特許第6658192号(P6658192)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6658192電源装置及びこの電源装置を備えた照明装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6658192
(24)【登録日】2020年2月10日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】電源装置及びこの電源装置を備えた照明装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20200220BHJP
【FI】
   H02M3/155 B
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-62862(P2016-62862)
(22)【出願日】2016年3月25日
(65)【公開番号】特開2017-175893(P2017-175893A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2018年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】加藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 朋和
(72)【発明者】
【氏名】中島 啓道
(72)【発明者】
【氏名】清水 智章
(72)【発明者】
【氏名】小西 達也
(72)【発明者】
【氏名】大武 寛和
(72)【発明者】
【氏名】北村 紀之
(72)【発明者】
【氏名】石橋 久志
【審査官】 佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−155300(JP,A)
【文献】 特開2012−120289(JP,A)
【文献】 特開2014−099970(JP,A)
【文献】 特開2013−013288(JP,A)
【文献】 特開2009−189158(JP,A)
【文献】 特開2011−030391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源から供給される電圧から第1のスイッチング素子のスイッチング動作により第1の出力電圧を得る力率改善回路と;
前記第1の出力電圧の高電位に入力端が接続され、制御端へのスイッチング信号によりオン/オフする第2のスイッチング素子備え、前記第1の出力電圧を降圧する降圧チョッパと;
前記降圧チョッパでのチョッピングのために前記制御端に与えるスイッチング信号を生成する信号生成回路と;
前記力率改善回路に流れる電流を利用して前記信号生成回路の動作電力を生成する電力生成回路と;
前記第1の出力電圧を予め定められた目標電圧に近付けるように前記第1のスイッチング素子をフィードバック制御するものであり、前記フィードバック制御の応答速度を、前記力率改善回路が始動されてから前記降圧チョッパの出力電流が予め定められた基準電流以上となるまでの始動期間が終了した後は、第1の応答速度とし、前記始動期間では、前記第1の応答速度よりも早い第2の応答速度とする制御回路と;を具備し
前記信号生成回路はさらに、前記第1の出力電圧が前記目標電圧に達した後に前記降圧チョッパを起動するように前記スイッチング信号の生成を開始する、電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置と;
前記降圧チョッパで前記第1の出力電圧を降圧して得られた電圧により発光する発光素子と;を具備した照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電源装置及びこの電源装置を備えた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高調波改善と定電流特性を備えた電源装置を実現するため、PFC部と定電流制御部とを備えた電源装置、例えば外部から供給された電圧を力率改善機能を備えた昇圧チョッパで昇圧したのちに降圧チョッパで降圧して所望の電力を得る電源装置が知られている。
【0003】
降圧チョッパにおいては、チョッピングのためのスイッチング素子として、典型的には電界効果トランジスタ(FET:field-effect transistor)が用いられる。FETは、ゲートとソースとの間の電位差によりドレインとソースとの導通をオン/オフできるスイッチング素子である。
例えばスイッチング素子としてFETを用いた降圧チョッパにおいては、FETのソース電位がグランドに無いハイサイド構成が用いられることがある。この場合FETのソースの電位は不定となるため、ゲートに供給する電位に工夫が必要となる。
【0004】
電源装置の始動時には、まず昇圧チョッパの動作を開始し、その後に降圧チョッパの動作を開始する。そして降圧チョッパは、昇圧チョッパの動作に伴い得られる電圧を用いてスイッチング素子の制御端に供給するための電圧を生成する。このため、昇圧チョッパの動作状態によっては、スイッチング素子の制御端に供給するための電圧を生成するのに十分な電圧が得られない場合があり、このような場合には降圧チョッパの動作を正常に始動することができない恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−185450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、降圧チョッパ動作を確実に始動することが可能な電源装置及びそのような電源装置を備えた照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の電源装置は、力率改善回路、降圧チョッパ、信号生成回路、電力生成回路及び制御回路を備える。力率改善回路は、外部電源から供給される電圧から第1のスイッチング素子のスイッチング動作により第1の出力電圧を得る。降圧チョッパは、前記第1の出力電圧の高電位に入力端が接続され、制御端へのスイッチング信号によりオン/オフする第2のスイッチング素子備え、第1の出力電圧を降圧する。信号生成回路は、降圧チョッパでのチョッピングのために制御端に与えるスイッチング信号を生成する。電力生成回路は、力率改善回路に流れる電流を利用して信号生成回路の動作電力を生成する。制御回路は、第1の出力電圧を予め定められた目標電圧に近付けるように第1のスイッチング素子をフィードバック制御するものであり、フィードバック制御の応答速度を、力率改善回路が始動されてから降圧チョッパの出力電流が予め定められた基準電流以上となるまでの始動期間が終了した後は、第1の応答速度とし、始動期間では、第1の応答速度よりも早い第2の応答速度とする。信号生成回路はさらに、第1の出力電圧が目標電圧に達した後に降圧チョッパを起動するようにスイッチング信号の生成を開始する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、降圧チョッパ動作を確実に始動することが可能な電源装置及びそのような電源装置を備えた照明装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る照明装置の電気回路構成を示す図。
図2図1中の制御回路の要部構成を示すブロック図。
図3図1に示す照明装置の始動時における電圧VDC及び図2中の選択回路の動作の時間変化を表す図。
図4】一実施形態に係る異常監視動作の説明図。
図5】第2の実施形態に係る照明装置の電気回路構成を示す図。
図6図5中の制御回路の要部構成を示すブロック図。
図7図1に示す照明装置の始動時における電圧VDCの時間変化を表す図。
図8】第2の実施形態に係る照明装置における制御回路の要部構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、いくつかの実施の形態について図面を用いて説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
(構成)
図1は第1の実施形態に係る照明装置100の電気回路構成を示す図である。なお図1は、概略の回路構成を示していて、実際の回路構成で備える各種の要素の一部の図示を省略している。
【0012】
照明装置100は、光源ユニット1及び電源装置2を備える。光源ユニット1は、照明装置100の本体に対して着脱自在である。電源装置2は、上記本体に固定的に備えられている。
【0013】
光源ユニット1は、光源としての複数の発光ダイオード(LED:light emitting diode)D11と抵抗器R11とを備える。複数の発光ダイオードD11は直列に接続されている。抵抗器R11は、発光ダイオードD11の直列回路における電流出力端に接続されている。なお、発光ダイオードD11の数は任意である。発光ダイオードD11は、1つのみ設けられていてもよい。また、図1に示す様な発光ダイオードD11の直列回路が、複数並列に接続されていてもよい。発光ダイオードD11の直列回路における電流入力端及び電流出力端と、抵抗器R11の発光ダイオードD11に接続されていない端部とにはそれぞれ、電源装置2と接続するための端子T11,T12,T13が接続されている。なお光源ユニット1は光源として、発光ダイオードD11に代えて、例えば有機EL(electroluminescence)等の別の種類の発光デバイスを設けていてもよい。光源ユニット1を本体に対して着脱自在としているのは、光源ユニット1の交換を可能とするためである。光源ユニット1は、電源装置2に固定的に接続されていて、交換不可能となっていてもよい。
【0014】
電源装置2は、商用電源等の外部電源200からの電力供給を受けて、発光ダイオードD11を発光させるために光源ユニット1に供給する電力を生成する。電源装置2は、整流回路10、力率改善回路20、降圧チョッパ回路30、制御回路40、コンデンサC1,C2,C3,C4a,C4b,C5a,C5b,C6、抵抗器R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7a,R7b,R8,R9,R10及びダイオードD1,D2を含む。
【0015】
整流回路10の一対の入力端は、2つの端子T21,T22にそれぞれ接続されている。この2つの端子T21,T22には、商用電源等の外部電源200に接続された2本の電源線がそれぞれ結線される。これにより整流回路10の一対の入力端には、外部電源200から供給される交流電力が入力されている。整流回路10は、交流電力を整流し、これにより得られる直流電力を出力する。整流回路10の一対の出力端の間に整流回路10が出力する直流電力は、コンデンサC1により平滑化された上で力率改善回路20へと供給される。
【0016】
力率改善回路20は、供給された直流電力を力率改善のために昇圧する。力率改善回路20は、PFC(power factor correction)回路とも称される。力率改善回路20は、トランスTr21、第1のスイッチング素子Q21、電解コンデンサC21及び抵抗器R21を含む。
【0017】
トランスTr21は、一次側の1つのコイルL21及び二次側の2つのコイルL22,L23を備える。コイルL21の第1端は、整流回路10の出力端の1つとコンデンサC1の一端とに接続されている。コンデンサC1の他端は、主回路のグランド電位に接続されている。コイルL21の第2端には、第1のスイッチング素子Q21のドレインとダイオードD20のアノードが接続されており、ダイオードD20のカソードと電解コンデンサC21の第1端とが接続されている。第1のスイッチング素子Q21のソースは、制御回路40のCS端子に接続されるとともに、抵抗器R21を介してグランド電位に接続されている。電解コンデンサC21の第2端は、グランド電位に接続されている。第1のスイッチング素子Q21のゲートは、制御回路40のGD端子に接続されている。第1のスイッチング素子Q21としては、本実施形態ではFETを用いている。かくしてコイルL21、第1のスイッチング素子Q21、ダイオードD20及び電解コンデンサC21は、昇圧チョッパ回路を形成している。そしてコイルL21の第2端と電解コンデンサC21の第1端との接続点における電位と、グランド電位との電位差が、力率改善回路20の出力の電圧VDCとなる。当該電圧VDCは、降圧チョッパ回路30に供給されるとともに、制御回路40のVDC端子とLGND端子との間に供給される。
【0018】
コイルL22の一端は、抵抗器R1、コンデンサC2及びダイオードD1を直列接続して形成された整流回路を介して制御回路40のVB端子に接続されている。コイルL22の他端は、制御回路40のVS端子に接続されている。かくしてコイルL22は、コイルL21に生じる電流によりVS端子の電位を基準とした電圧を誘起し、当該電圧を制御回路40のVB端子とVS端子との間に供給する。
【0019】
コイルL23は、一端が抵抗R23を介して制御回路40のZCD端子に接続され、他端がグランド電位に接続されている。かくしてコイルL23は、コイルL21に生じる電流によりグランド電位を基準とした電圧を誘起し、当該電圧を制御回路40のZCD端子に供給する。
【0020】
抵抗器R2,R3は、整流回路10の出力端の1つとグランドとの間に直列接続されている。これにより抵抗器R2,R3は、整流回路10の出力端の電位とグランド電位との電位差、すなわち力率改善回路20へと供給される電圧を分圧する分圧回路を形成している。そして抵抗器R2と抵抗器R3との接続点は、制御回路40のMULT端子に接続されている。
【0021】
抵抗器R4,R5は、電解コンデンサC21の第1端と第2端との間に並列接続されている。これにより抵抗器R4,R5は、コイルL21の第2端の電位とグランド電位との電位差、すなわち力率改善回路20から降圧チョッパ回路30へと供給される電圧を分圧する分圧回路を形成している。そして抵抗器R4と抵抗器R5との接続点は、制御回路40のVFB端子に接続されている。
【0022】
ダイオードD2は、そのアノード及びカソードが、制御回路40のVcc端子及びVB端子にそれぞれ接続されている。かくしてダイオードD2は、制御回路40のVcc端子から出力される電流をVB端子に入力させるべく通過させる。また、ダイオードD2は、VS端子に対して逆流を阻止する。
【0023】
コンデンサC3は、制御回路40のVS端子とVB端子とにそれぞれ接続されている。コンデンサC3は、VB端子の電位がVS端子の電位よりも高いときに、抵抗器R1、コンデンサC2及びダイオードD1により形成された整流回路から出力される電圧及びVcc端子から出力される後述する電圧Vccにより充電される。
【0024】
降圧チョッパ回路30は、少なくとも第2のスイッチング素子Q31、コイルL31、ダイオードD31、コンデンサC31を含む。なお、L32はフィルタとして用いられるが無くてもよい。
【0025】
第2のスイッチング素子Q31としては、本実施形態ではFETを用いる。第2のスイッチング素子Q31のドレインは、力率改善回路20のコンデンサC21の第1端に接続されている。つまり第2のスイッチング素子Q31のドレインが、降圧チョッパ回路30の入力端に相当する。第2のスイッチング素子Q31の制御端であるゲートは、制御回路のHO端子に接続されている。第2のスイッチング素子Q31の出力端としてのソースは、コイルL31の一端に接続されている。コイルL31の他端は、降圧チョッパ回路の出力となる。また第2のスイッチング素子Q31のソースは、コイルL32とダイオードD31との直列回路を介してグランド電位に接続されている。ダイオードD31のアノードがグランド電位に接続される。かくして、第2のスイッチング素子Q31、コイルL31,L32、ダイオードD31及びコンデンサC31は、降圧チョッパを形成している。なお、抵抗器R31は、発光ダイオードD11を流れる電流の検出用であり、コンデンサC31と抵抗器R31との接続点に当該電流に応じた大きさの電位を生じさせる。コンデンサC31と抵抗器R31との接続点は、抵抗器R6を介して制御回路40のOCP端子に接続されている。
【0026】
コイルL31とコンデンサC31との接続点は、降圧チョッパの出力端に相当する。この接続点は、光源ユニットの端子T11に接触する端子T31に接続されている。
【0027】
抵抗器R32は、光源ユニットの端子T12,T13にそれぞれ接触する端子T32,T33に両端がそれぞれ接続されている。抵抗器R32と端子T32との接続点は、制御回路40のOP−端子に接続されている。端子T33は、抵抗器R31を介してグランド電位に接続されている。
【0028】
コンデンサC4aは、制御回路40のCOMP1端子とLGND端子との間に接続される。抵抗器R7a及びコンデンサC5aは、制御回路40のCOMP1端子とLGND端子との間に直列に接続される。
コンデンサC4bは、制御回路40のCOMP2端子とLGND端子との間に接続される。抵抗器R7b及びコンデンサC5bは、制御回路40のCOMP2端子とLGND端子との間に直列に接続される。
【0029】
抵抗器R8,R9は、コイルL31とLGND端子との間に直列に接続されている。コンデンサC6及び抵抗器R10は、コイルL31と、抵抗器R8と抵抗器R9との接続点との間に直列に接続されている。そして抵抗器R8,R9,R10の接続点は、制御回路40のABN端子に接続されている。抵抗器R8,R9は降圧チョッパ回路出力の電圧検出回路を構成し、コンデンサC6及び抵抗器R10は降圧チョッパ回路出力の電圧変化検出回路を構成する。
【0030】
図2は制御回路40の要部構成を示すブロック図である。
【0031】
制御回路40は、例えばIC(integrated circuit)回路として実現してもよいし、その構成の一部をICの外に設けてもよいし、すべての構成をアナログ回路で構成してもよい。制御回路40は、選択回路41、PFC制御回路42、点灯制御回路43、保護回路44、電源回路45、エラーアンプ46及び監視回路47を含む。ただし、制御回路40に含まれる各回路の一部又は全てを個別に構成してもよい。また、制御回路40に含まれる各回路で行われる処理の一部を、コンピュータを用いたソフトウェア処理により実現することもできる。
【0032】
制御回路40に含まれる各回路の機能を説明するのに先立ち、制御回路40が備える各端子のうちの入力機能を持つ端子について説明する。該当する端子は、MULT端子、ZCD端子、CS端子、VS端子、VB端子、VFB端子、VDC端子、OCP端子、COMP1端子、COMP2端子、OP−端子及びABN端子である。
【0033】
MULT端子は、力率改善回路20への入力電圧を監視するための端子である。
【0034】
ZCD端子の電位は、コイルL23に誘起される電圧に応じて変化する。そして、コイルL21に流れる電流によって誘起されるL23の電圧をZCD端子で検出することでコイルL21の電流がゼロになったことを検出する。
【0035】
CS端子の電位は、第1のスイッチング素子Q21のドレイン−ソース間に流れる電流に応じて変化する。つまりCS端子は、上記電流の大きさを監視するための端子である。
【0036】
VS端子の電位は、HO端子、VB端子の基準電位を定めるための端子である。
【0037】
VB端子は、HO端子に電圧を発生させるための電源用の端子であり、その電源はVcc端子からダイオードD2を介して供給される。また、VB端子にはコイルL22で発生した電圧を抵抗器R1、コンデンサC2及びダイオードD1を介して供給される。なお、Vcc端子から供給される電圧は、例えば降圧チョッパ回路30のコイルL31と磁気結合された図示しないコイル等で発生した電圧を元に供給される。
【0038】
VFB端子は、力率改善回路20の出力の電圧VDCに応じた電位となる。つまりVF端子は、電圧VDCの大きさを監視するための端子である。
【0039】
VDC端子は、電圧VDCを制御回路40の動作電圧として取り込むための端子である。
【0040】
OCP端子の電位は、抵抗器R31に流れる電流に応じた電位となる。抵抗器R31に流れる電流は、発光ダイオードD11を流れた電流である。つまりOCP端子は、発光ダイオードD11に供給された電流の大きさを監視するための端子であり、本実施形態では過電流保護のために使用する。
【0041】
COMP1端子は、後述するようにコンデンサC4a,C5aを充電する端子である。またCOMP1端子は、コンデンサC4a,C5aからの放電により生じる電圧を取り込む端子である。
【0042】
COMP2端子は、後述するようにコンデンサC4a,C5aを充電する端子である。またCOMP2端子は、コンデンサC4a,C5aからの放電により生じる電圧を取り込む端子である。
【0043】
OP−端子の電位は、端子T12と端子T13との間に発生する電位差に応じた電位となる。発光ダイオードD11の負荷に応じて抵抗器R11の大きさが設定されており、OP−の値が目標値に一致するように電源装置2の出力電流が制御される。なお、光源ユニット1の端子T12が端子T32と接触していない場合には、OP−端子には検出電圧が入力されなくなる。また、OP−端子の電位が一定時間目標値に一致しない場合は、電源装置2の異常が推定される。そこで本実施形態では、OP−端子は、光源ユニット1が正常に装着されているか否か、ならびに電源装置2の異常を監視するための端子として利用する。
【0044】
ABN端子は、降圧チョッパ回路30から光源ユニット1へと供給される電圧の変化量又は電位に応じた出力が入力される。上記変化量は、抵抗器R8,R9が形成する電圧検出回路としての分圧回路と、コンデンサC6及び抵抗器R10が形成する電圧変化検出回路としての微分回路とにより検出される。つまりABN端子は、降圧チョッパ回路30から光源ユニット1へと供給される電圧の一定時間当たりの変化量を監視するための端子である。
【0045】
さて、選択回路41は、電源回路45からの給電状態とOCP端子の電位とを監視し、これらに応じてCOMP1端子又はCOMP2端子を選択的にPFC制御回路42に接続する。
【0046】
PFC制御回路42は、MULT端子、ZCD端子、COMP1端子、COMP2端子、CS端子及びVFB端子のそれぞれの電位に基づき、第1のスイッチング素子Q21をオン/オフすることで自励発振制御を行う。この制御のための処理については、既存の処理を用いることができるので、その詳細な説明は省略する。第1のスイッチング信号は、例えば40〜50kHz程度の高周波信号となる。
【0047】
PFC制御回路42は、エラーアンプ42a、マルチプレクサ42b、コンパレータ42c及び信号生成回路42dを含む。エラーアンプ42aは、反転入力端がVFB端子に、また非反転入力端が電源回路45にそれぞれ接続されている。
【0048】
エラーアンプ42aは、電源回路45からの閾値電圧Vthの供給により非反転入力端に生じる電位に対するVFB端子の電位の差を算出し、出力端の電位をこの電位差に応じた電位とする。ただし、エラーアンプ42aの出力端には、選択回路41を介してCOMP1端子又はCOMP2端子が接続される。つまりエラーアンプ42aの出力端には、コンデンサC4a,C5a及び抵抗器R7aからなるRC回路又はコンデンサC4b,C5b及び抵抗器R7bからなるRC回路が接続される。このためエラーアンプ42aの出力端の電位は、接続されたRC回路の常数に応じて後述のように変化する。
【0049】
エラーアンプ42aの出力端は、マルチプレクサ42bの2つの入力端の一方にも接続されている。マルチプレクサ42bの他方の入力端には、MULT端子が接続されている。マルチプレクサ42bは、エラーアンプ42aの出力端の電位とMULT端子の電位とを乗算し、その乗算結果を出力端の電位とする。
【0050】
マルチプレクサ42bの出力端は、コンパレータ42cの非反転入力端に接続されている。コンパレータ42cの反転入力端は、CS端子に接続されている。コンパレータ42cは、マルチプレクサ42bの出力端の電位を基準値とし、この基準値に対してCS端子の電位が大きいか否かを表した信号を信号生成回路42dへと出力する。
【0051】
信号生成回路42dには、ZCD端子も接続されている。信号生成回路42dは、信号生成回路42dから与えられる信号に応じて定まるオンタイミングからZCD端子の電位により定まるオフタイミングまでの間に、GD端子を第1のスイッチング素子Q21をオンするための電位とする。信号生成回路42dは、上記のオフタイミングから上記のオンタイミングまでの間は、GD端子を第1のスイッチング素子Q21をオフするための電位とする。これにより、GD端子より第1のスイッチング信号が出力される。
【0052】
点灯制御回路43は、VB端子とVS端子との間の電圧を用いて、第2のスイッチング素子Q31をオン/オフするためのスイッチング信号(以下、第2のスイッチング信号と称する)を生成する。なお点灯制御回路43は、降圧チョッパ回路30におけるチョッピングに関して、OP−端子の電位がOP+の基準電位に一致するように、すなわち発光ダイオードD11に流れる電流を一定とするようなフィードバック制御を行うように第2のスイッチング信号を生成する。かくして点灯制御回路43は、信号生成回路に相当する。
【0053】
保護回路44は、通常はVDC端子を電源回路45に接続している。保護回路44は、監視回路47の制御のもとに、VDC端子と電源回路45との接続を遮断する。
【0054】
電源回路45は、制御回路40の立上げ時にVDC端子から取り込まれた電圧VDCを用いてドロッパ電源を生成する。電圧VDCを用いて生成されたドロッパ電源は立ち上げから一定時間、制御回路40内の各回路を動作させるための動作電圧、電圧Vcc及び閾値電圧Vthを供給する。また、電源回路45は図示しない任意の電源を電源装置2から確保するように構成されており、前記ドロッパ電源供給がタイムアウトした後は任意の電源から各回路を動作させるための動作電圧、電圧Vcc及び閾値電圧Vthを生成する。閾値電圧Vthは、エラーアンプ42aの非反転入力端に供給される。
【0055】
エラーアンプ46は、差動アンプであり、非反転入力端に基準値OP+が入力され、反転入力端子にはOP−端子が接続されている。エラーアンプ46は、基準値OP+に対するOP−端子の電位の差分に応じた大きさの電圧を出力する。エラーアンプ46の出力する電圧は、点灯制御回路43と監視回路47とに入力される。
【0056】
監視回路47は、エラーアンプ46から出力された電圧と、ABN端子の電位とに基づいて照明装置100の異常を監視する。監視回路47は、異常検出時には、GD端子からの出力を停止するように保護回路44を制御する。
【0057】
次に以上のように構成された照明装置100の動作について説明する。
【0058】
(定常的な動作状態における動作)
まず、定常的な動作状態における動作について説明する。
【0059】
定常的な動作状態において力率改善回路20は、位相補償を行いつつ、電圧VDCを予め定められた目標電圧とするように昇圧チョッピングする。これは、PFC制御回路42が生成する第1のスイッチング信号を、第1のスイッチング素子Q21のゲートに供給することにより実現される。PFC制御回路42は、MULT端子、ZCD端子、CS端子及びVFB端子の電位などに応じて第1のスイッチング信号を調整することにより、周知の自励発振方式による昇圧チョッピングの制御を行う。すなわちPFC制御回路42は、力率改善回路20へと入力される電圧の変化、コイルL21における電流の有無、第1のスイッチング素子Q21のドレイン−ソース間に流れる電流、さらには電圧VDCに応じた第1のスイッチング信号をGD端子から出力する。なお目標電圧は、例えば400Vに定められる。
【0060】
PFC制御回路42が生成した第1のスイッチング信号による第1のスイッチング素子Q21の制御は、電圧VDCの変化を加味したフィードバック制御を含む。これは、閾値電圧Vthに対する電圧VDCの差をエラーアンプ42aにより算出し、これを信号生成回路42dでのオンタイミングの決定に加味していることにより実現されている。
【0061】
定常時においては、選択回路41はCOMP1端子を選択している。つまり定常時においては、コンデンサC4a,C5a及び抵抗器R7aにより形成されたRC回路(以下、第1のRC回路と称する)がエラーアンプ42aの出力端に接続されている。このため、エラーアンプ42aから出力される電荷の一部は、第1のRC回路に出し入れされることになる。この結果、エラーアンプ42aの出力端の電位の変化は、VDC電圧の変化に比べて緩やかとなる。エラーアンプ42aから出力される電荷が第1のRC回路に出し入れされる比率により、上記のフィードバック制御の応答速度が変化する。また当該比率は、第1のRC回路の常数に応じて定まる。そして第1のRC回路の常数は、フィードバック制御による発振が生じないように、例えば照明装置100、電源装置2又は制御回路40の設計者などによって定められる。
【0062】
監視回路47は、後述する異常が生じていない状況においては、保護回路44を動作させていない。
【0063】
また定常的な動作状態において降圧チョッパ回路30は、力率改善回路20から供給される電圧を降圧しつつ、発光ダイオードD11に流れる電流が、発光ダイオードD11を適正な強度で発光させるための大きさで一定となるように降圧チョッピングする。これは、点灯制御回路43が生成する第2のスイッチング信号を、第2のスイッチング素子Q31のゲートに供給することにより実現される。点灯制御回路43は、発光ダイオードD11に流れる電流の大きさを、発光強度の設定値に応じた強度で発光ダイオードD11を発光させるための適切な大きさに近付けるように、第2のスイッチング信号の周波数及びデューティ比を調整する。
【0064】
このとき、点灯制御回路43を動作させるための電力は、ブートストラップ方式によって得られる。つまり、第2のスイッチング素子Q31がオン/オフを繰り返す中で第2のスイッチング素子Q31がオフとなると、コイルL31の回生電流が、コンデンサC31、抵抗器R31、ダイオードD31及びコイルL32を介して流れる。これにより、VS端子の電位がグランド電位付近まで低下する。このとき、Vcc端子はグランド電位を基準にVcc電圧を発生させており、Vcc端子から出力される電圧VccをVB端子に供給可能に構成されている。また、コイルL22から抵抗器R1、コンデンサC2及びダイオードD1を介して供給される電圧がVB端子に供給されており、Vcc端子から出力される電圧VccがVB端子に供給されないときには、当該電圧がVF端子に供給される。このように、常にVB端子に電源を供給できる。
【0065】
(始動時の動作)
次に照明装置100の始動時の動作について説明する。
【0066】
図3は照明装置100の始動時における電圧VDCと、電源回路45及び選択回路41の動作の時間変化を表す図である。
【0067】
照明装置100が動作していないとき、第1のスイッチング素子Q21及び第2のスイッチング素子Q31はいずれもオフ状態である。整流回路10及びコンデンサC1により得られた直流電力が力率改善回路20へと与えられるようになると、電圧VDCとしては、まずはその直流電力の電圧が表れる。この電圧VDCが電源回路45に供給されると、電源回路45一定時間ドロッパ電源を生成し、これにより制御回路40の他の各回路が始動する。
【0068】
選択回路41は、電源回路45から給電されていないときには、第1のRC回路を選択している。そして選択回路41は、図3のT1時点において電源回路45からの給電が開始されたことに応じて、コンデンサC4b,C5b及び抵抗器R7bにより形成されたRC回路(以下、第2のRC回路と称する)を選択する。第2のRC回路の常数は、フィードバック制御の応答速度が、選択回路41が第1のRC回路を選択しているときよりも早くなるように、例えば照明装置100、電源装置2又は制御回路40の設計者などによって定められる。
【0069】
このとき、降圧チョッパ回路30はまだ始動されていない。つまり、ブートストラップ動作は行われていない。しかしながら、第1のスイッチング素子Q21がオンである場合にコイルL21に電流が生じることで、コイルL21に電圧が誘起される。そしてこの電圧が、抵抗器R1、コンデンサC2及びダイオードD1により形成された整流回路で整流された上でVB端子に印加されることで、コンデンサC3が充電される。かくして、トランスTr21、抵抗器R1、コンデンサC2及びダイオードD1は、第1のスイッチング素子Q21への電流の流れを利用してコンデンサC3を充電する充電手段として機能している。
【0070】
力率改善回路20は、昇圧チョッピングを開始すると、電圧VDCを図3に示すように上昇させる。このとき、電圧VDCの変化方向は増加の一方向であるため、力率改善回路20のフィードバック制御に関する応答速度が上記のように早めてあるので、第1のRC回路に切り替わるT3までほとんど発振せずに目標電圧一定となる。
【0071】
力率改善回路20は、電圧VDCが目標電圧に一旦到達した後、T3以降は電圧VDCの低下と上昇とを繰り返す状態に移行する。このため、T1からT3までは電圧VDCの変化に高速で追従して昇圧チョッピングの周波数及びデューティ比が変更されることとなり、オーバーシュートは抑制される。例えば、目標電圧値に対して所定割合以上の電圧値に到達させることなくVDCの電圧を目標電圧に近づけることができる。
【0072】
さて点灯制御回路43は、電圧VDCにオーバーシュートが生じた少し後もしくは目標電圧に到達した後から動作を開始する。点灯制御回路43は、図2の例ではT2時点から動作を開始している。
【0073】
このときには降圧チョッパ回路30は動作を停止しているから、第2のスイッチング素子Q31はオフ状態であり、回生電流も生じていない。このため、第2のスイッチング素子Q31のソースの電位、すなわちVS端子の電位は、不定となっている。つまり第2のスイッチング素子Q31は、当該不定の電位に対して規定の電位差を持つ電位をゲートに生じさせなければ、オンすることができない。
【0074】
しかしながらこのとき、VB端子には、電圧VccにコイルL22から供給される電圧を足し合わせた電圧、又は電圧VccにコンデンサC3の端子間電圧を足し合わせた電圧が常に入力されている。つまり、電圧Vccよりも大きな電圧がVB端子に常に入力されている。したがって点灯制御回路43は、VB端子とVS端子との間の電圧を用いることで、HO端子の電位を、不定の電位に対して規定の電位差を持つ電位とすることができ、第2のスイッチング素子Q31をオンすることができる。かくして、電源回路45と、トランスTr21、抵抗器R1、コンデンサC2、ダイオードD1及びコンデンサC3により形成された回路とにより、力率改善回路20の出力電圧及びコンデンサC3が蓄えた電荷から点灯制御回路43の動作電力を生成する電力生成回路が形成されていることになる。
【0075】
降圧チョッパ回路30は、このようにしてチョッピング動作を開始したならば、以降はブートストラップ動作によってチョッピング動作を継続する。これにより、降圧チョッパ回路30から発光ダイオードD11へと電圧が印加されるようになり、発光ダイオードD11に電流、いわゆる負荷電流が生じる。負荷電流は、図3に示すように増加し、降圧チョッパ回路30による定電流制御が安定すると、一定となる。
【0076】
選択回路41は、OCP端子の電位に基づいて負荷電流の大きさを監視し、予め定められた閾値電流以上となったならば、第1のRC回路を選択するように切り換わる。つまり選択回路41は、図3の例ではT3時点において、選択する回路を第2のRC回路から第1のRC回路に切り換わる。これにより、電源装置2は、前述した定常時の動作に移行する。
【0077】
電圧VDCが目標電圧に到達してから選択回路41が上記のように切り換わるまでの間は、力率改善回路20のフィードバック制御に関する応答速度が早められたままで、電圧VDCが上昇又は低下させられる。しかしながら当該期間は、フィードバック制御による発振が生じるほどに長くはない。従って、フィードバック制御による発振は生じない。
【0078】
さて、始動時においても、力率改善回路20のフィードバック制御に関する応答速度を定常時と同じとした場合は、電圧VDCの急激な変化に追従できずに、電圧VDCには図3に破線で示すように大きなオーバーシュートが生じる。そしてこれに対して従来は、第1のスイッチング素子Q21をオフとすることで、オーバーシュートを抑制することが行われていた。
【0079】
しかしながら、第1のスイッチング素子Q21がオフであると、コンデンサC3を充電することができず、降圧チョッパ回路30を始動するタイミングに、そのために必要な電力を点灯制御回路43へと供給できない恐れがあった。
【0080】
これに対して電源装置2によれば、力率改善回路20でのチョッピングを継続したままでオーバーシュートを抑圧することが可能であるから、降圧チョッパ回路30を始動するタイミングにおいては、そのために必要な電力を点灯制御回路43へと確実に供給することができる。つまり、降圧チョッパ回路30を確実に始動させることが可能となる。
【0081】
(異常監視動作)
監視回路47は、ABN端子の電位を監視する。ABN端子の電圧は前述したように、降圧チョッパ回路30から光源ユニット1へと供給される電圧の一定時間当たりの変化量又は電圧値を表す。そして監視回路47は、当該変化量が予め定められた規定量以上となった場合に、異常と判定する。例えば、監視回路47は、負荷が脱落した場合等、降圧チョッパ回路30から光源ユニット1へと供給される電圧が急峻に変動した場合に異常と判定する。また、ABN端子の電圧が所定の電圧値以上になったときも異常と判定する。つまり、図4に示すように、縦軸に時間、縦軸に降圧チョッパ回路30の出力電圧値をとったときに、電圧が閾値Vth1以上又は傾きVth2以上の領域(図中斜線で示す領域)を異常と判定する。
【0082】
監視回路47は、エラーアンプ46が出力する電圧を監視する。エラーアンプ46は前述したように、基準値OP+に対するOP−端子の電位の差分に応じた大きさの電圧を出力する。そしてOP−端子の電位は、光源ユニット1が正しく装着されている場合には発光ダイオードD11による負荷の大きさに応じた電位であり、光源ユニット1が正しく装着されていない場合には検出電圧が入力されない。つまり、エラーアンプ46が出力する電圧は、OP−端子の電位がOP+端子よりも大きい場合はLowとなり、光源ユニット1が正しく装着されていない場合に最大(High)となる。そこで監視回路47は、エラーアンプ46が出力する電圧が予め定められた規定電圧以上となった場合、HighまたはLow状態が一定時間継続した場合に、異常と判定する。例えば、highが継続する場合は、光源ユニット1が正しく装着されていない場合や、OP−端子への入力が欠損していることが想定される。また、Lowが継続する場合は、降圧チョッパ回路30の第2のスイッチング素子Q31の故障が推定される。従って監視回路47は、これらを異常と判定する。
【0083】
監視回路47は、異常と判定した場合には、保護回路44を動作させて電源回路45への電圧VDCの供給を遮断する。これにより、電源回路45から制御回路40内の各部への動作電圧の供給が停止され、力率改善回路20及び降圧チョッパ回路30の動作も停止される。
【0084】
(第2の実施形態)
図5は第2の実施形態に係る照明装置300の電気回路構成を示す図である。なお図5は、概略の回路構成を示していて、実際の回路構成で備える各種の要素の一部の図示を省略している。また図5においては、図1に示される要素と同一の要素に対しては同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0085】
照明装置300は、光源ユニット1及び電源装置3を備える。つまり照明装置300は、照明装置100における電源装置2に代えて電源装置3を備えたものである。
電源装置3は、整流回路10、力率改善回路20、降圧チョッパ回路30、制御回路50、コンデンサC1,C2,C3,C4a,C5a,C6、抵抗器R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7a,R8,R9,R10及びダイオードD1,D2を含む。つまり電源装置3は、電源装置2における制御回路40に変えて制御回路50を備える。また電源装置3は、コンデンサC4b,C5b及び抵抗器R7bにより形成されたRC回路を設けず、コンデンサC4a,C5a及び抵抗器R7aにより形成された1つのRC回路を備える。
【0086】
図6は制御回路50の要部構成を示すブロック図である。図6においては、図2に示される要素と同一の要素に対しては同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0087】
制御回路50は、PFC制御回路42、点灯制御回路43、保護回路44、電源回路45、エラーアンプ46、監視回路47及び微分回路51を含む。つまり、制御回路50は、制御回路40における選択回路41を取り除き、コンデンサC4a,C5a及び抵抗器R7aから形成されたRC回路を、エラーアンプ42aの出力端に直結している。また、追加して微分回路51を設けている。
【0088】
微分回路51は、電源回路45が出力するVcc端子とエラーアンプ42aの反転入力端との間に設けられている。微分回路51は、Vcc端子の電位の微分値をエラーアンプ42aの反転入力端の電位に加算する。
【0089】
次に以上のように構成された電源装置3の動作について説明する。
電源装置3の動作が電源装置2の動作と異なるのは、始動時についてである。そこでここでは、始動時の動作の相違点のみを説明する。
【0090】
電源装置3の始動時には、電源回路45が電圧Vccの出力を開始することにより、Vcc端子の電位が急激に上昇する。その後、Vcc端子の電位は安定する。このため、微分回路51で得られる微分値は、始動直後に大きな値となり、ある程度の時間が経過した後にほぼゼロとなる。
【0091】
電圧VDCを抵抗器R4,R5により分圧して得られる電位に、上記の微分値が加算された電位がエラーアンプ42aの反転入力端の電位となるから、当該電位は電源装置3の始動時には、電圧VDCに応じた本来の電位よりも大きな値となる。この結果、始動時においてエラーアンプ42aでは、電圧VDCと目標電圧との差が実際よりも小さいと認識されることになる。そしてこれがPFC制御回路42による力率改善回路20のフィードバック制御に加味されることにより、電圧VDCの立ち上がりは例えば図7に示すように緩やかとなり、オーバーシュートが抑制される。これにより電源装置3によっても、第1の実施形態と同様に、降圧チョッパ回路30を確実に始動させることが可能となる。
【0092】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る照明装置は、第2の実施形態の照明装置300における制御回路50に代えて制御回路60を備えた点で第2の実施形態と異なり、その他は第2の実施形態と同様である。このため、制御回路60についてのみ説明する。
図8は制御回路60の要部構成を示すブロック図である。図8においては、図2及び図6に示される要素と同一の要素に対しては同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0093】
制御回路60は、PFC制御回路42、点灯制御回路43、保護回路44、電源回路45、エラーアンプ46、監視回路47及び積分回路61を含む。つまり、制御回路60は、制御回路50における微分回路51を取り除き、追加して積分回路61を設けている。
【0094】
積分回路61は、エラーアンプ42aの非反転入力端の電位を、電源回路45が出力する閾値電圧Vthの積分値に応じた電位とする。
これにより積分回路61は、電源回路45が始動して閾値電圧Vthを出力するようになると、エラーアンプ42aの非反転入力端の電位を徐々に上昇させ、やがて閾値電圧Vthに応じた電位に安定させる。この結果、始動時においてエラーアンプ42aでは、電圧VDCと目標電圧との差が実際よりも小さいと認識されることになる。そしてこれがPFC制御回路42による力率改善回路20のフィードバック制御に加味されることにより、電圧VDCの立ち上がりは第2の実施形態と同様に緩やかとなり、オーバーシュートが抑制される。これにより第3の実施形態の電源装置によっても、第1の実施形態と同様に、降圧チョッパ回路30を確実に始動させることが可能となる。このように、第1の目標電圧に対して、第1の目標電圧よりも小さい第2の電圧を設定することでーバーシュートを抑制することができる。なお、第2の目標電圧としては時間ごとに滑らかに第1の目標電圧に変化するものであってもよいし、所定値から第1の目標電圧に向かって段階的に変化するものであってもよい。
【0095】
この実施形態は、次のような種々の変形実施が可能である。
【0096】
コンデンサC3は、ブートストラップ動作のためと、降圧チョッパ回路30の始動のためとで共用としているが、それぞれの用途に別々のコンデンサを備えてもよい。また、降圧チョッパ回路30のスイッチングにブートストラップ方式を用いなくてもよい。
【0097】
電源装置2は、光源ユニット1とは別の種類の負荷に対して電力供給するために用いられてもよい。つまり電源装置2は、照明装置100とは別の種類の装置に組み込まれてもよいし、独立した装置として実現されてもよい。
【0098】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1] 外部電源から供給される電圧をスイッチング素子のスイッチング動作により第1の出力電圧を得る力率改善回路と;
制御端とへのスイッチング信号によりオン/オフする第2のスイッチング素子として備え、前記第1の出力電圧を降圧する降圧チョッパと;
前記降圧チョッパでのチョッピングのために前記制御端に与えるスイッチング信号を生成する信号生成回路と;
前記力率改善回路に流れる電流を利用して前記信号生成回路の動作電力を生成する電力生成回路と;
前記第1の出力電圧を予め定められた目標電圧に近付けるように前記第1のスイッチング素子をフィードバック制御するものであり、前記フィードバック制御の応答速度を、前記昇圧チョッパが始動されてから予め定めた始動期間が終了した後は、第1の応答速度とし、前記始動期間では、前記第1の応答速度よりも早い第2の応答速度とする制御回路と;
を具備した電源装置。
[付記2] 前記制御回路は、前記昇圧チョッパが始動されてから、前記降圧チョッパの出力電流が予め定められた基準電流以上となるまでを前記始動期間とする付記1に記載の電源装置。
[付記3] 外部電源から供給される電圧をスイッチング素子のスイッチング動作により第1の出力電圧を得る力率改善回路と;
制御端へのスイッチング信号によりオン/オフする第2のスイッチング素子として備え、前記第1の出力電圧を降圧する降圧チョッパと;
前記降圧チョッパでのチョッピングのために前記制御端に与えるスイッチング信号を生成する信号生成回路と;
前記力率改善回路に流れる電流を利用して前記信号生成回路の動作電力を生成する電力生成回路と;
前記第1の出力電圧の大きさを検出する検出手段と、
前記検出手段による検出値を予め定められた目標値に近付けるように前記第1のスイッチング素子をフィードバック制御する制御回路と;
前記昇圧チョッパの始動時における予め定められた始動期間において、前記検出値が前記目標値に対して実際よりも大きく認識するように前記制御回路を調整する調整手段と;を具備した電源装置。
[付記4] 前記調整手段は、前記始動期間には、前記検出手段により検出された検出値よりも大きな値を前記検出値として前記制御回路に与えることで前記制御回路を調整する付記3に記載の電源装置。
[付記5] 前記調整手段は、前記始動期間の終了後には、前記目標値を前記第1の出力電圧の目標電圧に応じて予め定められた第1の目標値とし、前記始動期間には、前記第1の目標値よりも小さな値として予め設定された第2の目標値とする付記3に記載の電源装置。
[付記6] 付記1−付記5のいずれか1項に記載の電源装置と;
前記降圧チョッパで前記第1の出力電圧を降圧して得られた電圧により発光する発光素子と;
を具備した照明装置。
【符号の説明】
【0099】
1…光源ユニット、2…電源装置、10…整流回路、20…力率改善回路、30…降圧チョッパ回路、40,50,60…制御回路、41…選択回路、42…PFC制御回路、42a…エラーアンプ、42b…マルチプレクサ、42c…コンパレータ、42d…信号生成回路、43…点灯制御回路、44…保護回路、45…電源回路、46…エラーアンプ、47…監視回路、51…微分回路、61…積分回路、100,300…照明装置、200…外部電源、C1,C2,C3,C4a,C4b,C5a,C5b,C6,C31…コンデンサ、C21…電解コンデンサ、D1,D2,D31…ダイオード、D11…発光ダイオード、L21,L22,L23,L31…コイル、Q21…第1のスイッチング素子、Q31…第2のスイッチング素子、R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7a,R7b,R8,R9,R10,R11,R21,R31,R32…抵抗器、Tr21…トランス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8