特許第6657981号(P6657981)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6657981
(24)【登録日】2020年2月10日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】電子機器の電池収納構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/10 20060101AFI20200220BHJP
【FI】
   H01M2/10 P
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-6763(P2016-6763)
(22)【出願日】2016年1月18日
(65)【公開番号】特開2017-130252(P2017-130252A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 周太
【審査官】 太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−152576(JP,A)
【文献】 特開平11−135094(JP,A)
【文献】 特開2014−038763(JP,A)
【文献】 特開平10−012207(JP,A)
【文献】 特開2002−063883(JP,A)
【文献】 特開平11−297289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コインまたは釦形状の電池を電源として作動する電子機器の電池収納構造であって、
前記電池からの電力を用いて駆動する電子部品と、前記電池の各電極に接触するための第1,第2の接触端子とを実装する回路基板と、
この回路基板を保持するとともに、前記電池を所定位置に取り付け可能な開口部を設けるハウジングと、
前記開口部を覆う蓋と、を備え、
前記第1の接触端子は前記電池の陰極となる底面に接触し、前記第2の接触端子は前記電池の側面から陽極に接触するように設けられ、
前記ハウジングは、前記開口部において、
前記第2の接触端子を覆うように形成される庇部と、
この庇部の対向箇所に、前記電池の側面を露出する凹部と、を設け、
前記蓋または前記ハウジングには、前記蓋が前記ハウジングに組み付けられた状態において、前記凹部を臨む孔を有する
ことを特徴とする電子機器の電池収納構造。
【請求項2】
前記第2の接触端子は、その弾性変形を利用して前記電池に押し当てるように接触し、
前記ハウジングは、前記開口部において、前記第2の接触端子の対向位置に設けられる前記凹部の近傍に前記電池の上面と接触することで前記電池の取り外し方向の移動を規制する規制手段を設けることを特徴とする請求項1に記載の電子機器の電池収納構造。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記開口部において、内側から外側に向けて開口を径大にする傾斜部を設けることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子機器の電池収納構造。
【請求項4】
前記庇部に前記陽極を示すマークを設けることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子機器の電池収納構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の電池収納構造に関し、例えば、コイン型(もしくはボタン型)電池を電源として、ハウジング内に収納保持する電子機器の電池収納構造として好適である。
【背景技術】
【0002】
従来の電子機器の電池収納構造は、例えば、特許文献1に記載の装置が提案されている。これら電子機器の電池収納構造にあっては、機器のハウジング内に形成され回路基板に実装された接触端子(電極)を臨む凹形状の電池収納部と、同電池収納部の開口に着脱自在に被せられる蓋と、を備えるものがある。
【0003】
また、これら電池収納構造は、電池を取り付けた際に、確実に接触端子に接する必要があり、電極の接点を複数用意したり、電極に押し付けるように電池を組み付ける構造にするなど、工夫されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−297289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電池を着脱する際に、これら接触端子に負荷が加わり変形するなどしてしまう課題がある。また、電池の取り付け、取り外し作業は、容易である方が利便性が高いため、これらの課題を解決する構造が望まれていた。
【0006】
そこで本発明の目的は、上述課題に着目し、電池を取り付ける際に電池と接触端子とが確実に接触し、且つ容易に電池を取り付け、取り外しできる電子機器の電池収納構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子機器の電池収納構造は、
コインまたは釦形状の電池を電源として作動する電子機器の電池収納構造であって、
前記電池からの電力を用いて駆動する電子部品と、前記電池の各電極に接触するための第1,第2の接触端子とを実装する回路基板と、
この回路基板を保持するとともに、前記電池を所定位置に取り付け可能な開口部を設けるハウジングと、
前記開口部を覆う蓋と、を備え、
前記第1の接触端子は前記電池の陰極となる底面に接触し、前記第2の接触端子は前記電池の側面から陽極に接触するように設けられ、
前記ハウジングは、前記開口部において、
前記第2の接触端子を覆うように形成される庇部と、
この庇部の対向箇所に、前記電池の側面を露出する凹部と、を設け、
前記蓋または前記ハウジングには、前記蓋が前記ハウジングに組み付けられた状態において、前記凹部を臨む孔を有する
ことを特徴とする。
【0009】
また、前記第2の接触端子は、その弾性変形を利用して前記電池に押し当てるように接触し、
前記ハウジングは、前記開口部において、前記第2の接触端子の対向位置に設けられる前記凹部の近傍に前記電池の上面と接触することで前記電池の取り外し方向の移動を規制する規制手段を設けることを特徴とする。
【0010】
また、前記ハウジングは、前記開口部において、内側から外側に向けて開口を径大にする傾斜部を設けることを特徴とする。
【0011】
また、前記庇部に前記陽極を示すマークを設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、電子機器の電池収納構造に関し、電池を取り付ける際に電池と接触端子とが確実に接触し、且つ容易に電池を取り付け、取り外しできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態による電子機器の各構成を示す分解斜視図。
図2】同実施形態における電池収納部を示す平面図。
図3図2のV−V断面において電池及び絶縁シートを取り付けた電池収納部を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の電子機器の電池収納構造についての実施形態として、操作パネル装置に適用したものを例に挙げて説明する。
【0015】
図1に示すように操作パネル装置(電子機器)Aは、回路基板1と、第1,第2の接触端子2,3と、ハウジング4と、蓋5と、を備えており、ハウジング4に形成された開口部40に、電池Bや絶縁シートCを保持可能にしている。
【0016】
電池Bは、この場合、コイン形状の電池を適用でき、平らな面に電池の種類などが刻印されてなる上面、及びこの上面に連続して形成された側面に陽極,上面の反対側の底面に陰極を設けている。なお、コイン形状でなく、釦形状の電池であってもよい。
【0017】
絶縁シートCは、合成樹脂材からなる電気絶縁性のシートを適用でき、第1の接触端子2と、陰極との間に介在することで、電池Bが取り付け状態であっても、第1の接触端子2と電池Bの陰極とを非通電状態とすることで電池の放電を抑えるため、製品出荷時など適宜設けることができる。
【0018】
回路基板1は、ガラスエポキシ樹脂を基材として銅箔パターンが形成されてなる硬質プリント基板を適用でき、第1,第2の接触端子2,3や、図示しないが外部接続用コネクタ,液晶パネル6(図3に図示する)を駆動するための各種半導体素子,振動発振子などの計時用の駆動回路(電子部品)搭載している。回路基板1は、ビスや係止部などの保持部によって、ハウジング4内に収納されて保持される。なお、電池Bの電力は、外部電源が途絶えても継続的に計時できるようにバックアップ電源として設けられる。
【0019】
第1の接触端子2は、金属の板材を加工して形成され、回路基板1に半田を用いて実装される。第1の接触端子2は、電池Bの陰極位置に対応するように、図2に示すように、ハウジング4の開口部40を通じて外側から臨むことができる位置に設けられる。第1の接触端子2は、回路基板1の実装面と垂直方向に変動可能な弾性片2aを有しており、この場合、複数設けられる。弾性片2aは、電池Bまたは各部品1,2,4の組み付け誤差や寸法誤差を吸収して、電池Bに押し当てるように接触させることができる。なお、第1の接触端子2は、図3や上述のように絶縁シートCを電池Bとの間に介在させる場合もあり、この際も、絶縁シートCの位置ずれを抑える作用がある。
【0020】
第2の接触端子3は、金属の板材を加工して形成され、回路基板1に半田を用いて実装される。第2の接触端子3は、電池Bの陽極位置に接触するような弾性片3aを有している。弾性片3aは、回路基板1の実装面に垂直な面を有しており、その弾性変形によって、この面が電池Bの側面に押し当てることで接触できるように設けられる。
【0021】
ハウジング4は、合成樹脂材を成形してなり、表側ケース41と裏側ケース42とをビスや係合部を用いて組み付けることで、回路基板1や液晶パネル6等の部品を収納するための空間を形成する。ハウジング4の裏側ケース42には、第1の接触端子2を臨む開口部40を備えており、この開口部40に電池Bを収納するための構造が形成されている。
【0022】
この場合、開口部40には、庇部4aと、凹部4bと、傾斜部4cと、突起(規制手段)4dと、蓋保持部4e、マーク4f,4gとを設けている。
【0023】
庇部4aは、第2の接触端子3の弾性片3aを覆うように形成され、電池Bを取り付ける際など、電池Bの取り付け方向を規制でき、また、弾性片3aに触れにくいように保護できる。従って、弾性片3aは、この庇部4aによって、電池Bへの押し当て方向以外から応力を受けにくい構造となるため、余計な変形をすることなく電池Bの接続信頼性を維持できる。
【0024】
なお、電池Bは、庇部4aを避けるようにして、取り付け面(回路基板1面)に対して斜めから挿入されて取り付けることができ、取り付け状態において、取り付け面と垂直方向への移動が庇部4aによって規制される。
【0025】
また、庇部4aの表面(外側の面)には、陽極を示すマーク4fが形成される。電池Bを取り付ける作業者は、このマーク4fによって、電池Bの取り付け向き(表裏向き)を判断できる。
【0026】
凹部4bは、電池Bの外径に近い開口よりもさらに大きい切り欠き形状に形成され、開口部40において庇部4aや第2の接触端子3の反対側に設けられる。凹部4bは、電池Bが取り付け状態において、電池Bの側面が底面まで深く臨むことができるようしてあり、電池Bと取り外す際に、指やピンセット等の工具などが入り易くしてある。例えば、電池Bが固着して外し難い場合であっても、この凹部4bを利用して、容易に電池Bを取り外すことができる。
【0027】
また、凹部4bは、絶縁シートCの搭載用スペースとして兼ねることもでき、凹部4bの壁にて絶縁シートの搭載位置を定めることができる。なお、凹部4bには、傾斜面が形成されており、絶縁シートCが鋭角に折り曲げられずに搭載できるため、電池Bや蓋5が開口部40に取り付けられた状態においても、容易に引き抜きやすくなる。
【0028】
傾斜部4cは、庇部4a、凹部4b及び突起4dを除く電池Bの搭載位置の周りに形成され、ハウジング4の内側から外側に向けて開口を径大にする傾斜面である。この傾斜部4cは、電池Bを取り付ける際に、電池Bを適正位置に誘い込むようにガイドでき、電池Bを差し込み易くできる。
【0029】
突起4dは、庇部4aと同じ高さで開口の中心側に、第2の接触端子3の弾性変形量以下の大きさで突出して形成され、開口部40において庇部4aや第2の接触端子3の反対側に設けられ、この場合、凹部4bの両脇側に設けられる。突起4dは、電池Bが取り付け状態において、第1,第2の接触端子2,3によって押し当てられた電池Bを庇部4aとともに係止(接触)することで、電池Bの取り外し方向の移動を規制して保持する規制手段となる。
【0030】
なお、突起4dは、凹部4bの近傍に設けられるため、凹部4bから臨む電池Bの側面を押すことで、簡単に電池Bとの係止関係を解除することができ、電池Bを取り外しやすい構造となる。
【0031】
蓋保持部4eは、蓋5を係止するための係止穴であり、蓋5の係止片5aが挿入された状態で蓋5を回転することで係止状態にできる。
【0032】
マーク4f,4gは、ハウジング4の外側面の凹凸によって表示意匠を形成するものであり、マーク4fは、上述のように陽極を示し、マーク4gは、蓋5の回動位置(係止位置と解放位置)を示す。
【0033】
蓋5は、ハウジング4と同様の合成樹脂材からなり、開口部40に組み付けることで電池Bや回路基板1を覆い塞ぐもので、係止片5aと、溝5bと、マーク5cと、電池抑え部5dと、が設けられる。
【0034】
係止片5aは、上記蓋保持部4eに対応して設けられるフックで、複数設けられる。なお、係止片5aは、先端が外側に向く形状としており、電池Bを取り外す際の工具として兼用することもできる。
【0035】
溝5bは、蓋5の外側面に長穴状に設けられ、蓋5が固着するなどして取り外し難い場合に、コイン形状のものを差し込んで回転の作用点とし、容易に電池Bの取り付け、取り外し作業が行える。
【0036】
マーク5cは、上述したマーク4gに対応して形成され、この場合、マーク4gとの対応関係が明確になるように同じ形状(三角形)にて形成される。なお、マークとして三角形状の凹凸の他に、丸形状など他の形状による凹凸や印刷、刻印によるものも考えられる。また、マークの近傍にOPENやその他の文字を添えることもできる。
【0037】
電池抑え部5dは、溝5bの反対面に形成され、蓋5が組み付けられた状態で、電池Bを抑えるように作用する。電池Bは、この電池抑え部5dによって、仮に突起4dの係止状態が解放されても、電池Bと第1,第2の接触端子2,3との接触状態を維持して収納保持される。
【0038】
なお、ハウジング4の凹部4bは、蓋5が取り付け状態においても、図3に示すように、外側から臨むことができる孔4hが設けられるように形成しており、絶縁シートCをハウジング4外に伸ばして引きしろにできる。このため、蓋5を取り外さなくても、絶縁シートCを抜くだけで、電池Bによる電源供給を開始できる。
【0039】
斯かる操作パネル装置Aの電池収納構造は、
コインまたは釦形状の電池Bを電源として作動する電子機器の電池収納構造であって、
電池Bからの電力を用いて駆動する電子部品と、電池Bの各電極に接触するための第1,第2の接触端子2,3とを実装する回路基板1と、
この回路基板1を保持するとともに、電池Bを所定位置に取り付け可能な開口部40を設けるハウジング4と、
開口部40を覆う蓋5と、を備え、
第1の接触端子2は電池Bの底面(陰極)に接触し、第2の接触端子3は電池Bの側面(陽極)に接触するように設けられ、
ハウジング4は、開口部40において、
第2の接触端子3を覆うように形成される庇部4aと、
この庇部4aの対向箇所に、電池Bの側面を露出する凹部4bとを設ける。
【0040】
従って、電池Bを取り付ける際に電池Bと第1,第2の接触端子2,3とが確実に接触し、且つ容易に電池Bを取り付け、または取り外しできる電池収納構造となる。
【0041】
また、第2の接触端子3は、その弾性変形を利用して電池Bに押し当てるように接触し、ハウジング4は、開口部40において、第2の接触端子3の対向位置に設けられる凹部4bの近傍(両脇)に電池Bの上面(陽極端面)と接触することで電池Bの取り外し方向の移動を規制する突起4dを設けることによって、電池Bの取り付け、取り外しが容易な電池収納構造となる。
【0042】
なお、本発明の電子機器の電池収納構造を上述した実施の形態の構成にて例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の構成においても、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良、並びに表示の変更が可能なことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、電子機器の電池収納構造に関し、取り付け取り外しが必要な電池を搭載する電子機器に好適である。
【符号の説明】
【0044】
A 操作パネル装置(電子機器)
B 電池
C 絶縁シート
1 回路基板
2 第1の接触端子
2a 弾性片
3 第2の接触端子
3a 弾性片
4 ハウジング
41 表側ケース
42 裏側ケース
40 開口部
4a 庇部
4b 凹部
4c 傾斜部
4d 突起(規制手段)
4e 蓋保持部
4f マーク
4g マーク
4h 孔
5 蓋
5a 係止片
5b 溝部
5c マーク
5d 電池抑え部
6 液晶パネル
図1
図2
図3