(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フロントバンパカバーの上辺部の車両後方において、ホーンなどの電装品用のハーネスが車幅方向に沿って引き回されている場合、車両前方からグリル側スリットおよびカバー側スリットを通してハーネスが視認されてしまい、車両前部の意匠の向上を図る上で改善の余地がある。
そこで、ラジエータグリルのグリル側スリットとハーネスとの間に、ハーネスを隠ぺいするハーネスカバーを設けることが考えられるが、その場合、部品点数が増加するため、コストを抑制する上で改善の余地がある。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、コスト抑制を図りつつ車両前部の意匠の向上を図る上で有利な車両の前部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、請求項1記載の発明は、車幅方向に延在する上辺部を有するフロントバンパカバーと、前記上辺部に設けられ車幅方向に延在して走行風を車両後方に導くカバー側スリットと、前記上辺部の前方にその下部が配置されたラジエータグリルと、前記ラジエータグリルに設けられ車幅方向に延在して走行風を車両後方に導くグリル側スリットと、前記上辺部の車両後方に配置され車幅方向に沿って延在する電装品用のハーネスとを備える車両の前部構造であって、前記カバー側スリットの上方に位置する前記上辺部の上縁に車幅方向に延在するハーネスカバーが前記上辺部と一体に設けられ、前記ハーネスカバーは、前記上縁に対して車両前方に揺動しその先部が前記カバー側スリット内で前記ハーネスの車両前方に位置し前記ハーネスを隠蔽する隠蔽状態を形成する本体部を有し、前記隠蔽状態で前記上辺部側に係脱可能に係合し前記隠蔽状態を保持する係合部が前記本体部に設けられ、前記ハーネスカバーが車両前方に揺動する揺動中心は、前記隠蔽状態において前記本体部よりも車両後方に位置していることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、前記ハーネスカバーは、
前記隠蔽状態において前記上縁から
車両前方に延在する基部を有し、前記本体部は、
前記隠蔽状態において前記基部の
前端
から車両下方に延在し、前記揺動中心は、前記上縁と前記基部との境の箇所であることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、前記本体部は、前記隠蔽状態において、前記本体部の上下部に対して上下中間部が車両前方に位置する凸状に形成されていることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、前記カバー側スリットは、前記上辺部の車幅方向に間隔をおいた複数箇所に設けられ、前記ハーネスカバーは、前記カバー側スリットに対応して前記上辺部の車幅方向に間隔をおいた複数箇所に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、フロントバンパカバーと一体に設けられたハーネスカバーによりハーネスを隠蔽することにより、グリル側スリットおよびカバー側スリットを通してハーネスを視認することができなくなる。したがって、部品点数を増加させることがなく、コストを抑制しつつ、車両前部の意匠の向上を図る上で有利となる。
また、ハーネスカバーの揺動中心は、隠蔽状態において本体部よりも車両後方に位置しているので、揺動により白化したフロントバンパカバーの箇所は、グリル側スリットおよびカバー側スリットを通して視認することができなくなり、車両前部の意匠の向上を図る上でより有利となる。
請求項2記載の発明によれば、ハーネスカバーの揺動中心を、上縁と基部との境の箇所に設けたので、ハーネスカバーの揺動中心を、ハーネスカバーの箇所に設ける場合に比べ、ハーネスカバーを必要最小限の大きさにでき、ハーネスカバーをコンパクトにする上で有利となる。また、フロントバンパカバーの設計変更を最小限にでき、コストダウンを図る上で有利となる。
請求項3記載の発明によれば、グリル側スリットを介して導入された走行風がハーネスカバーによって円滑に後方に導かれ、走行風による熱交換器の冷却効率を確保する上で有利となる。
請求項4記載の発明によれば、カバー側スリットが車幅方向に間隔をおいて複数設けられている場合にも、ハーネスを確実に隠蔽する上で有利となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
なお、
図1から
図13において、符号FRは車両前方、符号RRは車両後方、符号UPは車両上方、符号HLは車幅方向を示している。
図1から
図3に示すように、車両10の前部に、フロントバンパ12と、ラジエータグリル14とが配置されている。
また、車室の前方に仕切られた前部空間でラジエータグリル14の後方に電装品用のハーネス16と、熱交換器18とが設けられている。
【0010】
フロントバンパ12は、バンパビーム20と、フロントバンパカバー22とを含んで構成されている。
バンパビーム20は、車両前部において車幅方向に延在し、その両側が車体フレームを構成する部材に取着されている。
フロントバンパカバー22は合成樹脂製である。
フロントバンパカバー22の上部は、
図4に示すように、車幅方向に間隔をおいた複数箇所がバンパビーム20にボルト2により締結されている。
フロントバンパカバー22の下部は、不図示のブラケットを介して車体フレームを構成する部材に取着されている。
図6において、符号2202は、バンパグリル取り付け用の開口を示し、符号2204はフォグランプ取り付け用の開口2204を示す。
【0011】
図1から
図3に示すように、ラジエータグリル14は、フロントバンパカバー22の上部に配置されている。
ラジエータグリル14の下部は、合成樹脂クリップ(不図示)によりフロントバンパカバー22に取着され、ラジエータグリル14の上部は、車体フレームを構成する部材に取着されている。
ラジエータグリル14には、走行風を車両後方に導く上下方向の高さと、車幅方向の幅とを有する複数のグリル側スリット1402が設けられ、それらグリル側スリット1402は上下に間隔をおいて複数設けられている。
図1に示すように、フロントバンパカバー22の上方でラジエータグリル14の車幅方向両側には、左右のヘッドライト24がそれぞれ配置されている。
【0012】
ハーネス16は、前部空間に配置されるホーン(不図示)などの電装品に電力や信号を供給するものであり、ハーネス16は、
図3に示すように、バンパビーム20の下方で車幅方向に沿って延在している。
【0013】
熱交換器18は、
図3に示すように、空調装置の気化冷媒を冷却するコンデンサ18Aと、エンジン冷却水を冷却するラジエータ18Bとを含んで構成されている。
熱交換器18は、ラジエータグリル14のグリル側スリット1402およびバンパグリルのグリル側スリット(不図示)の後方に配置されており、それらグリル側スリット1402から流入する走行風が熱交換器18を通過することで外気との間で熱交換を行なう。
【0014】
図6、
図7に示すように、フロントバンパカバー22は、バンパグリル取り付け用の開口2202の上方で車幅方向に延在する上辺部2210を有している。
図3に示すように、ラジエータグリル14の下部は、上辺部2210の前方に配置され、上辺部2210の後方にバンパビーム20が配置されている。
図3、
図6、
図7に示すように、上辺部2210に、車幅方向に延在して走行風を車両後方に導くカバー側スリット2212が設けられている。
カバー側スリット2212は、車幅方向に間隔をおいて2つ設けられている。
カバー側スリット2212の延在方向と直交する方向において対向するカバー側スリット2212の両側の縁部2214は、
図7、
図9に示すように、上下方向に間隔をおきかつ車両10の前後方向に間隔をおいて形成されている。
そして、
図5において後述するハーネスカバー26が無い場合、ハーネス16は、車両10の前方からこのグリル側スリット1402を通してカバー側スリット2212の内側に視認される。
【0015】
図6、
図7に示すように、各カバー側スリット2212の上方に位置する上辺部2210の上縁に車幅方向に延在するハーネスカバー26がそれぞれ上辺部2210と一体に設けられている。すなわち、フロントバンパカバー22にハーネスカバー26が一体成形されている。
図7に示すように、ハーネスカバー26は、両側の基部2602と、本体部2604とを有している。
基部2602は、上辺部2210の上縁の車幅方向両側の箇所からそれぞれ延在している。
本体部2604は、基部2602の先端に接続され基部2602の延在方向と交差する方向に延在している。
そして、両側の基部2602の間に、上辺部2210と本体部2604とで挟まれたスリット27が形成されている。
ハーネスカバー26は、
図8、
図10、
図11、
図13に示すように、上辺部2210の上縁と基部2602との境の箇所23を揺動中心Oとして車両前方に揺動可能である。
ハーネスカバー26が揺動中心Oを中心として車両前方に揺動すると、
図5に示すように、本体部2604でハーネス16を隠蔽する隠蔽状態となる。
詳細に説明すると、隠蔽状態では、基部2602と反対に位置する本体部2604の先部2606がカバー側スリット2212内でハーネス16の車両前方に位置し、この本体部2604の先部2606でハーネス16を隠蔽する。
また、隠蔽状態では、上辺部2210の上縁と基部2602との境の箇所23には、
図13に示すように、車両後方に向けられた湾曲面2302が形成される。
【0016】
また、隠蔽状態で上辺部2210側に係脱可能に係合し隠蔽状態を保持する係合部2610が本体部2604に設けられている。
図7に示すように、係合部2610は3つ設けられている。
3つの係合部2610のうち、2つの係合部2610Aは、
図11、
図12に示すように、カバー側スリット2212の車幅方向の両側の上辺部2210の係合孔2220の側縁に係合すると共に、2つの係合部2610Aは、係合孔2220の上縁に当接する。
3つの係合部2610のうち、残り1つの係合部2610Bは、カバー側スリット2212の車幅方向の中央の上辺部2210の係合孔2222の側縁に係合すると共に、係合部2610Bは、係合孔2222の上縁に当接する。
【0017】
次に作用効果について説明する。
本実施の形態では、ハーネスカバー26がフロントバンパカバー22の上辺部2210と一体に設けられ、ハーネスカバー26によりハーネス16を隠蔽する隠蔽状態を形成するようにしたので、グリル側スリット1402およびカバー側スリット2212を通してハーネス16を視認することができなくなる。
したがって、部品点数を増加させることがなく、コストを抑制しつつ、車両前部の意匠の向上を図る上で有利となる。
また、ハーネスカバー26を揺動してハーネス16の隠蔽状態を形成すると、フロントバンパカバー22が合成樹脂製であることから、
図13にハッチングで示すように、揺動中心Oとなるフロントバンパカバー22の箇所23が白化する現象が生じる。
しかしながら、本実施の形態では、ハーネスカバー26の揺動中心Oは、隠蔽状態において本体部2604よりも車両後方に位置しているので、この白化した箇所23は、グリル側スリット1402およびカバー側スリット2212を通して視認することができなくなり、車両前部の意匠の向上を図る上でより有利となる。
また、本実施の形態では、上辺部2210の上縁と基部2602との境の箇所23、すなわち、白化した箇所23には、
図13に示すように、車両後方に向けられた湾曲面2302が形成されるので、白化した箇所23を隠蔽する上でより有利となり、車両前部の意匠の向上を図る上でより有利となる。
【0018】
また、ハーネスカバー26の揺動中心Oを、ハーネスカバー26の箇所に設けることも可能であるが、本実施の形態のように、ハーネスカバー26の揺動中心Oを、上縁と基部2602との境の箇所に設けると、ハーネスカバー26の箇所に設ける場合に比べハーネスカバー26を必要最小限の大きさにでき、ハーネスカバー26をコンパクトにする上で有利となる。
また、ハーネスカバー26の揺動中心Oを、上辺部2210に設けることも可能であるが、本実施の形態のように、ハーネスカバー26の揺動中心Oを、上辺部2210の上縁と基部2602との境の箇所に設けると、上辺部2210に設ける場合に比べ、フロントバンパカバー22の設計変更を最小限にでき、コストダウンを図る上で有利となる。
【0019】
また、本実施の形態では、本体部2604は、隠蔽状態において、本体部2604の上下部に対して上下中間部が車両前方に位置する凸状に形成されている。
したがって、グリル側スリット1402を介して導入された走行風がハーネスカバー26によって円滑に後方に導かれ、走行風による熱交換器18の冷却効率を確保する上で有利となる。
【0020】
また、本実施の形態では、カバー側スリット2212は、上辺部2210の車幅方向に間隔をおいた複数箇所に設けられ、ハーネスカバー26は、カバー側スリット2212に対応して上辺部2210の車幅方向に間隔をおいた複数箇所に設けられている。
したがって、本発明は、カバー側スリット2212が車幅方向に間隔をおいて複数設けられている場合にも、ハーネス16を確実に隠蔽する上で有利となる。