(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1の検出方法では、内部インピーダンスを測定するものであるが、鉛蓄電池を測定するものであり、リチウム二次電池の充電については検討されていなかった。リチウム二次電池の充電において、過充電をより抑制することが望まれていた。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、リチウム二次電池の過充電をより抑制することができる検出装置及び検出方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、特定範囲の周波数のインピーダンスを充電中に測定することにより、リチウム二次電池の過充電をより抑制することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の検出装置は、
リチウム二次電池の状態を検出する検出装置であって、
前記リチウム二次電池の10Hz以下の所定周波数のインピーダンスを測定する測定部と、
前記リチウム二次電池を充電している期間中、前記測定部から前記リチウム二次電池の前記インピーダンスを入力し、入力した該インピーダンスが所定の閾値を超えたときには前記リチウム二次電池が異常充電状態であると判定する判定制御部と、
を備えたものである。
【0008】
本発明の検出方法は、
リチウム二次電池の状態を検出する検出方法であって、
前記リチウム二次電池の10Hz以下の所定周波数のインピーダンスを測定する測定ステップと、
前記リチウム二次電池を充電している期間中、前記測定ステップで測定した前記リチウム二次電池の前記インピーダンスを入力し、入力した該インピーダンスが所定の閾値を超えたときには前記リチウム二次電池が異常充電状態であると判定する判定ステップと、
を含むものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、リチウム二次電池の過充電をより抑制することができる。このような効果が得られる理由は、以下のように推察される。例えば、リチウム二次電池の10Hz以下におけるインピーダンスの抵抗は、電池の反応抵抗を反映すると考えられる。一方、リチウム二次電池が過充電状態に至ると活物質の変質などによりこの反応抵抗が上昇する。本発明では、この反応抵抗の上昇を所定周波数でのインピーダンスの抵抗により検出し、過充電状態の判定に用いることにより、過充電をより抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のリチウム二次電池の状態を検出する検出方法は、リチウム二次電池の状態に関する測定を行う測定ステップと、リチウム二次電池の異常充電状態を判定する判定ステップと、を含む。また、この検出方法において、判定ステップのあと、充電を中断する中断ステップ、を更に含むものとしてもよい。あるいは、判定ステップのあと、異常充電状態を報知する報知ステップを更に含むものとしてもよい。この検出方法において、中断ステップと報知ステップとを両方含むものとしてもよい。なお、充電対象であるリチウム二次電池については、詳しくは後述する。
【0012】
測定ステップでは、リチウム二次電池の10Hz以下の所定周波数のインピーダンスを測定する。10Hz以下の周波数のインピーダンスはリチウム二次電池の過充電状態に影響されるため、この範囲のインピーダンスを測定することが好ましい。この測定ステップでは、0.01Hz以上の範囲のインピーダンスを測定するものとしてもよいし、0.1Hz以上の範囲のインピーダンスを測定するものとしてもよい。また、場合によっては、0.1Hz以下の範囲のインピーダンスを測定するものとしてもよい。インピーダンスの周波数が小さくなると、得られる抵抗値は大きくなるが、ノイズも大きくなる。したがって、得られる抵抗値と正確性とを比較考量し、異常充電状態を判定する所定周波数を設定することが好ましい。また、測定ステップでは、例えば、振幅電流を0.001C以上0.5C以下の範囲としてもよく、0.01C以上0.2C以下の範囲としてもよく、0.02C以上0.1C以下の範囲としてもよい。例えば、電池容量が大きくなれば、振幅電流をより大きくしたり、電池抵抗が低くなれば、振幅電流を小さくするなど、電池容量や電池抵抗などに応じて振幅電流を適宜設定するものとすればよい。
【0013】
検出ステップでは、リチウム二次電池を充電している期間中、測定ステップで測定したリチウム二次電池のインピーダンスを入力し、入力したインピーダンスが所定の閾値を超えたときにはリチウム二次電池が異常充電状態であると判定する。この検出ステップにおいて、異常充電状態を判定する所定の閾値は、例えば、蓄電量SOC100%での測定値を1に規格化したときに、1.2や1.5、2.0などに設定することができる。即ち、測定したインピーダンスの抵抗値が、SOC100%での抵抗値の1.2倍や1.5倍、2倍になったときに異常充電状態であると判定するものとしてもよい。また、測定に用いる周波数においてノイズがある場合は、所定の閾値を複数回超えたときに異常充電状態であると判定するものとしてもよい。
【0014】
中断ステップでは、判定ステップでリチウム二次電池が異常充電状態であると判定したあと、充電用の外部電源とリチウム二次電池との間の電気的接続を解除する。こうすれば、過充電状態を継続してしまうのを防止することができる。このとき、電気的接続の接続、解除を行うスイッチング部により電気的接続を解除するものとしてもよい。また、報知ステップでは、使用者へ異常充電状態である旨報知する。この報知ステップでは、異常充電状態であることを画面表示して報知するものとしてもよいし、音(音声など)により報知するものとしてもよい。
【0015】
次に、本発明を具現化した一実施形態について図面を用いて説明する。
図1は本実施形態であるリチウム二次電池10及び充電装置30の構成の概略の一例を示す構成図である。本実施形態の充電装置30は、リチウム二次電池10を充電する装置である。この充電装置30は、
図1に示すように、所定周波数のインピーダンスを測定などする測定部33と、充電装置30全体を制御する判定制御部34と、外部電源31との電気的接続を解除するスイッチング部35と、使用者からの指示を入力などする表示入力部36とを備えている。本発明の検出装置40は、測定部33、判定制御部34及びスイッチング部35により構成されている。この充電装置30は、上述した検出方法のいずれかの態様を採用してリチウム二次電池10の充電処理を行うことができる。
【0016】
測定部33は、例えば、リチウム二次電池10の電圧、電流及びインピーダンスなどリチウム二次電池10を測定するユニットである。測定部33は、リチウム二次電池10の10Hz以下の所定周波数のインピーダンスを測定する。この測定部は、0.01Hz以上の範囲のインピーダンスを測定するものとしてもよいし、0.1Hz以上の範囲のインピーダンスを測定するものとしてもよい。また、場合によっては、0.1Hz以下の範囲のインピーダンスを測定するものとしてもよい。インピーダンスの周波数が小さくなると、得られる抵抗値は大きくなるが、ノイズも大きくなる。したがって、得られる抵抗値と正確性とを比較考量し、異常充電状態を判定する所定周波数を設定することが好ましい。
【0017】
判定制御部34は、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、一時的にデータを記憶したりデータを保存したりするRAMと、各種処理プログラムを記憶しデータを書き込み消去可能なフラッシュメモリなどの記憶部と、図示しない入出力ポートとを備えている。なお、記憶部には、後述する異常検出充電処理ルーチンなどの各処理プログラムや処理に用いられる閾値などが記憶されている。この判定制御部34には、測定部33から入力した検出信号などが入力ポートを介して入力される。また、判定制御部34からは、スイッチング部35や、表示入力部36への制御信号などが図示しない出力ポートを介して出力される。この判定制御部34は、スイッチング部35を制御し、外部電源31から供給された電力によりリチウム二次電池10を充電する処理を行う。また、判定制御部34は、リチウム二次電池10を充電している期間中、測定部33からリチウム二次電池20のインピーダンスを入力し、入力したインピーダンスが所定の閾値を超えたときにはリチウム二次電池10が異常充電状態であると判定する処理を実行する。また、判定制御部34は、リチウム二次電池10が異常充電状態であると判定すると、電気的接続を解除するようスイッチング部35を制御する。
【0018】
スイッチング部35は、充電用の外部電源とリチウム二次電池10との間を電気的に接続、解除可能なスイッチである。表示入力部36は、充電装置30に関する各種情報を表示する表示部と、使用者からの入力操作を受け付ける操作部とを備えている。
【0019】
次に、充電対象としてのリチウム二次電池10について説明する。リチウム二次電池は、リチウムイオンを吸蔵・放出しうる正極活物質を有する正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出しうる負極活物質を有する負極と、正極と負極との間に介在しリチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備えているものとしてもよい。
【0020】
リチウム二次電池の正極は、例えば正極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。正極活物質としては、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物などを用いることができる。具体的には、基本組成式をLi
(1-x)MnO
2(0<x<1など、以下同じ)やLi
(1-x)Mn
2O
4などとするリチウムマンガン複合酸化物、基本組成式をLi
(1-x)CoO
2などとするリチウムコバルト複合酸化物、基本組成式をLi
(1-x)NiO
2などとするリチウムニッケル複合酸化物、基本組成式をLi
(1-x)Ni
aCo
bMn
cO
2(a>0、b>0、c>0、a+b+c=1)などとするリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、基本組成式をLiV
2O
3などとするリチウムバナジウム複合酸化物、基本組成式をV
2O
5などとする遷移金属酸化物などを用いることができる。これらのうち、リチウムの遷移金属複合酸化物が好ましい。なお、「基本組成式」とは、他の元素、例えば、AlやMgなどの成分を含んでもよい趣旨である。
【0021】
負極は、例えば負極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の負極材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素質材料、導電性ポリマー、チタン化合物及び珪素化合物などが挙げられる。炭素質材料は、特に限定されるものではないが、コークス類、ガラス状炭素類、グラファイト類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維などが挙げられ、このうち、人造黒鉛、天然黒鉛などのグラファイト類が好ましい。
【0022】
イオン伝導媒体としては、支持塩を含む非水系電解液や非水系ゲル電解液などを用いることができる。非水電解液の溶媒としては、エチレンカーボネートなどの環状カーボネート類や、ジメチルカーボネートなどの鎖状カーボネート類、γ−ブチルラクトンなどの環状エステル類、ギ酸メチルなどの鎖状エステル類、ジメトキシエタンなどのエーテル類、アセトニトリルなどのニトリル類、テトラヒドロフランなどのフラン類、スルホランなどのスルホラン類、1,3−ジオキソランなどのジオキソラン類などが挙げられる。これらを単独又は混合して用いることができる。支持塩は、例えば、LiPF
6、LiBF
4、LiAsF
6、LiClO
4などの無機塩、及びLiCF
3SO
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiC(CF
3SO
2)
3などの有機塩などが挙げられる。また、液状のイオン伝導媒体の代わりに、イオン伝導性ポリマー、無機固体電解質あるいは有機ポリマー電解質と無機固体電解質の混合材料、若しくは有機バインダーによって結着された無機固体粉末などを利用することができる。
【0023】
セパレータは、リチウム二次電池の使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂の薄い微多孔膜が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
【0024】
このリチウム二次電池の形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のものとしてもよい。
図1に示すように、リチウム二次電池10は、集電体11に正極活物質12を形成した正極シート13と、集電体14の表面に負極活物質17を形成した負極シート18と、正極シート13と負極シート18との間に設けられたセパレータ19と、正極シート13と負極シート18の間を満たす非水電解液20と、を備えたものである。このリチウム二次電池10では、正極シート13と負極シート18との間にセパレータ19を挟み、これらを捲回して円筒ケース22に挿入し、正極シート13に接続された正極端子24と負極シートに接続された負極端子26とを配設して形成されている。
【0025】
次に、こうして構成された本実施形態の充電装置30の動作、特に、リチウム二次電池10を充電する処理について説明する。まず、使用者は、充電装置30の所定位置にリチウム二次電池10をセットし、表示入力部36を操作し、充電を開始させる。
図2は、判定制御部34のCPUが実行する異常検出充電処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。充電処理が開始されると、判定制御部34は、まず、スイッチング部35により、外部電源31とリチウム二次電池10とを電気的に接続させ(ステップS100)、所定の充電条件(電圧、電流)によりリチウム二次電池10の充電処理を実行する(ステップS110)。
【0026】
次に、判定制御部34は、測定部33により電圧及び電流を測定し(ステップS120)、所定周波数のインピーダンスを測定する(ステップS130)。所定周波数は、10Hz以下の範囲とし、0.01Hz以上の範囲としてもよいし、0.1Hz以上の範囲としてもよい。次に、判定制御部34は、充電中におけるリチウム二次電池10の電圧、電流は正常であるか否かを判定する(ステップS140)。電圧及び電流が正常であるときには、判定制御部34は、測定したインピーダンスが正常であるか否かを所定の閾値を超えるか否かに基づいて判定する(ステップS150)。所定の閾値は、例えば、SOC100%での測定値を1に規格化したときに、1.2や1.5などに設定することができる。インピーダンスの抵抗値が所定の閾値を超えないとき、即ち正常であるときには、判定制御部34は、充電が終了したか否かを判定する(ステップS160)。充電が終了していないときには、ステップS110以降の処理を繰り返し実行する。一方、充電処理が終了したときには、外部電源との電気的接続を解除し(ステップS170)、そのままこのルーチンを終了する。
【0027】
一方、ステップS140で電圧及び電流の少なくとも一方が正常でないとき、または、ステップS150でインピーダンスの抵抗値が正常でないときには、判定制御部34は、スイッチング部35により外部電源との電気的接続を解除し(ステップS180)、表示入力部36により異常充電状態を使用者へ報知させ(ステップS190)、このルーチンを終了する。
【0028】
以上詳述した本発明の検出方法、充電装置では、リチウム二次電池の過充電をより抑制することができる。このような効果が得られる理由は、以下のように推察される。例えば、リチウム二次電池の10Hz以下におけるインピーダンスの抵抗は、電池の反応抵抗を反映すると考えられる。一方、リチウム二次電池が過充電状態に至ると活物質の変質などによりこの反応抵抗が上昇する。本発明では、この反応抵抗の上昇を所定周波数でのインピーダンスの抵抗により検出し、過充電状態の判定に用いることにより、過充電をより抑制することができる。
【0029】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0030】
例えば、上述した実施形態では、充電装置30及び充電装置30で実行される異常検出充電処理ルーチンとして説明したが、検出装置40及び異常検出処理ルーチンとしてもよい。この検出装置40では、異常充電状態であることを判定した判定結果を利用することにより、リチウム二次電池の過充電をより抑制することができる。なお、検出装置40は、スイッチング部35を備えるものとしたが、これを省略してもよい。
【0031】
上述した実施形態では、リチウム二次電池10の電圧、電流によっても異常充電状態(過充電状態)であるか否かを判定するものとしたが、これを省略してもよい。なお、複数の方法によって異常充電状態を検出する方が、より確実に過充電を抑制することができ好ましい。
【実施例】
【0032】
以下には、本発明の検出方法を具体的に検討した例を実施例として説明する。なお、本発明は下記の実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0033】
[リチウム二次電池]
充電を行うリチウム二次電池を作製した。正極は、以下のように作製した。正極活物質のLiNi
0.75Co
0.15Al
0.05Mg
0.05O
2を85質量部、導電材のカーボンブラックを10質量部、結着材のポリフッ化ビニリデン(PVdF)を5質量部を、溶媒としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)と共に混練し、正極合材とした。正極集電体としての15μm厚のアルミニウム箔に正極合材を塗布、乾燥し、正極シートとした。また、負極は、結着材のポリ塩化ビニリデン(PVdF)を5質量部、負極活物質の黒鉛を95質量部を、溶媒としてN−メチルピロリドンと共に混練し、負極合材とした。負極集電体としての銅箔に負極合材を塗布、乾燥し、負極シートとした。非水電解液として、エチレンカーボネート(EC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)と、ジメチルカーボネート(DMC)とを体積比で3:4:3で混合した溶媒に、支持塩としてのLiPF
6を1.0mol/Lとなるよう含有させたものを用いた。正極シートと負極シートとを、ポリプロピレン多層膜のセパレーターを介して捲回し、上記非水電解液と共に円筒形電池容器に収容した。その後、この電池容器の開口部を気密に封止し、
図1に示す構造のリチウム二次電池10を得た。
【0034】
[過充電評価試験]
作製したリチウム二次電池をSOC100%まで充電したのち振幅電流0.1mA、周波数0.1Hzを重畳させながら電池容量の2倍量の電流値(2C)で過充電を行った結果を実施例1とした。また、周波数10Hzで実験を行った以外は実施例1と同様にリチウム二次電池の過充電を行った結果を実施例2とした。また、周波数1kHzで実験を行った以外は実施例1と同様にリチウム二次電池の過充電を行った結果を比較例1とした。
【0035】
(結果と考察)
図3は、充電期間中に測定したSOCに対する抵抗値の関係図である。
図3の横軸は電池の蓄電量SOC(%)、縦軸は、0.1Hz抵抗、10Hz抵抗、1kHz抵抗の推移を示した。実施例1では、SOC100%を超え、さらには、150%を超えると0.1Hz抵抗が大きく変動した。また、実施例2では、SOC130%付近で急激に10Hz抵抗が上昇した。一方、比較例1の周波数1kHzでは、SOC100〜200%の範囲では、顕著な抵抗増加は観測されなかった。このように、リチウム二次電池では、0.1Hz〜10Hzの抵抗を重畳させてそれをモニターすることにより、リチウム二次電池の電極反応の反応抵抗が変動するため、電池が異常状態に遷移することを判定できることがわかった。リチウム二次電池の過充電状態を判定する閾値としては、例えば、SOC100%での抵抗値を1に規格化したときに、1.2や1.5、2.0などに設定することができる。また、測定に用いる周波数においてノイズがある場合は、閾値を複数回超えたときに過充電状態に判定するものとしてもよい。
【0036】
図4は、実施例のリチウム二次電池におけるSOC100%でのインピーダンススペクトルである。このリチウム二次電池のACインピーダンススペクトルは、
図4に示すように、2円弧出現した。この高周波側の抵抗R1は主に負極抵抗に由来し、低周波側の抵抗R2は主に正極抵抗に由来すると報告されている(電気化学会第73階大会3K22、佐々木ら)。そこで、SOC100〜200%の範囲で、充電中ではなく、リチウム二次電池の平衡状態でACインピーダンス測定を行い、測定結果のスペクトルをフィッティングし、正負極の抵抗を見積もった。
図5は、電池平衡状態でのSOCに対する抵抗値の関係図である。電池平衡状態でのACインピーダンススペクトルの測定は、振幅電圧5mVで、測定周波数を100kHz〜0.01Hzとして行った。
図5に示すように、インピーダンス測定では、正極の抵抗変動が大きく、主に正極の過充電状態を検出することができることがわかった。