下方流路48Bとが形成されている。蒸気流路形成部材40は、蒸気流路形成部材40の四方向の端面から水蒸気が流出又は流入可能とされている。
【0053】
(フィルタ34、35)
フィルタ34、35は、
図5及び
図6に示されるように、蒸気流路形成部材40と蓄熱材32との間及び蒸気流路形成部材40と蓄熱材33との間のそれぞれで挟まれている。フィルタ34、35は、貫通孔が多数形成されたエッチングフィルタで構成されている。
【0054】
そして、フィルタ34、35は、蓄熱材32の平均粒径より小さいろ過精度を有している。これにより、フィルタ34、35では、蓄熱材32の平均粒径より小さい流路を水蒸気が通過するのを許容する一方、平均粒径よりも大きい蓄熱材の通過を制限するようになっている。
【0055】
なお、ろ過精度とは、ろ過効率が50〜98%となる粒子径のことであり、ろ過効率とは、ある粒子径の粒子に対する除去効率である。
【0056】
(拘束枠60、61)
拘束枠60、61は、
図5及び
図6に示されるように、フィルタ34と熱交換器50との間及びフィルタ35と熱交換器51との間のそれぞれに配置されている。なお、拘束枠61は、拘束枠60と同様の構成を有するので、以下、拘束枠60の構成を中心に説明し、拘束枠61の説明を適宜省略する。
【0057】
拘束枠60は、
図8及び
図9に示されるように、積層方向に見て複数(具体的には9個)の蓄熱材32のそれぞれを囲む複数(具体的には9個)の小型枠81(第一枠の一例)と、積層方向に見て複数の小型枠81を囲む大型枠82(第二枠の一例)と、を有している。すなわち、大型枠82の内側に複数の小型枠81が収容され、各小型枠81の内側に各蓄熱材32が収容されている。
【0058】
小型枠81及び大型枠82は、それぞれ、平面視にて、4つの側壁83、84で構成された枠状に形成されている。各側壁83、84は、積層方向に直交する方向に厚みを有する板状に形成されている。9個の小型枠81の各側壁83の厚みは、それぞれ同じ厚みとされている。また、9個の小型枠81の各側壁83の厚みは、大型枠82の各側壁84の厚みと同じとされている。
【0059】
小型枠81及び大型枠82は、それぞれ、一部品で構成されている。具体的には、小型枠81及び大型枠82は、例えば、押出成形などの成形方法により成形された角筒状のパイプを、予め定められた長さで切断されることで、形成される。
【0060】
また、小型枠81は、例えば、3行で且つ3列に配置されており、各小型枠81同士が接触している。具体的には、9個の小型枠81のうち、中央に配置された小型枠81Aは、4つの側壁83の外面(外壁)のそれぞれが、小型枠81Bの側壁83の外面に接触している。
【0061】
小型枠81Bは、4つの側壁83のうち、1つの側壁83の外面が大型枠82の内面(内壁)に接触し、残りの3つの側壁83の外面が小型枠81A、81Cの外面に接触している。
【0062】
9個の小型枠81のうち、4隅に配置された小型枠81Cは、4つの側壁83のうち、隣接する2つの側壁83の外面が大型枠82の内面に接触し、残りの2つの側壁83の外面が小型枠81Bの外面(外壁)に接触している。このように各小型枠81は、他の小型枠81又は大型枠82に接触した状態で大型枠82内に収容されている。
【0063】
(化学蓄熱システムの作用)
次に、化学蓄熱システム10の作用について説明する。
【0064】
化学蓄熱システム10において、化学蓄熱反応器20に蓄熱された熱を蓄熱材32、33から発熱(放熱)する際には、
図2に示されるように、切替部材76により供給管70及び流通管72の連通先が熱利用対象物202に切り替えられる。さらに、開閉弁19を開放し、この状態で、蒸発凝縮器12の流路17を流通する熱媒によって容器16内の水を蒸発させる。そして、生成された水蒸気が連通路14内を矢印D方向に移動して、反応容器22内に供給される。
【0065】
続いて、反応容器22内では、供給された水蒸気が、蒸気流路形成部材40の複数の上方流路48A及び下方流路48Bを流れる(
図12参照)。そして、下方流路48B内の水蒸気Wがフィルタ34を通過して蓄熱材32と接触することにより、蓄熱材32は、水和反応を生じつつ発熱(放熱)する。また、上方流路48A内の水蒸気Wがフィルタ35を通過して蓄熱材33と接触することにより、蓄熱材33は、水和反応を生じつつ発熱(放熱)する。蓄熱材32、33から放出された熱は、熱交換器50、51内を流れる熱媒体によって、熱利用対象物202に輸送される。
【0066】
一方、化学蓄熱システム10において、蓄熱材32、33に熱を蓄熱する際には、
図1に示されるように、切替部材76により供給管70及び流通管72の連通先が熱源200に切り替えられる。さらに、開閉弁19を開放し、この状態で、熱交換器50、51内に熱源200によって加熱された熱媒体が流れる(
図12参照)。
【0067】
熱交換器50、51内を流れる熱媒体の熱によって蓄熱材32、33が脱水反応を生じ、この熱が蓄熱材32、33に蓄熱される。
【0068】
さらに、蓄熱材32、33から離脱された水蒸気Wは、フィルタ34、35から蒸気流路形成部材40の複数の上方流路48A及び下方流路48Bに流れ込む。上方流路48A及び下方流路48Bに流れ込んだ水蒸気Wは、
図1に示されるように、反応容器22から連通路14を矢印E方向に流れて蒸発凝縮器12内に流れ込む。
【0069】
そして、蒸発凝縮器12の容器16において、流路17を流通する冷媒によって水蒸気が冷却され、凝縮された水が容器16に貯留される。
【0070】
(本実施形態の作用効果)
本実施形態では、前述のように、拘束枠60は、9個の蓄熱材32のそれぞれを囲む9個の小型枠81と、9個の小型枠81を囲む大型枠82と、を有している。
【0071】
このため、各蓄熱材32の水和反応による膨張力を、当該蓄熱材32が収容された各小型枠81が個別に抑える。
【0072】
また、本実施形態では、各小型枠81における4つの側壁83の全部又は一部の外面が、互いに接触している。このため、蓄熱材32の膨張を、当該蓄熱材32が収容された小型枠81に隣接する小型枠81によっても抑えることができる。すなわち、小型枠81同士が接触することで、小型枠81内の蓄熱材の膨張力が互いに打ち消し合うことができる。
【0073】
さらに本実施形態では、各小型枠81における4つの側壁83の一部の外面が、大型枠82の側壁84の内面に接触している。このため、蓄熱材32の膨張を大型枠82によって抑えることができる。
【0074】
このように、本実施形態では、各蓄熱材32の膨張力を当該蓄熱材32が収容された各小型枠81と、その小型枠81の周囲の小型枠81又は大型枠82と、によって、各蓄熱材32の膨張が二段階で抑制される。
【0075】
したがって、本実施形態の構成によれば、各蓄熱材32の膨張を効果的に抑制することができる。これにより、蓄熱材32の膨張による蓄熱材32の粒状化を抑制し、蓄熱システムとしての性能の低下を抑制できる。
【0076】
さらに、本実施形態では、小型枠81の側壁83の厚みと大型枠82の側壁84の厚みは同じとされている。このように、個々の蓄熱材32を囲む小型枠81の側壁83の厚みを、複数の蓄熱材32の全体を囲む大型枠82の側壁84の厚さを同じとすることで、小型枠81の厚みが大型枠82の厚みよりも大きい構成に比べ、拘束枠60における軽量化と強度の確保との両立ができる。
【0077】
また、本実施形態では、小型枠81及びと大型枠82が一部品で構成されている。このため、簡易な構造で、蓄熱材32の膨張力に対抗する強度を確保することができる。なお、前述した作用効果は、拘束枠61に収容された蓄熱材33においても同様に発揮される。
【0078】
(拘束枠60の第一変形例)
図13(A)(B)及び
図14(A)(B)に示されるように、拘束枠60の小型枠81は、互いに接触する外壁面同士が接合されていてもよい。小型枠81は、例えば、溶接、ロウ付けなどの接合手段によって接合されている。なお、接合手段としては、溶接、ロウ付け以外の接合手段であってもよい。
【0079】
図13(A)に示す例では、小型枠81の側壁83の長手方向両端側で接合されている。
図13(B)に示す例では、小型枠81の側壁83の長手方向中央で接合されている。なお、小型枠81は、側壁83の上端部及び下端部の少なくとも一方が接合されればよい。
【0080】
図14(A)(B)に示す例では、小型枠81の角部89がR状(円弧状)に形成されることで、隙間112にロウ材等を入れて小型枠81同士が接合されている。なお、
図13(A)(B)及び
図14(A)(B)では、符号110部分が接合点を示す。
【0081】
さらに、小型枠81と大型枠82とについても、小型枠81同士を接合する場合と同様に、接合されていてもよい。
【0082】
このように、小型枠81同士、又は小型枠81と大型枠82とが接合されることで、小型枠81の強度を向上させることができる。また、小型枠81同士、又は小型枠81と大型枠82とが接合されることで、小型枠81が接触する他の小型枠81又は大型枠82に対して変位せず、小型枠81の接触位置が変化しない。これにより、小型枠81が積層方向に沿った軸線周りに回転変位することも抑制できる。なお、本変形例は、拘束枠61に適用してもよい。以下に説明する変形例も同様に、拘束枠61に適用することが可能である。
【0083】
(拘束枠60の第二変形例)
図15に示されるように、拘束枠60は、小型枠81の側壁83の厚みが大型枠82の側壁84の厚みよりも小さく(薄く)された構成であってもよい。
【0084】
このように、個々の蓄熱材32を囲む小型枠81の側壁83の厚みを、複数の蓄熱材32の全体を囲む大型枠82の側壁84の厚さを小さくすることで、小型枠81の厚みが大型枠82の厚み以上とされる構成に比べ、拘束枠60における軽量化と強度の確保との両立ができる。
【0085】
(拘束枠60の第三変形例)
図16(A)に示されるように、拘束枠60は、小型枠81及び大型枠82において、中空構造を有していてもよい。また、
図16(B)に示されるように、拘束枠60は、小型枠81及び大型枠82において、肉抜き孔120が形成された構成であってもよい。
【0086】
図16(A)(B)の構成によれば、小型枠81及び大型枠82の強度を維持しつつ、小型枠81及び大型枠82の軽量化及び熱容量の低減を図ることができる。
【0087】
(拘束枠60の第四変形例)
拘束枠60は、
図17に示されるように、小型枠81において接合部410を有していてもよい。
【0088】
図17(A)に示す例では、小型枠81の4つの角部89に接合部410が形成されている。この例では、各側壁83を構成する板材を接合部410で接合することで小型枠81が形成される。
【0089】
図17(B)に示す例では、小型枠81の4つの角部89のうち、対角を成す2つの角部89に接合部410が形成されている。この例では、2つ側壁83を構成する平面視にてL字状の板材を接合部410で接合することで小型枠81が形成される。
【0090】
図17(C)に示す例では、小型枠81の4つの角部89のうち、1つの角部89に接合部410が形成されている。この例では、例えば、一枚の板材を角筒状に折り曲げて接合部410で接合することで小型枠81が形成される。
【0091】
図17(D)に示す例では、小型枠81の4つの側壁83に接合部410が形成されている。この例では、平面視L字状の4つの板材の端部同士を接合部410で接合することで小型枠81が形成される。
【0092】
図17(E)に示す例では、小型枠81の4つの側壁83のうち、対向する2つの側壁83に接合部410が形成されている。この例では、平面視コ字状(U字状)の2つの板材の端部同士を接合部410で接合することで小型枠81が形成される。
【0093】
図17(F)に示す例では、小型枠81の4つの側壁83のうち、1つの側壁83に接合部410が形成されている。この例では、例えば、一枚の板材を角筒状に折り曲げて接合部410で接合することで小型枠81が形成される。
【0094】
なお、
図17(C)(F)に示す例は、一枚の板材で構成される一部品構造であり、
図17(A)(B)(D)(E)に示す例は、複数の板材で構成される多部品構造である。また、接合部410は、例えば、溶接により形成される。さらに、大型枠82においても、小型枠81と同様に、接合部410を有していてもよい。
【0095】
(拘束枠60の第五変形例)
拘束枠60は、
図18に示されるように、各小型枠81同士での側壁83の厚み、一の小型枠81における側壁83同士の厚みが異なっていてもよい。
図18に示す例では、小型枠81Cの側壁83の厚みは、小型枠81Aの側壁83の厚みよりも厚くなっている。なお、小型枠81A、81Cにおいて、側壁83同士の厚みは、同じとされている。小型枠81Bは、4つの側壁83のうち、90度に隣り合う側壁83同士は異なる厚みを有し、対向する2つの側壁83同士は、厚みが同じとされている。
【0096】
さらに、拘束枠60は、
図19に示されるように、各小型枠81同士での側壁83の厚み、一の小型枠81における側壁83同士の厚み、大型枠82における側壁84同士の厚みが異なっていてもよい。
図19に示す例では、小型枠81の側壁83の厚みと、その側壁83に接触する側壁84との厚みの合計は、どの組み合わせにおいても同じとされている。なお、
図19に示す例では、小型枠81が2つ設けられた構成について示している。また、
図18及び
図19では、大型枠82及び小型枠81の厚みを誇張して示している。
【0097】
(拘束枠60の第六変形例)
拘束枠60は、
図20(A)に示されるように、複数の小型枠81は、例えば、小型枠81Bを有せず、小型枠81A、81Cのみで構成されていてもよい。この場合においても、
図20(A)には図示していないが、
図8に示す構成と同様に、蓄熱材32は、9(3×3)個が配置される。すなわち、小型枠81Bに囲まれていない蓄熱材32が、各小型枠81Cの間にそれぞれ配置された状態で、大型枠82の内側に収容される。
【0098】
図20(A)に示される構成では、
図21(A)に示されるように、4つの小型枠81Cのそれぞれと小型枠81Aとは、側壁83の稜線部分同士で線接触をしている。なお、この側壁83の稜線同士は、前述の第1変形例で説明したのと同様に、接合されていてもよい。
【0099】
また、拘束枠60は、
図20(B)に示されるように、小型枠81は、大型枠82内において上下方向(積層方向)に複数配置されている構成であってもよい。
図20(B)に示される構成では、小型枠81は、上下方向に3段重ねられている。最上段及び最下段には、小型枠81が4隅に配置されている。中段には、小型枠81が中央に1つ配置されている。
図20(B)に示される構成では、図示はしていないが、蓄熱材32は、27(3×3×3)個が配置される。すなわち、小型枠81に囲まれていない蓄熱材32が、大型枠82内に収容される。
【0100】
図20(B)に示される構成では、
図22に示されるように、最上段及び最下段に配置された小型枠81のそれぞれと、中段に配置された小型枠81とは、側壁83の角部同士で点接触をしている。なお、この側壁83の角部同士は、前述の第1変形例で説明したのと同様に、接合されていてもよい。
【0101】
以上のように、本実施形態では、大型枠82内に収容された複数の蓄熱材32のうち、小型枠81によって囲まれていない蓄熱材32が存在してもよい。また、小型枠81同士の接触は、線接触や点接触であってもよい。
【0102】
(拘束枠60のその他の変形例)
拘束枠60における小型枠81及び大型枠82の形状は、
図23(A)(B)、
図24(A)(B)及び
図25(A)(B)に示されるように、種々の形状とすることができる。なお、小型枠81及び大型枠82は、
図23(A)(B)、
図24(A)(B)及び
図25(A)(B)に示す以外の形状とすることも可能である。
【0103】
図23(A)に示す例では、平面視にて、大型枠82は正方形状とされ、小型枠81は三角形状とされた8個が配置されている。具体的には、小型枠81は、直角二等辺三角形状とされている。小型枠81は、2つの底辺同士を合わせることで正方形とされ、さらにこの正方形を4つ合わせることで、正方形状が形成されるように、大型枠82の内側に配置されている。この構成においても、小型枠81及び大型枠82の各側壁が、小型枠81同士で、又は、小型枠81と大型枠82とで接触している。接触する側壁同士は、前述の第1変形例で説明したのと同様に、接合されていてもよい。
【0104】
図23(B)に示す例では、平面視にて、大型枠82は正方形状とされ、小型枠81は、1つが正方形状とされ、4つが長方形状とされている。この構成においても、小型枠81及び大型枠82の各側壁が、小型枠81同士で、又は、小型枠81と大型枠82とで接触している。接触する側壁同士は、前述の第1変形例で説明したのと同様に、接合されていてもよい。
【0105】
図24(A)に示す例では、平面視にて、大型枠82は円形状とされ、小型枠81は、円形状とされた7つが配置されている。この構成では、
図21(B)に示されるように、小型枠81同士は、側壁の外壁面同士で線接触をしている。また、小型枠81と大型枠82との側壁同士が線接触している。なお、この側壁同士は、前述の第1変形例で説明したのと同様に、接合されていてもよい。
【0106】
図24(B)に示す例では、平面視にて、大型枠82は円形状とされ、小型枠81は、円形状を4分割した形状とされた4つが配置されている。この構成においても、小型枠81及び大型枠82の各側壁が、小型枠81同士で、又は、小型枠81と大型枠82とで接触している。接触する側壁同士は、前述の第1変形例で説明したのと同様に、接合されていてもよい。
【0107】
図25(A)に示す例では、平面視にて、大型枠82は角部がR状(円弧状)とされた四角形状とされ、小型枠81は、円形状とされた4つが配置されている。この構成では、
図21(B)に示されるように、小型枠81同士は、側壁の外壁面同士で線接触をしている。また、小型枠81と大型枠82との側壁同士が接触している。なお、この側壁同士は、前述の第1変形例で説明したのと同様に、接合されていてもよい。
【0108】
図25(B)に示す例では、平面視にて、大型枠82は八角形状とされ、小型枠81は、八角形状を4分割した形状とされた4つが配置されている。この構成においても、小型枠81及び大型枠82の各側壁が、小型枠81同士で、又は、小型枠81と大型枠82とで接触している。接触する側壁同士は、前述の第1変形例で説明したのと同様に、接合されていてもよい。
【0109】
(他の変形例)
本実施形態では、各小型枠81は、他の小型枠81又は大型枠82に接触した状態で大型枠82内に収容されていたが、これに限られない。例えば、各小型枠81は、他の小型枠81及び大型枠82に対して隙間を有した状態で大型枠82内に収容され、蓄熱材32が予め定められた範囲を超えて膨張した際に、小型枠81が他の小型枠81又は大型枠82に接触する構成であってもよい。
【0110】
また、本実施形態では、積層体30は、一対の熱交換器50、51と、蓄熱材32、33と、一対のフィルタ34、35と、蒸気流路形成部材40と、拘束枠60、61と、を備えていたが、これに限られない。積層体30は、少なくとも、1つの熱交換器と、複数の蓄熱材と、1つの拘束枠と、を有していればよい。
【0111】
また、蓄熱材として、アルカリ金属塩化物、アルカリ土類金属塩化物、アルカリ金属臭化物、アルカリ土類金属臭化物におけるアンモニア反応系を用い、反応媒体として、アンモニアを用いてもよい。
【0112】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、その主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、変更、改良が可能である。例えば、上記に示した変形例は、適宜、複数を組み合わせて構成してもよい。