(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スリーブの外周面において、前記第1のポート及び前記第2のポートのうちの前記底部に近い方の前記ポートと、前記スリーブの前記解放口の側の端部と、の間にスリーブ外シール部材が設けられる請求項5に記載の蓄圧装置の開閉装置。
前記ハウジングは有底の筒形状で、底部側に設けられた前記アキュムレータ本体を収容するアキュムレータ収容部と、開口部と、前記アキュムレータ本体の圧力室及び前記開口部の間に設けられた内外を貫通する貫通孔と、を有し、
前記収容部は、前記ハウジングの底部側と開口部の側とにおいて、外周面を前記ハウジングの内周面に密着して設けられ、
前記ドレン油路の排出口は、前記収容部と前記ハウジングとの間に形成される隙間に開口し、前記ドレン油路の排出口と前記隙間と前記貫通孔とが連通し、
前記貫通孔は、前記貯留部の油面の傾斜角度が所定範囲内である場合に、前記貯留部に貯留された油中に位置するように配置される請求項7に記載の蓄圧装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に沿って本実施の形態に係る蓄圧装置について、
図1〜
図7に基づいて説明する。本実施の形態では、蓄圧装置1は、車両用の自動変速機に搭載された場合について説明している。また、本実施の形態の車両は、アイドリングストップ機能が搭載されたものとしている。即ち、信号待ち等で車両が走行レンジのまま停止又は減速するときにはエンジンへの燃料供給が停止され、車両が走行を再開するときにはエンジンが再始動される。
【0012】
車両に搭載される自動変速機のミッションケース2には、エンジンの回転を変速して車輪へと伝達する不図示の変速機構や、エンジンの回転を利用してバルブボディ(油圧制御部)3に油圧を供給する不図示のオイルポンプなどが設けられている。
図1に示すように、本実施の形態のミッションケース2の下部には、バルブボディ3及び蓄圧装置1が配置されている。蓄圧装置1及びバルブボディ3は、並んで配置され、ミッションケース2の下側に取付けられるオイルパン4(
図7(a)参照)により下方から覆われている。オイルポンプは、オイルパン4に貯留された油を吸引し、後述するアキュムレータ本体20(
図3参照)やバルブボディ3に油圧を供給する。
【0013】
蓄圧装置1は、
図1乃至
図3に示すように、略円筒形状で有底のハウジング10と、アキュムレータ本体20と、開閉装置30とを備えている。尚、以下の説明において、ハウジング10の中心軸C1の軸方向を「軸方向」とする。また、ハウジング10に対して開閉装置30が配置される側(
図1の上側、
図3の右側)を「頭部側」とし、その軸方向反対側を「底部側」とする。
【0014】
ハウジング10は中心軸C1を中心とする有底の円筒形状で、中央に開口を有する底部11a側に設けられたアキュムレータ本体20を収容するボディ(アキュムレータ収容部)11と、底部11aとは軸方向反対側に設けられた開口部12と、開口部12の内周側において全周に亘り形成された凹溝13と、開口部12から一部が切り欠かれた形状の切欠き(貫通孔)14とを有している。即ち、ハウジング10は、アキュムレータ本体20の後述する圧力室24及び開口部12の間に設けられた内外を貫通する切欠き14を有している。本実施の形態では、切欠き14はハウジング10の下方に位置するように配置されている。
【0015】
ハウジング10は、長手方向をバルブボディ3の一辺に沿わせて配置され、本体ブラケット5に対して例えば溶接により固着されている。本体ブラケット5の複数個所には、固定ボルト5aが下方から挿通されており、これら固定ボルト5aによって本体ブラケット5及びハウジング10がミッションケース2に固定されている。
【0016】
ハウジング10とバルブボディ3とは、略L字形状の接続パイプ6により接続されている。接続パイプ6は、例えば溶接によりブラケット7と固着されている。ブラケット7は、本体ブラケット5の一部と重なり合うように配置され、本体ブラケット5及びブラケット7は、これらが重なる位置に下方から挿通される固定ボルト5bによってバルブボディ3に共締め固定されている。
【0017】
接続パイプ6は、バルブボディ3の下面に開口するオイルポート3a(
図4参照)に取付けられている。オイルポート3aは、バルブボディ3及びミッションケース2に形成された油圧回路を介して、ミッションケース2の内部に配置される発進用摩擦係合装置の油圧サーボに連通している。発進用摩擦係合装置とは、例えば多段式変速機構の一部を構成し、前進1速段時に係合される多板クラッチである。
【0018】
図3に示すように、アキュムレータ本体20は、ハウジング10のボディ11に収容され、ハウジング10内で摺動可能なピストン22と、ピストン22を押圧する圧縮コイルばねからなる付勢ばね21と、ピストン22と共に圧力室24を画成するアダプタ(収容部)40と、を有している。
【0019】
ピストン22は、ハウジング10のボディ11に摺動自在に嵌挿され、軸方向頭部側にアダプタ40の底面と共に圧力室24を画成している。ピストン22は、圧力室24に臨んでアダプタ40の底面に対向する受圧部22aと、受圧部22aの外周部からボディ11の内周面に沿って底部側に延びた形状の脚部22bとを有している。ピストン22は、受圧部22aがアダプタ40に突き当たる頭部側位置(
図3中、上半分)と、脚部22bがハウジング10の底部11aに突き当たる底部側位置(
図3中、下半分)との間を摺動して、圧力室24の容積を変化させる。受圧部22aの外周面には圧力室24をシールする複合シール25が装着されている。付勢ばね21は、受圧部22aとハウジング10の底部11aとの間に設けられ、ピストン22を圧力室24側へ向けて付勢する。
【0020】
アダプタ40は、略円柱形状で、ハウジング10の内側の頭部側に嵌合されている。アダプタ40は、軸方向頭部側において拡径された段部41と、外周側に突出する爪部42(
図6(a)参照)とを有している。段部41は、ハウジング10の開口部12の内周側に形成された凹溝13に装着されたスナップリング26に当接し、軸方向頭部側への移動を規制されている。また、爪部42は、ハウジング10の軸方向頭部側の一部に形成された切欠き14(
図6(a)参照)に係合されており、ハウジング10とアダプタ40との周方向の位置合わせがなされる。アダプタ40の底面は、ハウジング10の内周面と共に圧力室24のシリンダ面を形成しており、アダプタ40の外周面には、圧力室24をシールするOリングo4が装着されている。尚、本実施の形態では、Oリングo4と、スナップリング26との間において、アダプタ40の外周面とハウジング10の内周面との間に隙間15が設けられている。即ち、アダプタ40は、ハウジング10の底部11a側と開口部12側とにおいて、外周面をハウジング10の内周面に密着して設けられている。
【0021】
アダプタ40には、
図4に示すように、軸方向と直交する方向に開口する給排口43が形成され、該給排口43に接続パイプ6が取付けられている。接続パイプ6は、その外径を給排口43の内径に比して若干小さく形成され、外周面に形成された環状溝にOリングo5が嵌着された状態で給排口43に挿入されている。接続パイプ6は、給排口43からハウジング10の外方へと延出し、略直角に屈曲してバルブボディ3の下面に開口するオイルポート3aへ向かって延び、Oリングo6を介してオイルポート3aに取付けられている。
【0022】
図5に示すように、アダプタ40は、後述する開閉装置30が設けられる挿入孔44を有している。挿入孔44は、軸方向に沿って設けられ底部44aを有している(
図6(a)参照)。挿入孔44には、第1環状油路b1、第2環状油路b2、第1油路a1、第2油路a2が連通されている。第1環状油路b1及び第2環状油路b2は、挿入孔44の内周面に環状に形成され、第1環状油路b1が第2環状油路b2よりも頭部側に配置されている(
図3参照)。第1油路a1は、給排口43と第1環状油路b1とを連通し、第2油路a2は、圧力室24と第2環状油路b2とを連通する。従って、給排口43と圧力室24とは、給排口43の側から、第1油路a1、第1環状油路b1、挿入孔44、第2環状油路b2、第2油路a2の順に配置された経路によって連通されている。即ち、アダプタ40は、油圧を蓄圧可能なアキュムレータ本体20及びバルブボディ3の間で油圧を連通すると共に、挿入孔44に連通する油路a1,b1,b2,a2と、を有している。
【0023】
本実施の形態では、
図4及び
図5に示すように、挿入孔44は軸方向に視てアダプタ40の中心からオフセットして形成されている。そして、第1油路a1、第2油路a2、給排口43は、アダプタ40において挿入孔44のオフセット方向とは反対側の空間を利用して形成されている。第1油路a1及び給排口43は、軸方向と直交する方向に形成される一方、第2油路a2は軸方向に沿って圧力室24と第2環状油路b2とを接続している。
【0024】
次に、開閉装置30は、
図3及び
図6(a)に示すように、アダプタ40と、ソレノイドバルブ70とを有している。ソレノイドバルブ70は、ソレノイド部31と、スリーブ51と、内スリーブ55と、スプール60とを有している。このソレノイドバルブ70が、スリーブ51をアダプタ40の挿入孔44に対して挿入されることで、開閉装置30が組み立てられている。
【0025】
ソレノイド部31の外周部の一部にはコネクタ32が設けられ、ソレノイド部31はコネクタ32を介して不図示の電子制御ユニット及び車両のバッテリに接続されている。ソレノイド部31は、通電によりスプール60を摺動可能である。ソレノイド部31は、中心軸C2をハウジング10の中心軸C1の軸方向に略平行にして設けられている。
図2に示すように、ソレノイド部31には、軸方向視でV字形状に広がるブラケット33が固設され、ブラケット33に挿通される固定ボルト34によって、ソレノイド部31がアダプタ40に固定されている。ソレノイド部31は、コイル35、プランジャ36、ロッド37等を有しており、電子制御ユニットによりコネクタ32を介してコイル35が通電制御されることで、プランジャ36がスプール60側に摺動し、後述する付勢ばね38に抗してロッド37を押し出す。
【0026】
スリーブ51は、ソレノイド部31側が開放された有底の円筒形状で、底部44aに対向する底部52と、第1のポート53と、第2のポート54とを有しており、アダプタ40の挿入孔44に対して、解放口5
2a側を底部44aに向けて挿入されて設けられている。底部52には解放口52aが設けられている。第1のポート53は、スリーブ51の内外を連通すると共に、第1環状油路b1及び第1油路a1から接続パイプ6を介してバルブボディ3に連結される。第2のポート54は、スリーブ51の内外を連通すると共に、第2環状油路b2及び第2油路a2を介してアキュムレータ本体20に連結される。尚、内スリーブ55は、スリーブ51のソレノイド部31側において、スリーブ51の内周側に嵌入により設けられている。
【0027】
スプール60は、第1のランド部61と、第2のランド部62と、第3のランド部63とを有している。スプール60は、スリーブ51の底部52との間に設けられた圧縮コイルばねからなる付勢ばね38により、ソレノイド部31側に付勢されている。
【0028】
第1のランド部61は、第1のポート53と底部44aとの間に位置可能であり、スプール60の底部44a側の端部に配置されている。第1のランド部61の外周面には、スリーブ51の内周面に摺接する第1のシール部材o1が設けられている。即ち、第1のシール部材o1は、スリーブ51と第1のランド部61との間に設けられている。
【0029】
第2のランド部62は、スプール60において、第1のランド部61に対し底部44aとは反対側に配置されている。スリーブ51の内周面には、第2のランド部62の外周面に摺接する第2のシール部材o2が設けられている。第2のシール部材o2は、第1のシール部材o1よりも高いシール性を有している。即ち、第2のシール部材o2は、第1のシール部材o1よりもシール性が高く、スリーブ51と第2のランド部62との間に設けられている。これにより、第2のシール部材o2が高いシール性を有しているので、作動油がソレノイド部31側に漏出することを抑制でき、作動油に混入した異物等がソレノイド部31に侵入することを防止できる。また、第1のシール部材o1を第2のシール部材o2よりも小型化できるので、開閉装置30の小型化を図ることができる。
【0030】
第3のランド部63は、第1のランド部61及び第2のランド部62の間、即ち第1のポート53及び第2のポート54の間に設けられている。第3のランド部63は、内スリーブ55に対して軸方向に接離可能であり、当接することにより第1のポート53及び第2のポート54を遮断する遮断状態となり、離間することにより第1のポート53及び第2のポート54を連通する連通状態となる。即ち、スプール60は、アダプタ40の挿入孔44において摺動可能に収容され、第1のポート53及び第2のポート54のうちの底部44aに近い方のポートである第1のポート53と底部44aとの間に位置可能な第1のランド部61を有し、摺動により、第1のポート53及び第2のポート54を連通する連通状態と、第1のポート53及び第2のポート54を遮断する遮断状態と、に開閉装置30が切換可能である。即ち、ソレノイドバルブ70は、挿入孔44に挿入して設けられ、アキュムレータ本体20とバルブボディ3とを連通する油路a1,b1,b2,a2を連通状態及び遮断状態に切換可能である。これにより、開閉装置30が連通状態で、第1環状油路b1の油圧が第2環状油路b2の油圧よりも高いときには、作動油が第1環状油路b1から第2環状油路b2へと移動可能である。
【0031】
また、スリーブ51の底部52側の外周面には、挿入孔44の内周面に摺接する第3のシール部材(スリーブ外シール部材)o3が設けられている。これにより、第1のポート53及び第1環状油路b1の油圧が、底部44aに漏出することを防止できる。即ち、第3のシール部材o3は、スリーブ51の外周面において、第1のポート53及び第2のポート54のうちの底部44aに近い方の第1のポート53と、スリーブ51の解放口52a側の端部と、の間に設けられている。
【0032】
次に、本蓄圧装置1の特徴的構成であるドレン油路45について説明する。アダプタ40の挿入孔44において、底部44aとスリーブ51の底部52との間には空間44sが設けられている。アダプタ40には、この空間44sとアダプタ40の下方の外部と連通するドレン油路45が形成されている。即ち、ドレン油路45は、アダプタ40に形成されると共に、挿入孔44の底部44aとスリーブ51との間の空間44sと、アダプタ40の外部と、を連通する。ドレン油路45は、スプール60の摺動により押出される作動油をハウジング10とアダプタ40との隙間15に逃がすように設けられている。
【0033】
ドレン油路45は、アダプタ40の外周面において排出口45aを有している。排出口45aは、スプール60よりも下方において開口している。本実施の形態では、排出口45aは、真下を向いて開口している。また、ドレン油路45の排出口45aは、アダプタ40とハウジング10との間に形成される隙間15に開口し、排出口45aと隙間15と切欠き14とが連通する。本実施の形態では、排出口45a及び切欠き14のいずれも真下に開口しているので、排出口45aから排出された作動油は、ハウジング10の内部を流通して切欠き14から落下し、オイルパン4に滴下される。
【0034】
図7(a)に示すように、排出口45aは、オイルパン(貯留部)4に貯留される油の油面8より下方、即ち油中に位置するように配置されている。また、
図7(b)に示すように、排出口45aは、油面8の傾斜角度が所定範囲内(例えば、±10°以内)である場合に、油中に位置するように配置されている。本実施の形態では、
図7(b)に示すように、路面が8°の下り坂である場合でも、排出口45aは、油面8の下方に位置することができる。即ち、ドレン油路45は、底部44aと第1のランド部61との間に連通され、スリーブ51と第1のランド部61との摺接部から漏出した油をドレンすると共に、油を貯留するオイルパン4の油面8の傾斜角度が所定範囲内である場合に、油中に位置するように配置される排出口45aを有する。尚、本実施の形態では、切欠き14も、オイルパン4の油面8の傾斜角度が所定範囲内である場合に、油中に位置するように配置されている。
【0035】
次に、上述した蓄圧装置1の動作について説明する。車両が通常走行してエンジンが回転しているときには、エンジンの駆動力によりオイルポンプが作動している。そして、オイルポンプにより加圧されバルブボディ3の内部で調圧された油圧が、オイルポート3aから蓄圧装置1の給排口43に供給される。このとき、電子制御ユニットからの信号により開閉装置30は連通状態にされている。このため、給排口43に供給される供給油圧が圧力室24の内圧に比して高いときには、給排口43側の作動油が開閉装置30を通過して圧力室24側へと移動する。そして、不図示の付勢ばねの付勢力に抗してピストン22が底部11a側へと摺動し、圧力室24の内部に作動油が蓄積されると共に、圧力室24の内圧が供給油圧に近付くように上昇する。
【0036】
車両の減速又は停止等、電子制御ユニットがエンジンの停止条件を検知すると、電子制御ユニットは、エンジンの停止工程を開始すると共に、開閉装置30を遮断状態に保つ。すると、エンジンの回転停止によりオイルポンプが停止してバルブボディ3への油圧供給が停止されるが、開閉装置30により圧力室24から給排口43への作動油の移動が規制されるため、圧力室24の内圧が維持される。
【0037】
運転者によるブレーキペダルの解放等、電子制御ユニットがエンジンの再始動条件を検知すると、電子制御ユニットはエンジンの再始動工程を開始すると共に、開閉装置30に信号を送って遮断状態から連通状態へと切り換える。すると、付勢ばねの付勢力によりピストン22が頭部側へと摺動し、圧力室24の作動油が開閉装置30を通過して給排口43から吐出され、オイルポート3aと供給される。そして、バルブボディ3及びミッションケース2の油圧回路を経由して、ミッションケース2の内部にある発進用摩擦係合装置に油圧が供給される。そして、発進用摩擦係合装置が作動してエンジンの駆動力が駆動輪へと伝達され、車両が加速を開始する。また、エンジンの再始動に伴ってオイルポンプが作動を再開し、バルブボディ3へ油圧を供給し始めるため、蓄圧装置1の給排口43への供給油圧が上昇し、圧力室24への油圧の蓄積が再開される。
【0038】
これにより、蓄圧装置1を有する油圧制御装置は、オイルポンプの作動を待って発進用油圧装置を作動させるものに比べ、車両をエンジン停止状態から通常走行へと素早く復帰させることができる。
【0039】
ここで、ドレン油路45の排出口45aは、オイルパン4に貯留された油中に位置するように配置されている。このため、排出口45aから空気が吸い込まれないため、ソレノイドバルブ70からバルブボディ3内の油路に満たされた作動油が漏出してしまうことが抑制される。また、排出口45aは、オイルパン4の油面8の傾斜角度が所定範囲内である場合に、オイルパン4に貯留された油中に位置するように配置されている。このため、蓄圧装置1を搭載した車両が加減速したり傾斜して油面8が傾斜した場合でも、排出口45aから空気が吸い込まれないため、ソレノイドバルブ70からバルブボディ3内の油路に満たされた作動油が漏出してしまうことが抑制される。
【0040】
以上説明したように、本実施の形態の蓄圧装置1によると、挿入孔44の底部44a及びソレノイドバルブ70の間の空間に連通するドレン油路45の排出口45aが、オイルパン4に貯留された油中に位置するように配置されている。このため、排出口45aが大気に開放されている場合と異なり、排出口45aから空気が吸い込まれないため、ソレノイドバルブ70からバルブボディ3内の油路に満たされた作動油が漏出してしまうことを抑制できる。これにより、エンジン再始動時に発進用摩擦係合装置を係合する応答性を向上できると共に、アキュムレータ本体20の容量の低減を図ることができる。
【0041】
また、本実施の形態の蓄圧装置1によると、排出口45aは、オイルパン4の油面8の傾斜角度が所定範囲内である場合に、オイルパン4に貯留された油中に位置するように配置されている。このため、蓄圧装置1を搭載した車両が加減速したり傾斜して油面8が傾斜した場合でも、排出口45aから空気が吸い込まれないため、ソレノイドバルブ70からバルブボディ3内の油路に満たされた作動油が漏出してしまうことを抑制できる。これにより、エンジン再始動時に発進用摩擦係合装置を係合する応答性を向上できると共に、アキュムレータ本体20の容量の低減を図ることができる。
【0042】
尚、上述した実施の形態では、蓄圧装置1を、アイドリングストップ機能を搭載した車両の油圧制御回路に適用した場合について説明したが、これには限られず、オイルポンプの非稼働時に油圧制御回路に油圧を供給する装置として適用してもよい。
【0043】
また、上述した実施の形態では、発進用摩擦係合装置として、変速機構の前進1速段時に係合される多板クラッチを使用した場合について説明したが、これには限られない。例えば、発進時に作動する他の摩擦係合装置であってもよく、あるいは、多段式変速機構の一部を構成する摩擦係合装置にも限られず、例えばベルト式無段変速機構のプーリを押圧する油圧サーボを蓄圧装置により油圧駆動する構成であってもよい。
【0044】
また、上述した実施の形態では、スリーブ51とアダプタ40とが別体である場合について説明したが、これには限られず、例えば、スリーブ51がアダプタ40と一体化されていてもよい。
【0045】
また、上述した実施の形態では、開閉装置30及びアキュムレータ本体20を蓄圧装置1に内蔵させた場合について説明したが、これには限られない。例えば、開閉装置30をアキュムレータ本体20と別個に設けるようにしてもよい。この場合、例えば、開閉装置30をバルブボディ3と一体化して配置し、アキュムレータ本体20をバルブボディ3から離間させて配置するようにしてもよい。
【0046】
尚、本実施の形態は、以下の構成を少なくとも備える。本実施の形態の蓄圧装置(1)の開閉装置(30)は、底部(44a)を有する挿入孔(44)と、油圧を蓄圧可能なアキュムレータ本体(20)及び油圧制御部(3)の間で油圧を連通すると共に前記挿入孔(44)に連通する油路と、を有する収容部(40)と、前記挿入孔(44)に挿入して設けられ、前記アキュムレータ本体(20)と前記油圧制御部(3)とを連通する前記油路を連通状態及び遮断状態に切換可能なソレノイドバルブ(70)と、を備え、前記収容部(40)は、前記挿入孔(44)の前記底部(44a)及び前記ソレノイドバルブ(70)の間の空間(44s)に連通すると共に、貯留部(4)に貯留された油中に位置するように配置される排出口(45a)を有するドレン油路(45)を備える。この構成によれば、挿入孔(44)の底部(44a)及びソレノイドバルブ(70)の間の空間(44s)に連通するドレン油路(45)の排出口(45a)が、貯留部(4)に貯留された油中に位置するように配置されている。このため、排出口(45a)が大気に開放されている場合と異なり、排出口(45a)から空気が吸い込まれないため、ソレノイドバルブ(70)から油圧制御部(3)内の油路に満たされた作動油が漏出してしまうことを抑制できる。これにより、エンジン再始動時に摩擦係合装置を係合する応答性を向上できると共に、アキュムレータ本体(20)の容量の低減を図ることができる。
【0047】
また、本実施の形態の蓄圧装置(1)の開閉装置(30)では、前記ドレン油路(45)の前記排出口(45a)は、前記ソレノイドバルブ(70)よりも下方において開口する。この構成によれば、排出口(45a)を容易に油面(8)の下方に配置できるので、ソレノイドバルブ(70)と油圧制御部(3)との間の作動油の漏出を確実に抑制することができる。
【0048】
また、本実施の形態の蓄圧装置(1)の開閉装置(30)では、前記ソレノイドバルブ(70)は、前記油圧制御部(3)に連結される第1のポート(53)と、前記アキュムレータ本体(20)に連結される第2のポート(54)と、を有するスリーブ(51)と、前記スリーブ(51)に摺動可能に収容され、前記第1のポート(53)及び前記第2のポート(54)のうちの前記底部(44a)に近い方の前記ポート(53)と前記底部(44a)との間に位置する第1のランド部(61)を有するスプール(60)と、オン状態及びオフ状態の切換えにより前記スプール(60)を摺動することにより、前記第1のポート(53)及び前記第2のポート(54)を連通する連通状態と、前記第1のポート(53)及び前記第2のポート(54)を遮断する遮断状態と、に切り換えるソレノイド部(31)と、を有する。この構成によれば、本蓄圧装置(1)を搭載した車両が加減速したり傾斜して油面(8)が傾斜した場合でも、ソレノイドバルブ(70)から油圧制御部(3)内の油路に満たされた作動油が漏出してしまうことを抑制でき、エンジン再始動時に摩擦係合装置を係合する応答性を向上できると共に、アキュムレータ本体(20)の容量の低減を図ることができる。
【0049】
また、本実施の形態の蓄圧装置(1)の開閉装置(30)では、前記第1のランド部(61)は、前記スプール(60)の前記底部(44a)側の端部に配置され、前記スリーブ(51)と前記第1のランド部(61)との間に第1のシール部材(o1)が設けられ、前記スプール(60)は、前記第1のランド部(61)に対し前記底部(44a)とは反対側に配置された第2のランド部(62)を有し、前記スリーブ(51)と前記第2のランド部(62)との間に、前記第1のシール部材(o1)よりもシール性の高い第2のシール部材(o2)が設けられる。この構成によれば、第2のシール部材(o2)が高いシール性を有しているので、作動油がソレノイド部(31)側に漏出することを抑制でき、作動油に混入した異物等がソレノイド部(31)に侵入することを防止できる。また、第1のシール部材(o1)を第2のシール部材(o2)よりも小型化できるので、開閉装置(30)の小型化を図ることができる。
【0050】
また、本実施の形態の蓄圧装置(1)の開閉装置(30)では、前記収容部(40)は、 前記スリーブ(51)は、前記挿入孔(44)に収容され、前記底部(44a)側の端部に解放口(52a)を有し、前記ドレン油路(45)は、前記挿入孔(44)の前記底部(44a)と前記スリーブ(51)との間の空間(44s)と、前記収容部(40)の外部と、を連通する。この構成によれば、ソレノイドバルブ(70)の一部であるスリーブ(51)を収容部(40)の挿入孔(44)に挿入することにより、開閉装置(30)を組み立てることができるので、製造工程を簡易化することができ、コスト削減を図ることができる。
【0051】
また、本実施の形態の蓄圧装置(1)の開閉装置(30)では、前記スリーブ(51)の外周面において、前記第1のポート(53)及び前記第2のポート(54)のうちの前記底部(44a)に近い方の前記ポート(53)と、前記スリーブ(51)の前記解放口(52a)側の端部と、の間にスリーブ外シール部材(o3)が設けられる。この構成によれば、スリーブ(51)と挿入孔(44)との間の油密性を確保することができる。
【0052】
また、本実施の形態の蓄圧装置(1)は、ハウジング(10)と、前記ハウジング(10)に収容されると共に、前記第1のポート(53)が前記油圧制御部(3)に連通される上記開閉装置(30)と、前記ハウジング(10)に収容されると共に、前記第2のポート(54)に連結される前記アキュムレータ本体(20)と、を備える。この構成によれば、大型のシール部材を用いることなく、スプール(60)の周囲からの油の漏出を低減できる蓄圧装置(1)を得ることができる。
【0053】
また、本実施の形態の蓄圧装置(1)では、前記ハウジング(10)は有底の筒形状で、底部(11a)側に設けられた前記アキュムレータ本体(20)を収容するアキュムレータ収容部(11)と、開口部(12)と、前記アキュムレータ本体(20)の圧力室(24)及び前記開口部(12)の間に設けられた内外を貫通する貫通孔(14)と、を有し、前記収容部(40)は、前記ハウジング(10)の底部(11a)側と開口部(12)側とにおいて、外周面を前記ハウジング(10)の内周面に密着して設けられ、前記ドレン油路(45)の排出口(45a)は、前記収容部(40)と前記ハウジング(10)との間に形成される隙間(15)に開口し、前記ドレン油路(45)の排出口(45a)と前記隙間(45)と前記貫通孔(14)とが連通し、前記貫通孔(14)は、前記貯留部(4)の油面(8)の傾斜角度が所定範囲内である場合に、前記油面(8)より下方に位置するように配置される。この構成によれば、スプール(60)の第1のランド部(61)と収納部(40)との間からの油の漏出を低減することができ、エンジン再始動時に摩擦係合装置を係合する応答性を向上できると共に、アキュムレータ本体(20)の容量の低減を図ることができる。