特許第6658145号(P6658145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6658145
(24)【登録日】2020年2月10日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
   B66B 29/00 20060101AFI20200220BHJP
   B66B 23/00 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
   B66B29/00 Z
   B66B23/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-51011(P2016-51011)
(22)【出願日】2016年3月15日
(65)【公開番号】特開2017-165528(P2017-165528A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2018年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(72)【発明者】
【氏名】中村 雅昭
【審査官】 加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−195222(JP,A)
【文献】 特開2003−146570(JP,A)
【文献】 特開平05−070076(JP,A)
【文献】 特開2010−064816(JP,A)
【文献】 特開平07−206355(JP,A)
【文献】 特開平04−189295(JP,A)
【文献】 特開2007−320706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00− 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端ループ状に連結された複数の踏段を駆動するモータと、
前記モータに駆動用の交流電力を供給するインバータと、
前記モータで発生した回生電力により前記インバータにおいて発生する直流電力を消費する制動抵抗器と、
前記インバータの動作を制御する制御装置と、を備え、
前記制動抵抗器は、屋外にピット状に形成された所定機械室に配置され、
前記所定機械室の浸水を検知する浸水検知センサが設けられ、
前記制御装置は、前記浸水検知センサで前記所定機械室の浸水が検知された場合、前記インバータの電源入力回路を開放させ、
前記所定機械室の上面に、開口を有する床板が配置され、
前記制動抵抗器は、放熱用の開口を有する制動抵抗器盤に収容され、
前記制動抵抗器盤は、前記所定機械室を形成するピットの底面よりも前記床板に近接するように、前記所定機械室内の上部に配置される、
乗客コンベア。
【請求項2】
前記制御装置は、前記浸水検知センサで前記所定機械室の浸水が検知された場合、前記モータを緩やかに停止させた後、前記電源入力回路を開放させる、
請求項1記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記浸水検知センサは、前記所定機械室における浸水の高さが、前記制動抵抗器の端子が配置された高さに達する前に、浸水を検知する、
請求項1または請求項2に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータを有する乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜3は、エスカレータの下部機械室(下部ピット)の浸水を検出する浸水検出手段を備えた乗客コンベアを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−195222号公報
【特許文献2】特開平7−206355号公報
【特許文献3】特許第5665099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乗客コンベアを駆動するモータにインバータから電力を供給する場合がある。この場合、回生電力からインバータを保護するために制動抵抗器を設ける場合がある。
【0005】
本発明は、制動抵抗器が配置される機械室の浸水時における安全を適切に確保可能な乗客コンベアを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の乗客コンベアは、
無端ループ状に連結された複数の踏段を駆動するモータと、
モータに駆動用の交流電力を供給するインバータと、
モータで発生した回生電力によりインバータにおいて発生する直流電力を消費する制動抵抗器と、
インバータの動作を制御する制御装置と、を備える。
制動抵抗器は、屋外にピット状に形成された所定機械室に配置されている。
所定機械室の浸水を検知する浸水検知センサが設けられている。
制御装置は、浸水検知センサで、所定機械室の浸水が検知された場合、インバータの電源入力回路を開放させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、制動抵抗器が配置された所定機械室において浸水が発生した場合、インバータの電源入力回路が開放される。そのため、エスカレータの運転が停止し、制動抵抗器に直流電圧が印加されなくなる。これにより、所定機械室に制動抵抗器を配置しつつ、所定機械室の浸水時における安全を適切に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1におけるエスカレータの概略側面図である。
図2】実施形態1におけるエスカレータの電気的構成を示す図である。
図3】実施形態1におけるエスカレータの下部機械室の浸水検知センサ及び制動抵抗器盤の配置や構造の概略を示す側面図である。
図4】実施形態1におけるエスカレータの制御装置による制御を説明するフローチャートである。
図5】実施形態1におけるインバータのコントローラによる制御を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(発明の背景)
発明が解決しようとする課題の欄において説明したように、乗客コンベアを駆動するモータにはインバータから電力を供給する場合がある。この場合、回生電力からインバータを保護するために制動抵抗器を設けることがある。ここで、制動抵抗器は通電時に熱を発生するため放熱環境のよい場所に配置することが好ましい。例えば、一般に上側の階床の上部機械室には制御装置が配置されるため、制御装置への熱影響や制動抵抗器の放熱性を考慮して、制動抵抗器は下側の階床の下部機械室に配置することが好ましい。しかし、エスカレータが屋外に配置され、下部機械室が例えばピット状の構造である場合には、大雨等の際に下部機械室の浸水が発生し、制動抵抗器の漏電等が発生する可能性がある。しかし、制動抵抗器には直流電圧が印加されているため、一般的な漏電遮断器等では制動抵抗器への直流電力の供給を遮断できない。そのため、従来においては、浸水可能性がある屋外の機械室には制動抵抗器を配置することが困難であった。これに鑑み、本発明は、制動抵抗器を屋外の機械室に配置しつつ、浸水時における安全を適切に確保可能な乗客コンベアを提供する。なお、実施形態1では、本発明における屋外の所定機械室が下階床側の下部機械室である場合について説明するが、本発明において、所定機械室とは、屋外にピット状に形成された機械室であり、したがって、上階床側の上部機械室が屋外にピット状に形成されている場合には、上階床側の上部機械室が所定機械室となる場合がある。
【0010】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
(実施形態1)
1.構成
図1は、実施形態1におけるエスカレータの概略側面図である。本実施形態におけるエスカレータ1は、エスカレータ本体10と、モータ20と、インバータ30と、制御盤40と、受電盤50と、浸水検知センサ60と、制動抵抗器盤70とを有する。
【0012】
エスカレータ本体10は、建築物の2つの階床F1、F2間に架け渡された状態で設置されている。エスカレータ本体10は、無端状に連結された複数の踏段11と、無端状の移動手摺12(ハンドレール)と、モータ20の動力を踏段11及び移動手摺12に伝達する動力伝達機構(不図示)とを有する。複数の踏段11及び移動手摺12は、モータ20の動力により循環走行する。
【0013】
モータ20と、インバータ30と、制御盤40と、受電盤50は、上側の階床F1の床面下に設けられた上部機械室R1に配置されている。
【0014】
浸水検知センサ60と、制動抵抗器盤70は、下側の階床F2の床面下に設けられた下部機械室R2に配置されている。
【0015】
下部機械室R2は、屋外の床面を掘り下げて形成されたピットPの空間を利用して構成されている。ピットPの上部には、床板Cvが配置されている。また、ピットPの底面には床板Cvの開口等からピットP内に流れ込む雨水等を排水するための水抜き孔Hwが形成されている。しかし、水抜き孔Hwが落ち葉等で覆われて排水性が低下し、ピットP内が浸水する可能性がある。本発明は、このような浸水に対処するためのものである。
【0016】
図2は、実施形態1におけるエスカレータの電気的構成を示す図である。受電盤50は、外部から三相交流電力(R,S,T)を入力するインタフェースである。受電盤50内には、配線用遮断器51が収容されている。
【0017】
配線用遮断器51は、過電流の発生時等にトリップし、一次側と二次側を遮断する。
【0018】
インバータ30は、受電盤50から三相交流電力(R,S,T)を入力し、入力した三相交流電力(R,S,T)とは電圧及び周波数が異なる三相交流電力(U,V,W)に変換してモータ20に出力する。インバータ30は、コントローラ31と、電磁開閉器35と、コンバータ部36と、コンデンサ37と、インバータ部38と、半導体スイッチ39とを備える。コンデンサ37とインバータ部38とを接続する配線には、半導体スイッチ39を介して制動抵抗器71が接続されている。
【0019】
コントローラ31は、インバータ30の動作を制御する。コントローラ31は、例えば、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)を利用して構成されている。プログラマブルロジックコントローラ(PLC)は、制御部や記憶部を備える。記憶部は、プログラムや種々のデータを格納している。プログラムには、本実施形態のコントローラ31の各種機能を実現するためのプログラムが含まれている。制御部は、記憶部からプログラム及びデータを読み出し、読み出したプログラム及びデータに基づく演算処理を行う。これにより、コントローラ31における各種の機能が実現される。
【0020】
電磁開閉器35は、コントローラ31の制御に基づいて開閉する。電磁開閉器35は、例えば、電磁接触器と制御コイルとにより構成される。電磁接触器は、コントローラ31から制御コイルにON信号が入力されると回路を閉じ、コントローラ31から制御コイルにOFF信号が入力されると回路を開く。
【0021】
コンバータ部36は、入力した三相交流電力(R,S,T)を整流して直流電力に変換する。
【0022】
コンデンサ37は、コンバータ部36から出力される直流電力を平滑する。
【0023】
インバータ部38は、コンデンサ37で平滑された直流電力を三相交流電力(U,V,W)に変換する。インバータ部38は、例えば、複数のトランジスタ等で構成されるPWM制御型のインバータにより構成され、コントローラ31による複数のトランジスタに対するON/OFF制御に応じて、電圧及び周波数を変化させた三相交流電力(U,V,W)を出力することができる。
【0024】
半導体スイッチ39は、トランジスタ等で構成され、コントローラ31により回生電力の発生時にON状態に制御され、制動抵抗器71へ回生電力を通電させる。
【0025】
制動抵抗器盤70は、制動抵抗器71を収容する。
【0026】
制動抵抗器71は、例えばセメント抵抗器により構成されている。制動抵抗器71は、通電時、モータ20で発生した回生電力を消費する。
【0027】
制御盤40は、制御装置41を収容する。
【0028】
制御装置41は、エスカレータ1の動作を制御する。例えば、制御装置41は、インバータ30を制御することでモータ20に通電する電力を制御し、これにより、エスカレータ1の起動、停止、走行速度等を制御する。制御装置41は、例えば、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)を利用して構成されている。プログラマブルロジックコントローラ(PLC)は、制御部や記憶部を備える。記憶部は、プログラムや種々のデータを格納している。プログラムには、本実施形態の制御装置の各種機能を実現するためのプログラムが含まれている。制御部は、記憶部からプログラム及びデータを読み出し、読み出したプログラム及びデータに基づく演算処理を行う。これにより、制御装置41における各種の機能が実現される。
【0029】
図3は、実施形態1におけるエスカレータ1の下部機械室R2の浸水検知センサ60及び制動抵抗器盤70の配置や構造の概略を示す側面図である。
【0030】
制動抵抗器盤70は、エスカレータ本体10の構造体であるトラス81に固定されている。制動抵抗器盤70は、制動抵抗器71で発生した熱を放出するためのスリット状の複数の開口を有する(図示せず)。
【0031】
制動抵抗器71は、インバータ30側に一端が接続された電源線73の他端が接続される接続バー71aを有している。電源線73は、被覆ケーブルにより構成されている。接続バー71aと電源線73との接続部は、防水のため、熱収縮チューブ等の被覆部材72により被覆されている。
【0032】
浸水検知センサ60は、エスカレータ本体10の構造体であるトラス81に、ブラケット82を介して固定されている。浸水検知センサ60は、ピットPの底面からの浸水の高さが高さLvになったときに浸水検知信号を出力する。この高さは、制動抵抗器盤70の設置高さよりも十分に低い位置に設定されている。浸水検知センサ60の検知信号を伝送する制御線61(図2参照)は、防水のためパイプ83内に収容されている。パイプ83は、例えば金属製パイプにより構成される。
【0033】
2.動作
制御装置41による制御及びインバータ30の動作についてフローチャートを参照して説明する。
【0034】
図4は、制御装置41による制御を説明するフローチャートである。
【0035】
制御装置41は、エスカレータ1の運転中、浸水検知センサ60から浸水検知信号を受信したか否かを判断する(S11)。
【0036】
浸水検知信号を受信していない場合(S11でNO)、制御装置41は、本ステップS11の判断を再度実行する。
【0037】
浸水検知信号を受信した場合(S11でYES)、制御装置41は、インバータ30のコントローラ31にOFF信号を出力する(S12)。
【0038】
図5は、インバータ30のコントローラ31による制御を説明するフローチャートである。
【0039】
インバータ30のコントローラ31は、通常動作中、制御装置41からOFF信号を受信したか否かを判断する(S21)。
【0040】
OFF信号を受信していない場合(S21でNO)、インバータ30のコントローラ31は、本ステップS21の判断を再度実行する。
【0041】
OFF信号を受信した場合(S21でYES)、インバータ30のコントローラ31は、モータ20の回転数が漸減して(所定の低下態様(例えば所定の低下率)で緩やかに低下して)停止するように、インバータ部38を制御する(S22)。例えば、インバータ30のコントローラ31は、インバータ部38の複数のトランジスタのON/OFF周期やON/OFF期間を制御することで、モータ20の回転数が漸減するように、インバータ部38から出力する三相交流電力(U,V,W)の周波数や電圧を低下させる。これにより、モータ20は、回転数が漸減して停止する。なお、所定の低下率は、エスカレータ1の停止の際に、エスカレータ1に乗車中の利用者に加わる衝撃が所定程度以下となる低下率である。
【0042】
インバータ30のコントローラ31は、OFF信号を受信してから所定時間経過したときに、電磁開閉器35を開放させる(S23)。所定時間は、モータ20が停止するまでの時間よりも長い時間に設定されている。
【0043】
3.本実施形態の作用
エスカレータ1の運転中に、浸水検知センサ60により所定レベルLvの高さの浸水が検知されると、モータ20は、回転数が所定の低下率で低下して停止する。つまり、エスカレータ1が緩やかに停止する。その後、インバータ30の電源入力回路である電磁開閉器35が開放され、これにより、受電盤50からインバータ30への電力供給が遮断されるとともに、制動抵抗器71への直流電力の供給が遮断される。そのため、万一、浸水によるピットP内の水が、所定レベルLvを超えて、制動抵抗器71の高さ位置にまで増水(上昇)した場合でも、インバータ30の電源入力回路である電磁開閉器35が既に開放されているため、制動抵抗器71での漏電の発生を未然に防止することができる。
【0044】
さらに、本実施形態では、上記のように浸水時における漏電等の発生を未然に防止することができるため、制動抵抗器71を、上部機械室R1よりも冷却性の高い下部機械室R2に配置することができる。
【0045】
従来においては、屋内側の階床の機械室に制動抵抗器を配置することは発熱上の理由から困難であり、屋外側の階床の機械室に制動抵抗器を配置することは浸水上の理由から困難であった。また、その結果、従来のエスカレータのインバータでは、制動抵抗器方式でなく回生コンバータ方式が採用されることが多かった。しかし、回生コンバータ方式のインバータは、制動抵抗器方式のインバータよりもコストが高いため、エスカレータ全体としてのコストの上昇につながっていた。
【0046】
しかし、本実施形態では、制動抵抗器の浸水時の課題は前述のように解決されるため、屋外側の階床の機械室に制動抵抗器を配置することが可能となり、これにより、インバータのコスト及びエスカレータのコストを従来よりも低減できる。
【0047】
また、一方の階床が屋外側の階床である場合、屋外側の階床に制動抵抗器を配置することで、屋内側の階床に回生コンバータ用の盤等を設置する必要がなくなる。これにより、屋内側の階床の機械室スペースを省スペース化できる。
【0048】
(実施形態についてのまとめ)
(1)実施形態1におけるエスカレータ1(乗客コンベア)は、
無端ループ状に連結された複数の踏段11を駆動するモータ20と、
モータ20に駆動用の交流電力を供給するインバータ30と、
モータ20で発生した回生電力によりインバータ30において発生する直流電力を消費する制動抵抗器71と、
インバータ30の動作を制御する制御装置41(制御装置)と、を備える。
制動抵抗器71は、屋外にピット状に形成された下部機械室R2(所定機械室)に配置されている。
下部機械室R2(所定機械室)の浸水を検知する浸水検知センサ60が設けられている。
制御装置41(制御装置)は、浸水検知センサ60で、下部機械室R2(所定機械室)の浸水が検知された場合、インバータ30の電磁開閉器35(電源入力回路)を開放させる。
【0049】
これにより、制動抵抗器71が配置された下部機械室R2(所定機械室)において浸水が発生した場合、インバータ30の電磁開閉器35(電源入力回路)が開放される。そのため、エスカレータ1の運転が停止し、制動抵抗器71に直流電圧が印加されなくなる。これにより、下部機械室R2に制動抵抗器71を配置しつつ、下部機械室R2の浸水時における安全を適切に確保することができる。
【0050】
(2)実施形態1におけるエスカレータ1において、
制御装置41(制御装置)は、浸水検知センサ60で下部機械室R2(所定機械室)の浸水が検知された場合、モータ20を緩やかに停止させた後、電磁開閉器35(電源入力回路)を開放させる。
【0051】
これにより、エスカレータ1が緩やかに停止した後、インバータ30の電磁開閉器35が開放される。そのため、エスカレータ1の停止の際に、停止に伴う衝撃が発生しにくく、エスカレータ1に搭乗中の利用者の安全が十分に確保される。
【0052】
(3)実施形態1におけるエスカレータ1において、
浸水検知センサ60は、下部機械室R2(所定機械室)における浸水の高さが、制動抵抗器71の端子が配置された高さに達する前に、浸水を検知する。
【0053】
これにより、制動抵抗器71が漏電等を起こす前に確実にインバータ30の電磁開閉器35(電源入力回路)を開放させることができる。よって、浸水時における安全をより適切に確保することができる。
【0054】
(その他の実施形態)
前記実施形態では、乗客コンベアが、異なる階床間に斜めに掛け渡されたエスカレータ1である場合を説明した。しかし、本発明は、乗客コンベアが、一の階床において水平あるいは斜めに配置されたいわゆる動く歩道等の乗客コンベアである場合にも適用可能である。
【0055】
前記実施形態では、本発明における所定機械室が、下側の階床に設けられた下部機械室である場合を例示した。しかし、例えば地下1階と地上1階との間に掛け渡されたエスカレータにおいて地上1階が屋外である場合、所定機械室は、上側の階床に設けられた上部機械室とする。つまり、本発明における所定機械室は、上部機械室か下部機械室か等の配置位置を問わない、屋外にピット状に形成された機械室である。また、本発明における所定機械室は、乗客コンベア(エスカレータ)の乗降口の下方に設けられている必然性はなく、それ以外の位置に配置されていてもよい。
【0056】
前記実施形態では、制御装置41及びコントローラ31はプログラマブルロジックコントローラ(PLC)を利用して構成され、制御装置41及びコントローラ31における各機能は、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現されている。しかし、制御装置41及びコントローラ31における各機能は、ハードウェア(電子回路)のみにより実現されてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 エスカレータ
10 エスカレータ本体
11 踏段
12 移動手摺
20 モータ
30 インバータ
35 電磁開閉器
36 コンバータ部
37 コンデンサ
38 インバータ部
39 半導体スイッチ
40 制御盤
41 制御装置
50 受電盤
51 配線用遮断器
60 浸水検知センサ
61 制御線
70 制動抵抗器盤
71 制動抵抗器
71a 接続バー
72 被覆部材
73 電源線
81 トラス
82 ブラケット
83 パイプ
P ピット
R1 上部機械室
R2 下部機械室
図1
図2
図3
図4
図5